『アバンのしるし』(2020.10.31)

《粗筋》

 ダイ達を庇って、背中に大火傷を負ったアバン――だが、彼は自分よりも弟子達のことを心配し、助けようとしていた。
 自分ではハドラーに勝てないと断言したアバンは、ダイとポップにいつか大魔王バーンを倒すように望みを託す。その代わり、自分は命に替えてもハドラーは倒すから、と……。

 別れを想起させる言動を取るアバンの意志は、その場にいる全員に伝わっていた。ハドラーにさえも。
 アバンの目線に、ハドラーは何かを感じたのか小さく頷く。
 戦いの前に、弟子達との別れの時間を与えようとしたのだ。それを受け、一度剣をおさめたアバンは、それぞれに別れを告げる。

 まず、ダイに。
 修行半ばで打ち切ってしまうとは言え、ダイの資質を信じたアバンは彼がきっと勇者になれるだろうと励まし、滴型のペンダントを与える。
 それはアバンが卒業生のみに与えるという『アバンのしるし』だ。修行半ばだが、将来を信じて与えるというのだ。

 ブラスやゴメちゃんにも律儀に礼を述べた後、アバンはポップに向き直る。
 だが、ポップは泣きじゃくりながらそんな物はいらない、と言う。アバンの死を一番嫌がり、そこまでする必要はないとなりふり構わずに止めようとする弟子に、アバンはやはり『アバンのしるし』を与える。

 今はポップには理解できなかったとしても、いずれ分かる時が来るでしょうから、と。

 弟子との別れが終わってから、再びアバンとハドラーの戦いが始まった。
 しかし、怪我のダメージもあってか、明らかにアバンが押されている。一方的に殴られ、ダメージを受けるアバン。

 しかし、腹に重い一撃を食らったその時、アバンは動いた。
 自身もダメージを負うが相手の動きも止まる一瞬……その隙を逃さず、アバンは両手の指を相手の頭にえぐり込ませる。
 自分自身の生命と引き換えに、相手の命を絶つ自己犠牲呪文、メガンテを放ったのだ。

 島の上空にまで吹き荒れる衝撃波――大きなクレーターがぽっかりと出来てしまうほどの効果を与える超呪文が炸裂した。
 だが、その攻撃すらハドラーを仕留めるには至らなかった。

 ダメージを負いつつも、生き延びていたハドラー。さすがに傷が大きいせいか、彼はこのまま引き上げるつもりらしい。
 だが、その前にアバンの弟子達だけは始末するというハドラー。

 一度燃えたら、相手を燃え尽くすまで消えない火炎系呪文を放っていくという。ダイ達のアストロンの効果が消えた瞬間に、黒焦げになって死亡するように――残酷な宣言にポップは怯えて喚き散らすが、ダイは怒りを強く感じていた。

 アバンの守ってもらった命を、無駄にしたくない――その一心でダイは自力でアスロトンを打ち破る。
 凄まじい闘気を噴き上がらせるダイの額に輝くのは、竜の紋章。

 ハドラーに対して全力で戦いを挑むダイ。
 ただでさえダメージを受けていたところだったのにその勢いに押され、また、ダイの額を見て「竜の騎士」かと驚くハドラーの動きはどう見ても先程までより劣っていた。

 アバンの残した剣を使い、アバンストラッシュを放つダイ。
 それは見事にハドラーの胸元を捉え、彼はこれまでかとキメラの翼を使って撤退する。

 ハドラーが去ったことでダイの額の紋章も光を失い、消える。
 魔王をなんとか退け、島の平和は取り戻されたのだ。……だが、そこに響くのはポップの嗚咽だった。
 無残に割れた眼鏡……アバンの名残を見つけたポップが、取りすがるように泣きじゃくる。






 その眼鏡を墓石に見立てて作った粗末な墓標の前に、ダイ、ポップ、ブラス達が並ぶ。アバンが死んだ今もマホカトールの効力はデルムリン島を守り続けた。
「先生はすげえんだから」と、今も先生が健在であるかのように呟くポップだが、元気はない。墓の前にとどまらず、フラッとどこかへ行ってしまう。

 墓の前に取り残されたダイに、ブラスは今後の予定を聞く。
 マホカトールがある限り、これまで通りに過ごすことも出来るが、ダイ自身はどうしたいか考えるように促すブラス。
 ダイは、アバン先生の意志を継ぐためにどうしたら良いのか、自問する――。







 一方、ハドラーは王座に座って傷の修復を受けていた。そんなハドラーに話しかけるシルエットのみの存在……大魔王バーン。
 バーンはハドラーがアバンを倒したことを重視し、手傷を負ったことは不問にする意向の様子。

 だが、実際にアバンとダイの攻撃を受けたハドラーは、ダイからの傷の方がガメージが深いことに気がついていた。
 ダイの潜在能力を肌で感じ取ったからこそ、今のうちに倒しておかなければならないと決意するハドラー。

 早くも傷を治したハドラーは、マントを羽織って王座から立ち上がる。
 彼がいるのは、鬼岩城と呼ばれる鬼を象った奇怪な城……そして、その城を取り囲む無数の怪物達は魔王である彼の配下だった――。

 


 

《感想》

 アッパーカット最強説っ!(笑)
 今回、真っ先に頭に浮かんだのがこれでした。元々バトルシーンにはすごく力を入れている作品だとは思いましたが、まさかハドラーとダイの動きにボクシングを取り入れてくるとはっ。

 どちらかというとハドラーは掌底と蹴りを叩き込む武闘家的な体捌きを想像していたのですが、思っていた以上にパンチの割合が強かったです。
 特に、アバンの顎に下から突き上げるアッパーカットにはビックリしました。原作にはなかった動きを取り込んできましたねー。

 ダイも後でハドラーに対して全身をバネに、伸び上がるようなアッパーカットを仕掛けていましたが、筆者は思わずにはいられませんでした……『うおっ、ガゼルパンチ!?』と(笑)

 インパクトの瞬間に顔を歪ませ、ぶっ飛ばす描写の細かさにも驚きです。特にハドラーのやられ顔には、ダイ大名物の鼻水もまじっていましたし、頑張っている感がすごかったですよ!

 ストーリーが大急ぎな割には、戦いには枚数を惜しまない方針なんでしょうかね。

 と、ついつい見事なパンチに印象を奪われましたが、今回の話で一番感動したのがアバン先生とハドラーのやり取りです。
 ダイとポップに別れを告げる前に、アバン先生が一瞬、ハドラーに視線をやり、それに応じるようにハドラーが小さく頷くあのシーン!

 かつての仇敵とは言え、それなりに心通じるものがあると感じられて、めっっちゃ好きです!

 後に、ポップを庇ったハドラーに礼を言った時と違って、この時のアバンはハドラーには礼まではいっていませんが、それでもこの敵が弟子と話す間にだまし討ちはしないと信じられるぐらいには、心を開いていたんだなと思えました。

 アバン先生との別れでは、ポップの泣きっぷりが良かったです〜♪
 戦いの意思を持つダイと違って、この時点ではまだ全然戦う気のないポップが、わがままを言ってわんわん泣く感じがいい感じ。

 ドラゴンが背後に見えるダイの大暴れっぷりも、実に迫力があってよかったですし♪
 原作の絵をそのまま踏襲するのではなく、良い感じにアレンジを入れていましたね。あらためてダイの格好良さに痺れました!

 キメラの翼を使う描写で、空中で奇妙な軌跡を描いてから飛んでいく表現には感心しました。ルーラはまだ出てきませんが、ルーラもあんな感じかとワクワクします。

 今回、一番旧作とも原作とも違っていたのがアバンの死後の描写で、ポップがアバンの眼鏡を前に泣くだけで終わらせるのではなく、眼鏡に取りすがるように泣いていたことや、墓を作るシーンなど。

 アバンが死んでもマホカトールの効果が終わっていないことの説明に加え、アバンを失った後のダイとポップの差をはっきりとさせていました。

 大泣きしていたときに比べて落ち着いているように見えるポップは、「アバン先生はすごいんだ」と、ダイと初対面の時と同じセリフを口にして、ふらっとどこかに行ってしまっていましたね。

 ポップがアバンを過去形で語らないあたりに、まだ先生の死を受け入れきっていないことが感じられます。
 まだ、ブラスはダイに対して、今後どうしたいか問いかけているので印象的でした。

 ダイに、このまま平和に戻った島でこれまで通りの生活を送る可能性もあると教えた上で、どうしたいかと聞いている当たりにブラスの誠実さが溢れています。
 親代わりならこのままダイを手元に置いて庇ってやりたいでしょうに、ダイの意志も尊重するところがすごいです。

 そして、魔王ハドラーと大魔王バーンのやり取りも、実によしっ!
 ふむふむ、バーン様、いかにも年寄りっぽい重い口調ですなぁ。真バーンになった時は声優を変えるのか、演技を変えるのか、今からドキドキ。

 しかし、ハドラーの腕がぬめった感じににょきっと生えて再生したのにはビックリしましたよっ、色も色なのでピッコロさ……いえいえ、某アニメの某キャラを連想しちゃいました。いや、まあ、いいんですが。

 鬼岩城とそれを取り巻く怪物達の描写に満足しましたが、魔王軍六兵団の説明がなされなかったのが残念!
 次週! 次週に期待するのでカットしないで、説明をつけて欲しい〜っ。

 そう言えば次週予告で、マァムの説明が早くも登場していましたね。ダイ達の旅立ちシーン以上に、マァムへのセクハラシーンを優先するのはどうかと思いますが。クロコダインのお目見えには思いっきり期待しますが!
 つーか、次回はかなりストーリーがかっとびそうな印象ですねー。

 旧アニメでは、マァムとの出会いはシルエットのみの性別不明の謎の人物として登場させて一週間引っ張り、ポップが相手を男と間違えても仕方が無いという感じに演出していたのですが、今回はスピーディーになりそうです。

 ところで、最後に今回の不満どころを。
 全身が鋼鉄に変わるというアストロンの説明シーン……ブラスじいちゃんが説明するのは原作通りとは言え、今回のブラスじーちゃんの配色だと鋼鉄化しても目立ちにくいんで、見た目的には不適切じゃないかと(笑)
 

  

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