『さらば! 愛する地上よ』(2021.10.22)

  

《粗筋》
 
 瓦礫の中に、赤い双眸が光る。
 ハッとしたダイだが、既に遅かった。瓦礫を海のように割り、巨大化した大魔王バーン……奇眼王が姿を現す。
 バーンの雄叫びを上げながらの攻撃が、ダイを直撃した。

 ひとたまりも無く吹き飛ばされるダイ。
 だが、バーンは容赦なく追い打ちを掛ける。飛ばされるダイを上回る速度で追い、再び殴りつける。
 別方向に飛ばされたダイは、比較的大きな瓦礫にぶち当たった。

 ダイ本人は無事でも、ぶつかったその瓦礫が衝撃に耐えきれずに砕け散る。
 さすがに血を流し、苦痛の声を漏らすダイ。その口から、わずかに吐血する。

 しかし、バーンの攻撃は終わらない。
 振り上げられた巨大な腕は、瓦礫ごとダイを打ち抜いた。後方に飛ばされながら、ダイはそれでも険しい目でバーンを見上げる。

ダイ(剣が……ッ、せめておれの剣があれば!)

 ダイの剣は、高笑いをしながら襲いかかってくるバーンの胸に深々と刺さったままだ。

 そして、バーンの手がダイを捕らえた。
 バーンの手により、瓦礫に押しつけられる形で自由を奪われるダイ。次の瞬間、バーンの爪がダイの胸を深々と抉った。

 血が飛び散り、衝撃に目を見開くダイ。その目の光がうつろになり、ダイはゆっくりと目を閉じた。
 ぐったりと力ないダイの身体はバーンの手から落ち、瓦礫の上に落下した。

バーン「どうだっ!!」

 うつ伏せに倒れ込んだダイは、動かない。倒れたダイの身体からにじみ出した血が、ジワジワと瓦礫に広がっていく。
 それを見たバーンは、歓喜の色を目に浮かべて叫んだ。

バーン「勝った……勝ったぞ! 余は勝った!!」

 声を上げて、高笑う大魔王。狂気すら感じさせるその笑いは、長くは続かなかった。
 スッと冷静さを取り戻したバーンは、ダイが倒れている床に降り立つ。

バーン「いかん、いかん。奇跡は起こる……何度でも……」

 ダイの死骸を粉々にしない限り、終わりはない――そう言いながら、ダイへと近づくバーン。止めを刺すべく、バーンは手を伸ばす。
 だが、その時、地上に一際大きな輝きが走る。その光は一直線に飛んできた。

 思わずその動きを目で追ったバーンの目の前――倒れたダイの前に、その光は突き立った。驚愕に目を見張るバーンが見たものは真真魔剛竜剣だった。
 まるでダイを守るかのようにバーンの前に突き立った剣は、強くその刀身を輝かせた――。
 

 思わぬ真魔剛竜剣の登場に、動きを止めるバーン。バランが死んだ時に失われたと思っていただけに、バーンの驚きは深かった。
 疑問を感じるバーンの目に、光が差し込んできた。
 目を焼き尽くすような強烈な光が、丸い水平線の向こうから昇り始める。

バーン「太陽……」

 まるで初めて見るかのように、天高い場所からの日の出に目を見開くバーン。
 その光を受けて、真魔剛竜剣が輝く。
 太陽の光の照り返しが、ダイへと注がれた。






 強い光に包まれ、ダイは目を覚ます。
 光に覆われた幻想的な場所――そこには、ダイの母・ソアラ姫が静かに佇んでいた。優しく微笑みかける母の姿に、ゆっくりと上体を起こしたダイは目を見張る。

 だが、光が収束し、母の姿はかき消えて真魔剛竜剣に取って代わった。
 立ち上がったダイのすぐ後ろには、幻のように半分透けた姿の父・バランがあった。

バラン「そうだ……竜の騎士の正統たる武器……。今こそおまえが、この剣を手にする時がきたのだ」

 わずかに目を動かしたダイは、輝く太陽を認める。

ダイ「太陽の光だったのか……なぜか一瞬、母さんに見えた」

 目を伏せ、バランは静かに語る。

バラン「ソアラは太陽のような女性だった。誰をも温かく包み込む力があった」

 そこまで言って、バランは目を見開き、言い切った。

バラン「ダイ。おまえも、今こそ太陽になるのだ。仲間達を、地上を、輝き照らす太陽に……!」

ダイ「太陽に……」

 その時、バーンが雄叫びを上げながら動き出した。
 敵に身構えるダイに、バランの幻は忠告する。
 剣を取れ、と。チャンスは一刀だと言うバラン。今のダイの力と大魔王相手では、真魔剛竜剣も長くは持たないと考え、一刀に全てを込めるようにと言い聞かせる。

 ダイの全て、バランの魂を込めて、大魔王の鬼眼を叩き斬れ――その言葉に、こくりと頷くダイ。

バラン「ゆけっ、ダイ!!」

 その言葉に背をされたように、ダイは床に突き立った真魔剛竜剣めがけて走り出した。迫ってくる大魔王を前にして、恐れる様子もなく。
 光り輝く真魔剛竜剣の光の中に、ポップの姿が思い浮かぶ。
 ダイのすぐ隣にいつも居てくれた頼もしい魔法使いは、ダイの考えや思いを全て肯定してくれるように、不敵な笑みを浮かべていた。

ダイ(……さよなら)

 ダイは、走る。
 光の中に浮かぶ思い出の中には、微笑むレオナが、笑顔を見せるマァムとアバンの姿があった。

ダイ(さよなら、みんな)

 迷いのない目で走るダイは、なおも仲間達を思い出す。
 静かに微笑むヒュンケルを、元は敵だったのに仲間になってくれたヒム、ラーハルト、クロコダインを。クロコダインの肩に乗ったチウは、楽しげに笑っていた。

ダイ(この一撃で、おれは太陽になる……太陽になって、みんなを空から照らすよ。さよなら、みんな……!)

 心の中でみんなに別れを告げるダイは、真魔剛竜剣に手を伸ばす。
 迫る大魔王より早く、ダイの手は真魔剛竜剣を握りしめた。その途端、ダイの動きが変わる。水を得た魚のように素早く宙に浮き上がり、は今までため込んでいた力を爆発させるように青い光を放つ。

 無論、バーンもそれに対抗しようとする。
 奇眼を光らせ、空中に飛び上がるバーン。そのバーンめがけて、ダイは剣を振りかざしたまま急降下する。
 金色の光と青の光が、急速に近づいていく。

 雄叫びを上げ、吠え立てながら挑みかかる両者。
 叫ぶダイの背後には、同じ表情を見せる竜騎将バランの幻があった。吠え立てながら剣を振るうダイ。

 ダイの剣は、バーンの巨大な拳をものの見事に砕いた。
 驚愕するバーン。
 だが、ダイはお構いなしにそのまま腕を切り裂き、鬼眼へと剣を走らせる。それを悟ったバーンが気合いを込めると、赤い鬼眼が輝きだした。
 凄まじいエネルギー波が、赤い眼から放出される。

 それに耐えようとするダイだが、真魔剛竜剣にさえヒビが入り出した。それでも裂帛の気迫を込めて、なおも挑むダイ。
 が、ダイが斬りかかったその瞬間、鬼眼が瞼を閉じる。

 真魔剛竜剣の刃では、その硬い瞼を貫くことは出来なかった。呆気なく、剣が砕け散ってしまう。
 その様子を、驚愕の表情で見守る幻のバラン。
 そして、高笑う現実のバーン。

 体勢を崩して落下しかかったダイを、バーンの拳が突き上げるように殴りつける。そのまま、上へ吹き飛ばされるダイ。
 笑うバーンの下には、どこまでも美しい青い星が大きく映し出されていた。

 勝利を確信するように、片手だけとなった手を軽く握りしめるバーン。
 だが、その顔がわずかに強ばった。
 浮遊するように頼りなげに浮いていたダイの手が、わずかに動く。目を見開くダイは、傷つきながらもまだ闘志を失ってはいなかった。
 それに驚くバーン。

 ダイは両手を震わせながらも、身体の前に構えようとしていた。
 ドルオーラを放つための予備動作――しかし、その手が組み合わされるよりも早く、バーンが動く。
 ダイを手の中に握りこむバーン。

 完全に動きを封じられ、もはや顔が手の隙間から見えるだけの状態になったダイを、見下すように見やるバーン。
 が、ダイはまだ諦めてはいなかった。もがこうとするダイを、バーンは力を込めて握りつぶそうとする。

 首をのけぞらせ、悲鳴を漏らすダイの目は焦点を失いつつあった。その目に映るのは、バーンの胸に突き立ったままの己の半身……ダイの剣だった。しかし、それは今のダイには手が届かない場所にある。
 苦痛にのたうち、吠えるダイの脳裏をよぎったのは、親友の姿だった。
 夕日の中で、恐れる様子もなく大魔王に立ち向かうポップの横顔――。

ダイ「……ポッ……プ……!!」







 思い出すのは、つい先ほどの光景だった。
 もう駄目だと誰もが……勇者であるダイさえも絶望してしまった中、ただ一人、勇気を胸に秘めて立ち上がった魔法使いの少年。
 満身創痍で、立ち上がるのさえやっとと言う様子だったのに、そんなボロボロの肉体とは裏腹に、その心は強い意志に満たされていた。

ポップ「結果が見えたって、もがきぬいてやる……! 一生懸命に生き抜いてやる! 一瞬……だけど……閃光のようにっ!!」


 大魔王バーンを一喝したその言葉が、ポップの心からの叫びが、ダイを揺り動かした。
 目を大きく見張ったダイは、最後の力を振り絞り出す。

ダイ(閃光のように――!)

 上にいるバーンも、ダイの反応が変わったことに気づいた。だが、その時にはダイは全身から青い光を滾らせ、ついにはバーンの拳をぶち砕いて自由の身となる。

 解放された途端、上空へと飛び上がるダイ。
 それを、バーンもすかさず追った。青い光と黄金の光が、併走するように急上昇する。

 バーンの追撃に、振り返りもせず真っ直ぐに飛ぶダイ。
 空高く跳び上がったダイは不意に振り向き、強烈な光を放った。
 その光に見とれたように、呆けたようにそれを見つめるバーン。だが、ダイが青い闘気を纏って向かってくるのを見て、鬼眼から光を打ち出した。

 それを避けもせず、真っ直ぐにバーンへ向かうダイ。
 ダイが手を伸ばしたのは、未だバーンの胸に刺さったダイの剣にだった。ダイが柄を握った瞬間、剣の宝玉が光る。
 そのまま、一気にバーンの身体を切り裂くダイ。

 これにはさすがのバーンもたまらなかったのか、苦しそうに呻き、吐血した。
 しかし、それでもダイの攻撃は止まらない。
 バーン本体だけでなく、鬼眼王の巨大な肉体その物を紙のように引き裂いていく。

 滑るように落下しながら剣を振るうダイ――その剣の切っ先が、不意にバーンの肉体から放たれた。
 青い星へ落下しながら上を見上げたダイが見たものは、真っ二つに両断された鬼眼王……大魔王バーンの最後だった。

 斬られた肉体はゆっくりと二つに分かれ、色を失って砂のようにサラサラと散っていく。
 大きく目を見開いたバーン本体も、石像へと変化していた。
 音の聞こえない中、鬼眼王の身体が砕け散る。
 目を閉じて、ダイは心の中で別れを告げていた。

ダイ(さよなら……大魔王バーン)

 鬼眼王の身体が、大爆発を巻き起こす。
 砕け散った瓦礫が、星々の中へと散っていく。その中には、石となって半ば以上砕けたバーンの胸像部分もまじっていた。

 石になった今も、信じられないとばかりに目を見開いたままの大魔王は、吸い込まれるように太陽へと引きつけられていく。
 皮肉にも、あれ程焦がれた太陽に飲み込まれ、バーンは消えた――。
 そして、青い大地に落ちた瓦礫は、幾つもの星となって流れ落ちていた。






 暗転し、場面は地上に変わる。
 ピラァ・オブ・バーンの麓に集まった仲間達。夜が明け始めた空を、レオナが不安そうに振り返った。
 それに気づいたマァムが、どうしたのかと問う。
 今、何か見えたような気がすると言うレオナ。

 見れば、遙か上空に落下してくるダイの姿があった。
 息をのむマァムやレオナ。
 座っていたポップも、血相を変えて振り返る。

ポップ「本当か!? 本当にダイなのか!?」

 すでに腕も身体も回復したヒムも、まっすぐここに落ちてくるのを認めた。チウは服の中から望遠鏡を取り出し、ダイの姿を確認する。

ヒュンケル「気絶しているのか!?」

ラーハルト「ダイ様ッ!!」

クロコダイン「いかん、あのままでは……っ」

 クロコダインの言葉を最後まで聞かず、ラーハルトは駆けだした。

マァム「受け止めなきゃ!」

 一番、ダイに近い位置にいたマァムが先頭をきって走るのに、ラーハルトも追いついた。が、その二人の上を飛び越し、文字通り空を飛んでいったのはポップだった。

ポップ(この役だけは……この役だけは、誰にも渡せねえっ!)

 地を這うような高さを、泣きながら飛ぶポップ。
 ダイの名を呼びながら、地面を強く蹴り、両手を広げて空へと飛び上がる。落ちてきたダイに両手でしがみつき、受け止めると言うよりも一緒に落下するポップ。

 ダイの手から滑り落ちた剣が、落下して地面に突き刺さる。
 そのすぐ近くに落下するダイとポップ。なんともしまらない着地だが、それでもポップは、ダイだけは落下の衝撃をうけないように庇っていた。
 下敷きになって痛みに呻きながらも、ダイの頭だけは大切そうに抱え込んでいる。

 ダイを見て、ハッとしたように目を見張るポップ。
 目を閉じているダイに、ポップは恐る恐る声をかける。

ポップ「ダ……イ……」

 その声に、まぶたがひくひくと動き、ダイはゆっくりと目を開けた。それを、強ばった表情で見守るポップ。
 意識を取り戻したダイは、ポップを見上げて小さく微笑んだ。
 それを見て、ポップは見届けることの出来なかった戦いの勝敗を悟る。

ポップ「勝ったんだな……!」

 嬉しそうに、目を輝かせるポップ。

ダイ「バーンは……大魔王バーンは、倒れた」

 それを聞いて、ポップは感極まったように涙をこぼす。

ポップ「そうかぁ……っ」

 ダイはわずかに顔を逸らし、静かに問いかけた。

ダイ「ポップ……おれ……どこか変じゃないかい?」

 キョトンとするポップに向き直り、ダイは心配そうに尋ねる。

ダイ「おれ、竜魔人になったから……!」

 それを聞いて、ぶわっと涙や鼻水を一気に流したポップは、ダイの頭を乱暴にくしゃっと掻き混ぜる。

ポップ「この癖っ毛! この傷!」

 戸惑うダイのほっぺたを引っ張ってから、ポップはダイを両手で抱き上げて立ち上がる。

ポップ「そして、このちっちぇ身体っ! どこがいつものおまえと違う!? おれ達のダイ、そのものだよっ!」

 空を見上げるポップの頬に、涙が流れる。それを、キョトンとした顔で見上げるダイ。

ポップ「そうさ、おれ達のダイが勝ったんだぁっ!」

 元気そう言って、ポップはダイを空へ高々と放り投げる。驚くダイの身体が一瞬空に浮かび上がり、またすぐに落下してきた。
 そのダイの手を取って、はしゃいでくるくると回り出すポップ。泣きながら笑うポップに釣られたように、ダイの顔にも笑顔が浮かぶ。

 が、しばらく回っていたものの、バランスを崩した二人は一緒に倒れ込んでしまった。その様子を見て、楽しげな笑い声が周囲からも響く。
 アバンを初めとした仲間達は、微笑ましそうにそれを眺めている。

ポップ「そぅーら! 勇者様の凱旋だぁあっ!!」

 起き上がり、ヘッドロックをかけるような手つきでダイの頭を抱え込んだポップは、ダイの背中を笑顔で押し出した。

ポップ「みんなのところへ行ってきやがれっ!!」

 突き飛ばされたダイは、驚き、目を見張ったまま、よろめきながら前へと進む。
 そこには、マァムとメルルが、ビースト君とエイミが、ノヴァとクロコダイン、チウが、ヒュンケルとヒムがいた。
 彼らの間をすり抜けた先に居たのは、微笑むレオナだった。

レオナ「ダイ君!」

 大勢の手が、ダイをタッチする。
 ハイタッチどころか、全身、どこでも構わないとばかりに伸ばされる手に、ダイは頭を庇うようにして抱え込んでいた。
 だが、その表情は嬉しそうだった。
 もみくちゃな歓迎を受けているダイは、笑いながらみんなの祝福を受けていた。

 笑いながらはしゃぐ彼らを、大人達は、静かに眺めやる。アバンやフローラ、バダック、ラーハルト、ロン・ベルク、バウスン将軍にアキームは、騒ぎには加わらないまま、彼らを歓迎していた。

 そんな様子を、一人、離れた所から見ているのはポップだった。

ポップ「おれ達は、勝ったんだ……! 勇者ダイは、勝ったんだぁあああーーっ!!」

 勝ちどきを上げ、手を高く空に突き上げるポップ。
 その声に応じるように、仲間達が一際大きく叫んだ。
 朝日の中、空に伸ばされたポップの手が、ピラァ・オブ・バーンに重なる。と、ポップはその手を強く、握りしめた。







 白い雲が空を流れる、爽やかな空の下。
 その空を見上げるダイの表情は、どこか浮かなかった。

ダイ(バーンには、おまえを倒したら地上を去るって言ったけど……)

 地べたに座り込んで空を見上げるダイの前に、視線を合わせるように座り込んだレオナが心配そうに声をかけてくる。

レオナ「ダイ君、身体は大丈夫なの? どこか痛くない?」

 一度目を閉じたダイは、ちょっとむくれた表情で答える。

ダイ「あんだけもみくちゃにしといて、今更そりゃないよ」

 その言葉に、くすりと笑うレオナを皮切りに、その場に居たみんながおかしそうに声を立てて笑った。

ダイ(みんな……)

 笑いの最中、フローラが少しばかりお冠のご様子で、レオナに忠告をする。

フローラ「レオナ。少々嫌がられても、しっかり捕まえておかなきゃだめよ。勇者なんて、ことが片づいたらすぐにどこかに消えてしまうんだから」

 明らかな当てこすりを含んだお言葉に、フローラの隣に居たアバンがびくっと硬直する。

クロコダイン「そいつは無責任ですなあ」

ポップ「にっひっひー、今度こそ観念して、男の責任とらなきゃね〜、せんせー♪」

 からかうような表情で、楽しげにアバンを指さしまくるポップ。

アバン「な、何をいうんですかっ!?」

 珍しく顔を赤らめて文句を言うアバンに、ポップ達はどっと笑い崩れる。それを見た後、レオナはどこか不安そうな表情をダイへ向けた。
 ダイもアバンとポップのやり取りに肩を揺らしていたが、それはごく一瞬だった。

レオナ「平気……だよね?」

 笑う仲間達の声を遠くに聞きながら、レオナは身長に声をかける。

レオナ「ダイ君……どこにもいかないでしょ?」

 膝が触れあうほど近くに座り合ったダイとレオナ。レオナは、ダイの顔を覗き込むようにして、問いかける。

ダイ「ああ、おれは……この地上が一番好きだよ」

 何の衒いも無く、そう答えるダイ。
 それを聞いて、レオナは心底ホッとしたような笑顔を見せる。

 それを見守っていたアバンとフローラ。
 フローラは顔をアバンの方に向け、みんなに帰還を促し、祝宴は帰ってからにしようと呼びかける。
 フローラと目が合い、自然に微笑むアバン。

 それを聞いた兵士達は、元気よく王子ながら手を高々と挙げる。名古屋委だ雰囲気の中、大きな足音がその場に響き渡った。
 心なしか、青空に雨雲めいた雲が立ちこめ出す。

???「少々お待ちを、女王様」

 その声に、フローラやアバンを初めとした兵士達が振り向いた。
 薄汚れたブーツが、ゆっくりと彼らに向かって歩み寄る。

???「僕にも一声、祝福の言葉を言わせてください」

 近寄ってくる人影を、警戒しながら振り返るポップとメルル。その正体に思い当たったのか、ポップは息をのんだ。
 気取った形で佇むのは、首を腕に抱え込んだキルバーンだった。

ポップ「キルバーン!?」

 ダイも、驚愕に目を見開く。
 腕に抱え込まれた首――その目は、しっかりとダイへと向けられていた。
 バーンを倒した健闘を奇跡と大仰に褒め称えるキルバーンを、ダイは険しい表情で睨みつける。
 アバン、フローラ、マァムも警戒しつつも前へ走り出た。

アバン「バカな……」

 三人から一歩遅れて、ポップもまた、前へと進みでる。

アバン「本当に不死身なのか、貴様!?」

 さすがのアバンも、声に動揺が滲んでいた。

キルバーン「首が千切れて生きていられる生物はいない、か……キミのセリフだったねえ。確かにそうかも知れない」

 キルバーンの肩に、ひょこっと陽気な一つ目ピエロが顔をのぞかせる。
 何事も無かったように、腕に抱え込んだ首を持ち上げ、本来の首へとのせるキルバーン。

キルバーン「生物だったら、ね……」

 仮面から覗く目は、生気を帯びて光煌めく。
 それを見て、息をのむアバンとフローラ。そのタイミングは、おかしいぐらいにぴったりだった。

キルバーン「ボクの身体が生物でないとしたら、どうかね? 機械仕掛けのなにかで、それを操っている何かがいたとしたら?」 

 一瞬、考え込む表情を見せたアバンは、答えに気づいた。

アバン「そうだ……! 今の言葉は、お前に言ったものではない」

 アバンは、キルバーンと戦った時の事を回想する。
 倒れ、首を断ち切られたキルバーンの『死体』を見おろしながら言った時の言葉を。

アバン「今の言葉を、あの時、聞いていたのは――」

 仲間達全員が、警戒しつつキルバーンを睨みつける。

ピロロ「そう……」

 甲高い声が、それに応じた。
 やけに大人びた仕草で帽子をずらしたのは、キルバーンの肩にしがみついている小悪魔だった。

キルバーン「ボクが本当のキルバーンだ」

 奇妙にブレる声が、真の名を明かす。普段見せていた明るく、子供っぽい表情を一変させ、邪悪に目を細めている小悪魔。
 それを見て、警戒をより一層強めるアバン。

 帽子を放り投げ、面白がった口調で真相を暴露する真キルバーン。
 腹話術師の人形と同じく、死神の人形を本体と思わせ、本体は使い魔を演じていた。
 人形の方を攻撃されても痛くも痒くもないと言ってのける真キルバーンを、憎らしげに睨みつけるヒュンケル。

キルバーン「厳密に言うと、倒す方法はたった一つだけある」

 幼い指をぴっと立てて、真キルバーンは首をはねるのではなく顔面をたたき割れば良いと、秘密を教える。
 だが、やらなくて良かったと言いながら、真キルバーンは死神人形の顔を指でつつく。

 軽い金属音と共に目の光が消えて真っ黒になったかと思うと、仮面が外れて足元に落ちた。軽い音と立てて地面に転がる仮面。

 その下に隠されていたのは、機械仕掛けの顔だった。人工的な目の奥には、黒の核晶が配置されている造り――それを見たダイが、声を上げる。

ダイ「黒の核晶!」

 大口を開けながら、真キルバーンは笑う。
 もう知っているかも知れないがと前置きをしつつ、彼は自分がヴェルザーの配下であることも明かす。大魔王バーンについたのもヴェルザーの命令であり、表向きは協力者だが、バーンを倒せる機があれば黒の核晶を使って大魔王を倒す密命を背負っていた。

キルバーン「ヴェルザー様は大魔王と違って、地上も欲しいんだ」

 岩になった奴がなぜだと声を荒げるポップ。

キルバーン「知るもんか、あの方は欲深いんだよ。竜らしくないんだ……人間みたいだよねえ」

 キルバーンが語る間にも、氷で覆われた黒の核晶が動きはじめる。
 目が赤い光を放ち、機械的な点滅を開始した。

キルバーン「さあ、お別れだ。ボクは一足先に魔界へ変えるよ。大魔王は君らが片付けてくれたが、逆に彼以上の強さを持つキミ達はとても危険だ」

 身構える一同を無視して、一方的に話し続けるキルバーン。

キルバーン「地上の人間達とともに消えてくれたまえ。ひょっとしたら、そこの凍ったピラァも誘爆するかも知れないが」

 耳障りな笑い声をあげる真キルバーン。
 その時、ヒャダルコの呪文を唱えながら、レオナが前に進みでる。
 狙い違わず死神人形の顔を直撃する魔法だが、弾かれて何の効果も見られない。

キルバーン「あーっと、言い忘れたがヒャド系呪文では止められないよ」

 わざとらしいその忠告に、悔しそうな表情を見せるレオナ。手持ち無沙汰だとでも言わんばかりに耳をほじりながら、キルバーンは更に言葉を続ける。

キルバーン「打つ手はない……では、さよなら、みなさん」

 伸ばされた小悪魔の手が、小馬鹿にするようにヒラヒラと動く。

キルバーン「そして、愛しい地上よ……」

 気取った仕草で、死神人形から離れて空中に浮かび上がる真キルバーン。その瞬間、アバンを初めとした使徒達が一斉に動いた。

 身をよじって羽を打ち出そうとするアバン。
 ポップ、マァム、ダイは一斉に前へと飛び出した。

 アバンのフェザーが真キルバーンに突き刺さるのと、ダイとポップが死神人形に飛びつくのは、ほぼ同時だった。目すら見交わさず、言葉も無いまま、ダイとポップはそのまま急上昇して空に飛び上がっていった。
 一歩遅れたマァムは、気合いを高めて閃華裂光拳を真キルバーンに叩き込む。
 アバンのフェザーで動きが止まった真キルバーンが、悲鳴を上げた。

ポップ「急げ、ダイッ!!」

 ダイとポップは力を合わせ、死神人形を抱えたまま一直線に上昇していく。雲の上まで飛んでいく彼らを見ながら、地面に倒れ伏した真キルバーンは呟いた。

キルバーン「ちくしょう……だが、もうアウトだ……」

 がくりと顔を伏せる新キルバーンに、マァムとアバンが息を切らせて駆け寄った。
 うつ伏せに倒れ込んだ小悪魔の肉体は、一瞬、光ったかと思うと、灰だけが立ち昇る。
 
 その様子を一瞬、悼ましそうに見おろした後で、マァムとアバンは空を見上げた。後ろにいるレオナも、同じように空を見上げている。
 すでにダイ達の姿は視認できない程高く跳び上がり、光の軌跡だけが輝いていた。






 雲を突き抜けて、上へ、上へと飛び上がっていくダイとポップ。

ポップ「けっ……、結局、こうなっちまったか……!! だが、もう手放してる時間はねえ! ……おまえとなら悪かねえけどな……ダイ」

 憎まれ口めいた言葉を叩きながらも、ポップの口調は優しげだった。
 不敵な表情には、なんの後悔も見られない。
 ――が、ダイはそれを聞いて眉を寄せる。そして、目をギュッと固く瞑った。

ダイ「……ごめん、ポップ」

 雲の中に突っ込んだせいで、視界が真っ白に染まる。
 ダイの突然の謝罪に、ポップは不思議そうに彼の方を見る。その時、鈍い音が響いた。

 驚愕に目を見開いたポップが、緩やかに落下する。
 彼の目に映ったものは、自分を蹴飛ばしたダイの足だった。そのせいで死神人形から突き飛ばされるポップ。
 ダイへと伸ばした手は、届かなかった。
 何をされたのか、ようやく理解したポップの目に涙が噴きこぼれる。

 ダイはポップを振り返らず、死神人形を抱え直して飛ぶ速度を上げた。それを見て、声を張り上げて叫ぶポップ。

ポップ「なぜなんだよぉっ!? ダイィイ!?」

 叫びながら、落下していくポップ。
 その声が聞こえているはずなのに、ダイは振り返らなかった。ただ、一直線に上へと飛んでいく。

ダイ(許してくれ、ポップ……こうすることが……こうして……自分の大好きなものを庇って、命をかけることが……)
 
 泣きながら、飛ぶダイ。
 前方に見える太陽の中には、父・バランと母・ソアラの幻が映し出されていた。

ダイ(ずっと受け継がれてきた……おれの使命なんだよ……)

 愁いを帯びた表情を浮かべたダイは一度目を閉じ……、そして、再び目を開けた時には吹っ切れたような表情を浮かべていた。
 身体を覆っていた雲の靄が綺麗にはれ、散っていく。

 その時、死神人形の目が激しく点滅しだした。
 その点滅の速度は次第に激しくなり、やがて爆破して真っ白く染まり……ダイはその白の中に飲まれた。
 
 







 空中に浮かんでいたポップは、その大爆発を目撃した。
 ダイから遠く離れてしまったはずなのに、すぐ目の前で太陽が爆発したかのような光が炸裂する。

ポップ「バッカヤロォオオオオ!」

 







 ポップさそう叫んだ瞬間、地上にいる仲間達も空を見上げて驚愕する。
 マァム、アバン、フローラやバダック、ヒュンケル、クロコダイン……なにより、レオナが泣きながら叫ぶ。

レオナ「ダイくーーんっ!」

 凄まじい爆発が起こり、空を真っ白に染め上げる。
 だが、その被害は地上にまでは及ばなかった。白く染まった空が元の青さ、太陽の輝きを取り戻すまで、そうは時間はかからなかっただろう。

 元に戻った空を、レオナは崖の端に立ったまま見上げていた。
 虚脱したような表情のレオナの髪が、風に吹かれるままに靡く。
 不意に、しゃくり上げるレオナ。首を振り、それを拒絶しようとしても溢れる涙を、レオナが固く目を閉じ、顔を上に向けて堪えようとする。
 やがて、レオナは再び目を開ける。哀しそうな表情ながら、レオナはまっすぐに前を向いていた――。






 波の音が響く浜辺。
 丘の上に立つ城。
 そして、ダイの剣が飾られた崖上が映し出される。台座に刺さり、花に囲まれたダイの剣は太陽を受けてきらめいていた。

ブラス「ダイ……おまえが世界を救って、数週間。わしらは世界中を探し回ったのじゃが、どこにもおまえを見つけられなんだ」

 ブラスを先頭に、ダイの剣を飾った崖の上に集まっている仲間達。
 ポップとマァムを先頭に、メルル、三賢者、バダック、ヒュンケル、クロコダインとチウ。マトリフとビースト君(ブロキーナ)、アランにフローラ、ヒムとラーハルト。最後方にはアキーム、そして名前の分からない二人の兵士の姿も見える。

ブラス「いったいどこにおるんじゃ……」

 目を閉じてそう呟くブラス。
 村娘風の衣装を着たマァムも、辛そうな表情で目を瞑っている。

マァム「地上は救われたわ。人間もモンスターも自然も……みんな、あなたのおかげよ。ピラァの装置は完全に停止させ、平和が戻った。それなのに、肝心のあなたは……」

 最後には涙声になるマァム。
 腕を組み、不機嫌そうにダイの剣を横目に睨んでいるポップ。

ポップ「真の勇者ダイの剣か。けっ、まるで墓だぜ、縁起でもねえ」

 機嫌悪く吐き捨てるポップ。が、そこに元気な声がかけられる。

レオナ「墓なんかじゃないわ! ポップ君! それはね、ダイ君が帰ってくる時の目印なんだから!」

 後ろにロン・ベルクとノヴァを従え、両手を大きく動かしながら陽気にそう言ってのけるレオナ。
 それを聞いて、驚くポップ達。

ロン・ベルク「見ろ、その剣の宝玉を。その剣は、ダイのためだけに作られた生きた剣……ダイが死ねば、その宝玉も光を失い、息絶える。どうだ? 光は消えているか?」

 その説明を聞いて、ポップとマァムは剣を振り返った。
 それに応えるように、赤い宝玉が強い光を放つ。

ポップ「光ってる……!」

 ホッとしたように、ため息を吐くマァム。
 ヒュンケルは、満足そうに微笑んでいた。
 ポップはよろけるような足取りで、ダイの剣へ近づいていく。

ポップ「ダイは……生きているんだ!」

 表情は見えないが、その声は明らかにうわずっていた。そんなポップの背に、問いかけるマァム。

マァム「でも、どこに?」

 それに対し、分からないと答えたのはロン・ベルクだった。天界や魔界の可能性もあると告げられ、表情を曇らせるマァム。

マァム「そんな……」

 だが、その時、ポップがぽつりと言った。

ポップ「……どこでもいいじゃねえか」

マァム「えっ!?」

 驚いてポップの方を見るマァム。レオナ達も、ポップへと注目する。仲間達に背中を向けたままのポップ。その肩は、小刻みに震えていた。

ポップ「生きて……生きてさえ、すりゃあよぉ……また会えるって!」

 振り返ったポップの目には、堪えきれない涙が溢れ、きらきらとこぼれ落ちる。だが、それでもポップは嬉しそうな笑顔を浮かべていた。

ポップ「だって、あいつの帰ってくるところはよ……! ここしかねえんだからさ!」


 ポップは大きく手を広げ、そう言い切った。
 その光景を、太陽が照らしている。その中で、ダイの剣は一際強く光り輝いた。
 その剣を、レオナは穏やかな眼差しで見つめていた――。






 暗転。
 真っ黒な中、ポップの声だけが響き渡る。

ポップ『そうだ……あいつが戻るその日まで……』

 場所は、どこかの小川。苔むした古い木の上を、二匹のリスが走り回っている。

マァム「まだなのー、ポップ?」

 姿は見えないが、マァムの声。人間の声に驚いたのか、リス達が走って逃げていく。

メルル「マァムさん……」

 少し困ったような表情のメルル。
 地図を手にして、困り切ったような顔をしているポップ。そんなポップを、手に腰を当ててちょっと怒ったような表情で見ているマァム。

 三人の格好は魔法使い、戦士、占い師風の装束で、旅をしている最中のように見える。三人はちょうど、古びて苔むした木製の橋の上にいる。

ポップ「……こっちだ、たぶん……」

 自信なげに、そういうポップ。

マァム「たぶん!?」

ポップ「あー、いや、こっちだ、こっち!」

マァム「ほんとにぃ〜!?」

 ごまかすように歩き出すポップに、まだ文句言いたげなマァム。
 小川にはシギがのんびりと佇んでいて、なんとも平和な光景。


ポップ『おれたちが世界を守っていこう』


 場所は変わって、賑やかな町並み。
 市場がたっている様子。カラフルな町並みは、お祭りでもやっているかのように賑やか。

 王座には、フローラとアバンが並んで座っている。珍妙な髭を生やしたアバンは、いささか緊張気味の様子だ。そんなアバンを、フローラは優しい目で見つめている。

ポップ『いつの日か、あいつを見つけても』

 一方、荒野で、白いマントを翻した男がいた。
 切り立った険しい岩山が続く場所に立つ男は、後ろ姿でも一際銀髪が目立つ。
 そして、ヒュンケルの後ろには、同じく白いマントを羽織ったラーハルトがいた。

ヒュンケル「行くか」

ラーハルト「ああ」

 歩き出す二人の戦士。
 少し離れた岩陰には、思い詰めたような表情をしたエイミがいた。いつもの賢者の装束ではなく、ちょっとおしゃれをしたようなマント姿だ。






ポップ『あいつが自分で帰ってきても』






 デルムリン島では、チウと遊撃隊達がそろっていた。
 チウは楽しげにヒムに呼びかける。骨組みだけしかない作りかけの家には、獣王遊撃隊達が群がって、楽しそうに手を振っている。

チウ「ヒムちゃん、こっち、こっち! みんなの新しい砦を作るのだ!」

 クロコダインは丸太をそのまま肩に乗せ、ヒムは一抱えもある巨大な岩を抱えて歩いている。

ヒム「人使いが荒いぜ、隊長さん」

 そんなことを言いながら、どこか嬉しそうなヒム。クロコダインも楽しそうに破顔する。一緒にいるブラスも嬉しそうだ。
 砦の柱には、稚拙ながらも丁寧に彫られたゴメちゃんの絵があった。
 木彫りのゴメちゃんは二番のバッジをつけ、嬉しそうに笑っていた――。







ポップ『美しい大地や町並みや』






 場所は変わって、紫のテーブルクロスを敷いた小さなテーブルの上に、年老いた手がきらびやかなネックレスをそっと置く。
 テーブルに載っているのは金貨や宝石のついた腕輪、宝剣など、いかにもお宝と言ったものばかり。

 よくみれば、そこはマトリフの洞窟。
 部屋の隅にはしくしく泣いている偽勇者でろりんと、ガッカリ顔の戦士へろへろがいる。
 
 たった今、お宝をテーブルの上に置いたのは魔法使いまぞっほ。彼の後ろには、両手でお宝を持ち、しょんぼりした顔で順番待ちしている僧侶ずるぽんがいた。
 ベッドに肘枕で寝そべるマトリフは、牢名主の風格で彼らに命令する。

マトリフ「まだ持ってんだろ? ああ? 盗んだもんは全部返してこい」

 それを聞いて、がっくりとうな垂れるまぞっほ。







ポップ『平和な人々の暮らしを』







 真っ赤に焼けた鉄の棒に、槌が振り下ろされる。響き渡る小気味よい金属音。
 場所は、ランカークスの森の奥にあるロン・ベルクの小屋。

 炉に向かって、汗だくで槌を振るっているのはノヴァ。
 髪を黄色い布でまとめ、タンクトップ姿で夢中で頑張る彼を見守っているのは、ロン・ベルク。
 彼は酒も飲まず、少し離れた椅子に腰掛けてノヴァを見つめている。


ポップ『おれが守った地上なんだと』







 場所は、パプニカ城の裏手。
 崖の上に刺さったダイの剣の前に佇んでいるのは、レオナ。
 本を抱えたレオナは、柔らかな微笑みを浮かべてダイの剣を見つめている。







ポップ『誇らしく胸を張れるようにしよう……!』







 ふっと微笑み、空を見上げるレオナ。






ポップ『再び勇者が帰ってくるその日まで……!』







 青空を背景に、花に飾られたダイの剣が映し出される。そして、青空に笑顔のダイの顔が浮かび――暗転して、英字のクレジットで物語の終了が告げられる。

THA ADVENTUER OF DAI DRAGON QUEST

Fin


《感想》

 さ、最初っから飛ばしてきましたねっ!
 OPもなく、いきなりバーン様の攻撃から入ってくるスタイルに、思わず仰け反らされました!
 
 せめて、ドルオーラの余波で煙で視界が奪われ、ダイが「やったか?」と死にフラグを立てる余裕ぐらいはあるかと思っていたのですが、そんなお約束な余裕など全くなかったですね(笑)

 息もつかせぬバーン様の猛攻が凄まじかったです。
 バーンの爪がダイを貫くシーン、原作ではそのまま攻撃していましたが、アニメでは手で瓦礫に押しつけて動きを止める改変がありました。

 血の飛び散り方が、原作よりも派手っ。
 そして、原作にはないダイが気を失う瞬間の演出が追加されていました♪ 信じられないとばかりに見開かれた目から光が消え、目を閉じるシーン、いいですねえ。

 その状態でもダイの竜魔人化は解けていないので、本人の意識も無関係に、敵を殲滅するか死亡しない限り、解除不可なのかなと改めて思いました。
 原作では刺された後のダイの顔は影になっているか、角度が悪くて見えないので、多分気を失っていると推測しか出来なかったシーンです。

 ダイに勝ったと狂喜するバーンが冷静さを取り戻すシーン、声の落差に感動しました。

 この感情の切り替えの速さは、紛れもなくバーンの長所だと感じます。ハドラーやポップのように、自分の感情に従って行動するがゆえに感情次第で戦力がアップダウンするタイプとは真逆ですが、自分の感情を一定事にリセットして冷静さを取り戻すタイプは、敵に回すと非常に厄介なタイプですよねえ。ほんっっと、敵としてはすっごく面倒……!

 真魔剛竜剣の登場シーン、カッコいいの一言につきます! ダイを守るかのように柄頭の角が輝いたかと思ったら、まさか、このタイミングでオープニングになるとは……っ。
 しかし、なんだかオープニングがいつもより早く感じられるのは気のせいでしょうか?

 ほぼ宇宙空間から見る日の出に、バーンが目を見張っているのが面白かったです。地上に来てから太陽をよく見ていたであろうバーンにとってでさえ、宇宙から見る日の出は印象的だったのかな、と。
 
 久々に登場したソアラ姫、光に覆われて黒髪の色合いが分からないほど輝いていたせいで、レオナの印象に重なって見えました♪
 ソアラが真魔剛竜剣に変化するシーン、原作よりも派手に光っていましたが……どんなに輝いても、美女が剣に変わるシーンは納得がいかないものがっ(笑)
 
 ダイが目覚めた場所はバーンとの戦いの場のままですが、バーンが見当たらずに死んだはずのバランがいるという不思議空間を、ダイはすんなりと受け入れちゃっていますね。
 ゴメちゃんと時間停止した心の中で会話した体験があるせいか、ものすごい順応力です。

 まあ、これまでも精神だけでバランと会話したり、精神的な世界でバランと会話するシーンはあったので、これは神や神の加護を与えられた者特有の能力なのかなとも思いました。

 ダイが床に突き立った真魔剛竜剣に向かって走り出すシーン、アニメで見るとアバンがハドラーに見せた無刀陣を連想しました。いや、技としては全く違うのですが、床に刺さった剣を手にするための動きという点では共通していたもので、つい。

 真魔剛竜剣を手に取るまでの短い時間の中、仲間達の回想シーンで真っ先に登場したポップに胸熱ですよ!
 仲間達に別れを告げるシーン、この時はすでにダイは自分の死を覚悟していたかと思うと、泣きたくなります。

 メガンテをしかけたら死ぬように、この一撃に全てを込めれば自分も死ぬと分かっていて、それでも一瞬たりとも怯まずに戦いを選んだダイ……。
 ポップがメガンテの際、自分の終わりを強く意識していたのとは違い、ダイは自分が太陽になると考えているのが、ダイとポップの死に対する概念の差がありそうです。

 ポップは良く悪くも俗物で、死を物理的なものとして捕らえ、身近に想像してしまえるからこそ怯え、忌避しようとしているのに対し、ダイは死という概念がポップとは違っているように思えます。

 死んだ父・バランと死後も何度も会話を交わしたせいか、死んだ後でも大切な人を見守ることが出来ると言う意識が、心のどこかにあるような気がします。

 バーンに斬りかかろうとするダイの後ろに、一瞬だけバランの幻が見えたのはアニメの改変ですね。文字通り、ダイと魂を寄り添わせて力を貸しているバランの姿が心強いです。

 バランは最初は人間を憎み、ダイとの最初の戦いの後は己の過ちに気づきながらも思考停止したまま進もうとし、ヒュンケルとの戦いでダイを守るために戦うと決めて動いていました。
 だけど、死んだ後になってから、ダイとダイの仲間達、地上を守るのが正しいと考えを変えてくれているのが、心に染みます。

 バーンの鬼眼が輝き出す描写、まさか赤い光とは思いませんでしたよ〜。バーンの色合いは黄金が多かったし、原作の描写では普通に光っていただけかと思っていました。

 でも、原作ではダイが目を閉じていたシーンが、アニメでは必死に目を見開くシーンが追加されていたのが嬉しかったです♪
 目を見開いたシーンとして追加された白黒で描かれた竜魔人ダイも、予想以上にかっこよかったですし♪

 バーンの鬼眼が瞼(多分)を閉じて剣を避けるシーン、原作で知っていたのにアニメで見ても「ずるいっ!」と叫びたくなりました(笑)
 バランの驚愕の表情が、実に鮮明でしたね。
 バランの考えでは、まさかこんなことになるだなんて思いもしなかったのでしょう。

 これ以降、バランが登場しなくなるのも、彼にとってはこれが最後の手段であり、それを防がれた時点で打つ手がなくなってしまったのだと思えてなりません。

 バーンの手に握り混まれたダイの苦しそうな顔や悲鳴、見ていて辛くなりました。原作では台詞を排除したサイレントな回だったので、アニメでも無音演出をするのかなと思っていたのですが、台詞になりきっていない悲鳴や呻きが心にグサグサ刺さりまくりっ。

 原作では口の動きだけで呼んでいたポップへの呼びかけが、アニメでははっきりと口にされていたのも感動でした!
 ポップの言葉を思いだしたダイが再び戦う気力を取り戻すシーンは、見ていて心が震えました。

 ダイが竜の騎士であることを最大の心の支えにしていたのなら、真魔剛竜剣が折れた時点で、心も折れてしまったように思えます。実際、幻のバランはあそこで心折れてしまったようですし。

 でも、ダイは絶望のその先を乗り越えてたポップを、間近で見ていました。ポップの勇気を思いだし、今こそが勇気の使いどころだと力を振り絞った……そう見えます。

 ダイにとっては、竜の騎士であることよりも、勇者である自覚の方が強かった気がしてなりません。

 バーンがダイの変化に気づいて見おろすシーンを見て思ったのですが、巨大化してしまったせいで、バーンは敵の様子を細かく観察する視点を失いかけている気がします。

 現実問題として大きさが違いすぎて敵との距離が開いてしまったせいもあるでしょうが(笑)、文字通り視点の差でしょうね。

 車に乗ったままでは、歩いている通行人の様子を詳細に見ることが出来ないように、その時の居場所によって差が生じるのは当然ですが、だからこそバーンはダイの反応に気づくのが遅れ、彼の反撃を許してしまったのでは無いかと思えます。

 ……というか、自分の目の前でダイを握りつぶそうとすれば良かったような気も。
 まあ、それだと、ダイが暴れ出した時に自分の本体にダメージが及ぶかも知れないから、出来る限り遠ざけたまま握りつぶしたい気持ちも分からんでもないですが。

 筆者とて嫌な虫を退治するのならば、すぐ目の前で確実性を優先するよりも、出来る限り遠くから攻撃したいです。

 ダイとバーンの空中戦、背景が宇宙空間なのがちょっと残念でした。ポップとキルバーンの空中戦のように、雲のような障害物があった方が追いかけっこ感が強かった気が。

 しかし、ダイの振り向きざまの閃光シーン……『太○拳』が脳裏をよぎったファンは少なくはない気がします(笑)
 でも、バーンは目を焼かれて目が眩んだと言うより、まるで見とれたかのように目を見開いていたのが本家『○陽拳』と違う点ですね。
 バーンはどこまでも、心底太陽に焦がれていたんだなと思えるシーンです。

 バーンがせめてもの抵抗とばかりに、鬼眼から光を放つのはアニメの改変ですね。
 ダイが剣を掴んだ際、宝玉が強く光り輝いて見えたのに感激! 本当にダイと繋がっているんだと、実感できました。

 バーンの身体を真っ二つに斬るシーン、青い十字の光を入れた演出で、幾分か残虐さが減った……んでしょうかね?(笑)
 原作では結構ショッキングなシーンでしたが。

 バーンが斬られるシーン、大迫力です!
 思い返せば、鬼岩城もダイに真っ二つにされましたが、鬼眼王も同じ運命を辿ったんですね。

 ダイのバーンへの別れの言葉、どこか優しさというか、同情が感じられる気がしてとても好きです。
 強さのみを信じ、己の道を貫こうとしたバーンを、ダイは心のどこかで認めていたんだろうな、と思えてなりません。

 それにしても、落下していくダイと青い地球の対比が実に美しいです。
 原作だとどうしても白黒なので(笑)、海が綺麗に見える地球が本当に綺麗で良いですね。

 そう言えば、宇宙空間から見るとダイ大世界の地上も海の比率がすごく高そうに見えます。

 現実世界の地球は海と大陸の比率が7:3程度ですが、ダイ大世界もそんな感じなのかなとあたらめて疑問を感じました。これまで登場した地図を見ると陸地がかなり多そうに見えたのですが、あれは中世ヨーロッパ期と同様に人類の知る範囲の地表しか描かれていないだけで、まだ未到達の海域があるのかなと思うとワクワクします。

 やっぱり、DQ3でジパングに感動したように、海に出てから本番の冒険が開始したのかもと期待したくなります。
 
 太陽に飲み込まれたバーン、ある意味本望だったというべきか。
 あれ程焦がれ、欲した太陽に焼かれて最後を迎えるなら……とも思いますが、バーン様ならなんとなくしぶとく生きていそうな気もしますね。
 口に出せなくても、今度は熱いとひたすら文句を言い、太陽を呪って滅する計画とか立てそう(笑)

 ダイ達を待っている地上組、アニメだとキャラの配置が微妙に違っていました。
 ラーハルトはヒュンケルと、アバンはフローラ様と、バダックさんはロン・ベルクと会話しているのが嬉しいところ♪ バダックさん、意外とロン・ベルクと気が合っているみたいですね。首をちょっと傾げて話しているバダックさんが、妙に可愛いです。

 アバン先生とフローラ様は、恋人同士なのにちょっと距離が離れているのが心配なところ。メルルがアバンの後ろに立って二人を見ている様子なのが、メッチャ納得できます。

 ポップの前には、チウとビースト君、それにヒムがいるのは原作通りです。器の大きいチウのことだから、部下であるヒムちゃんを助けてくれたポップに礼を言っているのかも。
 でも、一人だけ座っているのがポップだけなのは変わってないのですね。他のメンバーは全員立っているのに……(笑)

 ダイを発見した時のヒュンケルやクロコダインの台詞、一部省略されていました。
 が、それ以上に気になったのが、ドラキーのドナドナ。

 原作ではキョトンと見ていましたが、アニメでは羽で顔を覆うような仕草を見せていました。心配しているっぽくて、可愛い!
 ……けど、この仕草ってなんだか女の子っぽい気も。
 はっ、今まで雄だと思い込んでいましたが、もしかして獣王遊撃隊メンバーには女の子メンバーも混じっていたとか!?(笑)

 そう言えば、ダイ大当時はモンスターに性別はなかった気がしますが、DQモンスターズ以降、雄雌の概念が出来たんですよね。

 ポップがダイを受け止めようと飛ぶシーン、アニメでは思っていたよりも低い場所を飛んでいたのに驚きました。飛ぶ力もろくになかったのに、それでも自分がダイを迎えたいと思うポップの気持ちがひしひしと感じられるシーンです。

 一緒に戦いを見届けることが出来なかった分、真っ先に「おかえり」と迎えてあげたかったんだろうなぁ……。
 
 しかし、ダイを受け止めたまではよかったとして、支える姿勢が安定せず、さらには力が足りないのか支えきれずに一緒に落下するあたりが、いかにもポップらしいですね(笑)
 それと、原作でもあったシーンですが、ポップが抱きついた瞬間、ダイがダイの剣を手放したシーンが再現されていて、嬉しくなりました♪

 気絶していたダイは、それでも戦いに備えてかずっと剣を握りしめ続けていましたが、ポップの気配を感じたから気絶中でも気を緩め、もう戦わなくてもいいんだ――無意識にそう感じたように思えます。
 
 ほとんど眠りかけている際、本人は気づかなくても暖かい毛布を掛けてもらうと眠りが深まるように、気絶中だったダイも無意識にポップの腕の温かさに気づいて、安堵できたのならいいなぁと思えたシーンでした。

 まあ、ダイ以外のメンバーは、一緒に落下するポップを見て心配そうでしたが(笑) マァムがポップの、レオナがダイの名を呼ぶのは、アニメの追加ですね。
 無意識に、一番安否を気にしている人の名を口にしていることに、レオナはともかく、マァムはそろそろ自覚してもいいと思います。ま、気づかないからこそマァムと言う気もしますが(笑)

 ダイに呼びかけるポップの声が、ものすごく怯えたような口調だったのがいいですね。見た目は無傷に見えても、実際にダイが反応するまでは本当に無事なのかどうか分からなくて、怖くてたまらなかったんでしょう。
 ダイが目を開けるまで、強ばった顔をしているのもよかったです!

 ダイが、バーンは「倒れた」と言っていたのが、原作以上に意味深長に聞こえます。ダイは自分がバーンを「倒した」とは、最後の最後まで思わなかったんですね。
 自分だけでなくみんなの力が合ったからこそ、大魔王を上回ることができ、その結果、バーンは「倒れた」と考えているのだと解釈しています。

 ポップに自分が変じゃないかと尋ねるシーン、顔を背けているダイが可愛くてたまりませんっ。
 考えて見れば、最後の戦いの時にダイは自分の姿を見る機会はなかったわけですし、どんな姿になったのかなんて分からないままなんですよね。

 逆に、ポップがダイが何を言っているか分からないとばかりに、きょとんとした表情をしているのもいいです!

 アニメでは、ダイがポップに向き直って台詞を追加されているのにジーンとしました。
 そして、こっそりと思った感想が一つ……。

 ダイ、無意識とは言え竜魔人のことを「変な姿」と認識していたみたいですね(笑) ええ、このことはお父様のためにも一生秘密にしておいた方がいいと思います。

 ダイがポップに髪やほっぺを引っ張られるシーン、引っ張られた瞬間に痛そうな表情をする以上に、不安そうにポップを見ている表情が実に良いですね! 
 背後の一同を見ていたら、ヒムちゃんがちょっと斜に構えたように斜めの角度から、ラーハルトが腰に手を当てながらじっとダイとポップのやり取りを見ているのを発見しました!

 ヒムは、ちょっと呆れながらも微笑ましいものでも見るように見物している感じがします。ラーハルトの方は『……あの小僧、ダイ様に無礼な』などと思いつつも黙認しているように思えてしまうのは、勘ぐりすぎというものでしょうか?(笑)

 ポップがダイを抱き上げるシーン、クルッと反転して仲間達に背を向けているのがいいですね。泣き出してしまう顔を、ダイはともかく、仲間達には見られたくなかったのでしょうか。

 ポップがダイを一旦放り投げてから、クルクル回るシーン、可愛くて楽しいっ! ずっと、泣きながら笑っているポップに対して、最初は戸惑っていたのに笑顔になるダイの顔も実に良いです!
 ダイとポップがはしゃいで抱き合うこのシーン、このままでいて欲しいと思ってしまいました。

 笑い声が聞こえる中、仲間達が静かにダイ達を見守るシーン、原作では描かれていなかったキャラも出てきたのは嬉しい限り!
 バウスン将軍などはモブに混じっていて声を立てて笑っていましたが、ダイ達に近い立場の仲間ほど静かに微笑んでいるのが良かったです。

 まず、バダック、フローラ、アバンの大人組が優しげに見まもっているのは原作通りでした。

 お次の、ラーハルト、ヒム、クロコダイン、チウ、ヒュンケルが見守っているのは、魔王軍組とでも言いたくなる面々ですね。原作ではクロコダイン、チウ、ヒュンケルのみだったのですが、そこにヒムとラーハルトが加わってくれたのが嬉しいです。

 ビースト君ことブロキーナ老師と並んでいるマァムは原作通りですが、隣におまけのようにドラキーが浮いているのが可愛い♪

 そして、嬉しくてたまらなかったのが、手を口元に当てて微笑むメルルと嬉しそうなノヴァのツーショット! 並んで立っているというほど、二人の距離は近くないのですが、なんとなくお似合いに見えてしまう二人のツーショットに感動しまくりました!

 まあ、背後にアキーム将軍が見えるのがお邪魔虫っぽくて、ちょっと気になりますが(笑) ……いえ、アキームさんも面白くて好きではありますけどね。

 さいごに、レオナの微笑みのアップが来たのも、よかったです。
 原作では仲間達を小さなコマに詰め込んだ感が強く、順番は重視されていない感じでしたが、ダイを誰よりも心配していたレオナを優遇して欲しかったと原作の頃から思っていましたので♪

 仲間達に歓迎されるシーン、順番が原作と変えてあったのも嬉しい点♪
 原作ではマァムとレオナ、メルルとノヴァ、ヒュンケルとヒムが歓待していましたが、アニメの順番の方がいいですね。

 大人組が静かに見守るシーンも、嬉しい改変。
 特に、バダックさんが孫を眺めるようなにこやかな笑顔でダイ達を見ているのが、ジーンとしました。
 ダイ達と加わって一緒に騒いでも、一歩退いたところから見守っていても、絵になる人だなぁと改めて思います。

 そして、原作には無かったシーンとして、仲間達に歓迎されるダイを、ポップが後方から見やる姿があったのも胸熱でした!
 ポップの勝ちどきは、アニメの改変ですね。

 ピラァ・オブ・バーンに被さって伸ばされた手と、それを反転させ、握りしめる描写が細やかでよかったです。
 勝利を噛みしめるこのシーンで、CMになるとは思いませんでしたよ。

 初めて見るアイキャッチを二種類も用意してきたのも、嬉しいところ♪
 ダイを中心にした勇者達と、それと相反するバーンを中心にした魔王軍の勢揃いの図は見事すぎて、もっとゆっくりと見たかったです〜っ。

 しかし、中心にいるのがダイ、ポップ、レオナだったのは少しばかり残念。最後の戦いで活躍を見せたメンバーで言えば順当なのですが、個人的にはダイ、ポップ、マァムの三人が物語の中核だという印象があるので、この三人を真ん中に据えて欲しかった気がします。

 CM後、ダイが空を見上げながら、バーンに言った言葉を思い返しているシーン、アニメの改変ですね。
 よりにもよって、バーンに言ったことを実行しないといけないんじゃないかと考えているようなダイの真面目さに、『そんなの気にすることない! いっそ無視して良いから!』と叫びたくなりました。

 あのセリフをポップに聞こえるところで口にしたのなら、ポップが絶対に口を出しただろうにと思うと、彼があそこにいなかったのが悔しいぐらいです。ちゃっかりとメルルとマァムの間に陣取っている場合じゃないですよっ、ポップっ(笑) しかし、さりげに両手に花とはいいご身分ですな。

 ダイの返事を聞いて、はにかんだ顔で笑うレオナがめちゃくちゃに可愛い!
 でも、みんなが笑う中、一人、「みんな……」と心の中で呟きながら、背中を見せているダイがなんとも不穏でハラハラします。

 フローラ様のご忠告、女性らしい上品な皮肉っぷりが楽しかったです。
 徐々に女性らしい素顔を見せてくれるフローラ様、いいですねえ〜。
 真っ白眼鏡から、点目へと変化するアバン先生の動揺っぷりも楽しいのなんの♪

 クロコダインの一言、もう少し呆れた感じかなと思っていたのですが、いかにもクロコダインらしい誠実さに溢れるお言葉だったのが好印象! 
 ふざけ散らかしているポップとは、対照的ですね。しかし、ポップも言っていることは最もですが、アニメでは見事なぐらいに両手に花を決め込んでいるところなのが笑えます。

 原作ではこの時のポップはマァムの隣にいるだけですが、アニメではしっかりと左右にマァムとメルルがいますよっ。えー、なに、この幸せポジション(笑)

 みんなが笑い合う中、レオナがダイに問いかけるシーンが、また泣けます。ポップ達は笑っていてダイ達の会話に気がついていないせいか、二人っきりの世界という雰囲気がひしひしとしますよ〜。

 ダイを心配した後のレオナの笑顔も可愛かったですが、ダイが地上が好きだと答えたのを聞いたレオナの表情は、可愛いだけじゃなくすごく幸せそうでいいですね。

 ダイがバーンに、地上を去ると言い切った時からずっと、レオナはそのことを心配し、戦いの後でダイが居なくならないか不安だったでしょう。

 戦いの最中でそんな余裕もなかった上に、ダイに直接聞かなければ安心できない不安をずっと抱え込んで一晩を過ごし……、ようやく望んだ答えを聞けたレオナの心情を思うと、この時が一番幸せだったのではないかと思えます。

 フローラ様が帰還を促すシーン、原作では彼女だけしか描かれていませんでしたが、アニメではアバン先生がお隣にいるのがいい感じです。
 フローラと目が合うと、自然に微笑むアバン先生が!
 言葉など無くても、通じ合っている夫婦感がすでにあって、実にいいですよねえ〜。

 ほとんど活躍しなかった兵士達がここで勝ちどきっぽく腕を振り上げるのもよかったですし。

 でも……そこでやっぱりでてきやがましたよ、死神がっ。
 ポップが振り返るシーン、メルルと一緒に振り返っているのがちょっと驚きでした。
 ポップがハッと息をのむシーンも、キルバーンの名を呼ぶのも、アニメの追加ですね。

 しかし、首が切れたまま抱えているのって、アニメで見るとずいぶんとショッキングな光景ですよ〜。手加減なしのそのまま表現とは、さすが最終回。

 キルバーン登場後、ダイの警戒心が原作以上に強く表現されているのが印象的でした。原作では、ダイよりもアバンの方が警戒している感が強かったのですが、ダイがきちんと警戒している描写があるのは心強いです。

 原作では特にメンバーが動いた描写はありませんでしたが、アニメではアバン先生、フローラ様、マァムがそろって前進していますね。……フローラ様は後ろに下がったままの方がいい気がしますが。
 ポップの動きは、戦士らよりはちょい遅いですね。

 アバン先生が考え込む時、眼鏡が白く光って目の表情を隠す演出が、素晴らしく際立っています。
 短いですが、キルバーンの回想シーンも入っていて、たっぷりと間を持たせるテンポが心地よいですよ。

 このやり取りの間に、ダイとレオナがいつの間にか立ち上がっていました。完全に座り込んでいた二人が、他のメンバーよりも行動が遅れるのは自然な気がします。

 ヒュンケルやラーハルトが、隣り合って立っているのがいいですね。
 バウスン将軍、剣を手に身がまえています。……ノヴァが父親の側ではなく、ちょっと離れた所に居るロン・ベルクの隣に居るのが、なんだか哀れな気が(笑)

 ヒム、クロコダイン、チウが並ぶ横に、クマチャがいました! そして、なぜか贔屓されがちなドナドナも。

 バダック、ビースト君、エイミ、メルルが並んでいる取り合わせ、なんか楽しいです。身構えているビースト君、ポーズがちょっとお間抜けで可愛い♪

 最後に、険しい表情のポップとマァムがでてくるという、フルメンバーな総出演が楽しかったです。……アキームさんがいなかったような気がするのは、この際忘れておきましょう(笑)

 キルバーンの正体暴露の声音、すごかったです!
 てっきり別人が演じていると思っていたのに、まさかの同一声優!? すごい、すごすぎる……っ。エンディングのクレジットは、二度見しちゃいました。

 キルバーンを睨みつけるヒュンケル、原作では「不死身なわけだ」という台詞があったのをカットされた分、憎しみの顔がすごいことになっています(笑)

 キルバーンの仮面を外すスイッチ、アニメではボタンを押すと同時に目の光が消える仕組みが追加されていました。うっわー、動きが細かいです。落ち方も、みょうにゆったりとしていていい感じ。
 わざと顔を見せないように、足元へ落下する仮面の動きに焦らされますねえ。

 真キルバーンの説明は、あちこちがかなり端折られていますが、アニメで見ると全く気になりませんね。
 人を食った口調と目つきに、ものすごい圧を感じます。冥土の土産とばかりに色々暴露しつつ、黒の核晶機動までの時間を稼いでいる印象でした。

 ピロロの別れの挨拶、指をヒラヒラ動かす動きは外国のさよならっぽいジェスチャーですが、それ以上に相手を小馬鹿にしているような動きなのがいいですね。
 ただ、ラストの台詞が略されたのは残念!

原作キルバーン「無人の荒野になってから、また遊びに来るよ」

 この台詞、好きだったのですが、なくなってしまいました。
 ダイ達が一斉に行動に出るシーン、ナレーションなしのままでしたね。誰かのモノローグになるかなとも思いましたが、正面からの角度でみんなの行動を見ることが出来たのは嬉しかったです♪

 アバン先生が身を捻って羽を打ち出そうとする動きと、トベルーラを使って真っ先に飛び出したポップ、自力でダッシュするマァム、ダイの動きが、実にいい感じ♪
 
 アバンは敵の動きを止め、ダイとポップは黒の核晶を遠ざけることを考え、マァムは敵のトドメという役割分担がお見事!

 ところで、キルバーンの死亡シーンがなんだか不穏な感じがしました。
 妙にブレるような動きの後で、一気に灰になっていましたが……ザムザやハドラーのような超魔生物ならともかく、魔族も灰になるのか疑問が。ハドラー達と比べても、やけに消えるのが早い上に灰も少なかったですし。ザボちゃんのようにじわっと溶ける死亡シーンも嫌でしたが、なんか、妙に早々とした終わりが気になりますね。

 マァムとアバン先生が真キルバーンの死を見届けてから空を見上げるシーンの後で、レオナも加わって空を見る三人の後ろ姿シーンが追加されたのが嬉しかったです!

 欲を言えば、この時のヒュンケルも見てみたかったのですけど。
 ヒュンケルは飛び出したいと思っても、身体の自由が利かなくて悔しい思いをしていたと確信しています!
 出来れば、とっさに動こうとしてふらついたヒュンケルを、クロコダインが支えてあげていて欲しい……!

 ヒムやラーハルト、老師は、ダメージが大きすぎて動けなかったと思っています。
 そういう意味では、『瞳』に閉じ込められていたおかげで最後の戦いに加われず、ダメージを軽減出来ていたマァムは、あの中では一番戦闘能力が残っていたのかもしれませんね。
 ロン・ベルクもノヴァも、ダメージが大きそうでしたし。

 みんなの中で一番早く動いていたのはポップですが、ポップは単独で黒の核晶を遠くに運ぶことだけを考えていたんじゃないかと思います。
 真キルバーンとの決着より、仲間の安全確保を最優先する思考ですね。
 自分がやらなくても、敵の方はみんなが倒してくれるだろうと踏んだのではないかと。

 でも、そこにダイが加わった。
 ポップにとっては望みはしなかったかも知れませんが、想定内の範疇だったとは思います。

 だから、驚いたりダイを拒否もせず、急げとだけダイに声をかけたんじゃないでしょうか。一緒に死神人形に抱きついてしまった以上、二人で集中してトベルーラで飛んだ方がより早く、遠くまで運べると考え、協力することにしたんじゃないかな、と。

 空を飛びながら、ポップがダイにかけた言葉が意外なぐらい優しい響きで、泣けそうです。
 ポップはダイを巻き込んだとも、ダイに巻き込まれたとも思わず、成り行きでこうなった以上、このまま一緒に死んでも構わない……そう思っていたんだなと、しみじみ思います。

 ダイを助ける、あるいは自分が助かることを優先するなら、一か八かにかけて死神人形を手放して逃げる手段を考えても良かったはずなのに、ポップはこの時点で現状を受け入れてしまった。

 でも、ダイは受け入れきれなかった。
 ポップの言葉に眉を寄せた表情、その後で目を思いっきり瞑る表情の変化が、たまらなく好きです。
 
 ポップの驚きの表情と、蹴飛ばされた音の後でスローモーションにダイがポップを蹴飛ばしたシーンを映していく演出に、涙が滲みそうでした。
 落下しながらも、ポップが手を伸ばしているのが、なんとも言えません……ン!

 何をされたのか気づいて、ポップの目から涙が溢れるシーン、いいですね。そして、ポップの方を振り返らず、一人でキルバーンを抱え直して飛ぶダイの心中を思うと……たまりませんっ。
 
 ダイはポップよりも後から追う形になってしまったけれど、みんなを守るためには黒の核晶を排除しなければならないと強く思っていたんだと思います。
 本当なら、誰よりも先に一人で黒の核晶と共に空に飛び上がりたかったと思っていたんじゃないでしょうか。
 
 バランがダイを助けるために、竜闘気を振り絞って爆破を最小限に抑えたことを知っているから尚更、みんなからある程度離れてその手段を選ぶつもりがあった気がします。

 でも、結果的にはポップの方が先に動いてしまった。
 ポップに後れを取った後悔が、ダイの中には最初から合ったのかも知れないですね。もし、自分がもう少し早く行動していれば、ポップを巻き込まずに済んだのに、と――。

 そう思っているところに、ポップが今の状態で満足しているようなことを聞いてしまった。もう、ポップが自力救助するつもりがないと分かってしまったダイは、ポップとは逆に「それは嫌だ」と思ってしまったのでしょう。

 だからこそ、ポップだけは助けようと決意した。
 ポップ本人の意志に反したとしても、一緒に死ぬというある意味では幸福な結末よりも、ほんのわずかであってもポップだけは生き延びられる可能性に賭けてみたくなった……そんな風に感じられます。
 
 泣きながら飛ぶ間、ダイが振り返らないのがいいですね。
 両親の幻を見た後で、ダイが吹っ切れた表情を浮かべるシーン、ダイの周囲を覆っていた白い靄状の物が音を立てて割れ、羽じみた形で散っていった演出が気になります。

 綺麗ですが、ダイの周囲のバリヤーが破れたように見えて気になるシーンですよ〜。

 気になると言えば、ダイが消える瞬間、白黒の線だけになったダイが一瞬笑ったように見えたのが気になります。

 爆破シーン、思っていた以上の迫力でした!
 原作では遠くで光ったように見えた爆発が、アニメではポップのすぐ目の前で起こったようなド迫力!
 
 画面右半分でポップが叫ぶのに合わせて、左半分に半ば透けた絵柄で仲間達の驚愕の表情を次々映し出す演出に驚きました。こ、これは予想外の演出っ。
 原作の全員の驚愕の表情を、全員分出してくださったのが嬉しかったです。
 レオナだけ、ダイへの叫びが追加されたのも嬉しい点。

 その後の爆破シーンまで、きっちりと描かれるとは思いませんでした。
 爆破後、登場したレオナの追加シーンも、アニメの改変ですね! 泣くのを堪えようとするレオナが、実によかったです!

 号泣するのでも、うつむいて泣くのでもなく、顔を上に向けて涙を堪える仕草を見て、古い曲ですが「上を向いて歩こう」を思い出しました。
 一人だけでダイを失った悲しみと立ち向かい、立ち直ろうとするレオナの強さと一途さが、とても印象的でした。

 ダイがいなくなった後のナレーション、まさかブラスじーちゃんが語ってくれるとは思いませんでしたよ!
 崖の上での全員集合光景、原作では出てこなかったキャラ達も出てきてくれたのも感激しました!

 原作ではクロコダインとチウ、マトリフとブロキーナ老師、ラーハルトとヒム、アキームさんは未登場だったので、彼らが出てきてくれて嬉しいです!
 特にマトリフとブロキーナが隣り合っているのに、かつての仲間の絆を感じますね〜。

 チウは当たり前のように、クロコダインの肩に乗っていました。すっかり指定席になっています(笑)

 ポップとマァムの村人衣装、初めてカラーを見ましたっ!
 マァムは半ば予想していましたが、シャツもズボンもピンクです。ベスト風の上着と手首に巻いた布は黒だったのが、ちょっと意外かも。
 膝丈のブーツは茶色で、ズボンの裾を押し込んだスタイルです。かなり地味で、装飾のないブーツなのが残念。

 下がスカートなら普通の村娘風と思えますが、ズボン姿なので少し中途半端なイメージ。
 村娘と言うには女の子っぽくないし、ボーイッシュな格好と呼ぶにはピンクという色合いが可愛らしすぎるんですよね〜。
 敢えて言うなら、見習い武闘家風衣装?

 個人的には、てっきり初登場時のシャツとズボンの色合いで、上に羽織る上着をピンク系にするかと思っていました。

 ポップは緑でしたね。てっきり、ジャンクさんテイストかと思っていたのですが(笑)
 黄緑のTシャツ、黄色の縁取りついたモスグリーンのベストに茶色のズボンと、なんだかものすごく村人っぽい色合いですね。なかなか似合っています。

 靴がちょっとおしゃれで、緑とモスグリーンを合わせた運動靴っぽい感じの靴を履いていました。この配色と形、欲しくなります〜。
 色合いが明るく、はっきりした色合いばかりなのが、ただの村人にしては目立ちそうですけど。

 レオナの新衣装も、カラーは初です♪
 清楚、かつ高貴な印象の水色の縁取りの白い衣装……はいいのですが、なぜにブラジャー部分だけ真っ黒にした!?(笑) そこ、原作を見習わなくてもっ。
 ちなみに、首と手首の飾りは、黄色。

 元々露出も多いし、レオナには少し大人びすぎているんじゃと心配していた服だったのですが、まさかアニメでそのまま忠実にやらかすとは思いませんでしたよっ。
 いやっ、せめて胸当て部分の色だけでも変えたげてっ(笑) せめて、黒じゃなくて青か紺でもよかったでしょうにっ。

 と言うか、露出度を減らす方向性には行かなかったものなのでしょうか。清楚系にしたいのか、お色気系にしたいのか、よく分かりません。また、原作では裾の長さが分からなかったのですが、アニメでは膝下ぐらいのワンピース風な丈でした。 

 と、服のインパクトが大でしたが、台詞も変更してありました。

原作レオナ「全くよ! 冗談じゃないわ、ポップ君!」

 ポップの意見を否定しているのは同じでも、アニメの方がなんとなく印象が柔らかい感じでいいですね。また、アニメではレオナが両手を広げたり、胸の前で合わせたりと、大きなリアクションを取っているのが面白いです。

 原作では大人びた格好で登場し、ウインク交じりに呆れてみせるというポーズを披露するせいか、一気に大人びた印象があったのですが、アニメではオーバーな手の動きに子供っぽさが感じられてなんだかホッとしました。

 突然出てきて説明するロン・ベルクのドヤ顔が、いいですね。
 ポップ達は服を新しくしていますが、ロン・ベルクとノヴァは以前の服のままでした。
 
 剣の光を確認した時、ポップは驚いていましたが、マァムが気が抜けたようなホッとした表情を見せてくれたのが印象的でした。声優さんのため息の演技が、尚更彼女の安堵を強めているように思えます。吐息にさえ表情を持たせる声優さんのクオリティの高さ……アニメ化ならではの楽しみだと思いました。

 ところで、ヒュンケルの微笑みも結構ドヤ顔風なのですが……彼のアップの後ろ、エイミさんの太股がばっちりと映し出されていたのに注目!(笑)
 ヒュンケルの斜め後ろの位置を、しっかりとキープしていた模様。顔は見えませんでしたが、特徴的なあの服と青いマントが美しい御御足と共にしっかりと見えていました。

 おふざけはさておき、ポップが剣に向かって少し近づくシーン、いいですね。アニメの改変シーンです。
 原作ではポップ、マァム、ヒュンケルのコマの後に集中線で表示されていた台詞だったので、その場にいた全員の共通認識とも思えた台詞でしたが、ポップが言ってくれたのが無性に嬉しかったです。

 また、マァムは原作ではロン・ベルクに向かって「どこに?」と問いかけていましたが、アニメではポップに聞いています。
 正直、ポップはダイがどこにいるか知らないのだから聞いても無駄だと思いますが、疑問を持ったら無意識につい聞いてしまうほど、マァムがポップを信頼している様に思えて、ちょっと嬉しい改変でした。

 ロン・ベルクの言葉に、マァムがしょんぼりした表情や台詞を口にする改変も、細かいながら次のポップの言葉が引き立つ要因と思えます。

 ポップが泣きながら振り返るシーン、ホントに泣けます。
 両手を広げてポップが「あいつが帰るのはここだ」と言うシーン、原作では地上と書いて「ここ」とルビを振っていましたが、アニメで聞くと「ここ」は「自分達の所」に聞こえてきます。

 レオナの微笑みで終わり、エンディングに繋がるラストは美しくはありましたが、少し物足りない気が……。
 と、思っていたら、最後の最後にエピローグが加わったのがものすごく嬉しかったです! どうせならCM抜きで見たかったと思っちゃいましたが、その夢はいずれブルーレイ版で果たしましょう!

 エピローグのポップ達、橋の上で悩んでいる図だとは驚きでした。原作では、背後の山の見える草原でいかにもゲーム光景っぽかったですしね(笑)
 でも、アニメではリスが動くなど、可愛らしい改変が!

 古びた橋が素朴で平和な雰囲気で、原作よりも平和そうな捜索に見えたのは嬉しい限りです。
 橋を渡る時、背後に滝が見えたのですが、川の流れがすっごく穏やかで幻想的な光景でした。

 それにしてもラストのポップの衣装、もう少しアップで見たかったです!
 半袖の服で、緑色で、ポップ愛用の黒いベストを今も着ているっぽいなどの断片的な情報は見て取れるのですが、地図が邪魔で全身図が見えにくいのなんの!
 マントと肩当てのせいで、色合いも地味系にまとまって見えますし〜。

 マァムとメルルの新衣装の方が、見やすかったですよ!
 メルルの新衣装、朱色っぽいオレンジとクリーム色の、襟の詰まったワンピース姿が可愛いです。

 マァムの服は、黒のニットワンピにピンクの上着という、僧侶戦士時代を彷彿とさせる色彩ですね。胸のマークは、武闘着と同じですが。

 カール王国らしき国の市場、めっちゃカラフル! 単に色彩が華やかなだけでなく、飾りがあちこちにつるされていたりして、○ィズニーランドかと言いたくなるような華やかさでした(笑)

 そして、王座に座するアバン先生を見て、失笑を抑えきれませんでした。点目になったお顔で、あのびょんと丸まったの髭っ(笑) 豪華なマントと胸飾りが、一層笑いを誘います。
 
 フローラ様の衣装がパブリーブの胸元が紫色な清楚系の服でいささか少女ぽく、むしろレオナと交換した方がよくね? と思いました。
 
 ヒュンケルとラーハルトがいる場所、お日様が照らし出しているから雰囲気は明るいですが、死の大地としか思えないような殺風景さは健在ですね(笑)
 エイミさん、マントで隠されがちですが着ている服が結構おしゃれな上に、目立つペンダントもしています。

 賢者の証の冠は被ったままなのですが、レオナに許可を取って旅だったのかきになるところですね(笑)
 以前、ダイ達と旅に出たいと言った時は、三賢者の資格を返上すると冠をレオナに返そうとしたはずでしたが。

 デルムリン島でのチウ達、原作ではチウ、ブラス、ヒム、クロコダインしか出てきませんでしたが、アニメでは全員登場していたのが嬉しくてたまりませんっ。

 ダイの家が土を固めて作ったようなドーム型なのに、チウの目指す砦は機の骨組みを作っていてかなり立派です。
 ドラキー、ハンターフライが空を飛び、一角ウサギとマリンスライムが棟にのっていました。……って、なぜ上にいたがる、この二匹!? むしろ、彼らは地上でぴょんぴょんしておくべきなのでは?

 ま、まあ、大王ガエルとドロルとアリクイ、パピラスとクマチャが地上にいました。……パピラスこそ、上にいるべきな気がしますが(笑)
 そして、クマチャの肩には、悪戯小僧AとB――って、いつの間にーっ!?(笑) なかなかに突っ込みどころ満載なフルメンバーです。
 
 みんながみんな、手を振ったり、お耳や羽をパタパタさせたり、リアクションが可愛かったですよ。
 なにより微笑ましかったのが、ゴメちゃんを描いたプレートが既に用意されていたこと。ここはゴメちゃんのおうちでもあるんだよと、みんなで決めたのかと思うと嬉しくなります。

 マトリフさんの洞窟風景。
 アニメでセリフを聞いて、心底ビックリしました……!! 連載当時から今の今まで、マトリフがでろりん達からお宝を巻き上げていると、信じて疑っていませんでしたよっ! カツアゲじゃなかったんだ……!

 今回のエンディングの中で一番の驚きです! てっきり、強奪していると思ったのにっ!(笑)
 まさか、あのマトリフ師匠が盗んだものを全部出させて、持ち主に返すよう説得するなんて、真人間のような事をしていただなんて(←超失礼な感想)

 あ、いや、師匠が悪い人間だなんて言うつもりは、全然無いんですよっ、ええ! ただ、ちょっと口が悪くて偏屈で素直じゃないだけで、ついでにドスケベではありますが、根っこの部分は尊敬に値する立派な人だとは思っていますよ、ええ(笑)

 ノヴァの修行光景、いいですね。
 小屋の中にいるので、炉の明るさと部屋の薄暗さが対照的で美しい光景になっていました。

 原作でもそうでしたが、酒を飲まずにただノヴァを見守っているロン・ベルクと、すごく地味な格好で力仕事をしているノヴァの姿がいい感じです。
 それにしても、ノヴァのバンダナが黄色とは思いませんでした。
 まあ、ノヴァは髪が白に近い青なので、白いバンダナだと映えませんから黄色で正解かも。

 最後に登場したレオナ、白をベースにした衣装という共通点はあれど、エンディング部分で着ていたのとは違う服を着ていました。
 よく見れば、イヤリング(もしくはピアス)も、服事に違うと言うおしゃれぶり♪ 最後のこの衣装も、全身図で見たかったものです。

 もう、剣を見ても泣くこともなく、穏やかな表情で微笑むことのできるレオナの強さに惚れ惚れします。
 最後に、顔を上げて空を見上げる動きが、またいいですね♪

 オープニングを見ていて何度となく登場したダイの剣が、話の最後に登場し、ダイの笑顔が空に浮かぶシーン。
 原作では青空に髪の毛が溶け込むように描かれていましたが、アニメでは髪の色もしっかりと描かれていました。
 水彩絵の具のような優しい色彩で、無邪気な笑顔を浮かべるダイ――ここで、事実上物語が終わりました。

 2年という時間を掛けて、アニメがついに完結した瞬間です。
 素晴らしい物語を、毎週見ることができたのが嬉しくてたまりません。旧アニメで、ここで終わってしまうのかと嘆いたその先を見届けることが出来た感激で一杯でしたが……終わりは……やっぱり、悲しいです〜っ!!!!!!!!

 連載当時も味わった、この終わりに感動しつつも、どうしても納得しきれない感情を、鮮明に思いだしてしまいました。
 だいたい、あまりにも寂しすぎて連載当時に書いていた感想日記でも、ぜんっぜん感想を書くことが出来なかったんですよね。

 そんなわけで、これだけ長いことダイ大の解析やら感想、二次創作を書きまくっていたのにも拘わらず、筆者が最終回の感想を書くのが、これがはじめてだったりします。

 100話に及ぶ長編アニメの感想を、最後まで書き上げることができたのは、嬉しいの一言に尽きます。
 正直、最初は途中で感想書きが間に合わなくなって、途中停止しちゃうかもなんて心配もあったのですが、なんだかんだ言って最後まで書き切った満足感があります。
 まあ、最後の最後で、一ヶ月と時間はかかっちゃいましたが(笑)

 アニメの情報を拍手コメントで教えてもらったのを皮切りに、アニメへの期待を書き込んでくださったり、アニメが開始してからは感想を書いてくださったり、筆者の書いたものにコメントをくださった方々、本当にありがとうございます。

 そして、素晴らしい作品を作り上げてくださった原作者様、アニメスタッフ様一同には、感謝してやみません! この2年、有給やらスケジュール調整を駆使して、放映時間に見るように頑張り続けた甲斐があった作品でした♪

 これでもう、思い残すことはない――なんてわけなく、ますますダイ大の続きが気になって気になって仕方が無い気分になりましたよ(笑)
 これからも、こっそり二次創作活動を続けていくつもりです♪V


99に戻る
アニメ道場に戻る
トップに戻る

inserted by FC2 system