『ハドラー対バラン』(2021.10.23) |
ハドラーの放つ魔法の光に、思わず怯むダイとバラン。 不意を突かれ、床に叩き落とされるバラン。驚くダイに対して、ハドラーは不敵な笑みを浮かべる。 ベギラマを放とうとするダイだが、バランはダイの名を呼ぶことでそれを制止した。 自分のすぐ近くに落下してきたダイに、思わず目をやるバランだが、その時にはハドラーは両手を広げてベギラゴンの魔法の体勢に入っていた。 だが、ハドラーは容赦なくベギラゴンを叩き込んでくる。 その顔には、わずかに勝利の喜びが浮かんでいた――が、煙が薄らぐにつれ、その顔が警戒に引き締まる。 バリアーを解除して立ち上がったバランを見て、ハドラーは親子そろって竜闘気で防御したかと、忌々しげに呟く。 一方、玉座で戦いを見物していたバーンは、バランが黒の核晶に気がついたことを察知していた。 ダイ達の前に降り立ったハドラーは、なぜ本気を出さないのかと二人に向かって怒りをぶつけていた。 だが、それを悔しく思っても、ハドラーが自分で自分の胸を殴りつける仕草を見て、思わず身を竦めるダイ。 爆弾のことをハドラーに教えれば戦わずに済むかもと思ったダイは、意を決してハドラーに話そうとする。 どうして、と問うダイに、バランは説明する。 また、バランは自分とダイは竜闘気で生き残れる可能性があるが、地上にいるダイの仲間達は絶対に助からないと断言する。 何か企んでいるのかと、業を煮やしたように近づいてくるハドラーに対して、それをキッパリと否定したバランはギガディンの呪文を唱えた。 これまではハドラーの力を見ていただけだといい、最強剣で勝負すると言い切るバラン。 事情を知っているダイは、突然、戦う意志を見せるバランに戸惑うが、バランはハドラーの黒の核晶をこの場で爆発させると決めた。 無茶だと反対するダイ。 ダイ『(強さだけなら、誰よりも……)』 ダイの答えに満足し、ダイを信頼していると告げるバラン。 ギガディンで天井に開いた穴から地上に飛ぶようにと言うバランに、ダイも上を見上げる。大きく開いた穴からは、暗雲の空が垣間見えた。 お互いの力の高ぶりを実感し、ハドラーはさも楽しげに現状を語り出す。 見守っているダイは、自分も力を貸した方がいいのではないかと考え出す。手にした剣を鞘に収め、竜の紋章を手に浮かべて黒の核晶爆発を抑えるための準備を始めた。 しかし、バランは振り向きもせずにそれを止めた。 ダイは一瞬迷うように俯き、それから決意を決めた目で顔を上げた。 その時、空に浮かんでいた床の欠片のいくつかが、落下して堅い音を響かせた。 そして、ついにバランはハドラーに攻撃を仕掛ける。 両者が激突する前に、ダイは空中へひょいと跳び上がるが、その目は二人の姿に釘付けにされたままだ。気になって仕方が無いのか、空中で動きが止まる。 バランのギガブレイクと、ハドラーの超魔爆炎覇が同時に打ち出される。ハドラーの魔炎気に一瞬怯むバラン。 腕を切られた痛みに、今度はハドラーが怯み、一歩後ずさる。 天井の穴から出る寸前だったダイも、それを見て思わず振り返った。だが、その目が驚きに見開かれる。 バランの必殺の一撃は、確かに狙い通りハドラーの首を捉えていた。だが、刃がわずかに首に食い込んだだけで、致命傷とはほど遠い。 拳を握りしめ、バランヘと爪を向けるハドラー。 ハドラー「ダ……ダイ……ッ!?」 戸惑うようなハドラーの爪から、ダイの身体が抜け落ちて落下していく。ゆっくりと落ちる我が子の姿を見て、バランは我を忘れて叫んでいた。 バラン「ディ……ディーノ!?」
意外な成り行きに戸惑いと怒りを感じるハドラーだったが、バランのそれはハドラー以上だった。苛立りのままにハドラーを蹴り飛ばし、壁に叩きつけるバラン。 ハドラーがその後どうなったのか目も向けず、バランは落下よりも速い速度でダイの元へと舞い降りる。真魔剛竜剣を床に突き立て、バランはダイを抱え上げて必死に「ディーノ」と呼びかける。 返事も出来ずにぐったりしているダイの傷の深さに、さすがのバランも焦りを感じる。 バランの失敗を責めることなく、前に戦った時のギガブレイクとの威力の差を疑問に感じるダイ。 が、その時、背後にハドラーが降り立った。 その質問に答えると言いながら、床からヌゥッと現れたのはキルバーンだった。 死神が殺されちゃ洒落にならないと、ふざけて応えるキルバーン。 キルバーンの血液は魔界のマグマと同じ成分であり、金属に対する腐蝕能力がある。そのせいで、真魔剛竜剣の切れ味は半減していた。 これは自分の呪いだと言うキルバーンの目は、冷たい光を放っていた。 ハドラーはキルバーンに不信感を持っている様子だが、キルバーンはピロロにハドラーの傷を治すようにと言いつける。 治療中、キルバーンはフェアな勝負を望むハドラーが仏心を出さないよう、念を押して釘を刺す。 秘密を知られていることに激昂しかけるハドラーだが、わざとらしくもピロロが治療が終わったとはしゃいだせいで遮られる。 それを見て、目を見開くバラン。 ふざけた口調で激励の挨拶を残し、キルバーンは立ち去った。 しかし、それでもハドラーに迷いはない。 だが、バランは立ち上がろうともしない。 瀕死の息子を庇うバランが無防備になると分かっても、ハドラーに手を抜く気は無い。 ハドラー渾身のイオナズンは、破けた天井の穴から地上にまで轟くものだった。 イオナズンに耐えたのは、未だにハドラーに背を向けたままのバランでは鳴く、瀕死ながらも立ち上がったダイの紋章の力によるものだったからだ。 それでもダイに無理をするなと言うバランだったが、ダイはこんなのは嫌だと訴える。 それを聞いたバランは、ドラゴンファングを無言のまま見下ろした。 ダイを見詰めるバランの目に、フッと優しさが宿る。 バラン「分かった。おまえの言う通りにしよう」 それを聞いて、嬉しそうな顔で振り返るダイ。 戸惑い、ふらつくダイに、バランは問いかける。 ダイ「それは……じいちゃんが……」
ダイ『おれがデルムリン島に流れ着いて……おれの揺り籠……そこにあったプレートが、Dの文字しか無かったから……じいちゃんは本当の親のつけた名前と、頭文字だけでも……一緒にって……ッ。なんでこんなに……眠いんだよ……』 必死で眠気に抗うダイに、バランは彼に催眠魔法をかけたことを明かす。戦いは自分に任せてゆっくり眠れというバランに、猛反発するダイ。 とうとう立っていられなくなって、崩れ込むダイはバランの膝に取りすがる。 バラン「だが、私とソアラがつけた名も、心の片隅で覚えておいてくれ」 彼が思い出すのは、揺り籠に眠っていた頃のディーノの姿だった。テランの小さな小屋で、ソアラが台所仕事をしてる間、バランは揺り籠で寝ているダイを見守っていた。 バラン「ディーノ……アルキード王国の言葉で、強き竜という意味だ」 森の中にぽつんとある、王宮などとは比べるのもおこがましいほど小さな小屋。
ダイ「これが……最後なんて……いやだ……ッ! こんなの……ないよ……」 必死にバランに膝にすがるダイの手から、力が抜け落ちる。 倒れ込むダイを、バランは優しく抱き留める。 若き日のバラン「そぉーら、おやすみ、ディーノ。眠っておくれ」 呼びかけるも、揺り籠でわんわん泣き続ける小さな赤ん坊のディーノ。 バラン「おやすみだよ、ディーノ」 内心焦りながらも、ディーノの両脇を手で支え、高い高いを繰り返すバラン。だが、ディーノは身をよじらせて泣くばかりだ。 バラン「どうしたんだい、ディーノ?」 ソアラ「はぁ……それじゃ、逆効果よ」 苦笑しつつ、ソアラはディーノを優しく胸に抱き、横に揺する。 ソアラ「さあ、お休み、ディーノ……おやすみなさい」 若い娘とは言え、母でもあるソアラの手にかかるとあっと言う間にディーノはすやすやと寝息を立てる。 ソアラ「もう、あなたったら。寝かしつけるの、いつまで経ってもヘタなんだから」 そう言ってから、ソアラはとびきりの笑顔で笑った。
バラン(ああ……そうだよ、ソアラ。相変わらず、寝かしつけるのがヘタだな……) ダイを壁際、床に突き立った真魔剛竜剣の後ろへと移動させるバラン。愛おしげにダイを見つめるバランだが、完全に寝入ったダイはぐったりとうな垂れたままだ。 しかし、その優しい目は、すぐに一転して鋭い目へと取って代わる。 親子の時間が終わったのを見て、ハドラーが前へと進み出てきた。 その手からは、すでに赤い血がしたたり落ちていた。 見る間に、バランは竜魔人へと姿を変えていく。 先手必勝とばかりに、バランに襲いかかるハドラー。 バラン「死ね、ハドラー。私も地獄まで付き合ってやる!!」 苦痛に喘ぐハドラー。 《感想》 息もつかせぬ、圧倒的なド迫力バトル! ところで、冒頭の戦いの時にハドラーが見せた魔法の際、原作ではダイが「なにっ!?」バランが「イオ……!?」と口にしていましたが、アニメではここがカットされていましたね。 ダイとバランのバリアー、原作では足がはみ出ていましたが、アニメでは全身がきちんと隠れる大きさになっていました。 バーンとミストバーンの会話で、原作でミストバーンが「え!?」と聞きかえす台詞と、バーンの「いざとなったら〜」の部分がカットされていました。 でも、ミストバーンの見つめる水晶玉の光景から、現実のハドラーの動きに合わせていく場面転換は、実にいいですね♪ ハドラーがなぜ手加減すると怒るシーンも、台詞が大幅カットされていました。特にダイがモノローグで(おっ、おじけづきもするよっ!! 誰だって敵と一緒に吹き飛びたくなんかない……っ!)とのぼやきがカットされたのが残念。 でも、ハドラーが自分の胸を叩くのにビビるダイがしっかり出てきたのは、嬉しいですね。冷静に考えればそれぐらいで爆破するわきゃないんですが(笑) 一瞬、目を閉じたダイの視点に合わせ、画面全体が瞬きをするように暗転する演出も良かったです。 (いくらあいつだってだって自爆させられて死ぬのは嫌なはずだっ!!)の部分もカットされていましたし、ダイの思考に関する部分はずいぶんとカットされている印象ですね。 バランの説明もカットや改変が多かったのは予測していましたが、残念だったのは地上にいる仲間達が助からないというシーンで、ポップ達の出番までカットされていたこと! 代わりのようにハドラーの目に映るダイ達親子のカットが挿入されていましたが……短くともなかなか手が込んでいい絵ではありますが、ポップの出番が欲しかったのにー。 バランのギガディン、海底でも通用するんですね(笑) バランがダイに信用について問いかける所は、たっぷりと間をとっていていいですね。 ダイの返答の時の表情も原作をベースとしながらも、ちょっと反抗的な雰囲気を漂わせているのがなんとも言えません! ダイとバランとのやり取りも、間を大切にとっている印象が実に良かったです。特に、ダイの目にバランの後ろ姿が映り込むシーンがお気に入りです。 バランとハドラーの斬り合い、ド迫力! ダイがバランを庇って傷つくシーン、血が飛び散るシーンは派手な割には、ダイに爪が刺さったシーンでの出血はほぼ皆無でしたね。原作ではショッキングなほどの流血量でしたが、アニメではすごく抑えめでした。 ですが、スローモーションのような緩やかな落下と、ダイを思わずディーノと呼ぶバランの取り乱した表情が、重傷差を間接的に表現していていい感じですねえ。 ダイの表情が驚きから、目の光が消え、苦痛の表情へと変わっていく変化が細かいです。 バランが真魔剛竜剣を床に突き立てるシーン、原作ではダイに回復魔法をかけるタイミングで発生しますが、アニメではダイを抱き上げる前にやっています。 キルバーンの登場、相変わらず不気味でいい味を出していますね。 キルバーンとピロロのコンビでの動きは、いつ見ても怪しげでいい感じです。 バランがダイを庇いながらイオナズンを受ける時、バランの目にダイの顔が映り込む演出は良かったですねえ。 ダイの傷跡、アップにすればするほど、血の量を最低限に抑えているせいで重傷さが感じられないのが残念ですね。原作と同じに、とまでは言いませんが、もう少し間接的な描写でいいから重傷さをアピールして欲しいです。 そして、出血は抑えられるだけ抑えるのに、ハドラーのヘルズチェーンで負った縛られた後のようなうっ血の後だけは、やたら律儀に描かれているのですが(笑) 出血は駄目で、緊縛痕はOK? いやいや、シリアスな回にそんな疑問を抱いちゃ駄目ですね、うん! ダイがバランに一緒に戦おうと訴えるシーン、ハドラーがダイが話し始めた頃に、画面の隅でスッと身を引くように構えを解いていたのが印象的でした。 後、原作ではバランはドラゴンファングを手に握り込んだままでしたが、アニメではいつの間にか床に落としていますね。 バランのラリホーマシーンで、ダイがバランの服にしがみつくシーンはアニメの改変ですが、その必死なしがみつき方がいじらしくて泣けてきます! ブラスじいちゃんの回想シーンを、ダイ自身に語らせるとは。 バランの回想シーンも、実にいいですねえ。 そして、全く揺れもせずにテーブルの上に固定されているあの籠では、揺り籠とは呼べないような気もしましたね。というか、赤ん坊を寝かせるのならせめてもう少し大きめにして、寝返りぐらいは出来るサイズにしてあげて! しかし、それ以上にいいなと思ったのは、ダイを眠らせた後の回想シーン。 でも、回想でのバランの寝かしつけ……思いっきり高い高いをしてますよっ!? それは、退屈してむずがっている子供の気の反らす時に有効な技っ。 と、余分な咆哮にツッコみたくもなりましたが、若き日のバランとソアラの愛に溢れるやり取りには実に感動しました! 原作では、ソアラはちょっと怒ったようにダイをバランからひったくっている描写があったので、意外と気が強い感じの人かなとも思っていたのですが、アニメのソアラのもの柔らかさ、思い出の中の彼女に言い返すバランの声の優しさが、実に感動的です。 原作ではバランはダイを支え、すぐに壁にも垂れかけさせた印象でしたが、アニメではダイをお姫様抱っこして数歩、歩いていますね。 いや、それは置いておいて! 最初から最後まで戦い満載で実に見応えのある回でしたが……個人的に不満が一つ。 予告でさえ、ポップ達と親衛騎団の戦いと言いつつ、映っていたのはハドラーとバランでしたし! 後、バーン様がさりげに目立っていました。 |