『受け継がれる心』(2021.11.6) |
《粗筋》 あまりにも巨大なバーンパレスを、戦きながらも上空から見下ろすポップ。 マァムに聞かれ、バーンパレスの全容について答えるポップ。 一旦、ルーラで逃げるかと仲間達に問いかけるポップに、マァムはつかつかと歩み寄り、ポップの襟首をひっつかむ。 首を締め上げられうめいているポップをよそに、ヒュンケルは今の爆発がハドラーとの戦いのせいだろうと判断していた。 しかし、探そうにもバーンパレスはあまりにも広すぎる。上空から見たポップにそれらしい場所はないか問い詰めるマァムだが、無意識に力を込めすぎていたせいかポップは息が詰まって目を回していた。 ポップ「……いや……たぶん……そんなものは……なかったとおもうけど……ッ」 二人の騒ぎの中、ヒュンケルはじっと一方向を見つめていた。 先端に階段があるのを見つけたヒュンケルは、そここそが魔宮の門だと判断した。 目視できる範囲ならルーラ同様移動出来ると自信たっぷりに答えたポップは、みんなに側に寄るようにと手招きする。 ダイとバランが砕いた跡のある魔宮の門を見上げ、階段を走って昇る。ゴメちゃんは気が逸るのか、先頭を飛んでいた。壊れた門をくぐり抜け、急ぐポップ達。 ようやく階段を上りきり、明るい光の差し込む場所へ辿り着く。無残に荒れた床の広がるその場で、上を見上げた彼らは驚きに目を見張った。
それに対し、バーンは意味ありげな笑みを浮かべ、『来客』をもてなす意志があることをほのめかす。言葉通りとは思えないその言葉を、ミストバーンは無言のまま聞いていた。 ダイを膝枕していたマァムは、ダイに動かないようにと心配して声をかける。が、ダイは周りを見回して仲間の無事を確かめた。 ダイ「ヒュンケル……みんなも無事だったんだね。そうか……うまく爆発を抑えることができたんだね……あの人が」 嬉しそうな顔でそう言うダイに、ハッとして目をそらすマァム。それに違和感を覚えたダイは、ポップやヒュンケル、クロコダインも自分と目を合わせないことに気づいた。 いぶかしがりながら起き上がり、あの人に何かあったのかと尋ねるダイは、空を見上げる。 自分の見ているものが理解しきれないように、呆然とするダイ。 なんで、あんな姿になったのか――。 その意味を悟り、息をのむダイ。 その時、空中に浮かんでいたバランが、バランスを崩した。 泣きながら、ダイは両手を目一杯伸ばして走りよる。だが、バランを受け止めるために差し伸べた手をすり抜けるように、バランの身体は床にたたきつけられた。 受け止め損ねたことにショックを受けながらも、ダイはバランの側に屈み込み、しっかりしてと声をかける。だが、目を閉じたバランは動かない。 マァムに回復魔法を頼むダイだが、彼らは沈痛な表情で目を閉じるばかりだ。 すがりつくように、強くマァムの名を呼ぶダイ。 それを制止する声に、ダイもマァムもハッとする。 バラン「おまえなのか……ダイ? もう……目が見えん……」 弱々しく差し出されたバランの手は、ダイとは全く違う方向へ向けられる。歯を食いしばり、溢れる涙を堪えようとするダイ。 バランは仲間が無事かと、問いかける。 仲間が無事だったと告げるダイに、バランは良かったなと言いながらも、仲間を困らせないようにと諭す。
力を振り絞るバランの後ろには、ダイがいた。
ボロボロになった、だがそれでも自分よりもずっとたくましい手を握りしめるダイ。泣きじゃくるダイの涙が、その手にポタポタとしたたり落ちる。 自分は真の竜の騎士ではないと言い、自分には人間の心が無かったことを認めた。 自分の死を嘆くなと言うバランは、育てた者こそが父だと言った。 なんと言ったのかと問い返すバランに、ハッとするダイ。 そんなダイに、バランは苦しい息の中、それでも息子へと言葉を紡ぐ。 バラン「泣くな……ダイ……強く…………強く、……いき……ろ……」 ギュッと握り込まれたバランの手から、力が抜け落ちる。 大きく目を見張り、ダイは叫ぶ。 ダイ「と……父さぁああああんっ!」 小さな勇者の悲痛な泣き声が、そこら中に響き渡る。それを、仲間達は黙って見守っていた。
仲間達はただ、目を閉じ、あるいは背を向けたまま、沈黙の中でダイの悲しみが収まるのを待っていた。 ゴメちゃんがダイに触れた途端、ダイの身体が光り輝き、澄み切った音が響き渡る。仲間達も異変に気づき、ダイに注目する。 ダイの意識は、いつの間にか光の溢れる場所にいた。眩い光の中には、父、バランのシルエットが佇んでいた。 死に際の姿ではなく、勇壮な竜の騎士として佇むバランは、ダイに泣くなと語りかけてくる。 ダイ「父……さん……」 涙をポロポロこぼしながら、バランを見上げるダイ。 バラン「戦うのだ、息子よ。そして、大魔王バーンを倒せ!!」 語りかけるバランの姿が、ゆっくりと遠ざかっていく。 声に出して、父を呼ぶダイ。 ダイはバランを見下ろし、改めて思う。 ダイ(父さんの……父さんの心が、おれの中に入ってきた……。初めて知った……父さんが一度も語ったことのない、言葉にしなかった想いを確かに聞いた……) まだ目に涙は滲んでいるが、もうダイは泣いてはいなかった。泣くのを必死で堪えているような顔でバランを見た後、ダイは不器用な、だが心のこもった仕草でバランの手を胸の上に置いた。 ダイの反対側にそっとやってきたマァムは、そっとバランの反対側の手を取り、手を組み合わせるようにおさめてあげる。 バランから数歩離れ、手を上げて涙を拭おうとしたダイの肩にゴメちゃんがやってきて、心配そうに寄り添う。そんなゴメちゃんの頭を撫でるダイの顔には、小さな笑みが浮かんでいた。 ポップ「ダイ。一度、地上に戻ろう」 背を向けたままの勇者は、何も言わなかった。 だが、その沈黙が答えになっていた。 そんなポップを辛そうに見つめるマァムは、無言のまま目を閉じる。彼女もまた、ポップに賛成はできないのだ。 親を亡くす苦しみを語るヒュンケルは、昔、目の前で砕け散ったバストスの姿を思い出していた。 ヒュンケルとクロコダインは、バランの死は先へ進むためのチャンスだと説き、ここで退いてはバランの死が無駄になってしまうと強く主張し、ためらうポップを説得しようとする。 マァム「私達は、世界のみんなのために戦っているんだもの……。ダイのお父さんだって、きっと……!」 ポップ「そりゃ、そうかもしれねえけど――」 まだ言いつのろうとするポップを止めたのは、ダイだった。 ダイ「ポップ。おれのことなら、心配いらないよ」 大丈夫だから行こうと言うダイに、ポップは親父さんをほったらかしにしていくのにいいのかと、心配そうに問いかける。 ダイ「違うよ。父さんは、ここにいる……!」 その言葉を聞いて、ポップの目からぶわっと涙があふれ出す。 だが、その時、どこからか笑い声が聞こえてきた。 その意味に気づき、表情を引き締めるヒュンケル。 その中央部に揺らぎながら人影が映し出されるのを見て、強敵への警戒に歯を食いしばるダイ。 吹き荒れる風に飛ばされないよう、踏ん張る一同。 キルバーンとミストバーンを従え、彼らよりも一段と高い場所に浮いている大魔王バーンを見て、険しい顔で呼びかけるダイ。 それを聞いて、一歩遅れてマァムも立ち上がり、身構える。 そんな中、ポップは怯えつつも大魔王がよぼよぼのじいさんだと軽口を叩き、その場の雰囲気を変えようとするが、ヒュンケルもクロコダインもそんな台詞などまるで耳に入っていないかのように、無反応だ。 見事に滑った気まずさにポップは内心愚痴るが、反応して軽口を叩いてきたのは敵であるキルバーンだけだった。 特に元魔王軍の二人には衝撃が大きいようだと揶揄するキルバーン。間接的に接していただけに、バーンの恐ろしさが肌身に染みているからこそ恐怖が大きいと、訳知り顔で言ってのける。 その言葉の正しさを証明するかのように、ヒュンケルもクロコダインも反論もせずに強ばった表情のままだった。 ヒュンケル達の反応が、ハドラーがバーンに初めて会った時と同じだという根拠を上げられ、言葉に詰まるポップ。 だが、そんなキルバーンにつまらぬ脅しをよせと、制止の声をかけたのはバーンだった。 ゆっくりと、床の上に降り立つバーン。 バーンはまるで出来の良い部下を褒めるかのごとく、ダイ達の奮闘を讃えだす。 ハドラーやハドラー親衛騎団の力はダイ達を上回ってたし、黒の核晶もあった。勇者一行が敗北すると確信していたからこそ、バランの助力があったとは言え、ダイ達が全員そろってここにいるのは奇跡だとさえ言ってのけた。 バーンの意図がつかめないまま、だからどうする気だと問いかけるダイ。 敵であるはずのダイ達の健闘を讃え、ダイ達が一番欲する物が……自分の命だろうと言い当てるバーン。 だから、チャンスを与えるため、二人に手出しをさせずに自分の身でダイ達と戦ってやると言うバーン。 その中で、ポップは敵が完全に遊んでいることを悟る。絶対的な優位を確信しているからこそ、手を抜いて戦ってやると言える余裕……舐められたことに立腹するポップ。 バーンの優雅さすら感じさせる挑発の言葉に、ダイは例えキルバーンやミストバーンが一緒でも戦うと言い返した。そのためにここまで来たと言うダイにたいし、バーンはどこまでも余裕に満ちている。 バーン「では、相手をしよう……!」 最大限の警戒を払うダイ達と違い、バーンの顔は少しばかり気の引かれる見世物を前にしたかのような、わずかな笑みが浮かんでいる。 《感想》 な……、涙が……っ(どぼどぼどぼどぼっ) ところで、冒頭シーンでポップがみんなの所に戻ってくる際、着地失敗して尻餅をつくシーンが改変されていました。 また、ポップがバーンパレスを見た感想は、原作では独り言になっていましたが、アニメではマァムに聞かれて答える形になっています。 マァムがポップの首を絞めるシーン、ヒュンケルの説明の最中にポップがうめきつつ小声でマァムの名前を呼んでいました。これも原作にはないので、アニメの改変というか、声優さんのアドリブっぽいですね。 マァムの台詞に、微妙な改変が。 原作マァム「どこかにダイ達も入り込んでいるはずよ!」 マァムの首絞めシーンがあったのは嬉しかったですが、バタバタもがく描写が省略されたのと、三分経過してポップが回復し、マァムが謝るシーンがカットされたのは悲しいです〜。 でも、アニメではマァムの首締めダメージが軽いという方向性で、ポップはちゃんとマァムの問いに答えていますし、ダメージが軽い分、ヒュンケルが魔宮の門を発見した時もまだ首絞め続行中でした(笑) 原作ではポップは喉元を抑えているので直接首が閉められたダメージが大きそうですが、アニメではマァムが加減した分締め付けが緩やかになり、服を引っ張ったせいで襟の部分に負荷がかかったと解釈しました♪ 短距離ルーラなシーン、原作ではポップはマァムの肩をちゃっかりと抱きしめていましたが、アニメではマァムがポップの腕をちょんとつまんでいるだけでした。 また、この短距離ルーラではポップがコケずにすんだのにマァムが膝をつくことになる珍しい着地シーンになっています。 階段を上るシーンで残念なのは……ゴメちゃんの作画が妙に可愛くないという点ッ。なんか、おめめが普段より小さめでクリクリさが少ないですよ!? ええ、確かにかっこいいカットですし、音も入って迫力がありました。だけど! 原作ではここに、ゴメちゃんも真ん中に加わっていたのにーっ! 原作ではこのシーンでは、ポップはやたらと気負ったような表情をしていたので、5人の中で一番ビビっている感じがして好きだったんですよ。 作画でもう一つ残念なのは、ダイが目覚める際に仲間達が覗き込んでいるシーン。 それにダイがなぜヒュンケルの名を呼んだのかっ。いや、確かにヒュンケルがダイの真正面にいて呼びやすそうでしたけど! でも、原作通りにみんなと呼ぶか、でなければポップの名前を呼んで欲しかったのにー。 後、不満というわけじゃ無いですが、原作ではポップ達は全員、目を閉じていたのが、アニメでは目を伏せる形で目を合わせないように改変されていました。 バラン死亡シーン、真っ白な空にボロボロになったバランが浮かんでいる図が衝撃的でした。原作では髪はまだ黒かったのですがアニメでは白くなったおり、全般的に全身が灰色に染まっている雰囲気で、燃え尽きてしまった状態に見えました。 それでいながら、竜魔人特有の紋章や髪の艶は青い色が残っていて、最後の最後まで力を使っていたんだなと実感させられるシーンになっていました。 落下途中でバランが人間の姿に戻ったのも、アニメの改変。 必死にダイが走りよるシーンがスローモーションで表現されていて、あと一歩の所で伸ばした手が届かないシーンが、可哀相でなりませんでしたよ。 マァムが回復魔法が利かないと説明する時の表情、辛そうでいながらも眉をキリッとさせていて、芯の強さが感じられるいい表情でした。原作ではひたすら辛さに耐えている感じの表情だったので、ここの表情はアニメ版の方が好きです♪ 特に、ダイに説明する時はちゃんとダイを見ているのが、いいですね。原作ではずっと辛そうに目を伏せているのですが、辛い現実から目を背けるのではなく、正面から見据える方が彼女らしいと思います。 ダイとバランのやり取りは、原作よりも間を長めに取って丁寧に描写しているのには感動しました! また、原作よりもダイが泣いているシーンが多く、バランの言葉に対して表情を変化するところを丁寧に演出しているので、感情の起伏がその分大きく感じられます。 ダイがバランにしがみついて泣きじゃくるシーン、原作ではヒュンケルがダイの姿に自分とバルトスの姿を思い出すシーンがありましたが、アニメではヒュンケルがダイをじっと見つめ、目のアップを見せるにとどめていましたね。 バランの手から力が抜け落ち、ダイがそれを支えた時の悲しみの表情がまた、胸に刺さります。 ダイの言葉は、死に際のバランに届けられなかった……残酷ながらそう思えるシーンですが、ゴメちゃんのおかげでバランの魂にはダイの呼びかけが聞こえていたと、そう信じたいですね。 CM後の泣きじゃくるダイのシーン、無音にして風の音だけを聞かせる演出が、また泣けます。 ところで、原作ではゴメちゃんがダイの肩に乗った時点から奇跡がスタートしているんですが、アニメではある程度近づいた段階でダイの身体が光り出しています。 原作ではナレーションを使用し、ダイがバランの想いを知るというシーンになっていましたが、 原作では、ダイが出会う精神体のバランは生きていたときの姿のままであり、最後にシルエットとなって消えていきましたが、アニメでは逆に最初がシルエットになっていますね。 それにしても、正座するマァムが淑やかな印象でいいですねえ。マァムの仕草はダイに比べると洗練されているというか、自然な印象で死者への弔いの気持ちが感じられます。 ゴメちゃんがダイに寄り添うシーン、ほっぺたにすりすりと身体をすりつけるのが、なんともいじらしくて可愛い……っ。 原作では大人びたような、悲しみを一人で堪えているような顔でしたが、アニメでは「一緒に居てくれてありがとう」と言っているような、ホッとしたような表情に感じられます。 原作ではクロコダインの進軍推奨の台詞から言い合いが始まりますが、アニメではポップの撤退宣言からスタートしていますね。 原作ではただ目を閉じているだけなのですが、アニメで動きが加わった分、マァムの迷いや優しさが感じられる気がします。 ヒュンケルが語る親の死の辛さ、原作ではヒュンケルの手が震えていることで顕していましたが、アニメではバルトス父さん崩壊シーンを持ってきましたね。 マァムの説得の台詞、ずいぶんとカットされていました(泣) ダイを休ませたいという台詞だけでも、残しておいて欲しかったのですが。 そして、ダイの大丈夫だという台詞、アニメで聞くと、自分で自分に必死に言い聞かせているような雰囲気が合って、実に良かったです。やっぱり、思いっきり無理をしているんだなぁと感じられるシーンでした。 で、そんな感動をぶち壊すようなタイミングで出てくるキルバーン達(笑) それにしてもミストバーンの台詞、水戸黄門の助さんっぽく聞こえてしかたありませんでした(笑) それにしても切ないまでの悲しみも忘れてしまうぐらい、圧倒的なまでの大魔王バーンの存在感よ……! ラスボス感が半端ないっす! 吹き荒れる風に皆が耐えるシーンで、マァムがバランの上に身を投げ出して庇っているのが、密かに萌えます♪ ところで、ダイ、ヒュンケル、クロコダインは真正面を向いて風に耐えているのですが、ポップは風の勢いに負けたのか後ろを向いています。……と言うことは、ポップの視点からはこの素晴らしい風景が丸見えなのでは!?(笑) と、おふざけついでに、ポップの強がった軽口シーン、仲間からスルーされる滑った感じが思いっきり再現されていたのが嬉しかったです♪ それにしても、ポップの渾身のジョークに付き合ってくれたのがキルバーンだけというのは、ある意味でポップにとって痛恨の一撃かもしれません(笑) しかし、バーン様の余裕っぷりがすごすぎです。 ところで、エンディングに出てくる壊れた壁や床は、バランがダイを守り抜いた跡だったと今回の話を見て、ようやく気がつきました! 来週のバトルは予告だけで、もう、ハラハラっ。マァムの髪の毛が、一瞬とは言え下ろされるシーンが映っていました。 |