『受け継がれる心』(2021.11.6)

 

《粗筋》

 あまりにも巨大なバーンパレスを、戦きながらも上空から見下ろすポップ。
 観察を終えたポップは、一直線に仲間達の所へと戻った。だが、勢いをつけて飛びすぎたせいか、動揺したせいか、着地に失敗して尻餅をつく始末。

 マァムに聞かれ、バーンパレスの全容について答えるポップ。
 クロコダインは手近な石材を確かめるようにつついた後、殴りつけてヒビを入れた。細かな破片が自動的に空中に浮くのをつまみ、彼はそれが石と金属の中間のような物質で出来ていることや、大魔王の魔法力で浮いているのだろうという推理を披露する。

 一旦、ルーラで逃げるかと仲間達に問いかけるポップに、マァムはつかつかと歩み寄り、ポップの襟首をひっつかむ。
 ダイとその父親を置いて逃げられるわけがないと怒るマァム。

 首を締め上げられうめいているポップをよそに、ヒュンケルは今の爆発がハドラーとの戦いのせいだろうと判断していた。
 それを聞き、急いでダイ達を探そうと提案するマァム。

 しかし、探そうにもバーンパレスはあまりにも広すぎる。上空から見たポップにそれらしい場所はないか問い詰めるマァムだが、無意識に力を込めすぎていたせいかポップは息が詰まって目を回していた。

ポップ「……いや……たぶん……そんなものは……なかったとおもうけど……ッ」

 二人の騒ぎの中、ヒュンケルはじっと一方向を見つめていた。
 そして、一方向を指さす。
 建物の一部が壊れ、煙の上がっている部分……上から見たポップは、そこが鳥の頭の部分だと断言する。

 先端に階段があるのを見つけたヒュンケルは、そここそが魔宮の門だと判断した。
 クロコダインはポップに全員をあそこまで運べないか、問いかける。

 目視できる範囲ならルーラ同様移動出来ると自信たっぷりに答えたポップは、みんなに側に寄るようにと手招きする。
 一瞬で階段部分に移動する一同。

 ダイとバランが砕いた跡のある魔宮の門を見上げ、階段を走って昇る。ゴメちゃんは気が逸るのか、先頭を飛んでいた。壊れた門をくぐり抜け、急ぐポップ達。

 ようやく階段を上りきり、明るい光の差し込む場所へ辿り着く。無残に荒れた床の広がるその場で、上を見上げた彼らは驚きに目を見張った。






 その光景を見張っていた悪魔の目玉は、生存者が移動したことをバーン達に報告する。
 ダイ達を助けに向かった一行をどうするか、問うキルバーン。

 それに対し、バーンは意味ありげな笑みを浮かべ、『来客』をもてなす意志があることをほのめかす。言葉通りとは思えないその言葉を、ミストバーンは無言のまま聞いていた。





 
 ぼやけた視界に映る仲間達の姿が、ゆっくりと焦点を結んでいく。ぼんやりと目を開けたダイに、ゴメちゃんが鳴きながら近寄ってくる。
 ゴメちゃんを認め、笑顔を浮かべるダイ。

 ダイを膝枕していたマァムは、ダイに動かないようにと心配して声をかける。が、ダイは周りを見回して仲間の無事を確かめた。

ダイ「ヒュンケル……みんなも無事だったんだね。そうか……うまく爆発を抑えることができたんだね……あの人が」

 嬉しそうな顔でそう言うダイに、ハッとして目をそらすマァム。それに違和感を覚えたダイは、ポップやヒュンケル、クロコダインも自分と目を合わせないことに気づいた。

 いぶかしがりながら起き上がり、あの人に何かあったのかと尋ねるダイは、空を見上げる。
 そこには、ボロボロになったまま宙に浮かんだ魔人の姿があった。
 真っ黒だったはずの髪が白く変化し、羽は千切れてあちこちが破けている。

 自分の見ているものが理解しきれないように、呆然とするダイ。
 だが、それがバランだと気づき、ダイは戦慄く。
 立ち上がり、バランの方向へ歩き出すダイを、誰もとめようとはしなかった。

 なんで、あんな姿になったのか――。
 動揺するダイの呟いた言葉に、答えたのはヒュンケルだった。彼はダイに、自分の居た場所をよく見るようにと悟る。
 
 周囲の床や壁は大きく削れ、激しい爆破があったことをこの上なく雄弁に物語っていた。
 だが、そんな中でダイが座り込んでいた場所だけが――バランの背中に守られていたその場所だけが、奇跡のように無傷だった。。

 その意味を悟り、息をのむダイ。
 何が起こったのか、ヒュンケルには分かりはしない。だが、それでもバランがダイを守るために全竜闘気を使い果たしたことだけは確信できた。
 そして――。

 その時、空中に浮かんでいたバランが、バランスを崩した。
 浮力を失い、石のように落下するバランを見て、ダイは彼に駆け寄った。落ちながらバランの身体は竜魔人から人間の姿へと変化していく。

 泣きながら、ダイは両手を目一杯伸ばして走りよる。だが、バランを受け止めるために差し伸べた手をすり抜けるように、バランの身体は床にたたきつけられた。

 受け止め損ねたことにショックを受けながらも、ダイはバランの側に屈み込み、しっかりしてと声をかける。だが、目を閉じたバランは動かない。
 マァム、ポップ、クロコダインも駆け寄ってきた。

 マァムに回復魔法を頼むダイだが、彼らは沈痛な表情で目を閉じるばかりだ。
 一度、目を開けたマァムの目には憂いが満ちていた。
 滲む涙を振り切るように再び目を閉じたマァムは、首を小さく横に振った。

 すがりつくように、強くマァムの名を呼ぶダイ。
 だが、マァムは辛そうに、それでもはっきりとした意志を込めてダイを見返した。回復系呪文は生命力が残っている肉体にしか効果は無いと説明するマァムに、それでもなお彼女にしがみつき、ベホイミをかけてくれと食い下がるダイ。

 それを制止する声に、ダイもマァムもハッとする。
 振り返ると、バランが目を開けていた。だが、その目はうつろであり、全く光の感じられないものだった。
 それでもバランの言葉を聞いて、ダイの目から新たな涙が溢れる。

バラン「おまえなのか……ダイ? もう……目が見えん……」

 弱々しく差し出されたバランの手は、ダイとは全く違う方向へ向けられる。歯を食いしばり、溢れる涙を堪えようとするダイ。
 バランの側に再びしゃがみ込み、伸ばされた手を両手でしっかりと握り込んで自分はここにいると告げるダイ。

 バランは仲間が無事かと、問いかける。
 すでに彼は目の前にいる者を見るどころか、気配を感じる力すらなくなっていた。

 仲間が無事だったと告げるダイに、バランは良かったなと言いながらも、仲間を困らせないようにと諭す。
 自分はもう助からないというバランの言葉に、ショックを受けるダイ。






 バランはダイに語りながら、爆発の瞬間を思い出す。
 ハドラーと繋がった黒の核晶の爆破は、もう止められない段階だった。バランがドルオーラの構えで握り込み、ハドラーから引きちぎる。だが、いくら竜闘気を注ぎ込んでも光は膨れ上がっていく一方だった。

 力を振り絞るバランの後ろには、ダイがいた。
 目だけで後ろを確かめたバランは、安らかに眠る我が子の顔を見た。
 気合いを込め、握り込んだ黒の核晶めがけてドルオーラを放った。凄まじい爆破の規模をドルオーラで押さえ込み、被害の方向を自分の前方へと向けた。
 その結果、バランの背後に居たダイは無傷だった。






 
 もう、自分の身体には一片の生命力も残っていないと、バランは淡々と告げる。
 だが、ダイはそれを受け入れきらない。
 バランの言葉を嘘だと否定し、真の竜の騎士は死んだりしないと泣きじゃくる。
 その姿を、ヒュンケルは静かに見つめていた。

 ボロボロになった、だがそれでも自分よりもずっとたくましい手を握りしめるダイ。泣きじゃくるダイの涙が、その手にポタポタとしたたり落ちる。
 そんなダイに、バランは泣くなと言った。

 自分は真の竜の騎士ではないと言い、自分には人間の心が無かったことを認めた。
 ダイと、ダイを育てたモンスターの正しさを褒めるバランに、ダイはいっそう激しく泣き出す。

 自分の死を嘆くなと言うバランは、育てた者こそが父だと言った。
 それを聞いたダイは、じいちゃんはじいちゃんだと反論した。父さんとは違うと言うダイだが、その言葉は小さすぎて瀕死のバランの耳には届かなかった。

 なんと言ったのかと問い返すバランに、ハッとするダイ。
 と、クロコダインがその大きな手をダイの肩に置いた。最後だから、父さんと大きな声で呼んでやれと背中を押すクロコダイン。
 すぐには答えられず、ダイはしゃくり上げる。混乱する気持ちを抑えようとするように、目を閉じ、何度もしゃくり上げるダイ。

 そんなダイに、バランは苦しい息の中、それでも息子へと言葉を紡ぐ。

バラン「泣くな……ダイ……強く…………強く、……いき……ろ……」

 ギュッと握り込まれたバランの手から、力が抜け落ちる。
 辛うじて開けられていた目が、重そうに閉じられつつあった。手から滑り落ちかけたバランの手を、ダイは辛うじて引き留める。
 しかし、もうその手には生命は宿っていなかった。

 大きく目を見張り、ダイは叫ぶ。

ダイ「と……父さぁああああんっ!」

 小さな勇者の悲痛な泣き声が、そこら中に響き渡る。それを、仲間達は黙って見守っていた。
 そして、永遠の眠りに就いたバランは、もう瞼を開けることは無い。ダイの最後の声が聞こえたのか、聞こえなかったのか……。
 だが、苛烈さで知られた竜騎将バランの死に顔は、その壮絶な死とは裏腹に穏やかな表情を浮かべていた――。






 風の音だけが、バーンパレスを震わせていた。
 すでに生命が過ぎ去ったバランの手にすがって泣きじゃくる小さな勇者の声も、その風に吹き飛ばされている。

 仲間達はただ、目を閉じ、あるいは背を向けたまま、沈黙の中でダイの悲しみが収まるのを待っていた。
 その中でゴメちゃんだけは、ダイを心配して近寄った。

 ゴメちゃんがダイに触れた途端、ダイの身体が光り輝き、澄み切った音が響き渡る。仲間達も異変に気づき、ダイに注目する。
 全身から光を放つダイは、驚いたようにバランの手を見つめていた。





 ダイの意識は、いつの間にか光の溢れる場所にいた。眩い光の中には、父、バランのシルエットが佇んでいた。

 死に際の姿ではなく、勇壮な竜の騎士として佇むバランは、ダイに泣くなと語りかけてくる。
 肉体は滅んでも、魂は死なないとバランは言った。

ダイ「父……さん……」

 涙をポロポロこぼしながら、バランを見上げるダイ。
 バランはこれからの戦いは自分も共に行くといい、自分達はずっと一緒だと告げた。

バラン「戦うのだ、息子よ。そして、大魔王バーンを倒せ!!」

 語りかけるバランの姿が、ゆっくりと遠ざかっていく。
 それを見送るダイは、ただ泣きじゃくるばかりだ。だが、バランは立ち上がるようにと強く言い、急速に遠ざかる。
 その姿は、太陽に吸い込まれるように消えていった。





 声に出して、父を呼ぶダイ。
 ふと気がつくと、ダイは現実の世界で青空に浮かぶ太陽を見つめていた。ハッと正気に戻ったダイに、ポップが近づいてきて何があったのかと問いかける。

 ダイはバランを見下ろし、改めて思う。

ダイ(父さんの……父さんの心が、おれの中に入ってきた……。初めて知った……父さんが一度も語ったことのない、言葉にしなかった想いを確かに聞いた……)

 まだ目に涙は滲んでいるが、もうダイは泣いてはいなかった。泣くのを必死で堪えているような顔でバランを見た後、ダイは不器用な、だが心のこもった仕草でバランの手を胸の上に置いた。
 そして、その場に座り込んで黙祷する。

 ダイの反対側にそっとやってきたマァムは、そっとバランの反対側の手を取り、手を組み合わせるようにおさめてあげる。
 それを待っていたようにダイは立ち上がった。

 バランから数歩離れ、手を上げて涙を拭おうとしたダイの肩にゴメちゃんがやってきて、心配そうに寄り添う。そんなゴメちゃんの頭を撫でるダイの顔には、小さな笑みが浮かんでいた。
 そんなダイに、ポップは近づく。

ポップ「ダイ。一度、地上に戻ろう」

 背を向けたままの勇者は、何も言わなかった。
 そんなダイに、クロコダインは労りながらも進軍をほのめかした。それを聞いて、ポップは戦いを続行する気かと強い口調で反論するのに、ヒュンケルは答えなかった。

 だが、その沈黙が答えになっていた。
 ポップは猛然と怒り出し、父親が死んだばかりのダイを気遣って撤退するように言い募る。

 そんなポップを辛そうに見つめるマァムは、無言のまま目を閉じる。彼女もまた、ポップに賛成はできないのだ。
 仲間達に向かってなんとか言えと当たり散らすように怒鳴るポップの肩に、ヒュンケルが手を置いて諭す。

 親を亡くす苦しみを語るヒュンケルは、昔、目の前で砕け散ったバストスの姿を思い出していた。
 親を失った子供の気持ちが分かるからこそ、ヒュンケルの言葉は重い。
 親の死を知らないポップは言い返すことも出来ず、俯いてしまう。

 ヒュンケルとクロコダインは、バランの死は先へ進むためのチャンスだと説き、ここで退いてはバランの死が無駄になってしまうと強く主張し、ためらうポップを説得しようとする。

マァム「私達は、世界のみんなのために戦っているんだもの……。ダイのお父さんだって、きっと……!」

ポップ「そりゃ、そうかもしれねえけど――」

 まだ言いつのろうとするポップを止めたのは、ダイだった。

ダイ「ポップ。おれのことなら、心配いらないよ」

 大丈夫だから行こうと言うダイに、ポップは親父さんをほったらかしにしていくのにいいのかと、心配そうに問いかける。
 だが、ダイは自分の胸をゆっくりと叩いた。

ダイ「違うよ。父さんは、ここにいる……!」

 その言葉を聞いて、ポップの目からぶわっと涙があふれ出す。
 ダイは、もう泣いていなかった。父親の遺志を受け継ぎ、戦おうと決めた小さな勇者を、ポップは泣きながら思いっきり抱きしめる。
 
 ダイがそう言うのなら、自分も最後まで付き合うと言うポップ。ダイの頭を乱暴に撫でて、大魔王を軽く蹴散らして帰ろうと軽口を叩くポップに、ダイの顔にも笑顔が戻った。
 クロコダイン達も、それを聞いて満足そうに頷く。

 だが、その時、どこからか笑い声が聞こえてきた。
 ポップの軽口を揶揄するその声を聞いて、皆、一斉に緊張を取り戻し、周囲を警戒し出す。
 
 探すまでもなく堂々と登場したのは、キルバーンとミストバーンだった。警戒する一同に対して、キルバーンは今の台詞を本人に伝えればいいとからかう。

 その意味に気づき、表情を引き締めるヒュンケル。
 ミストバーンがバーンの登場を告げると同時に、空に不気味な渦巻きが出現し、見る間に広がっていった。

 その中央部に揺らぎながら人影が映し出されるのを見て、強敵への警戒に歯を食いしばるダイ。
 渦は巨大な蛇のような光へと変化し、激しいエネルギーが噴き荒れてダイ達を襲う。

 吹き荒れる風に飛ばされないよう、踏ん張る一同。
 嵐のような暴風がやっと収まり、老齢の魔族が彼らを睥睨する。上を見上げたダイは、初めて見るバーンに驚いていた。

 キルバーンとミストバーンを従え、彼らよりも一段と高い場所に浮いている大魔王バーンを見て、険しい顔で呼びかけるダイ。
 それに対し、バーンは平然と名乗る。
 余こそ、大魔王バーンだと。

 それを聞いて、一歩遅れてマァムも立ち上がり、身構える。
 一番前で大魔王バーンを睨みつけているダイの表情は、いつも以上に気合いが入っている。ヒュンケル、クロコダインの緊迫感も強かった。

 そんな中、ポップは怯えつつも大魔王がよぼよぼのじいさんだと軽口を叩き、その場の雰囲気を変えようとするが、ヒュンケルもクロコダインもそんな台詞などまるで耳に入っていないかのように、無反応だ。

 見事に滑った気まずさにポップは内心愚痴るが、反応して軽口を叩いてきたのは敵であるキルバーンだけだった。
 バーンが見た目通りの相手ではないとみんなが分かっているのだと、得意げに語るキルバーン。

 特に元魔王軍の二人には衝撃が大きいようだと揶揄するキルバーン。間接的に接していただけに、バーンの恐ろしさが肌身に染みているからこそ恐怖が大きいと、訳知り顔で言ってのける。

 その言葉の正しさを証明するかのように、ヒュンケルもクロコダインも反論もせずに強ばった表情のままだった。
 だが、それを見ながらも、根拠はあるのかと反論するポップ。その際、キルバーンを三文死神と呼んで挑発しているが、敵の余裕は崩れない。

 ヒュンケル達の反応が、ハドラーがバーンに初めて会った時と同じだという根拠を上げられ、言葉に詰まるポップ。

 だが、そんなキルバーンにつまらぬ脅しをよせと、制止の声をかけたのはバーンだった。
 素直に従うキルバーンだが、ピロロが「怒られちゃった」などと軽口を叩いている辺り、本気で反省している様子はまるでない。

 ゆっくりと、床の上に降り立つバーン。
 敵が同じ土俵の上に立ったことで、ダイ達の警戒心はさらに強まる。しかし、バーンの口から出たのはダイ達がよくぞここまで来たと褒める、賞賛の言葉だった。

 バーンはまるで出来の良い部下を褒めるかのごとく、ダイ達の奮闘を讃えだす。

 ハドラーやハドラー親衛騎団の力はダイ達を上回ってたし、黒の核晶もあった。勇者一行が敗北すると確信していたからこそ、バランの助力があったとは言え、ダイ達が全員そろってここにいるのは奇跡だとさえ言ってのけた。

 バーンの意図がつかめないまま、だからどうする気だと問いかけるダイ。
 それに対し、バーンは褒美を与えるという。

 敵であるはずのダイ達の健闘を讃え、ダイ達が一番欲する物が……自分の命だろうと言い当てるバーン。
 キルバーンもミストバーンもハドラーに負けず劣らずの強者であり、自分達三人と戦えば絶対に勝ち目はないとバーンは断言する。

 だから、チャンスを与えるため、二人に手出しをさせずに自分の身でダイ達と戦ってやると言うバーン。
 凄まじいまでに上から目線な褒美に、怒りの感情を隠しきれないダイ達。

 その中で、ポップは敵が完全に遊んでいることを悟る。絶対的な優位を確信しているからこそ、手を抜いて戦ってやると言える余裕……舐められたことに立腹するポップ。

 バーンの優雅さすら感じさせる挑発の言葉に、ダイは例えキルバーンやミストバーンが一緒でも戦うと言い返した。そのためにここまで来たと言うダイにたいし、バーンはどこまでも余裕に満ちている。

バーン「では、相手をしよう……!」

 最大限の警戒を払うダイ達と違い、バーンの顔は少しばかり気の引かれる見世物を前にしたかのような、わずかな笑みが浮かんでいる。
 勇者一行と大魔王は、真正面から向かい合った――。

 
 


《感想》

 な……、涙が……っ(どぼどぼどぼどぼっ)
 ダイが可哀相すぎて、見ているのが辛くなるような回でした〜。

 ところで、冒頭シーンでポップがみんなの所に戻ってくる際、着地失敗して尻餅をつくシーンが改変されていました。
 原作ではポップの着地シーンは無く、座り込んで事情を説明するポップのシーンになっていますが、アニメではそれを着地失敗したと解釈したみたいですね。

 また、ポップがバーンパレスを見た感想は、原作では独り言になっていましたが、アニメではマァムに聞かれて答える形になっています。

 マァムがポップの首を絞めるシーン、ヒュンケルの説明の最中にポップがうめきつつ小声でマァムの名前を呼んでいました。これも原作にはないので、アニメの改変というか、声優さんのアドリブっぽいですね。

 マァムの台詞に、微妙な改変が。

原作マァム「どこかにダイ達も入り込んでいるはずよ!」
アニメマァム「どこかにダイ達が入り込んでいった入り口があるはずよ!」

 マァムの首絞めシーンがあったのは嬉しかったですが、バタバタもがく描写が省略されたのと、三分経過してポップが回復し、マァムが謝るシーンがカットされたのは悲しいです〜。
 マァムがポップに怪力をふるうシーンは多いのですが、マァムがそれを謝るシーンは貴重なのに〜。

 でも、アニメではマァムの首締めダメージが軽いという方向性で、ポップはちゃんとマァムの問いに答えていますし、ダメージが軽い分、ヒュンケルが魔宮の門を発見した時もまだ首絞め続行中でした(笑)
 
 やっとマァムから解放された後、ポップが首の後ろを手で擦っている改変はいいなと思いました。

 原作ではポップは喉元を抑えているので直接首が閉められたダメージが大きそうですが、アニメではマァムが加減した分締め付けが緩やかになり、服を引っ張ったせいで襟の部分に負荷がかかったと解釈しました♪

 短距離ルーラなシーン、原作ではポップはマァムの肩をちゃっかりと抱きしめていましたが、アニメではマァムがポップの腕をちょんとつまんでいるだけでした。
 全員、つかまるというより、触れているだけという雰囲気ですね。

 また、この短距離ルーラではポップがコケずにすんだのにマァムが膝をつくことになる珍しい着地シーンになっています。

 階段を上るシーンで残念なのは……ゴメちゃんの作画が妙に可愛くないという点ッ。なんか、おめめが普段より小さめでクリクリさが少ないですよ!?
 階段途中で、マァム、ヒュンケル、クロコダイン、ポップの四人の顔のアップが四分割で表現されるシーンにも不満がっ。

 ええ、確かにかっこいいカットですし、音も入って迫力がありました。だけど! 原作ではここに、ゴメちゃんも真ん中に加わっていたのにーっ!
 ついでに言うのなら、ポップの表情がアニメだと普通にかっこいい目の顔だったのも、ちょっと残念。

 原作ではこのシーンでは、ポップはやたらと気負ったような表情をしていたので、5人の中で一番ビビっている感じがして好きだったんですよ。

 作画でもう一つ残念なのは、ダイが目覚める際に仲間達が覗き込んでいるシーン。
 ここで、原作ではマァムの前髪が落ちることで、膝枕状態で上から覗き込んでいる角度を強調していたのですが、アニメでは前髪が普通に描かれていました。
 
 マァムが目をそらしてそっぽを向くシーンも、原作では目を下に落として悲しそうにしているのに対し、アニメではちょっと不満げなツンデレさん風の軽さなのが不満です。ああいうのは、ポップとの口喧嘩の際に披露して欲しかったですよ。

 それにダイがなぜヒュンケルの名を呼んだのかっ。いや、確かにヒュンケルがダイの真正面にいて呼びやすそうでしたけど! でも、原作通りにみんなと呼ぶか、でなければポップの名前を呼んで欲しかったのにー。

 後、不満というわけじゃ無いですが、原作ではポップ達は全員、目を閉じていたのが、アニメでは目を伏せる形で目を合わせないように改変されていました。

 バラン死亡シーン、真っ白な空にボロボロになったバランが浮かんでいる図が衝撃的でした。原作では髪はまだ黒かったのですがアニメでは白くなったおり、全般的に全身が灰色に染まっている雰囲気で、燃え尽きてしまった状態に見えました。

 それでいながら、竜魔人特有の紋章や髪の艶は青い色が残っていて、最後の最後まで力を使っていたんだなと実感させられるシーンになっていました。
 原作のこのシーンではバランの額の紋章は描かれていなかったので、アニメの改変ですね。

 落下途中でバランが人間の姿に戻ったのも、アニメの改変。
 原作では竜魔人から人間に戻るシーンは描写されていなかったので、なんだか新鮮でした。
 竜魔人バージョンでは白くなってしまった髪が、人の姿に戻った時には黒くなっていましたね。

 必死にダイが走りよるシーンがスローモーションで表現されていて、あと一歩の所で伸ばした手が届かないシーンが、可哀相でなりませんでしたよ。
 手を広げたまま、ショックを受けて立ちすくむ姿が、実に哀れでした。

 マァムが回復魔法が利かないと説明する時の表情、辛そうでいながらも眉をキリッとさせていて、芯の強さが感じられるいい表情でした。原作ではひたすら辛さに耐えている感じの表情だったので、ここの表情はアニメ版の方が好きです♪

 特に、ダイに説明する時はちゃんとダイを見ているのが、いいですね。原作ではずっと辛そうに目を伏せているのですが、辛い現実から目を背けるのではなく、正面から見据える方が彼女らしいと思います。

 ダイとバランのやり取りは、原作よりも間を長めに取って丁寧に描写しているのには感動しました! また、原作よりもダイが泣いているシーンが多く、バランの言葉に対して表情を変化するところを丁寧に演出しているので、感情の起伏がその分大きく感じられます。

 ダイがバランにしがみついて泣きじゃくるシーン、原作ではヒュンケルがダイの姿に自分とバルトスの姿を思い出すシーンがありましたが、アニメではヒュンケルがダイをじっと見つめ、目のアップを見せるにとどめていましたね。
 ヒュンケルがなにを思ったかは、視聴者に委ねる方向性のようです。

 バランの手から力が抜け落ち、ダイがそれを支えた時の悲しみの表情がまた、胸に刺さります。

 ダイの言葉は、死に際のバランに届けられなかった……残酷ながらそう思えるシーンですが、ゴメちゃんのおかげでバランの魂にはダイの呼びかけが聞こえていたと、そう信じたいですね。

 CM後の泣きじゃくるダイのシーン、無音にして風の音だけを聞かせる演出が、また泣けます。

 ところで、原作ではゴメちゃんがダイの肩に乗った時点から奇跡がスタートしているんですが、アニメではある程度近づいた段階でダイの身体が光り出しています。
 てっきり、神の涙の使用条件って直接接触だと思っていたのですが、アニメでは違うみたいですね。

 原作ではナレーションを使用し、ダイがバランの想いを知るというシーンになっていましたが、
 アニメではダイの見開いた目にぐんぐんと近づいていって、瞳の中からもう一つの世界へ繋がるような形でバランとの再会を果たしています。

 原作では、ダイが出会う精神体のバランは生きていたときの姿のままであり、最後にシルエットとなって消えていきましたが、アニメでは逆に最初がシルエットになっていますね。
 
 ナレーションがカットされた分、ダイの言葉としてモノローグが追加されていました。
 ダイがバランの胸に手を置くシーン、ちょっと不慣れな感じがいいですね。原作ではすぐに立ち上がった印象でしたが、アニメではマァムが手を合わせ終わるまで待っている間があるのが、いい感じです。

 それにしても、正座するマァムが淑やかな印象でいいですねえ。マァムの仕草はダイに比べると洗練されているというか、自然な印象で死者への弔いの気持ちが感じられます。

 ゴメちゃんがダイに寄り添うシーン、ほっぺたにすりすりと身体をすりつけるのが、なんともいじらしくて可愛い……っ。
 そんなゴメちゃんの頭を撫でるダイの笑顔も、実にいい感じです。

 原作では大人びたような、悲しみを一人で堪えているような顔でしたが、アニメでは「一緒に居てくれてありがとう」と言っているような、ホッとしたような表情に感じられます。

 原作ではクロコダインの進軍推奨の台詞から言い合いが始まりますが、アニメではポップの撤退宣言からスタートしていますね。
 怒っているポップに対して、マァムが辛そうな表情から目を閉じるシーンが、すっごく好きです♪

 原作ではただ目を閉じているだけなのですが、アニメで動きが加わった分、マァムの迷いや優しさが感じられる気がします。

 ヒュンケルが語る親の死の辛さ、原作ではヒュンケルの手が震えていることで顕していましたが、アニメではバルトス父さん崩壊シーンを持ってきましたね。
 ……これって、トラウマ級の絵面だよなぁとしみじみ実感します。

 マァムの説得の台詞、ずいぶんとカットされていました(泣) ダイを休ませたいという台詞だけでも、残しておいて欲しかったのですが。

 そして、ダイの大丈夫だという台詞、アニメで聞くと、自分で自分に必死に言い聞かせているような雰囲気が合って、実に良かったです。やっぱり、思いっきり無理をしているんだなぁと感じられるシーンでした。
 
 ポップが泣きながらダイを抱きしめ、励ますシーンはやっぱり見ていて感動的でした♪ 

 で、そんな感動をぶち壊すようなタイミングで出てくるキルバーン達(笑)
 ダイとポップはキルバーンの方を強く警戒し、ヒュンケルとクロコダインはミストバーンの方を強く警戒している感があって好きです。

 それにしてもミストバーンの台詞、水戸黄門の助さんっぽく聞こえてしかたありませんでした(笑)

 それにしても切ないまでの悲しみも忘れてしまうぐらい、圧倒的なまでの大魔王バーンの存在感よ……! ラスボス感が半端ないっす!
 出現シーンからして、原作を踏襲しつつも、単なる集中線だった演出を光る蛇の群れのようなうねうねに変えて、おどろおどろ感を思いっきり強めていますよっ。

 吹き荒れる風に皆が耐えるシーンで、マァムがバランの上に身を投げ出して庇っているのが、密かに萌えます♪
 原作のこのシーン、実はマァムの服がまくれてパンツが丸出しになっているのですが、アニメでも服がはためきつつ再現されていました!

 ところで、ダイ、ヒュンケル、クロコダインは真正面を向いて風に耐えているのですが、ポップは風の勢いに負けたのか後ろを向いています。……と言うことは、ポップの視点からはこの素晴らしい風景が丸見えなのでは!?(笑)
 場所的にもちょうどマァムの真後ろだし、絶好のビュースポット!
 まあ、ポップは風の勢いに負けて寸前のシーンでは目を閉じていましたから、目を開ける余裕がこの時あるかどうかがポイントですね。

 と、おふざけついでに、ポップの強がった軽口シーン、仲間からスルーされる滑った感じが思いっきり再現されていたのが嬉しかったです♪
 戦いには無関係なシーンだからカットされるかなとヒヤヒヤしていたんですが、ポップの的外れな軽口がバーンの強さに気圧される仲間達を引き立てている感じですね。

 それにしても、ポップの渾身のジョークに付き合ってくれたのがキルバーンだけというのは、ある意味でポップにとって痛恨の一撃かもしれません(笑)

 しかし、バーン様の余裕っぷりがすごすぎです。
 泣かせ回から、一気に戦い前の緊迫感へ持っていった展開に、ドキドキッ。

 ところで、エンディングに出てくる壊れた壁や床は、バランがダイを守り抜いた跡だったと今回の話を見て、ようやく気がつきました!

 来週のバトルは予告だけで、もう、ハラハラっ。マァムの髪の毛が、一瞬とは言え下ろされるシーンが映っていました。
 カイザーフェニックスが、今から楽しみでなりません♪
 しかし、原作で先の展開を知っている身としては……予告では割と互角に戦っている風に編集しているのに、驚きを感じますよ。

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