『勇者アバン』(2021.12.11)

  
 

《粗筋》

 古びた用紙に、自動的に文字が書きつねられていくのにあわせ、プロローグが語られる。

ナレーター『これは伝説の勇者アバンが、カール王国騎士団の若き一団であった頃の話である』

 暗闇の中、黄色の目だけが映し出される。

魔王「時は来た……今こそ、この世界を我が手中に収める!」

 暗雲の空の下、シルエットのみの魔王の姿。それに呼応して吠える怪物達もまた、シルエットと目のみの存在。

魔王「行け! モンスター達! 町を焼け! 国を壊せ! 人間共を滅ぼしてしまえ!」

『圧倒的なモンスター軍団を前にして、人々はなすすべなく恐怖に震えていた
……』

 実態を持ったモンスター達が、暴れまくる。ゴーレム、サイクロプス、ヘルコンドルなど多数。ただし、全体的に暗い影で覆われていて、はっきりとその姿を見ることが出来ない。

『だが、そんな魔王軍の謀略に対し、敢然と立ちはだかる王国があった』

 一転して広がる青空と、高々と掲げられた赤い地に白い翼の意匠の旗。その背後に見えるのは、砦を思わせる堅牢なカール城。

『新たに騎士団長に就任したロカの元、精鋭なるカール騎士団は魔王軍に対抗する唯一無二の存在だった』

 ピンク色の髪の若い騎士・ロカを先頭にしたカール騎士団が出現する。
 そして、城と騎士団の背後に魔王の幻が現れ、呟く。

魔王「おのれ、カール王国め……」

 バサリとマントと髪をなびかせ、颯爽と歩く女性の後ろ姿。
 それに注目しているのは、城の下に集まりテラスを見上げている国民達。テラスに現れた騎士服姿の女性を見て、フローラ姫様だと声を上げる。

 まだ少女と見える年齢のフローラは、国民に向かって団結を呼びかける演説を行っていた。そんなフローラを憧れの目で見つめる兵士達。
 病状の王に代わって国を率いているフローラは、美しさと勇ましさを持つカリスマ的存在だった。







 フローラは疲れたように玉座に腰掛ける。閑散とした王間にいるのは、大臣らしき二人と騎士団のメンバー数人。
 大臣に労われ、気さくに返事をするフローラ。逆に騎士団を労うが、アバンがまたいないという話題になった。

 フローラは笑って、アバンは相変わらずだと許している様子だが、ロカがムキになって怒り、連れ戻すために肩を怒らせつつ退場。
 フローラが制止するも、ロカは頑として譲らない。そんなロカを見送って、クスッと微笑むフローラ。

 






 大きなシチュー鍋を、お玉がかき回してる。
 城の外れた場所にある小さな小屋、おそらくは厨房に一人の男性と数人の女性が集まっている。

 スープの味にダメ出しをしているのは、アバン。
 せっかくアバン様の為に作ったのにと嘆く女の子達に、料理のアドバイスを事細かをする。
 騎士の鎧の上からエプロンをして三角巾をした珍妙なアバンに、女の子達はきゃあきゃあはしゃいでいる。
 と、そこに乗り込んできたロカ、怒って強引にアバンを連れ出す。







 城の裏庭っぽい場所に移動したアバンとロカ。
 ロカはフローラの式典をサボったことを怒っているが、アバンは優秀なロカに任せて自分は料理に専念すればいいと暢気なもの。

 なぜ、アバンがカール騎士団に選ばれたのかとぼやくロカに、アバンは自分の家が学者の家系だからだろうと返す。
 寝そべったロカが跳ね起き、今は戦いの時代だと強く主張する。

ロカ「いくら勉強が出来て、女の子にチヤホヤされたって意味ねーん
だ。剣の腕前を上げておかないと」

アバン「それも大事でしょうけど、あなただっていつか家庭を持つでし
ょうし、あなたによく似た可愛〜い子供が生まれてくるかもしれないんです
よ? そんな時に料理の一つもできないと……」

アニメロカ「ヘンッ。おれは一生剣に生きるんだ。家族なんかいらねえっ!」

 そんなことを言うと後で後悔するとからかうアバンに、ロカはどこまでも頑固にもし結婚したら国中裸で走り回ってやるとまで言い切る。それには、さすがのアバンも呆れ顔だ。

 怒ったままのロカは立ち上がり、アバンに護身のためにも剣の稽古をしろと言い捨て、立ち去っていく。
 それを軽く手を振って見送るアバン。

 が、ロカが遠ざかってからアバンは真面目な顔になり、遠くの空を見やる。暗雲が迫る空を見て、アバンは戦いが近いことを悟っていた――。







 ドレス姿のフローラの悲鳴が響き渡る。
 鏡に映し出された不気味な血色の文字を見て、怯えるフローラ。その悲鳴を聞きつけてロカを先頭に騎士達が集まってくる。
 突然、鏡に血の文字が現れたことに動揺するフローラ。ロカはなんと書かれているのかと問うが、読むことは出来ない。

 そこにやってきたアバンが、魔族の文字だと見破る。
 鏡を使った通信呪文であり、今夜フローラを生贄にするために攫いにくると言う魔王からのメッセージだった。
 それを聞き、慌てて準備に走るロカ達。







 その夜、カール城は厳重に警備を固めていた。城門には槍を持たせた兵士を揃え、陣頭指揮を執るロカは完全武装の姿でフローラのいる王間で身構えていた。
 魔王を待ち構えるロカに、フローラはアバンのことを尋ねる。

 虫を捕る網と籠を持ち、楽しげに森へいくアバンの姿を思い出しながら、ロカは彼が森へ行ったことを告げる。
 ロカは姫を差し置いた勝手な行動に腹を立てている。

 が、フローラは怒った様子もなく、窓の方……おそらくは森の方向へ目を向けただけだった。

 ロカは苛立ちの余り握りこぶしを震わせながら、腕に自信が無いアバンが逃げ出したと思い、絶交を決意していた。

 その頃、夜の森に入り込んだアバンは虫取り網を手にキョロキョロと周囲を見回していた。







 時を同じくして、城では空中に突然紫色の光の渦が発生し、それがどんどん強まって人影がその中に見える。
 やがて、そこから現れたのは全身を黒いローブで覆った魔族……魔王だった。

 高い位置に浮かび、真下にいる人間達を見下ろすその姿に兵士達が魔王が来たと騒ぎ出す。だが、さすがはカール騎士団というべきか、武器を構えて立ち向かおうとする。

 そんな人間達をゴミと見下し、ハドラーは片手に複数持った魔法の筒をパッと投げだし、デルパの呪文を唱える。その途端、筒からモンスター達が出現する。

 リカントが、暴れ猿が、グリズリーが、キラーパンサーが、ヘルコンドルが、極楽鳥が、ギズモが、次々と煙と共に現れ、人間達に襲いかかる。
 驚く人間達は、一方的にやられるばかりだった。

 ゴーレムやサイクロプスなどのパワーファイターも参戦し、城は中庭から攻略されつつあった
 ロカもどこからきたのかと焦るが、その時、騎士が見ていた窓の外が真っ暗な闇に覆われる。

 次の瞬間、ドラゴンの巨大な首が、窓枠事振り壊して侵入してきた。







 王間の窓からそれを見ていた騎士は、団長ロカにモンスターの襲撃を告げる。
 その背中で笑っていたのは、魔王ハドラー。
 ハドラーの撃ちだしたベギラマ一発で、ロカも含めた数人の騎士が壁に叩きつけられる。

 よほど強いダメージを受けたのか、床に倒れ込んだロカは意識はあっても動けない。
 ハドラーはドラゴンに乗ったままフローラ姫に向き直る。

 魔王に対して身構えたフローラは、彼の企みは読めていると断言。
 自分を生贄にするというのはただの名目であり、真の狙いは人間に無力感を味あわせ、世界征服を早めようとしていると看破する。

 ハドラーはそれをあっさり肯定する。
 まだ少女なそこまで見抜いたフローラに寒心し、分かっているのなら自分に跪けと強要する。

 冷や汗を浮かべながらも、きっぱりとそれを断るフローラ。






 その時、カール城の上空では静かな花火のように、不思議な光が散った。その光は地上の怪物達の上に降りかかる。







 そんなことも知らず、魔王は従わないなら殺すとフローラを脅しつける。気丈にも、魔王を睨み返すフローラ。


 城のあちこちでは、次々に光がはじけ飛び、先程と同じように小さな光が降り落ちる。それらは、モンスター達の上にも降りかかっていた。
 モンスター達は戸惑いの声を上げるばかりだ。






 王間では、フローラを心配してロカが必死に立ち上がろうとするも、身体に力が入らない。
 魔王はフローラに、答えを求める。服従か、死か……。
 必死に魔王を睨み返すも、選択できないフローラ。
 なおも答えを強要する魔王だったが、その時、王間に入ってきたアバンが暢気な口調で止めにかかる。

 飄々としてやってきたアバンを、フローラは歓喜の表情で、ロカは不満げに迎える。
 二人のどちらにも応えず、アバンは余裕たっぷりの微笑みを浮かべていた。







 魔王に対して、女性を誘う時は優しく言わなければだめだと言ってのけるアバンに、ハドラーは愚弄されたと感じたのか、激昂してドラゴンをアバンへ襲いかからせる。

 ドラゴンが迫り、アバンを食べようと大口を開けた。
 だが、アバンは恐れる様子もなく奇妙な形の銃――魔弾銃を取り出してドラゴンの口の中に打ち込んだ。
 その反動で、大きくよろめくアバン。

 ドラゴンの周囲に、先程外の怪物達に降りかかった光の粒が舞い狂う。
 目を赤くし、凶暴化したドラゴンは、真上に向かって火炎を吐き始めた。そんなドラゴンの奇行に目もくれず、アバンは壊れた銃を眺め回していた。

アバン「ふむ……この魔弾銃、まだ改良の余地がありますねぇ」

 ドラゴンは荒れ狂い、首を無闇に振り回していた。それにフローラや騎士達は怯えを見せて後ずさる。
 ドラゴンの上に乗っているハドラーも、制御できないでいた。アバンに何をしたのかと問うハドラー。

 ドラゴンの尾を避けながら、アバンは特別配合の毒牙の粉をかけたと説明する。これがかかると、モンスター達は正気を失い、同士討ちを始める。
 外でも、モンスター達は人間そっちのけで仲間同士で戦っていた。
 窓からそれを確かめ、危機として報告する大臣。

 これで魔王ご自慢のモンスター軍団も役に立たないと、アバンはやたらと嬉しそうに笑ってみせる。
 床に倒れていたロカは、アバンが森に毒蛾の粉を探しに行っていたと知り、彼を見直す。

 怒りに歯をむき出した魔王は、飛び降りざまに騎乗していたドラゴンを一撃で気絶させた。腹を出し、下を向き出しに倒れるドラゴンの側に、魔王ハドラーは機敏な動きで降り立った。
 それを、騎士達は驚きの表情で見つめるばかりだ。

 ハドラーはアバンの小賢しさに激昂し、許さないと怒鳴るが、それを聞いたアバンの様子が変わる。
 ヘラヘラした表情が一変し、闘気を撒き散らし出すアバン。

 許せないと逆に魔王に怒りをぶつけるアバンの真剣な表情を見て、フローラはハッとする。
 その表情を、フローラは前にも見たことがあった。






 フローラは、思い出す。
 三年前、幼かった彼女が城を抜け出して森に行った時のこと。
 森の中を、開放的な笑顔で走るフローラ。だが、その足下に触手が絡み、彼女は転んでしまう。
 植物型モンスターのマンイーターが、大きな口を開け、触手を鞭のようにフローラめがけて繰り出した。

 思わず、悲鳴を上げるフローラ。
 と、そこに、粗末な服を着たアバンが剣を抜き放って駆け込んできた。マンイーターを一刀両断にした。
 
 驚くフローラに穏やかな笑顔で笑いかけ、立ち上がるように手を貸してくれたのだ。
 フローラは王女の身分を明かし、アバンを騎士団に推薦した。

 だが、アバンは伊達眼鏡をかけ、武術など全く出来ないような振りをするようになった。
 訓練ではわざと負け、騎士達の中では目立たないように振る舞う……フローラは、彼があえてそう振る舞っていると知っていた。

 申し訳なさそうに頭をかきながら、アバンは有事の際には姫とカールの為に働くと言う。その意志を受け、フローラはアバンの秘密を自分の胸に納めてきた。
 だが、今『その時』が来たのだと思いながら、過去の思い出から現在のアバンを見つめ直すフローラ。

 距離を置いて、対峙しあう魔王とアバン。
 自分と戦う気かと腹立たしげに問う魔王に、アバンは戦いは好まないと告げる。だが、己の野望のために人を傷つける者を放置するほど、お人好しではないと言いながら、彼は眼鏡を外す。
 
 怒りに燃える目でハドラーを睨みつけるアバン。
 彼らしからぬ表情に、ロカやフローラは驚きを隠せない。

 手に火炎をまとわせ、ハドラーがアバンへと殴りかかる。その拳をアバンはメラを放って相殺する。ロカはアバンが呪文を使ったことに驚くが、アバンは残る片手でベギラマを放ってハドラーを吹き飛ばした。
 
 人間の割に高度な呪文を使うと、ハドラーはアバンに警戒を示す。
 ハドラーは続けざまに火炎呪文を放つが、アバンは左右に素早く飛びながらそれらをすべて回避する。

 思わぬアバンの実力に、倒れていた騎士達が声援を送る。
 身を翻しながら呪文を回避しつつ、ハドラーへと距離を詰めていくアバン。敵の懐に飛び込んだアバンは、魔王に蹴りを食らわせた。

 吹っ飛ばされ、苦痛に呻きながら起き上がったハドラーは、目の前にアバンがいないことに気づく。周囲を見回しても、アバンの姿は見えない。
 が、そんなハドラーの死角から不意を突き、再度ハドラーを蹴り飛ばすアバン。

 またも壁に叩きつけられたハドラーに向かって、アバンは全身をフルに使って回転し、トドメのメラゾーマを放つ。
 しかし、必殺のはずの呪文はハドラーの掌に受け止められ、かき消えた。

 ハドラーはアバンの力をなかなかと言いながらも、魔王に比べれば幼稚と言い放つ。両手から魔法を生み出し、大呪文の体勢に入った。
 その予備動作で、アバンはハドラーがイオナズンをつかえることを悟る。だが、背後にフローラがいるため避けることは出来ない。

 アバンは両手を大きく広げ、背後にいる姫を守る構えを取った。何の迷いもない目が、真っ直ぐに魔王を睨む。
 その姿に、ロカは息をのむ。

 ハドラーはそんなアバンの行動を自ら死を選んだのかと言い、魔法を強めて殺そうとする。
 しかし、その瞬間、魔王の右手が切り落とされた。

 驚愕の表情で、宙を飛ぶ自分の手を見下ろすハドラー。アバンやフローラも、そろって目を見開く。
 
 ハドラーの腕を切り落としたのは、倒れていたはずのロカだった。苦痛に顔を歪め、無理をして動いたことが一目で分かる。
 ぼとりと腕が床に落ちると同時に、ハドラーは怒りをロカへとぶつけ、火炎呪文を叩きつけた。
 剣を落とし、なすすべもなく吹き飛ばされたロカに、アバンが駆け寄る。

 友の名を呼びながら、心配そうにロカを抱き上げるアバン。
 ダメージを受けつつも、ロカはやってやったと強がる。片手がなければ大ダイ呪文はつかえないと踏んで、攻撃に出たのだ。
 それを聞いて、ハッとした表情を見せるアバン。
 
 ハドラーは片手だけで放てるイオラで攻撃しようと、魔法力を高める。
 友を傷つけられた怒りに燃えるアバンは、魔王に向かって駆け出す。その直線上に、ロカの落とした剣があった。
 それを拾い上げるアバン。

 イオラを放った魔王に対し、剣を逆手に持ったアバンは身体を引き絞るようにためを作り、それを一気に解き放つように剣を振った。
 アバンの剣はイオラを斬り、その背後にいたハドラーまでも斬り飛ばす。線香の一撃は城の壁を突き破った。

 光の一撃に吹き飛ばされ、混乱するハドラー。だが、光の勢いに敗北したのか、悲鳴と共に消え去った。
 







 一方、技を放った姿勢のままでいるアバンの背後では、騎士達が魔王を倒したことを喜び、歓声を上げていた。床に倒れたまま動けないロカも、苦痛の中、満足そうに笑みを浮かべる。

 だが、大穴の向こうの夜空を見つめたまま、アバンは魔王はまだ生きていると静かに言った。
 驚く一同に対し、アバンは至って冷静に床に落ちている魔王の腕を指さす。魔王が死んだのなら、この手も灰に化すはずだ、と――。

 その時、魔王の中指にはめられたドクロ模様の指輪が、歯をカタカタと打ち鳴らして笑い出した。
 そこから聞こえる声は、紛れもなく魔王ハドラーのものだ。

 アバンがそれを見抜いたことを褒め、今日のところは引いておくという魔王。だが、あれくらいの力では自分は倒せないと、勝ち誇って笑うハドラー。
 それを聞きながら、フローラ達は静かに歩み寄ってきた。
 
 怒りを抑えた表情でそれを聞くアバンは、指先から魔法を放ち、ハドラーの腕を燃やしてしまう。
 そして、彼の言葉を肯定するように、心の中で思う。
 確かに、今の自分の力ではあの魔王に勝てない、と……。






 夜明けのカール城。
 日の出間際で、東の空がうっすらと白じむ中、アバンはマントをなびかせて城を振り返っていた。

 彼が思い出すのは、夕日の中、フローラと交わした会話。
 フローラは旅立つアバンの意志を静かに受け止め、両手で大切そうにアバンの眼鏡を受けとった。

 その眼鏡を平和の証と受け止め、アバンが戻ってくるまで大切に預かると言うフローラは、それを大切そうに胸に抱え込んだ。
 そんなフローラを優しく見つめ、なるべく早く帰りますと伝えるアバン。

フローラ「それから……これを」

 フローラは青い宝玉のついた金色のペンダントをアバンに向かって差し出した。カール王家に伝わる、カールの守りと呼ばれる物だといい、きっと役に立つはずだと言ってフローラはそれをアバンに渡す。

アバン「では……これを受けとってください」

 アバンは腰の後ろを探って、滴型の石のついたペンダント――のちにアバンのしるしと呼ばれる品を差し出した。
 アバンの家に伝わる秘法で作られた輝聖石……もう、アバンの他にそれを作れる者はいないという。

 夕日を背景に、二人は互いの家に伝わる家宝を相手に差し出しながら、向かい合う。
 そんな大切なものを、とフローラはためらうが、アバンは屈託のない笑顔で言った。

アバン「交換ですよ」

 その言葉に、フローラは苦笑するような笑みを浮かべた――。






 アバンは城を振り返るのを止め、前を向いて歩き出した。
 だが、すぐにその足を止めてします。アバンの前に立ちはだかったのは、完全武装をしたロカだった。
 カール騎士団の兜ではなく、羽根飾りのついた派手な兜を着けたロカは、自分も行くと言い放つ。

アバン「ダメですよ、騎士団長のあなたがいなくなったら、誰がカール王国を守るんですか?」

ロカ「大丈夫だ! おれが鍛えたあいつらに任せておけば、問題ない。それに、守ってばかりじゃ身動きが取れなくなる。こっちから攻めていかねえとな。攻撃は最大の防御っていうだろ?」

 胸を張ってそう答えるロカに、アバンも真剣な表情で勝てるとは限らないと答える。
 しかし、ロカの決意は揺るがない。

 ロカはアバンの光る剣に希望を見た、と言う。
 偶然だと謙遜するアバンをねじ伏せるように、ロカはあの攻撃が魔王を怯ませたと指摘し、あの光を信じると言い切った。

 






 太陽が、山脈の向こうから昇りだした。
 カール城のテラスに一人立って、下を見下ろすフローラ。その表情は、晴れやかだった。







 長い影を後ろに、太陽に方角に向かって元気よく歩き出すアバンとロカ。
 
『あの攻撃は後に、厳しい鍛錬の末、アバンストラッシュとして完成した』






 若き日のアバンが、アバンストラッシュを放つ。

 


《感想》

 勇者アバンのタイトルの時の音楽、いつもとちょっと違う気が。
 プロローグ、原作よりもずっと短くカットされていますね。しかし、アバン先生がアバン先生の伝記を読み上げているのが、ちょっと笑えます。

 最近は武人発言の多いハドラーの魔王っぷりが、懐かしい感じ。しかし、カール騎士団って今も昔も騎士ではなく兵士にしか見えないです(笑)

 フローラ様、思った以上にレオナに似ているっ。まるで旧アニメのレオナを見ているよう(笑)

 ロカ、髪の色が思ったよりも鮮やかなピンク(笑) マァムは髪の色が本気で父親譲りだと思った一瞬でした。
 声が割とおっさんぽいというか、落ち着きのある声なのが意外な感じ。もっと短気で、キャンキャン怒鳴るタイプかと。

 アバンの登場シーン、徹底して顔を見せない方式なのが面白いところ。アップ時はスープと手元しか映らないし、遠くから少しずつアバンに近づいていくロカの視点に合わせている感じ。
 濾過が詰め寄ってから、初めてアバンが顔を見せています。

 それしても原作の時も思っていましたが、アバン先生の三角巾、ゆるすぎて髪を抑える役に立っていないような(笑)
 そう言えば、スープの色合いがビーフシチューっぽくてあまりスープらしさを感じないです。
 原作ではパデキアしかいれていませんでしたが、アニメではすばやさの種も入れていますよ、なんか変な方向に豪華!

 アバンとロカのやり取り、アニメではやっぱり和らいだ表現に変えてきましたね。

原作ロカ「知識なんかいくらあったって女どもにチヤホヤされるぐらいの役にしかたたんぜ!!」

原作アバン「そんな言い方は女性に対して失礼ですよ。あなただっていつかは結婚して、奥さんのお世話になるんですから」

原作ロカ「ヘンッ。おれは一生、剣に生きるんだ! 女の子なんか絶対好きになるもんか!!」

 原作では結婚したら奥さんが旦那の面倒を見て当たり前的な表現があったのが、リメイクアニメでは男性が子供の世話をするのが当たり前な表現に変えてきています。

 原作ロカはどう贔屓目に聞いても女性蔑視な傾向が見られるんですが、その意地っ張り振りが好きだったのでアニメ版の騎士道精神溢れるロカには、ちょっと違和感がありますね。

 とりあえず、ロカをからかうときのアバンが若いというか、子供っぽくていいですねえ。他の人には笑顔ばかりを見せているアバンが、ロカには素のまま接している感じで、ダイとポップのように、気の置けない仲のように思えます。

 ハドラーからの脅迫文が届いた際、フローラがアバンに呼びかけ、彼が無言で頷くシーンがカットされていました!
 この時からアバンとフローラの間に強い信頼関係があり、ロカがそれを不思議そうに見ている、という三人の関係性がよく分かるシーンだったのに〜。

 それにしてもロカの兜姿、やっぱり騎士ではなく兵士に見えちゃいますね(笑) 髪の色が目立つだけに、兜を被った途端、印象が薄くなります。

 森へ行くアバン、めっちゃ楽しそうな格好でした(笑)
 原作でも虫取り網と籠は持っていますが、今にも駆け出しそうなポーズでウインクしている姿がめちゃくちゃお気楽な感じでした。あれじゃ、ロカも怒るってもんでしょう。

 攻めてくるモンスター達、獣系が多い気がします。
 ハドラー、久々にへっぽこ時代。正直、ドラゴンの方が、迫力あるなぁ(笑)
 それにしても、お姫様のドレスになぜスリットを入れるのか疑問です(笑) いや、確かにドレスからはみ出した姫様の御御足、美しかったですけど。

 CM前後、前回の続き並に同じ場面をリピートしていましたが、やはり外伝は話が短いから尺稼ぎ……?

 原作ではただの小袋を投げていたシーンが、アニメでは魔弾銃になっていたのは嬉しい改変でした。
 マァムに渡した魔弾銃に比べて反動が大きく、一発撃っただけで銃身が裂けて壊れてしまっています。
 アバンの未完成な魔弾銃、いいですねえ。

 フローラ様の回想シーン、ぐるりと回転して後ろ姿になるシーンを、過去の後ろ姿のフローラと重ねる演出はよかったです。
 しかし、自称『幼い頃』の割には、ボンッキュッバンでスタイルがめちゃくちゃいいですね、フローラ様っ。っていうか、服ッ、服っ(笑)

 破邪の洞窟で着ていた聖なる衣装っぽい服で、胸の谷間がすでにくっきりと見えちゃっていますけど!? 触手が絡んで倒れた姿勢が、これまた色っぽいです。

 服もはだけて、太股丸出しになっているし……え、この格好で触手プレイ? と戸惑ったところで、アバン先生があっさりと怪物をやっつけちゃいましたが。……ちっ、後5分後ぐらいでもよかったのに(笑)

 まあ、冗談はさておき、若き日のさらに三年前のアバン先生の着ている服は、ほぼ白に見えるような薄茶の半袖シャツに同色のズボン。半袖シャツの下にもう一枚シャツを着ていて、その色はチョコレートのような濃い茶色でした。
 髪型は同じですが、眼鏡をかけていませんね。

 しかし、公式パーフェクトブックでも開かされなかった年齢の秘密というか矛盾はそのままなのですね。
 フローラ様、ダイ達と出会った時に29才だったので、16年前なら13才
と実はレオナよりも下だったのですが……どう見ても、レオナよりも上に見えますよね。

 そこは個人差だとしても、回想シーンのフローラはその三年前なので10才のはずなのですが(笑) あのスタイルで10才はないでしょう!
 アバンも当時11、2才だったようには見えませんし(笑)

 しかし、回想シーンで他の兵士に負けるアバン先生、両手をパーのまま大げさに開いて剣を取り落とし、足を高く上げるポーズのわざとらしさに爆笑しました。

『わーやられちゃいましたー』(棒読み)

 な台詞が聞こえてきそうな、へっぽこポーズがお気に入りです。

 明後日の方向に突きをかましているアバンの頭を、呆れたような表情で掌でペシッと叩いているロカ(ただし、兜を被って目を閉じているので、確証はなし)の図もいい感じです。
 アバンのへっぽこさに呆れつつ、優しく指導してやっている様子がほのぼのしてて実によかったです。
 
 立ち並ぶ槍を持った騎士達のシルエットが並ぶ仲、少し猫背気味にやる気無く並ぶアバンの姿も、いい感じですね。

 そのシルエットがパッと消え、出会った時の姿のフローラと向かい合うシーンは、あたかも『私だけは本当の彼を知っているの』と言わんばかりに感じられました。

 過去回想から現代に切り替えるときも、フローラが見つめる方向を変える描写に合わせて風景を変える演出が印象的でした。

 アバン対ハドラー戦、アバン先生の回避や動きが、フィギュアスケートのように回る動作が多く混じっていたのが印象的でした。平面的な動きながら、要所に円運動を混ぜることで動きを派手に見せかけ、相手を惑わせる感じです。

 ダイの動きが直線的でジャンプを交えた動きで意表を突くものであり、マァムの動きが体操選手のように立体的に回転する動きなことを考えると、ダイやマァムの動きってアバンの体術の進化形なんだなと思えました。

 しかし、使っている魔法がベギラマなのに高度な呪文と言われていたり等、昔のハドラーとアバンのバトル、現在のダイ達と比べてどうしてもレベルが低く見えてしまいますね(笑)

 まあ、DQ1ではベギラマこそが最強呪文だったので、世界感がまさにそんな感じですが。

 ロカがハドラーの腕を切り落とすシーン、カッコイイです♪
 最近、極炎の魔王の影響でロカの株が上昇中なので、彼の思い切りの良さに好印象を受けますね。

 そして、ロカが倒れたのを見て、アバンが心配し、怒りを爆発させるシーンもよし! フローラ様に対しても笑顔を絶やさないアバンが、ロカ相手だと表情をよく変えますね。

 そう言えば、ロカは原作ではかなり黒焦げで倒れていましたが、アニメでは火傷描写がものすごく控え目になってました。

 ハドラーの腕も流血なしでしたし……あれ、そう考えると、ハドラーってバーンの部下になってから血が流れるようになったんでしょうか?
 それって、強化のついでにもしや弱点をつけられたのでは……(笑)

 ハドラーの手の指輪が喋る演出は原作通りながら、いい感じでした。ただ、原作ではピクンピクンと跳ねていた腕が、まったく動きませんでしたね。トカゲの尻尾のような動きを予測していたのに、ちょっと残念です。

 アバンの旅立ち、夜明け前の城の美しさと、その前日と思われるフローラとの夕日の別れの美しさが絶妙!
 原作では王間で行われた別れが、アニメでは外に変更されていますね。夕日に照らされて、実に絵になります。

 また、原作では普通の表情だったフローラ、後ろ姿のみだったアバンのシーンが、アニメでは両者の表情に改変が加えられています。
 眼鏡を抱きしめたフローラの、満足そうながらも少し切なげな表情がびゅーりほー♪

 なるべく早く帰ります、と伝えるアバンの優しい表情もいいですね。原作よりも、二人の間の感情のきめ細かさが伝わってくるようです。
 そして、カールの守りとアバンの印を交換するシーンもここに持ってきました!

 恋人と言うには距離がありすぎる二人の距離感と、それでいながら結婚式の指輪交換のように大切な家宝を差し出し合う姿が、なんとも萌えます。

 ロカがDQ3の男戦士の兜や格好で登場しましたが、やっぱりこちらの方が似合っている気がします。しかし、包帯だらけなんですが……カール王国って回復魔法の使い手が少ないのかもしれません。

 最後に二人で並んでいるシーンを見て、ロカの方が微妙に背が高いと発見し、なんか新鮮。まあ、兜の差と言えるような微妙さですが(笑)

 最後に、アバンストラッシュのシーンが入っていましたが、個人的には旅だったアバンとロカの絵でしめて欲しかった気がします。

 予告では、破邪の洞窟の女の子の達の衣装が公開されましたっ。マァム、黒ストじゃないんですね♪ 久々の生足ッ!
 真っ先にそこに注目しちゃいましたよ(笑)

 ダイとノヴァの特訓とか、ポップの苦悩が垣間見えていたのに……マァムの生足のインパクトが強すぎました。

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