『決戦前夜』(2021.1.8)

 

《粗筋》

 輝く剣を、高く掲げるダイ。
 傷一つ無く、完璧に蘇った剣を見て、まるで友人に対するように無事を喜び、共に戦おうと語りかけてから鞘に納める。

 ロン・ベルクに礼を述べ、剣を背負って留め具をはめるダイ。
 レオナがダイに近寄ってきて、戦力アップを喜ぶ。剣が強化されたと無邪気に喜ぶレオナに、真顔でダイの剣は強くならないと告げるダイ。

 だが、そこにロン・ベルクが会話に割り込み、鞘に工夫をして戦力強化したと説明する。詳しいことを書いたメモをダイに手渡すロン・ベルク。
 真剣な表情でメモを開くダイだが、すぐに諦めて無言のままレオナに手渡す。
 レオナは上機嫌で、読んであげるとメモを開いた。

ロン・ベルク「鎧の魔槍の方も強化しておいたが……ヒュンケルは、敵に捕まったのか?」

 その言葉に、険しい表情を見せるダイとレオナ。







 砦の中の、広間に繋がる扉。
 今は閉じられているため、下の方からかすかに光が漏れているだけだ。
 広間では長テーブルにロン・ベルクから時計回りにバダック、マァム、ダイ、レオナ、フローラ、ノヴァ、エイミ、チウが並んでいた。

 酒瓶を前に置いて事情を聞いたロン・ベルクは、この状態で再戦するのは無謀だと言い放つ。それを聞いて、ノヴァや彼の背後の兵士達はムッとした表情を見せる。
 酒を一口のみ、ロン・ベルクはぼやく。

ロン・ベルク「人間ってやつは、これだからな」

ノヴァ(なんだ……!? あいつは……!)

ロン・ベルク「まあ、ダイの仲間の分の武器も作ってやったから、少しは戦力が上がるだろうが」

ダイ「おれの仲間の分って……」

 ダイ達が驚く中、バダックが勢い込んで立ち上がり木箱を指し示す。

バダック「おおーっ、驚くぞぉ!」

 それぞれの武器が、机の上に乗せられる。一際大きな斧を机にのせるのはバダックも少々苦労したが、並んだ武器にダイ達も立ち上がって興味津々に目を見張る。

バダック「これが新しい魔槍、これが斧! これは杖……はて、ポップはどこじゃ?」

 バダックに問われて、ダイも周囲を見回す。

ダイ「あれ、そう言えばずっと見てないけど……」

ゴメちゃん「ピピーッ」

チウ「砦の裏の森へ行ったって」

ダイ「そっか、きっとポップも特訓してるんだ」

 ポップの居場所を知り、嬉しそうにそう言うダイ。
 マァムは残った武器を見て、それが自分の武器かとロン・ベルクに確認を取る。彼が頷くのを見て、巻いてあった布をちぎり取るマァム。

 ピンク色の手甲――マァム専用の魔甲拳が姿を現す。
 利き腕じゃない方につけておいた方が便利だというロン・ベルクのアドバイスに従って、左腕にはめるマァム。

 新装備をもらったみんなを、文字通り指をくわえて羨ましそうに眺めているチウ。

バダック「おまえの分もちゃんとある!」
 
 一瞬、魔界の名工の武器を自分にももらえるのかとぬか喜びするチウだが、バダックは得意げに言う。

バダック「いいや、ワシが作ったんじゃ」

 ズタズタヌンチャクと名付けられた、持つだけで手をズタズタにしてしまいそうな武器を手渡されるチウ。その重みに、ちょっとよろけてしまう。
 バダックは自慢げに高笑いするが、チウは冷静に自分の手がズタズタになりそうと呆れがち。

 だが、その心遣いが嬉しいと涙ぐみ、ヌンチャクを握りしめるチウ。が、その拍子に手に棘が刺さってしまい、ヌンチャクを放り出して痛みに号泣する。
 なのに、バダックはチウが泣くほど感動したと思っているのだから、マイペースにも程がある。

 そんな騒ぎをよそに、フローラはロン・ベルクになぜここまで人間に協力してくれるのかと問う。

 ロン・ベルクは自分がバーンの味方をしていたわけではないと明言し、降魔の杖が元々強いバーンの手に渡ったことで最強の武器となってしまったが、武器職人としてそれに不満を抱いていることを話す。

 弱いヤツについた方が面白いから協力する、と言ってロン・ベルクは部屋から出て行ってしまう。
 身勝手振りに呆れたのか、レオナは「変人ね」と言うが、ダイはああ見えて結構いい人だとフォロー(?)する。

 気を取り直すように、バダックがヒュンケルやクロコダインを助け出し、武器を渡そうと宣言し、ダイ、レオナ、マァムも頷く。
 チウは一番重い斧を持ちあげた。

チウ「では……この斧は、ぼくから……クロコダイン、さんに……っ、と、思いましたが! クマチャ!」

クマチャ「アウッ!」

チウ「ぼくの部下に持たせた置きましょう!」

 重すぎる部下をちゃっかりと部下に預けるチウ。
 マァムは当然のように、槍と杖を自分が引き受けようとした。が、マァムのが伸ばした手が槍に触れるより早く、別の手がそれをとった。

 目を見張る、ダイとレオナ。マァムは戸惑って、大切そうに槍を抱きしめるエイミを見やる。
 目を伏せ、エイミは思い詰めた声で言った。

エイミ「この槍は、私に渡させて……! この私の手で、愛するあの人に……!」

 一途な目を、マァムへと向けてそう宣言するエイミ。それに対し、マァムは驚きを隠せない。

 驚いているのはダイも同じで、思わずエイミを指さしてレオナに目を向ける。レオナは小声で「マジよ」と囁いた。

 静まりかえった部屋の中で、エイミはマァムに真正面から向かいあってヒュンケルへの愛を打ち明ける。
 それを聞いて、息をのむマァム。

 最初は恐ろしい人だと思っていたが次第にヒュンケルの繊細さに惹かれていったこと、この前の戦いの時、彼に戦って欲しくないと思い槍を奪ったことを、切々と語るエイミ。

 彼女の告白を、レオナは聞こえない程度の小声で「うんうん」と頷き、楽しそうに聞いている。

 が、マァムにはそんな余裕はない。
 かすかに頬を赤らめ、目を丸くして聞いている。そんなことがあったのと、ただ驚くばかりだ。

 槍を抱きしめながら、エイミは自分の間違いを認める。ヒュンケルが戦いという地獄を望むなら、共に地獄に落ちるとさえ言い切った。
 強い覚悟の感じられるエイミの熱烈な告白に、ゴメスやフォブスターなども含めた兵士達も目を見張って聞き入っていた。

 目を見張り続けるマァムに、エイミは確認を取るように尋ねる。

エイミ「マァム、構わないでしょう? 私がこれを手渡しても……!!」

 決して手放すまいとばかりに、槍を強く抱きしめるエイミ。
 それを見たマァムはためらいながら頷き、杖をポップに渡してくると言って、その場から逃げるように駆け去ってしまった。
 その背を見て、心配そうにマァムの名を呟くダイ。

 エイミの元には、ゴメス達が近寄り恋を応援する。協力するから、その槍をヒュンケルに渡すように進めるゴメス。。

フォブスター「その時、自分の気持ちを伝えるといい」

 恥じらい、顔を背けながらも、もう気持ちを伝えてフラれてしまったと告白するエイミ。

フォブスター「あなたみたいな美人をふるとは、なんという……」

 彼らがそんな話をしている後ろで、ダイはレオナを見て、どうしようかとこっそり問いかける。
 腕を組み、ドヤ顔のレオナは自信満々に答えた。

レオナ「急展開ね、燃えるわ!」

 予想外の返答に、顔面から机に突っ伏すダイ。
 なんとか起き上がって、非難じみた台詞を言うダイだが、レオナは恋愛は自由だと動じない。マァムは自分の魅力に気づくべきだとか、人間的に成長するチャンスだとか、もっともらしい台詞を言いながらも、レオナの目は好奇心に満ち満ちている。

 本心と台詞の乖離が一目瞭然なだけに、目つきと台詞があってないと、ダイは呆れた様子だ。
 その時、広間の扉を開けてメルルが入ってきた。

メルル「あら?」

 槍を持って恥じらうエイミを、複数の兵士達が応援していると取り巻いている中、メルルはダイ達に近寄ってくる。

メルル「なにかあったんですか?」

 ダイは大慌てて、手をブンブンふりながらなんでもないと主張する。その横で、レオナはしたり顔でで腰に手を当てていた。

ダイ(ここにメルルが加わったら、話はもっとややこしくなるッ!)

メルル「フローラ様、みなさんの食事の用意が出来ました」

 メルルの報告に、フローラは腰を上げて全員に指示を出す。
 食事を取ったら、最後の武器の点検をし、眠れるだけ眠っておくようにと命令を下す。
 明日の決戦に相応しい指示に、緩んでいた広間の雰囲気が一気に緊迫感を増した。
 勝ちどきのように、拳を突き上げる一同。







 同じ頃、森の中。
 虫の声が響く、静かな森の中をマァムは息を切らして逃げるように走っていた。木に手を当てて足を止め、呼吸を整えるマァム。
 彼女は、エイミがヒュンケルのことを思っていたと知り、ショックを受けていた。
 胸に手を当て、自分の気持ちはどうなのかと自問自答するマァム。
 その顔は赤く染まっていて、動揺に目は潤んでいた――。






 同じく、森の中。
 木々の隙間の空き地に胡座をかいたポップの身体は、全身が薄い白色に覆われている。
 魔法力を張り巡らせる瞑想(メディーション)

 目を閉じたポップは、古文書に書いてあったことを思い返していた。
 ミナカトールに必要な五つの魂の力とは、勇気、慈愛、闘志、正義であり、最後の一つは文字がかすれて読めなかった。

 勇気はダイ、マァムは慈愛、正義はレオナに、闘志はヒュンケルのためにあるような言葉と考えるポップ。
 自分だけが分からないと悩むポップ。
 そんな立派な魂があるとは思えないし、ポップがこれまで頑張ってきた動機はそもそもみんなに……特に、マァムに喜んで欲しいと思う気持ちにある。

 ちょうど、マァムのことを考えていた時、急に呼びかけられてハッとするポップ。
 集中が途切れた途端、ポップを覆っていた魔法力の光が消滅する。
 振り返ったポップは、やってきたマァムを複雑な表情を見せた。






 修行の邪魔をしたことを謝るマァムに、ポップはいつもの調子を装って答える。マァムにだけは、自分がみんなと違うことを知られたくないと思うポップは、彼女にまともに目を合わせられないでいた。

 マァムは杖と説明書をポップに渡し、ロン・ベルクがダイ達の武器を直してくれたこと、仲間達の分の武器も作ってくれたことを説明する。
 明るくそれを喜び、武器の説明書を読み始めるポップ。

 そんなポップを微笑ましそうに眺めた後、マァムは改まった口調で彼に相談を持ちかける。
 恥ずかしそうにヒュンケルの名を口にするマァムは、つい目をそらしてしまったからこそポップの様子に気づけない。

 マァムに背を向けたままのポップは、ヒュンケルの名を聞いた途端、ビクッと身体を震わせ顔色を変えた。
 それに気づかず、マァムは今の悩みをそのままぶちまける。

 ヒュンケルを男性として意識しているのかどうか、自分でもよく分からないのに、エイミが彼を好きと聞き、動揺していることを語る。

 これが嫉妬なのか、それとも自分達以外にヒュンケルの理解者が現れたのを戸惑っているだけなのか、そう問いかけるマァムは、ポップがとっくに説明書を読むのも止めたことや、その背が小刻みに震えていることにも気がつかない。

マァム「やっぱり、私って……」

 言いかけたマァムの言葉を、ポップは遮る。

ポップ「……うるせぇな……!!」

 憮然としたその一言に、戸惑うマァム。

マァム「え……!?」

 本人が分からないことが自分に分かるはずがないと、怒りも露わに怒鳴りつけるポップ。
 急に怒鳴られたことで、そんな言い方はないと言い返しかけたマァムだが、ポップの怒りは収まらない。

 生死を賭けた戦い前に恋愛相談をされた不満だと言い、マァムがヒュンケルを好きかどうかなど自分には関係ないと声の限りに怒鳴りつけた。
 暴言と言っていい言葉に加え、一度もマァムを振り返らず、強い拒絶を見せるポップに、ショックを受けるマァム。

 すぐにポップに謝る彼女は、彼の怒りの源に気づいてはいない。
 戦いを前に特訓していたポップを気遣うマァムだが、それでもこんな話はポップにしか出来ないと思ったと言ってしまう辺りに、彼に対する信頼が感じられる。

 震える声でもう一度謝り、身を翻してその場から駆け去るマァム。彼女を振り返らず、だた肩をふるわせていたポップは、頭を振り上げてから思いっきり近くの木にぶつけた。

 大きめの音と共に、木の葉が揺れ落ちる。
 自分のバカさ加減を自覚しているポップは、自分で自分を責めていた。マァムが自分を信頼して相談に来たのに、最低な態度を取った自覚がある。自分の心の狭さに憤りを感じ、無意識に手にした杖を握りしめるポップ。

 自分で自分に腹を立て、ポップは勢いに任せて杖をぶん投げる。杖は、なんと当たった岩を爆破させた。
 驚き、杖へと駆け寄るポップ。

 岩を砕いたのに傷一つ無い新しい杖。額の血を拭い、ポップは杖の説明書を改めて読み返す。
 ブラックロッドという名のその杖は、魔法力を打撃力に変換でき、持ち主の意思に応じて形状を変化させることができるという。
 
 杖を手に取ったポップは、軽く回転させた後で今度は意識して杖を操作する。一瞬で槍のように伸びた杖は、遠くの岩を軽く粉砕した。
 威力を実感し、使えると言う手応えを確信するポップ。

 先程、無意識に込めた魔法力が発揮した威力を考えれば、肉弾戦でもかなり戦えると言うことになる。
 杖を元の大きさに戻し、それを見つめながらポップは開き直っていた。

 あれだけやってアバンのしるしが光らせられなかったのなら、後は実戦でなんとかするしかないと腹をくくったのだ。
 みんなが自分を信じてくれている……ならば、土壇場になれば自分にも出来ると、信じよう――そう思い、ポップは空を見上げた。






 森の別の場所では、獣王遊撃隊を前にチウの演説が始まったところだった。
 決戦を前に、士気を高める遊撃隊達。
 さらにチウは、兵士達から遊撃隊とモンスターの区別がつきにくいという意見に対し、獣王遊撃隊のマークを作ったという。番号が振ってあるだけのただのバッジなのだが、一人ずつ、手ずからつけてあげるチウ。

チウ「だいごは隊員十号……と、あれ、おかしいな? 数が合わんぞ、11匹いる……」

 一人、多いメンバーを疑わしそうに見ていたチウだが、最後の一人は軽く挨拶しながらポーズを取る。
 白いシーツに落書きを書いたような珍妙な変装は、紛れもなくブロキーナ老師だった。

 師の登場に驚いて腰まで抜かすチウだが、老師は自分は謎の怪物のビースト君だと言い張る。バレバレの変装にチウでさえ呆れているが、老師は人知れずに弟子を助けるのがかっこいいのだと言う。
 みんなと同じバッジをねだる図々しい師に、チウは思いっきりコケてひっくり返った。







 カール砦の会議室ではアキームが地図の一部を指し、ロロイの谷が処刑地であること、モンスターが集結していたことを報告していた。
 フローラ、アキーム、バウスン将軍、ノヴァはそれを聞きながら翌日の作戦を立てているところだった。

 周囲を山に囲まれているため、包囲されたら逃げ場がない。地の利が悪い上に、ミナカトールを使う時はアバンの使徒五人は戦えないと、フローラは深刻な表情を見せる。

 自分達が全戦力で敵を近づけさせないようにしなければならないというフローラに、それは自分の役目だとノヴァが頷く。
 だが、そこに割り込んできたのはロン・ベルクだった。

ロン・ベルク「そんな寄せ集めの戦力で大丈夫なのか?」
 
 彼に対し、警戒の表情を見せる一同。特にノヴァは嫌悪を隠しもせず、どういう意味かと問い返す。

 酒を飲みながら、持ちこたえられるのかと皮肉げに問いかけてくるロン・ベルクに、ノヴァは椅子を蹴って立ち上がり、自分達はあなたみたいに酔狂で戦っているわけじゃないと反論する。

 命がけで戦う気でいるノヴァに、ロン・ベルクはそれだけでは勝てず、無駄死にするだけだと素っ気なく言う。
 激昂し、剣を抜こうとするノヴァ。隣にいたバウスン将軍が肩に手を当てて抑える。

 そこまでノヴァの気を逆なでしながら、ロン・ベルクは悪びれた様子も無く剣を掴み、用心棒を申し出る。
 意外な申し出に、ノヴァやフローラも戸惑う。だが、ロン・ベルクは酒瓶を手にしたまま、言い切った。

ロン・ベルク「最後まで、とことん付き合ってやろうと思ってな……」






 寝室の一つ。
 部屋の灯りは消され、カーテンの無い窓から月明かりだけが差し込む部屋。二つあるベッドの一つは空で、窓際のベッドに横たわっているダイ。だが、寝付けないのかむっくりと起き上がる。

 






 廊下をひたひたと歩くダイ。
 灯りがついている部屋の前を通りかかる。開けっぱなしの扉の中にいたのは、メルル。
 エプロン姿のメルルは、並べられた薬草を小さな袋に入れ、紐で丁寧に口を結んでいるところだった。

 ダイに気づき、振り向くメルル。
 
ダイ「なにしてるの?」

メルル「みなさんに配る薬草の仕分けです。ダイさんこそ、どうしたんです?」

ダイ「なんか、興奮して眠れなくて。やっぱ、おれ、寝なきゃダメかな?」

 くすりと笑い、メルルは小さな袋から夢見の実を取り出した。
 それを飲むとぐっすりと眠れて、心の綺麗な人は見たい夢が見られるのだという。ダイならきっといい夢を見られると言うメルル。

 ダイは夢見の実を口に放り込み、お休みを告げて部屋を出る。笑顔でダイを送り出したメルルは、わざわざ廊下に出て彼を見送る。
 明日は過酷な戦いが待っているからこそ、せめて今日はゆっくり休んで欲しいと小さな勇者を見送るメルル。






 外の風景が映し出される。
 森の上に広がる星空が、美しい。と、その星がまるでプラネタリウムで見るように、円を引いて時間が流れていく。
 流れる星空が真っ白に染まり、白い雲の浮かぶ青空へと取って代わる。

 太陽が明るく照らし出す空の下には、ピンクと黄色の花々が咲き乱れる一面の花畑があった。
 遠くに、二人の人影が見える。

 それは、ダイと彼の母親であるソアラ姫だった。死んだ時の年齢のまま、まるで姉のような年の差の母の手を引いて、ダイは嬉しそうに走っている。
 ダイの右手に、しっかりと両手でつかまりながらマントとスカートをなびかせて走るソアラ。
 その動きに合わせて、雪のように花びらが舞い上がる。
 優しげに微笑むソアラ。

 やがて、ダイは座り込んで花冠を編み始める。それを、少し離れた場所で静かに見守るソアラ。
 完成した花冠を両手で高く掲げ、ダイはソアラに駆け寄る。

 ソアラの頭に、そっとそれを被せるダイ。
 ダイの動きに合わせ、頭をわずかに低くして受け入れたソアラは、嬉しそう。
 ダイもまた、ソアラを嬉しそうに見下ろす。

 花畑の向こうから、花びらが一際強く吹いてきた。
 そして、歩いてくる人影が見える。シルエットだけでも一目で分かる、特徴的な戦装束の男。
 男に気がついたソアラ、立ち上がって振り返る。ダイももちろん男に気づいて、驚いたようにずっとそちらを見ていた。

 歩いてくるのは、竜騎将バラン。
 彼が歩く度に、花々が避けるように消え失せていく。花を散らしながら、妻と子に向かって歩み寄るバラン。

 バランを見つめるソアラの髪の花冠も、呆気なくほどけて散ってしまった。悲しそうに目を伏せるソアラ。
 だが、ダイは真正面から父を見上げる。バランもまた、まっすぐに息子を見ていた。

 近寄り、何も言わずにダイの肩に手を置くバラン。言葉は一言も言わなかったが、その目には万感の思いが映し出されていた。
 バランがダイの肩に手を置いていた時間は、長くは無かった。むしろ、すぐに離されたと言っていい。

 そして、自由の身となったダイは前に向かって歩き出した。
 花が散った後の荒野を進む我が子を、並んで見送るバランとソアラ。後ろを振り向かずに、ダイは思う。

ダイ(母さん、悲しまないで。おれ、自分で決めたんだ)

 歩くダイの姿に、変化が現れる。いつものように頭飾りを身につけ、剣を背負った戦装束へと変化していく。

 勇者ダイとしての姿を取り戻したダイは、ようやく後ろを振り返った。寄り添い合う両親を見ながら、戦いへの決意を新たにするダイ。
 絶対に負けないと、強く思い、ダイは歩いて行く。
 そして、世界は再び真っ白な光に包まれた――。






 寝室に横たわっているダイ。
 隣のベッドには、相変わらず人のいた気配がない。窓からは太陽の光が明るく差し込んでくる。
 
 むくりと起き上がり、太陽のまぶしささを気にしてか、一瞬、手をかざすダイ。が、すぐに身体の向きを変えてベッドから降りる。






 鳥の鳴き声が聞こえる森の中。
 木々の合間から見える木漏れ日が、眩くも美しい。
 そんな光景を、清々しい表情で眺めているダイ。そこに、レオナが砦から出てくる。

レオナ「ダイ君! 晴れやかな顔ね。何か、いいことでもあったの?」

 母親の夢を見たことを、レオナに話すダイ。夢見の実をくれたメルルにお礼を言いたいけど、いないと言うダイ。

レオナ「みんなと一緒に朝早く出発したわ。メルルも戦うって」

ダイ「メルルまで!?」

 反対したが、メルルは聞かなかったのだという。どうせ世界が終わりになるなら、足手まといになってもみんなと戦いたいと望んだのだ、と。
 それを聞いたダイは、マァムとポップのことを聞く。

レオナ「さぁ……どうしてるのかしらね?」







 部屋にいるマァムは、手袋をはめ、肩当てを装着する。襟元を正している時、ドアをノックする音が聞こえた。
 マァムに呼びかけてきたのは、ポップ。

 ドアの向こうから、ポップは昨日のことを謝ってきた。マァムも反省して謝罪すると、ポップはことさら明るい声でお互い水に流そうと提案してくる。頑張ってヒュンケルを助け出そうと言うポップに、マァムもまた明るさを取り戻し、腕に魔甲拳を装着した。







 ドアの外では、ポップが壁により掛かって経っていた。
 思い詰めた表情をしているポップは、ヒュンケルのついででいいから自分のためにもマァムに祈って欲しいと考えていた。本番で、ボロを出さないように、と――。







 砦の外では、レオナはどこか残念そうな顔をする。

レオナ「あら〜?」

 並んで、元気よく走ってくるポップとマァム。普段通りの彼らに、レオナはガッカリしている様子だ。それを軽くたしなめるダイ。
 四人がそろい、ダイは頷いてから手を伸ばした。

 その手に、レオナの手が重ねられる。反対側からマァムが、最後にポップの手が重なった。

 レオナが真剣な声で、最後の戦いにおける覚悟について念を押す。

レオナ「失敗は絶対に許されないと思って! もし失敗しても次にトライすればいいなんて考え方をしていたら、確実に負けるわよ」

 その言葉に、ビクッとするポップ。

レオナ「これが私達のラストバトル。いいわね!?」

 その言葉に、力強く頷くダイ。マァム、ポップもそれに続いた。







 太陽が中天に上がる頃合い。
 雲一つ無い空に、太陽が強く輝いていた。周囲を山に囲まれたロロイの谷では、石を組んだ立派な処刑場が作り上げられていた。
 怪物達が取り囲む中、ヒュンケルとクロコダインが並んで十字架に貼り付けにされている。
 そして、上空にはバーンパレスが浮かんでいた――。

 
 


《感想》

 思いっきり恋愛方向に傾いた決戦前夜がいいですねえ♪
 ダイの剣を背負って留め具を止めるシーン、アニメではレオナが近づく前にすんなりと止めていましたが、実は原作では止めるのにかなりもたついています(笑) レオナとの会話がほぼ終わるまでかかっているから、原作ダイはああいう細かい作業が苦手なのかも。

 ロン・ベルクの説明、持って回した言い回しを全部入れてくれたのは感心。ただ、アニメではメモを読むのを『決戦までに』と言っていましたが、原作では『明朝までに』でした。

 メモを読めないダイが、原作では顔を赤くして恥じていたのが可愛かったので、アニメでのあきらめ顔では物足りないかも。
 何より、ノヴァが『たしかに、ちょっと勉強した方がいいな……』とこっそり思うシーンがカットされたのが残念です。

 アニメではロン・ベルクは最初からヒュンケルが捕まったことを知っていましたが、原作ではそれを知らず、ヒュンケルがどうしたと尋ねています。
 まあ、鏡を使った通信文字をロン・ベルクが見たのならば、当然魔族の文字は読めるでしょうから、知っていても不思議はないですね。

 原作ではロン・ベルクは家に鏡を置いていなかったけど、アニメでは置いていたと解釈しても良さそうですね。

 会議室、チウが椅子に座らずに台に乗っているのが妙に笑えます。後、ロン・ベルクの右隣の椅子が空いたままですが、あそこはポップ用かなと思いました。
 
 ロン・ベルクの人間についての台詞とノヴァの怒りのモノローグは、アニメの改変ですね。こちらは両方とも言いそうなイメージでいいのですが、ロン・ベルクの武器を作ってきた台詞の改変は残念。

原作ロン・ベルク「全く気をそがれたぜ。せっかく意気込んで、パーティー一通りの武器を作ってきてやったというのに、半分近く持ち主なしとはな……!!」

 ちょっと斜に構えたこの台詞が好きだったので、これが変更されたのは本当に残念でした。
 ヒュンケルとクロコダインはともかく、ポップは砦にいて、今は席を外しているだけだというのに、持ち主がその場にいないと拗ねているロン・ベルクのわがままさが気に入ってたんですよ。

 バダックさんがアポロさん達と一緒に土下座で頼み込んだという台詞も、カットされていましたし。

 でも、バダックさんが武器の説明をするついでに、ポップの不在に気づく部分の改変はいいですね。ダイもそこでポップがいないと気づき、森に行ったと知って、何の疑いも無く訓していると思い込む単純さがいいです。

 しかし、マァムは武器に巻いた布をビリビリに破いちゃっていましたが……前回のダイの剣の時も思いましたが、なぜ布を解こうとは思わないのか(笑)

 バダックさんがチウに武器を上げるシーン、原作では無言のまま肩を叩き、ニヤニヤ近づいてから武器があることを勿体ぶって話したり、チウの勘違いを否定したり、事情を話したりしていましたが、アニメではド直球ストレートですね(笑)

 ズタズタヌンチャク登場時のバック、クレヨンの線に雑に絵の具を塗ったような子供の落書きな背景に笑いました。
 でも、ヌンチャク自体は少しだけ改良されています。

 原作のズタズタヌンチャクは棘部分が外に広がるデザインになっていて、さらに手にぶっ刺さりやすそうなデザインでした。アニメでは、棘部分がヌンチャクに沿う形で生えているので、見た目は原作版よりも大人しい感じです。
 まあ、どちらにせよ、敵よりも握り込んだ味方の手を傷つけるのに向くデザインなのは変わりませんが(笑)

 ロン・ベルクの主張、思っていたよりもバーンに苛立ちを感じているような口調なのが意外でした。原作を見る限りでは武器屋として中立思想かと思っていたんですが……声に含まれたバーンへの文句を聞くと、武器が個人の技量に負けたことに、つまり個人的感情で逆恨みしているようにしか聞こえませんが(笑)

 原作ではレオナとダイの会話の後に、不満そうなノヴァの顔のコマがあるのですが、アニメではカットされていますね。
 ノヴァのロン・ベルクへ不満やヘイトが高いからこそ、気を許した後のツンデレっぷりが楽しいので入れて欲しかったです。

 チウがクロコダインの斧を預かるシーン、原作よりも台詞やアクションが増えていいですね。クマチャとのやりとりも可愛いですし♪
 原作ではチウは最初から部下に持たせておくと言っていましたが、アニメでは自分で持とうと頑張った末に部下に持たせているのが笑えます。原作より、斧を自分で持つのに苦労していますしね。

 エイミさんの激白、素晴らしい見せ場!
 しかし、レオナ、途中で「うんうん」と合いの手を入れていましたが、雰囲気台無しでしょうに(笑)
 黙って話を聞いているダイより、ある意味で空気が読めてないかも。

 槍を抱きしめながら告白するエイミさん、まるで槍がヒュンケルであるかのように頬を染めてすり寄るシーンとかが、密かに色っぽいです。
 マァムに「構わないでしょう?」と問いかけるシーン、原作でも結構挑発的だなと思っていましたが、アニメだと一段と情熱と迫力を感じました。

 マァムが逃げ去った後、ダイが心配そうにマァムの名を呟いていますが、ここはアニメの改変ですね。
 原作のダイは、槍をギュッと抱きしめるエイミと、逃げ去ったマァムを見比べているだけで何も口にしていません。

 エイミの元に、ゴメスを初めとした『エイミさん応援隊』が集まるシーン、原作ではフォブスターの台詞は実はとぼけた顔の一般兵の台詞でした。が、アニメではフォブスターの物になっていますね。
 台詞も、微妙に改編されています。

原作兵士A「あなたみたいな美人をふるなんて、見る目のない男ですなあ……!!」

 この台詞の何が改編に引っかかるのか、疑問ですね。もしかして、ヒュンケルを貶すのがNGとか?(笑)

 また、エイミがヒュンケルに自分に合わせて貰おうとするのでは無く、自分がヒュンケルのところまで降りていくべきだと語る台詞がカットされています。この台詞も好きだったので、アニメで聞いてみたかったですねえ。

 レオナの燃える宣言、めちゃくちゃ嬉しそうな台詞でいいですね。原作では火が燃える方の『燃える』なのですが、アニメで聞くとオタクな意味での『萌える』に聞こえてしまいます(笑)
 好奇心丸出しのレオナのスケベ顔には、爆笑しました♪ ダイ大では女の子が崩れた表情を見せるシーンが少ないので、貴重ですね。

 でも、この後のダイの戦いを前にして五人の足並みが崩れることへの不安と、レオナの気持ちの方が大切だと言う主張シーンが思いっきりカットされているのが残念でなりませんっ。
 そして、メルルの格好がエプロンじゃないのが不満すぎますっ!
 ダイのモノローグも、改変されていますね。

原作ダイ(これ以上話をややこしくしないでっ!!)

 森を走るマァムのシーンで、空に浮かんだ満月が美しい……って、よく考えたらなぜに満月!?
 一昨日、ダイが逃げ出した日の月は、下弦の三日月でしたよね!?

 原作をチェックしてみたら、原作ではここで月は出ていないんですよね。アニメの背景スタッフさんのミスか、あるいはアニメダイワールドでは地球とは違う月の満ち欠けなのか(笑)

 ポップのメディーション、気に入りました。
 原作通り、集中が途切れると魔法力が消えて光が消える描写の細かさが好きです。
 
 ポップがミナカトールについて思う時の、ダイ、マァム、レオナ、ヒュンケルの四人のイラストカットがめっちゃかっこよかったです! ポップが混じっていないのが残念ですが、ポスターで欲しいぐらいですよ。

 マァムの恋愛相談にポップが本気で怒るシーン、よかったです。
 たんに怒っているだけで無く、動揺のあまり声が震えている演技が実に良かったですよ〜。

 マァムはポップに謝るシーンの演技も、いいですねえ。
 ポップがなぜ怒っているのか分かっていないところもそうですが、ポップなら自分の悩みをなんとかしてくれると無意識に思い込んでいて、彼に拒絶されたことにショックを受けている感じがたまりません。

 エイミさんがヒュンケルを好きと打ち明けた時よりも、ポップの悩みを否定された時の方が動揺が強いという、演技の差に感服しました♪

 ポップが頭を木に打ち付けた後、額に血が滲むシーンははっきりと見せなかったので流血は止めたのかと思ったら、杖が岩を爆破したシーンではちゃんと流血していたのを発見。
 暗かったのと、角度のせいで見えにくいだけだったみたいですね。

 ポップのブラックロッドを扱うシーン、いい動きでかっこよかったです。空を見上げて、自分に言い聞かせるように自分を信じようとするシーンも良かったですが……ここにも、空に満月が浮かんでいました(笑)
 原作では月はなく、星しか浮かんでいないんですけどね。

 獣王遊撃隊、フルメンバーがそろい踏みなのは嬉しいのですが……なぜにいつも、夜に戸外での出番しかないのかっ(泣) おかげで未だに正確な色合いが分からないです。

 画面を放射状に6分割して、一人ずつバッジを張っていくシーンは、可愛くて良かったです。さらに、7から10番は四分割された画面でのバッジ授与でした。
 原作ではゴメちゃんと大カエルのだいご以外は略されていたことを思えば、たいした出世ですね(笑)

 ブロキーナ老師じゃなくてビースト君とチウの台詞は、かなり大幅にカットされましたが、その代わりのようにビースト君がクルクルと回りながら自己消化するカットが追加されています。

 しかし、老師の声がなんともお茶目で可愛いです。オッサン声なのに(笑)
 チウが「ずこーっ」と口に出しながらコケるギャグシーン、パ○マンで定番のギャグだったなぁとなんだか懐かしくなりました。

 ロン・ベルクがノヴァの台詞を遮るシーン、台詞が改変されています。

原作ロン・ベルク「……大丈夫なのかね……そんな戦力で……」

 どちらがより失礼かは分かりませんが、とりあえずどちらも貶し気味なのは変わらないですね。
 ロン・ベルクが用心棒を名乗りでる際、アニメではなぜか酒瓶を掲げているのに笑いました。そのせいで原作よりも不真面目に見えてしまいます〜。いや、不思議とカッコイイですけど。

 また、ロン・ベルクの「最後まで〜」の台詞はアニメの改編です。

 ダイが寝ている部屋は、原作には出てこないアニメの改編ですね。原作ではダイが歩いているところから始まる上、起きた時もすでに外にいたので、どこで寝ているのか分からないままでした。

 寝間着が替わっているのは原作と同じですが、色合いが不明だったのでアニメで見られて嬉しいです!
 灰色がかった青で、襟ぐりに白いラインの入った長袖パジャマで、前に着ていた半袖パジャマとは別物ですね。
 ダイには少し大きいのか、手足の裾を折り曲げてあるのが萌えます♪

 そして、ようやく登場したエプロンメルル! シンプルな白いエプロンが、すごく似合っていますっ。
 ただ、原作ではこのシーンはメルルは皿洗いをしてましたが、アニメでは薬草の詰め合わせを用意していますね。

 戦いの役に立つように頑張っているメルルがいい感じではありますが……皿を洗っている時のメルルは珍しくも袖をまくり、腕輪を外していたレアバージョンだったので、ちょっと残念かも。

 状況の変化に応じて、ダイとメルルの台詞もそれぞれ改編されています。
 原作ではダイは長々と説明し、みんながどうしているか気になったと言っていましたが、アニメではカットされまくりです。

 そして、メルルが手にした袋から夢見の実を出してきましたが……直前までメルルは薬草を包んでいただけに、夢見の実って普通の薬草に混ぜるような品だったのかと、一瞬混乱しました(笑)

 そして、色が不明だった夢見の実、青みがかった紫色の小さな粒だと判明。大きさと色から言って、ブドウみたいな感じです。
 ただ、ダイがもぐもぐ噛んでいたので、割と歯ごたえはあるのかも。

 ダイを見送るメルルが、実に可憐で可愛かったです! メルル、本当ならポップにあの夢見の実をあげたかっただろうなぁと思わずにはいられません。

 時間経過を示す、星が円上に流れる動き、よかったです♪
 原作の演出通りなんですが、アニメだとやっぱり動きが綺麗ですね。プラネタリウム好きな作者にしてみると、すごく心惹かれます。

 ダイの夢、ほのぼのしてていい感じ♪
 オープニングの場面のように、少し色合いを変えて絵本風に仕上げるかなと思っていましたが、単に明るさを増しているだけで普通の色合いでした。

 ダイの着ている服は、彼にしては珍しく小さめの襟がついた白い半袖シャツに、クリーム色の長ズボンという、平和的な格好でしたね。

 ただ、原作でダイとソアラが向かい合ってダンスをしているような図が好きだっただけに、ダイがソアラの手を引いて走るだけになっていたのは残念!

 それに、花冠を作ったダイが転ぶというドジっ子展開が無くなったのも無念! 転んだダイを見てソアラが焦るシーンや、ダイが冠を庇って、無事と知ってホッとするシーンが見たかったのに〜。

 そう言えば花畑、ピンクと黄色の花ばかりなのは意外でした。天国っぽく、白い花メインかな〜と思っていたので。
 そして、花畑はピンクと黄色の花ばかりなのに、ダイが作った花冠の花はどう見てもマーガレットとパンジー……白と紫でした(笑)

 花言葉だと、マーガレットは『真実の愛』や『信頼』、パンジーは『私を思ってください』なのですが、ダイから母へ向けるにはあまり向かない感じです。

 原作では、ダイがいつも以上に子供っぽく、幼げな感じに描写されていましたが、アニメではソアラの若さが際立っていたせいか、むしろダイが少し大人びた印象を受けるぐらいでした。

 バラン登場時、ダイとソアラが原作では嬉しそうな表情を見せるのですが、アニメでは戸惑いの表情でした。
 ダイとバランの無言のままの見つめ合いや、歩き出したダイの衣装が戦いの装束に変化するシーン、いいですねえ。

 でも、なんと言っても圧巻なのが、決意を浮かべて歩くダイと、それを見送るソアラとバランの一枚絵です。光の当たり具合を強調した水彩画風の色塗りが、惚れ惚れするほどいい出来です。こ、これはぜひ、イラスト集にっ。

 ダイの起きた時のシーンは、アニメの改変ですね。
 ダイってば、寝相も寝起きもすごくいいです。夢の余韻に浸る風でも無いですし、なぜこのシーンを入れたのか疑問は感じますが、ちょっとした生活風景が見られるとお得な気分です。

 しかし、いくら物質不足とは言え、窓にカーテンぐらい掛けてあげて欲しい気がしますね(笑)

 レオナの台詞に改変が。

原作レオナ「ずいぶん機嫌がいいわね。なにかいいことでもあったの……?」

原作レオナ「もういないわ。メルルやエイミは私たちの支援軍だもの、もう昨夜のうちにカール山脈に向かっているわ」

 原作では、戦い支援軍のスケジュールがハードになのにご注目。
 他にもレオナは詳しく作戦の手順をダイに説明してますが、そこはカットされています。

 まあ、それはいいのですが『全くエイミと言い、メルルと言い、恋する乙女はみんな行動的よね〜』の台詞が無くなったのが残念無念!
 なんだかとってつけたように、マァムとポップの行方についての台詞が増やされていますが、原作では砦に残っているのは自分とダイ、ポップとマァムだけと説明していたから、いるのは把握していたはずなんですが。

 マァムの着替えシーン、原作にあった下着のみの姿をすっぱりカットして、手袋をはめるシーンからになっていました(涙) わ、分かってはいましたが……っ。
 
 扉越しのポップとマァムの会話、よかったです。
 ポップの表情は見えないままですが、ポップが最初に真面目に謝った後、マァムの謝罪を軽く受け流すように明るく、前向きな方向へ話を誘導する感じがいいですね。
 結果、マァム画明るさを取り戻しています。

 ですが、ドアの外のポップは思い詰めた顔をしているので、会話の時は相当無理をして頑張っていたように思えます。

 全員が手を重ねるシーン、ダイとポップ、レオナとマァムが向かい合う形での円陣なのは変わりませんが、手を置く順番は原作ではダイ、レオナ、ポップ、マァムの順でした。
 これに関しては、アニメの置き方の方が好きです。

 レオナの台詞も、ずいぶんと改変されています。

原作レオナ「今回の戦いに負けてもまだ手はあるかもしれないけど、『もし失敗しても次にトライすればいい』なんて考え方してたら確実に負けるわよ!! 失敗は絶対に許されないと思わなければ……!!」

 言っていることはほぼ同じですが、言う順番を変えることでアニメの方が説得力が増していて、インパクトも強まっています。
 ビジネス書によく書いてある、インパクトのある言葉を最初にビシッと言えという法則ですね。

 次週の予告、最初から最後までほぼヒュンケルだけで終わりました(笑)
 クロコダインやミストバーンの出番はありましたが、ダイ達の出番はナッシング。いや、映像とナレーターはバッチリあっていますし、ネタバレもしていないし、いいのですが……ポップの出番が全く予告されないと寂しいですね〜。

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