『愛の超激突』(2021.2.12)

  

《粗筋》

 アルビナスのニードルサウザンドで吹き飛ばされたマァムは、派手に後方に投げ出された。一回転する形で壁に叩きつけられたマァムは、かなりのダメージを負っていた。

 すぐには立ち上がれないマァムを、アルビナスは見下ろしながら嘲笑う。
 自分は最初から捨て石になるつもりはなく、逆にハドラーを救うつもりだと宣言するアルビナス。

 オウム返しに問うマァムに、アルビナスはハドラーの余命がわずかなこと、しかし、バーンならば彼を救える可能性があることを話す。
 アルビナスが一人でダイ達を倒し、その上でバーンにハドラーの救命を懇願するつもりだと言う。

 よろめきながら、ようやく立ち上がったマァムは、それがアルビナスだけの意志なのかと問いかける。
 独断だときっぱりと宣言するアルビナズの目には、何の迷いもない。ハドラーの意に染まぬことであり、彼の怒りを買うことも覚悟の上だ。

 それでも、ハドラーの存命こそが最大の望みだと宣言するアルビナスに、ハッとしたように息をのむマァム。

 アルビナスの心境を思いやるマァムだが、アルビナスは自分のためというなら手間をかけさせずに死んでくれと皮肉に言い切った。その言葉に、またも息をのむマァム。

 アルビナスは再び、ニードルサウザンドを放った。
 横殴りの雨のような金色の光の束が、マァムに放たれる。文字通り千の針を思わせる攻撃のせいで、土煙が立ちこめる。
 それが晴れた後には、壁を抉った痕跡だけが取り残されていた。
 じっとそれを見ていたアルビナスの目が、左斜め上へと向けられる。

アルビナス「……ム」

 マァムが攻撃を逃れ、左側の壁の後ろにしゃがみ込んでいるのに気づき、笑いながら近づいていくアルビナス。
 マァムをネズミのようだと嘲り、彼女ごときにこれ以上手をかけていられないと、全力で戦う時の姿へと変身する。

 光に包まれたアルビナスの身体から、すらりとした足が伸び、しっかりと地面に立った。胴体が伸び、女性らしいメリハリの利いたボディーラインが露わになる。
 肩の飾りが羽のように広がり、閉じていたマントが開かれる。

 そして、小気味いい金属音と共に左腕が綺麗に上に向かって伸ばされた。指先までピンと伸ばされた右手は、下へ向けられている。

 アルビナスに手が生えたことに驚くマァム。
 アルビナスの身体が光り輝き、そのまぶしさに、マァムは思わず手を上げて目を庇う。

 光が収まり、アルビナスの方を見たマァムは驚き、自ら壁の後ろから出てきた。

マァム「それが……あなたの本当の姿ッ!!」

 佇むアルビナスは、こけしのように手足のなかった姿と一変して、女性形に変化していた。
 強すぎる戦力を抑えるため、普段は手足を封じていたという。
 この姿になったからには、もうあなたに勝ち目はないと挑発的に言うアルビナス。

 一瞬でその姿が消えたかと思うと、彼女はマァムのすぐ背後に立っていた。驚いたように後ろを見るマァム。
 敵から逃れるため、マァムは地面を蹴って高々と飛び上がった。

 即座に、自身も地面を蹴るアルビナス。彼女の身体は、マァムより速く、高い位置へと飛び上がる。
 再び、アルビナスは背後から強襲をかけた。
 
 空中で最高点に達し、一瞬とは言え動きが止まったマァムは、後ろをみてその速さに驚く。
 鬼気迫る目で迫ってきたアルビナスに背中を叩かれ、たたき落とされるマァム。

 マァムは石畳が壊れるほど、強い力で叩きつけられた。
 苦痛に呻きながら、なんとか起き上がろうとするマァムだが、空に浮かんだままのアルビナスは淡々と説明する。

 自分の得意呪文はベギラゴンであり、無数に分散し全身から針のように放つ技がニードルサウザンド。
 手が使えるときには、そのエネルギーを一箇所に集められると言いながら、アルビナスはサウザンドボールをマァムに投げつけた。

 ニードルサウザンドの時以上の爆破が巻き起こり、石畳が大きく砕けて爆煙があがる。攻撃の余波により、尖塔さえも崩れ落ちた。
 静かに手を下ろし、巻き起こる黒煙を見下ろすアルビナス。

 黒煙の中にかすかな人影を見いだしたアルビナスは大きく身体をのけぞらせ、二発目のサウザンドボールを投げつける。
 それをまともに食らい、悲鳴を上げるマァム。

 尖塔は完全に崩れ落ち、瓦礫がそこかしこへと散らばる床に、アルビナスはかすかな金属音を立てて降り立った。
 何かに気づいたアルビナスは、嘲笑じみた笑いをこぼす。

 瓦礫の影に隠れ、必死にベホイミで回復しているマァムを揶揄するアルビナス。

 自分で自分にベホイミをかけながら、マァムはアルビナスの実力に感じいっていた。単身でもダイ達を全滅させられるだけの実力があると認めながらも、マァムが気にしていることは別にある。

 回復を続けながら立ち上がったマァムは、もう一度アルビナスにあなたとは戦えないから考え直してと訴えた。
 それを命乞いの変形と捉えるアルビナスは、冷たく突き放す。

 しかし、マァムは食い下がった。
 アルビナスをそこまで駆り立てる想い……それはただの忠誠心ではないと訴えるマァム。
 アルビナスは、冷たい目で彼女を見返すばかりだ。

 アルビナスがハドラーを想っていると言いかけたマァムを遮るように、アルビナスが声を上げて笑う。
 挑発的なその笑いは、おかしくて笑っているものではない。
 マァムの指摘の愚かさをあげつらうための笑いだった。

 自分は男でも女でもなく、駒だと断言するアルビナス。
 駒は戦いの道具であり、人を愛する感情などないと言い切った。そんな彼女を説得しようと呼びかけるマァムだが、アルビナスはそれを回復の時間稼ぎを決めつける。

 ショックを受けたマァムは、思わず目を伏せる。
 回復魔法の光を放っていた手から光が消え、だらりと無防備に落とされた。マァムが観念したと見て、トドメのためにサウザンドボールを生み出すアルビナス。

 マァムは、確かに絶望していた。
 アルビナスにはどんな説得も効果が無いと、悟ったのだ。自分の思いだけで一杯のアルビナスに対して、どうすればいいのかと苦悩するマァム。

 そんなマァムの悩みも知らぬまま、アルビナスはサウザンドボールを放った。
 自分に迫る来る恐るべき雷球を、棒立ちで見ているだけのマァム。

 目を固く閉じるマァムの脳裏に、懐かしい師の呼び声が響く。それを聞いて、ハッとしたように目を開けるマァム。





 真っ白な世界の中に浮かび上がるのは、師から卒業の証をもらった時の記憶だった。
 まだ幼いマァムに、愛や優しさだけでは人を守れないこともあると、優しく諭してくれたアバン。

 正義なき力が無力なように、力なき正義もまた無力だと諭すアバンの言葉を、幼いマァムは涙の滲んだ目で聞いていた。






 その記憶を思い出すと同時に、マァムはここでやられてしまうわけにはいかないと強く思う。
 爆風に、マァムの髪が激しく荒れ狂う。

 マァムの脳裏に、仲良く並ぶダイとレオナが浮かぶ。
 そして、瀕死のメルルに告白したポップの姿が。
 ヒュンケルとクロコダインの姿も思い浮かべ、自分にも大切な人がいると決意を新たにするマァム。
 目の前に迫るサウザンドボールに向かって、マァムは叫ぶ。

マァム「私にだって!!」

 バーンパレス左翼に、これまででもっとも大きな爆発が起こる。
 爆炎をじっと見ていたアルビナスだが、その顔に驚きが浮かぶ。
 そこには、左手に盾のようなものを付け、身がまえるマァムの姿があった。本来は手甲だった武器が、大きく伸びて変形し、マァムを守る盾となっている。
 驚くアルビナスの目の前で、マァムは一声叫ぶ。

マァム「鎧化(アムド)!」

 伸ばしたマァムの手が桃色の螺旋の光に覆われ、手甲となる。そして、マァムの額に伸びた螺旋は、額飾りへと変じた。
 彼女の髪をまとめていた黒いお団子飾りがはじけ飛び、中からマァムの豊かな髪がぶわっと広がった。

 なびく髪に、螺旋がクルッと巻きついて根元をまとめる。
 さらに螺旋は彼女の左胸、左足にそれぞれ巻き付いて鎧へと変化する。二人の女戦士は、真っ向から向かい合う。

 武装を身に纏ったマァムは、毅然とした表情で睨むようにアルビナスと対峙する。
 アルビナスに、あなたを倒すわと強く言い切ったマァムは、肩飾りに指を当てる。

 カチャリと音を立てて、飾りが外れた。それを指に引っかけて、クルクルと回しながらマァムは宣言する。

マァム「守らなければいけない大切な人がいるのは……あなただけじゃない!」

 拳に攻撃のためのメタルフィストを付け、マァムは固い決意と共に拳を前に突き出した。

アルビナス「それは……ロン・ベルクの……ッ!?」

 驚くアルビナスに、マァムはこの魔甲拳がヒュンケルと同じく完全な魔法防御力を持つ鎧へと変化することを説明する。
 しかし、強力すぎる武器なだけになかなか使う気にはなれなかったとマァムは語る。

 それを、静かに見つめるアルビナス。
 マァムは全力で戦う決意を持って、戦いに身がまえた――。






 アルビナスが激昂し、勢い任せにサウザンドボールを放つ。
 彼女の怒りがそうさせるのか、揺れる軌道を描きながら必殺技はマァムへと向かっていく。

 それを恐れる様子もなく、真っ直ぐに走るマァム。
 魔甲拳のはまった左手を前にかざし、マァムは雷針の必殺技に突進する。魔法を弾く鎧の効果で、霧散するサウザンドボール。

 マァム自身は無傷のまま、割れた必殺技の余波が後方の壁に当たり、爆破が起こる。
 さすがに目を見張るアルビナス。

 マァムは実際に使ってみて、ロン・ベルクが利き手ではない方につけろと言った意味を悟る。装着した方の半身は、特に防御力が高いと実感する。
 マァムはメタルフィストをつけた拳で、思いっきりアルビナスに殴りかかる。

 澄んだ金属音と共に、アルビナスのマントの一部が砕けた。
 オリハルコンの敵に対して確かな手応えを確信し、自信を持つマァム。互いにすれ違う形で邂逅した二人の女性は、足を踏ん張って向きを変え、態勢を整える。

 先に動いたのは、アルビナス。
 再びサウザンドボールを放ってくるのを、マァムは低い姿勢で迎え撃つ。飛んでくるボールに合わせて身を翻し、ジャンピングボレーで打ち返した。

 アルビナスにサウザンドボールが当たった隙を逃さず、マァムは凄まじい跳躍力で跳び上がり、彼女に殴りかかる。
 しかし、その攻撃は空を切り、石畳を強く殴りつけただけだった。

 戸惑いの表情を浮かべるマァムのすぐ背後に、突然のようにアルビナスが現れて背中を蹴った。強烈な一撃に、壁まで飛ばされるマァム。
 倒れたマァムに、アルビナスがゆっくりと近づいてくる。彼女の視界からは、青空を背景にアルビナスが逆さに映し出されていた。

 苦悩しながら起き上がろうとするマァムを前にして、アルビナスは汚れてもいない自分の肩の埃を払いのけながら、嘲る。

アルビナス「そんな武装をした程度で、勝ったつもりでいるなんて……」

 だが、起き上がったマァムがくじけることなく、アルビナスに殴りかかった。気合いを込めて拳を打つマァムだが、それはアルビナスの素早い動きに全て回避されてしまう。

 当たらないことに焦りを感じるマァムのすぐ目の前に、不意にアルビナスが顔を寄せた。驚くマァムに、アルビナスは痛烈なボディーブローを食らわす。
 苦悩しつつも、それでも体勢を立て直してアルビナスに殴りかかるマァム。
 しかし、軽く躱され、逆にまたもパンチを食らった。

 アルビナスは冷静にマァムを見ながら腕を伸ばし、裏拳気味に彼女を横殴りにする。足を踏ん張って、なんとかその衝撃に耐えるマァム。
 だが、その性で動きが止まったマァムを、アルビナスは正面から殴り倒した。
 ついに背中から倒れ込むマァム。
 川を跳ねる水切り石のように、小刻みに跳ねながら飛ばされるマァム。それを瞬間移動かと思える速さでアルビナスが追う。

 平然と佇むアルビナスの前で、マァムは苦痛に耐えながら起き上がる。
 相手の動きに戦慄を感じ、このままではいずれやられてしまうと考えるマァム。
 しかし、相手はオリハルコンなだけに閃華裂光拳は効果が無い。こうなったら老師から授かったもう一つの奥義、猛虎破砕拳しかないとマァムは決意する。







 ブロキーナ老師のサングラスが、夕日を受けてキラリと光る。
 その目玉に、沈む夕日の中、神妙に正座するマァムとチウの姿が映し出された。

 閃華裂光拳を伝授されたときと同じ場所で、手枕でだらしなく寝そべった老師は猛虎破砕拳について詳しく説明していた。

 武神流奥義の中でもっとも物理的攻撃力が高いが、反面、身体への反動が大
きいのでめったなことで使ってはいけないと釘を刺された。
 夕日の中、それを真剣な顔で聞いていたマァム。






 魔甲拳のアムドで防御力の上がった今ならば、猛虎破砕拳を使えると考えるマァム。メタルフィストをつけた拳を握り込み、気迫を込める。彼女の気迫に呼応するように、赤い闘気が掌から放たれる。
 その微妙な変化に、アルビナスも気づいた。

 立ち上がったマァムを、アルビナスは面白そうに眺めやる。
 一撃に賭けるマァムの作戦を見抜いた上で、無駄だと決めつけるアルビナス。マァムはやってみなければ分からないと反論するが、アルビナスは熊と山男と蜂にたとえた話をする。

 その意味が分かるかと挑発的に問うアルビナスに、戸惑うマァム。
 マァムの返事を待たず、アルビナスは光の速さで移動する。光の軌跡が、マァムを背後から攻撃した。

 戸惑いながらも避けようとするマァムを、光の軌跡は連続的にマァムを襲う。肩に、顔にとぶつかってくるその衝撃に、マァムは倒れそうになるが、辛うじて踏みとどまる。

 だが、マァムを完全に取り囲んで高速移動する光の軌跡――驚愕するマァムは、すでに光の折に囚われたも同然だった。
 身がまえるマァムに、光の連打が襲いかかる。

 悲鳴を上げ、膝から崩れ落ちるマァム。
 敵の強さを思い知りつつ四つん這いになったマァムに、光の軌跡となったアルビナスからの嘲りの言葉が投げかけられる。

 絶えず高速移動し続け、蜂のように一刺しを繰り返す――超ヒットアンドアウェイ戦法を取るアルビナスに、マァムは打つ手もなければ勝ち目もない。
 勝利を確信し、さらなる攻撃を加えるアルビナス。

 悲鳴と共に、マァムの身体が宙を舞う。
 石畳に叩きつけられ、ぐったりと倒れるマァム。ついにマァムが力尽きたと、アルビナスは勝ち誇る。







 しかし、マァムはまだ諦めてはいなかった。
 アルビナスの最強さを認めながら、なぜこれだけの力を持っていながら使わなかったのかと疑問に思う。

 その時、思い出したのは他ならぬアルビナス自身の語った言葉だった。

アルビナス「女王(クィーン)は迂闊に動かないのが定石ですが――」

マァム(確かに女王は最強の駒、でもその機動力が命取りになることもある……)

 それを思い至ったマァムは、これしかないと考え、必死に身を起こす。
 そして、ごろりと身体を反転させ、仰向けに横たわった。
 見開いていた目を、静かに閉じるマァム。

 その態度を降伏をとらえたのか、アルビナスはいい覚悟だと嘲笑い、彼女の胸を一刺しにして終わらせようとした。
 光の速さで、マァムへと襲いかかるアルビナス。

 気配が迫る中、カッと目を見開くマァムの目に、彼女自身の拳が映る。
 寝転がったまま、右手を高々と上へ突き出すマァム。その拳を振り下ろし、マァムは自分自身の鎧の胸部分を砕いた。

 それを見て、驚愕するアルビナス。
 そのまま、マァムは砕いた破片を空へ投げつけた。無数の破片は、上空から超スピードで突撃してきたアルビナスと正面衝突する。

 凄まじい音を立て、無数の破片がアルビナスの身体に当たり、ヒビをいれる。初めて悲鳴を上げ、吹き飛ばされたアルビナスは床の上に転げ落ちた。
 回転する身体をなんとか押さえ込み、体勢を立て直して立ち上がった彼女は、己の両手を見つめる。

 震えるその手は、幾重ものヒビが刻まれていた。
 ビシッと音を立て、アルビナスの目の前でそのヒビが大きくなり、破片が散る。

 ヒビは、手だけに収まらなかった。彼女の全身、至る所にヒビがはいっている。信じられないとばかりに、それを見るアルビナス。

 マァムは床に手をつき、立ち上がった。
 高速移動でも、無数の物体は避けきれない……凄まじいスピードなだけに、正面衝突したときのダメージは計り知れないと語るマァム。

 それが女王の駒の弱点だというマァムの言葉に、アルビナスは悔しそうな表情を見せるも、反論しなかった。

 仰向けになれば、正面からの攻撃しか出来ない。
 突っ込んできたからこそ、まともに攻撃を受けたアルビナスの負けだと、マァムは言い切った。

 それを聞き、アルビナスは歯を食いしばらんばかりに歯がみする。
 彼女の脳裏をよぎるのは、ハドラーだった。
 アルビナスの目が、狂気じみた強い光を放つ。

 彼女の足にさらにヒビが入り、一瞬腰が落ちかけるが、震える足に力を込めてアルビナスは叫びながら襲いかかってきた。

アルビナス「ま……まだだぁあ!」

 伸ばされた手が、一直線にマァムへと向けられる。
 その光景は相手を攻撃するための手というよりは、求めても得られぬ救いを求める手のようにも見えた。

 そんな彼女に対して、マァムは一瞬だけ目を閉じ、許してと心の中で告げる。
 が、すぐに目を開けたマァムは闘気を高めた。
 金色の光に染まったマァムは最後の一撃に賭ける。

 襲い来るアルビナスに向けて、マァムは右手を前に突き出す。その手は、金色の炎に覆われるように輝いていた。
 前に出した手を、ゆっくりと後ろへと引くマァム。

 その身体全体が金色に光る。
 腰を深く落とし、左手を大きく開いて突き出した独特の構えから、黒く染まった虎の顔が浮かび上がった。
 武神流奥義・猛虎破砕拳を放つマァム。
 
 金色と黒、虎を思わせる闘気を纏ったマァムは、光の玉となってアルビナスに突進する。
 マァムの一撃は、アルビナスに致命的なダメージを与えた。顔にも大きくヒビが入り、破片が飛び散る。

 その様子を、歯を食いしばって睨むように見つめるマァム。
 アルビナスの背中側に、虎の顔に似たひび割れが刻まれる。胴体から背を貫いた衝撃に、ひとたまりも無く吹き飛ばされ、床を転がるアルビナス。

 金色の炎をまとう身体から光が消え、荒い息をつくマァム。
 マァムの目の前には、床を削って転がっていったアルビナスが倒れていた。
 戦いの構えのまま荒い呼吸をしていたマァムは、勝利を確信する。

マァム「勝った……!!」

 思わずそう呟いたとき、胸の痛みを感じて壊れた鎧を押さえるマァム。
 彼女は、そのままゆっくりとアルビナスの方へ歩み寄る。だが、ある程度近付いたところで、倒れたままのアルビナスがそれを止めた。

 心臓に当たる部分に大きな穴が穿たれたアルビナスは、不自然な姿勢のまま倒れていた。

アルビナス「私の負けです。どうやら……あなたを侮ったのが、命取りとなったようですね」

 死の間際、冷静さを取り戻したアルビナスは、淡々とした口調で 核晶(コア)を失った自分の身体はまもなく爆発すると言った。
 許しを請い、今にも泣き出しそうに目を潤ませるマァム。

 だが、アルビナスは気に病むことはないという。
 破れていなければ、自分があなたを倒していたのだから、と。マァムの方が強かったと、アルビナスは認めていた。

 わずかに身体を動かし、真上に向き直るアルビナス。
 奇しくも、その姿勢はマァムが最後の賭けに出た時と同じ姿勢だった。

 力だけではなく、誰かのためにという想いでも、マァムの方が強かっただけだとアルビナスは呟く。

 作り物の自分では想いの強さで人間には叶わなかったのかと、無念を口にする。ハドラーを生かしたかったと、アルビナスは本心を余すことなく吐露する。

 アルビナスはハドラーに請われて、親衛騎団がダイ達との決戦を決意したときのことを思い出していた。
 不敵な笑みを浮かべるハドラーを想い、一瞬でも、一秒でも長く、彼を生かしたかったと呟くアルビナス。
 ハドラーに与えられた命に替えてでも――。

 アルビナスの目が、潤む。
 まるで、涙を流そうとしているかのように。

 そんな彼女を、マァムは悲しそうに見つめていた。
 アルビナスはどこか優しさの感じられる口調で、マァムに離れるように促す。その際、彼女は最後の願いをマァムに託した。

アルビナス「さあ、お離れなさい。そして、私の代わりに見届けて……あの方の最後の勇姿を……」







 走って、マァムはその場を立ち去った。
 充分に距離と取った頃、後方で一際大きな爆破と黒煙が立ち上る。足を止め、肩越しに振り返るマァム。

マァム(アルビナス……あなたはやっぱりただの駒なんかじゃなかったわ。あなたのハドラーに対する想い……それはきっと……人が『愛』と呼ぶものだから) 

 思いを振り切るように、マァムは黒煙に背を向けて再び走り出した。
 青い空に、黒い煙が静かに立ち上っていった――。






 それと同じ頃、バーンパレスの左翼では、ヒュンケルが槍を使ってブラッディースクライドを放ったところだった。
 その一撃は、見事にヒムの心臓をとらえた。

 地を這うように伸びる、ブラッディースクライドの余波。その光に貫かれたまま、後ろへと飛ばされるヒム。
 負けねえと悔しそうに呟くヒムだが、彼の身体はあっさりと壁の外へと転げ落ち、そのまま落下していく。

 ヒムの胸に大きく開いた穴から、空がはっきりと見えた。

ヒム「負けねえぞぉお……っ」

 それが、ヒムの最後の言葉だった。悲鳴は落下の速度のせいで急速に小さくなっていく。
 槍を軽く回してから腕に収めるヒュンケル。

 彼は落下してしまったヒムに対して、運が悪かったという哀悼の言葉を述べる。彼も弱くは無かったが、ヒュンケルが新たな力に覚醒したばかりの時に当たったのが不運だったのだ。






 バーンパレスをひた走るマァム。
 左翼から走ってきたヒュンケルを見つけ、呼びかける。二人はお互いに駆け寄り、自然に足を止めた。

 アルビナスを倒したのかと問うヒュンケルに、魔甲拳のおかげだと返すマァム。
 ヒムを倒したと言うヒュンケルは、彼らがハドラーとダイを戦わせるために時間稼ぎをしているようだと語る。
 辛そうな表情で頷くマァム。

 急いで元の場所に戻ろうと、走り出すヒュンケル。
 それに続くマァムだが、その時、背後で爆発が起こった。思わず足を止めて振り返る二人。
 ハッとして壁に手をつき、マァムは身を乗り出て爆発の方向を見やる。

 最後尾の方角を見て、ヒュンケルはポップだと確信する。
 敵はおそらく、騎士(ナイト)シグマ――マァムの表情に、深刻さが増す。
 あらゆる魔法を跳ね返るシャハルの鏡を持っている敵に対して、メドローアを使えば……マァムは、光の中で絶叫を上げて消えるポップの姿を思い浮かべる。

 その瞬間、マァムの目から一切の光が消えた。
 動かないマァムに、ヒュンケルはポップが気になるのかと問いかける。
 少し驚きつつも、素直に頷くマァム。

 ヒュンケルはいつになく優しい口調で、心配は要らないとマァムを諭す。今のポップの実力を認める言葉に、マァムも賛成してポップの力を信じなきゃと口にする。

 だが、歩き出したマァムは後ろ髪を引かれるように、また足を止めて振り返った。

 そんなマァムに、なぜそんなにポップの心配をするのかと問うヒュンケル。自分やダイなら、そこまで心配はしないだろうと言うヒュンケルと対話する中で、マァムはポップの強さを信頼する以上に、彼を危なっかしく思っている自分に気がつく。

 それに、ハッとするマァム。
 彼女は自分がポップをどう見ていたのか、ここで初めて自覚する。
 そして、だからこそポップが強くなろうと無茶をしていたとようやく理解し、自分の責任だと感じてしまう。

 目を閉じ、固く震えているマァムの肩にヒュンケルが手を置く。
 目を開けると、ヒュンケルはかすかに微笑みながら、ポップの言っていたマァムの心の力……『愛』について語る。

 かつてマァムの愛に救われたことに感謝を告げたヒュンケルは、愛にも二通りあると諭すように説明した。
 他人へ与える愛、そして、自分のための愛……この戦いが終われば、マァムも自分の意思で人を愛するようになるだろうと告げるヒュンケル。

 顔を赤らめて俯いたマァムは、恥じらいながら尋ねる。

マァム「エイミさんが、あなたを愛するように……?」

 エイミの気持ちに応えられないと言いながらも、ヒュンケルは彼女の気持ちも少し分かると言った。
 愛は、時に人を狂おしくさせるものだとヒュンケルは理解している。
 
 愛とは、抑えることが出来ない感情だ。
 だからこそバランやヒュンケルは悪に走り、メルルやアルビナスは愛する人のために命を賭けた。

 マァムの肩を抱きしめ、ヒュンケルはわずかにでも言葉に出来ない思いをポップにいだいているのなら、心に溜めずそれを確かめに行けばいいと言った。
 ダイのことは自分に任せておけと言い、ポップも答えを待っているはずだとマァムの背を押すヒュンケル。

 迷いの表情から、決意した表情を見せたマァムは、小さく頷いた。
 笑顔でヒュンケルに感謝を告げたマァムは、尾翼に向かって走り出した。

 その背を見送りながら、ヒュンケルは一人、想う。
 自分に光をくれた、慈愛の天使・マァム……だからこそヒュンケルは、彼女に自分自身の愛を見つけてほしいと願う。
 幸福(しあわせ)になれと、ヒュンケルは想う。
 自分では、マァムを幸福(しあわせ)にできないから――。

 マァムを見送っていたヒュンケルは、ふと目を上げる。見上げる先に映るのは、バーンパレスの中心部……バーンがいる主城部分だった。
 


 


《感想》

 今回は思いっきり、マァム回でしたね♪
 アムド化後のマァムの姿に驚愕! え……っ、青パン丸出しっすか!?
 それに、破けた黒ストッキングのままとは思いもしませんでしたよ〜。てっきり、ここで素足とショートスパッツ姿になるかと思っていたんですが。
 まあ、いい意味で予想外でしたっ(笑)

 それは後で細かく書くとして、壁に叩きつけられるマァムのシーン、原作の方が黒焦げ感がありますね。アニメでは比較的綺麗な感じですが、ストッキングは破けています(笑)

 投げ出される際、アニメでは一回転回っているのも原作との差ですね。原作では、背中から叩きつけられていました。
 アニメでは動きがある分、飛ばされる時などに回転の動きが加わることが多いですね。

 アルビナスがマァムを笑うシーン、彼女の身体がニードルサウザンドの余波か金色の縁取りに光っているのが綺麗でかっこよかったです。
 マァムとの会話シーンで、遠景から二人を映し出したかと思えば、逆にアルビナスの目を極限までアップにしてみたり等、原作とは違う演出多数なのが実に楽しいです。

 アルビナスがマァムを「お優しい」と皮肉を言うシーン、声優さんの演技力がいい感じです♪
 原作ではとことん冷淡な印象を抱いていたアルビナスですが、アニメでは声の演技のせいか人間味を感じさせてくれます。

 優しいと皮肉られて、マァムはハッとしたように息をのむ演技を見せたのは、アニメの改変です。原作ではこのシーンはマァムの後ろ姿が映っているだけで、なんの反応も見せていません。

 アルビナスが隠れているマァムを見つける際、「ム」と呟くのはアニメの改変です。
 後、その後のセリフでネズミのようの後に、原作では「素早さだけはそれなりのものです」と褒め言葉があったのですが、こちらはカットされていますね。

 アルビナスの変身シーン、メッチャ派手になっています!
 原作では、アルビナスの変身は手から始まるのですが、アニメでは足から上へと変化していっていますね。

 アルビナスの変身を見た時のマァムの台詞は、アニメの改変です。
 原作ではマァムはその場を動きませんが、アニメでは自ら動いていますね。マァムが出てくるシーンで、手前側にアルビナスのハイヒールが大きく映し出されているシーンが印象的でした♪

 原作でもアルビナスはハイヒール姿なのですが、アニメではそれがことさら強調されている気がします。
 原作では立ち姿として登場したアルビナスの本体は、アニメでは足元から上へと視点が上がっていく演出で映し出されていました。

 基本デザインは原作と同じなのですが、アニメのアルビナスは背に回したマントがドレスっぽく華やいで見えます。マント部分だけ、本体とは微妙に色味が違うせいかもしれません。

 サウザンドボールを投げる時のアルビナスは、影を黒く強調した絵柄で実にかっこよかったです。投げつけるときのアクションも、原作より派手でいいですねえ。

 サウザンドボール二連発のシーン、原作ではマァム視点でしたが、アニメではむしろアルビナス視点になっている気がします。
 それにしても、身をのけぞらしてサウザンドボールを放とうとするアルビナス、胸がやけに強調されたカットになっていますよッ(笑)

 マァムの指摘に高笑いし、ハドラーへの思いを否定するシーンのアルビナスのほうれい線強調がすごすぎ。もっとクールな印象かと思っていたのですが、振り切れたような愛の狂気を感じますね。

 説得を否定され、ショックを受けたマァムの背景が真っ黒になり、濃い灰色のフィルターをかけたような心理描写のシーンは印象的で良かったです。
 マァムの色彩はカラフルなだけに、悩んでいるシーンでも通常の色だとちょっと派手になっちゃいますもんね。

 でも、完全なモノクロにしないで、マァムらしいピンク色の髪の特徴を残す程度の暗さのフィルターのおかげで、いい雰囲気でした。

 アルビナスにサウザンドボールを投げつけられた時、原作ではマァムは目をい開いていましたが、アニメでは目を固く閉じていて、アバンの呼びかけを聞いてから目を開ける演出に改変されていました。

 決意したマァムの髪が、激しく揺れるシーンもいいですね。
 武闘家マァムは髪をまとめていることもあり、あまり髪がなびく演出がないのですが、今回は驚くぐらい髪が揺れまくっています。

 仲間達を回想するシーン、マァムの顔に黒い影が入って表情が見えなくなる演出に改変されていました。
 原作ではここは普通の横顔でしたが、アニメではシルエット顔で表情を消すことで、彼女の苦悩を表現しています。

 しかし、回想シーン、原作では一コマで全員でていたからたいして気になりませんでしたが……アニメではダイとレオナ、ポップとメルルと、恋愛関係で並べていたのに、なぜに最後がヒュンケルとクロコダイン!?(笑)

 恋愛テーマなら、ヒュンケルとエイミさんで並べときましょうよ〜。ついでに、ヒュンケルが上半身裸の姿で回想されていますが、マァムの脳内イメージでは彼はいつも半裸なのでしょうか(笑)

 マァムのアムドシーン、感激でした!
 ヒュンケルの変身と同じく、ぶわっと膨らんで絡みつく感じかと思ったら、螺旋が身体に巻き付き変形するという感じでした。原作通りですが、やっぱりアニメだと動きがある分イメージが派手ですね。
 
 マァムの後ろ向きの立ち姿から、股間越しに驚くアルビナスを見せてからの、回り込んでマァムを正面に見て、下から上へ視点を上げていく演出、細かくていいですっ。
 
 し、しかし……っ、下半身から舐めるように視点が上がっていくせいで、破けた黒ストッキングや、ものすごいハイレグ角度の青いパンツや、しっかりと巻き上げている武闘着の裾なんかも丸見えなんですけどっ!?

 ここまでやっちゃうとは――っていうか、最後にやらかすためにこれまでずっと、無難に押さえてきたのかと思いたくなるぐらい原作に忠実にやらかしてくれましたよっ! 素晴らしいっ(笑)

 マァムがメタルフィストを手にしつつ言う台詞のシーン、微妙に原作とは違いますね。
 アニメでは決然とした表情でアルビナスを倒すと宣言してから、「守らなければ〜」の台詞と同時にメタルフィストを手にしています。

 原作ではアルビナスを倒すという台詞の時から、メタルフィストを手にしているんですよね。あなたを倒すという時には、マァムは目を閉じてひどく辛そう表情をしています。
 原作とアニメでは、表情の見せ方が大きく変わっていて興味深いです。

 アルビナスの台詞は、ちょいちょい略されていますね。
 しかし、マァムの鎧の説明シーンで胸元部分がアップにされるのはまだいいとして……なぜ、股間のアップも混ぜたのか?(笑)
 せめて、もう少し太股の武装寄りにしとかないと、言い訳のしようも無いと思うのですが。

 CM後のサウザンドボールを魔甲拳で無効化するシーン、原作ではただ盾に弾かれて終わりでしたが、アニメでは呪文が割れて余波が後ろに飛び散る演出が入っていました。

 アニメの描写だとマァムの魔甲拳は呪文を跳ね返すと言うよりは、割ってその間をすり抜けるようにして無効化しているように見えます。

 マァムとアルビナスが攻撃の直後、互いに足を踏ん張って向きを変えるシーン、ベタ底のブーツのマァムと、ハイヒールのアルビナスの対比が面白いですね。

 しかし、マァムがサウザンドボールを蹴り返すシーン、原作ではクルッと縦に一回転してボールを飛び越えるようにして打ち返したのに、アニメでは横に一回転するソバットのような動きでした。

 なにより、アルビナスにシュートを決めた後、マァムの背後から映し出した素晴らしい構図の原作カットがなくなったことが、ひじょぉおおお〜に無念ですっ。
 影を強く強調したマァムのあの後ろ姿、惚れ惚れするほど好みだったのですが。

 倒されたマァムにアルビナスが近づくシーン、マァムの視点から見た構図と言うことで、逆さ向きに歩いてくるアルビナスが実にいい感じです。原作には無かった演出で、アニメの改変ですね

 また、アルビナスの台詞も一部略されています。

原作アルビナス「……嫌だこと。己の力量も読めない弱者は……!! そんな武装をした程度で、勝ったつもりでいるなんて……」

 前半部分の台詞も聞いてみたかったので、カットされたのが残念!

 アルビナスがマァムに顔を寄せるシーン、互いの前髪が触れる距離って、近い、近いっ、原作寄りもずっと近くなっていますよっ(笑)
 原作ではもっと離れていましたのに、なぜここまで寄せた……!?

 原作では中距離からのパンチだったのが、アニメでは至近距離からのパンチの距離感に変わっている感じです。
 また、原作ではマァムはこのシーンでごく少量とは言え吐血していますが、アニメではカットされていますね。

 アルビナスがマァムを殴るシーン、細かなところで原作と差があります。
 まず、原作ではアルビナスは容赦なくマァムの横っ面にフックを食らわせ、直後にアッパーカットで下から突き上げています。それも、殴られているところを真正面から描いていました。

 このコンボは凶悪で、脳を揺らして相手を脳しんとうに追い込み、動きを止めるのに有効な攻撃方法です。
 結果、マァムは棒立ちとなって何発も攻撃を食らってしまいます。

 が、アニメではマァムが顔を殴られているシーンは、マァムの後ろからの姿になっていて、多分顔を殴られてるな、と思う程度の描写になっています。
 アッパーカットの代わりに、裏拳で相手を突き放していますしね。アニメでは殴られているのが三発だけと、かなり控え目な表現になっています。

 やっぱり、女の子が顔をタコ殴りにされるのはよろしくないと配慮したのでしょうかね?

 アルビナスの背後からの姿が、一瞬とはいえ全身で映し出される改変は嬉しかったです。欲を言えば、そこでもう2秒ほどゆっくりと見せてほしかったですが。
 アルビナスの真後ろ姿は超レアなんですよ〜。
 アルビナスの台詞がオールカットだったのは非常に残念です。

原作アルビナス「フフフフッ、どうです? お分かりですか? たとえ呪文が通じなくなっても私にはこの強靱なボディとスピードがある!! このまま殴り続けているだけでも充分あなたを倒せます!!
 だが、あなたは私をとらえられない……!! ……結局、あなたには何もできないんですよ……」

 結構な長台詞だったのに、まるっきり無くなってしまうとは!
 ついでに言うのなら、『このままではやられてしまう〜』の後のマァムの台詞も一部カットされています。

原作マァム(一撃に……一撃に賭けないと……!!)

 こちらも好きな台詞だっただけに、カットが残念。

 回想シーンへの入り方が、老師のサングラスからというお茶目さと、サングラスのガラスに映り込む画像からという演出は気に入りました。
 原作でも閃華裂光拳とセットで教えられたような演出でしたが、アニメでは閃華裂光拳を描いた壁画(?)が再登場したおかげで、ますますあの時の続きっぽいですね。

 回想後、原作ではマァムが立ち上がろうとするシーンが、アニメでは立つシーンに改変されていました。
 が……っ、なぜそこで手前にマァムのお尻をアップで見せる構図に改変したのかっ(笑) しかも、アルビナスの全身図のように一瞬で終わらせず、アルビナスの台詞の最中、長々としっかり魅せてくれちゃってますが!?

 その代わりと言っては何ですが、『ホウ』と言った後のアルビナスの台詞の一部がカットされています。

原作アルビナス「まだ無駄な抵抗を考えているのですか? 理解力の低い人だ」

 遠慮なしにマァムを貶す毒舌こそが、アルビナスの真骨頂なのに〜。
 フレイザードなんぞはバンバンと言いたい放題に言わせていた癖して、女性が相手を貶すのはよろしくないとでも?
 
 しかし、マァムが四つん這いになるシーン……ほぼ女豹のポーズとなったマァムを後ろから映し出すのは原作と同じ構図ですが……片腕を折りたたみ、足の曲げ方やバースの付け方を強調して、より色っぽくなる演出を加えたのはなぜっ!?

 マァムの女豹のポーズと、青パンの見せ方がとんでもなく凝っているのですが……っ、あ、あのっ、破邪の洞窟での自粛っぷりはいったいどこにっ!?(笑)

 マァムが攻撃で宙に投げされるシーン、マァムが飛ばされるシーンを下から見上げるような原作の構図が気に入っていましたが、アニメでは別角度の構図に改変されていました。
 のけぞった姿勢で飛んでくるマァムを見る構図になっていて、逆さ向きになったマァムの顔が苦痛に歪むシーンがなかなかの見応え♪

 飛ばされるシーンも、遠慮も隠しもなく、思いっきり股間が丸見えでしたよ……これまでは、スカートの中は見えないようにものすごく配慮し、角度にも気を遣っていたのに(笑)

 倒れたマァムがアルビナスの強さを思うシーンで、アニメでは真っ黒な背景の中、マァムの影を白にするという演出を取っていました。
 原作では同じように真っ黒な背景の中、影にトーンをかけるという演出でしたね。

 それにしても村の長老の話が、オールカットされていました(笑)
 代わりに、マァムの台詞が追加されていましたね。ユーモラスな村での光景は楽しかっただけに、回想されなくって残念です。

 床に寝そべるマァム、原作では最初から目を閉じていましたが、アニメでは目を閉じるシーンが追加されていました。

 上空から襲いかかるアルビナスのカットと、床に寝そべるマァムのカットが実によかったですよ〜。
 メルルの時もそうでしたが、髪が床に流れる動きを丁寧に描写しているのがたまりません♪

 マァムが目を見開くシーン、目を大アップにして、その目にマァムの拳を映し込む演出には感動しました♪
 それに、空に向かって高く腕を突き上げたマァムのカットが入ったのもいいですね。その姿勢のまま回り込みの演出まで使うとは気合いが入っています。

 原作ではマァムは最小の動きで胸の鎧部分を砕いているので、アニメのように手を高々と掲げるシーンはないです。

 マァムの胸を砕くシーンは、鎧部分のアップとなっていたのは残念。原作のカットを再現してほしかったのですが。

 でも、砕かれたアルビナスは原作のカットを生かしていますね。ちょっとばかり、原作に比べるとヒビの入り方が少ない気もしますが。原作では、この時点でアルビナスの顔に大きくヒビがはいっていましたが、アニメではこの時点では顔は無事です。

 しかし、マァムが床に手をついて立ち上がるシーン……拳を中心にする中で、破れた黒ストッキングからはみ出す太股と、青いパンツ部分がばっちりと映る角度にした意図を、小一時間問い詰めたい気分です(笑)
 原作では、手首しか映っていませんよっ。

 マァムが立つシーン、背後に壊れたバーンパレスの尖塔が映し出されていました。
 ……アルビナスってバーンに取りなしを頼むつもりだった割には、遠慮なしにバーンパレスを壊しまくっていますね(笑)

 マァムがあなたの負けだというシーン、伏せた顔と目をゆっくりをあげて、きりっとアルビナスを睨む表情変化の細やかさに惚れ惚れしました♪
 目を閉じている時、一瞬とは言え、悲しそうに眉をひそめているのが実にいいですねえ。

 アルビナスが一瞬、ハドラーを思うシーン、背景が真っ白な中、シルエットのハドラーの横顔が浮かぶシーンが美しくて良かったです。
 その直後、アルビナスの目がかっぴらかれ、いっちゃった目つきになる演出もいいですね。
 これらの下りも、原作にはない改変です。

 アルビナスの最後の攻撃シーン、原作ではボロボロになったアルビナスが鬼気迫る表情で攻撃していますが、アニメでは色合いも表情も美しく、マァムに向かって伸ばされた手もしなやかです。

 その攻撃の際、マァムの画像が無闇に回り込んでいました(笑) 
 それはそれでよかったですが、

原作マァム(……速度が半減……! 見える!!)

 と、冷静に今のアルビナスを判断するシーンと台詞がカットされたのは残念でした。

 マァムの猛虎破砕拳、右手を一度前に突き出してから後ろへ引くのは、アニメの改変ですね。
 原作では最初から左手を前に出しています。

 また、原作ではその場にとどまり、迫るアルビナスの突進に合わせて放ったカウンター技のように見えましたが、アニメでは自分からアルビナスに打ち込むよう改変されていました。

 アルビナスが飛ばされて床が抉られる範囲、原作よりもアニメの方が広くなっていますね(笑)

 アルビナスの台詞の「あなたを侮った〜」は、原作では「あなたをザコと侮った〜」でしたが、ここもカットされています。

 アルビナスの別れのシーンは、切なさがたまりませんでした。
 ハドラーへの純愛を切々と語るアルビナスに、泣きそうになりましたよ。ヒムと違って、アルビナスは涙をこぼさないまま終わったところも、またいいですね。

 マァムが走り去るシーンや、足を止めてから後ろ姿を見せ、ゆっくりと振り返るなど、情感を感じさせる演出がじつによかったです。
 マァムのモノローグに、一部改変がありましたね。

原作マァム(アルビナス……あなたはやっぱり女性だったんだわ……)

 立ち上る黒煙からバーンパレスの左翼に視点を移す演出がかっこよかったです♪
 しかし、それはいいとして……えっ、いきなり必殺技!? ヒム、すっごい出落ちになっとりますが!(笑)

 原作では、技を放つ前にわずかなりとも格闘シーンがあったのに、それさえ省略されている……っ。今回、一番割を食った人な気がします。

 マァムとヒュンケルの再会シーン、二人が走り寄っているのはアニメの改変ですね。
 原作では先を行くヒュンケルが、足を止めてマァムを待っている雰囲気です。

 ここでショックだったのは、ヒュンケルの台詞がカットされていたこと!

原作ヒュンケル「……一騎打ちを果たさせてやりたい気もするが……、時と場所が悪い……!」

 ハドラー達に気遣ったのか、あるいは決闘を重視しているのか分かりませんが、ヒュンケルが心情的にはヒム寄りなこの台詞、好きだったのになくなっちゃいましたよ!

 レオナやマァムは決闘自体を無意味と考えていましたが、ダイやヒュンケルは決闘賛成派のようです。

 幻のポップがメドローアで消滅するシーンを想像したマァムが、目の光を失う演出がいいですね。
 茶色の全く光のない目が、ショックの大きさを表しているようでいい感じです。

 動きを止めてじっとポップの方角を見ているマァムの後ろ姿を見ると、ポニーテールが想ったよりも長くて驚き。
 原作通りなのですが、マァムの髪の毛ってずいぶんと伸びてますね。

 マァムがポップを心配するシーン、可愛くて実に良かったです。
 自分で自分の気持ちに気づいていないマァムが、ポップをそんな目で見ていたと自覚するシーンの表情がいいですね。
 
 バーンパレス直前に、レオナがポップが強くなろうとしたのは半分はマァムのためだという言葉を、この時、ようやく実感した感じです。

 マァムの回想シーン、淡い黄緑色の空間に様々なポップの姿が浮かびますが、まず最初に浮かんだのが真っ直ぐに前を見ながら手を横に伸ばすポップの姿……真バーンとの戦いで、最後まで手を繋いでいてくれと頼んだ姿ですね!

 次は、メドローアの特訓中、腕を冷やしにきた時のポップの姿。火傷した腕を押さえ、必ずみんなの力になれると語った時のシーンです。
 お次はフィンガーフレアボムス姿。
 一つのシーンに三つのシーンのポップのカットが並びました。

 そして、最後の回想はバルジ島でマァムを庇って足に火傷をしたときのポップの姿です。ひっさびさの僧侶戦士マァムが、なんか新鮮!

 ヒュンケルに愛を諭されるマァムの、上目遣いからの恥じらって目を背けるコンボが可愛すぎました……っ!

 ヒュンケルが愛を語るシーンで、バランが死んだソアラを抱きしめるシーンと、首に星飾りをつけたバルトスが崩れ落ちるシーンが一瞬とは言え回想されたのが嬉しかったです。

 マァムを見送るヒュンケルのシーンで、真っ白な背景の中で走って行くマァムの後ろ姿がじつにいいですね。
 走る度にポニーテールが揺れて、実に絵になっていました。

 原作では、ヒュンケルがマァムを見送る表情と、走るマァムの表情で締められていたシーンでしたが、アニメでは敢えて走るマァムの顔を見せず、ヒュンケルがバーンの居場所を見上げるシーンを追加していましたね。

 次週予告、ポップがメインで嬉しいですっ♪♪♪
 しかし、マァムの勝敗の行方についても語っていましたが、そこは次週予告には無関係な部分では?(笑)

70に進む
68に戻る
アニメ道場に戻る
トップに戻る

inserted by FC2 system