『勝利か消滅か』(2021.2.19)

  
 

《粗筋》

 シグマと向かい合うポップは、両手の間に魔法の光を抱え込みながら左へと走っていた。
 そして、ベギラマの呪文を放つポップ。

 呪文の向かう先にいるシグマは、微動だにせず堂々とそれを待っている。ただ、身体の向きをわずかに変え、胸部の鎧――シャハルの鏡に当てるように誘導し、跳ね返した。
 驚くポップ。

 呪文の余波に、周囲が光に照らし出される。
 その光と轟音が収まった後には、自分で自分の魔法で壁に吹き飛ばされたポップの姿があった。

 座り込んだ姿勢のまま動かないポップに向かって、静かに歩を進めるシグマ。だが、ポップの指先がピクッと動いたのを目にとめ、シグマは警戒を露わにする。
 そして、用心深く話しかけた。

シグマ「一つ、質問させてもらいたい。……君は本当に人間なのか? 魔族かなにかでないと、その不死身……説明がつかん」

 ポップはその問いに、軽口めいた口調で自分はただの人間だと答える。臆病で弱っちい、ただの人間だ、と――。

 だが、それを聞いたシグマはランスを握る手に力を込める。
 そういうことを言う奴がもっとも危険と考えるシグマは、微塵も油断しない。決して手を緩めないと、気迫のこもった声で言い切るシグマ。







 その頃、マァムは一心に尾翼目指して走っていた。

マァム(ポップッ……)

 息を切らしながら、マァムはポップを心配し、ひた走る。







 シグマはランスを構え、彼の視点から見たポップの恐ろしさを語る。それを聞くポップは、肩で息をしながら腕を押さえ、ジリジリと右に移動して距離を取ろうとしていた。

 しかし、そんな相手に対してシグマは最大の警戒心を怠らない。
 ポップが先程から呪文を繰り返し放っているのは、何か目当てがあってのことと推察すると告げる。

 それを聞いたポップが足を止め、虚を突かれたような表情をシグマに向けるが、すぐに目を伏せて苦笑する。
 ポップにとっても、シグマは油断のならない相手だと語る。

 これまでの敵は、みんな、自分をザコと侮ってくれたおかげで隙をつけたとボヤくように言うポップに、シグマは不敵に笑う。
 ポップが呪文を繰り返すのは、自分の隙を突くためだと見透かしたシグマの言葉に、ポップはわずかに息をのんだ。

 ポップの呪文の中で、オリハルコンに通用するのはメドローアのみだと知っているシグマは、ポップに呪文を使うようにと挑発する。
 だが、メドローアを弾き返されれば一巻の終わりと承知しているポップは、そうそうそのリクエストに応える気は無い。

 足の動きを大きく取ってさらに左へと移動したポップは、左手から魔法を生み出した。続けざまに三発の魔法が発射される。
 それがイオラだと見抜いたシグマは、二発のイオラを畳んだ左腕で受け、最後に飛んできた三発目を胸のシャハルの鏡で跳ね返した。

 だが、走りながらすでに左手の中に魔法を生み出しているポップは、カウンターで相殺する。
 シャハルの鏡が反射の前兆として輝くタイミングに合わせ、イオラを放つポップ。

 弾き返されたイオラとポップのイオラがぶつかり合い、派手な轟音と黒煙をあげて相殺される。ダメージはないが、視界が塞がれるシグマ。
 ここが好機とばかりに、走りながら右手で腰の後ろの杖を引き抜き、伸びろと念じるポップ。

 ロン・ベルクの作ったブラックロッドは一直線に伸び、黒煙を貫いて物の見事にシグマの胸に刺さった。

 さすがに驚くシグマだが、伸びるロッドの勢いは止められない。そのまま後ろへと飛ばされ、手摺り部分に当たる壁に激突した。
 力を込め、ブラックロッドを上へと跳ね上げようとするポップ。たわんだロッドが大きく上に跳ね上げられた際、シャハルの鏡は見事にに宙へと飛ばされた。

 それを見たシグマが、鏡を取り返そうとわずかに腰を落としてジャンプの構えを見せる。
 が、ポップはそれを見逃さなかった。
 身体を回転させてロッドでシグマを横殴りにし、彼を尖塔へと吹っ飛ばす。

 シャハルの鏡が音を立てて床に落ちる中で、ポップは短く戻したブラックロッドを構え、二又の槍になるように命じる。
 思いっきり投げたそれは、シグマの右手首を壁へと縫い止めた。

 驚き、自分の腕を見上げるシグマ。
 身を守る盾のシャハルの鏡も、攻撃のためのランスも、それぞれシグマから離れた床に転がっていた。

 鏡を外して動けなくさせた――狙い通りに戦略が決まったと、会心の笑みを浮かべたポップは、すぐさまメドローアの準備にかかった。
 だが、すぐにその顔に驚きが浮かぶ。

 追い詰められたはずのシグマがあまりにも静かに佇んでいることに、逆に不安を感じたポップは、もっと足掻けと文句をつける。
 しかし、シグマは足掻く気配も見せず、ポップへの感嘆の言葉を語る。

 ポップの実力が想定以上だと褒め、これほどの攻撃力のある切り札を使わずにチャンスを待ち抜いた精神力も褒め称える。
 捕らえたのが右腕で無ければ勝てていたのにと語るシグマに、ポップは不吉さを感じ取る。

 その瞬間、パキッと小気味のいい音を立てて、シグマの右手は手首から折れて分離し、二又の槍から自由になった。
 凄まじい速度で突進してくるシグマに、ポップは焦りながらもメドローアを完成させようとする。

 二つの魔法を組み合わせ、弓矢を生み出して引き絞ろうとするポップ。
 が、そうはさせじとシグマは大きく手を伸ばしてきた。
 ポップの右手が掴まれ、魔法の弓が呆気なく散らされてしまう。怯えの表情を浮かべるポップに、シグマは一言、言った。

シグマ「遅い!!」

 手首だけとなったシグマの右手が、ポップの胸元に当てられる。
 ライトニングバスターと言う技名と共に、シグマの手首より閃光が生じ、ポップの全身を雷が走るかのように光が包んだ。
 驚いた表情でそれを見ているポップ。

 技をかけ終わると同時に、シグマはあっさりと手を離す。よろめきながら後ろへと数歩下がった。戸惑いの表情でシグマを見上げるポップだが、その背に電流のような衝撃波が一歩遅れて出現し、胸から背中にかけて幾つもの光が貫く。

 ボキボキと骨が砕ける音と共に、後方へと吹っ飛ばされるポップ。倒れたポップに向かって、シグマは隠し持っていた自分の切り札について説明する。
 ポップ同様、シグマもまた、切り札を隠し持っていた。
 
 右腕から繰り出すライトニングバスターは、イオナズンと同等の力を持つ。直接、相手に触れなければ発動しないという欠点はあるが、強力な必殺技だ。
 骨が砕ける音を聞いたシグマはポップに止めを刺したと考え、弔いもせずに次の戦いに行くことを詫びながら、彼を『好敵手』と呼んだ。

 ポップに背を向け、歩き出すシグマ。
 だが、力なく開かれていたポップの手が握られ、動き出す。気配を感じて振り返ったヒムが見たものは、四つん這いの姿勢に起き上がり、自分で自分の腹を押さえているポップの姿だった。

 動揺し、なぜ生きているのかと声を荒げるシグマ。
 しかし、あることに気づき、目を見張る。腹に当てられたポップの手から、柔らかな光が輝いていた。

 ポップがベホマをかけているのに気づいたシグマは、先程までのポップの不死身さの理由を悟る。
 ポップに対して、賢者かと問いかけるシグマ。
 だが、ポップは自分は賢者じゃないと否定した。






 思い返すのは、鼻を小指でほじるマトリフの姿だった。
 場所は、マトリフの住居であるパプニカの海岸付近。
 ちょうど、今のポップと同じく、自分は賢者じゃないとマトリフは否定した。
 メドローアの特訓中で、火傷した腕に水を含んだタオルを当てながら、ポップは疑問をぶつけた。
 攻撃呪文も回復呪文も使えるのなら、それは賢者では無いのか、と。

 鼻くそを手でこね回し、マトリフは『賢しき者』と言う言葉面が気にくわないといい、ドスが利いていないと不満を垂れる。鼻くそを飛ばしつつそんなことを言う師匠に、呆れた顔をするポップ。

 マトリフは誰もが聞いて恐れ入るような、世界でただ一つの肩書きを自分で考えた。
 世界に一人しかいない、最強の呪文使いの名。
 得意げに、マトリフはそれを口にした――。






 大魔道士。
 回復魔法をかけながら立ち上がり、ポップは自分の選んだ肩書きを口にする。師匠と同じ肩書きを受け継ぐ、大魔道士ポップ――それこそが、ポップが望んだ今の名前だった。

 自分に対して向き直ったポップと相対したシグマは、そのご大層な肩書きがポップに相応しいと婉曲に認めた。
 いつの間にそんな呪文を身につけたのかと問うシグマ。

 ついさっきだと答えるポップ。
 元々、ほとんどの呪文契約はマトリフにやらされていたが、さっき、突然使えるようになったと語るポップ。

 自分自身に愛想を尽かした瞬間に力が手に入った皮肉さを、ポップは自嘲する。
 ポップが思い返すのは、命を賭けて自分を救ってくれた占い師の少女の姿だった。力尽き、目を閉じた彼女の姿を思い浮かべ、自分の情けなさを強く悔いるポップ。

 だが、シグマはそれはポップの魂が呼び起こした力だと認めた。
 魂には肉体以上の強さを与える力があると確信するシグマは、ハドラーから与えられた自分の魂にも誇りを抱いている。
 その言葉に、驚いたように目を見開くポップ。が、その後に続くシグマの言葉に、警戒を強める。

 シグマはポップの力を認めながらも、勝ち目が増えたわけではないと断定する。
 回復魔法を覚えても戦いが長引くだけ……ハドラーとダイの決闘の時間を稼ぐシグマにとっては、願ってもないことだ。

 しかし、ポップは両手を身がまえた。
 決意を浮かべた顔が、下からの魔法の光によって照らし出される。左右の手に異なる魔法を生み出すメドローアの予備動作を見せたポップに、驚くシグマ。

 易々と、それを食らうつもりはないシグマ。
 だが、ポップにとって、シグマを倒すのにはこの呪文しかない。魔法の弓を生み出し、シグマに一発勝負を宣言するポップ。

 シグマを尊敬できる相手と認めたポップは、その使命感を見習うと言った。一刻も早くダイのところへ行くと決意し、そのためにシグマを倒すと決めたのだ。

 ポップの真っ向からの挑戦に、シグマは時間を稼ぐことも出来るとも考えながらも、自分もまた、ポップにいたく感心したと言う。
 シグマの手首から先のない右手から、かすかな火花がシュッと噴き出す。
 敬意を表し、大魔道士との勝負に乗るシグマ。






 その頃、マァムは尾翼へと昇る階段付近まで走ってきていた。息を切らしながら、見上げるような階段へと向かうマァム。






 そんなことは知らないポップは、魔法の弓矢を維持したまま走り、相手の虚を突こうとしていた。
 だが、シグマは床を蹴り、高々と空中に飛び上がる。それに合わせ、焦ったように上に狙いを定めるポップ。

 しかし、ポップが魔法を撃つよりも早く、シグマは彼とすれ違う形で着地し、後ろに移動する。それを目で追うポップだが、相手の動きが速すぎて身体が追いついていない。

 そんな速度で動き回ったところで無駄だと言いながら、シグマは落下したシャハルの鏡に向かって走る。後を追ってくるポップに対して、口からイオの呪文を吐き出すシグマ。

 爆風に跳ね飛ばされながらも、なんとかメドローアの弓矢を維持し続けるポップ。
 それをチャンスと見て、爆炎を裂いてポップへと突進するシグマ。

シグマ「どうやら勝利の女神は君には微笑まなかったようだッ!!」

 しゃがみ込んでいたポップは、それでもまだ維持していたメドローアの弓を引き絞る。

ポップ「……へっ、当たりめえよっ!! おれの女神は微笑んでなんかくれねえっ!! 横っ面を……ひっぱたくんだよおっ!!」

 その言葉と同時に放った魔法を、シグマは機敏に横っ飛びして避けた。

シグマ「甘いッ!!」

ポップ「甘いのはそっちだっ!」

 手を高く上げ、ガッツポーズを取るポップ。
 ポップの放った魔法は、落ちていたシャハルの鏡に当たって光り輝いた。てめえの武器であの世に行けと叫ぶポップの目の前で、反射の前兆を見せるシャハルの鏡。

 だが、次の瞬間、ポップの顔や身体に影が差す。
 上を見上げれば、高く跳び上がったシグマの姿があった。ポップの頭を飛び越え、背後へと回り込んだシグマは彼を羽交い締めにする。

シグマ「さっきの台詞はそのまま返そう! 自分のメドローアであの世に行けっ」

 反射した魔法が迫ってくる中、シグマはポップの背中を膝蹴りして突き飛ばした。その勢いに押され、ポップはなすすべもなく前へ進みでる。

 その時、ようやく駆けつけたマァムがポップの名を叫んだ。
 その声が聞こえているのか、いないのか――寸前に迫ってきた魔法を前にしたポップは、硬直したように動かなかった。

 光がポップを飲み込み、爆破と黒煙が上がる。
 それを目撃したマァムは、悲痛な声で再び彼の名を呼んだ。爆炎の中に、ポップらしき黒い影を見いだし、息をのむマァム。
 炎に包まれた人影は、ふらりとふらついた後、がくりと頭を垂れた。その様子を見たマァムは、ハッとする。

 シグマは炎を見つめたまま、振り向きもせずにマァムに一足遅かったと告げる。
 今、彼は消滅するところだと語り、シグマはようやく振り返った。

 が、その目が驚きに見開かれる。
 マァムが泣き崩れるでもなく、真剣な表情でじっと前を見ているのに気づいたからだ。炎の照り返しや火の粉を浴びているのに、マァムは全く動揺を見せない。

 そのマァムの目の真剣さに釣られるように、シグマも前方へと視線を戻した。

シグマ「馬鹿な……っ、なぜ消滅してない!?」

 炎の中には、未だにポップの姿が黒い影として見えていた。うな垂れていた黒い影は、ゆっくりと顔と手を上げる。
 その姿が矢を引き絞る形になった時、黒煙や炎は消え失せ、光の弓矢を構えるポップの無事な姿が現れた。

ポップ「……化かしあいは……おれの勝ちだっ!!」

 不敵な笑みを浮かべたポップは、一度、目を閉じてから極大消滅呪文を放った。光の矢は、一瞬でシグマの胴体を打ち抜き、彼の身体は頭と手足だけが残る。
 驚愕の表情を浮かべたシグマの頭は、両腕と共に宙に投げ出される様を、ポップはじっと見つめていた――。







 バーンパレス尾翼から撃ち放たれた、光の魔法――。
 しっかりと立っていたシグマの足はそのままだが、その上に乗っていたはずの胴体はすでに消滅していた。
 宙をゆっくりと飛ぶシグマの顔や腕は、金属音を立てて石畳に落ちる。
 それを、マァムに肩を借りてやっとのように立っているポップは、じっと見つめていた。

 床に落ち、首だけとなったシグマは落ち着いた声音で、一発目はメドローアでは無かったと確認するように聞いた。
 あれはメドローアに見せかけたベギラマだったと白状するポップ。最初から、一発目は自分が食らって隙を作る予定だったという。

 それを見事と褒め、満足のいく勝負だったと自負するシグマは、ハドラーも決して自分を責めないだろうと呟く。
 死が近いのか、弱りゆく言葉の中で、シグマはポップの名は忘れないと告げた。
 ポップもまた、騎士シグマに同意する。

シグマ「……横っ面をはたくという君の勝利の女神にも……よろ……しく……」

 途切れがちなシグマの最後の言葉に、マァムは驚いたようにポップの顔を見つめる。
 が、ポップはシグマを見たまま、満足そうな顔をしていた――。






 一方、地上では背中合わせに武器を構えていたノヴァとクロコダインが、今、見えたものに対して語り合っていた。

ノヴァ「バーンパレスで、ものすごい光が見えましたが……」

クロコダイン「ああ。あの光は……ポップのメドローアだ。さすがはアバンの使徒達だな」

 背中越しにクロコダインがそう語るのを聞いて、ノヴァはパッと表情を明るくする。

ノヴァ「そうか、あれがメドローア……! こっちも負けてられませんね」

クロコダイン「そういうことだ。うなれ、轟火よ!」

 クロコダインは斧を大きく振りかぶり、そう叫ぶ。炎を纏った斧が一閃し、炎が目の前一杯に広がった――。







 同じ頃、ヒビの入ったシグマの顔が爆破した。黒煙を噴き上げ、完全消滅するシグマ。
 それに背を向け、ゆっくりと歩いて歩き出すポップとマァム。

 ポップはなんで助けに来たのかと問いかけるも、答えを聞くよりも早く、そんなに信用が無いのかと続けて聞いてしまっている。
 わずかに目をそらし、そんなわけじゃないと言うマァムから、ポップは自分の腕を抜き、一人で立った。

 そして、マァムにちゃんと言っておかなければいけないことがあると、改まる。
 それを聞いて、ハッと息をのむマァム。

 真正面からマァムを見て、おまえが好きだと告白するポップ。
 正面切っての告白に、マァムの頬が朱に染まる。

 空を見上げれば、眩く輝く太陽が見える。そこに、ゆっくりと雲がかかり、ポップとマァムが立っている場所が影に覆われる。
 雲がよぎっていく決して短くはない時間、マァムはあっけにとられたようにポップを見つめていた。

 が、不意に顔を伏せ、困ったように眉を寄せてしまう。
 ポップはポップで、一仕事終えたとでも言わんばかりに大きく肩を落とし、やっと言えたと空笑いした。

 メルルを抱きしめながらの告白が最低だったと自覚しているポップは、最後の戦いの前にちゃんと言っておきたかっただけだといい、マァムの答えも待たずに先を急ごうとする。

 一人、先を歩き出したポップに、マァムは待ってと声をかける。
 それを聞き、ビクッとして一瞬だけ足を止めるポップ。が、そのまま走り出したポップに、マァムが強い口調で待ちなさいと止める。
 それで、ようやくポップは止まった。

 私の気持ちを聞いてくれないなんて、ずるいし勝手だと責めるように言うマァム。
 あまりにも手厳しい指摘に照れ笑いを浮かべながら、ポップはようやくマァムを振り返った。

 目を背けていたマァムも、ポップの方を向き、ハッとする。
 辛そうな表情をしたポップは、自分の弱さを正直に打ち明けた。マァムの気持ちを聞くのも、怖くて仕方が無いのだと。

 自分に興味が無かったり、やっぱりヒュンケルが好きだったらどうしようと、ビクビクしていると白状するポップ。
 ミナカトールの時も同じで、戦って死ぬことや傷つくことはもう怖くなくても、仲間はずれになることだけは怖くてたまらなかった。
 
 ダイやマァムが一緒に連れてきてくれなければ自分はクズのままだったと、ポップはそう考えている。
 しるしが光らない時、みんなやフローラに相談するのが最適解だと分かっていたのに、怖くて言い出せなかったことも正直に打ち明けるポップ。

 それはきっと、アバンがお仕置きとして光らせなかったんだと、少しおふざけを交えて話すポップ。

 マァムに謝り、自分もきちんと痛い目を見るべきだと言うポップ。いつものお調子者っぽさを最大限に発揮しつつも、ポップは自分がズルい方に流れそうになる時、ガツンと言って正しい道に引き戻してくれるマァムが好きだと、改めて打ち明ける。

 ちょうどその時、雲の切れ目から日が差し込み、二人を明るく照らし出した。
 さっきの告白以上に、頬を赤く染めるマァムの髪を風が揺らす。
 彼女の驚きの表情は、すぐに嬉しそうな笑顔へと変わった。

 数歩、マァムに近づき、彼女の気持ちを問うポップ。
 息をのんでマァムの答えを待つポップの表情は、ひどく不安そうなものだった。

 マァムはポップのことを、好き――それも、大好きだと答える。
 驚くポップは、喜ぶよりも先にヒュンケルが好きだったのではと問う。恥ずかしそうに目をそらしつつ、マァムはそれを肯定した。

 もちろん好きだし、マァムにとってヒュンケルは、強くて、でも孤独で、ものすごく気になる人だ。
 だが、ポップも同じだとマァムは主張する。

 ポップはなんだか放っておけないような、手のかかる弟みたいな感じで、やっぱり気になるのだと言う。

 呆然とそれを聞いていたポップだが、内心、弟と思われていたことに衝撃を受けていた。

 マァムはポップの気持ちに最初は戸惑ったが、今は嬉しいと思ってると語るが、その目は相変わらずそっぽを向いている。
 申し訳なさそうに目を伏せるマァムは、今の自分には答えを返せないと拒否した。

 戸惑うポップの目の前で、マァムは空を見上げる。
 蒼天の空を見ながら、マァムは自分が本当の愛を知らなかったことをしみじみと語る。

 エイミやメルルやアルビナスのように、激しい想いはマァムの中にはない。それが自分に出来るのかと自問自答するマァム。
 マァムは手摺り部分に歩み寄り、肘を置いてもたれかかって外界の方を見る。ポップはその様子を見ながら、黙って話を聞いていた。

自分にそれが出来るだろうかと、マァムは思い詰めたように呟く。
 彼女は自分の気持ちは愚か、自分が人からどう見られているかも意識していなかった。

 もしかしたら、それがポップを傷つけていたかもしれないと思い至り、心を痛めるマァム。

ポップ「マァム……」

 そんなマァムを、ポップも辛そうな表情でただ見つめていた。
 手摺りから手を離して振り返ったマァムは、謝罪と共に今の自分は異性からの求愛に応えられないと言った。そんな資格がないと言いながら、マァムはポップに歩み寄り、彼の右手を両手で握りしめる。

 手を強く握りしめられ、ポップは驚いたような顔を見せる。
 マァムは頬を染めながら、真剣に打ち明ける。

マァム「もし、あなたさえ良ければ、私にチャンスをちょうだい……!」

 意味が分からずに戸惑うポップに、マァムはこの戦いで生き残れた先について語る。生死も分からない戦いが待っているが、その先があるなら、ポップを一人の男性で見ていけると考えている。

 戦いの中で成長していくポップを見ていたからこそ、彼が好きになれた。だから、力を貸して欲しいと頼むポップ。
 一緒に戦い、未来を掴もうと呼びかけるマァムはとびっきりの笑顔をポップへと向けた。

 未来の可能性の示唆に、目を見開くポップ。
 マァムはどこまでも正直に、その時は自分がポップを愛しているかどうか分からないし、ヒュンケルの方を愛しているかもしれないとも言う。

 でも、それでも昨日までの自分とは違う自分になれる気がすると言うマァムは、吹っ切れたような笑顔を浮かべていた。
 今まで通り、力を合わせてこの戦いを乗り切ろうと言うマァムは、一緒にと言いながらポップの手を強く握りしめる。

 自分の気持ちを余すことなく正直に打ち明けたマァムは、これでいいのかどうか不安な様子で、戸惑いがちに俯く。

 まだ、しっかりと自分の手を握りしめるマァムの両手の上に、ポップは左手を重ねてギュッと握りしめた。

 そして、口に出さずに思う。
 自分には、勿体ない返事だと。マァムを好きになって、本当に良かったと思うポップの目は、ひどく穏やかだった。
 そんな二人を、空から明るい太陽が照らし出す。

 俯き、黙り込んでしまったポップに、マァムは戸惑ったよう呼びかける。

ポップ「それってさ……大魔王にやられて死んじまったら、どうしようもねえってこと……だよな……!」

 どこか沈んだ口調でそう言うポップに、マァムはそうだけど、と肯定しつつも、戸惑うばかりだ。
 ポップは唐突にマァムの肩に手を置き、しっかりと掴む。
 思わず、息をのむマァム。

ポップ「……じゃあ……前借りをもらうぜ」

 マァムの肩と二の腕を掴み、ポップは思い詰めたような口調で言った。
 少し、開いたマァムの口元が大きく映し出される。紅を塗っていないのに、薄いピンク色をした唇は、艶やかに光っている。

 驚き、思わず声を上げてしまうマァム。
 そんなマァムに、ポップは真剣な表情で顔を寄せてくる。

ポップ「目ェ……つぶって……」

 そう言いながら、ポップの方が先に目を瞑り、さらに顔を近づけてくる。
 嘘でしょと、これ以上無く大きく目を見開くマァムの顔は赤く、戸惑いと驚きの色が強い。

 少し、口を開けて寄せられるポップの唇が大写しになる。
 驚きに汗を流し、目を潤ませながらもそれから目を離せないマァム。が、ついに耐えきれないとばかりに、顔を真っ赤にしてギュッと目を固く瞑った。

 その瞬間、世界が暗転する。
 ぷにゅっと間抜けな音と主に、マァムの鼻をポップが下からつついていた。驚くマァムの目の前で、ポップが悪戯が成功したと言わんばかりの顔でニヤニヤと笑う。

ポップ「な〜んてね、うっそー♪」

 指を離し、おどけた口調でウインクするポップに、マァムは唖然とするばかりだ。
 いくらなんでもそこまでやる勇気ないとおちゃらけ、その気になって目を閉じたマァムをからかうポップに、マァムの怒りが膨れ上がる。
 怒りを爆発させ、バカと怒鳴りつけるマァム。

 そして、ついさっきまで恋人未満の少年少女達を優しく照らし出す太陽の下で、何かを殴りつける壮大な音と、ポップの悲鳴が響き渡った――。







 バーンパレスの中央。
 その近くを、マァムはポップを引きずりながら走っていた。まだ目を回しているポップは、なさけなくも彼女に足を抱え込まれ、仰向けにズルズルと引きずられている。

 マァムに呼びかけるポップに対し、マァムは不機嫌さ丸出しながらもそれでも「なによ!!」と、返事はする。
 頬をぷっくりと腫らしたポップは、それでも満足そうな顔で言った。

ポップ「……絶対勝とうな。未来、見てぇから……。おれがフラれるバージョンでもいいからさ……」

 ツンとした顔でそれを聞いていたマァムは、呆れた顔でチラッとポップを振り返り、ボソッと言った。

マァム「……バーカ」







 それから少し経ち、ポップは今は自力で階段を上っていた。マァムも彼から数段遅れて続く。
 周囲には、強い風が吹き荒れていた。

 階段を上りきり、開けた場所にでたポップ達。
 マァムは熱っ、と口にする。
 熱気を孕んだ強風に、ポップもなんだと戸惑っている。

 吹き荒れる風の先には、レオナとゴメちゃんの後ろ姿と、こちらをちらりと見るヒュンケルの姿があった。
 レオナの髪とマントが、激しく靡く。

 手で風を避けるように顔を庇いながら、仲間の方へ駆けていくポップ達。
 振り返ったレオナは、ポップとマァムの無事を喜ぶ。ゴメちゃんも、嬉しそうな顔をして浮いていた。

 ヒュンケルは近づいてきたポップを振り替えり、ボロボロになったポップを見て、シグマにはずいぶん苦戦したようだなと感想を述べる。
 ポップが曖昧に頷くのは、半分はマァムにやられたせいだ。もっとも、ポップはそれは口には出さずに頬をかいてごまかし、マァムもちょっと目をそらすだけで黙っていた。

 吹き荒れる風の中、レオナとヒュンケルは下へと向かう階段の端に立ち、バーンパレスの先端部分の方を見ていた。
 なぜ、ここに突っ立っているのか、ダイとハドラーはどこかと問うポップ。
 ヒュンケルは階段の下の方を見たまま、言った。

ヒュンケル「あれを見ろ」

 不思議そうに、ヒュンケルと同じ方向を見るポップだが、何も見当たらないと戸惑うばかりだ。
 なにやら、巨大な球状の竜巻のようなものが荒れ狂い、そこから熱気と風が巻き起こっているのが見えるだけだ。
 どこにダイがいるのかと、焦りを含んだ声で尋ねるポップ。

 が、その渦の中に、青と赤の影が凄まじいスピードで動き回り、ぶつかり合っているのが見えた。ぶつかる度に、両者の影は激しい火花を散らす。
 真正面から激突する、青と赤の影。
 それは、勇者ダイとハドラーだった――。

 


《感想》

 おおっ、ゾクゾクするほどポップがカッコいい、念願のポップ主役回でしたっ♪
 夢にまで見たポップVSシグマ戦をアニメで見られる日が来るとは……感無量です!

 前半はバトル、後半はポップとマァムの恋愛と、綺麗に分けた展開もいいですねえ。告白シーンの時間のかけ方は感激でした。

 珍しくも、冒頭で一切の繰り返しのないスタートも新鮮でした。
 シグマの後ろ姿を手前に、背後にポップが見える形での対戦シーン……しかし、たったかと走るポップの動きがどうにも遅く感じてしまいます(笑)
 ダイやマァム、ヒュンケルのように、ジャンプを加えた素早さが全くありませんね。

 原作ではポップが呪文を跳ね返された直後、轟音が響く尖塔のシーンから始まるので、その前の部分が見られたのは嬉しいです♪

 壁に寄っかかっているポップの靴の裏が、バッチリ見えたのは珍しいカットでした。靴底がほぼ白で、影が薄紫で表現されていました! ……なんか、汚れが目立ちそう(笑)

 シグマの台詞が原作では『ゾンビ』だったのが、アニメでは『魔族』に改変されていました。

 しかし、そこはほぼ気にならないぐらいにシグマとポップのやり取りがいいですね。誠実でいながら芯では熱い印象を与えるシグマと、意図的にお調子者さを漂わせつつ、どこか不敵な印象を与えるポップとの会話が実に素晴らしいです!

 シグマがポップを危険な相手と見なす発言、原作ではもっと気取っているというか、淡々と話す印象だったのですが、アニメではランスを握り直すシーンも入れ、気迫のこもった台詞になっていましたね。
 この解釈もいいなぁとうっとりしました。

 原作ではポップとシグマのやり取りで終始していたところに、マァムのカットを交えたのはアニメの改変ですね。
 真剣な表情で一生懸命走っているマァムが、実に可愛いです♪

 シグマがポップの恐ろしさを語るシーン、ポップが地道にセコく移動していますが(笑)、これもアニメの改変です。原作ではこの時はやっと立ち上がっているだけで、動いていません。
 左手を怪我したのか、右手で押さえているのもアニメの改変ですね。

 ポップがジリジリと左に動く間も、シグマがランスの向きをずっと彼に向けている描写が、彼のポップへの評価の高さ、用心深さが窺えて気に入りました。それに、原作ではシグマの推理を聞いてポップが一瞬、表情を変えることで図星を突かれた驚きを表現していましたが、アニメではそこに足の動きも加えています。

 シグマの指摘にポップが思わず足を止めたことで、彼の抑えた驚きがより細かく表現されている感じがして、すごくいいですね。

 シグマに本音を見抜かれて驚く、というよりは、そこまで真剣に自分を敵と見なしたシグマにやりにくさを感じた、というような微妙な驚きの表現から、ゆっくりと目を閉じる表情変化も実に良かったです。
 妙に自信に満ちた不敵な閉じ目が、いい感じです。

 シグマに、虚を突くためだと指摘されるシーン、ポップの手をアップにして、軽く息をのむ演技と手をピクッと動かす演出が加わったのは良かったです。

 ポップの三発のイオラを、二発目までは腕で受けるシーンはアニメの改変です。原作では、三発まとめてシャハルの鏡で跳ね返している感じですね。

 ポップが左手で魔法を使い、右手でブラックロッドを使うシーンはかっこよかったです。ブラックロッドが黒煙を切り裂いて伸びるシーンはアニメの改変ですが、ポップにしては珍しい武器系アクションが新鮮でした。

 原作ではブラックロッドは直線的に変化していた印象ですが、アニメでのブラックロッドはかなり柔軟性と弾力のある感じの動きになっていました。カーボン製の釣り竿のような印象かも。

 シグマがシャハルの鏡を取り戻そうとするシーン、原作では手を伸ばしていましたが、アニメではジャンプの構えに改編されていました。

 シャハルの鏡を手前に、ポップをその奥に見せる構図もいい感じでした。原作と同じ位置関係なのに、原作ではなかった構図ですね。
 ブラックロッドを短く戻すシーンを入れてくれたのも嬉しいところ。原作では、いつの間にか短くなっていましたから(笑)

 シグマの台詞で『これだけ攻撃力のある切り札を』は、実はアニメの改編です。原作では『これだけ攻撃力のある武器を』でした。

 シグマの接近にポップが焦ってメドローアを早めるシーン、原作では弓を生み出す前に捕まっているので、弓を一応生み出したアニメのポップの方が頑張っていますね。

 右手を捕らえられた仕返しとばかりに、シグマはわざわざポップの右手を掴んで動きを封じていますね。シグマに比べると、ポップの腕ってめっちゃ細っ。
 高く掲げられたポップの手に、太陽が被さる演出がかっこよかったです。

 ライトニングバスター、原作では即効性の必殺技だったのが、アニメでは一歩遅れて効果が現れる演出が加えられたのにビックリしました。
 原作では胸に手を押しつける際、服が大きくよじれて皺が出来ていたので、技の前に掃除機のように吸い込みが入るのかなと思っていましたが、アニメでは胸の皺は原作ほど大きくはありませんでしたね。

 ポップが起き上がり自分で自分に回復魔法をかけるシーン、原作とは左右逆転の絵柄になっているので、右手で身体を支え、左手で回復魔法を使っていました。
 原作では左手で身体を支え、右手で魔法を使っていますが、ポップの場合は左右のどちらの手からでも魔法が使えるので、特に不自然さは感じませんね。

 わざわざ原作の絵を逆転した構図で描くというアニメスタッフの拘りには、いつも感心します♪

 回想シーンでのマトリフの鼻くそほじり&いじりのシーン、まさかきっちり再現するとは(笑) こーゆーのには配慮はなくてもいいんですかね? 呆れるポップの背後の、縮れた毛がうずまく背景はいつものごとく変えていましたが。

 黄色い背景に、クレヨンで渦巻きを雑に描いたような、落書き背景が妙に可愛かったです。
 マトリフのドヤ顔から、回想が現実に繋がる演出もいい感じでした。

 ポップの大魔道士宣言や、自嘲気味のセリフも実にいい味を出していましたが、瀕死のメルルを回想しながら自分の情けなさを語るシーンの気迫のこもった声と、震える拳の描写がいいですね。

 まあ、欲を言えば、原作のようにマァムとメルルとポップの顔が三角形を描く構図が見たかったです! まさに三角関係という感じで、ポップの自己嫌悪の向きがマァムに向かっているのか、メルルに向かっているのか、見ている人の想像に委ねるような描き方が好きだったんですよ〜。
 アニメでは、メルルに対する申し訳なさを強く表現しているみたいですね。

 シグマがハドラーから貰った魂を誇るシーン、原作では拳を握るだけでしたが、アニメでは握った拳を水平にして自分の胸に当てています。ちょっと敬礼みたいでカッコいい!

 ポップの台詞で「おれは一刻も早くダイのところへいく!」が聞けたのが、めちゃくちゃ嬉しかったです! 
 駆け引きを楽しんでいるようなやり取りから一転して、口調も本気モードに入った感じで実にいいですね♪

 ここで、原作でもあったとおりのマァムのカットが混じっていました。
 が、ここでふと、気づきましたが……マァムのパンツが巻き上げた服の裾で完全にカバーされていましたよっ。えー、今更?(笑)

 ポップとシグマのメドローアの反射合戦は、原作よりもスピードアップしている印象でした。しくしくしく、省略が悲しい〜。

原作ポップ(よっしゃあっ!! 鏡に当たった! はね返れっ!!)

 この台詞とポップとシグマの位置関係を示す簡略図がなくなったのは、残念! 指人形のような二人が、可愛かったのですが。

 シグマがポップを後ろから羽交い締めするシーンも、できればバストショットだけでなく全身図で見たかったですよ。原作では、ポップは完全に足が浮く形で抱え上げられ、その格好のまま確実に反射が当たる場所に移動させられているシーンがあったのですが。

原作シグマ「……やはりな!! 鏡の反射を利用してくるのでは……と思っていたぞ!!」

 シグマにこう言われて、悔しそうな顔をするポップのシーンもカットされていますね。

 マァムの目の前でポップが燃え尽きそうになるシーン、よかったです♪
 原作では小さかったマァムの表情が、大きく映し出されたのも嬉しい限り。
 まあ、個人的にはマァムのこの表情のせいで、ポップの無事が早めにバレて逆転されないか心配になりましたが(笑)

 アニメではシグマがポップがなぜ燃え尽きないかと叫ぶように改変されていましたが、原作の台詞は別でした。

原作シグマ「な、何!? ……燃えつき……っ!?」

 ポップが化かし合いに勝つシーン、珍しく原作と同じ角度ですね。炎に包まれていたシルエット姿が、メドローアを生み出すと同時にいつもの鮮やかな色合いに変わる変化が、すごくかっこよかったです♪

 シグマがバラバラになったシーンでは、はるか後方にバーンの主城が見えていました。さすがにあそこまでの遠距離まではメドローアの効果も無いようですが、城ごとメドローアでぶっ飛ばしちゃうのが一番楽に勝てそうだと思ってしまいましたよ(笑)

 しかし、血が出ていないからと言って、シグマは思いっきりバラバラになっていましたね。
 ポップの勝利と共にCMになるタイミングも、なかなかよかったです。

 ポップに肩を貸すマァム、原作よりもアニメの方が距離感が近い気がします♪ 原作ではポップもマァムも、このシーンではちょっと大人びた表情を見せていますが、アニメでは少年少女らしさが強くて可愛いですね。

 シグマの勝利の女神の台詞に、原作ではマァムは頬を赤らめていましたが、アニメではただ驚いている感じでした。
 でも、どっちの表情も可愛くて捨てがたいです♪
 
 クロコダインとノヴァの会話、嬉しくなりました。
 戦いの最中でありながら、二人はずっと上を気にしていたのだなと思える感じが好きです。

 たとえ一緒に行くことは出来なくとも、心だけはずっと彼らに寄り添っていたのだなという印象を受けます。

 ノヴァが「メドローア」と呟く時、クロコダインと背中合わせなのに首をコクンと縦に振っているのが妙に可愛かったです。そう言えば、気絶していたノヴァはポップのメドローアを直接は見たことが無いんですね。

 クロコダインが斧で炎を呼び、画面一杯を赤く染めたシーンから、シグマの頭の爆破へと繋げる演出には感心しました。

 しかし、それはそれとして、クロコダインのマント……めっちゃ破けまくって短くなっちゃっていますよ!? あれ、むしろぬいだ方がマシなのでは思ってしまいました(笑)

 ポップの告白シーン、ものすごく丁寧な描写に感動しました!
 太陽が雲で陰る描写は原作にはないアニメの改変ですが、実に効果的でした。

 二人の表情の変化も細やかで、しかも実に可愛かったです。
 「そんだけだ」と、目をそらすポップの顔が、すっごく可愛くてお気に入りですよ。

 マァムに待てと言われて、走り出したポップの姿にはつい笑っちゃいました。に、逃げ方がものすごく板についていますっ(笑)
 ようやく逃げるのを止めても、背中を向けているせいで「自分の気持ちを聞いてくれないの?」と文句を言うマァムの可愛らしい顔を見ていないのが、ものすごーーく惜しいことをしていると思いましたね!

 ポップが自分の弱さを告白するシーン、長い部分なのにカットせずに丁寧に描写してくれたのは嬉しくてたまりません。
 表情の描写だけでなく、太陽を隠す雲の流れを挟むなど細かな演出も挟み、ポップがアバンの口まねをするシーンを作ってくれたりと、サービス満点ですね。

 自分が勇気の使徒みたいだし、と口にする時のポップが、足をがに股に踏ん張り、両手を腰に当てるポーズだったのが楽しかったです。原作では顔だけのコマだったので、全身図が入るとやっぱり嬉しいですね。

 ポップの告白の後、雲が陰っていたのが、再告白で再び日が照らし出す演出が心憎いです。

 後、これは原作での演出ですが、マァムに気持ちを打ち明ける時「す……」と言いよどんでから、気が抜けたような表情で「好き……なんだ……わ」と告白するシーン。

 魔の森で、マァムに告白しようとして、「す……」と言いよどみ、「素晴らしい仲間だと思っている」とごまかした部分と対比すると、ポップの成長が窺えますね。

 マァムからの告白の返事シーン、彼女が目をそらしながら話しているのが印象的でした。

 原作でもそうですが、ポップが迷いなく相手の目を見て好きだと言えるのに対し、この時点のマァムは恋愛感情的な意味で好きと言えるほど、自分の気持ちを自覚してはいないんですよね。

 しかし、マァムから好きだと言われたのに、ポップってばぬか喜びすらせずにヒュンケルを気にしているのにはつい、哀れんでしまいました。いや、そこはたとえ一瞬でもいいから喜んでおきましょうよ〜(笑)

 痛い目に遭わないとメルルに申し訳ないと思ったり、マァムの返事を極端に怖がった辺りにも、ポップが自分がフラれると想定していたのがよっく分かります。

 ポップが『弟みたい、ね……』とショックを受けるシーン、きょとんとしているポップからダブるように、モノクロでショックを受けた表情のポップの内心が浮かび上がる演出は面白かったです。

 マァムが「愛を知らなかった」と語るシーン、空を見上げながらのセリフになっていたのはアニメの改変ですね。原作でも空を見ていましたが、顔を横に向けて遙か遠くを見やるような雰囲気でしたが、アニメでは首を上に向けて空を仰ぎ見ています。

 また、マァムが手摺りに移動するシーンで、背後にいるポップもちょっとだけ場所移動して、マァムをじっと見つめている改変もいいですね。
 原作でもポップは移動するマァムの方に目を向けているのですが、原作では移動している描写はないので些細な動きに感動しました。
 マァムから一時も目を離せず、彼女を無意識に追うポップが実にいい感じです。

 マァムがポップの手を両手で握りしめるシーン、これも一回目の告白未遂と比較すると意味深長でいいですよね〜。
 一回目の時は、ポップがこの先の戦いで死ぬかもしれないという思いを抱えていて、別れとして握手を求め、マァムがそれに応じる形でした。

 この告白では、マァムの方からポップの手を求め、両手で握り込んでいるという変化があります。

 このマァムからの告白返しの際、原作ではマァムの表情は一貫して聖母風な印象でしたが、アニメでは少女らしさが強調されている印象で、どちらもマァムらしくも可愛らしくていいですね♪

 マァムが仮の未来として、「その時、私が〜」から、もしかするとヒュンケルの方を愛しているかもしれないと語るシーンで、バーンパレスを走るヒュンケルの姿が映し出されていたのは面白い改変でした。

 マァムの表情が一切見えないので、ポップとヒュンケルに対して語る際の差が分からないのがミソですね♪
 マァムの想いがどちらに寄り添っているか、見えない分想像の余地は発生する感じです。
 
 「でも!」の部分から、吹っ切れたような爽やかな笑顔を浮かべるマァムのカットに代わるのも好印象。

 マァムがポップの手を握り込むシーン、原作ではポップの手は完全にマァムの手に包み込まれていたり、見切れていたりではっきりとは見えなかったのですが、アニメではポップの指先が力なくはみ出ているのが見て取れます。

 つまり、ポップはこの段階ではされるがままになっているだけで、手を握り返してはいないんですね。アニメでのこの改変は、すぐ後にポップが手を握り込むシーンを引き立てるスパイスになっていると思います♪

 「ダメ……かな?」と呟くマァムの不安そうな声音、いつにないしおらしさがすっごく可愛かったです! どこまでも真面目で、相手を好きだという熱意が全くなく、自分の気持ちを伝えるだけの真摯な雰囲気が実に言い演技でした♪

 マァムはポップをとても大切に思っていて、これからも一緒にいたいとここまで思っているのに、それを恋愛に搦めて考えない生真面目さが、やっぱりいいですね。
 マァムを好きだと言ったポップよりも、ポップを好きかどうか分からないといったマァムの方が、実は台詞が長いです(笑)
 
 ポップが本当に良かったと実感するシーン、太陽の輝く空が映し出すシーンが挟まれているのもいい改変ですね。原作では普通の空でしたが、日の差し込みが美しくてさらに印象が高まりました。
 ダイ大アニメは、自然の光景を上手く取り入れて効果的に演出してくれるのが嬉しいです♪

 ポップからのキスを仕掛けるシーン、両者の唇が実に艶やか(笑)
 マァムの口元の大写しはあるかなと思っていましたが、まさかポップの分も用意されているとは。恋愛シミュレーションでは、攻略対象のキャラの方しか用意されないですけどね(笑)

 きょどるマァムが、すっごく可愛いっ。
 そして、ポップの手慣れたキス未遂の仕草って、ザボちゃんの真似のように見えてしまう……(笑) うん、学習能力は高いですよね、ポップって。

 マァムを鼻でつつくシーン、原作でも下から上につつく、いわゆる豚鼻なつつき方でしたが、アニメでもきっちりそれを再現するとは思いませんでした。ちょっと不細工なつつき方になっちゃうので、もう少し軽いつつきにするかと思ったら、しっかりと豚鼻をさらしていましたよ!

 ポップが嘘と言いながら離れ間際、一瞬の笑顔を見せるシーンがいいですね。一瞬過ぎて、そのすぐ後のウインクシーンの方が印象が強くなっちゃいますが。

 怒るマァムの珍しいギャグ顔が可愛くてよかったです♪ ダイ大では顔を崩したりギャグ顔を見せるのはポップが多いので、点目で唖然とするマァムは新鮮でした。かっわいい〜。

 落書きのような背景を流してみたり、マァムの怒りを表現するのに赤い背景に黒い渦のようなものを動かしたりと、ギャグシーンの割には背景も凝りまくっています。
 
 ポップの軽口の間、彼のカットではなくマァムの表情が映っていたのも楽しい限り。俯き、影のかかった顔に怒りの白目が浮かぶマァムの表情は超貴重!
 怒りのギャグ顔はアニメの改変で、ブサ可愛さがたまりません♪
 そこから目を見開き、原作の怒り顔に繋げる演出も良かったです。

 ポップがマァムにボコられるシーン、原作でも青空が見えていて殴られる音とポップの悲鳴だけが響きますが、アニメでは先程と同じく光指す太陽の空が映し出されています。
 ……さっきまでの感動、台無し(笑)

 太陽も呆れているんじゃないかと思える演出が、実に楽しいです。
 同じ背景を使い回しているはずなのに、こんなにも印象が違うとは面白いですね。

 マァムがポップを引きずって走るシーン、原作ではマァムはポップの両足を肩に担いで引っ張っているのですが、アニメでは片腕で右脇に足を抱え込むように改変されています。

 これは、妥当な改変ですね。
 だって、原作では不自然さを感じさせずに描いているとは言え、ほぼ同じである二人の身長を思えば、ポップの足を肩に担いでしまえば引きずるのは絶対に無理ですから(笑)

 原作のように肩に足を担げば、逆さづりにして担ぐことになりますが、アニメでは引きずるのを重視して、足を脇に抱え込む姿勢に変えています。
 ポップの頭の上にクルクル回る星までも再現している芸の細かさには、感心しました。

 しかし、アニメでは基本的にダメージが軽減された表現をされることが多いのですが、このシーンに限ってはポップの顔の腫れが、原作よりも派手に膨らんでいます(笑)

 マァムの「……バーカ」の台詞、原作では「バカ……!」だったので、少しニュアンスが違うところに声優さんのセンスを感じました♪
 
 ポップ達が階段を上りきった時の台詞、原作ではポップが「何だ」と驚き、マァムが「熱っ」と言う順番でしたが、アニメでは逆になっていますね。
 ポップが階段を上りきった時の正面から見たカットが省略されていたのは、ちょっと残念です。
 場所や距離関係を表現するには、遠景からの構図の方が見やすいですが。

 レオナとヒュンケルのカットも、原作では二人の顔をアップにして手前に置き、背後にポップとマァムが見える構図だったのですが、アニメでは完全にポップ達の視点で、後ろから見た構図になっていました。
 なかなかいい構図だったので、アニメでみられなくって残念です。

 また、階段を上った後のカットでは、ポップの顔の腫れが減っていました。どこかで回復魔法をかけたみたいですが、汚れは落とせないので苦戦の後はバレるみたいですね。

 ちょっと目をそらすマァムが可愛いです。
 原作ではマァムはポップの後方にいましたが、アニメでは二人そろって並んでいました。

 ポップが熱気の方を見るシーンで、ヒュンケルが熱気の中心をよく見ろとアドバイスする台詞がまるっとカットされていました。
 アニメでは言われるまでもなく、気がつくという展開になっています。

 ポップがどこにダイがいるんだと尋ねる言葉が、すごくしんぱいそうな響きになっているのが、なんだか嬉しかったです。ポップは本気でダイを心配しているんだなと、そう思えるシーンですね。
 
 影だけのぶつかり合いから、突如、ダイとハドラーのアップが出てきたのはよかったです!
 ラストにダイとハドラーの対決を持ってきて、ビシッと雰囲気を引き締めてきた次回への引きもいいですね。

 原作とは違うカットで、手前にハドラーの横顔のアップ、そこに両手を握り込んで突っ込んでくるダイという、静と動が組み合わさった構図がいい感じですよ〜。
 原作とは全く違うところで次回に続いていますが、いい感じです。

 実は、途中まではマァムがポップを引きずっていって「バカ」と言うシーンで終わるのかと思っていたので、このラストは予想外でした。
 でも、これでこそ『ダイの大冒険』だとも思いましたよ!

 次週予告では、ダイとハドラーの対決のかっこよさに加え、心配そうなポップのカットが挟まれていたのが嬉しいところ♪
 正直な話、レオナよりもポップの方がダイを心配そうに見ていますね(笑)

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