『真竜の闘い』(2021.2.26)

  
 

《粗筋》

 バーンパレスの先端部分から中央部に続く、桟橋に当たる場所に渦巻く熱風。
 激しい風が舞い狂う中、青と赤の影が時折飛び交うのが見える。激突を繰り返す二色の影。

 渦の中側の床に降り立った青い影は、ダイだった。
 苦しそうにしゃがみ込んで膝をつくが、それでも気合いを入れた表情をハドラーへと向ける。

 一方、ハドラーは同じ条件下で悠然と佇んでいた。
 ハドラーの長い髪が、風にあおられて靡く。
 まるで見えない檻のように二人を取り囲む熱風は、不思議なことに二人のいる中側にはほぼ影響を見せていなかった。

 両者の対峙を見て、戸惑うポップ。
 それを恐ろしい戦いだと解説するヒュンケル。この熱風がダイとハドラーの戦いが生み出したものだと知り、マァムは驚愕する。

ヒュンケル「熱風なんてものじゃない……! 高密度のエネルギーだ」

 完全に二人だけの別世界になってしまったので、巻き添えになる前に避難したとレオナも説明を沿える。
 仲間達の説明を聞き、それでも納得しきれない様子でポップは熱風の空間を見つめていた。







 ポップ達と同じ光景を、バーンもまた水晶玉越しに眺めていた。
 魔界で長くを生き抜いてきた彼はこれが何を意味しているのか、知り抜いていた。
 真竜の戦いと呟いたバーンの言葉に、キルバーンは振り返る。

キルバーン「ほう」

ピロロ「なになにー?」

バーン「知らぬか? あれはまさに魔界に名高い真竜の闘いの再来だ」

キルバーン「興味深い話ですね」

 バーンははるか古代の話を、語り始める。






 そこは死の大地にどこか似た、だがもっと暗く、陰鬱で、マグマの煮えたぎる暗黒の世界――魔界。
 魔界の竜族の中でも最強の力を持っていた両巨頭が戦うことになった。

 溶岩の流れ、今、まさに噴火している噴火口に浮かぶ竜のシルエット。
 マグマをものともしないその竜は、冥竜ヴェルザー。
 雷を纏って現れたもう一匹の竜は、雷竜ボリクス。

 炎と、雷を纏った竜達が対峙する。
 その色合いは奇しくも、今のダイとハドラーと同じく赤と青の対決だった。ほぼ互角の力を持つだけに、闘いは壮絶なものとなった。

 二人の闘いは、熱風の渦巻く塊を生み出した。立っているだけで生命力を奪い、近づく者を消滅させるバトルフィールドのせいで、周辺にいた竜族達は一瞬で消滅した。

 死闘の結果、勝利したのはヴェルザーだった。
 これにより、彼は冥竜王と名乗ることになる。
 以来、この闘いは真竜の闘いと呼ばれ、史上もっとも激しく過酷な闘いと讃えられるようになる。






 上機嫌のバーンは、キルバーンに刮目して見よと命じる。
 戦う両者のレベルが高く、実力が拮抗していないと発生しない闘いであり、めったに見られるものではないと楽しげに語るバーン。
 それを聞いたキルバーンは、くるりと身体の向きを変えて水晶玉に向き直る。

 ダイとハドラーがこれほどの闘いを見せていることを、バーンは心から喜び、見物していた。






 だが、ポップ達には闘いを喜ぶ気持ちなど微塵もない。
 全員が深刻な表情でダイ達を見つめていた。

ヒュンケル「二人とも死力を尽くして戦っている……! そのエネルギーが周囲に溢れ、フィールドを作っているのだろう」

ポップ「なにのんきなこと言ってんだ、ダイがあんなになってるのに、なんで加勢しねぇんだっ!?」

 憤るポップに対して、ヒュンケルは無言のまま鎧からブーメランを取り外す。
 驚いて目を見張るポップの目の前で、ヒュンケルはそれをハドラーめがけて投げつけた。

 後ろ姿を見せているハドラーに向かって投げられたブーメランは、彼に当たる前に熱風の檻に阻まれ、炎となって消滅してしまう。

 驚くポップに、ヒュンケルはあの二人の周囲には誰も近づけないと説明した。あの二人の意志が、そうしているのだろうと考えているヒュンケル。

 ダイはなぜ剣を使わないかと、切迫した声で尋ねるマァム。
 それの疑問を補足するかのごとく、レオナはハドラーも同様に剣を使わず、あの空間が発生してからずっと格闘だけで戦っていることを指摘する。

 その疑問に答えたのは、やはりヒュンケルだった。
 おそらく、剣を抜くときが最後の決着の時だと悟っているからだろう、と――。
 その答えを聞きながら、ポップはじっとダイ達の戦いを見つめていた。







 バトルフィールドの中では、膝をついているダイにあわせるかのように、ハドラーもまた、姿勢を低くして身がまえていた。
 じっと目の前にいる敵を睨みつける、ハドラーとダイ。先に動いたのは、ハドラーだった。

 驚くべきスピードで飛び出したハドラーは、両者の間合いを一瞬でゼロにした。
 身がまえるダイだが、ハドラーの巨体から繰り出される渾身のショルダーアタックにひとたまりも無く吹き飛ばされかかるが、歯を食いしばってそれに耐えた。

 足を踏ん張ってその場に踏みとどまると同時に、裏拳のような動きでハドラーに蹴りを食らわせる。
 それにダメージを受け、一瞬、うめくハドラーだが、すぐにダイを殴り返す。
 今度は、ダイが痛みにのけぞる番だった。
 しかし、カッと目を見開いたダイは、再びハドラーの顔に回し蹴りを決める。

 足を止めた二人は、猛烈な勢いで殴り合いはじめた。
 そのうちの一発がダイの腕を上に跳ね上げ、ガードががら空きになる。その隙を狙って、ハドラーの蹴りがまともにダイの顎に決まった。
 下から上へ突き上げる攻撃に、大きく投げ出されるダイ。

 ダイを心配し、思わずポップが叫ぶ。
 床に落ち、すぐに起き上がれないダイを見て、ポップはもう我慢できないと決闘に割り込もうとする。
 メドローアなら、どんな高熱でも吹き飛ばせると魔法を使おうとしたポップの右手を、ヒュンケルが軽く掴んだ。

 止められて、不満そうに怒鳴るポップ。
 これは二人の闘いだと止めるヒュンケルだが、ポップは納得しない。ヒュンケルの腕を振り払って、バトルフィールドを指さす。

 同じ場所にいても、体格の差からダイの方が格段に不利だと必死になって訴えるポップ。
 静かにダイ達を見やるヒュンケルは、それには反論しなかった。

 卑怯と言われてもダイを救うと宣言するポップ。
 それを、レオナの声が止める。
 ダイが闘いを望んでいるから、自分達は見守らなければならないと説くレオナ。

 だが、ポップはメドローアのための氷と炎の魔法を手に生み出す。ダイの考えが甘いと言い、ハドラーの言い分なんか無視すればいいと言い放つ。

レオナ「それが出来ないから、ダイ君は『私たちのダイ君』なんじゃないの?」
 
 力の込められたレオナのその言葉に、ポップの手から魔法の光が消える。

ポップ「おれたちの……」

 レオナは両手の中にいるゴメちゃんと目を合わせながら、レオナは独り言のようにダイ君の魂の力についてずっと考えていたと語り出す。
 ポップもそれは気になるのか、完全にレオナの方を向いていた。

レオナ「ダイ君は勇気だと思っていたけど、勇気はポップ君の魂の力だった」
 
ポップ「ああ……そうか、そうなると……あいつの力はなんだ?」

 腕を組んで考え出したポップに、レオナはダイの魂の力はポップの言う『甘さ』なんじゃないかと言う。

ポップ「え? そんなものが……?」

 優しさ、純情……表現は色々あるが、レオナは純粋な心と考えた。
 怪物島育ちで、先入観なく誰とでも仲良くなれる力こそが、ダイの一番の魅力であり、魂の力だと考えるレオナ。
 
 その力があるからこそ自分達も友達になり、ヒュンケルやクロコダインとも仲間になれたという言葉に、素直に首肯するヒュンケル。

 自分達がここに集まっているのは、ダイの魂の力のおかげだと考えるレオナは、そのダイが望むのなら尊重してあげるべきだと語る。
 納得し切れていないのか、目を背け、拳を握りしめるポップ。
 だが、レオナは少なくとも自分はそうしてあげたいと思うと締めくくる。

 俯いていたポップは顔を上げ、ダイの方を振り返る。悔しいような、今にも泣き出してしまいそうな顔で、じっと親友の闘いを見つめていた。







 熱風の檻の中、ダイは今、起き上がったところだった。
 だが、苦しそうに息をつき、顔も上げないままだ。そんなダイに向かって、ハドラーは気合いを混入するがごとく声をかける。

ハドラー「どうしたぁあ!?」

 このままでは敵わないと悟ったダイは、だらりと垂らした右手に力を込める。
 自分の、今、持っている最強の技をぶつける決意をしたダイは、ついに右手を背中の剣にかける。






 ダイが剣を抜こうとしていると気づき、驚くマァムやポップ。






 が、ハドラーは決意を秘めたダイの顔を見て、愉快そうに笑う。
 ダイと何度も戦ってきたハドラーは、知ってる――ダイがそんな顔をした後は、なにかとてつもないことをしでかすのだと。
 だが、今ではハドラーにとって一番好きな顔だ。

 ダイの背中で鞘の封印が解け、剣を引き抜いたダイは一度高く掲げたそれを、なぎ払うように振り下ろした。
 その手には、すでに竜の紋章が浮かんでいる。

 ダイの本気を見て取ったハドラーは、右手を前に伸ばした。その手の甲から、覇者の剣が金属音と共に出現する。
 一度、顔の前に剣を構えたハドラーは、ダイと同じように剣を振り下ろす。互いに剣を手にした二人に、周囲の熱風がさらに勢いを増す。






 それを見たヒュンケルは、最後の激突が始まると言った。次の一撃で勝負が決まるというヒュンケルに、勝手な予想をするなと怒るポップ。
 だが、ヒュンケルはほぼ確信に近い強さで予測できた――。







 バーンパレスの王間で、バーンは同じ光景を見ながらさらに詳しい解説をしていた。

 真竜の闘いのバトルフィールドは、勝者に味方をする特徴がある。
 あのバトルフィールドは放出されたエネルギーが、両者の力が拮抗するがゆえに相手に届かず、蓄積されたもの……均衡が崩れた時、弱い方に一気に流れ込む。

 それこそが真竜の闘いのもっとも恐ろしい点だ。
 必殺の一撃が加えられた途端、それまでの全エネルギーが敗者に確実な死をもたらす。
 怖くて自分ではやりたくない決闘だと、軽口を叩くキルバーン。

ピロロ「こわい、こわーい♪」

 バーンは冷静に、ダイの不利を見切っていた。
 ハドラーの決め手が超魔爆炎覇なのに対し、ダイは竜闘気、もしくは呪文を併用したアバンストラッシュが最強技だ。

 しかし、最強呪文がライデインでは魔法剣の威力はたかがしれていると貶すキルバーン。

 ダイが明らかな不利だが、それをダイが見抜けぬわけがないと考えるバーンは、何を仕掛けるのかと面白そうに水晶玉に目をやる。







 風が吹き荒れる中、向かうあうダイとハドラー。
 たがいに剣を自然に垂らし、対峙する。
 が、ダイがついに動いた。大きく足を広げて踏ん張り、闘いの構えを取る。その様子を、一瞬だけ驚いたように見やるハドラー。

 ダイの構えは、アバンストラッシュ――だが、いつもよりもやや前傾気味というか、低く身がまえられている。

ハドラー「アバンストラッシュ……!」







 ダイのアバンストラッシュの構えはハドラーにとっては想定内であり、満足のいくものでもあった。
 かつてのアバンとの因縁を思えば、決着に相応しい秘技だと考え、ほくそ笑むハドラー。

 だが、その歓喜の後、ハドラーは冷静な戦士としての判断から、その技ではダイに勝ち目はないと宣言する。
 身がまえも解き、普通に立ったハドラーは、破れた瞬間にバトルフィールドがどうなるのか説明しようとした。

 が、それを『分かっている』と遮るダイ。
 力負けした方にこの場の熱が全部集まると見抜いているダイ。でも、自分は――アバンストラッシュは負けないと、ダイは強く言い切る。

 ダイの意志に呼応して、ダイの剣が青い闘気に包まれる。
 大魔王バーンと戦うために編み出した、新しいアバンストラッシュだと口にするダイに、ハドラーのみならずポップも驚く。

レオナ「ダイ君が特訓で編み出した必殺技のことだわ!」

 本来ならバーンの闘いまで温存してきたかったが、ここで全力を尽くすと決めたダイは勝負を賭ける覚悟だった。

 ハッタリでその場逃れをするようなダイではないと確信するからこそ、ハドラーはその言葉を信じ、新必殺技を歓迎するかのように身がまえた。
 ハドラーの全身が、赤い闘気に包まれる。
 つまらぬ技ならば、ハドラー渾身の技で粉砕する覚悟だ。
 バトルフィールドが一段と激しく膨れ上がった。
 






 熱風の余波は、見物しているポップ達にも及ぶ。
 風に煽られかけるポップ。レオナは必死に、ゴメちゃんを両手で胸に抱え込みながら、みんなにもっと離れるようにと注意を促す。

 風に抵抗してもがきながらも、こんな時に離れられないと文句を言うポップ。ならば、せめて伏せるように指示するレオナ。
 一瞬飛ばされかけたポップは、慌ててその場に伏せた。






 熱風の檻の外の騒ぎも気づかないのか、ダイとハドラーは気迫を高めながら互いに機を窺っていた。
 ダイの姿勢がさらに沈み、剣だけでなく全身から青い闘気が発せられる。
 ハドラーへ挑みかかろうと雄叫びを上げるダイ。

 ハドラーは冷静に、ダイの構えが前と同じだが、やや前傾姿勢だと見ていた。
 ダイは渾身の力を込め、アバンストラッシュ・アローを放つ。
 剣を振り切ると同時に、斬撃が矢のように飛んでいく。







 それを、ポップは伏せた姿勢で見守っていた。
 あれが新ストラッシュなのかと思うポップに対し、ヒュンケルにはそれがただのストラッシュだと分かっていた。

 ハドラーもまた、一目でダイの放った技がこれまでのアバンストラッシュと何ら変わりが無いことを見切っていた。期待が裏切られたことに憤り、超魔爆炎覇で打ち払おうとするハドラー。

 だが、ダイはもう一度アバンストラッシュの構えを取り、アバンストラッシュ・ブレイクを放つ。
 これまでに無い素早い動きで、剣にエネルギーをのせたまま敵へ突っ込んでいくダイ。
 さすがに驚愕するハドラー。






 見物していたポップやマァムも目を見張る。
 先に飛ばしたストラッシュ・アローに、ダイが追いつこうとしていた。






 信じられない光景に、これ以上無いほど目を見張るハドラー。
 だが、ダイの目に迷いはない。この攻撃で勝負を賭けると言った言葉通りに、全力で突っ込んでくる。

 それを見たハドラーの目に険しさが戻り、彼は雄叫びを上げながら闘気の篭もった剣を高く掲げる。
 だが、反撃の前に地を這うように飛び上がるアローと、ダイの放つブレイクが、ハドラーの胸で交差した。

 アバンストラッシュ・クロス――ダイの新必殺技をまともに食らい、絶叫を上げるハドラー。
 ダイの剣を交差した攻撃は、ハドラーの剣を折り、そのまま熱風の空間を引き裂いた。







 爆発的な風の余波を食らって、思わず立ち上がったポップはまたもふらつく。膝をついてしゃがみ込むヒュンケルも、思わず爆風から腕で顔を隠す勢いだった。踏ん張ろうとしても耐えきれず、後ろに転がるポップ。






 地上にいた人間達からも、その交差した光は見えていた。ことに、ノヴァは嬉しそうな顔をして、剣を掲げて叫ぶ。

ノヴァ「ダイだ! ダイが新しい必殺技を使ったんだ!」

 周囲にいた人間達も、希望に満ちあふれた顔でそれを見ていた。







 闘気を失ったハドラーの身体が、叩きつけられるように石畳に倒れ伏す。力を使い果たしたダイもよろめき、倒れ込みそうになったところを剣にすがって辛うじて座り込むにとどめた。

 立ち上る土煙が消え、大の字に倒れ込むハドラーと、荒い息をついて蹲るダイの姿が露わになる。






 その光景を、水晶玉越しに見ているバーン。

バーン「フム……真竜の闘い……決着がついたな」






 這いずって階段に近寄り、ダイの勝利を喜ぶポップ。
 いち早く立ち上がって、自分のことのように大喜びするポップ。レオナ、マァムも続いて立ち上がった。
 二人とも戸惑いが強い様子だが、どちらかと言えばレオナも新必殺技に喜びを、マァムはわずかばかりの脅威を感じている様子だ。

 最後に立ち上がったヒュンケルは、ストラッシュ・クロスの全容を悟っていた。
 射出型のアローと、高速突撃型のブレイクという二種を合わせたことに感心したように呟くヒュンケル。
 それに戸惑い、説明を求めるポップやマァム。

 ヒュンケルはアローを放った後、ブレイクで追いついて同時に炸裂することで威力を高める技だと説明する。
 下から舞い上がるアローと、上から打ち下ろすブレイクを敵の胸で交差させて威力を強める。少なく見積もっても5倍以上の威力増強のある技だ。
 その威力に驚くポップ。

 二つの技を全く同じにするには、天才的なセンスが必要だとヒュンケルは語る。ヒュンケルにも出来ない、ダイだからこそ出来る超必殺技だと認めるヒュンケル。
 超必殺技誕生に、嬉しそうなポップ。

ヒュンケル「だが、ダイにしても、闘気を使い果たしたようだな」

ポップ「えっへへ……ッ」

 ポップは笑顔のまま、真っ先に階段を降り始める。
 マァムは倒れたハドラーを見下ろしたまま、もう助からないのねと呟いた。ヒュンケルもそれを肯定した。ストラッシュ・クロスだけでなく熱風のエネルギーも一身に食らったと予測するヒュンケル。







 階段を降りながら、ダイに呼びかけるポップ。
 ようやく目を上げるダイだが、ポップはダイの背後に動く影を見て目を見張る。

ポップ「ダイッ、まだだっ!!」

 ポップの忠告も一歩遅く、ダイの足を巨大な手が掴む。雄叫びを上げながら、ダイを逆さ吊りに持ち上げるハドラー。






 それを見て、レオナとマァムは息をのむ。
 ヒュンケルはハドラーの執念に驚愕していた。

 ダイの名を叫ぶポップ。
 ダイを振り回したハドラーは、階段に向かって彼を投げつける。階段が砕けるほど、強くぶつけられるダイ。

 その拍子にダイの剣を背負う鞘のベルトが外れ、鞘が空中へと投げ出される。
 階段を転げ落ちたダイの近くに鞘も落下し、床に突き立つ。

 目の前で起こった突然の惨劇に、恐れ戸惑うポップ。
 倒れたダイは、目を閉じて動かない。
 心配そうにダイに呼びかけるポップ。


 信じられないと、驚愕するばかりのヒュンケル達。
 ハドラーにはもはや一片の闘気も残っていないはずだと、険しい視線をハドラーに向けるヒュンケル。

 そして、彼は見た。
 ハドラーが気合いと共に、虹色の輝きの剣を生み出した瞬間を。

 身体のあちこちからあがりはじめた黒煙は、超魔生物である彼の消滅の近さを物語っている。
 だが、それにも拘わらず、光り輝く剣を手に堂々と佇むハドラーは、気迫に満ちていた。

 それが、生命そのものをエネルギーに転化した生命の剣だと察するヒュンケル。マァム達は驚くが、ヒュンケルは自身が燃え尽きるのを覚悟の上で戦いを選ぶハドラーの気持ちを理解していた。

 階段途中にいたポップは、振り仰ぐようにしてヒュンケルの説明を聞いていたが、ダイの名を呼びながら弾かれたように走り出す。
 その後を、ヒュンケル、マァム、レオナが追う。

レオナ「ダイ君!」

 ダイの元に駆け寄ってくるアバンの使徒達を、ハドラーはじっと見やる。
 彼らの無事から、己の部下達が全員敗れたことを悟るハドラー。ハドラーはわずかに空を見上げ、彼らの死を悼むかのように目を瞑る。

 己の親衛騎団らに、よくやってくれたと心の中で労いの言葉を投げかけるハドラー。すぐに、自分も彼らの元へ行く覚悟だ。
 目を瞑ったまま、魔王軍六団長は最強だったと回想するハドラー。

 しかし、六団長は櫛の歯が欠けるように一人ずつ消えていった。指揮官であるハドラーに、野心と保身以外の感情しか無かったからだ。
 空の玉座の前で、ただ一人だけ佇む過去のハドラーは、静かに目を伏せる。まるで、己の過去を悔いるがごとく――。

 場所は変わり、バーンパレスを思わせる石の床のある場所。 
 光が差し込む中、こちらに歩み寄る銀色の足並みが映る。ヒムが、ブロックが近づいてくる中、後ろを振り向く過去のハドラー。

 五人勢揃いした親衛騎団達は、その銀色の身体に光を受けて誇らしげに輝いていた。
 彼らが一致団結してくれたことが、自分が高みに立てた何よりの証と考えるハドラー。

 初顔あわせの際、ダイと戦うヒムの姿。
 魔宮の門の前でダイとバランと戦うフェンブレンの姿。
 巨体を二つに割って正体を現し、片言で別れを告げたブロックの姿。
 黒煙を裂いて突進し、ポップと戦うシグマの姿。
 サウザンドボールを放ち、マァムと戦うアルビナスの姿。

 最後の最後で、自分は部下達に恵まれたとしみじみと思い返したハドラーは、かけ声と共に目を開ける。
 その背後には、もはやいないはずの親衛騎団達が勢揃いしているように見えた。
 彼らの忠誠に応えるためにも、ハドラーはダイに一矢報いる覚悟だった。


 階段を駆け下りるポップはハドラーの執念をヒシヒシと感じ取り、不安を感じていた。
 剣を構えて佇むハドラーに対し、ダイはゆっくりと身を起こすのがやっとだ。

 ハドラーの執念、そして親衛騎団の思いを表すかのように、覇者の剣よりも大きく、光り輝く生命の剣。
 あれを食らったら終わりだと直感するポップは、ダイに呼びかける。

ポップ「ダイッ、おれも……っ」

 それを最後まで言わせもせず、ダイが強い口調で拒絶する。

ダイ「だめだっ、ポップ!」

 ダイらしからぬ強い拒否に、ポップは戸惑い、立ちすくむ。

ダイ「……今、おれに手を貸したら……いくらポップでも許さないぞ……っ!」

 本気の怒りを滲ませ、そう宣言するダイ。
 この戦いだけは最後までおれ一人でやらせて欲しいと、息も絶え絶えなのにそう主張し、剣を手に身がまえるダイ。

 あっけにとられてから、ポップはダイを心配して止めにかかる。ダイにはもう戦う力が残されていないことを指摘し、ハドラーを指さす。

 身体のあちこちから黒煙を上げながらも、ハドラーはとても死にかけているとは思えない覇気を漂わせ、輝く剣を手に立っていた。
 そんなハドラーを睨みつけるダイ。

 ハドラーが残り少ない生命力を振り絞った一撃を仕掛けようとしていること、親衛騎団の思いを背負った渾身の攻撃でもあることを説明するポップ。
 気迫のこもった目でじっとダイを見ているハドラーは無言のままだが、それは婉曲な工程にも見える。

 ダイの元に駆けより、もう新必殺技が打てないダイを案じ、後は自分達に任せるようにと説得するポップ。
 だが、ダイは俯いたまま振り向きもしない。
 小声で、彼は呟いた。

ダイ「……まだ一つだけ、試してみたい技が残っている……!」

 驚くポップ。ハドラーも警戒を見せる。
 苦しそうに、だが、ダイは立ち上がった。
 仲間達の思いを背負っているのは、ハドラーだけではないとダイは言った。みんなの思いも背負っている、と。

 ダイが思い出すのは、アバンにブラス、バラン……負けられないと、強く言い切るダイ。
 みんなの思いの強さを証明するためにも、ここでハドラーに負けるわけには行かないと叫ぶダイの声は、バーンパレス中に響き渡った。

 ダイの主張に驚き、ポップはよろけるように数歩後ずさる。
 ダイの言葉に自分の小心さを思い知り、身震いするポップ。なぜダイを信じてやれなかったのかと悔い、俯いて震えるポップの肩に、ヒュンケルの手が乗せられる。
 そちらを向くと、ヒュンケルだけでなくマァムやレオナ、ゴメちゃんもポップを見つめていた。

 
 ハドラーはダイに向き直り、彼の心意気を褒める。だが、闘気のつきかけている今のダイに何が出来るかと問いかけるハドラー。

ダイ「これだぁ!」

 叫ぶなり、ダイは剣を空にかざす。剣先が光を受け、きらめいた。
 ライデインのかけ声と共に、青空に暗雲が渦巻き、その中心から雷が落ちた。ダイの剣に落雷した雷は、ひとしきり激しく輝いたかと思うと、ダイの剣に雷の輝きを与えて鎮まった。

 その光景を、歯を食いしばるようにしてじっと見ているハドラー。
 仲間達を後ろに、ダイは雷の宿る剣を、ハドラーは生命の宿る剣を手に対峙した――。


 


《感想》

 ダイとハドラーのガチバトル、カッコいいです!
 ひたすらに親友を心配するポップと、ダイの気持ちを慮って尊重するレオナの対比もいい感じ。バーン様の重々しい解説が、素晴らしいですね。

 ダイが苦しそうに膝をついているシーン、原作でもありますが、原作では最初から気合いの入った表情を見せているのに対し、アニメでは苦しげな表情での着地シーンを加えてくれたのが嬉しい改変です♪
 ダイにとっても、やっぱりあの場はいるだけで苦しいんでしょうね。

 マァムの疑問に答える形で、ヒュンケルの熱風についての説明が追加されていました。

 バーン様の説明にも、キルバーンやピロロの合いの手がちょいちょい混じっていますね(笑) 原作ではバーン様の独壇場の説明でしたが、アニメではより分かりやすくするために質問を挟んでいるのが面白かったです。

 教育テレビ系の、説明役のお姉さんにお間抜けな質問をするお子様役な感じがいいですねえ(笑)

 しかし、キルバーンがヴェルザーからの刺客だと考えれば、自分の主の昔話を全く知らないとも思えないので、説明するバーン様に気持ちよく話させるための合いの手と考えると、なかなかに意味深長な態度でさらに興味深いです。

 バーン様も原作では「……そう……これはまさに〜」と話していたのが、キルバーンらが知らないと言う前提でわざとらしく語っていますね。こちらも、キルバーンがヴェルザーの過去を知っていてもおかしくないと承知の上で話している可能性があると考えると、狸と狐の化かし合いを見ているようです。

 バーン様を玉座の下から見上げる構図で、真上のステンドグラスが美しく輝く画面には感心しました。
 原作にはない凝りまくった構図をちょいちょいぶっこんでくれるのも、ダイアニメの楽しいところです♪

 原作では二頭の竜が線画風に描かれていただけだったヴェルザーとボリクスの対決が、アニメでは背景もついてきました♪
 ヴェルザー、マグマを浴びても平気なんですね(笑) 鳴き声、初めて聞いた気がします。っていうか、鳴くのか……原作では普通に喋っていたから、意外でした。

 噴火口でお相撲さんのごとく踏ん張ったような姿勢を取っていたので、思ったよりも荒々しい性格の竜なのかなと思いました。
 むしろ、雷光を背負ったボリクスの方がスマートな印象ですね(笑)

 アニメでは、竜族が真竜の闘いの熱風のせいで周囲にいた竜族らが燃え尽きるシーンが描かれていますね。思っていたより、被害甚大でした……っ!

 ヴェルザーがボリクスの首を噛んで勝利を収めるシーン、原作とはやや角度を変えていました。炎と雷の余波に隠されて、噛みついている残虐シーンが分かりにくい印象です。

 まあ、原作ではやたらと生々しく噛んでいるので、原作に忠実だと問題アリな気もしますが。
 ブレスや魔法を使った闘いの決着が、最後は噛みつきだというのもある意味で衝撃の事実ですよねー。

 魔界回想が終わってポップ達がダイの決闘を見るシーン、よく見たらポップのバンダナとレオナのマントや髪が正反対の向きに靡いています(笑)
 ま、まあ、これは気流が複雑にぶつかり合っているせいでしょう、きっと。現実世界でも、ビル風などは一瞬で風の向きが変わって傘を簡単にぶっ壊してくれますし。

 しかし、ヒュンケルが原作にない説明を語りまくっていますね。
 戦いの解説に関しては、彼がこの場で一番詳しそうなので適任と言えますが、説明も大幅に改変され、かみ砕いて分かりやすいものになっているのもは感心します。

 ポップの台詞も、一部改変されています。

原作ポップ「バッ……バカ野郎っ! ダイがあんなになってるのに、なんで加勢しねぇんだっ!?」

 マァムがポップをバカと言うのはそのままですが、こちらは改変されとりますね。まあ、口癖のようにこの台詞をいうポップもいいですが、大魔王バーンに向かってバカヤローと叫ぶ台詞を際立たせるために、控えているのかと推察! 最終回で、ダイに向かって叫ぶシーンにも期待大です。

 ヒュンケルの説明台詞で「……オレとて、割って入れるものならば入っている」がカットされていました。

 ヒュンケルはレオナと同じく、ダイとハドラーの決闘には肯定する台詞や行動を後でとっているので、矛盾感を無くすためにここは省略してもいいと思いましたが……ちょっと古風なこの言い回しを、声優さんの声で聞いてみたかったと思うと、少しばかり未練があります(笑)

 ストーリー的にはこの方が流れがいいと分かっていても、原作の台詞を全て聞いてみたいと思ってしまうファン心理がつい働いてしまうとは。ああ、ファン心理こそ、矛盾だらけかも(笑)

 原作では、ゴクッと息をのんでいたポップのアップシーン、アニメでは口元辺りを腕で拭うシーンに改変されていました。
 さらに言うなら、原作ではここでマァムの横顔のシーンもあったのですが、それはカットされています。

 その代わりのように、ダイとハドラーが姿勢を低くして身がまえ合うカットが追加されていますね♪
 ハドラーのクラウチングスタート体勢には、驚きです! クラウチングから飛び出してからの原作のアップに繋げた演出には、ビックリ。いい動きですね♪

 ハドラーの肩からぶち当たるタックルが、アメフト風で実にいいなと思いました。原作でもやっている肩からのぶち当たりですが、やっぱり動きがあると迫力が違いますね〜。

 対抗するダイの蹴りシーンが、ちょっと面白かったです。
 原作では普通に右足で蹴っているのですが、アニメでは身体をひねるような姿勢で左足を踵から当てる体勢で蹴っています。
 
 裏拳風なトリッキーなキックアクションは、原作とは微妙に違っていて印象的でした。意表を突いた動きの上、靴の底で蹴っていた原作と違って踵で蹴っているので、ハドラーが不意を突かれたダメージを受けたというのも頷けます。
 原作では、ダイの蹴りはぜんっぜん効き目が無かったみたいですが(笑)
 
 ダイの二度目のキックである回し蹴りは、構図が原作と左右逆転しています。
 乱打戦、いい感じです。
 原作ではハドラーの方がボクシング(笑)が上手いのか、ダイが防戦に追い込まれた中で腕のガードの隙間をぬって蹴りが飛んでくるイメージでした。
 アニメでは、ハドラーは力ずくでダイの腕のガードを跳ね上げ、そこを狙って蹴りを入れていました。

 相手の腕ブロックを外させて、顎を狙うなんて手法はすっごくボクシングっぽいですね、蹴っていますが(笑)
 ガードを壊された時に、ダイが悔しそうにハドラーを睨み、攻撃の気配にハッと下を見下ろすシーン改変がお気に入りです。

 ポップなどは、攻撃されそうな時って思わず目を閉じることが多いのですが、さすがにダイはその辺は闘い慣れしているなと思います。

 ポップが魔法を消してしまうシーンで、『おれたちの……』と呟くシーンはアニメの改変です。
 原作ではここでは無言でした。

 けど、この台詞はバラン戦の際、ダイが連れ去られそうになった時、ポップが言っていた『おれたちのダイを渡してたまるもんか』と叫んでいたことを思い出させてくれて、バラン戦を一緒に乗り切ったポップとレオナだからこそ通じる言葉という感じがします♪

 説得シーンで、レオナがゴメちゃんを手にしてるのも、原作とはちょっと違っていていいですね。
 原作ではレオナはこの時ゴメちゃんを肩に乗せ、時折撫でていました。

 アニメでは、ちょこんと手の中に収まっているゴメちゃんと見つめ合っているのが、ものごっつ可愛いですっ! 途中から原作通りに肩に乗せていましたが、原作では左肩だったのが、右肩になっているのも拘りを感じます。

 原作ではレオナの長台詞だった説明シーンが、ポップがところどころに合いの手を交える形での説明に改編されているのは、魔王軍と一緒ですね。

 回想シーンで、懐かしのデルムリン島がやけに明るくポップな色合いで出てきたのが嬉しかったです。本来の色よりも、一段と明るくした感じですね。
 思い出シーンだとセピア色にしたり、周囲をぼやかすなどの演出を考えがちだったので、色彩感覚を変化させるのは新鮮でした。
 初期ダイとレオナが、可愛くて懐かしかったです。

 ポップを説得するのではなく、不明だった真実を語ることでポップの気を変えさせたレオナは、やはり聡明だと感心します。
 ここでいいなと思うのは、ポップは手を止めはしたけれど、完全に納得しきっていないところですね。

 原作ではポップは悔しそうに俯いていて、マァムがそんなポップを心配して心の中で呼びかけるシーンがあるのですが、アニメでは悔しそうな顔のまま、ダイの闘いの方に目を向けています。
 
 ハドラーが気合いのかけ声をかけるシーンは、アニメの改変ですね。
 力なく頭と手を垂らしていた姿勢から、右手に力を込め、ゆっくりと剣を握るアクション、地味なのにすっごくドキドキします!
 原作では一コマだったシーンが、闘いへの幕開けとして重要なシーンになっていますよっ。

 そして、マァムが叫んだシーンで気づいちゃいましたが……マァムの黒ストッキング、穴が広がっていますね(笑) ストッキングって、一度穴が開くとどんどん伝線して広がるから〜。いっそ、脱いだ方がいいのではないかと余計な心配をしたくなります。
 
 ダイが剣の柄に手をかけている後ろ姿で、反対側の手で剣の鞘の先を押さえているのに感心しました。そう言えば、抜くんだったらああやって固定した方が楽に抜けそうです。

 ダイが剣を引き抜き、一度、高く掲げてから振り下ろすシーンがカッコいいですね。こんなシーンを見ていると、某玩具会社から発売されているダイの剣(約60センチ)が欲しくなります。
 現物に比べて、ちょっと中途半端な大きさなので買うのを悩んでいるのですが。

 余談ながら、原寸大を謡っているパプニカのナイフは旧アニメ版とリメイクアニメ版、両方持っています(爆笑)

 ダイの剣を抜くシーンもかっこよかったですが、ハドラーの拳を前に突き出してからの抜刀アクションも負けず劣らずの魅力がありました。
 ダイとハドラーの戦いを前にした対峙シーン、長く時間をとってくれたのは嬉しい限り♪

 原作ではシャキシャキッとスピードよく流れていた部分が、アニメではじっくり溜めながら表現している感じですね。
 バトルとその幕間で緩急をつけている感じがいいです!

 CM後、ダイにバトルフィールドの説明をする際、ハドラーが闘いの構えを解くのはアニメの改変ですが、いいですね。
 公平に戦うために知識を説明する間は、戦わないという意思表示のようで、武人ハドラーの心意気を感じます。

 アバンストラッシュにポップが驚くシーン、原作では驚いたような表情のレオナとポップが目を見交わしながらこの台詞が書かれていましたが、アニメではレオナがダイが必殺技を編み出したことを知っている台詞が追加されていますね。
 破邪の洞窟直後の、ダイとレオナの会話が活きている感じです♪
 
 ハドラーがダイに対してハッタリではないと確信していますが、もし、これがポップならばハッタリの可能性がありそうだなと思っちゃいました。

 熱風に煽られるポップのシーン、前髪が全部後ろに靡き、バンダナを巻いただけの額が全開になっていたのは珍しいだけに貴重ですな。
 しかし、背後でレオナがゴメちゃんを抱きしめているシーン!
 あれ……思いっきり胸の谷間に抱き込んじゃっていますが!? なぜにゴメちゃんばかりにラッキースケベの神が微笑みかけるのか(笑)

 実はこのシーンもアニメの改変で、原作ではレオナはゴメちゃんを庇っていません。ゴメちゃんは自力で飛んでいます。

 レオナ、マァム、ヒュンケルが膝を揃えてついた姿勢でしゃがみ込んでいるのに、ポップだけが風に無闇に抵抗して飛ばされかかっている動きには笑いました。
 アニメでは、一瞬とは言え完全に宙に浮いちゃっていますし(笑)

 ダイがアローを放つシーン、ポップは階段のへりにへばりついて伏せているのに笑いました。いや、原作通りなんですが。

 ヒュンケルやマァムは膝立ちの姿勢で、風に飛ばされにくくしつつも視界を少しでも高く保つ工夫をしているし、レオナもそれをそっくり真似しているのですが、ポップには周囲を見る余裕も自力で踏ん張る体力もないようですね。

 ヒュンケルがただのストラッシュだと思うシーン、原作では失望を感じられる表情だったのに対し、アニメでは怒りが感じられる表情だったのが新鮮でした。
 
 ダイのストラッシュ・ブレイク、動きが低い位置からシュッと飛び立つような動きが印象的でした。
 原作ではダイとハドラーの対決は、大きくコマを使った迫力のある全身図で表現していますが、アニメでは動きの意外さで表現しているのが興味深いです♪
 
 アバンストラッシュ・クロスの時、ポップのすぐ後ろにマァムが中腰な姿勢でいたのがなんだか嬉しかったです。
 ポップが飛ばされないか心配で、後ろで見ているように見えます(笑)

 ダイの新必殺技、ド迫力でした♪
 正直、個人的にはストラッシュ技の中では標準的なアバンストラッシュであブレイクが一番好きなのですが、威力はこれが一番だと思います。

 ポップが吹き飛ぶシーンでは、他のメンバーが見えなかったのが残念。マァムが支えてくれるかと思ったのですが(笑)

 地上でノヴァが喜ぶシーン、いい改変ですね♪
 必殺技の特訓に付き合い、殺されかけたノヴァが一番この技に詳しいでしょうし、喜ぶ資格もあるでしょう。
 しかし、地上の戦いはもう終わったのかと言いたくなるぐらい、周囲が人間だらけでしたね。

 ザボエラゾンビの活躍によるノヴァの最後のひと踏ん張りとザボエラの死に花シーン、期待しているのですが。

 ハドラーが倒れて、ダイが彼の脚の間に蹲るシーン、『大の字』と言うよりも、『太の字』を連想します(笑)

 決着がついた時のバーンのシーンと台詞、アニメの改変ですね。重々しく、目を影で隠して表情を読ませないバーン様が、この結末を喜んでいるのか不快に思っているのか、どちらともとれる曖昧さが素敵です。
 個人的には、可愛い部下であるハドラーの敗北を残念に思ってあげて欲しい気もしますが……その心が読めない辺りが老バーンの魅力ですね。

 それに引き換え、ポップの這いずり方、なんとも言えない小物臭ただようドタバタした動きに笑いました。でも、そこがポップっぽくていいですね。
 レオナでさえ飛ばされなかったのに、ポップはもう少し基礎体力を鍛えた方がいい気がします、マジで。

 ヒュンケルの説明シーン、回想シーンを加えるだけでなく、棒人間風の簡単画像でストラッシュを解説しているのが妙に可愛くて萌えました♪
 原作ではただの棒人間なのに、アニメではちゃんと外見がダイとハドラーになっていて、しかも青と赤に色分けしてありますよ!

 この脳内イメージがヒュンケルのものだと考えると、アバン先生がこんな風に図にして授業していたんじゃないかと妄想してしまいます(笑) 先生なら、なにげに絵にも拘りそうだし。

 ヒュンケルの説明シーンでレオナは全く台詞を口にしていませんが、ゴメちゃんを肩に乗せ、真剣に話を聞いている画面が出たのは嬉しいです。特に、説明の最中、ダイの方へ目を向ける時の表情がまた、いい感じ。ダイに対する信頼や愛おしさを感じます。

 しかし、ヒュンケルの説明シーンはちょいちょい端折られていました。長い解説だから無理もないですが、気に入っていた部分が削られたのが非常に残念。
 天才的なセンスと言った後、原作ヒュンケルはこう言っています。

原作ヒュンケル「動物的な勘と言い変えてもいいが……(中略)もはや人間業ではない……!」

 あれ? ちょいちょいディスりが混じってませんか?(笑) いや、もう少し素直に褒めてあげて!

 アニメでは、ヒュンケルがダイが力を使い果たしたという気遣い台詞を口にしていますが、当然、これも改変です。

 嬉しそうにはしゃいで階段を降りるポップはいいのですが、ハドラーを悼むマァムの台詞のシーン……映っているのが倒れているハドラーなんですが!?
 なぜここで、原作にあった今にも泣き出しそうな顔のマァムを出さないんですかっ。ヒュンケルのアップはしっかり出しているのに〜。

 ハドラーが復活するシーン、原作ではポップの視点からで描いていますが、アニメでは手前にハドラーの足を描き、そこから階段から降りてくるポップを見やる視点で描いています。
 左右逆転ならぬ、前後逆転の構図ですね。

 ハドラーがダイを逆さ吊りするシーン、原作ではダイが持ち上げられ戸惑う全身図のカットと、逆さまになって目を見開くアップのカットがあったので、アニメではここがどう表現されるか楽しみにしていたのですが、削られていてガッカリです〜。
 いきなり逆さづりでしたよ。

 ダイが階段に叩きつけられるシーン、原作では叩きつけられた瞬間のカットでしたが、アニメではぶつかって跳ね返った瞬間のようなカットでした。
 また、ダイが階段から転げ落ちるシーン、原作ではゴロゴロっと前回りのように落ちているのに対し、アニメでは横向きに横たわって転げていました。
 原作よりもアニメの方が動きが地味になっている、珍しい改変ですね。

 ハドラーの闘気が無くなったと驚くヒュンケルの長台詞のシーンで、台詞は無い物の驚き顔のレオナとマァムが並んでいるカットがなんとなく好きです。
 しかし、ハドラーの生命の剣、虹色で主人公よりも主人公っぽい剣なんですが!? ノヴァのオーラブレードより綺麗で、華やかですよっ。ええーーっ、主役は誰っ!?(笑)

 でも、生命の剣と煙は動いているのに、逆立つ髪が全然靡かないのは残念でした。熱風が無くなったら、髪が固定化されたように靡きがなくなったみたいです。ここからはハドラーの髪の毛が靡くアニメーションがほぼ消えているのが非常に残念!

 ハドラーが過去の六団長を思う時、暗い背景の中で団長達が次々と消えて一人っきりになる演出は、実に良かったです。
 ちゃんと、クロコダイン、ヒュンケル、フレイザード、バランと戦った順に消えていますね。

 にしても、六団長を並べると、ヒュンケルが意外なぐらい背が低く小柄に感じられます。比較対象って、大切ですね。まあ、規格外に小さいザボちゃんもいるし、ヒュンケルは人間としては長身の方ですが。

 それに対して、親衛騎団に対しては明るく、輝かしいイメージを抱いているのが印象的でした。ハドラーが仲間達の幻を背負って戦おうとするシーン、かっこよすぎです!
 ……でも親衛騎団の回想シーン、ハドラーが知らないはずの戦いが半数だったりしますが(笑)

 ダイが、初めてポップに対して拒絶の意志を見せるシーン、いいですね♪
 ダイが唾を飛ばして叫ぶシーン、なかなかに印象的でした。

 ポップの判断を優先しがちの上、ポップが何をしても、しょうがないなあって感じにおおらかに受け止めるダイが、これだけは譲れないとばかりに主張するこのシーンが削られなかったのが、すっごく嬉しいです。

 ところで、原作では階段を駆け下りるポップは「ダイ」と呼びかけるだけなので、アニメでの台詞はちょびっとだけ改変されています。

 ポップがハドラーの説明をするシーン、ハドラー側からの視点の遠景のおかげで、ヒュンケル、マァム、レオナが階段途中で止まっている図を見ることが出来ました♪

 ダイの回想シーン、構図は原作と同じですがセピア色な配色が落ち着いていていい感じ。
 負けるわけにはいかないと叫ぶシーン。空から見下ろしたバーンパレスと地上が映し出された場面は、実に良かったです。
 ダイの主張が、広く響き渡ったかのような印象でした。

 ダイの言葉にショックを受け、ポップがよろめくシーンもアニメの改変ですね。原作では動いている様子はないです。
 ショックを受けているポップに、無言のまま励ますヒュンケルのシーンがいいです。アニメでは名前ぐらい呼ぶかなと思いましたが、ここは無言のままの方がいいですね♪

 ラストはここで切るか!? と言いたくなるタイミングで持ってきましたね。
 もしかして、今回だけでキルバーンの罠まで行くかとヒヤヒヤしていたのですが、たっぷりと時間を取った戦い、必殺技の説明にホッとしました。
 ハドラーが主役としか思えない展開が、実に胸熱です!

 次週予告、二人の決着への盛り上がり、そんな二人を見守る仲間達との対決に焦点を絞っていて、迫力満点の予告でしたが……いきなりギガブレイクの文字でネタバレしちゃっとりますが(笑)

 いや、ここはライデインでどう勝つつもりかと、次週までワクワクハラハラするところなのでは?

72に進む
70に戻る
アニメ道場に戻る
トップに戻る

inserted by FC2 system