『最後の一太刀』(2021.3.5)

 

《粗筋》

 ダイの呼んだライデインが、ダイの剣に宿る。
 それを、ポップ達やハドラーだけでなく、水晶玉越しにキルバーンも見物していた。

キルバーン「ふぅーん。……今更?」

 明らかに小馬鹿にしたような口調で、キルバーンが呟いた。






 ダイと対峙するハドラーは、ライデインを呼んだのは闘気のない分を呪文でカバーする作戦を理解するも、さっき見せた新必殺技には遠く及ばないと判断する。
 ダイはハドラーのその言葉に言い返さず、近くに突き刺さった自分の鞘に目をやり、そこに近づいていった。

 ダイの行動を見て、わずかに警戒を見せるハドラー。
 ダイは鞘を手に取ると、ライデインのかかった剣を鞘へ納めようとした。なぜ剣を納めるのかと、不満げに叫ぶハドラー。

 だが、レオナはそれを見て、身を乗り出した。
 まだ、あの新しい鞘があったと興奮気味に叫ぶレオナを、当惑して振り返るヒュンケルとマァム。

 ダイは剣と鞘を構えたまま、鞘の秘密を暴露する。
 ダイの剣を納める鞘は、ロン・ベルクの作った新しい武器だった。ダイの剣の力をこれ以上強化できない代わりに、魔法剣を底上げする能力を持つ鞘を作り上げた。

 魔法剣を完成させてから鞘に収めると魔法力が増幅され、引き抜いた時はその呪文の最高位にまで威力が高まる。

 ダイの説明を聞き、ハドラーはライデインがギガデインになると理解する。
 完全に剣が鞘に収められると、鍵が自動的にかかる。その際、火花のような雷をわずかに散らし、宝玉が輝いた。
 その瞬間、ダイはルーラで飛び上がった。
 
 ハドラーはそのダイの動きを目で追う。
 ハドラーの頭の上を飛び越し、ポップ達がいるのとは正反対の方向へと飛ぶダイ。

 飛びながら鞘に収めた剣を背負い直したダイは、ハドラーから距離を取った場所に降り立った。







 ダイはなぜ、あんな所へ行ったのかと疑問を口にするマァム。ダイにロン・ベルクの解説書を読み聞かせたレオナは、魔法力の増幅に時間がかかることを知っていた。その時間稼ぎと推測するが、ポップはそれだけじゃないと強く言い切る。
 
 ダイが次の一撃に絶対の自信を持っていると見抜き、だからこそ自分達を巻き込まないように距離を取ったのだと話すポップ。

 ポップはもう、ダイを止める気はなくなっていた。
 今まで何度も奇跡を起こしてきたダイを信じ、睨むような目で戦いを見つめている。







 今度こそ、正真正銘最後の一太刀となる――それを予感してか、ハドラーとダイは闘いへの決意のまま対峙する
 二人の立っている距離こそは、離れているかもしれない。
 だが、心情的にはすぐ目の前に敵がいるのも同然だった。

 背負った、ダイの剣の宝玉が光る。
 そして、ダイは口に出して数えだした。

ダイ「……十……九……」

 そんなダイを見ながら、ハドラーは彼が使ってくるだろう技を予測する。
 ギガデインが使えるのなら、ダイが使う技はただ一つ……亡き父の形見であるギガブレイク。

 今なら阻止することは容易いと考えるハドラーだが、ダイの目を見てそんな無粋な考えなど笑い飛ばす。
 一度、胸の前で手を組んだハドラーは、勢いよく手を開いて身がまえた。肩の飾りが開くも、瀕死のハドラーの肉体からは最初は黒い煙が漂うだけだ。

 が、それはすぐに、生命の剣と同じ輝きを持って凄まじいエネルギーを放出し始めた。
 どうせ朽ちる身なら、残り数秒を己を高めるために費やす――それが、ハドラーの選択だった。

 ハドラーから湧き出た赤い闘気は見る間に膨れ上がり、彼の全身を渦巻くエネルギー派へと変化する。







 切り裂くような風に煽られ、顔を庇うポップ達。







 だが、ダイは瞬きさえしなかった。
 一瞬の突風が収まり、ダイは呟く。

ダイ「……五……四……三」

 冷静に残り秒数を読み上げるダイに、己の全ての生命力を振り絞るかのようなハドラー。
 風が収まった中で、ポップ達もダイ達の闘いに注目していた。

 赤い闘気に全身を燃やすハドラーに対し、今のダイには闘気はまったく感じられない。
 だが、それでもダイの目は覇気に満ちていた。

ダイ「ゼロ!」

 その言葉と同時に、ダイの背中で剣の宝玉が輝く。弾けるように自動的に封印が外れ、ダイは剣を引き抜いた。
 ダイの剣にまとわりつく雷気は、先程の比ではなかった。

 その剣を、ダイは両手で掴んで掲げる。
 アバンストラッシュ特有の、肩を大きくひねった構えではなく、その立ち姿はバランにそれに酷似していた。
 ダイの背後に、同じ姿勢で剣を構えるバランの幻が浮かぶ。

 ギガブレイクの構えに、ハドラーもまた、自分の持つ最強最大の技、超魔爆炎覇の構えを取る。
 ハドラーの気迫に応じて、虹色の剣が紅蓮の炎に包まれる。黒みを帯びた紅い炎は、虹色の輝きを完全に覆い隠した。

 赤黒い闘気に包まれたハドラーと、金色の光の剣を持つダイが距離を置いたまま向かい合う。
 両者とも歯を食いしばり、最後の技を出すタイミングを伺っていた。

 先に動いたのは、勇者だった。
 大きく剣を振り上げたダイは、勝負を賭ける。ほぼ尽きていたはずの闘気を振り絞ったのか、ダイの身体が青い光に包まれた。
 走り出したダイに寄り添うように、バランの幻が浮かぶ。

 親子二代の攻撃に対し、ハドラーも己の全力を持って走り出した。彼には、攻撃を待ち受ける気は無い。
 最後の最後まで、彼は自分から闘いを挑む挑戦者なのだから。

 ダイを砕く覚悟で、突き進むハドラー。
 だが、ダイも砕かれるつもりはない。ダイのこれまでの闘いの全てを込めた一撃のために、彼は打ち込みの途中で剣を逆手に持ち替えた。
 ダイの右手に、竜の紋章が輝く。

 それを見て、ハッとするハドラー。
 だが、ダイの勢いは止まらなかった。自分が今繰り出せる最高の技として、ギガブレイクの動きから無理矢理アバンストラッシュへと繋げる。
 
 ギガデインの宿る魔法剣が、アバンストラッシュの構えとなってさらに一際大きく輝いた。

 その背後に見えるのは、アバンの幻だった。
 デルムリン島でハドラーに命を賭けて挑んできたアバンの姿が、ダイの姿に重なっていた。

 驚愕し、これ以上無いほど大きく目を見開くハドラー。
 しかし、彼の足は止まらなかった。攻撃するための突進の速度を緩めないまま、勇者へと向かう。

 そして、ダイも止まらない。
 低い位置で疾走するダイの背後には、バランとアバンの幻が重なる。父と師、二人から受け継いだものが今のダイを支えている。
 幻は光となって消え、その輝きのままダイの剣に宿る。

 ダイは渾身の力を込め、ギガストラッシュを放った。それに応じる形で、超魔爆炎覇を放つハドラー。
 しかし、その攻撃はダイの髪の一部を斬ったに過ぎなかった。
 ダイは、青い光に包まれたまま剣を振り切る。
 険しい表情でそれを見下ろすハドラーの表情が、ふと、緩む。

 それは、刹那の時だった。
 ほんの一瞬、互いにすれ違い合ったその瞬間に、彼らは己の全てを込めた技を相手に叩き込んだ。

 その勢いが凄まじかったからこそ、交わった瞬間はごくわずかな時に過ぎない。
 ダイの青い剣は、確かにハドラーを斬った。






 それを、見つめているポップ達。
 いつもは冷静なヒュンケルさえ、驚きを隠せない。マァムは何かを叫び、レオナは険しい目で闘いを見つめている。ポップは、大きな声で叫んでいる様子だ。

 世紀の決闘を目の当たりにして、彼らは何かを叫んでいるようだがその声は聞こえない。
 それらは、一瞬の出来事なのだから。






 すでに闘気と炎が消えかけたハドラーは、前のめりに倒れかかりながらも自分を打ち倒したギガストラッシュの見事さを褒め称える。
 勢いのままに走るダイの闘気や雷の余波は消えたが、彼の手の剣だけは未だに青い光を放っていた。

 アバンストラッシュの構えのまま、見事に着地を決めるダイ。
 背後にいるハドラーは足を踏ん張ってなんとか踏みとどまるも、彼の手から顕現されていた剣は破裂したように散り、細かな炎が花びらのようにその場を舞った。

 ハドラーが潔く自分の敗北を認めた瞬間、彼の頭を冠のように取り囲んでいた角が折れ、粉々に砕け散った。次の瞬間、ギガデインの雷気がハドラーの全身を苛む
 
 思わず絶叫し、身をのけぞらすハドラー。
 その雷撃はハドラーの身体を覆う擬似的な鎧を破壊し、彼にさらなるダメージを与えた。白目を剥き、前のめりにその場に倒れ込むハドラー。
 ダイもまた、それと同時に膝をついた。







 ついに闘いの決着がついたのを目の当たりにし、見ていただけのポップも力尽きたようにその場にへたり込む。
 ダイの勝利を喜ぶ彼は、今にも泣かんばかりだった。







 ダイは剣を持つ力さえ無いのか、床にぺったりと剣を置き、片膝を立てた姿勢で膝をつき、肩で息をしていた。
 うつ伏せに倒れ込んだハドラーは、身体のあちこちから煙を上げながらも、それでもわずかに身を起こして顔を上げる。






 その光景を、悲しそうに見つめるマァム。
 超魔生物の最後……一陣の風に、同じく超魔生物となったザムザを思い出すマァム。

 黒い灰となって散ってしまうザムザのすぐ近くに座り込み、彼を看取ったのはマァムだった。

 一度、目を閉じたマァムは空へと目を向ける。
 アルビナスが命を賭けてまで、この光景を阻止しようとした気持ちに共感するマァム。







 ようやく息が整ったダイは、振り返ってハドラーを見る。
 ハドラーに呼びかけるダイ。だが、ハドラーは何も言うなと、それを遮った。
 負けを認めるハドラーだが、その表情は悔しさを隠しもしていなかった。

 ダイだけでなく、アバンにも……師弟に負けっぱなしだとぼやくハドラーだが、その声音は存外、落ち着いていた。

 アバンの技に、バランの力――それに負けたことを納得したハドラーは、あれには勝てないと一人、笑う。
 あれも特訓で生み出した技かと問うハドラーに、ダイはぶっつけ本番だったと白状する。

 それを聞いて、ハドラーは笑う。それは、突き抜けたような明るさの篭もった笑いだった。
 土壇場でとんでもないことをしでかしたダイを認め、こんなとてつもない相手に勝とうとしていたことを自戒するハドラー。

 悔いは無い、と断言するハドラーは、言葉通り何の後悔もないようだ。
 彼はさばさばした様子で、最後にダイとの別れに握手を求める。伸ばされたハドラーの手は、消滅への前兆か小刻みに震えている。

 キョトンとした顔で、その場に立ち上がるダイ。
 もはや立つ力も無く地面に伏せたままのハドラーは、最後に、自分を倒した手に触れさせてくれと懇願する。

 ダイは、剣を背中の鞘に収めた。しっかりと封印がかかる。
 わずかな笑みを浮かべ、ハドラーを見下ろすダイ。その顔に見いだすものがあったのか、ハドラーはかすかに笑う。

 恐れ気もなくハドラーに近づいたダイは、その手をハドラーへと差し出す。
 ハドラーの大きな手に比べれば、あまりにも小さなダイのその手が触れあおうとしたその瞬間――、床石を砕いて炎が浮かび上がった。

 ダイもハドラーもハッとして、それを見る。
 砕けた床石から浮かび上がってきたのは、ダイヤの形をしたマークだった。
 驚愕するハドラー。

 続け様に、床石が音を立てて砕け、炎が巻き上がる。
 ダイとハドラーの間に割り込むダイヤマークの周囲に、等間隔を置いて八つのマークが出現した。

 真上から見たそのマークは、トランプの9のマークにそっくりだった。






 その光景を、もちろんポップ達も見ていた。
 驚くヒュンケルは、笛の音を聞いて血相を変える。振り向いた先にいたのは、自慢の大鎌に唇を当てて笛を奏でるキルバーンの姿だった。その背後には、いつものようにピロロもいる。

キルバーン「フッフッフ、諸君、気に入ってくれたかな? この曲はボクから送る弔いの曲だ」

 笛を鳴らすのを止め、そう言ってのけるキルバーン。わざとらしいその台詞を聞いた途端、ヒュンケルはキルバーンに背を向けてまでダイに向き直り、そこから逃げるように怒鳴る。






 ヒュンケルの忠告に、ダイは従おうとした。
 だが、よろめくその足取りはあまりにも遅く、ダイはマークの範囲内で転んで膝をついてしまう。






レオナ「ダメージで身体が動かないんだわ!」

 ヒュンケルを初めとして、彼らは全員、キルバーンに背を向けて心配そうにダイを見ていた。







 もう遅いとほくそ笑み、キルバーンは魔界の炎を召喚する。
 その瞬間、ダイ達の周囲にあった8つのダイヤのマークから火柱が立ち上った。渦巻く炎は一瞬で、ダイとハドラー達を覆い隠す。






 それを見ているポップ達。
 レオナはダイの名を呼びながら、マァムを押しのけて前に出る。







 その時には、ダイとハドラーは渦巻く炎に囲まれていた。炎は繋がって大きな輪を作り、ドーム状に燃え盛る。
 完全にダイ達を封じ込めた炎はドームの頂点で一つに集まり、その勢いのまま真下……中部にいるダイとハドラーへと向かった。

 もはや炎の檻に閉じ込められたダイとハドラー。
 集まった炎は、中央部分に浮かんだ最初のダイヤのマークに集中しようとしていた。






 真竜の戦いを彷彿とさせる炎の渦が膨れ上がる様を、階段の上から見下ろすキルバーン。
 炎の中、ゴメちゃんは声の限りに鳴いていた。
 熱風に押されながら、ヒュンケルも、レオナやマァムも炎の檻から目を離せない。

 渦巻く炎がわずかに収まり、青空が戻る。
 自分のキルトラップを自画自賛し、ピロロが調子よくそれを褒めるのを聞きとがめるヒュンケル。

 殺気すら感じられる目でキルバーンらを振り返るヒュンケル。
 だが、キルバーンは恐れる様子もなく、バーンパレスには大小様々な殺しの罠……キルトラップが仕掛けてあると言ってのけた。

 気取った仕草で一枚のトランプを取り出したキルバーンは、それをひっくり返して見せた。
 ダイ達に仕掛けた罠は、ダイヤ・ナイン。
 文字通り、ダイヤの9のカードを手に、得意げに語る。

 キルバーンの意志でいつでも魔界の炎を召喚できる究極の呪法だと語るキルバーンの言葉を、ヒュンケル達は険しい目で聞いていた。
 ダイ達が突入してきた時点で使うことも出来たと嘯くキルバーンを、レオナは彼がダイとハドラーが力を使い果たすのを待っていたと看破する。

 ヒュンケルは男同士の真剣勝負を穢したと激昂するが、マァムはキルバーンに構っている暇はないと諭し、ダイを助けようと提案する。
 しかし、キルバーンはそれを無駄だと切り捨てる。
 もう手遅れだと言い、8つのダイヤのマークから炎が生み出され、中央の一点に集まって中にいる生物は燃え尽きることを詳細に説明するキルバーン。

 勇者と死ねたのならハドラーも本望だろうと、キルバーンは声を立てて笑う。
 ゆっくりと、世界が暗転する――。
 







ポップ「そう、何もかも上手かぁいかねえぜ!」

 強気な声が、どこからともなく響き渡る。
 ハッとして炎の方を振り返るヒュンケル達。珍しく、キルバーンも目を見開いた。

 渦巻く炎の中には、うっすらと人影が見えた。
 目をこらせば、そこにいる人影は三人分……蹲ったままのダイに、倒れているハドラー。そして、両手を高く掲げて炎の中心地に立っている人影は、紛れもなくポップのものだ。







 燃えさかる炎の中。
 中央のマークの近くに立ち、掲げた手から氷系魔法を放っているポップに驚くダイ。
 
 こんなことだと思ったと言ったポップは、戦いの時と同じ表情を見せて不敵に言い放つ。

ポップ「おれがいる限り、てめえらの思い通りにゃあさせねえ……!!」







 炎の外側からその台詞を聞いていたヒュンケル達。
 マァムが驚いて、ポップの名を呼ぶ。






 炎の中から、ダイはまだ無事だと答えるポップ。






 炎の外側では、ヒュンケルがトラップが閉じる寸前に飛び込んでいたのかと叫ぶ。







 絶対にバーンが何かしでかすと思っていたと、ポップは言う。
 ハドラーや親衛騎団が信用できたとしても、ポップはここが敵地だと忘れていなかったし、魔王軍のことも信用してはいない。
 ポップのその言葉を、静かに聞いてるハドラー。







 炎の外側では、キルバーンが忌々しそうに舌打ちする。
 いつもいつも邪魔をするポップを疎ましく感じているらしいキルバーンだが、不意に笑いを見せ「ま、いいか」との軽い言葉と同時にその場からフッと消えた。

 炎に気を取られているマァムやレオナと違い、ヒュンケルはそのかすかな気配を感じて振り返る。
 罠が防がれたのにあっさり去ったキルバーンに、疑問を感じるヒュンケル。
 だが、炎の方から聞こえるポップの情けない声に、そちらを向く。







 炎の中では、ポップが魔法を放つ両手の位置をじりじりと下げていた。最初はピンと真上に伸ばされていた手だが、炎の勢いに押されてしまっている。
 気合いを入れてブンバルモ、自分のヒャダルコだけでは支えきれないと泣き言を言い、なんとかしてくれと叫ぶポップ。

 レオナが炎に駆けより、ヒャダルコを放つ。
 だが、レオナのヒャダルコは渦巻く炎に何の影響も与えることなく、あっさりとかき消されてしまった。

レオナ「だめだわ……!私のヒャダルコなんかじゃ……っ」

マァム「でも! ポップは押さえてるって!!」

レオナ「ポップ君の魔法力は、私よりずっと強いのよ!」

 その会話を、ヒュンケルは炎を見据えながら聞いていた。






 炎の中で、ポップはしんどそうに炎を氷系魔法で押さえていた。だが、じわじわと腕の位置は下がっていく。
 それを心配そうに見、彼に呼びかけるダイ。






 炎の外側では、レオナがじっと炎を睨みつける横で、マァムが心配そうに二人を助ける手段を問いかける。
 そんな二人にどくようにと言い、ヒュンケルが槍を真横に持って身がまえる。

マァム「グランドクルスを使うの!?」

 さすがに驚いた表情で問いかけるマァム。
 この罠は生半可な力では敗れないと、穂先を上に構え直すヒュンケル。最強の力で吹き飛ばすという彼の意思に応じて、穂先が開き、十字架を形取る。
 ヒュンケルの意図を悟って、レオナが先に、続いてマァムも彼の後ろへと走っていく。ただ、その間も炎を気にして後ろを振り向いたままだ。

 完全にヒュンケルの後ろへと回り込むと、二人は足を止めて炎の方を向く。
 最強の力で吹き飛ばすしかないと考えるヒュンケルは、エネルギーの放出に長けたグランドクルスに全力を注ぐつもりでいる。

 ヒュンケルが右手を槍の穂先にかざすと、槍は光り輝きだす。
 マァムがポップに向かって、ヒュンケルがグランドクルスを使うと忠告をする。






ポップ「げえええ!?」
 
 炎を押さえながら、うめくポップ。







 ポップに向かって多少のダメージは覚悟しろと叫び、槍の石突きを床に打ち付けたヒュンケルは、全力で技を放つ。
 発光した十字の光が、一直線に飛ぶ。
 そのまぶしさに、思わず顔を庇うレオナとマァム。






 その光は、炎の渦を突破してダイやポップも照らし出した。







 グランドクルスの光は、切り裂くように炎の渦にぶつかった。二つに分かたれて飛ぶ光は、バーンパレスの頭頂部に爆発的な輝きをもたらす。轟音が響き渡る中、レオナはマァムは腕で目を庇いながら、目の前で発光する技の行方を見守る。

 ヒュンケルもまた、槍を構えたまま同じ方向を見ていた。が、光と音が収まったとき、ヒュンケルの顔に驚愕が浮かぶ。
 驚いたのは、マァムとレオナも同じだった。

 彼らの目の前には、何事も無かったかのように燃えさかる炎の渦があった。
 グランドクルスの凄まじいエネルギー波が床や壁を削ったにも拘わらず、炎だけは無傷のままだ。

 驚くヒュンケルはよろけ、槍にすがってその場にしゃがみ込む。それを見て、慌てて駆け寄るマァムに、一歩遅れて近寄ってくるレオナ。
 マァムはヒュンケルの側に屈み込み肩に手を上げるが、ヒュンケルはグランドクルスが弾かれたのが信じられないと呟くばかりだ。






 炎の中では、ポップが全然変化がないと状況を知りたがっていた。






 その言葉を聞いたレオナは、小さく息をのむ。

ヒュンケル「……中にっ……何の影響も及んでいないとは……っ。まさか……死神が退いたのは……ッ」

 グランドクルスを放った苦痛にか、それとも今気がついた事実のためか、ヒュンケルは顔を大きく顰めていた――。







 一方、バーンパレス内では、ピロロを肩に乗せたキルバーンが上機嫌で振り向く。

キルバーン「いい顔するでしょう、人間って……!」

 嘲りを含んだ声で楽しげにそう言うキルバーンの目が、極限まで細められる。
 そんなキルバーンに、バーンは残酷さでは彼に及ばないと兜を脱いでみせる。おそらく、魔界一だろうとの言葉に、キルバーンは畏まって答える。

キルバーン「光栄ですねえ」

 そして、再び水晶玉を振り返り、楽しげに笑った――。






 その頃、炎の外にいるマァムはどうすればいいのかと動揺し、レオナに答えを求める。まるで、レオナを責めるかのように強く問いかけるマァム。
 そんなマァムに、ヒュンケルは方法はないと、重い口調で呟く。

 レオナはそれを知っているからこそ、言葉に出せずにいると、辛そうな口調で説明するヒュンケル。
 もはや自分達ではどうしようもないと俯くヒュンケルに、マァムは納得しきれないとばかりに声を張り上げる。

 そんな中、レオナは淡々とした口調で現状の分析しはじめた。
 最大級の闘気エネルギーが弾かれたことから、罠が魔法力でないと破れないと判断するレオナ。

ヒュンケル「ポップは魔法力で炎を防いでいる……だが、外にいるメンバーでそれだけの魔法力を持つ者はいない……!
 となると、オレたちに二人を救う方法はただ一つ……!」

 呪法を使っているキルバーンを倒すしかないが、彼はそれを熟知しているからこそ身を引いた。

レオナ「きっと、バーンパレスの奥深くにね……」

 ぽつりと呟くレオナの声音は平坦で、全く感情を感じさせなかった。
 今からキルバーンを探して倒しても、間に合わない。自分達の唯一の活路を潰されたと、ヒュンケルは感情のままに石床を素手で叩く。力が入りすぎたせいか、石の床が大きくヒビが入る。

 静まりかえる三人の間に、重い空気が立ちこめる。
 マァムは暗い表情で炎を見つめる。

マァム(確かに、私やレオナの魔法力じゃ……)

 その時、マァムはハッと気がついてミナカトールを使うことをレオナに提案する。一気に表情を明るくし、不完全でもミナカトールをかければ炎を消せるだろうと語るマァム。

 だが、レオナは炎をじっと見つめたままマァムを振り向きもせず、否定した。

 バーンパレスに来るためにミナカトールを使用している以上、すでにこの場はミナカトールの影響下にある。同じ人間が破邪呪文を二度かけても効果はなく、魔法力を無駄に消費するだけだと淡々と語るレオナ。

 炎の照り返しを浴びたレオナの髪が艶やかに輝き、風に靡く。
 レオナの言葉に、マァムは怒りの表情を浮かべてくってかかった。ダイやポップが大変な時に平気な顔をしているレオナを怒鳴りつけるマァム。

 が、レオナは目を強く閉じ、平気じゃないと叫ぶ。
 冷静に見えたパプニカ王女が、心を揺らした瞬間だった。言い返すレオナの語気の強さにハッとし、悲しげな表情を浮かべるマァム。
 今度は、マァムの髪が風に靡く。

 ふと、目を落としたマァムは、レオナが強く握りしめた拳が小刻みに震え、血が滴っているのに気がついた。自分自身の爪で手を傷つけてしまう程強く、手を握り込んでいるのだ。

 それでも、一瞬の激情を見せたレオナは目を静かに開け、再び炎の檻を見やる。その冷静な目は、今も答えを模索していた。
 レオナは自分に言い聞かせるように、こんな時だからこそ冷静になり、必死に頭を巡らせないとと語った。相手は自分達のはるか上を行く、悪魔の頭脳の持ち主だから、と――。

 気丈にも炎を見つめ続けるレオナを、マァムは反省を込めた目で見つめ、心の中で彼女に謝る。
 そして、次の瞬間、マァムは身をかがめて勢いよく飛び出し、炎の檻に殴りかかった。床石にヒビが入るほどの強烈なダッシュで一気に炎の渦へと飛んだマァムは、気合いを込めて殴りかかる。

 マァムの攻撃は、確かに炎を散らす。
 だが、それは表面的な物に過ぎず、炎の檻は途切れることはない。一瞬でさえ中をうかがい知ることすら出来なかった。
 しかし、マァムは諦めることなく、何度も連打する。

 そんなマァムを、ヒュンケルは動かずに見つめていた。
 彼には、マァムの攻撃が無駄だと分かっていた。物理攻撃が利かないからこそ、死神はヒュンケルやマァムを捨て置いたのだから――。

 だが、ヒュンケルの心の声は彼女には届かない。
 炎に打ち込むのに必死なマァムは、ダイとポップに諦めないで頑張るように祈り続けていた。







 一方、その光景をキルバーンとバーンは水晶玉越しに眺めていた。

キルバーン「無駄に足掻きますねえ……フッフッフ……」







 炎の檻の中では、一滴の汗が床に落ちた。
 が、熱せられた石床に触れた瞬間、それは蒸発してしまう。渦巻く炎の中、ダイは苦しそうに肩で息をしていて、立ち上がることすらできない。

 そして、ポップも荒い息をつきながら、必死で炎に対して氷系呪文で抗っていた。
 ハドラーは、うつ伏せたまま動かない。
 閉ざされた狭い空間を、燃え上がる炎が取り囲んでいた――。

 


 


《感想》

 ダイとハドラーの決闘、かっこよすぎます……!
 本当に主人公のごとく成長していったハドラーに、思いっきり感動しました♪ 最初はあんなに小物感ただよう残念魔王だったのに(笑)

 原作とは違って、このタイミングで水晶玉越しにキルバーンの台詞が追加されていますね。短い一言でライデインではハドラーに勝てないと説明しきっているのが、いい感じです。相手を蔑むこんな台詞は、キルバーンにはピッタリですね。

 ダイの説明を聞く際、ハドラーがギガデインになると呟くシーンが色が控え目になったモノクロ風になったのが地味にカッコいいです。超魔ハドラーは割と派手な色合いですが、むしろ抑えた色彩の方が凄みが増すと思います♪

 ダイの剣が完全に鞘に収まった時、宝玉が光る演出はいいですね。これも、アニメの改変です。
 原作では特に光る描写はなく、代わりに鞘が唸るような音を立てていました。

 ダイのルーラでの着地シーン、ピタリと止まるのではなく、勢いで少々後ろにずれるような描写が入ったのがいい感じです♪

 ポップがレオナに続いてダイが離れた真意を話すシーンで、レオナとマァムが驚いたようにポップの方を見るのに、ヒュンケルは微動だにしないで戦いを見つめているシーンが再現されていたのに感動!

 そう言えば、この時のポップの横顔も原作では右を向いていたのが、アニメでは左向きになっていましたね。

 ポップがダイを信じるとモノローグで語るシーン、露出過多気味に白っぽい画面になっていたのが面白かったです。
 ハドラーのモノローグが暗く沈んだ色合いになっていたのに対し、ポップは光が強く感じられますね。

 そして、圧巻だったのがダイとハドラーの最後の対峙をアニメ風ではなく、力強いガッシュ風に塗り込んだシーン!

 ハドラーもダイも、重厚な塗りが実に似合っていてよかったです♪ 今のアニメ風の明るい色彩と明度と光を使った色合いも華やぎがあっていいですが、ダイ大にはやっぱり筆の息づかいさえ感じられるような荒々しさの感じられる手描き風の塗りがいいなと思いました。
 ……原作では、実はほぼない塗り込みですが(笑)

 赤い背景に髪を靡かせて佇むハドラーの一枚絵も、青の背景に両拳を握りしめて身がまえるダイの一枚絵もよかったですが、遠景で離れて立っている二人にダブらせるように、ダイとハドラーが向かい合って額がくっつきそうな距離でメンチをきりあっている図が一番気に入りました!

 いちいち、声に出して数字と数えるダイが可愛いですね♪
 原作でも声に出して数えていましたが、実は原作では8からスタートしています。

 ダイとバランの親子二代のギガブレイクの構え、いいですねえ♪
 原作ではダイが走り出してからバランの幻が重なっていたので、立ち姿がダブって見えるのはアニメの改変です。
 あ、最初にギガブレイクと文字が出てきたのも、アニメの改変ですね。なぜかいきなり文字演出が始まった!(笑)

 ハドラーの超魔爆炎覇で、虹色の剣が赤黒い剣に変わって悪役の見栄えが復活。
 ハドラーの超魔爆炎覇は、黒い字まで赤く燃えています。
 ダイの攻撃を遮るのは無粋だと言い放つ、傲然とした態度がたまりません。

 しかし、ここでポップ達がダイを見るカットが出てきましたが……さっきのシーンの使い回しですやん(笑) 風が収まり、ダイ達を心配そうに見ていたのと全く同じカットです。

 ポップとレオナがどこか心配そうに、胸に手を当てるようなポーズを取っているのがおそろいっぽくて笑いました。

 マァムとヒュンケルは険しめの顔で闘いを見極めようとしているのに対し、ポップとレオナは表情もポーズもヒロイン視点っぽい感じ。……いや、レオナはそれでいいかもですが、ポップは別に乙女なポーズじゃなくても良かったのでは(笑)

 ダイとハドラーが互いに怒鳴りながら駆け寄るシーン、口パクだけでなく、顔全体が動く叫びとして描いていて、動きの細かさに感動しました。確かに、人間は怒鳴ったりすれば顔全体の筋肉が動くものですが、アニメでは口だけで済ませるのが普通なのに……ダイVSハドラー戦への深い拘りを感じました。

 アバンストラッシュの構えの背後に浮かぶ、アバンの幻もいいですね。
 ハドラーが思い出すアバンは若い頃自分を倒した勇者としてではなく、15年も経って勇者の家庭教師と名乗っていた頃のアバンなのが興味深いです。

 ハドラーは当時、アバンは昔よりも衰えたと言っていましたが、やはり15年後の彼も認めていたんだなと思えるシーンです。

 ダイの背後に見えるバランとアバンがいい感じ♪ 旧コミックスのメドローアを放つポップの後に、アバンとマトリフの顔が浮かぶ構図を思い出しました!
 そして、幻が光となって剣に宿るシーンもいいですね。
 ここもやっぱり、アニメの改変シーンです。

 ギガストラッシュの文字は、光り輝く印象。
 ギガストラッシュと叫ぶ声優さんの声の力強さも聞き惚れましたが、光の中、一瞬、ダイの姿が黒いシルエットとなって浮かんだ演出がいいです。

 原作ではハドラーは力及ばず、一方的にギガストラッシュに破れたような描き方だったので、アニメではせめてもの一太刀とばかりに剣を振るう改変があったのが嬉しい限りです♪
 ダイの髪だけを斬るカットって、ありそうでなかっただけにいいですね。

 ダイとハドラーの決着シーン、丁寧に描いてあったのが実に良かったです。
 決着がつく前、斬り合う寸前にハドラーがふと、表情を緩める演出が印象的でした。

 原作にはない表情ですが、まるでここでハドラーが『ああ、自分ではこいつらには勝てないな……』と本心から納得したように思えました。

 原作でも、ダイ側から見た視点、上の視点から、ハドラー側から見た視点と、三回も視点を変えて勝負の一瞬を見せていましたが、アニメでは真横から見た視点、ハドラーをすれ違いざまに斬るシーンを二回繰り返し、上からの視点を入れていました。

 ポップ達が驚くシーンがスローモーションとして流されたのも、印象的でした。

 倒れるハドラーに、力を使い果たしたダイ、どっちの描写もいいですが、一番のお気に入りはダイが勝ったと知ってへたり込むポップのシーンです♪
 マァムの悲しみやザムザの回想もよかったですが、アルビナスのカットが無かったのが残念です。

 正直、ザムザを削ってもアルビナスを入れて欲しかったですねえ。
 そして、原作でもマァムは目を空に向ける仕草をしていたとは言え、できるならば悲しみに目をそらしかけてから、アルビナスと約束したことを思い出し、彼の最後の姿を見届けようと辛そうながらもしっかりとハドラーを見据えるシーンが欲しかったです……!
 いや、原作にもないシーンなのに贅沢を言っていますが(笑)

 戦い後のダイとハドラーの台詞も、略さずにいれてくれたのは嬉しくて貯まりません♪
 ダイに特訓した技かと聞くシーンで、原作と全く同じ構図なのに、原作では白かった背景部分にバーンパレス中央部分が映っている細かさがいいですね。

 原作では略されがちだった背景も、アニメではちょいちょい挟まれるのがいい感じです。

 ダイとハドラーの握手未遂、ダイの手がすっごく小さくて可愛く見えますね。
 触れる寸前にキルトラップが発動する辺りが、めちゃくちゃ性格の悪さを感じます(笑)

 原作ではポップ達の視点から描かれていたキルトラップが、真上からの構図に改変されていたので位置関係がよく分かりました。

 後、キルバーンの台詞が原作では「鎮魂歌(レクレイム)」だったのが、アニメでは「弔いの歌」になっていますね。
 でもキルバーン、レクレイムの割には曲が軽妙すぎる上に短くない?(笑)

 原作ではダイ自身がモノローグで(ううっ……! ハ……ハドラーとの戦いのダメージで……身体が……っ!!)と語っていますが、アニメではレオナの台詞になっています。

 ダイが炎に囚われるのを見て、レオナが前に進み出て叫ぶシーン、ここまではちゃんとポップがヒュンケルの隣にいますね。
 が、この後のシーンからヒュンケル達のカットにポップはいなくなっています。

 キルバーンの説明の途中、階段の上から見下ろす視点で、ヒュンケル、マァム、レオナの三人が嫌悪と警戒の表情で上を見上げているカットはいいですね。
 原作にはない改変シーンで、なかなかに珍しい取り合わせと角度がいい感じです。

 しかし、キルバーンを看破するレオナのシーンですが……アニメだと、胸の谷間が拝めてしまうのですが(笑)

 原作では首元を覆うマントのマフラー部分が邪魔して彼女の胸元は全く見えないのですが、アニメ版ではマフラー部分が控え目になっていて露出度が地味にアップしています!

 まあ、レオナのマフラー部分の改変はアニメのオリジナルと言うよりも、新装版のダイ大の表紙に登場するレオナの衣装に寄せたのかもしれませんが。
 とりあえず、怒りに燃えるレオナの表情もいいですね♪

 激昂するヒュンケルをマァムが止めるシーン、原作ではマァムがヒュンケルの腕に手をかけて止めていましたが、アニメではちょっと距離を置いたまま普通に話しかけていました。

 キルバーンの手遅れ発言の際、ピロロがさりげに踊っているのが妙に楽しかったです。原作でもやっていた仕草ですが、アニメだと動きがユニークでいいですね。
 足を高く上げての踊りは、麦を踏むような素朴な踊りっぽくって可愛いです。

 キルバーンの説明シーン、キルバーンの仮面が一部、透明化して炎が映し出されるシーンは、不気味で迫力がありました!
 その直後の、マァム、レオナ、ヒュンケルの足元から上を見上げる角度での構図も凝っていていいですねえ。

 原作にはない意欲的な構図を見る度に、場面を立体的に捉えられる気がします。……まあ、贅沢を言ってしまえば、原作でのこのシーンのマァムのアップのカットがなくなっちゃったのも残念ですが(笑)

 キルバーンが笑うシーン、仮面についた月型の飾りがキラキラっと光る演出が細かいですね。場面がゆっくりと暗転していく中、キルバーンの仮面の奥の目だけが最後まで残っていく演出もホラーっぽい感じです。

 炎の中の人影を見るシーン、ヒュンケルとレオナの後ろ姿が並んでいましたが……アムド化したヒュンケルとマァムが並んでいた方が、絵になったのではないかな〜と思ってしまいましたよ。ええ、筆者はポプマ派ですけど(笑)

 炎の檻の中に自ら飛び込み、氷系魔法を放つポップの姿に感動!
 これ以上無いドヤ顔が、実にいいですね♪
 そして、原作では横顔で驚きを見せていたダイが、後ろ姿でポップを見上げ、正面向きで驚きの表情を描いた細かさがいい感じです。

 ポップの方も、ドヤ顔でこんなことだろうと思っていたと言ってから、戦いの表情へと切り替わる変化が嬉しいですね♪

 すごくいいタイミングでCMになりました。原作と同じタイミングでCMや次週に続くになると、なんだかすごい安心感を感じます。
 まあ、意外なところで次週に続くになるのも新鮮味があって好きですけど。

 CM後もポップの「おれがいる限り〜」の台詞が繰り返されました。大事なことだから、二回言った(笑)

 ヒュンケルがポップが飛び込んでいたことを叫ぶシーン、めっちゃ熱っ。アニメのヒュンケルは思っていた以上に熱血漢な雰囲気が強く、時折抑えきれない激情が溢れている気がします。

 原作では淡々としたイメージが強いし、旧アニメ版でも落ち着いた雰囲気が強かったですが、リメイク版の彼を見ていると台詞に込められた熱さに、年齢相応の若さや青さが感じられていいですね。
 
 炎の中にいるダイ達は、強烈な炎の照り返しで色が褪せたように描写されていますが、思っていたよりも落ち着いた色合いでした。
 正直、ポップの緑の服に炎の赤い照り返しは似合わないんじゃないかと心配していましたが、全然問題なかったです。

 それよりももの申したいのは、キルバーンが消えた瞬間、階段の下にいるレオナ! 心配そうなマァムは可愛く描かれているのに、三白眼気味なレオナは、まるでホラー漫画のヒロインのごとく! ちょっとかわいげの無い三白眼なレオナにガッカリです。

 そして、CMから1分弱でポップが助けを求め取ります(笑) ……知っていたけど、早いですね(笑)

 レオナが駆けだすシーン、アニメでは手前に炎の塊を置き、その奥に階段やバーンパレスの中央塔が見える遠景で表現しています。
 位置関係が一目で分かっていいですね。

 親衛騎団との戦いの時も思いましたが、バーンパレスってどこに行っても中央塔が見える設計になっているんですね。……バーン様の支配力の強さが表れている気がします。

 ヒャダルコ時のレオナの台詞、後半の『まるで歯が立たない……!』の部分が省略されていますね。続く台詞も改変されています。

原作レオナ「私とポップ君じゃ攻撃魔法の威力が全然違うのよ! ポップ君が中にいる今、呪文でこの炎を消す事は不可能だわ……!!」

 アニメではレオナは、ポップの魔法の強さを素直に認めていますが、原作ではちょっと対抗心があると言うか、自分の弱さもポップの強さも口にしないままで状況を表現していますね。

 しかし、キルバーンの台詞や出番の大幅カットには大ショック!
 い、いや、来週も多分キルトラップな話が続くから、そこでキルバーンとバーンの会話が移動した可能性があるから、まだ失望するには早いです、というか、そう信じたい……!

 ヒュンケルが槍を横に構えるシーン、穂先が光ってかっこいいなぁとしみじみと見て……ハッ、気づいてしまいました!
 ヒュンケルを振り返ったマァムとレオナの表情や横顔、ポーズ共にほぼ原作のままですが、一箇所、目立つ改編が!

 原作では左足を前に出して奥の足を隠すという、女性的なポーズを取っていたマァムが、アニメではがっつりとと大きく足を開いていることにっ!(笑)
 なぜにそのポーズにしたのか……って、見逃さずに発見している筆者が言うのも何ですが(笑)

 マァムの台詞も、微妙に改編が。

原作マァム「グ、グランドクルス……!?」

 原作ではそう呟くだけですが、アニメでは微妙に追加されていますね。
 何よりも嬉しい改編は、ヒュンケルの説明を聞いていたレオナが、いち早く彼の後ろ側に逃げるシーンですね。

 彼女はどの位置に居れば安全か自分で判断し、移動しています。マァムの方が動きはじめるのが一歩遅いのもいいですね。判断力においては、レオナの方がマァムよりも上だと思いますので♪

 でも、ポップの「どう気をつければいいんだよ!?」の台詞、気に入っていたのにカットされたのは残念!
 ヒュンケルの台詞の方は残っていたのに〜。

 ヒュンケルのグランドクルスは久々ですが、やっぱりカッコいい技ですね。
 技の後、原作ではヒュンケルが槍を持ったままよろめいていますが、アニメでは槍にすがりながら屈み込んでいる動きがリアルで気に入りました。

 また、マァムとレオナが動く際、今度はマァムが先に動いているのに注目したいです!
 状況判断ではレオナに劣るマァムですが、誰かを助けたいと思う時はごく自然に動けるようですね。

 原作ではヒュンケルに肩を貸していましたが、アニメではヒュンケルの背に手を当てて同じように屈み込んでいます。

 キルバーンとバーンの会話で、キルバーンの「光栄ですねえ」という台詞が追加されています。
 目を細めるキルバーンが、実にいい味を出していますね。

 それにしても、炎を見つめるヒュンケル達の後ろ姿のシーン。
 ええ、これは確かに原作にもあったシーンです。まあ、多少構図は変わっていますが。
 でも! なぜにマァムがヒュンケルの後ろに立って、軽くお尻を後ろに突き出すポーズに!?(笑)
 
 シリアスなストーリー展開の中、さりげにセクシーカットが混ざり込んでいるのが、恐るべし! いいぞ、もっとやれ♪

 さらにマァムがレオナによって、どうすればいいのかと問いかけるシーンは、手前にいるレオナはバストショットで顔が見切れています。つまり、胸が思いっきりアップになっておりますが(笑)
 表情を見せない工夫と言えばそれまでですが、セクシーな胸元が少し……いや、少しどころじゃなく気になるのですが(爆笑)

 と、余計な感想はさておいて、レオナのキルトラップとグランドクルスの説明が一部、改変されていました。

原作レオナ「そうでなかったら、わずかな時間にしろ炎は吹き飛ぶはず……」
 
アニメレオナ「そうでなかったら、グランドクルスの影響を全く受けないなんて有り得ない」

 ヒュンケルの説明でも、順番を入れ替えるなど微妙な改変が。

原作ヒュンケル「この場にいるメンバーでダイたちを救う方法はただ一つ……!」

 原作では仲間としてはちょっと距離感を感じる言い回しが『オレたちが二人を救う』と言い換えているのが嬉しかったです。

 片膝をついたヒュンケルのポーズは同じでも、アニメでは真正面から見上げるような角度にするなど、原作とは違う構図にしているのも面白かったです。
 しかし、石で出来ている床を思いっきり素手で殴っているヒュンケル、よく手が無事だなぁと感心します。

 マァムが炎を見つめながらのモノローグも、改変されていますね。

原作マァム(た、確かに攻撃魔法が強力なダイとポップが閉じ込められてしまっていたら、外側(こっち)からじゃどうしようもないわ……! かといって私やレオナの魔法力じゃ……)

 この長いモノローグが、短縮化されています。

 炎の照り返しを受けてレオナとマァムの髪の毛が輪郭を白い光で覆われる表現は、非常に美しくって良かったです♪ 内部では炎の勢いが強すぎる色合いなのに、外側では一種の照明のようにキャラに光を与えていますね。

 レオナとマァムのやりとり、声優さんの熱演に感動です♪
 冷静であろうとしつつ、動揺を隠し通せないレオナも、いつになく感情的にレオナを怒鳴りつけるマァムもいいですね。

 基本的な表情や構図は原作のままですが、アニメを見ていて気がつきました。髪の靡き方が、原作よりも派手になっております。どうやら、アニメ版の方は強風警報が出ているようです(笑)

 マァムのキルトラップへの攻撃シーン、いい動きですね。
 飛び出したマァムの目が大きく映り込む演出から、炎に向かって愚直に攻撃を重ねるマァムの格好良さ!
 地味ですが、ハッとかやぁっというような気合いの声がずっと

 キルバーンの思わせぶりな台詞が追加されたのもいいですが、トラップについての長台詞の方が聞きたいです。

 汗すら蒸発するキルトラップの描写と、最後に絶望的な空間を紅い炎が覆い尽くすという演出で次回に続くとなったのがいい感じです。

 でも、ピンチのところで終わってしまった……! ポップが起死回生の案を思いつくところで終わるかと思っていたのにっ、思っていた以上にピンチなところで終わりましたよっ!?

 次週予告、すでにダイが脱出した後の図になっちゃっているんですが、それでいいんですか!? 

 何の説明もないと、ハドラーがポップを押し倒しているようにしか見えないんですが(笑) BLワールドに突入したのかと、戦慄しましたよ……ッ、ええー、どうしてもう少し脱出に挑んでいる風の画面をセレクトしなかったんでしょうか……。

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