『炎の中の希望』(2021.4.16)

 

《粗筋》
 
 赤黒い豪火が、渦を巻いて燃えている。
 今にも降り注ぎ、内部を焼き尽くそうとしている炎の渦を、自身の魔法力で支えているポップはいかにも苦しそうだった。

 息を乱し、ふらつきながら「いよいよヤバイみたいだ」とダイに泣き言を漏らす。
 座り込んだままのダイは、力なく落としたままの自分の手を見つめていた。だらりと垂れ、小刻みに震える自分の手を見て、ダイは悔しそうにうめく。

ダイ「くっそぉ……っ!」

 ダイは座り込んだまま、動けない。這いつくばる形で倒れているハドラーも、そのままの姿勢だ。
 唯一、立って炎を防いでいるポップも消耗が目に見えて分かる。

 それは、ポップ本人が一番はっきりと自覚していた。

ポップ(だ、だめだ……っ、このまま抑え続けていても、体力がもたねえ……かといって、おれも止めておくのが精一杯……絶望か……)

 一瞬、上を見ようとしたポップだが、ふらつきが一段と強くなる。今にも崩れ込みそうなほどふらつくポップを見て、ダイが心配そうに彼の名を呼ぶ。
 
 ポップは膝をガクガク震わせながら、威勢良く飛び込んで来たくせに役に立てなかったと謝る。
 限界を語るポップに、ダイは自分の方が辛そうな表情を見せる。
 ポップの謝罪に、目を瞑り、顔を背けるダイ。

ポップ「ちくしょおぉーーッ!!」 

 目をつぶり、そう叫んだポップ。
 が、それ以上の大きさで、ハドラーがポップを一喝した。

ハドラー「バカ者ぉっ!!」

 ふらつきながらも、ポップはハドラーの方を振り返る。
 ハドラーは震えるほど強く手を握りしめながら、それでもアバンの使徒かと一喝する。
 それに、ハッとするダイとポップ。

 心底悔しそうに、ハドラーは吠える。

ハドラー「こんなところで力尽きてしまうような連中にその名を名乗られては、あの世のアバンも浮かばれまい!」
 
 ハドラーの言い分に、怒りの表情を見せるポップ。だが、言い返そうとするポップよりも早く、ハドラーは自分の信じる『アバンの使徒』について叫ぶ。
 それは、不屈の精神を持った希望の戦士。
 最後の最後まで諦めること無く戦い抜く強い心を持つ者……それこそが、ハドラーが命をかけてまで倒そうと思ったアバンの使徒だ。

 強く主張するハドラーの手元で、込められた力の余波のせいか床石にヒビが入る。
 あまりにも強い主張に、最初は怒っていたはずのポップも、ダイも、目を見張らずにいられない。

 思わず、ハドラーの名を呼ぶダイ。
 ポップは、ハドラーの方に向けてひねっていた半身を正面向きへ戻しながら、どこか悔しげに毒づく。

ポップ「この野郎、アバン先生の仇のくせに……」

 口ではそう言いながらも、ポップは一瞬、泣きそうな表情を見せる。

ポップ(まるで、先生みたいな台詞を吐きやがって……!)

 悔しかったらなんとかしてみせろと、挑発的に言い放つハドラー。

ハドラー「オレは、アバンの使徒と戦ったはず……! 偽物に倒された、道化にしてくれるな!」

 ハドラーのその言葉を呆然としたように聞いていたダイは、目に力を取り戻し、小さく、だが、力強く頷いた。

 一方、ポップは炎を支える腕をふるわせながら、悔しそうな顔で目を瞑っていた。

ポップ(敵に教えられちまったぜ……おれ達よりも、戦っていたハドラーの方が正確に知っていたッ!! こだわっていたッッ!!)

 ポップの胸元に、光が宿る。
 服越しでもはっきりと見て取れる緑色の輝きを見て、ダイは驚く。
 こうなったら最後まで足掻いてやると叫ぶポップは、落ち気味だった腰に力が入った。その手から、今まで以上に勢いを増して氷の魔法が立ち上る。

 アバンのしるしから光を放ちながら雄叫びを上げるポップは、今や手をピンと伸ばし、炎と対抗してしっかりと立っている。
 そんなポップを見て、名を呼びながらニコッと笑うダイ。無言だが、ハドラーもその口元に満足げな笑みを浮かべていた。

 ポップ自身はそんなことに気づいていないのか、真剣な表情で必死に考えていた。

ポップ(さあっ、これからどうする!? 打開策ゼロの絶望的な状況には、全く変わりはねえぜ!)

 燃えさかる炎を見つめたポップは、ふと、気がつく。

ポップ「あった……最後の脱出策……!」

 魔法を放ちながら、真上を見上げるポップ。
 それを聞いていたダイも、反応する。

ダイ「だっしゅつさく……?」

ポップ「ダイ!! 呪文を唱えることぐらいは出来るだろ!?」

ポップ「できるけど……狙った場所に当てられるかどうか……それに、魔法力も……」

 自信なさげに自分の手を見つめるダイに、ポップは的を当てる必要はないと言い切る。

ポップ「使う呪文もたった一つ……ルーラだ! その場でルーラを唱えて、真上に飛び出すんだ!!」

 しかし、上には噴き荒れる炎がぶつかり合い、激しい渦を生み出している。

ダイ「そんなことしたら、あの炎の壁に……」

 頼りなげなダイに、ポップはどこまでも自信たっぷりに言った。

ポップ「飛び出す時にゃあ空が見えている……おれのメドローアでな!」

 一度瞬きしたダイは、納得する。

ダイ「そうか……」

 メドローアが最強の魔法であり、どんな魔法でも吹き飛ばせると強く語るポップ。このトラップが八箇所から魔法が集まり中央で収束するなら、そこを狙ってメドローアで吹き飛ばせば、一瞬でも炎を散らせるとポップは考えたのだ。

 その一瞬に賭けようと主張するポップの側に、ダイは文字通り這いずって近づきながら、返事をする。

ダイ「……うん!」

 空が見えたら、すぐにルーラで飛び出すようにとポップはダイに指示を飛ばす。自分もすかさず、ダイにしがみつくから、と。
 ポップ自身もメドローアで魔法力を使い果たすだろうから、それが精一杯だろうと説明する。
 
 それを聞きながらダイは必死に上半身を起こし、坐位を取ろうとしていた。
 分かったと答えながら、ダイはハッとしたように息をのむ。それは、ポップも同じだった。

 ポップはもう一度、ハドラーの方を振り返る。
 何も言わないが、ポップがハドラーを気にしているのは一目瞭然だった。

 しかし、ハドラーは再びポップを叱咤する。
 驚きの表情を見せるポップに、ハドラーは手が見つかったのなら死ぬ前に試せと突き放す。

ハドラー「オレのことなど忘れろ……! 所詮はすぐ死骸に化ける身だ。おまえたちが助かれば、それでいい!」

 力強いその言葉に、ポップはハドラーから目をそらし、頷いた。

ポップ「ああ……!」

 それでもほんの少しだけ悔しそうに顔を俯かせたポップは、すぐに顔を上げた。

ポップ「みんなーーーーっ!」







 張り上げたポップの声は、炎の檻の外側にも響いた。

マァム「ポップ!?」
 
 ハッとした表情で、マァムは拳を打ち込む手を止める。警戒しつつも、一歩下がって身がまえるマァム。

ポップ「これから最後のひとあがきをはじめるから、祈っててくれぇえっ」

 肩で息をしているマァムだが、ポップの声を聞いて、嬉しそうな表情を見せる。

マァム「ポップ……!」

 ゴメちゃんはそれを聞いてはしゃいで宙を舞い、レオナやヒュンケルさえも笑顔を見せる。







 真上から、炎の檻を見下ろす構図。
 視点がぐんぐん下がるにつれ、燃えさかる炎が勢いと凶悪さを増すように見える。


 


 視点が内部に映り、上を見上げるポップが両手を突き上げながら叫ぶ。

ポップ「いくぜぇええっ!!」

 両手から生み出される氷系魔法。が、左手から生み出される氷が揺らぎ、炎の魔法へ切り替わる。
 だが、その途端、重荷を負わされたようにポップの左腕がガクンと落ちた。苦痛の表情を浮かべ、呻きながらも踏ん張るポップ。

ダイ「ポップ!」

 苦悩しつつも、ポップは左手の炎の魔法を一旦氷系魔法へと変え、再び足を踏ん張って立て直した。

ポップ「やべえっ、ちょっとでもヒャド系の魔法力が弱まったら、押し切られてしまいそうだっ!!」

 一度姿勢を立て直したポップは、再び左手にメラを呼び出そうとする。だが、ポップが炎を呼ぶと、周囲からの熱気も加わって必要以上に炎が溢れ、ポップ自身の手を焼こうとする。
 苦痛に呻き、再び、氷系魔法を維持するポップ。

ポップ(だめだ……っ、これじゃ、メドローアが作れねえ……!)

 悔しそうに、ちくしょうと毒づくポップ。ダイもまた、何も出来ない自分を悔いるように歯を食いしばっていた。

 荒い息をついていたハドラーは呼吸を整えたかと思うと、残る力を振り絞って立ち上がった。
 ポップのすぐ背後に立ったハドラーは、両手を上に伸ばして落ちてくる炎の渦を支える。

ダイ(ハドラーが……っ)

ポップ(魔法力で……!?)

 驚いて、思わずハドラーの方を振り向くダイとポップ。
 豪火を受け止めるのはハドラーにとっても楽では無いのか、足元の石床にヒビが入り、炎を受け止めるハドラーの手から指が砕け散った。
 鬼の形相で歯を食いしばり、炎に耐えるハドラー。

ポップ「なんてことしやがるんだ、てめえっ!!」

 同様の成果、怒りをぶつけるような勢いで怒鳴りつけるポップ。
 だが、ハドラーは構うなと怒鳴り返す。自分の勝手でやっていることだと言い、早く呪文を放つように急かす。
 
 驚愕するポップに、ハドラーは自分の命を賭けた勝負をキルバーンごときに穢させないと言いきった。
 自分と、自分の仲間達の戦いが、勝者がいなくなっては語り継ぐ者さえなくなると言うハドラーの身体は、限界を迎えようとしていた。

 身体の各所にひび割れが入り、それが広がっていく。
 だが、それでもハドラーの炎を支える手は微動だにしない。

ハドラー「急げ、ポップ!! 骸が動いたのだ……儲けものと思え……!」

 苦痛の中でありながらハドラーの目は生き生きと輝き、勝ち誇ったような笑みさえ浮かべていた。

 その顔を驚愕の表情で見上げていたポップは、思いを振り切るように激しく首を振り、吠えた。
 叫びながら、今や自由となったポップの両手に炎と氷の魔法が生み出される。

 それを一つに融合させたポップは、光の弓矢を生み出した真上に向かって引き絞った。
 ダイに向かって、やるぞと叫ぶポップ。ダイもすかさず、力強く返事をした。

ハドラー「撃てぇーーーー!」

 ハドラーの号令と同時に、ポップはメドローアを放つ。
 極大消滅呪文は、地獄の炎をものともせずに一直線に飛ぶ。






 一方、炎の外側では、炎の檻が一際大きく膨れ上がったのが見えた。その勢いに、驚きの声を上げるレオナ達。
 炎を突き破って空高く飛んでいく光は、紛れもなくメドローアだった。その光景を、驚愕して見守るレオナとヒュンケル。






 その時、炎の中にいたダイは、炎にぽっかりと開いた穴から覗く青空を見た。
 炎の照り返しでは無い、太陽の日差しを浴びたダイは、驚きに目を大きく見開く。

ダイ(そ……空だ……!)

ポップ(……抜いたッ!!)

 魔法の矢を打ち終わったポップは、ホッとした表情で空を見上げる。その顔には、確かに笑顔が浮かんでいた。が、すぐに表情を引き締めて、動き出す。
 未だに炎を支える姿勢のままでいるハドラーが、叫ぶ。

ハドラー「今だぁあーーーーっ! 急……っ」

 そこで、言葉は途切れた。
 真っ白な視界に、細かな破片が飛び散る。
 ハドラーの目が見開かれ、息を飲む。次の瞬間、ついに耐えかねたようにハドラーの肘が割れた。続け様に、足の膝が砕ける。

 ダイの元へ走っていたポップは、それを聞きつけたのか、足を止めた。
 振り返ったポップの目が、ギョッとしたように見張られる。信じたくない、まるで恐ろしいものでも見たかのような表情で、ポップはその場で固まってしまった。

 そんなポップの目の前で、ハドラーは白目を剥いてゆっくりと後ろへと倒れていった。立つべき足がくだけ、腕も千切れたハドラーはスローモーションのように倒れ込んでいく。

 だが、ダイはハドラーのことは見ていなかった。
 空だけを見ていたダイは、残り少ない魔法力を振り絞り、ルーラの呪文を唱える。
 ダイの身体が光に包まれる。

 その間も、半ば振り返ったポップはハドラーから目をそらせずにいた。
 ハドラーの身体が、無防備に地面に倒れ伏そうとしている。それを、ショックを受けたように見つめているポップ。
 そして、全ては白い光に包まれた――。






 轟音と共に、光の軌跡が一直線に炎の檻を飛び出した。
 外部にいたマァムは、炎の勢いに顔を庇いながらそれを見ていた。空高く跳び上がってその光は、マァム達の頭を飛び越し、盛大な土煙を上げて階段付近に落下してきた。

 それを見て、パッと表情をほころばせたマァムは身を翻して走り出す。
 土煙の向こうには、苦しげに息をつくダイの姿があった。しかし、ダイだけしかいないことに気づいたゴメちゃんが、悲しげに鳴く。

 駆け寄ったレオナも、それを見て表情を曇らせる。

レオナ「……ポップ君は……?」

 感情を抑えようとするも、それでも動揺を抑えきれない声で問うレオナの言葉に、ダイは初めてそれに気がついたのか、慌てたように周囲を見渡す。

ダイ「えっ!? あれ……っ!?」

レオナ「どういうこと!?」

 ダイを支えながら、心配そうに問いかけるレオナ。

ヒュンケル「ポップはどうした!?」

 ヒュンケルにも、焦りと動揺が見える。
 強ばった表情で立ちすくむマァムの真後ろで、炎が再び勢いを取り戻して燃え上がった。

 ハッとして、ゆっくりと振り返るマァム。その表情には、明らかな恐怖の色が浮かんでいた。
 揺らぐ炎の中に、かすかに人影が見える。
 炎がわずかに薄らいだ時、その中にいる影がポップの姿だとはっきりと見て取れた。

 振り返り、ポップの名を叫ぶマァム。

ポップ「……マァムか? ……へへっ……ドジっちまったぜ……まさか、こんな最後になっちまうとはな……すまねぇ……一緒に……未来……見れなくなっちまった……」

 炎の中から途切れ途切れに聞こえる声を、マァムはただ、震えながら聞いていた。
 その目に、見る見るうちに涙があふれ出す。
 ついに耐えきれなくなったように、マァムはポップの名前を絶叫した。







 ちょうどその瞬間、炎の檻の中では集まった炎が中央のダイヤ部分に達した。






 これまで以上の大きさで膨れ上がった炎の塊を見て、ダイもポップの名を叫ぶ。
 しかし、豪火は無情にもよりいっそう強く燃え上がった。
 目を見開いて、それを見ているしか出来ないダイ達。







 その光景を、水晶玉越しに見ていたキルバーンは楽しげに笑う。
 自慢の罠であるダイヤナインの完成段階にご満悦のキルバーンは、目を細めてほくそ笑んだ。

キルバーン「サヨナラの時だよ、ボウヤ……」






 炎の檻の前で、マァムは震えがちな声で必死に訴える。

マァム「……助けて……誰か……」

 いつもの彼女らしくもない、弱々しい訴え。
 そんなマァムやみんなの目の前で、炎の渦の中に熱気に煽られるように浮かび上がるポップの姿が見えた。だが、その姿すら、炎に邪魔をされたのか見えなくなってしまう。
 泣きながら、マァムは叫ぶ。

マァム「誰か、なんとかしてぇええっ!!」

 すでに、自分には何も出来ないと知ってしまったマァムは、もう、泣き叫ぶしか出来ない。
 しかし、その悲鳴に応える者はいなかった――。






 一方、キルバーンは得意げにダイヤナインの美しさについて語る。最後が花火のようで切ないのがいいと饒舌に語るキルバーン。
 そんな彼に対し、バーンは腕を組んだまま上機嫌なのが解せないとばかりに問いただす。

 だが、キルバーンは手にトランプを出現させ、キルトラップは一つではないと説明する。カードの数だけ、バーンパレスに存在しているのだという。
 むしろ、あのボウヤ……ポップが今死んでくれた方がありがたいと言うキルバーン。

バーン「……人間ごときを、えらく高く買ったものよ」

 それに対し、キルバーンは余裕綽々に答える。

キルバーン「人間をナメちゃあいけません。成長度だけで言ったら、ポップはダイ以上……だれも、ここにはたどり着けない……」

 語るキルバーンの元へ、両手にワインのグラスを持ったピロロが飛んで近づいてくる。ニコニコ笑いながら、ワイングラスの片方をキルバーンに差し出すピロロ。
 酒を受けとったキルバーンは、緩やかにグラスを回し、酒を揺らしながら言った。

キルバーン「ボクが全て始末してあげますよ。ひとり、ひとり……じわり、じわりと……ね」

 嬉しげに水晶玉に目をやるキルバーンを、じっと見つめる大魔王バーン。その冷徹な目からは、全く感情が窺えない。

キルバーン「ポップ君の最後に、乾杯!」

ピロロ「カンパーイ!」

 まるで太陽のように見える炎の照り返しの中、死神と使い魔はワイングラスを打ち合わせる。軽やかな音を立てて、グラスとグラスが合わせられた――。







 暗転した世界。
 黒一色の世界に、目の形に世界が見える。見えるのは、鮮やかな色合いの炎の渦だった。

 ぼんやりとした表情で、目を開けるポップ。

 再び、ポップの視界に戻る。
 渦巻く炎の中、翻る銀髪が目に飛び込んできた。そして、すぐ目の前に必死な表情をしたハドラーの顔が。

 今度こそはっきりと目を覚ましたポップは、驚く。
 床に倒れたポップの上に、覆い被さる姿勢のハドラーがいたのだ。片手、片足を失いながらも自分の身を文字通り盾にして、ポップを炎から庇おうとしている。

 苦笑し、ポップは言う。
 あんたも、よっぽどムダな足掻きが好きらしいな、と。
 すでに開き直っているようなポップに対し、ハドラーはまだ諦めてなかった。諦めずにもう一度立てと、強く叱咤する。

 だが、ポップは動く気配も見せない。
 魔法力も体力もカラだと、諦めている。でも、ダイを救えたのだから上出来だと言うポップに、未練は見られない。

 むしろ、ハドラーの方が諦めきれないとばかりに一喝する。
 ポップをバカ者と叱り、あの時、ためらわなければ見事に逃げおおせたものを、と、自分のことのように悔しがるハドラー。

 なぜだと問われ、ポップはしばし、沈黙する。
 普段の彼とは似ても似つかない、悟ったような大人びた表情。困ったような笑みを浮かべ、ポップは応えた。

ポップ「……悪ぃ。あんたに見とれちまった」

 その答えがよほど意外だったのか、虚を突かれた表情を見せるハドラー。
 ポップは、静かに語る。
 あの時、必死に自分達を生かそうとしてくれるハドラーを見たら、他人とは思えなかった、と。

 絶対にハドラーが助からないと頭で理解していても、見捨てていくことに抵抗があったと打ち明けるポップ。
 誇りをかけて、仲間達を力を合わせて、正々堂々と戦う姿が自分達と同じだと感じてしまった。

 頭を持ち上げ、そう主張するポップ。
 それを聞いて、ハドラーは感極まったような表情を見せる。

 炎の中で、ポップはなおも語る。
 ハドラーが倒れた時、つい目が行ってしまって手を差し伸べてしまったのだと。だから、ダイの身体をつかめなかったという真相を暴露する。






 ポップのその言葉は、炎の檻の外にも届いていた。誰もが身動きもせず、ポップの言葉に聞き入っている。
 完成形となったダイヤナインは、先程までの赤黒い色が嘘のように、黄色から赤、紫に水色までもが複雑に混じり合う美しい炎を上げていた。
 明るさを増した炎は、虹のように美しい――だが、その恐ろしさは先程まで以上だ。

 自分のドジさを笑うポップの言葉を聞き、ダイは辛そうに目を固く瞑っていた。そんなダイを、心配そうに見つめながら支えているレオナ。
 だが、二人ともポップが気になって仕方が無いのか、彼の声に釣られて炎に目を向ける。

 仇をつい助けようとして死んでしまうミスを、あの世で会ったらアバン先生に怒られるかなと自問自答するポップは、アバンなら自分の気持ちを分かってくれるだろうと考えている。

 槍を手にしたまま、微動だにせず炎を見つめているヒュンケルの後ろ姿。
 ゴメちゃんは顔をくしゃくしゃにして、大粒の涙を流している。

 マァムも泣きながら、いやいやするように顔を振る。
 ポップの名を、絶叫するマァム。






 渦巻く炎の中、その声が聞こえたのか、ポップが軽く息をのむ。
 苦痛に顔をしかめるポップだが、その顔に水滴がかかる。
 驚き、目を開けたポップは、ハドラーが落涙しているのを見て、さらに驚く。

ハドラー「ポップ……ッ、おまえというやつは……オレなどのために、その生命を……ッ! 許せ……っ」

 堪えきれずに落ち続ける涙だが、灼熱地獄のせいでポップの頬に落ちると同時に、蒸発して消えてしまう。
 ハドラーの謝罪に対して、ポップはあんたがいなければメドローアすら打てなかったと、逆に感謝する。

 涙もすぐ蒸発するような場所だが、一緒にアバン先生のいるあの世へ行こうと言うポップの声音には、突き抜けたような明るさがあった。すでに、生きることを諦めているからこその達観が、そこにはあった。

 しかし、ハドラーはまだ、諦めきれなかった。止めることの出来ない涙が、こぼれ落ちる。

 光の中、ハドラーは真摯に祈る。
 魔族のハドラーが、初めて人間の神へと祈った。もし、本当に神に人の生命を司る力があるのなら、この素晴らしい男だけは生かしてくれ、と。
 自分のような悪魔のために、こいつを死なせないでくれ、と――。

ハドラー「神よぉおおーーーーっ!」

 身を起こし、ハドラーはどこに居るかもしれぬ神へ向かって、叫ぶ。それと同時に、周囲が白熱に染まった――。







 水晶玉にも、その一際強い白光は映っていた。
 罠の最後だと、声を弾ませて嬉しげに見物するキルバーンとピロロ。そんな時でも、バーンは表情一つ変えない。腕を組んだまま、眺めているだけだ。






 同じ時、ダイ達もそれを見ていた。
 立ちすくんでいるだけのマァムとヒュンケル。後ろにいたダイは、炎の色合いが違ってきたのに気づいたのか、立ち上がる。
 そんなダイを支えながら、一緒に立ち上がるレオナ。

ダイ「ぁあ……っ、くっそぉ!! やめろぉおおっ!」

 必死で動こうとするも、ろくに自分の身体が動かないことに焦れたのか、首を振って叫ぶダイ。
 ヒュンケルはわずかに俯き、唇を噛みしめる。その身体は、小刻みに震えていた。

 マァムはこれ以上見ていることも耐えられないとばかりに、顔を背けてしまう。

 完全に立ち上がったダイは、声の限りにポップの名を叫ぶ。
 もう支えなくてもいいはずだが、レオナはそんなダイの左腕をしっかりと両手で握りしめていた。






 長く、尾を引くダイの叫び声を聞きながら、ほくそ笑むキルバーン。







 その時、空に五つの光が出現する。それは凄まじい勢いで飛んでくる羽だった。金色に輝く羽は石の床に深く刺さり、一際強い黄金色に輝いた。
 その光は、バーンパレス頭頂部全体を輝かせる。
 目を焼くその輝きは、一瞬で去った。

 目を閉じ、顔を背けていたマァムは、泣きながら目を開ける。しかし、ポップの方を見る勇気が無いのか、そのまま泣いていた。

 だが、ずっとポップの方を見続けていたダイとレオナはそろって驚きに目を見張る。
 ゴメちゃんも、ヒュンケルさえも手放しの驚愕に息をのんだ。
 
 仲間達に驚きを見てから、マァムはようやくポップの方を振り向いた。その目が驚きで丸くなり、さらに新たな涙があふれ出す。

 マァムが見たものは、意志に突き立ってなお、光り輝く複数の羽……そして、その中央にいるポップとハドラーの姿だった。
 先程までの炎はきれいさっぱりと消えている。
 ポップの無事を見て、マァムは震える声で彼の名を呼ぶ。







 目を閉じていたポップも、目を開ける。驚きに、目を見張るポップ。
 見れば、五つの黄金の羽を起点に、魔法陣が描かれて聖なる輝きを放っていた。

ポップ「こいつは……いったい……!?」

???「困りますよ、ポップ。勝手にあの世なんかに行かれちゃ」

 穏やかで、落ち着いていて、どこかユーモアを感じさせる声。
 聞き覚えのある声に、ポップが息をのむ。

 青空を背に、腰に差した剣の宝玉が光り輝く。顔は見えないが、胸元のアバンのマークははっきりと見える。
 マントをたなびかせながら、その男は優しく話しかけてきた。

???「そんなところに行っても、私はいません」

ダイ「あ……っ」

レオナ「まさか……」

ヒュンケル「夢か……!?」

マァム「嘘よ……ッ」

 アバンの使徒達は、誰もが目を見開き、恐怖すらしたようにその場に固まって『その男』を見続けた。
 ろくに動けないはずのポップさえ、頭をもたげてそちらを見入っていた。振り返るハドラーもまた、驚愕に目を見開いている。

マァム「だって……ッ」

ハドラー「馬鹿な……っ」

 抜けるような青空の下、ぽつんと佇む一人の男。
 マントをたなびかせ、穏やかな表情で彼らを見つめているのは、紛れもなく大勇者アバンだった。

 






 キルバーンの手からワイングラスが滑り落ち、床で砕け散った。
 次いで、ひらりと床に舞い落ちたトランプのダイヤの9のカードが、落下と同時に燃え尽きる。

 よろめき、珍しくも動揺も露わに目を見開くキルバーン。

キルバーン「なぜだ……っなぜだぁああーー!」

 死神の驚愕の叫びをも、大魔王バーンは先程と同じように静かに聞いていた――。






 一方、ハドラーやポップ、ダイ達は近づいてくるアバンを見つめていた。
 先程までの激戦の成果、時折視界がぼやけるが、それでも見間違えるはずもない。

ダイ「せ……先生……?」

 ゆっくりと近づいてくるアバン。
 ポップは目を見開き、これは夢だと自分に言い聞かせる。信じたくてたまらないのに、信じるのが怖い――そんな引きつった表情のままなのに、それでもポップの目はアバンに釘付けだ。

 ポップとハドラーの目の前までやってきたアバンは、静かに歩を止めた。
 表情を伺わせない眼鏡が白く輝いた後、いつもの彼らしい穏やかな目が浮かぶ。

アバン「ちょっとだけ、手当ては待ってくださいね、ポップ」

 優しくそう話しかけた後、アバンはハドラーを抱き起こす。
 それを見て、息をのむダイ達四人。

 ポップの上からハドラーをどかし、楽な姿勢になるように半ば寝かせながら、アバンはハドラーに礼を述べようとする。

ハドラー「き、貴様……本当にアバンなのか……?」

 小さく頷き、アバンはハドラーが自分の弟子を助けたことに驚き、以前とは全くの別人のように成長したと悟ったかのように話す。その口調はとても敵に対するような物ではなく、まるで旧友に対するように親しみを感じさせるものだった。
 目を伏せ、礼を述べようとするアバンだが、それをハドラーが遮った。

ハドラー「……ありがとうとでも、言うつもりか!?」

 ハドラーが不意に身がまえ、拳を握りしめてヘルズクローを出現させる。驚くアバンの目の前で、ハドラーは吠えるように叫ぶ。

ハドラー「甘いッ!! 相も変わらず甘いヤツよ!! 反吐が出るわッ!!」

 勢いのを乗せて拳を突き出すハドラーに、アバンは驚愕に目を見張るだけだ。眼鏡を掛けたその目にめがけて伸ばされた、鋭い爪――。
 
 場面は暗転し、ぐちゃりと肉を穿つ音が響く。
 ハドラーの後ろに居たポップが、目を見開いた。靡く銀髪越しにポップが見たものは、驚愕するアバンの顔のすぐ真横を貫く、ハドラーの腕。
 驚いた表情のまま、アバンがその腕を見やる。

 ひび割れたその腕は、アバンを通り越して、その後ろに伸ばされていた。虚空を貫く姿勢を取る四本の爪が、不自然に途切れている。

 次の瞬間、呻き声と共にハドラーの爪の先から血が飛び散った。その傷口を中心に、キルバーンが姿を現す。
 姿を消して大鎌を振り上げたキルバーンが、アバンのすぐ背後まで迫っていたのだ。

ハドラー「そう何度も、つまらん邪魔はさせんぞ……! ……死神!」

 呻き、痙攣するキルバーンにそう言い、ニヤリと不敵な笑みを浮かべるハドラー。
 呻いていたキルバーンは目を反転させると、手から大鎌を取り落とした。音を立てて床に落ちる大鎌。続いて、キルバーン自身も追って倒れた。

ポップ「……キルバーンの野郎……」

 その時、アバンが焦ったような声でハドラーを呼んだ。
 釣られて、ハドラーへと目を向けるポップ。
 前に突き出したハドラーの拳から、ヘルズクローがひび割れて落下していく。指も折れ、ボロボロに崩れていく。
 そんな状況にも拘わらず、ハドラーは落ち着き払っていた。

ハドラー「……どうやら、正真正銘、今のが最後の力だったようだな……」

アバン「ハドラー……あなたは……」

ハドラー「聞け、アバン……」

 アバンに支えられながら、ハドラーは穏やかに語りかける。
 大魔王バーンの恐ろしさを語り、情けを捨てて、冷徹になれ、と諭すハドラー。
 その間も、ハドラーの身体は容赦なく崩れ、壊れていく。
 崩れ去った部分は色を失った灰になり、あっと言う間に風に攫われていった。

 だが、アバンはハドラーの顔だけを見つめ、真剣に聞いていた。
 アバンの力こそが、これからのダイ達に必要だと説くハドラー。そこまで語った彼は、言うべきことは終わったとばかりに目を閉じ、満足げな笑みを浮かべる。

ハドラー「素晴らしかったぞ……おまえの残した弟子達は……オレの生き方すら変えてしまうほどにな」

 自分の弟子を誇るかのごとく、そう言ったハドラーはわずかに顔を傾け、笑顔を見せる。その笑みの向かう先には、神妙な顔で仲間達に囲まれているダイの姿があった。

 おまえの力でダイ達を勝利に導くようにとアバンに頼むハドラーに、ダイは泣きそうな顔で彼の名を呼ぶ。

ハドラー「それが……オレへの、唯一の礼だと思え」
 
 耳が砕け、頬にも大きなヒビが入る。だが、それでもアバンを見上げるハドラーの顔に浮かぶ笑みは、勝者のそれに等しかった。

 その意志を受け止め、アバンは目を伏せて頷いた。
 満足げにそれを見返すハドラーの顔も、一部が灰色に侵食されつつあった。

ポップ「ハドラー……!」

 名を呼ばれ、そちらを向くハドラー。
 寝そべった姿勢のまま、ハドラーを呼んだのはポップだった。

ハドラー「ポップよ。おまえ達人間の神というのも、なかなか粋なヤツのようだぞ」

 かすかに笑いを含んだハドラーの声音は、今もにも死にゆく者とは思えないほど清涼とした響きがあった。
 仰向けに向き直ったハドラーは、空を見上げる。
 灰色の浸食率が一気に強まった。

ハドラー「オレの生命と引き換えに……オレが、かつて奪った大切なものを、おまえ達に返してくれた……」

 空を見ていたハドラーの視点が、アバンへと移る。

ハドラー「そのうえ……」

 ハドラーの視界が不意にぼやけ、瞬きが黒く周囲を狭める。静かに目が閉じられ、彼の視界は暗闇に閉ざされた。

ハドラー(オレの死に場所を……このおとこの……うでの中に……してくれる……とはな……)

 目を閉じたハドラーの顔が、灰となって崩れた。
 しゃがみ込み、ハドラーに手を差し伸べていたままの姿のアバンの腕の中に、すでにハドラーの姿は無かった。

 灰となり、かすかにたなびく煙が周囲に残るのみ――超魔生物と化した者の最後だった。
 その光景を目を見開いてみていたポップは、浮かんできた涙を飲み込むように、目を固く瞑る。
 それでも、目元に一粒、涙が滲むのは避けられなかった。

 無言で自分の腕を見つめるアバンは、眼鏡の反射で目が完全に隠され、表情をうかがい知ることは出来ない。

 風の音が聞こえる中、マァムもレオナもどこか寂しそうな顔をしてその光景を見つめていた。ダイも、今にも泣き出しそうな顔で、下を向く。

 空に一筋の白い煙がか細く立ち上り、風に吹かれて消えていく。

ポップ(ハドラー……最後の瞬間のあんたは……まぎれもねぇ仲間だったぜ……。おれ達の、な……!)

 目を閉じていたポップは、涙の浮かんだ目を見開き、それを見送った――。

 そして、アバンも立ち上がり、空の彼方を見上げる。

アバン「ハドラー……」

 短いその言葉に、どれほどの想いが込められていたのか。
 風が吹き、アバンの髪を靡かせる。
 
 バーンパレスの主塔を望む場所で、アバンは弟子達を前にして、空を見上げていた。

 
 


《感想》

 待ちに待った甲斐がありましたぁああーーーーーっ!
 ダイ大のアニメはいつも感動していますが、今回の話はもう……もう……っ、心の底から感動しまくりでした!

 不正アクセスというとんでもないアクシデントのせいで5週に亘って停滞していた後の再開というだけでも嬉しかったですが、ブランクを感じさせない力強い展開と、急ぎすぎずに間を大切にした丁寧な造りにどんなに歓喜したことか……!

 いきなり炎の中からスタートは、前回と繋がっているんだと実感しました。……ええ、5週ぶりでも前回は前回!(笑)
 アニメでは、ポップがじっと立つことすら辛い様子をふらつきという形で表現してくれているのが嬉しかったです!

 原作ではどうしても静止画になるので、ポップが同じポーズを保ちつつ踏ん張っていたという捉え方になりますが、アニメだとフラフラしているのがよく分かります。
 このシーンだけで無く、今回のポップは全般的にふらついてますし(笑)

 また、ダイの悔しがり方にも微妙な改変が。

原作ダイ「く……くそっ!! ……せめて、おれの身体が……ちゃんと動けばっ……!!」

 原作ではこの台詞の後、ダイの手が軽く持ち上げられるも、震えて使い物にならないコマが表現されています。
 アニメとは逆ですね。
 そして、アニメのダイは言い訳っぽい台詞はばっさりとカットされています。

 カットされているのは、ポップのモノローグも同じですね。

原作ポップ(……だ、だめだ……っ!! このまま氷系呪文で抑え続けても、この高熱じゃ先に体力の方が無くなっちまわぁ……外の連中にゃあ何もできねぇ……かといって、おれも止めておくのが精一杯……!! 絶望……かっ……!!)

 原作のポップは仲間達の援護が来ないことを正確に理解しているからこそ、絶望している感が強いですね。
 ここでは原作のポップは俯きがちの横顔のままなのですが、アニメでは下から見上げる構図があったり、一瞬とは言え上の方を見ようとしているシーンがあったりなど、何か手段を模索している感があって好きです。

 ダイがポップを心配して呼ぶシーン、原作とは構図やポースが違うのですが、ポップを見上げるダイの上目遣いが可愛くていいですね♪
 ポップの泣き言のシーンもポップ自身の表情を見せずに震える膝や下がりつつある腕だけを見せ、ポップの名を呼ぶダイの悲痛な表情を見せていたのに感心しました。

 原作の、歯を食いしばっているポップのここの表情も好きですが、何も出来ないでいるダイの表情を通すことで絶望的な状況がより伝わっている気がします。
 ダイが辛そうに目を背けるシーンも、アニメの改変ですね。

 ポップが「ちくしょう」と叫ぶシーン、原作では呟いている印象だったのに、アニメでは叫んでいるのもちょっとした改変です。

 ハドラーに一喝されたポップが、驚いて目を見開くのは原作もアニメも同じですが、原作では驚いた勢いで手がぴんと真上に伸びているのが、アニメではそのままになっています。

 ハドラーが一喝する時、ポップだけでなくダイもハッとした表情を見せているのはアニメの改変ですが、いいですね!
 原作では、ポップからハドラーを振り返っている構図が、ハドラーからダイやポップ達を見ている構図に変更されているのも、高ポイントです。

 一喝するハドラーが、めっちゃカッコいい!
 悔しそうな台詞の合間、手を強く握りしめているような効果音が入っているのが印象的でした。

 ハドラーが起き上がろうと必死にもがく手元で、床石にヒビが入るのはアニメの改変ですね。原作でも全く同じ構図がありますが、床石は無事でした(笑)

 ハドラーの叫びシーンも単なるアップではなく、髪を振り乱して叫ぶ必死さが実に印象的でした。原作よりも泥臭く、だが、だからこそ必死さの感じられるハドラーの心からの叫びという感じで、声優さんの演技も相まって胸に迫りました。

 ポップがハドラーの台詞にアバンの片鱗を見いだすシーン、悔しそうな表情の後に見せた、一瞬の切なそうな表情、いいですねえ〜。原作では横顔なのが、アニメでは正面からの顔になっているのは嬉しい限りです。

 ハドラーの素直じゃ無い叱咤激励にも、実は改編が。

原作ハドラー「このオレを……ニセ者を倒すために死んだ道化にしてくれるなッ!!」

 原作の方が自己主張を強く感じますが、アニメだとアバンの使徒と戦ったことに拘る気持ちが強く感じられて、いい改編だと思います。

 ハドラーに知ったされた直後のポップのモノローグも、改編というか省略されています。

原作ポップ(な……なんてこったい! 敵に教えられちまったぜ、真のアバンの使徒とはなんなのかってことをよ!! おれ達よりも、戦っていたハドラーの方が正確に知っていた! こだわっていた!!)

 筆者は原作の台詞は全部聞きたい派ですが、この台詞に限って言えば短い方がいいなと思いました♪
 
 ポップが立ち直って姿勢を正すシーン、ここで先程、反射的に腕をピンと伸ばさなかった演出が活きてきます! 精神的に立ち直ったポップが、自分の意志で姿勢を正すのはいいですね!

 ダイがポップの名を呼び、笑顔を見せるシーンはアニメのオリジナル。
 今回、ダイがポップを呼ぶシーンが多いですが、その度ごとに違う感情を載せることのできる声優さんの演技力には、本当に感動します。

 ポップの思考シーン、こちらも台詞が改編されています。

原作ポップ(さ……さあ!! 立ち直ったはいいが、これからどうする!? ダイは、もう立てねぇ! おれは、この場を離れられねぇ! 打開策ゼロの絶望的な状況にゃあ、全く変わりはねーぜ!)

 こっちは全部を聞いてみたかった気もしますが、考えている途中のポップの腕がジリジリと下がっていく演出がリアルでいいですね。
 原作では立ち直った後のポップは、腕をしゃんと伸ばし続けているんですが、アニメではじり貧さを強く表現している気がします。

 ダイとポップの台詞のやり取りは、それぞれ短くなるように省略をされています。しかし、ダイの魔法を的に当てられないという台詞は、非常時とは言え思わずくすっと笑ってしまいました。
 ……未だに魔法は苦手なんですかっ(笑)

 弱気なダイを、自信たっぷりに励ますポップのやり取りは実にいい感じでした。
 キルトラップの説明に、黒いバックにダイヤマークが9つ並び、炎を噴き出すしかけを再現したのも分かりやすい説明でした。

 ポップの説明に合わせ、回り込みなどを使ってスピード感と勢いを感じさせる演出も、逆転なイメージで良かったです。
 なにより感動したのは、ダイがポップの説明が終わる前に、すでに這いずって動いていたシーンです。

 原作ではポップの説明が終了してから、ダイは頷いてから動こうとしています。が、アニメでは、ポップに返事をするよりも先に動いている辺りに、強い絆を感じます♪
 ついでに、匍匐前進ダイが妙に可愛いですね。

 原作ではもっとヨロヨロなイメージでしたが、アニメでは匍匐前進は結構早かったです。

 ハドラーから背中を押す言葉、ポップが頷くタイミングが実は原作とアニメで違っています。
 原作では、「オレのことなど忘れろ」の台詞の前に曖昧な感じに相づちを打っていますが、アニメでは上記した通り、ハドラーの台詞を全部聞いた後で相づちを打っています。

 ポップが外に向かって呼びかけるシーン、原作では「マァム!! 姫さんっ!! ヒュンケル〜〜ッ!!」と名前で呼んでいますが、アニメではみんなと短くまとめていますね。

 久々に外側に視点が変わり、青空が非常に美しく見えました。マァムは未だにパンチで殴り続けていたんですね(笑)

 ポップの叫びも、改編があります。

原作ポップ「これから最後のひとあがきを始めるぜっ! 見事飛び出せるように、祈ってやってくれよぉっ」

 原作に比べると、アニメではポップが何をするつもりなのか全く分からないにも拘わらず、すごく喜ばれています。信頼感が高い!
 原作ではここで笑顔を見せるのはマァムだけなので、ゴメちゃんやレオナ、ヒュンケルの笑顔はアニメの改編です。

 ポップがメドローア挑戦前に、一度、上空から炎の罠を見下ろす構図が入ったのは意外性があっていい演出でした。

 メドローアを生み出せないポップが愚痴るシーン、原作ではモノローグでしたが、アニメでは台詞として言っていましたね。
 原作ではポップが一人でなんとかしようとしていたのに対し、アニメではダイとの共同作業を意識している感じがして、好きな改編です。

 メドローアに再挑戦し、失敗するシーンもアニメの改変ですね。原作では、ポップは一度しかためしていません。
 結局、メドローアができないとポップが絶望するシーンは、心の中だけで呟くモノローグにし、ポップの孤独な絶望を表すように彼だけを残して真っ暗にする演出は気に入りました。

 ポップがちくしょうと叫んだ直後、ダイのアップが入るのはアニメの改変です。原作では、ポップがちくしょうという寸前にハドラーのアップが入ります。
 ダイの苦悩の表情が、ポップの悔しさを自分のことのように感じ、何も出来ない自分の不甲斐なさを感じているようで、すごく好きなシーンです。

 ハドラーが立ち上がるシーン、呼吸を整えてから力を振り絞って立つ格好良さ! 原作ではダイとポップはすぐにハドラーを振り返っていましたが、アニメではポップが愕然とした表情をしているのがいいですね。
 ポップとハドラーが、同じポーズで踏ん張って並び立っている図、ものすごいレア感が!

 ポップはヒャダルコで炎系魔法を相殺して遮っている印象でしたが、ハドラーは元々メラが得意なこともあり、同種のメラ系の魔法力で受け止めつつわずかにコントロールし、支えている印象でした。この方法だと肉体へのダメージが半端なさそうなので、ポップは選ばなかったんじゃ無いのかなーとも予想。

 原作ではダイ一人のモノローグだった『ハドラーが魔法力で……!!』の台詞が、ダイとポップが仲良く半分こしているのが相棒感が合っていいです。息、ぴったりですね。

 ハドラーの足元の床にヒビが入り、指が砕けるシーン、原作とは順番が逆に改変されています。しかも、ダメージが派手になっています。
 出血しないとなると、ダメージが原作よりも大きくなるのは相変わらずみたいです。

 ポップとハドラーの魔法の支え方の差も、いいですね。ポップがフラフラしまくっていたのに対し、ハドラーはがっしりと踏ん張って微動だにしないのに、身体のあちこちが壊れていくという差が印象的でした。

 ポップのメドローアの表現も、毎回違った感じの見せ方や角度に感心しまくりです。
 特に、一瞬、白黒画面になり、魔法の光のみが金色で表現されたシーンは感動しました!

 ダイの大冒険の原作は、光と影の表現を白黒で実に美しく表現している箇所が多数あるので、アニメでそこを拾ってもらえると嬉しくてたまりません。赤をベースにした炎の世界から白黒世界へと切り替わる一瞬が、いいメリハリになりますしね。

 外からポップのメドローア炸裂シーンを見るシーンで、マァム、めっちゃ炎の側に居ますね、危ないっ。原作よりも炎に近い気がします、危ないからもっと下がっていて〜〜っ!
 
 ついでに……原作ではあったレオナの密かなパンチラシーンは、鉄壁のスカートに阻まれておりました(笑)

 メドローア直後の、ポップの『抜いた』の一言はアニメの改変ですが、いいですね。原作ではここでポップの表情は無いんですが、ホッとして喜び、でも、喜んでばかりもいられないとダイにしがみつくために動き出している動きもいいです。

 音が消えてからの、真っ白な世界でのハドラーの崩壊演出には凄みがありました! 原作では関節の少し上部分が切れるような感じに砕けていましたが、アニメではモロに関節が砕けていました。

 可動部分こそが一番負担がかかり、故障が多くなる場所なので、そこから壊れていくのは納得です。

 原作の方では、魔族は自分によって不要となった部分をトカゲのように自切し、少しでも生存確率を高める能力が備わっているのかなと思っていましたが。

 ポップがハドラーが倒れるのを見てショックを受けるシーン、長く間をとって表現されていたのには痺れました。
 原作では一瞬でしたが、やっぱりポップの葛藤が見てみたかったのでここで間があったのは嬉しい限りです。

 ついでに、ダイがハドラーを見ていないのもいいですね。
 空を見ているダイは、ハドラーに気づいていないんですね。ポップに言われた通り、空が見えたらルーラを唱えるとそればかりを考え、実行した感じです。

 ポップの言った通りにすればいいと言う、ポップへの絶対の信頼感がマイナス方向に働いちゃった感じですよ(笑)

 ダイが飛び出すシーン、原作では空に飛び上がったダイをマァムが顔を上げて見上げ、きらめきを視認するシーンがありましたが、アニメではあっさりと落ちてきています。ここはそんな大事なシーンじゃないので、カットに賛成♪

 その後、マァムが嬉しそうな表情を浮かべたシーンを描いてくれた方がずっと嬉しいです。

 ゴメちゃんがポップがいないのに真っ先に気づいて、鳴いているのが可愛かったです。原作ではここらでは出番が薄かったので、細やかにでも活躍してくれると嬉しい♪

 ポップが居ないことに気づき、上から見た構図の画面で気がつきましたが、マァムが立っていた場所ってグランドクルスが地面をえぐり取った跡地だったんですね。
 なんか、足場が悪そうです(笑)

 原作ではヒュンケルがポップのことを問いかけていましたが、アニメではレオナが先に問いかける改変がされていて、仲間達全員がポップを心配している感じがして良かったです。

 ダイの台詞も、微妙に改変。

原作ダイ「え……ええっ……?」

 アニメの台詞の方がちょっとお間抜けで、それでいて表情は心配そうに切迫感が増しているのが気に入りました♪
 立ちすくむマァムが、炎の照り返しで逆光になっている図もいい感じの追加でした。

 ポップの台詞、『まさかこんな最後になっちまうとはな』はアニメでの改変ですね。こんな切羽詰まった状況だというのにかすかに笑う演技が加わったことで、ポップらしさが増した気がします。
 メガンテの時はマァム以外の仲間に別れを告げていますが、ここではマァムだけに別れを告げているんだなと思うと、感慨深いです。

 そして、ダイヤナイン発動後にポップの名を叫ぶシーン……アニメを見るまで、ここで叫んでいたのはマァムだと思っていましたよっ!
 原作では全員後ろ姿で、誰が叫んでいるか分からなかったのですが、アニメではダイが叫ぶシーンが追加されていました。

 水晶越しのキルバーンにも、炎の照り返しの余波が及んで、いつもよりも赤みを帯びた色合いなのが凄みがあって綺麗です。
 なにより、ポップに別れを告げる時のキルバーンの目!
 意味ありげにほくそ笑む目が、これまたいいですね。

 そして、いつものアイキャッチの代わりに画面左下に小さくダイの大冒険のテロップが流れてCMに。
 番組再開時もアイキャッチはありませんでした。画面右下に、小さくダイの大冒険のテロップが流れて、速攻ストーリーに。

 ……? もしや、アイキャッチの時間さえ節約作戦? いや、単にストーリー優先で雰囲気重視でアイキャッチ省略ですかね?

 マァムの嘆きはよかったですが、ナレーションを省く分、もう少しここで間が欲しかったです!
 表情は見せなくても、ダイやレオナ、ヒュンケルの後ろ姿をしばし映すだけでも彼らのやりきれなさや絶望感が表れたでしょうに……。

 後、ダイのモノローグの『どうして……どうして、おれにちゃんとつかまらなかったんだよぉ……ポップ……!』が省かれていました。
 
 代わりと言ってはなんですが、キルバーンが目一杯喋りまくっています(笑) まあ、ピロロの合いの手が略されていましたが。

 しかし、感心するのはバーン様の演技。
 原作でも老バーン様は感情が見えにくく、怒っているのかどうか見分けがつきにくいキャラなのですが、老獪な印象の声が加わってますます感情が読みにくい印象に!

 やっぱり、ラスボスは内心どう思っているのか読み取れないのがいいと思いますので、枯淡の域に達した演技にはいつも惚れ惚れします。
 
 キルバーンが説明の時にトランプを出すのは原作通りですが、カードが燃えるのはアニメの改変ですね。アニメではカードの動きが派手な演出で、見応えがあります。

 一枚だけ残ったダイヤナインのカードを指に挟み、それを扇の様に口元を隠しながらポップの死を喜ぶキルバーンの表情は、凄みがありました。
 中世の貴婦人は扇で口元を隠すことで、目力をよりつよく発揮させていたという話を思い出しましたよ。

 バーン様やキルバーンの台詞が一部省略されているのは残念ですが、ワインを飲むシーンにビックリ。
 てっきり、キルバーンが飲むなら赤ワインかと思っていたんですが、色が透明っぽいです。もしかして、白ワインか蒸留酒の類い!? これは、今回一番の意外ポイントでした。

 まあ、冷静に考えたら、炎の照り返しを浴びている室内だけに、赤い酒は黒ずんであまり綺麗に見えなくなっちゃいますしね。
 実際、キルバーンとピロロが乾杯するシーンでは、真っ黄色に近い炎の照り返しの中、透明なグラスが非常に美しく見えました。

 原作ではトーンを張っているので赤に見えましたが、アニメならではのカラーの効果まで考えた上で、色彩を決定しているんだなと感心しました。

 ポップが炎の中で目覚めるシーン、原作では第三者の視点からポップの現状を追っていくのですが、アニメではポップ自身の視界と、第三者の視界を織り交ぜているのが面白かったです。

 ポップと庇うハドラーのシーン、原作ではすでにハドラーの身体はあちこちに火が回っているのですが、アニメでは燃えてはいませんでした。炎も、二人の周囲では虹色のような輝きで、雪のように小さくちりぢりになっています。

 ハドラーとポップのやり取り、感動的でした!
 原作でも屈指の名シーンで、これをアニメで見たかったと昔から何度も何度も思っていたシーンを、アニメで見ることが出来るだなんて……! 生きてて良かった……っ。

 仲間のためにはものすごく諦めが悪い癖に、自分のことはあっさりと諦めてしまうポップの妙な潔さと、ポップを生かそうとなりふり構わないハドラーの台詞に痺れました。

 ポップがこれまでのことを思い出すシーンで、ポップの目がアップになり、その瞳に映り込むハドラーのシーンに繋げていく演出には、ゾクゾクしました。

 少し周囲をぼやかしたようなフォーカスが買った回想も、またよかったです。
 ここで、ポップが知らないはずのシーンも混じっているというのは野暮でしょう(笑)

 最初は、ハドラー親衛隊を連れて最後の挑戦のためにバーンパレスで待ち受けていたハドラーの姿。

 続いて、魔宮の門で一人、竜の騎士の親子と戦ったフェンブレン。
 本体姿で、片手を上げて初めて言葉を話して仲間達と別れを告げたブロック。

 ポップに倒された後、床に転がっているシグマ。
 マァムに倒された時の、倒れ、ヒビだらけになったアルビナス。
 ハドラーの死期を知り、涙を流しながらハドラーのために戦うと誓ったヒム。

 そして、超魔爆炎覇でダイと挑んだ時のハドラーの姿。その後ろには、今は亡き親衛騎団の幻が勢揃いしている。

 見応えのある回想シーン、いいですねえ。原作のこのシーンのコマと、ほぼ同じシーンを拾っています。まあ、原作の方がコマ数が多少多いのですが。

 ダイヤナインが完成してから炎の色が一気にカラフルになり、幻想的と言ってもいい雰囲気に。

 辛くてたまらないけれど、涙は流さずに炎の檻を見ているダイとレオナ。後ろ姿ですが、ヒュンケルも多分こちら派に見えます。

 ゴメちゃんとマァムは号泣派ですね。
 ポップがアバン先生も分かってくれると言う時に、マァムが首を横に振っているのが印象的でした。
 マァム自身は納得できず、諦めきれないのがよく分かるシーンです。 

 マァムのその叫びに、ポップが一瞬、反応らしきものを見せるのもいいですね。
 ポップが完全に諦めてしまっているからこそ、変な話ですが死に対して前向きなのに対し、諦めきれないハドラーの台詞のやりとりが素晴らしいです。

 ハドラーが神に祈るシーン、明るい色彩の中、光の粒が下から上へと昇るような描写が美しかったです。
 ハドラーの神への祈りは、原作では全て心の中で祈っていましたが、アニメでは最後の神への呼びかけだけ、現実の叫びに改変されていました。

 キルバーンとピロロがワイングラスを片手に水晶玉を見物するシーン、色合いがほぼ通常になっていたのでグラスの色が透明だと判明。が、わずかに下から上に立ち上る泡が見えるので、もしかしたらこれはシャンパンだったんでしょうか?

 原作にはなかったバーン様の見学風景が、ワンカット差し挟まれているのに感心しました。バーン様、無言でも存在感が抜群にあります。

 ダイの嘆きのシーンが追加されたのは、めっちゃ嬉しいです! 原作ではナレーションが入るせいか、マァム以外のキャラの嘆きは控え目なのですが、第三者の言葉に頼らない分、各自の嘆きで深刻さを現しているのがいいですね。ダイの叫びは、ポップがメガンテで散った時のことを彷彿とさせてくれました。

 今回、本当に仲間達が「ポップ」以外の台詞がほぼないのですが、それでも気にならないぐらい呼び方に切迫感や情感が感じられます。

 ゴールドフェザーが飛んでくるシーン、かっこよかったです。
 嘆くマァムと、驚く仲間達の描写もいいですね。原作ではポップの無事に驚いているマァムが、アニメでは驚くと同時に喜びに感極まったようにうれし泣きするシーンがジーンとしました。

 泣いているマァムが、めっちゃ可愛い……っ!
 でも、ポップってこーゆー肝心な時には、いつもいつもマァムを見ていないんだなぁと、残念さを感じてしまいましたが(笑) 

 原作では、魔法陣の中で目覚めたポップは左右をキョロキョロ見回していますが、アニメでは仰向けの姿勢のままでも魔法陣の中に居ると分かっているような印象ですね。

 アバン出現前に、青一色の画面になったのが目を惹きました。
 パソコンでのブルースクリーンを思い出して一瞬ギョッとしましたが、雲すら見えない、深い青いの色はアバン先生に似合っていると思います。

 アバン先生の再登場シーン、顔と足が見切れて、胴体部分しか見せないシーンからの出現には驚きました。
 原作では小さな姿で登場してから、ばーんと見開きで見せていましたが、アニメではどうやるのかなーと思っていましたが、部分を隠しつつアップ作戦でくるとは。

 ダイ達の驚きのシーン、画面をわずかに色をくすませているのが、渋い感じです。
 台詞の改変は、マァムが一番違っていますね。原作では「そ、そんな……っ」と言っていたのに、ずいぶんと増えています。

 キルバーンがグラスを落とすシーン、原作では足元で砕けるところだけでしたが、アニメではキルバーンの手の指がピンと広がってグラスがこぼれ落ちるシーンを追加しています。

 普通、グラスを落とすのなら手の力が緩んで滑り落ちそうなものですが、キルバーンの正体が人形だという事実から察するに、制御を失った場合は指の位置が標準の位置に戻ってしまうので、結果的にグラスを落としたのかなと推察。

 アバン先生がゆっくりと近づいてくる際、時折ぼやけて見えるのはポップ視点か、それとも瀕死のハドラー視点か気になるところ。

 ポップとハドラーから、マァム、ヒュンケル、レオナとダイへとめまぐるしい勢いで近寄っていく視線が、スピード感があってかっこよかったです。
 緩やかなアバンの足取りとは裏腹に、彼らの衝撃が感じられます。

 ナレーションに頼らず、ゆっくりと間をとっての彼らの衝撃の描写にホッとしました。
 ハドラーの台詞に改変発見。

原作ハドラー「……ほ、本当に貴様なのか……?」

 言いたいことは分かりますが、原作ハドラーさん、混乱中(笑) アニメの聞き方の方が、スッキリして聞こえます。

 ハドラーがアバン先生を貫くと見せかけ、キルバーンを貫くシーンのカッコいいこと!

 驚くポップの表情が、いい狂言回しになっています。
 原作ではハドラーが台詞を言ってからキルバーンが姿を現しますが、アニメでは逆になっていますね。
 「死神ぃ!」と凄むシーンの台詞、実にいいです!

 ヒビの入った拳を突き出すハドラー、痺れますね。原作とほぼ同じポースと構図ですが、拳に思いっきりバースをつけて大きく見せることで、迫力が段違いです♪♪♪

 しかし、キルバーンの流血はしっかりと見せてるんですね。倒れた背中越しに血が広がっていました。原作では、このシーンほぼ血は流れていないのに(笑) 血じゃなくて、溶岩だからいいってことでしょうか?

 ポップの台詞が、微妙に改変されています。

ポップ(キ、キルバーンの野郎が狙ってやがったのか……)

 原作ではモノローグでしたが、アニメでは台詞になっています。

 ハドラーがアバンへ、遺言じみた言葉を残すシーンは想像以上に良かったです! 原作ではハドラーの突然の死に、アバンが動揺している雰囲気がありましたが、アニメでは穏やかに彼を看取る感が強いですね。

 また、会話の最中にクレジットが流れ出したのにもびっくり。え、今日、最終回だっけと、動揺しました(笑)

 ハドラーがアバンの弟子達を褒める際、ダイをしっかりを見て微笑んでいる改変は感涙ものでした。

 ハドラーの遺言に、アバン先生が頷くシーン。
 真顔で、目を一度瞬きして頷くアバン先生の顔に、ほんのわずかな微笑が浮かぶ演出の細やかさ!
 ハドラーの勝ち誇った笑みと相まって、敵同士ながら通じ合った感が半端ないです。
 
 ハドラーが消滅してしまった後の、ダイの寂しそうな表情! ヒュンケルだけは平常心を保とうとしていましたが、彼もきっと内心は複雑な思いがあったに違いないと思います。っていうか、そうであって欲しい〜♪

 ハドラーの最後も瞬きの表現で終わりましたが、後半パートのスタートがポップの瞬きから始まったことを思うと、いい対照でした。
 アバンに、ダイに、ポップにと、それぞれ最後の言葉を残し、散っていったハドラーの死に、涙がこぼれそうになりました。
 まるで最終回を見るかのような、感動的なハドラーの最後……!

 エンディングなしのスタッフロールも相まって、本気で最終回かと思いましたよ!
 ……でも、これから先も時間節約のため、エンディングなしのスタッフロール作戦かとちょっと不安にもなりましたが(笑)

 原作では、アバンはハドラーの死後、穏やかな表情で見送っているのですが、アニメでは死の直後は表情を見透かせない真っ白眼鏡の間を置いて、立ち上がって空を見上げる時に穏やかな表情を浮かべているのが印象的でした。
 最後の最後に、空を見上げて終わらせるラストも余韻があっていいですね。
 でも、エンディングなしだとちょっと寂しいです〜。

 次週予告では、いきなりアバン先生とポップの漫才コンビじみたギャグシーンが目に入って、爆笑しちゃったんですけど(笑)
 それに、周囲にプレゼント枠が入ると、どうしても予告がギャグっぽく見える気がします。

 チウ達の姿がちょっと映ったのに、ホッとしました。彼らの出番、削られなくてよかった〜っ。クロコダインやノヴァも頑張っているんですね。
 ああ、フローラ様に早くアバン先生のことを教えてあげたいっ。

 泣きながら再会を喜ぶダイやポップが、可愛かったです♪ しかし、最後の最後でポップを軽々と肩に担ぎ上げて階段を駆け上るマァムのカットを見ちゃいました。
 え、えーと……マァム、立ち直りが早いですね(笑)

 



《おまけ・不正アクセス後のベストセレクション》

 ところで、ダイ大アニメが再開して初めて気がつきましたが、自動録画しているはずの話が録画されていませんでした。
 3月12日放送していたはずの話が、録画されていませんでしたよっ!

 3月19日放送分からはダイの大冒険 再 ベストセレクションとして、きちんと3話並んでいるのですが、4月9日放映していたはずのベストセレクション『最後の一太刀』は録画していませんでした。

 えええー、なんで? なしてこうなったのやら。
 ま、まぁ、時間をやりくりして基本的にリアルタイムで見ていますし、前に本放送の際に録画しているのと被っているから別になくても構わないと言えば構わないんですが、なぜにこうなったのかは不思議でなりません。

 基本的に時間で録画しているのでは無く、番組を認識して録画するシステムなのか、お休みや特番などは無視して正月などはちゃんと番組を弾いていたというのに……うちのテレビの録画システムときたら、再放送はダイ大アニメと認めない認識でいるんでしょうか? 
 これも不正アクセスの罠?(笑)

 とりあえず、記念としてベストセレクションを書いておきます。

3月12日 第31話『父と子の戦い』
3月19日 第05話『アバンのしるし』
3月26日 第43話『最強剣激突』
4月02日 第58話『意外な救世主』
4月09日 第72話『最後の一太刀』

 これらの再放送は3月12日から4月2日までは、次週予告に通常の予告を使わず、ダイの大冒険そのものを宣伝するCM仕様でした。また、番組冒頭に『本日はダイの大冒険ベストセレクションをお送りします』の字幕を流し、本放送じゃないことをアピールしていました。
 4月9日放送分は、次回73話の予告を流していました。

 また、3月19から4月2日までは、ハドラーが活躍を見せる回をセレクトしています(笑) 本当に、誰が主役なのやら。

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