『正義の後継者』(2021.6.18)

  

《粗筋》
 
 耳に心地よい音を立てて、噴水の竜の石像より水が流れ落ちる。その音が、ホワイトガーデンの静けさを際立たせていた。
 震える声で、魔界の戦闘機械がアバンとキルバーンを違う世界へ引っ張り込んだことを問いかけたのは、ポップだった。

 ミストバーンは淡々と、ジャッジを使った決闘には誰も邪魔できないこと、敗者は首をはねられること、決闘後、ジャッジは自爆し、勝者のみが生還できることなどを説明する。

 どうすればいい、と、切迫した様子で問いかけるダイ。焦りと怒りの感じられるダイの態度に、ミストバーンは一瞬、息をのまれように沈黙し――それから、笑い出した。

 知りたければ、私に聞く以外ないと、挑発的に語るミストバーン。それを聞いたダイは、ミストバーンを倒してアバン救出の方法を聞き出すと宣言した。
 その成り行きを、じっと見つめるレオナ。
 
 背中の剣に手を掛け、身がまえるダイ。
 だが、それを制止したのはレオナだった。ハッとして、ダイは動きを止める。
 
 レオナは、ミストバーンがその方法を知らないことを指摘し、ジャッジからアバンを救う方法が皆無だと冷静に分析する。
 そんなレオナを、驚いたように見つめるポップとマァム。
 ダイはレオナの言葉を聞いて、しょんぼりとしてしまう。

 レオナは拳を握りしめ、ミストバーンがバーンのために時間稼ぎしようとしているだけだと看破する。
 敵の思うツボにはまらず、アバンを信じて自分達も進むようにと熱弁するレオナだが、ポップ達の表情は暗く、俯いたまま動かない。

マァム「レオナ……冷たいわ……」

 背を向けたまま、ボソッと呟かれるその一言に、戸惑った表情を見せるレオナ。
 噴水の水音が、やけに大きく聞こえる。

 途切れがちに、レオナの言い分が正しいのは分かると言いながらも、ポップは全く納得してなどいない。
 辛そうな表情で、そんなことは私達には出来ないと叫ぶマァムの声音には、レオナへの非難が感じ取れる。
 悲しそうな表情で、マァムの名を呟くレオナ。

 俯き、考え込んでいたダイは、どうせミストバーンも倒さなければならない相手だと考え、再び背中の剣に手を掛ける。
 それを見て、驚きに思わず身を乗り出すレオナ。

 笑いながら、それでこそアバンの使徒達だと挑発的に言ってのけるミストバーンは、手を前にかざして身がまえる。
 それに応じて、ダイもまた、手を前に突き出しながら身がまえた。

 レオナが制止の声をかけるも、両者の動きは止まらない。
 ミストバーンが手の爪を伸ばし、剣状にする。ダイの闘志に応え、彼の剣の封印が音を立てて解ける。
 レオナは再びダイの名を呼び、止めようとする。

 が、戦いの決意を固めたダイは振り向きさえしなかった。
 その場から飛び降り、踊り場から一気にミストバーンに向かって斬りかかる。
 吠え、気合いを入れて斬りかかるダイを、待ち受けるように身がまえるミストバーン。

 が、両者が激突する寸前に、二人の間に光り輝く物が割って入った。ダイの後方から矢のように投げられた『それ』は、床に突き刺さって眩く光り輝く。
 爆発的なその光に、ダイも、ミストバーンも驚き、攻撃の手を止めた。

 光の爆発の後に見えたのは、床石に突き立った一本の羽だった。一旦、床に降り立ったダイは、銀色の羽を見て目を見張る。
 踊り場に残ったポップとマァムも、食い入るようにその羽を見つめていた。
 それは、紛れもなくアバンの持っていたシルバーフェザーだった。

 驚き、ダイは何かに気づいたように後ろを振り向く。
 そこには、手に数本の羽を持ち、たった今、羽を投げつけたポーズのまま佇むレオナの姿があった。

 ダイだけではなく、ポップもマァムも驚いて彼女を見上げる。レオナがなぜ、先生のフェザーを……と、疑問を口にするポップ。
 レオナは、毅然とした表情で驚く一同を見下ろしていた――。






 その頃、決闘空間では、アバンが苦痛の表情を浮かべているところだった。その頬には、出来たての傷も見える。
 ゆっくりと近づきながら、キルバーンは自分は呪法だけでなく剣の腕も立つと主張し、蹲るアバンの前に立つ。

 止めを刺そうと、剣を振り上げるキルバーン。振り落とされる死神の剣――が、それを、弧を描く光の刃が振り払った。
 蹲っていたアバンは、得意のアバンストラッシュの姿勢で死神の必殺の一撃を払いのけていた。

 死神の身体から、赤い液体……血液代わりの魔界のマグマが飛び散る。後ろへと飛びずさり、距離を取るキルバーン。
 本家本元のアバンストラッシュに、さすがのキルバーンも警戒の色を隠せない。

 ジャッジが機械的な声で、アバンの攻撃がキルバーンにダメージを与えたことを、公平にアナウンスする。ジャッジを中央に挟んで、お互いに立ち上がり、対峙するアバンとキルバーン。

 かすっただけでこれほどの威力があることに驚きを感じるキルバーンは、ハッとする。
 最初に、アバンがキルバーンの仮面を叩ききった時――あの時は、もしやと思い返すキルバーン。

 それを、肯定するアバン。
 あの時、本気で戦えばキルバーンに深手を負わせることも可能だったが、敢えてそれを抑えたのは、一つはあの時、あそこで力尽きるわけにはいかなかったから。
 そして、もう一つ、自分に怒りの矛先を向けたかったから。

 アバンの真意を知る度に、キルバーンの目つきに剣呑さが増す。
 しかし、アバンは落ち着き払った口調で、このまま未来永劫、あなたと戦い続けても構わないとまで言い切った。
 彼がそう語った時、遠くの空に緑色の流れ星が流れる。

 その間に、ダイ達がバーンを倒してくれればいいと望むアバン。彼らを導く自分の後継者にも、その意志はすでに伝えていると言う。

キルバーン「後継者、だと……?」

 アバンは、にこりと微笑み、目を閉じて思う。
 皆をまとめ、正義のパーティーの真のチームワークを提唱できるのは、レオナただ一人……そう思いながら目を開くアバン。







 時を同じくして、レオナもまた、閉じた目をゆっくりと見開いていた。
 その目にはアバンと同じく、強い光が宿っていた。
 ぶわっと吹いた風が、レオナのマントと髪の毛を大きく揺らす。
 毅然とした表情を見せるレオナを、ダイは戸惑いの表情で見上げていた。

 レオナは感情を抑え、諭すように仲間達に話しかける。
 先生はこうなることを予期して、自分に羽を託してくれたのだと。羽を自分の顔の前にかざし、沈痛ささえ感じる表情でレオナは言う。
 アバンの使徒を、勝利へ導くために、と――。
 その羽を高く掲げ、レオナは宣言する。

レオナ「地上の正義と、偉大なる勇者アバンの名の下に、今こそ王女レオナが命じます。『全ての戦いを、勇者のためにせよ……!』」

 燦然と輝く白い羽を掲げ、そう宣言するレオナの表情には人を導く者に相応しい強さに満ちていた。






『全ての戦いを、勇者のためにせよ……!』

 アバンの声が、その言葉を唱える。
 場面は暗転し、回想シーンへと繋がる。つい先程、アバンとレオナが別行動を取ったばかりの時の回想。
 
 アバンの教えに戸惑い、意味を問うレオナに、アバンはこれからの戦いはいかに勇者を無傷で大魔王の前に辿り着かせるかにかかっているかだと教える。
 大魔王に対抗するには、勇者の一太刀が最大戦力だと考えるアバン。
 それを聞き、表情を引き締めてレオナは頷いた。

 アバンはかつて自分が魔王ハドラーと戦った時、仲間が身を挺し、自分を進ませてくれた時の話をする。懐かしむように、遠い目をするアバン。

ロカ「構うなッ! 先に行けっ!!」

 炎の照り返す場所。ゴーレムに囲まれ、傷ついて血を流しながらもそう叫ぶ若き日のロカ。どう見ても不利すぎる状況なのに、彼の表情には微塵の恐れもなかった。

レイラ「アバン様っ! どうか、ご武運をっ!!」

 床にへたり込むように座りながらも、杖の先から魔法を放つ若き日のレイラ。彼女の顔にも恐れはない。

マトリフ「とっとと魔王のところへ行きやがれ!」

 両手から炎を撃ちだし、肩越しに振り返るマトリフには、いかにも彼らしい皮肉な笑みが浮かんでいた。

 過去から現在へ思いを戻したアバンは、自分の弟子達が心優しすぎて非情な決断はできないかもしれないと危惧し、レオナにならそれができると見立てた。

 戸惑いながら、その言葉を受け止めようとするレオナ。
 アバンはレオナの信念と、人の上に立つ者としての器量があると判断した。時に憎まれ役を買ってでも、多くの人を導く勇気がある人だ、と――。
 目を潤ませて、その台詞に聞き入るレオナ。

 次に強敵が来た場合は自分が足止めするから、レオナがそのフェザーを持ってダイ達を導いて欲しいと頼むアバン。
 レオナは一瞬、気丈な目でフェザーを見下ろす。

 話を全て聞き終わってから、レオナは良かったと言いながらも、心配そうに目を伏せて、またアバンがダイ君達のために命を捨てようとしているのか、案じていたことを打ち明ける。

 アバンはおどけた表情で頭を掻き、とんでもないとそれを否定した。

アバン「いや〜、とんでもない。あなたにだけ聞いて欲しい話があったので、こうしたまでですよ。私だって、二度も死ぬのはごめんですよ」

 指を二本、チョキチョキとおどけて動かしながら、アバンは笑顔でそう言い切った。
 フェザーも持ち数の半分だと語り、笑うアバンに緊張がほぐれたのか、レオナも笑顔を見せる。

 心配させたことを謝ってから、アバンは死の危険は当然あることを説明する。しかし、アバンは拳を握りしめ、無駄死にはしないと自分に言い聞かせるように呟いた。

レオナ「同じ、命を懸けるのなら、勇者のために……!」

 明るいその声音に、アバンがハッとして顔を上げる。心得たように、レオナがにっこりと笑った。

レオナ「ですよね!」

 無邪気と言える屈託のない笑顔に、アバンはキョトンとした後で微笑み、頷いた。

アバン「さあ、急ぎましょう! ついでに呪法のトラップの壊し方を教えてあげちゃいましょう!」

 駆け出すアバンの背中を追って、レオナも走り出した。







 回想から現実に戻るレオナ。
 手にした羽を見つめながら、アバンがこれを武器としてレオナに渡したわけではないと確信する。正義の使徒達を導く、シンボルとしてくれたのだと理解したのだ。

 アバンが今も戦っていると言い、自分達も戦うように呼びかけるレオナの手の中で、フェザーが光輝いた。
 それを見上げながら、ダイは先生の思いをようやく理解する。

 マァムも両親やマトリフも勇者のために戦ったと知り、さっきまでの自分を恥じるような表情を見せる。
 ポップも勇者のパーティーを名乗るなら、師匠達のやれたことぐらいやれなければならないという自責の念を感じている様子だ。

 ミストバーンに完全に背を向け、レオナに注意を取られているダイ達に対して、ミストバーンはレオナの叫びを無駄と決めつけ、攻撃の構えを取るミストバーンの指さす先は、ピタリとダイへ向けられていた。

 指先をいきなり伸ばし、ダイへ奇襲を掛けるミストバーン。
 だが、その切っ先がダイに届くのを阻んだのは、ポップの持つブラックロッドだった。
 伸びたロッドの先端がミストバーンの爪を見事に押さえ、火花を散らす。
 その音に驚いたように、身を翻すダイ。

 踊り場にいるポップは、歯を食いしばりながら必死にロッドを握りしめていた。
 それを見て、ミストバーンがわずかに驚きを見せる。
 ポップに呼びかけながら、階段を駆け下りるレオナ。

ポップ「姫さんッ、こいつはおれが食い止める!」

 その言葉を聞いて、ギョッとしたようにポップに呼びかけるダイ。
 が、ポップは相手が強敵だと分かっていても、やる気十分だ。先生や師匠の真似事は無理でも、ヒュンケルのやれてたことぐらいやらないと格好がつかないと言うポップ。
 そんなポップを、ダイはじっと見つめている。

 その時、ブラックロッドを静かに握りしめる手があった。
 きょとんとそっちを見たポップの顎に、アッパーカットの形で手が当てられる。全く痛くなさそうなパンチを当てながらポップに寄り添ったのは、マァムだった。

マァム「コラ! 見くびらないでよ、ポップ!」

 当てた拳をすぐにどかし、マァムはミストバーンの方を見やりながら言う。

マァム「私……ヒュンケルとの比較なんかであなたを好きになったりしないからね!」

 驚くポップに、マァムはキッパリとした口調で宣言した。

マァム「真似なんかしないで、自分らしいところを見せなさい!」

 そう言いながら、マァムはブラックロッドを握る手に力を込める。彼女の腕力で爪を振り回されたのか、ミストバーンもたじろいだ。
 それを見ながら、ポップはミストバーンが正面からの呪文を跳ね返すことを思い出し、マァムの力でサポートしてくれれば有利になると改めて思い返す。
 
 が、素直にそう言わず、怒ったように人のメンツをつぶしてくれる女だと憎まれ口を叩くポップ。
 しかし、そんなことを言われたのに、マァムは嬉しそうにニコッと笑った。まるで、ポップの本音を見透かしたように――。

 そんなマァムのすぐ隣を、レオナが髪を靡かせながら駆け降りる。彼女と一緒に、ゴメちゃんも真剣な表情で続いた。
 ポップは自分とマァムでこの場を引き受けるから、姫さんとゴメはダイと一緒に先に急ぐようにと指示する。

 そんな二人を、不安げに見上げるダイ。
 ダイの肩に手を置き、真正面からダイに呼びかけるレオナ。だが、ダイは意識は目の前のレオナよりも、ポップ達に注がれていた。
 二人が自分を先に進ませるためにそうしてくれたことを理解したダイは、決意を固める。

 レオナの手を上から握りしめ、ダイはレオナとゴメちゃんに元気良く話しかけた。

ダイ「よし! 行こう、レオナ、ゴメちゃん! バーンのもとへ!」

 一瞬、驚きを見せた後、レオナは嬉しそうに微笑んだ。ゴメちゃんも、喜び一杯の顔で賛成する。
 ダイとレオナはそろって、階段を駆け上る。もちろん、ゴメちゃんも一緒だ。

 駆け上るダイとレオナは、踊り場にいるポップとマァムとすれ違う。彼らは全員、お互いの顔を見なかった。それぞれの目的以外は見向きもしないとばかり、決然とした表情ですれ違う仲間達。

 が、ダイ達が通り過ぎたのを見て、ポップとマァムはわずかに彼らを目で追う。その口元には、満足そうな笑みが浮かんでいた。
 







 ミストバーンの爪を、二人で協力し合って防ぐポップとマァム。
 が、ミストバーンは今、戦おうとしている二人にではなく、上に向かうダイに向かって待てと声をかけた。
 名を呼ばれ、思わず振り返るダイ。

 ミストバーンが爪を戻したことで、ブラックロッドの先端が弾かれ、それを二人がかりで支えていたポップ達の身体が勢い余って泳ぐ。明らかな隙と言えるが、ミストバーンは伸ばした爪を指先に戻し、ダイに話しかける。

ミストバーン「いいのか? 目先の友情ごっこに浸ったばっかりに、大切な仲間が死んでしまうぞ」

 脅しつけるその言葉に、ダイは顔を強ばらせる。
 念を入れるように確認するミストバーンの目が、ギラリと光る。迷いがあるのか、即答できないダイ。

 と、地響きを立て、マァムが階段を飛び降りて床に着地する。それに、すぐポップも続いた。
 戦う意志のままに、ミストバーンと対峙するポップ達。

 ポップはダイを振り返り、迷うダイを励まし、自分達を信用できないのかと言う。
 マァムはレオナに呼びかけ、申し訳なさそうに言い過ぎたことを謝罪する。
 戸惑うレオナに、マァムは笑顔で「ダイの道標になってあげて」と頼む。

 それを聞いて、心から嬉しそうな笑顔を浮かべるレオナ。小さく頷いてから表情を引き締め、ダイに飛びかける。

ダイ「あ……ああ……」

 一応は頷くものの、ダイは未練があるように下を気にしつつ、それでもレオナに導かれるまま階段を登り出す。
 それを見送るミストバーンは、その足は必ず止まると自信満々だ。仲間の断末魔の叫びを聞けば、先にすすめなどしない、と――。

 が、そんなミストバーンに対し、ポップは暢気なものだ。

ポップ「へっへへー、さぁーて、未来の恋人タッグのつぇえところを見せてやろうぜー、なーんちゃってなー」

 ポップは顔を赤く染め、だらしない笑みを浮かべつつマァムを振り返り、投げキッスを送る。
 マァムは怒った表情で彼を睨んでいたものの、投げキスで頬を染め、恥ずかしそうに目をそらして、ポップを叱りつける。
 
 階段を昇りながら後ろを軽く見たレオナは、ポップとマァムの間のわだかまりが消えたことに安堵し、あれなら大丈夫そうだと楽観的だった。が、ダイはいかにも不安そうに後ろを気にしていた。
 そんなダイの心を読んだかのように、ダイに寄り添って鳴くゴメちゃん。小さな友達の励ましに、ダイはなんとか笑顔を取り繕う。

 が、すぐにダイは不安そうに俯いてしまう。
 確かに並の相手なら安心だが、相手は最後の大幹部ミストバーン――。

 先に進むダイ達とは対照的に、下にいるミストバーンとポップ達はまだ動かなかった。

ポップ「おうおう、ダイを追っかけ酔うったって、そうはいかねえぞっ!」

 虚勢交じりにミストバーンにそう怒鳴りながら、ポップは隣にいるマァムにだけ、こっそりと囁く。
 どう戦うか――その問いに、マァムはポップが陽動、自分がトドメと簡潔に答える。
 それを聞いて、思わずずっこけるポップ。

 ショックを受けつつも、おちゃらけて信用されてないと嘆いて見せるポップに、マァムは真顔にそうじゃないと否定する。
 まさかメドローアまでは跳ね返せないだろうが、シャハルの鏡の例もあるし、念には念を入れると言うマァム。

 閃華裂光拳の方が、確実にダメージを与えられると考えている。
 以前、ミストバーンの闇の衣の下に顔があったことから、人間か魔族かは分からないが実体のある生命体だと推理したのだ。

 ポップの呪文で動きを止め、ミストバーンの衣を裂き、露出した肉体に閃華裂光拳を決めると作戦立てながら手袋を外すマァム。
 彼女の作戦を肯定し、シンプルだが一番効果的だと認めたポップは、それでいこうと決意を固める。

 そんな二人を、鼻で笑うミストバーン。
 身の程知らずと嘲笑い、ミストバーンはダイを追おうと思えば簡単だが、一度、このホワイトガーデンを貴様達の墓場と決めた以上、動くの無粋だと言ってのけた。

 ダイに戻ってきてもらうと、決定事項のように告げるミストバーン。
 ポップ達二人の最期を餌にすると、まるで釣りでもするかのように不敵に言い放つミストバーン、ポップもマァムも悔しそうに息をのむ。
 自らを鼓舞するように、ミストバーンに言い返すポップ達だが、ミストバーンはそんな彼らの強がりをも見透かしていた。

 ロン・ベルク級の相手ならともかく、おまえ達程度では足止めにもならないと言い切るミストバーン。
 さらに、ミストバーンは大胆にも予言をした。
 自分はここから一歩も動かずにポップ達を倒し、ダイを引き返させる、と。

 ミストバーンのふざけた予言に、怒りを露わにしたポップは低く身がまえる。それにあわせるように、マァムもまた姿勢を低くし、攻撃態勢を整えていた。
 同時に地面を蹴り、駆け出すポップ達。

 自分に向かってくる二人に向かって、ミストバーンはスッと両手を伸ばして闘魔傀儡掌の構えを取る。彼の身体から、暗黒闘気が漏れ出した。
 掌から紫色の糸が一斉に放出され、横殴りの雨のようにポップ達を襲う。

 マァムの手を掴んだポップは、ブラックロッドの先端を床に打ちつける。
 ポップの胸元に向かって無数の糸が一斉に飛びかかるが、それが触れる前にポップの姿は消えた。目標を失った糸は奥にあった噴水へと乱舞する。

 一瞬でブラックロッドの絵を伸ばしたポップは、マァムと一緒に空中高くに飛び上がっていた。
 驚いて、それを見上げるミストバーン。

 ポップはブラックロッドを手放した。

ポップ「てめえの手品もそろそろ見慣れてきたぜ! タネが分かってりゃ慌てることもねえ!」
 
 かざした手の上にイオの球を生み出したポップは、全身のバネを使ってそれをミストバーンへと叩きつけた。
 が、ミストバーンはそれを無造作に払いのけた。飛ばされたイオは壁に当たって爆発し、白煙が上がる。

 空中に浮かんだままのポップは、イオを連発し始めた。
 左右の手から続け様に放たれる魔法は、ミストバーンへと降り注ぐ。が、ミストバーンは全く慌てた様子もない。
 
 一歩も動くことなく、自分から少しでもそれた魔法には見向きもせず、自分に届きそうな魔法のみ、手で払いのける。
 このような呪文は、増幅して跳ね返すまでもないと興味すら持たない。

 魔法を連発しながら、ポップは挑発的に叫ぶ。
 おまえの手を防ぐために、呪文のランクを落としていると言ったポップの言葉に、わずかに注意を払うミストバーン。

 その時、爆炎に紛れるようにマァムが床を強く蹴り、一気にミストバーンに襲いかかった。
 今度こそ驚きを見せたミストバーンに、マァムは気迫を込めて拳を打ち込む。

 ミストバーンの頬を、わずかに掠める拳。彼の着ている衣が、一部、やぶけれ散った。それと同時に暗黒闘気が漏れ出し、衣の中に人の顔が出現する。
 敵が実体化したのを見て、ポップが叫ぶ。

ポップ「今だっ、マァムーーっ!」

 地面を強く踏み込み、マァムが輝く拳を握りしめ、閃華裂光拳を打ち込んだ。マァムの攻撃は、見事にミストバーンの顔面を捕らえた。






 凄まじい光に、後ろを振り返るレオナ。
 ダイも、足を止めてマァムの活躍を見ていた。やったと、一瞬喜ぶダイ。が、光が消えた時、ダイの表情に驚きが浮かぶ。







 驚きに目を見張るのは、マァムもだった。
 相手に全くダメージを与えられなかったことに、驚愕するマァム。確かに拳が当たったのに、ミストバーンは全くダメージを受けた様子もない。
 フッと笑った直後、ミストバーンの爪が一気に伸びてマァムを襲う。次の瞬間、マァムはミストバーンの爪に全身を絡め取られ、悲鳴を上げていた。

 マァムの悲鳴に気を取られたポップの足にも、爪が触手のように絡みつき、首にも巻き付く。
 ポップが驚いた時はもう遅く、勢いよく真下に引きずり下ろされた。頭から床にたたき落とされたポップを見て、ダイが切迫した声で二人の名を呼ぶ。

 ミストバーンは爪を縮め、ポップを自分の手元へと引き寄せ、ダイに見せつけるようにマァム共々に掲げてみせる。
 苦痛に呻く、ポップとマァム。

 痛みに耐えながら、マァムは生身なのに閃華裂光拳が効かなかったことに疑問を感じていた。
 
 胸元を締め付ける爪に力がこもり、一際大きな悲鳴を上げるポップ。マァムの悲鳴も、それに重なる。
 痛みに耐えきれずに声を上げ続ける二人に対し、ミストバーンは確かに笑っていた。

 ポップ(身体が……千切れそうだっ)

 悲痛にポップを呼ぶダイ。彼らの足は、すでに完全に止まっていた。
 締め付けられる苦痛の中、ポップは自分達に構わずバーンの所に行くよう、途切れ途切れに訴える。

 が、それを聞いたダイは、逆に階段を駆け下りてきた。
 それを見て、ポップは今更のように悟る。

ポップ(しまった……! この野郎、わざと声を出せる程度に締め付けてやがる! ダイに、おれ達の声を聞かせるためにッ!)

 真相に気づき、必死に背後のミストバーンを睨むポップだが、文字通り手も足も出ない。ほくそ笑むミストバーン。
 締め付けられる痛みに、マァムは悲鳴を上げっぱなしだ。先程よりも弱々しく聞こえる悲鳴に、ダイは必死になって駆け戻る。

 だが、ダイが戻ってきた時点で自分達は殺されると、ポップは分析していた。助けに来ても無駄足になると、ポップには分かっていた。
 予言的中だっただろうと、自慢げに呟くミストバーン。
 苦痛の中、ポップは必死になって叫ぶ。

ポップ「来るなぁーっ、本当に来ないでくれぇえっ!」

 ポップの渾身の叫びは、もうダイの耳に届かない。駆け戻ることしか考えていないダイには、状況が見えていないのだ。

 愉快そうに笑い出したミストバーンは、口を大きく開けて高笑いする。
 だが、その時、ミストバーンの背後から凄まじい攻撃が発射された。地響きとともに地面を割って進んでくる攻撃に、ミストバーンは寸前で気がついて振り返る。
 だが、そのミストバーンを飲み込む赤い攻撃派。

 空中に投げ出されたポップとマァムを、人影らしき者が攫うように連れ去る。地面を割る攻撃はホワイトガーデンを両断し、消えた。
 深い地割れができたその場には、一人の男と蹲る二人の人影が残る。

 苦しそうに顔を上げたポップは、マァムと並んで地割れの横に座り込んでいた。
 意識がもうろうとしているマァムは、魔槍を身につけた男を見て、苦痛の中であっても微笑みを浮かべた。

マァム(ヒュンケル……ッ)

 ポップも苦笑じみた笑いを浮かべながら、生きててくれたのかと安堵しかけるが――不審げに目をこらし、違いに気がつく。

ポップ(違う……! こいつは……!)

 目のぼやけが収まるにつれ、そこにいるのがヒュンケルではなく、魔族の肌を持つ青年……ラーハルトだとポップは気がついた。



《感想》

 レオナとマァムの可愛さ、大爆発回です! 女の子達が活躍する回、いいですねえ〜♪

 ミストバーンのジャッジの説明をする際、ダイ、ポップ、マァムの三人を横顔で映し出すシーンがありましたが、これはアニメの改変ですね。
 マァムは驚き、ポップは怒っていましたが、ダイの顔に影がかかっているのが印象的でした。
 ダイにしては珍しく、思い詰めている印象です。

 また、原作ではマァムが「……首を……!?」と呟いていましたが、このセリフも割と冷静めな表情もカットされています。

 レオナも原作では、気を引き締めた表情で冷静に状況を見ている印象でしたが、アニメでは表情は基本的に同じでも、寄せられた眉や冷や汗などからやや動揺が感じられます。

 ダイがミストバーンに問いかけるシーンで、影となった目元から、目をはっきりと開けて怒りの表情を見せる演出、アニメの改変ですがいいですねえ。

 ダイがミストバーンを問い詰めるシーンで、レオナも含めて全員を階段の上からの俯瞰図で見下ろす構図に感心しました♪ 原作にはない構図ですが、位置関係が思いっきり離れているのが実感できます。しかしこうやって見ると、バーンパレスって本当に広いですね。

 でも、ポップの台詞が飛ばされていたのは残念!
 原作ではダイの「おまえを倒して〜」のセリフの前に、ポップが「……んなら話は早いぜっ!」と怒鳴っています。
 ダイとポップは二人そろって、同じ結論に達していたんだなと分かって好きなシーンだったのですが。

ミストバーンに攻撃しようとしていたダイが、左手を開いた形で前に突き出しているのは、迫力があっていい改変です♪
 原作ではこのシーンでは左手はただ握り仕留めているだけですが、歌舞伎っぽいこのポーズって相手の攻撃の狙いを散らす役割がある感じで、好きです。

 前に武芸系の漫画で、片手を盾のように前に突き出すことで敵に攻撃させにくくする技術として描かれていたのを見たことがあります。

 レオナがアバンを助ける方法がないと説明する際、ポップとマァムはレオナを振り返っていますが、ダイは目だけで軽く後ろを伺っているものの、前をしっかりと向いていて、ミストバーンに剣を構えた姿勢は崩していないのがすごいですね。さすがは竜の騎士。

 でも、レオナの意見が正しいと知って、しょんぼりした目になるシーンは可愛かったです。次のシーンでは剣から手を離しているので、めっちゃショックだったようですね。

 レオナが演説中に拳を握るシーン、可愛いい格好いい♪
 原作でも拳を握っていますが、アニメではセリフに合わせて握り込む動作をとっているので、より威力が際立って見えます。

 レオナの説得シーン、彼女の表情だけでなく、全員の姿を遠景から見る構図を角度を変えつつ映し出す演出がいい感じ。ちらっと見えたポップが、目元に薄い影が入っていました。
 マァムに非難された時、原作ではここで見ることの出来なかったレオナの戸惑い顔に感動!

 次のセリフの前に、噴水をアップで映して水音を流すことで静けさと間の演出をしたのもいい感じ。
 次のカットは噴水の水越しの角度から上を見上げる角度にするなど、動きのない説得シーンを補うかのような構図変化の連続です。

 原作ではそれぞれ違う方向を向いているポップとマァムが、アニメでは向き合って見えるのがちょっと嬉しい感じです。
 納得できないとごねるポップとマァムの表情や口調、いいですね!

 原作では拗ねたポップの表情がちんぴらっぽかった(笑)ですが、アニメでは至って真面目で、口調も戸惑いが強い感じでした。逆に、マァムはレオナをはっきりと非難しているほど、強い語調になっていますね。

 マァムの台詞は大幅カットされて短くなっていますが、辛そうな表情から、目を閉じて叫ぶ表情変化がたまらなく好きです♪ 理屈を忘れて感情的になってしまった感じがして、ここの台詞省略は大正解だと思いました。

 原作では、マァムの非難を浴びてレオナが驚いたような戸惑いの表情を浮かべていますが、アニメではレオナはこのタイミングで悲しそうな表情を浮かべています。

 自分の意見が受け入れてもらえなかった悲しみ……とも捕らえられますが、マァムが「私達にはできない」と叫んでいることから、自分だけが仲間と思われていないと気づかされた悲しみ説も提唱したいところ。

 ダイが悩むシーンで、目が揺れるように微妙に動き、心が決まったところでキリッとするシーン、いいですね。原作ではここはダイの手しか描かれていなかったコマなので、もっと即断即決したのかと思っていました。

 ダイが踊り場から飛び降りるシーン、わずかに足を沈め、次の瞬間には信じられない飛距離と迫力でのジャンプ、実にかっこよかったです!
 ダイもトベルーラは使えるはずですが、こんなシーンだと自前のジャンプ力で戦っているように見えますね。

 原作では「だあああああ!」と叫んでいるダイが、アニメでは「うぉおおおお!」になっていますが、ダイだけでなく他のキャラも叫びが多少変化しているのはよくあるのであっまり珍しい改変じゃないですね。
 「うぉおお」はよく聞くタイプの叫びですし、むしろ原作ではなぜここで「だあああ」だったのかと、疑問に感じました(笑)

 攻撃を一旦中止したダイが、ストッと床に降りるシーン、いい感じです。原作ではいつの間にか床にいましたが、アニメはこういう細かな動きを実現できるのがいいですね。

 羽を投げつけたレオナのポーズが、めっちゃかっこよくて可愛い♪ 原作寄りも、下から見上げるようなバースがかかったポーズ、いいですねえ。
 原作ではサイドスローっぽい手でしたが、アニメではオーバースローで真下に投げつけたっぽく見えます。

 アバン先生とキルバーンの死闘も、いいですね♪
 しかし、キルバーンがアバンストラッシャをくらった時、原作ではバク転で避けたような動きをしているのですが、アニメでは普通に後ろに下がっています。

 どちらかというと、原作では普通の回避や吹っ飛ばされが、アニメではバク転などの回転を交えた派手な動きになることが多いので、これは珍しいパターンの改変ですね。

 アバン先生の落ち着いた語り、実にいい感じですがお気に入りだった台詞がカットされていたのが残念!

原作アバン「ダイやポップには余計な手出しをさせず、私にだけその怒りを向けるように!」

 ……アバン先生は知らないでしょうけど、ポップはこの時点で思いっきりキルバーンのヘイトを集めてたので、このヘイトコントロールはお見事です。
 流れ星が流れるシーンは、原作にはなかったけど綺麗なシーンでした〜。

 アバン先生がレオナに意志を託すシーン、閉じた目を開けるシーンを師弟で続け様にさせる演出はいいですね!

 レオナが勇者のために宣言するシーン、ぶわっとマントが舞い上がるシーンはすごく綺麗で良かったです! 耳飾りがキラッと光る演出も実に良かったですし。

 良かったのですが……こんなシリアスシーンで言うのもなんなんですが、言わせてくださいっ! 下からの風なのに、なぜにスカートは鉄壁!?(笑) ……原作では決めポーズ時にチラッと見えてるのに。

 アバン先生とレオナの回想シーン、レオナが頷くシーンがあったのが嬉しいです! 原作にはない改変ですね。
 些細なシーンですが、レオナは本当にダイを信じ、どんな時でも彼の味方であろうとしているのだなと思えるシーンです。

 過去を回想するアバン先生が、懐かしそうな表情を見せるのがいいですね。
 ロカの回想、格好がカール騎士団ではなくDQの戦士姿になっています。原作では何かに斬りかかっている図でしたが、アニメでは背後にゴーレムが二体ほど見えるのですが。一人でゴーレム二体以上と戦おうとは、やりますね。

 若き日のレイラさん、床に座り込みながら攻撃はほぼ原作構図のままですが……タイツのやぶけがありませんでした。くっ、娘以上にお色気シーンが多いと外伝で明かされたことだし、密かに期待していたというのに……っ。

 マトリフ師匠の回想、原作では正面向きに魔法を放つシーンでしたが、アニメではマトリフを背中側から見た構図になっていました。ロカ、レイラ、マトリフの全員が、アバンから見た構図になっていると気がついた時は感激しましたよっ。

 しかし、……ブロキーナ老師はっ!? 老師はどこにっ!?
 あ、いや、外伝でこれから明かされる事実かも知れないし、答えを焦ってはいけませんね。

 アバン先生から自分の評価を聞く時のレオナの表情が、目をキラキラと潤ませながらちょっと頬を染めている感じで呆けているのが、すっごく可愛いです。

 ずっと王女として人を導く立場だったし、こんな風に目上の人から認められ、褒められる経験というのは、父親であるパプニカ前王が亡くなって以来じゃなかったのでしょうか。

 アバンがレオナの心配を否定するシーンも、微妙に改変されていますね。
 原作ではこのシーン、アバン先生がちょっとギャグチックなデフォルメをされていましたが、アニメではシリアスでした。
 ……でも、真面目に言っている方が余計に信用できない人だなぁと思ってしまうのは、気のせいでしょうか(笑)
 
 アバンが無駄死にはしないと呟くシーン、握りこぶしを見つめながら話すのはアニメの改変ですね。
 レオナが満面の笑みを浮かべて笑うシーン、めっちゃ可愛いですっ!

 アバン先生が一瞬キョトンとしてから笑う時、フローラ様を思い出してくれると嬉しいなぁと妄想。
 ところで、アバン先生とレオナのやり取りの一部がカットされたのが残念!

原作アバン「のみこみが早い!」

原作アバン「私の弟子の中では、ダイの3日間が最短の修行期間でしたが……姫はもっと短くなっちゃいますね」

 このやり取り、好きだったのですが。
 しかし、アバン先生が走り出すシーン、無意味にジグザク走りをしているのに笑っちゃいました。まあ、トラップがある場所だとすれば、先頭を走る者が左右に大きく蛇行しながら走った方が罠の発見率が上がりそうですけどね。

 ダイ、マァム、ポップがレオナの言葉から先生の意図を悟るシーン、画面に青のグラデーションがかかった演出が綺麗でした。

 ポップとマァムの表情の微妙な改変も、いいですね。
 原作ではマァムは少し恥じらうような、ポップは戦いを決意した表情をしているのですが、アニメではマァムもポップも自分達の考えの甘さを恥じる自責の表情に見えます。

 すぐにパッと感情を切り替えるより、こんな風にさっきの自分の未熟さを思い知るというワンクッションが入る方が、感情が伝わりやすいと思います♪

 ミストバーンの爪攻撃を、ポップがブラックロッドで受け止めるシーンには感動しました!
 原作ではゴメちゃんがこの奇襲に真っ先に気づいているのですが、ゴメちゃんの出番はカットされていますね。

 そして、爪の攻撃がものすごくギリギリまで迫っているのにビックリ!
 原作ではもう少しダイから距離が離れていて余裕がある感じですが、アニメではマジでギリギリでした!
 ダイの驚き方も、原作よりもアニメの方が大きいように思えます。

 ブラックロッドを支えるポップが、アニメだと手がブルブルしていてかなり苦労している感じ(笑)
 原作だと手が震えていないせいか割と余裕そうに見えるのですが、アニメだと大変そうです。

 ロッドの持ち方自体、原作では両手とも順手で持っているのに対し、アニメでは力が入るように片方を順手、片方を逆手で持っています。ブラックロッドって、魔法力はもちろん、それなりに腕力も必要そうですね。
 余裕のなさを示すように、台詞も大分カットされています。

原作ポップ「……おおっと、姫さんよォ、皆まで言うなって! ……分かってるさ、こいつは……おれが食い止める!!」 

 原作のポップの方が、余裕がありそうな台詞回しですね。後、ダイとのやり取り部分がカットされたのも悲しいところです。

原作ポップ「その間におまえは大魔王のところへいくんだ、いいな、ダイ!」

原作ダイ「でっ、でも……!」

原作ポップ「……へへっ、心配すんなって」

 ここのやり取りが好きだったので、なくなって残念!
 後、もう一つ残念というか意外なのが、ヒュンケルに拘るポップの台詞をきた時のダイの反応です。

 原作ではダイは「え?」と呟きキョトンとした顔をしているのですが、アニメのダイはじっとポップを見ている……おおっ、三角関係を理解しているっぽい!(笑)

 マァムのツンデレ発言可愛い!
 ポップとヒュンケルの比較はしないと宣言するマァムも可愛いですが、憎まれ口を叩くポップに笑いかけるマァムの可愛さにノックダウン寸前ですよっ! か、かわいい〜っ。

 原作ではこの時の微笑みは少し大人びていて、慈愛に満ちた印象だったのですが、アニメだと等身大の女の子っぽくていいです!

 マァムの笑顔の後ろをレオナが駆け降りるのも、めっちゃいいカットですね。原作でもレオナがダイの所に駆け降りていますが、ポップ達とすれ違うシーンは描かれていなかったので、嬉しいです。
 気張っているゴメちゃんも可愛いし♪

 レオナがダイの肩に手を掛けるシーン、ダイの内心のモノローグの後半がカットされていますね。

原作ダイ(だったら……その肝心のおれが……くよくよ迷っていちゃいけないっ!)

 原作ではこのモノローグや行こうと言う台詞を、ダイの握りこぶしと共に描かれていますが、アニメではレオナの手を握るという形になっているのに感動しました。
 おおっ、鈍感小僧だったダイが成長した感じですっ。

 レオナに励まされるだけでなく、レオナに気を遣って励まし返している感じがして、すごくいいですね。
 悩んで俯いていた表情から、顔を上げた時の強い目の光の変化も実にいい感じです。

 ダイの発言にレオナが一瞬虚を突かれた表情を見せるのも、アニメの改変ですね。

 その後で嬉しそうに微笑む顔が、年相応の女の子っぽくてまた可愛いです。
 原作では、この時のレオナは大人びていて悟ったような表情で頷いているのですが、アニメでは少年少女の冒険という感じでワクワクします。
 ゴメちゃんがレオナのアップを邪魔して(笑)、画面一杯に広がって返事をしてくれるのも嬉しい♪

 階段を駆け上るダイ達と、踊り場にいるポップ達のすれ違いシーン、かっこよかったです! 画面を白っぽくして、すれ違う一瞬を際立たせる演出が実にいい感じ♪

 こちらのすれ違いも原作にはないので、嬉しかったです。
 ポップとマァムが、言葉も交わしていないのにアイコンタクトだけで、ダイ達が自分達を信じてくれたことを喜び合うシーンも感動でした。
 なに、この息ピッタリの夫婦感(笑) 

 告白とか、誰が好きとか言う以前に、すでに十分以上に通じ合っていることにいつ気づくんでしょうね、このケンカップルは。
 CM直前に、手前にポップとマァム、奥にダイ達が階段を昇る図を一枚絵で描いたカットが入ったのも嬉しいポイント。ガッシュと言うよりは、水彩画風なイメージ。

 原作ではミストバーンがすぐに邪魔をしてきた印象なので、このダイ達とポップ達の信じ合う間を感じさせる演出や、思いがけない場面転換のセレクトに感心しました。

 CM後、ミストバーンのセリフが微妙に改変されていました。

原作ミストバーン「……いいのか? 目先の友情ごっこに浸ったばかりに、大切な仲間が死んでしまっては泣くに泣けんと思うが……! ……いいんだな……?」

 意味は同じですが、原作の方がやや回りくどい言い回しですね。
 また、いいんだなと念を押す際、アニメではミストバーンのリアルな目が見えていますが、原作ではいつもの目のままでした。

 マァムとポップが下に降りるシーン、原作では階段途中の段に降りていましたが、アニメでは完全に階段の下に降り立っています。
 マァムがレオナに謝るシーン、背を向けたままレオナと呼びかけた後で、振り返って申し訳なさそうに謝っているのがいいですね。
 そんなマァムに、レオナが戸惑いの表情を浮かべているのが可愛いです。

 レオナのように理で行動するタイプにとっては、感情で動くポップやマァムの行動は予想しにくいだけに新鮮に感じるのかもしれません。

 ふざけたポップと照れているマァムのやり取り、可愛い♪
 前を見てとポップを叱りつつ、恥ずかしさから自分も前を見ずに目をそらしているマァムがツボですっ。

 お気楽なレオナと、ポップ達を心配するダイの対比、いいですねえ。
 ゴメちゃんは原作ではレオナに無邪気に賛成しているだけなのですが、アニメではダイを気遣って心配している様子なのが可愛くてたまりませんっ。

 ポップのミストバーンへの挑発セリフ、アニメだとビビっているのに頑張って虚勢をはっている感をヒシヒシと感じられていいですね♪
 台詞の後半部分がカットされているのは残念ですが。

原作ポップ「おれ達が命にかえても手出しさせねえから、そう思えっ!!」

 マァムとの短い作戦でポップがコケるギャグシーン、原作とはやや絵柄と動きが違っていました。原作がずるっとつんのめる感じなら、アニメではずっこけポーズのまま、切り絵っぽい動きで上から下へ落ちる感じです。

 ポップとマァムが相談中も前を見ていて、ミストバーンから目を離さない感じがいいですね。

 ミストバーンの素顔が垣間見える回想シーンがありましたが、その後にミストバーンが生身の存在だと説明するシーンで、片目だけが光っているシルエットなミストバーンが登場しました。え、こんな片目シーンあったかなと、悩んじゃいましたよ(笑)

 ポップとマァムが並んで立っているシーン、足への加重のかけ方が見事に西遊対称になっているのが地味にかっこよかったです♪ まあ、動きがシンクロしていても、ついつい太股が派手に破けているマァムの方に目が行きがちになるんですが(笑)

 ミストバーンがポップ達では足止めにもならないというシーン、台詞の後半部分がカットされていました。

原作ミストバーン「せめてアバンか、ヒュンケルでもいればわからんが……、な……!」

 ミストバーン的には、この二人は高く評価しているようです。
 ところで、ミストバーンが予言をするシーンで、下から見上げる構図があったのですが、頭上に太陽を思わせる放射状の模様があったのを見て、愕然!

 え、今までずっとホワイトガーデンって、上が空いた中庭風の場所だと思い込んでいたのですが、天井に模様があるってことは……ドーム状の空間!? 天井がめっちゃ高いだけの吹き抜け!?
 うっ、今の今まで、空の見える中庭を連想していましたよ〜。

 と、本編とは全く関係ないところで今回最大のショックを受けましたが(笑)、それはさておき、低く身がまえるポップとマァムがいいですね。シンクロしたように動きがピッタリと合っています。
 でも、同時に走り出したようなのにマァムの方が先んじていましたが(笑)

 ポップがブラックロッドで闘魔傀儡掌の糸を避けるシーンの動き、良かったです♪
 前から、なぜルーラかトベルーラを使わないのかなと思っていたのですが、天井があるのなら飛行系魔法は辛いと納得しました。

 ブラックロッドを自ら手放し、空中で大きくのけぞってからのポップの魔法攻撃、いいですねえ。
 原作では下から見上げる構図でしたが、真横からのアクションを見るのもゾクゾクします。

 ポップの連続イオ攻撃、原作では命中度が不明でしたが、アニメでは半分ぐらいは外れていました。と言うより、わざと外しているように見えます。
 ミストバーンが一歩も動かないと言ったのを逆手にとって、外した魔法はマァムの動きを隠す煙幕の効果を狙っているように見えます。

 マァムの閃華裂光拳、久々です♪
 やっぱり、カッコいいですねえ。必死でマァムの名を叫ぶポップが、なんかヒロインっぽく見えます(笑)

 マァムの真正面からの驚きの表情、いいですね!
 髪の靡き方に躍動感があり、すごく好きなカットです。

 ミストバーンの爪の伸び方、原作の後ろ向きのマァムに投網のように広がるカットと、前から見た拘束シーンが好きだったのに、両方とも改変されていたのは残念!
 伸びた爪が、次の瞬間にはすでに拘束完了していた時の残念感ときたら……! もうちょっと、こう、シュルシュルシーンが見たかったです〜。

 シュルシュル忍び寄る触手爪の野望、ポップの足で実行されていたのにはビックリ。え、願いが即叶いました!? 叶いましたが……違う、そうじゃない!(笑)

 原作ではポップへの触手は、首から巻き付きにいっていましたが、アニメでは足から攻めていますね。絡みつき方が、妙に蛇っぽくてねちっこいです。
 驚きから恐怖に変わる表情と言い、落下シーンで上から下へ落ちている図が表現されているところと言い、マァムへの責めよりもポップへの責めの方がカットを使っていませんか!?(笑)

 原作では省略されていた、爪を縮めてミストバーンの手元へ連れて行かれるポップの図まで実装されるとは。

 そして二人そろって人質にされているシーンで、マァムが原作よりもお尻が強調しまくったセクシーポーズだったのが衝撃でした(笑) ミストバーン……グッジョブ!(笑)

 ここで注目したいのは、原作ではこのシーンでは口元を引き締めているミストバーンが、アニメでは口元を開いて明らかに笑っていることです! 間違いない、ヤツはサディストの上にむっつりとみました!(笑)

 それにしても二人への拷問シーン、こんなに長々とやるとは思いもしませんでしたよ。流血がないからやりやすかったのかもしれませんが。

 ポップが必死に後ろにいるミストバーンを睨もうとするシーン、いいですね。目も合っていないし、向こうからも気がつかれていない無力さが、またいい味を出しています。

 ダイが必死になって走る顔のアップが入るのが、嬉しかったです。
 ポップの言い分など、全く耳に入っていないような顔ですね。レオナが映っていないので、彼女がどう動いているか分かりませんが、むしろレオナの方がポップの心境や言い分を理解しやすかったかも。

 欲を言えば、ラーハルトの不意打ちの前に、ポップとマァムがぐったりし始めた表情も見たかった気がします。

 背後からの攻撃、画面が真っ赤に染まって火柱のように勢いよく攻撃描写が発生するとは思いませんでした。思ってたより派手な攻撃になってますっ。よくこれで、ポップやマァムが無事でしたね(笑)

 原作ではポップとマァムを誰かが助ける寸前、ダイが目を見張るカットが入るのですが、アニメではそれはなくなっていました。
 全景で、ホワイトガーデンを上から見下ろす構図があったのが嬉しかったです。思っていた以上に被害が大きい……!

 マァムがラーハルトを見るシーン、シルエットだけなのに加えて、視線がフラフラと揺れたり、ぼやけたりして、意識朦朧としている感が強く出ているのがよかったです。

 苦しいながらも微笑むマァムの表情、いい感じ♪
 ポップが苦笑しつつ安堵する表情の後で、不審の表情に変化する細かさが実によかったです。
 でも、ラーハルト自身は無表情なんですね(笑)

  次回予告、ラーハルト、マァム、ポップがすでに共闘していました! アバン先生とキルバーンの決闘に、ぼっちなバーン様とバラバラなシーンなとで、ラーハルトが最後に美味しいところを持っていった感じです。

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