『キルバーンの罠』(2021.7.16)

  

《粗筋》
 
 バーンが放ったカラミティウォールを、前代未聞の形ですり抜けたダイ。
 頭上で大規模な爆破音が鳴り響き、細かな破片が舞い落ちる中、レオナの手は外壁に深く打ち込まれたパプニカのナイフを掴んでいた。

 レオナはダイが戦いに集中し始めたと悟り、それはいい傾向だとも思う。……が、自分のことまで忘れているようだと愚痴るようにぼやくレオナは、ナイフ一本で自分の体を支えている状態だった。

 一方、バーンはダイの回避方法をよく思いついたものだと、評価する。
 それに対し、ダイは思いついたのではなく、瞬間的に身体が反応したのだと答える。
 ダイ自身、竜闘気であんなことができるなんて知らなかった。
 ダイの答えを吟味するように、じっと見つめるバーン。
 
 剣を握る自分の手を見つめながら、ドルオーラもできるのが当たり前のように自然と出来たと思い返すダイは、ふと、何かに気づいて慌てる。

ダイ「いけねっ、レオナ!!」

 振り向いたダイの目の前で、パプニカのナイフを手に外壁から這い上がってくるレオナ。
 無事かと尋ねるダイに、レオナは息を切らしながらも自分の身は自分で守ると約束した、と返す。

 でも、息が切れていると心配するダイに、レオナは拳を握りしめて自分のことはいいから戦いに集中するようにと叱りつける。その勢いに押されて、思わず頷くダイ。

 早くも息を整えたレオナは、今の状況が優勢だと判断する。
 元々回復役に徹するつもりだったレオナだが、このまま出番ナシで終わるかもと予想する。

 ダイはバーンに向かって、自分の中に新しい力が芽生えたことを宣言する。ダイ自身にはよく分からないが、初めて紋章の力が発動してきたように自分の中に力が溢れるのを感じていた。
 剣を掴むダイの手が、武者震いじみた震えを見せる。

 これならバーンが相手でも、引けを取らない戦いが出来る気がすると言うダイ。
 が、それを聞いたバーンは、大口を開けて笑い出した。
 思いも掛けない反応を見て、戸惑うダイとレオナ。

 ひとしきり笑った後、バーンはまなじりを正して、ダイが何も分かっていないと諭す。
 ダイの強さは、自分とほぼ互角だと告げるバーン。
 ほかならぬ対戦相手からのその言葉に、わずかに驚きを見せるダイ。

 バーンはダイがそれほどの力を持ちながら無欲だと言い、それは天を左右できる力だと指摘する。
 戸惑いを表情に浮かべながらも、じっとバーンの話を聞くダイ。

 バーンは、バランに一目置いていた理由として、竜の騎士の遺伝子を上げる。自分の予想外の事をしてくる相手とは、なるべく戦いたくないと考えるバーン。

 それに、そこまで強さがあるのなら、その強さが惜しくなってくると語るバーン。
 意味が分からず、ダイはオウム返しに問い返す。

 そんなダイに、バーンは今のダイがバラン以上の強さを持っていると諭す。自分が出会った一番強い男であり、自分の強さにもっとも肉薄したと評価したバーンは、杖の鞭部分を戻し、柄を床石に突き刺した。

 何も持っていない手をスッと軽く左右に広げ、バーンは静かに問いかける。

バーン「余の部下にならんか?」

 この勧誘には、ダイばかりでなくレオナも驚く。
 前に1,2歩進み出て反論仕掛けたダイに先んじて、バーンは自信満々に言った。

バーン「おまえの父は、この問いにYesと答えた……」

 思わず、息をのむダイ。
 純粋な竜の騎士であるがゆえに、バランは人間の愚かさ、醜さを知っていたとバーンは語る。
 
 人間は最低だと断言し、ダイが力を貸す価値はないと言い切るバーン。
 そんな奴らのために戦って、どうなるかと問いかけられたダイの目が、ゆらぐように瞬く。
 わずかに、目を下へ向けるダイ。
 人間達がダイを迫害することに、賭けてもいいとバーンは断定した。








 小さく息をのむダイが思い出したのは、ベンガーナデパートで自分を怖いと怯えた女の子のことだった。
 ダイが助けた直後だというのに、誰もがダイを異端を見る目でみたり、あるいは気まずそうに目をそらしていた。







 嫌な記憶を振り切るように、唇を噛みしめるダイ。
 人間が泣いてすがるのは苦しい時だけで、平和になれればすぐに不平不満を口にすると言うバーン。そして、ダイは英雄の座を追われると、予言のように告げる。

 顔を俯かせたまま、黙ってそれを聞いているダイ。
 純粋な人間で無い者に頂点に立って欲しいと思わないのが人間だと、決めつけるバーン。

 離れた場所でそれを聞いていたレオナは、我慢しきれなくなったように、私達は絶対にそんなことをしないと反論する。
 しかし、バーンはレオナに目もくれなかった。
 個人的に好意を抱いているだけだと指摘され、頬を赤らめるレオナ。

 それではバランと変わりはないと言い、個人の感情では国は動かせないとも言うバーンは、その時、ようやくレオナに目を向けた。

バーン「王家のそなたならよう分かろう?」

 その言葉に、レオナは気丈にバーンを睨むも、言い返す言葉はなかった。

バーン「だが、余は違う……! 余はいかなる種族だろうと強い奴に差別はせん!」

バーン「バランやハドラーが反旗を翻しそうとも、彼らへの敬意は変わらんよ……」

 どこかもの悲しげに言った後、バーンは大きく手を広げ、ダイに無益と分かっている勝利のために生命を賭けるか、それとも己の価値を判っている者のために働くかの二択を迫る。

 だが、いくら子供でもこの二択は迷うまいと告げるバーンは、すでにダイの答えを予測している様子だった。
 恫喝するように、答えを迫るバーン。

 しかし、ダイはNoと答えた。
 苛立った表情を見せた後、バーンは目を伏せる。やはり子供と蔑み、英雄の甘い幻想にしがみついていたいのかと非難がましく言った。

 だが、ダイは違うと辛そうに言い切った。
 片目だけを開け、ダイの方を見やるバーン。
 俯き、力なく立つダイは、絞り出すような声で言う。

ダイ「人間が……たまにそういうひどいことをするなんて、百も承知だ。……おまえの言うことも、嘘じゃないと思う」

 固く目を閉じ、拳を強く握りしめながら、ダイは言った。

ダイ「でも、いいんだ……! それでもおれは、人間達が好きだ……ッ!!」

 自分を育ててくれた、地上の生き物全てが好きだと言い切ったダイは、どこか寂しげな笑顔を浮かべていた。
 
レオナ「ダイ君……」

 離れたところから呼びかけたレオナのその声が、ダイの耳に聞こえていたのか、いなかったのか……。
 ダイは、力強く言葉を続けた。

ダイ「もし、本当におまえの言う通りなら……地上の人々、全てがそれを望むのなら……」

 ダイの脳裏に蘇るのは、今まであった人々のことだった。
 眩いほぼ明るい光の中、最終決戦の際にパプニカを旅だった時に見送ってくれた人々を思い出す。バダックやマリン、アポロなどの顔なじみだけでなく、町にいた人々もみな、笑顔で手を振ってくれた。

 最後の戦いに集まってくれた兵士達やゴメスが、手放しで歓声を上げてくれた時の思い出も色鮮やかに蘇る。

 鬼岩城を倒した直後、自分の活躍を目を輝かせて見つめてくれたベンガーナ王やロモス王、テラン王、バウスン将軍。

 青空の下で、自分に向かって微笑みかけてくれたレオナと、その後ろにいるエイミ、メルル、ノヴァ。

 目が合ったヒュンケルが、小さく頷いてくれたこと。
 微笑み、ウインクしてくれたマァムの表情。
 そして、いつも自分と一緒にいてくれたポップの、明るい笑顔――。
 それらを思い返しながら、ダイは決断した。

ダイ「おれは……おれは、おまえを倒して、この地上を去る……!」

 どこか、寂しげな……だが、一片の曇りもない表情で、ダイは静かにそう言った。
 その言葉に衝撃を受け、息をのむレオナ。

 しかし、バーンは瞬きひとつ見せなかった。
 冷徹にダイを見据え、残念だと告げるのみだ。
 わずかに苦笑を漏らし、竜の騎士にそこまで決意させた人間に対しての怒りを滲ませながら、降魔の杖を再び手に取った。
 それだけでバーンの周囲に魔法力が再び溢れ、マントが風にはためく。

バーン「思い知らせねばならん……! そんな連中に肩入れをしたのが、おまえの最大の不運だということを……!」

 怒りを剥き出しにしたバーンに対し、剣を構えるダイ。
 それを見つめるレオナの頬を、涙が伝う。

レオナ(ダイ君……勝って! 誰のためでもない、君自身のために……!!)

 決戦を前に、息詰まるような緊張感が張り詰める。
 バチバチと魔法力を散らすバーンの後方、瓦礫の影から小さな人影が現れた。そっと顔を覗かせるのは一つ目ピエロ……ピロロだった。
 誰にも気づかれないまま、ダイとバーンの戦いを見つめるピロロ。
 と、その目が瞬きをする。








 1度閉じて開かれた先には、異空間でこちらに向かってくるアバンの姿があった。
 斬りかかってくるアバンを、剣で受け止めるキルバーン。
 が、すぐに後ろに大きく飛んで間合いを開ける。

 呼吸を乱すキルバーンに対し、アバンは彼が外部の情報を手に入れていると指摘した。その根拠は、キルバーンの焦りだ。明らかに勝負を焦っているキルバーンに対して、身がまえるアバン。

 返事をする余裕もなく、肩で息をするキルバーン。アバンは、決着が近いと考えていた。
 と、不意にキルバーンがトランプのカードを放つ。

 それを迎え撃つのは、アバンのゴールドフェザーだった。両者の中間地点でぶつかったそれらは、煙を上げて消滅してしまう。
 それを見て、忌々しそうに呟くキルバーン。

キルバーン「クッ……アバンめ、ここまで出来る奴だとは……」

 それに対し、アバンはどこまでも落ち着き払った口調で、この決闘を思いついた時点で、キルバーンの劣勢は決まっていたと告げる。

 キルバーンの必勝法は、しかけてはめる――それだけだと看破するアバン。罠や小細工に頼ってきた死神は、まともな勝ち方が出来なくなったと指摘する。力も技もスピードも一流だが、ここどという時の気迫がないと説くアバンに、キルバーンはわずかに苛立ちをみせるも、言い返さなかった。

 だから、同レベルで動き回るアバンに致命傷を与えられない。プライドを傷つけられて、らしくもない決闘を挑んだ時点でキルバーンは負けていると断言する。

アバン「そう……おまえの負けだ、キルバーン」

 両者の間に、しばしの沈黙が落ちる。
 それを破ったのは、死神の方だった。
 肩をゆらして笑い出した死神は、トラップなしで勝つことが出来ないと言うアバンの意見を全面肯定する。

 まともに修行しても無敵にはなれたと自負しているが、そんな勝利には興味が持てなくなってしまったとキルバーンは笑う。
 それを聞いて、ハッとしたような表情を見せるアバン。

 蜘蛛の巣にかかって足掻く昆虫のように、罠にはまって狼狽する相手を見ることに愉悦を覚えるというキルバーン。特に、一途に努力してきた相手でアルほど、罠に落ちた時の表情が楽しめる……1度、それを味わってしまうと他の殺し方など馬鹿らしくなってしまうと嘲笑う。
 それが許せないとばかりに、アバンは歯を食いしばる。

 キルバーンに言わせれば、そんな相手にスウッと止めを刺して楽にしてやる時、自分が死神だと実感できるのだと言う。
 傲慢に笑うキルバーンに対し、アバンは怒りを剥き出しにする。
 こんなに非道な敵に会ったことはないと、全身から闘気を滾らせるアバン。
 アバンストラッシュの構えを取るアバンだが、その刃に別の何かが当たり、剣がポキリと折れた。

 驚きに目を見張るアバンの目の前で、剣先が金属音を立てて床に落ちる。
 剣が突然折れたことに戸惑い、何かに当たったような気がすると言って後ろを見るアバン。

 うろたえるアバンに、キルバーンが冷たく声をかける。
 折れたのではなく、斬れたのだ、と――。
 アバンの言葉を逆手に取り、自分は相手を罠にはめるのが必勝法だと皮肉を言いながら、頭上の帽子じみた部分のラインに指をやる。

 アバンがもっと注意深ければ、頭上のラインが減っているのに気づいたはず……そう言いながらキルバーンは、ラインからナイフほどの大きさもある刃を取り出した。
 それを見て、目を見張るアバン。

 素早くその刃を投げつけるキルバーン。
 空中を飛ぶ間にその刃は透明となって、アバンの足を傷つける。地が飛ぶが、アバンの足を切り裂いたはずの刃は目には見えなかった。

 見えない刃に驚くアバンに、キルバーンは「ビンゴ!」と得意げに言い、罠を説明した。
 ラインから引き抜くと不可視となる刃13本を、この空間の各所に仕掛けてあると言う。その場所は、キルバーンにしか分からない。
 刃を探そうとしてか、目を上に上げるアバン。
 上にあげた手を振り下ろし、キルバーンは宣告した。

キルバーン「見えざる13本の刀身による刃の檻! これがキルバーン最後のトラップ、ファントムレイザー!」

 今度は君が覚悟する番だと、キルバーンはほくそ笑んだ。







 剣の降る音が響く中、ジャッジは無反応にその場にいた。
 真正面から、アバンを突こうとするキルバーン。驚愕の表情を浮かべるアバンは、なかなか動こうとしないが寸前で右へと避けた。
 が、アバンの左腕が不可視の刃により傷つき、血が噴き出す。苦痛に表情を歪めるアバン。

 キルバーンはまたも、剣を振るう。
 検査機を左右に振り、つきの動きを交えながら迫るキルバーンを、後ろへ飛んで避けるアバン。

 だが、その最中もアバンの首筋が、背が、足首が、見えざる刃によって傷ついていく。
 防戦どころか、逃げるので精一杯のアバンを、キルバーンはどこまでも冷酷に追い込んでいく。

 大きく剣を振るったキルバーンの攻撃を避けても、不可視の刃に右足を深く傷つけられたアバンは、悲鳴を上げた。
 それを、ジャッジは光る3つの目でジッと見つめていた。
 
 ついに、その場に崩れ込むアバン。彼の足元は、すでに真っ赤な血に染まっていた。
 キルバーンは親切ごかしに、迂闊に避けるとそれだけで死んでしまうと忠告し、どうせなら自分の剣でやられてくれという。
 悔しげに、キルバーンを見上げるアバン。

 それを見たキルバーンは、ご満悦の様子だ。
 調子に乗った口調で、彼は言う。

キルバーン「君は非道と罵ったが、その瞬間にはボクのやり方に感謝するだろうよ。この地獄から解放してくれて、ありがとう、と」

 アバンの目が、焦点を失って揺らぐ。
 目の前にいるキルバーンの姿が、ブレて揺らいで見える。
 ハッと意識を取り戻したアバンは、首を左右に振って正気を保とうとした。力を振り絞ってたり上がるアバンだが、血の滴りは止まらない。

 恐るべきトラップであり、防御も攻撃も出来ない。このままではやられると考えるアバン。
 まるで、アバンが立ち上がるのを待っていたかのように、ずっと剣を身がまえたまま佇んでいたキルバーンは、剣先を狙い定める。

キルバーン「では……」

 自分に迫る敵を、目を見開いて待ち受けるアバン。
 剣は、アバンの左脇腹に深く突き刺さり、背中まで突き抜けた。苦痛に顔を歪めるアバン。

 驚きを見せたキルバーンに、アバンは両手を広げて襲いかかる。
 2度と使いたくはなかった呪文まで使って、キルバーンだけは倒そうとするアバンは、必死に彼の頭めがけて手を伸ばす。
 それを見たキルバーンは、驚きも見せずに独り言のように呟いた。

キルバーン「メガンテか。そいつは困るな」

 暗闇の中に、突然、真っ白な手袋をはめた手が二本、出現する。奇妙なことに、見えるのは手首から先の手のみだ。
 手を目一杯開いた手――それは、アバンの二の腕を掴む。
 驚くアバンの背後には、ジャッジの姿があった。

 自殺ならそいつとしてくれと、キルバーンはわざとらしく汚れてもいない服の埃をはたいてみせる。
 ジャッジの正体に当たったアバンが激昂するが、キルバーンは審判とグルなのは恐ろしいトラップだよねえと、なんら悪びれる様子もない。

 しかも、いざとなればこの空間ごと相手と自爆するように改造していたという。
 アバンを捕まえたジャッジが、メガンテ直前の魔法の余波を放ち始めた。
 ジャッジもメガンテ使いと察して、表情を険しくするアバン。

キルバーン「ね? 最後にものをいうのは、やっぱり罠だっただろう?」

 得意げに指を振ってみせる、キルバーン。
 キルバーンは上にすーっと浮き上がりながら、別れを告げて軽く手を振る。飛び上がるようにして、必死にキルバーンに追いすがるアバン。
 左手が、キルバーンの足首を掴む。

キルバーン「……しつこいよ、キミ……!」

 不機嫌さを目に滲ませ、キルバーンは剣を振るう。剣は、アバンの手首を一閃した。
 大きく見開かれるアバンの目。その目は、すでに光を失っていた。苦痛の叫び声を上げるアバンを、白い光が包む。







 白に包まれた世界から一転して、静かな石床の上に足を踏み下ろすキルバーン。
 不気味な黒い渦がどんどん縮まっていく中で、階段の下に降り立ったキルバーンは前に向き直り、一言、言った。

キルバーン「復讐、完了」

 ふと、目を落としたキルバーンは、自分の右足に手首から切り落とされたアバンの手がしがみついているのを発見する。未だに命が宿っているように握りしめられて手を、キルバーンは無造作に左足で蹴飛ばした。
 少し離れたところに転がったアバンの手を見て、満足そうに笑うキルバーン。

 それから、キルバーンはここがホワイトガーデンではないことに気づく。周囲を見回し、バランが死亡した所だと見抜くキルバーン。
 爆発のショックで場所が少しズレたといいながら、キルバーンは上の方を見上げる。

 その時、キルバーンの姿が闇一色に染まり、白い線だけが浮き彫りとなった。
 今、バーン様はダイの死闘の真っ最中だと察するキルバーン。








 青空を背景に、ダイが剣を両手に、大きく振りかぶってジャンプする。そのまま、バーンに斬りかかるダイ。
 バーンは降魔の杖の柄で、それを受け止める。

 ダイが大きく後ろに飛んで距離を取り、バーンもまた、よろめきなら2、3歩下がって再び降魔の杖を横に持ち、身がまえる。姿勢を低くし、防御のために身がまえるその姿には、大魔王ならではの余裕が感じられない。

 ダイが一瞬で踏み込んできて、杖を下から跳ね上げる。後ろへと下がるバーンに、すかさず追撃を駆けるダイ。








 それらの光景を、キルバーンの目は見通しているかのようだった。

キルバーン「……ダイに押されている……が、まあ、いいか。慌ててバーン様を助けに行かなくても」

 主君の不利を承知した上で、キルバーンは軽い口調でそう言い、踵を返して階段を昇り始めた。

キルバーン「ダイに倒されたら倒されたで、そこまでの話。元々あの方に対しては、助ける義理はあっても、義務はない……! ボクは……ミストとは違う……!」

 階段の踊り場で足を止めたキルバーンは、おかしくてたまらないかのように笑い続けた――。








 一方、ポップ達はミストバーンと相対していた。

ヒュンケル「いよいよだな、ミストバーン。これが正真正銘最後の戦い……お前の破滅の時だ」

 気迫のこもったヒュンケルに対し、ミストバーンは動じる様子もない。
 誰が自分を破滅させるのかと、問い返す。
 クロコダインやチウでは、ミストバーンを傷つけることはできない。そうはっきり言われ、ムッとした表情を見せるクロコダイン達だが、言い返しはしなかった。

 ロン・ベルクやラーハルトでもダメージを与えられない自分の究極の肉体を誇り、ミストバーンは拳を握りしめる。
 ヒュンケルやアバンなら分からなかったが、アバンはキルバーンとの決闘の真っ最中だと語るミストバーン。

 初耳の情報に、驚きを見せるヒュンケル。
 そんなヒュンケルを指さし、彼が再起不能であり、誰も何も出来ないと決めつけ、ミストバーンは高笑う。
 だが、ヒュンケルは自信たっぷりに答えた。
 
ヒュンケル「いいや、まだ一人いる」

 思わぬ返答に、驚くミストバーン。
 前に進み出たヒムは、「オレだよ」と、軽く自分の胸を指さしてみせる。

ミストバーン「貴様が、だと……?」

 目を、ぎらりと光らせるミストバーン。
 ヒムは、自分は彼らの仲間になりきったわけではないが、ヒュンケルの代理をする約束をしちまったと言い、ミストバーンに対して好戦的な態度を見せる。

 すぐ後ろにいたポップが、驚いて「マジかよ」と声をかける。ラーハルトは、身体が硬いだけの人形にどうにか出来る相手ではないといい、引っ込んでいた方が身のためだと、尊大に言い放った。

 が、肩越しに振り向いたヒムは、不敵な笑みを浮かべる。
 次の瞬間、ヒムは気合いと共に全身から闘気をみなぎらせた。銀の髪が逆立ち、圧倒的な闘気が放たれる。
 それに驚くポップやミストバーン。クロコダイン達も、その例外ではない。
 その中で、ヒュンケルだけが得意そうに微笑んでいた。

ラーハルト「ほう……」

 ラーハルトに向かって、ヒムはさっきとラーハルトと会った時と違って、今の自分が体力満タンであると強調し、これが自分の強さの真骨頂だと正面を向き直る。

 金属生命体が問う気を遣ったことに、驚きを隠せないミストバーン。
 低く身がまえ、戦いを挑もうとするヒムだが、その時、チウの制止が響き渡った。
 律儀にも足を止め、目をヒン剥くヒム。

 隊長の許可なしに勝手に戦ってはいかんと、力説するチウに対して、気が抜けたような表情を見せ、ため息をつきつつも、ヒムはきちんと許可を申請する。

チウ「よしっ、許す!」

 腕を組み、目を閉じて許可を出すチウ。
 礼を述べ、勢いよくミストバーンに飛びかかっていくヒム。避けることも出来ず、その攻撃をまともに食らったミストバーンが呻き声を上げた。

ポップ「効いたっ!?」

マァム「速いっ」

 続け様に連打を食らわせるヒムに、ミストバーンは苦痛の声を漏らす。
 それを、ラーハルトは冷静な目でジッと見つめていた。
 ヒムのスピード、オリハルコンの硬度、闘気のパワーを見計ろうとするラーハルト。

 ヒムの攻撃は、ミストバーンを後ろへとよろめかせる。ヒムの攻撃を嫌って、これまでと違って逃げに打って出たミストバーンを見ながら、ラーハルトは自分がヒムを相当見くびっていたことを認めた。

 殴りかかるヒムの拳が虹の色に染まっているのを見たマァムはハッとして、ヒュンケルにその正体を問いただす。
 ヒュンケルはヒムの闘気は、暗黒闘気でも魔炎気でもなく、光の闘気だと断言する。

マァム「やっぱり、光の闘気なのね!」

 嬉しそうにヒムを見やるマァム。

ポップ「魔王軍だったあいつが……!?」

 信じられないとばかりに目を見開くポップ。
 自分との決闘の時から、ヒムがすでに光の闘気を放っていたことを説明するヒュンケル。善悪を越えて純粋に自分との決着を長ったヒムは、もはや悪ではないと断言する。

 クロコダインも、光の闘気こそ暗黒闘気を得意とするミストバーンの苦手な相手だと納得した。ミストバーン妥当向きの男だと評価するヒュンケルの言葉の合間に、スタスタと前に進みでるチウ。

 今、まさにヒムがミストバーンの動きに追いつき、強烈な一発を叩き込んだところだった。
 その胸には、くっきりと描かれた『12』の文字が。

 目を輝かせてそれを見たチウは、思う。

チウ「こ、これは……拾いものだ!」

 キラーンとチウの目が光る。

チウ「いいぞー、そのままいけー、ヒムちゃーん」

 両手を挙げて声援を送るチウだが、その声援はヒムにとってはあまりありがたい物ではなかったらしい。一瞬動きを止め、振り返って文句をつける。

ヒム「ヒムちゃんってなんだ、そりゃあ!?」

 笑顔で腕を組み、そういう感じの名前をつけるのが我が隊の習わしだと自慢げに語るチウ。
 起き上がってきたミストバーンを再び殴り飛ばしながら、もうちょっとマシな名前を考えられないのかと不満を口にするヒム。

チウ「ヒムちゃん、ヒーたん、ヒムすけ……どれがいい?」

 笑顔で問うチウに、ヒムはガシガシと連打を繰り返しつつ、思いっきり嫌そうな顔をしつつも律儀にも選んだ。

ヒム「う〜〜〜、その中では、ヒムちゃん」

 では、決まりだなと嬉しそうにVサインを見せるチウ。

ポップ「この中でもトップクラスに強いのに、チウにあしらわれてるぞ、あいつ……」

 呆れたように言うポップ。ラーハルトも目を閉じたまま、つかめない奴だと一人、思う。

 とりあえず、ニックネーム命名などなかったかのように勢いよくミストバーンに殴りかかるヒム。
 後ろへと大きく飛ばされたミストバーンは、珍しく身体を斜めにしたまますぐには動けないようだった。

ヒム「へっ、もう終わりか?」

 人形ごときにやられたと怒りに震え、目を光らせるミストバーン。

チウ「さあー、とどめだ、ヒムちゃん! それとも、ポーンだからポンちゃんがいい!?」

 元気のいいチウの声援に、ビクッとするヒム。

ヒム「あああーっ、もう! なんとでも呼んでくれっ」

 振り返り、自棄になったように怒鳴るヒムの背後で、かしいだままのミストバーンが目を光らせた。
 それに気づいたクロコダインが、忠告を飛ばす。

クロコダイン「気をつけろ、ヒム!」

ヒム「!?」
 
 ヒムが振り返った時、ミストバーンはまとめてバラバラになれと術を発動させていた。
 掲げた腕を振り下ろし、闘魔滅砕陣を放つミストバーン。

 ミストバーンを中心に、紫色の蜘蛛の巣が展開する。ポップが悲鳴を上げ、鉄面皮ラーハルトすら表情を変えた。チウも大きく口をあけて叫んでいる。
 ヒュンケルを庇うため抱きしめながら、悲鳴を上げるマァム。クロコダインも苦しそうだ。

 その中で、ヒムだけが無表情だった。
 その口元に、笑みが浮かぶ。
 それを、見とがめるミストバーン。

 次の瞬間、ヒムは吠え立てて足を強く踏みつけた。蜘蛛の巣の一部を踏みつけたヒムの足から、光があふれ出して闘魔滅砕陣を消し去ってしまう。
 最大限に目を見開き、驚くミストバーン。

ポップ「一発踏みつけただけで、滅砕陣を……!」

 よろけて、後ろに下がりながらも驚くポップ。

クロコダイン「ふきとばしよった!」

 1度、拳を打ち合わせて音を鳴らしてから、拳を掲げて挑発するヒム。

ヒム「男ならこっちでこいよ……大将!」

ポップ「すげーっ、すげーじゃねえか、あいつっ」

 ヒムを指さし、驚くポップ。
 済まし顔のままだが、ラーハルトも驚いたと口にする。あれほどの力があるとは、思わなかった、と――。

 圧倒的有利な立場でありながら、ヒムは油断なくミストバーンを見下ろす。ミストバーンは無言のまま、ただその目を光らせていた。
 向かい合うヒムとミストバーンの背後では、噴水が涼やかな音を立てて流れていた――。








 同じ頃、天魔の塔。
 剣を握る右手に、竜の紋章が輝く。闘気を全身からみなぎらせ、気合いと共にジャンプして攻撃を仕掛けるダイ。
 それを、手から魔法を撃ちだして迎撃しようとするバーン。

 しかし、ダイは迫ってくる魔法を剣で一閃した。刃に映るバーンの目は、驚愕に見開かれていた。
 次の瞬間、吹き飛ばされて壁にその身体を叩きつけられるバーン。降魔の杖を手放しもせず、その光も消えないのはさすがだが、すぐには動けないのかそのまま蹲る。

 向かい合うダイは剣を身がまえたままだが、全身を光らせていた青い闘気を収めた。

ダイ(勝てる……! 勝てて、しまう)

 そう思いながらも、ダイの頬を冷や汗が伝う。
 未だに動かず、その場に座り込んで俯いていたバーンだが、ゆっくりと上げられた彼の目には、未だに強い光が、どこか怪しく輝いていた――。


《感想》

 ダイの選んだ答えが、心に刺さります〜っ。
 原作でも好きなシーンの1つではありますが、アニメで実際に見ると実に感慨深いですね。……昔、DQ1であっさりと魔王の誘惑に乗ってしまったおバカな筆者の実経験を思い出すと、特に(笑) せめて、復活の呪文はこまめに取っておけば良かったです。

 今回のスタートは、バーン様のカラミティウォール部分の繰り返しからで、いきなりレオナの手がパプニカのナイフを握っているところが大写しになり、レオナのアップ、ナイフを支えに片手で断崖にぶら下がっているレオナの全身図、という流れになっています。

 原作では、レオナのアップ、手のアップ、全身図の順番なので、やや改変されています。

 それにしても、とっさに断崖絶壁部分にこんな危険な方法で避難するレオナの機転と、思わぬ腕力には感心しちゃいます。
 この当時のレオナの力は、実は63で、同時期のポップ(46)や初登場時のダイ(48)よりも腕力がある状態です(笑)

 砕け散った欠片が、天魔の塔を背景にふんわりと浮き上がっていくシーン、美しくていいですね。

 バーンがダイの回避を評価するシーン、原作ではもっと淡々と語っている印象を受けていましたが、アニメでは根底に怒りを滲ませているのがいいですね。

 また、原作ではダイはバーンの顔を見ながら返事をしていますが、アニメでは剣を握りしめた自分の手を見つめながら話しています。

 レオナがダイを叱るシーン、漫画のコマのように二分割されてちょっとギャグっぽい表現になっていました♪ 原作ではダイが遠くにいる普通の距離感で描かれていたので、アニメの方で漫画っぽい演出が加わったのはちょっと新鮮です。

 ダイが自分の中に力が目覚めたと語るシーン、剣を掴む手が震えるのはアニメの改変ですね。制御しきれない力が溢れている感がして、いい感じです。

 バーンが竜魔人化したバランと戦っている回想画っぽいシーン、水彩画のような一枚絵で再現されているのが嬉しかったです! 原作では実現しなかった夢のカードですね♪

 バーンが杖を収めるシーン、アニメだと鞭部分がサッと引き、柄を石に突き刺すぐらいですごく地味なのが不満です!
 原作では鞭の動きも派手だし、刃が消えて杖の先端が元に戻るシーンに加え、それを見たダイが戸惑うシーンもあるのに、アニメではその辺を一気にすっ飛ばして、いきなりバーン様からの問いかけが発生しています!

 まあ、バーン様が無防備に手を広げるだけで、武装解除を表現できるのだから削ってもいいと言っちゃいいのですが、降魔の杖が密かに気に入っている筆者にとっては寂しいですよ〜。

 バーンの勧誘時、ダイの目のアップが映し出されるのはアニメの改変ですね。揺らぐ目がダイの葛藤を現していて、見ていて胸が苦しくなります。

 ダイが迫害されると告げるシーンで、バーンが広げていた手を下げるのが印象的でした。それまではずっと、自分はダイを受け入れるとばかりに手を広げていたのに、このシーンでダイに味方はいないと知らしめるようにそれを止めたように感じました。

 ベンガーナでの回想シーン、色褪せたセピアのような色彩と、顔に影のかかったダイの横顔がいいですね。
 原作ではダイは、バーンの話を黙って聞いている間ほとんど表情を動かさないのですが、アニメでは感情に合わせて表情が変化しています。ダイの辛さ、やるせなさをダイレクトに感じ取れます。

 レオナの反論、説得力も根拠もないのに、どうしても言わずにはいられなかった感がいいですね。速攻でバーンに論破されちゃいましたが(笑)
 バーンの説得台詞も、大幅省略や改変が混じっています。

原作バーン「公事にたずさわるそなたならようわかろう?」

 確かにこの言い回し、言葉だけで伝えるのは難しそうですね。
『公事:個人的でないこと。公式のこと。政治』の意味で使ってるのだと思いますが……それだと『おおやけごと』と読むはずなのに、再録版のルビでは『こうじ』でふってありましたよ(笑)
 
 古語交じりの言い回しは個人的には大好物ですが、漢字と並行して見聞きするならともかく、耳から入る言葉だけだと伝わりにくい言葉もあるなぁなぁと実感します。

 後、個人的に今回一番気に入った改編台詞が、以下の部分です。

原作バーン「反旗を翻した今でも、バランやハドラーに対する敬意は変わらんよ……」

アニメバーン「バランやハドラーが反旗を翻しそうとも、彼らへの敬意は変わらんよ……」

 比べると判りますが、アニメ版の方がバラン達に情を寄せているように感じられます。微妙な言葉遣いの差で、他者に与える印象がこんなにも違うのかと驚くと共に、言葉選びの大切さを思い知ります。

 バーンがダイに二択を迫るとき,バッと手を広げるのはいいですね。
 斜めになっている画面が、徐々に水平に近づいていく演出も気に入っています。画面を斜めにすると、どうにも不安な気持ちになるのは、目の錯覚を生かすトリックアートなどで多用されるテクニックですが、アニメでも応用が利く物なんですね。

 二択を迫られる際、ノーと答える時、表情を見せずにダイの後ろ姿を見せる演出もいい感じ♪
 原作ではずっと顔を見せていますが、アニメでは敢えて顔を見せず、辛そうなダイの声で魅せてくれている気がします。

 バーンの台詞が、原作では『甘い英雄の幻想』がアニメでは『英雄の甘い幻想』に改変されています。校正レベルの細やかな変化ですが、言い回しがより分かりやすく、イメージが伝わりやすくなっているのに感心します。

 目を伏せたバーンが、ダイの否定を聞いて片目だけ開けるシーン、原作にはない改変ですが、渋くてかっこいいですね。

 この時のバーンは、まるでバーン自身が英雄の幻想に浸った過去があるかのように、思い入れすら感じる台詞回しが印象的でした。バーンの過去は原作でもほとんど触れられていませんが、魔界の神になろうとすることで彼が失ったものもあるのではないかと思えたシーンでした。

 ダイが人間達が好きだと語るシーン、声優さんの熱演に涙がこぼれそうになりました!
 震えがちの声で、それでも必死に自分の思いを語るダイが、実に良かったです!

 原作では、この時のダイには一種の諦観というか、清涼さすら感じる突き抜けた透明感を感じましたが、アニメのダイは欲も悪くももっと泥臭く、傷付き葛藤を抱えた上で、それでも自分の信念を貫こうとする強さに魅力を感じます。

 表情や影の見せ方、声の演技、どれも同じ方向性を共有して『ダイ』という少年を形作ろうとしているからこそ生まれた、アニメのダイなんだなと実感しました。
 
 ダイが決意を語るシーン、地平線を斜めにしたような不安定な構図もよかったですが、暗い目をしたダイのアップがまた、たまりませんでした♪ 髪の毛に隠れているせいもあって、光の見えない目のが、ヒュンケル戦で暴走していた時の目に少し似ているなと思いました。
 ダイよりも、むしろヒュンケルに合いそうな暗い目ですね。

 そして、そんな目に似つかわしくない、これまでの人間達との思い出の回想が実にいい感じです。落差の大きい幸せな思い出をここにだしてくるとは……っ。
 これも、アニメの改変ですね。

 光を強めたような回想シーン、ブラスじいちゃんやクロコダイン、ロン・ベルク、チウが抜けていたのがちょっと残念なんですが、これまで知り合った人間達に重点を当てたと思えば……、あ、それでいうなら、ポップの両親もいなかった気が(笑)

 それはさておき、ダイが思い出すみんなの中でポップが最後になっているところに、なんとも言えない絆を感じます♪
 お茶目に笑っているポップの表情も、実に好みですし♪

 ダイの決意の表情、やっぱりいいですねえ。原作通りの構図と表情だったのが、なんだかすごく嬉しかったです。左右反転や、新たな構図もいいのですが、やはり決め所では原作通りの方が馴染みます。

 人間が業の深い生き物だと言うバーンの台詞が、そのままなのも感激しました。ダイよりも、人間に腹を立てているような雰囲気も好みです。

 それに対して身がまえるダイは、原作では上から見下ろすような姿勢でしたが、アニメではむしろ下から見上げるような姿勢に改変されていますね。剣の持ち方自体は同じなのに、視点の位置が変わるだけで随分印象が変わるなと思いました。

 レオナの泣き顔、実に可憐でいいですねえ〜。
 ピロロの偵察、堂々としすぎていて、なぜダイやバーンが気づかなかったのか気になるぐらいですが(笑)、瞬きで外界と異空間を繋げる演出には痺れました!

 キルバーンの正体を思えば、すごくいい伏線だと思います♪ これも、アニメの改変ですね。
 でも、キルバーンが息を切らしている描写があるのがちょっと意外でした。まあ、現在の技術でもコンピューター内のキャラクターの動きにリアルティーを持たせるため、瞬きや首を動かすなどの仕草を設定しておくことを思えば、不自然な設定でもないですね。

 キルバーンの不手際を淡々と語るアバン先生の眼鏡が白く、表情を読ませないもので、最後におまえの負けだと言う時だけシリアスな目が映し出される演出、かっこよかったです!

 キルバーンが長々と語るシーン、原作では目のアップの連続で不気味さを演出していましたが、アニメでは目のアップの他に、アバン、キルバーンが対峙している頭上にジャッジが浮かぶ構図もあったのが楽しかったです。
 
 キルバーンが笑うシーン、肩をすくめている不気味ポーズの前に、剣の音と共にアバンの剣が大きく映し出される演出が良かったです。原作では剣の音が聞こえるのは同じでも、ここは剣を持ち替える手首のシーンでした。

 アバンストラッシュのシーン、よく見たら、うっすらと剣の破片が黒く浮かび上がる演出の後、剣が折れていますね。
 原作では根元近くで折れていますが、アニメでは半分にちょっと足りないぐらいの長さが残る形で折れています。

 キルバーンの罠、頭上のラインの変化が地味すぎて分かりにくすぎっ。金色のラインが濃い黄色になっているだなんて……そんなん分かるかいーーっ!! せめて、色ぐらいは変えてーっ。
 原作では白抜きだったラインが、刃を取り出した後はトーンを張る方向に暗く変化していたんだし、せめて灰色にして欲しかったですよ〜っ。

 でも、ファントムレイザーの迫力に感動!
 キルバーンが手を振り下ろすと同時に、空間のあちこちに刃が浮かんでいる状態から消えていき、キルバーン自身も赤く染まった目だけを残してシルエット化していく演出、いいですねえ。

 アバン先生がすっかりと見えない刃に取り囲まれている図、下から上へ見上げる構図になっていたのはアニメの改変です。原作では、上からの俯瞰に近かったのですが、驚くアバン先生の表情も見えると、ファントムレイザーの悪辣さが際立ちます。

 キルバーンがかっこつけ台詞を言ったところで、CMに。まさか、ここで切るとは思いもしなかったシーンでした。

 回避専念中のアバンと、キルバーンの猛攻、横から見た構図での演出がかっこよかったです。ちょいちょい挟まれるアバン先生が傷つき、血が噴き出る表現には驚きましたが。まさか、ここまで派手に出血させるとは、と思っていましたが、アバン先生が跪くシーン、下は原作以上に血まみれなのに、服は破けていても真っ白なのってどういうこと!?(笑)
 防水どころか、水気を弾く素材ででも出来ているのか、驚きの白さです(爆笑)

 キルバーンの「心臓をまっすぐ、一突き」の口調、ゾクゾクするような凄みが素敵でした! その直後の「それで終わりさ」と軽い口調との落差がたまらなくいいですね。

 アバン先生が意識を失いかける表現、目が焦点を失い掛けるアップから、キルバーンがブレて見える演出がいいです。

 キルバーンが真正面から剣を構えるシーン、止まっていた足が踏み込んで動き出すシーン、原作にはない改変ですが、カッコいいですね! キルバーンのアクションが、こんなにかっこよくなるとは思いませんでした。

 キルバーンの攻撃を受けるアバン先生が、最初は白目な眼鏡のままで、寸前で表情を見せる演出がいいです。
 先生の台詞『ムダ死だけはするわけにはいかない……!』の部分が省かれていますね。

 ジャッジの手が襲いかかってくる演出、手の動きが怖っ。
 暗闇の中に突然手だけが動き出すって、なんだかホラーを見ている気分です。

 アバン先生がジャッジに掴まれてからの構図は、左右逆転していますね。それにしても、キルバーンの指を振るという動作が追加されていますが、相手がトラップにかかったと思ってから、おもいっきり余裕を噛ましている態度に本気でむかつきますね(笑)

 状況次第で余裕を噛ましたり、感情的になる悪役なんて演技するには難しそうな役だと思うのですが、声優さんの見事すぎる演技には脱帽ものです。

 サヨナラと手を振る動き、手首から先しか動かさない省エネな動きに、死が確定したキャラには手を抜くキルバーンの小狡さを感じちゃいました(笑)

 キルバーンに追いすがるアバン先生が、必死に飛び上がるカットはアニメの改変ですね。切羽詰まった感がいいです!
 手首を切るシーン、短すぎて良く分かり憎かったですが、原作と違って手袋が破ける描写はなかったみたいですね。

 原作ではアバン先生は無言のまま、白目でメガンテを受けるイメージでしたが、アニメでは悲鳴が入っています。
 原作でもメガンテシーンでは口を開けたカットが入っていますので、台詞にしていないだけで叫んでいたと思ってもおかしくなさそうですね。

 それにしても、アバン先生の手首の表現、えげつなっ。
 血が出なければ、構わないのでしょうか……ま、まあ、それでも、原作でのアバン先生の手は1度、壁にぶつかってから転がっているので、それに比べれば扱いがマシな方ですね。
 原作では力なく開いた手の角度が、もっと死亡感あふれていましたし。

 キルバーンの台詞で『バーンパレスの先端』という説明がカットされていましたが、ここは大事な部分じゃないし問題なさそうです。
 黒一色に染まって、キルバーンの輪郭だけが浮かび上がる演出、こっちもすっごくホラーっぽいです!
 
 キルバーンの『ダイに押されている』の台詞は、アニメの改変ですね。
 意味ありげなキルバーンの台詞、声優さんの演技を交えて聞くと、すっごく意味深に聞こえます。

 場面が変わってポップ達。
 未だに座り込んでいるポップもなんですが、マァムに支えられて立っているくせして、ヒュンケルが一番えらそうに話しかけていますね(笑)

 ミストバーンに言い返す際、ヒュンケルが目を閉じて答えているのはアニメの改変です。原作では、目を開けていますが……アニメの目を閉じた顔の方が、ドヤ顔率が高い気がします(笑)

 ヒムちゃんが名乗りを上げるシーン、よく考えたら前に出るまでもなく、彼が一番最前線にいるのですが、それでも前に出る辺りが彼らしいですね。

 ラーハルトが「ほう」と呟くのはアニメの改変ですね。
 ヒムが気合いを入れるのを止めた途端、逆立っていた髪が元通りしなやかに方に落ちる動きが、綺麗でいい感じです♪ 色もプラチナブロンドで、後ろから見るとまさに髪だけ美人(笑)

 ヒムの自慢の後、上からみたホワイトガーデンの全景が映りましたが……やっぱり、アバン先生のピクニックシートはお弁当は影も形も見当たりません。ああ、やっぱりミストバーンに消し飛ばされちゃったんですかね……。

 ヒムちゃんとチウのやり取りが楽しい♪
 チウに止められた際の、半目になったヒムの呆れ顔がギャグっぽくていいですね。原作では一コマだったのに、呆れる表情から半目になり、最後はため息までついているヒムの表情豊かさが嬉しいです。
 
 それにしても目を閉じたドヤ顔という点では、チウもヒュンケルと同じなのに、格好良さではものすごい差を感じます(笑)

 原作ではヒムがミストバーンを一方的に殴っていますが、アニメではミストバーンが途中で逃げ回っているのが面白かったです。
 ラーハルトがヒムを評価している時、ミストバーンは思いっきり逃げまくっていて、ヒムのパンチは全然当たっていないのですが、むしろそのことがラーハルトの評価を上げているように思えます。

 なにせ、ラーハルト達三人係の攻撃をミストバーンはほぼ避けずに受け止めていたのに、ヒムの攻撃は嫌がって避けているのだから、当たれば効くと言っているようなものですしね。

 ヒムの闘気についての説明シーンで、マァムとポップの台詞が追加されています。よくある教育番組で、質問をする子供役ですね♪
 後、細かいシーンですが、ヒュンケルが説明を始めた時、クロコダインが前に進み出てきた動きが気に入りました。
 闘気に興味を持って、前で見たくなったと解釈したくなります。

 また、マァムはヒュンケルを支えながらも、嬉しそうにヒムを見ているのも好印象。原作では実は、この時のマァムはヒムそっちのけでヒュンケルの方ばかり見ているのですが、アニメでは純粋に正義を信じる仲間が増えたことを喜んでいる感じがします。

 チウの前に進む動きが、可愛いですね。
 原作ではヒュンケルとクロコダインを覗き見し、ヒムを見ているのですが、とぼけた顔のまま前に進みでる動きも実に可愛くて好きです。

 チウが名前を考える時に、上を向いて考え込む表情は原作と同じでしたが、その後で笑顔が入っていたのは嬉しい改変でした。
 また、お名前の候補の際、カラフルな色で名前をかいた立て札がでてくる演出も、お間抜けでいて可愛くってお気に入り♪

 ヒム、名前を決めるときのギャグ顔もいいですね。鼻水が出ているのも原作通りですが、涙だけじゃなくて鼻水も出るようになったんですねー(笑)
 チウのVサイン、チョキチョキと指を動かしているのが可愛くていいです。
 ポップの台詞の最中に、チウがなにやら応援しているっぽい声が聞こえますが、よく聞こえないのが残念!

 ミストバーンが噴水前に吹き飛ばされるシーンと、ヒムちゃんの勝ち誇ったような台詞はアニメのオリジナルですね。原作でもダメージを受けて斜めっていますが、そこまで遠くに飛ばされてはいないです。

 クロコダインの忠告の後、ヒムちゃんが振り向くシーンはアニメの改変ですね。

 ヒムが滅砕陣を解く寸前、身動きできないまま立ちすくんでいるかのような間があったのは嬉しい改変です。
 絶体絶命のピンチからの逆転感があって、たぎりますね♪

 滅砕陣の消え方も、綺麗でしたし♪
 ミストバーンの驚きの目、これまでで最大の光っぷりだと思いました(笑)
 ポップの台詞の際、ちょっとよろけている動きはアニメの改変ですね。ノーダメージでもなかったでしょうから、自然な動きだと思いました。

 ポップとラーハルトのやり取りで終わらせるとは思いませんでした。
 この後、ラーハルトが自分でも勝てないと台詞を続けるはずですが、それは次週のお楽しみですかね?

 ダイ対バーン戦、ダイが圧倒的に優勢なだけに、最後のバーンの目の光り方がいかにも不穏でいい雰囲気。

 次回予告、アバン先生がアバン先生の死に一切触れていませんね(笑)
 ヒムとミストバーン、ダイとバーンが映っていましたが、ヒムが主役っぽい活躍っぷりです。

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