『勝負をかけた攻撃』(2021.7.23)

《粗筋》
 
 ミストバーンとヒムとの対決を、見守る勇者一行達。
 驚き、ぽかんと口を開けているポップの隣では、ラーハルトがゆとりを滲ませた笑みを浮かべつつ呟いた。

ラーハルト「ヤツと戦ったら、オレも危ないかもしれんな」

 軽口めかせたその台詞に、ヒュンケルは謙遜はよせと反応する。
 まともに対決したら、まずラーハルトが勝つと予測しているヒュンケル。戦いには相性があり、得手不得手がある。
 速度重視のラーハルトは、闘気で戦うのには向かない。

 それを聞いたクロコダインは、ヒムが技術的には荒削りとは言え、光の闘気を使いこなしていることを評価する。
 ミストバーンにとって、光の闘気は天敵に等しい――納得したように、目を伏せるラーハルト。

 ヒムは、ミストバーンをいたぶるのは少々気が引けると発言する。魔王軍の中で、ミストバーンだけはハドラーを評価してくれていたと考えているヒム。
 それを聞いたミストバーンは、ヒムの姿にハドラーの面影を見いだす。敵を睨みつけるその目も、荒れ狂うようなその髪も、ヒムはハドラーに生き写しだった。

 だが、ミストバーンは、ヒムがハドラーの闘気や生命を受け継いだことについては否定的だった。怒りに満ちた声が、彼の心情をそのまま物語っている。
 しかし、ヒムは論理的な説明はできないが、そうだと思いたいのだと語った。

 ハドラーの意志がヒムに生命を与えたと聞き、そんなことがあるのかと驚くマァム。
 それを聞いて少し考え込んだチウは、きっぱりと心を決めたように目つきを正し、数歩前に進み出て、力強くヒムを肯定した。
 訝しげに振り向くヒムに、チウは拳を強く握りしめながら、さらに熱を込めて語る。

チウ「悪に奇跡は起こらない! 君は正義の獣王遊撃隊第12号だから……それで、いいのだ!」

 腰に手を当てて大きく頷いてみせるチウは、ヒムの意見ごと存在も全肯定してくれた。
 そんなチウを、意外そうな表情で見返すヒム。その胸には、黒々と『12』の文字が刻まれていた。

 ポップとラーハルトが、ヒュンケルとマァムが、そしてクロコダインやビースト君が、満足そうな表情で彼らを見守る。
 目をぱっちりと開けたチウに対し、ヒムは一瞬瞑目し、背を向けてから隊長へと礼を告げた。

 しかし、ミストバーンは人形風情がハドラーの生まれ変わりと自称したのに激昂し、爪が折り取られた手に力を込める。彼の怒りに呼応するように、爪は何事もなかったように生え替わり、刃を形取った。
 ヒムを粉砕すると宣言し、彼に向かって襲いかかるミストバーン。

 それに対し、ヒムは恐れる様子もなく微動だにしない。
 自分のこのオリハルコンの身体を砕けるのは、この世にたった一人しかいないと、強気に言い返すヒム。
 それを聞いてたチウは、一瞬キョトンとしてから思った。

チウ「え……!? ……ぼく?」

 ヒムはそれ以上攻撃を待たず、全身に光の闘気を纏って自ら進み出る。衣を大きく靡かせ、振りかぶった刃の爪を振り下ろすミストバーン。
 自分に向けた振り下ろされた刃を、ヒムは両の拳を打ちつけ、白刃取りして動きを止めた。

 殺気の篭もる睨み合いの直後、ヒムは手に力を込めて爪の刃を砕いてしまう。
 折り取った刃を投げ捨てるヒム。切っ先は、床石に突き刺さった。

 ヒムはそのままミストバーンの襟を取り、頭突きを噛ました。
 重低音を響かせる頭突きの迫力に、ポップはその痛みを想像してしまったのか、自分の頭を抑えて顔を歪める。

 ミストバーンにそのまま連打をしかけるヒム。猛烈なラッシュに、ミストバーンは手も足も出ず、棒立ちで打たれるがままだ。
 ラーハルトの攻撃では無傷だったのに、ヒムの拳で衣が縒れてきたように見える。

ポップ「すげえ……」

 マァムは驚きのあまり、小さく息をのむだけで精一杯だが、チウは両手を握りしめて力一杯声援を送る。

チウ「いいぞぉー、ヒムちゃーん!」

 ヒムの拳を一方的に受けるミストバーンは、着実にダメージを受けつつあった。ヒムの力が想像以上だと認めたミストバーンは不利を悟り、あの力を使うしかないと苦渋の選択をする。






 戦いの最中、バーンに呼びかけるミストバーン。
 その瞬間、世界から音や色合いが消え、あたかもミストバーンだけが存在するかのような空間になる。
 青空に浮かぶ白亜の城、バーンパレスすら、奇妙に青白く染まった世界の中で、必死にバーンに呼びかけるミストバーンだが、返答はない。

 バーンに自分の声が届いていないのかと、驚愕するミストバーン。
 いかにダイとの戦い中とは言え、自分の声が聞こえないほどバーンが意識を集中しているとは考えられないと一度は否定した後で、まさかダイがバーンをそこまで追い詰めているのかとミストバーンは思いを巡らせる。






 所は変わって、天魔の塔跡。
 瓦礫を踏み切って、高く跳び上がりバーンに斬りかかるダイ。降魔の杖でそれを受け止めるバーンに、ダイは何度も剣を振り回す。金属同士がぶつかり合う堅い音が響く。

 ダイを払いのけるバーンだが、ダイは再び上に飛んでから攻撃を仕掛ける。今後の攻撃はバーンを吹き飛ばし、彼は後方にあった柱に叩きつけられる。相当なダメージなのか、白い煙がもうもうと上がる中、床に降り立ったダイは油断なく身がまえたままだ。

 瓦礫が崩れることで発生した白い煙は、中々薄れない。
 肩で息をしながらも、ダイはバーンの動向を警戒してその場で見守り続ける。

 その時、ひょこっと瓦礫から顔を覗かせたのはレオナだった。
 彼女は不安そうな表情で、今一歩精彩に欠いたダイの攻撃を見つめていた。ダイが何かに戸惑っているのを察し、心配するレオナ。

 ダイの戸惑いは、バーンの『強さ』にあった。
 こんなものなのかと思えるほど、バーンは弱く感じられた。ミナカトールが効いているのかとも思うが、ハドラーにほとんど効いていなかった呪文がバーンにそれほど効果があるはずもない。

 自分が飛躍的に強くなったから、相対的にバーンが弱く感じられるのかと、自分の手を見つめながら悩むダイ。
 そんなダイに、バーンは気分はどうかと話しかける。
 警戒するダイとレオナに、バーンはゆっくりと立ち上がりながら語りかけた。

バーン「一度破れた相手を上回る気分は、どうだと聞いているのだよ」敗北し

 そう尋ねるバーンの表情には、微塵の焦りもない。
 相手の実力に戸惑い、自分の成長度をにわかに信じられないだろうと話しかけるバーンの言葉を、警戒心も露わに聞いているダイ。

 だが、すぐにいい気分になってくると決めつけるバーンを、不審げに見返すダイ。

ダイ「いい……きぶん?」

 己の強さに酔うのは、どんな美酒を飲んでも味わえない極上の気分だとたとえてから、バーンは不敵に笑う。
 
バーン「……と言っても、子供に酒の話など分からぬか……」

 バーンの言葉を、ダイはまるっきり理解しきれないかのような表情で、聞いていた――。






 同じ頃、ホワイトガーデンでは、ヒムの雄叫びが響き渡る。
 完全にミストバーンを圧倒し、彼を蛸殴りにするヒム。ダメージに叫び声を上げるミストバーンの身体から、暗黒闘気があふれ出した。

マァム「ミストバーンが反撃よっ」

 ヒュンケルと寄り添い合うマァムが、そう叫ぶ。触れあう程顔を寄せ合った二人は、そろって驚きに目を見開いた。
 一人、離れたところにいたポップも驚愕に目を見張る。

 全身から紫色の煙じみた暗黒闘気を放ちだしたミストバーンは、バーンから『あの力』を使う許可が出ない以上、自力でなんとかしようと試みる。
 左手に全暗黒闘気を込めたミストバーンはその双眸を輝かせ、闘魔最終掌と叫ぶ。

 開かれたミストバーンの左手が一段と強い光を放ち、赤紫色に輝いた。
 それを見たクロコダインは、暗黒闘気を全て手に集中させた切り札だと見抜いた。
 それを聞いたヒムの肩が小さく跳ねる。

ポップ「ヒムッ、そいつに触れたら絶対ヤバイ、なんとか躱せっ!」

 しかし、ミストバーンは回避は不能と断言し、粉々に握りつぶしてくれると手を前へ突き出した。
 それを見て、逃げもせずに身がまえるヒム。

ポップ「ああっ、あのバカ、避けやがらねえっ」

チウ「無茶だっ、ヒムちゃん! 

 ヒムを心配するポップとチウ。
 ラーハルトも割り込もうとしてか、槍を手に動きかけた。が、ヒュンケルがそれを止める。

ヒュンケル「待て。あの構えは……!」

 険しい目で的を見据えながら、ヒムは拳を固く握りしめていた。
 同じように雄叫びを上げながら、ミストバーンとヒムは同時に動き出し、距離を詰める。
 ミストバーンの左手は、殴りかかってきたヒムの右手を受け止める形となった。

 両者の手を、暗黒闘気の光が包む。
 両方とも気合いを入れ、相手を押し切ろうと力を込める。開かれたミストバーンの掌を、握り込んだ拳で押しきろうとするヒム。
 だが、突然、ヒムの右手が砕け散った。圧に耐えかねたかのように、拳ごと瞬時に消滅してしまう。

 破片が散る中、大きく目を見開くヒム。
 その光景を見て、仲間達は衝撃を受ける。
 砕けたヒムの拳に続いて、手首までもが飲み込まれるように砕ける。それを見て、勝ち誇るミストバーン。

 どんどん砕けて短くなっていくヒムの腕を見て、焦りを見せるポップ。
 このまま砕け散れと叫ぶミストバーンだったが、ヒムはそれを拒否した。自分を砕ける相手は一人しかいないと強く否定し、ミストバーンに砕かせるのは右腕一本止まりだと言い切った。

 両者の距離が接近した瞬間を狙って、ヒムは光の闘気を纏わせた左拳で反撃する。黄金に輝く拳で、オーラナックルをミストバーンの顔面に打ち込んだ。
 光の闘気による強打に、ミストバーンの衣が多少破け、中に人の顔らしきものが浮かぶ。

 自分がポーンに負けたのが信じられないとばかりに驚き、吹っ飛ばされるミストバーン。階段を砕く勢いで飛ばされたミストバーンを見て、ポップやチウは歓声を上げる。

 濛々とした白い煙が薄れる中、ミストバーンの身体が力を失ってわずかにずり落ちる。
 それを見て勝利を確信したのか、ニッと笑みを浮かべ、闘気を一旦収めるヒム。

 肉を斬らせて骨を断つ……自分の腕が回復魔法で復元すると知っているからこそ、思い切った作戦に出たとウインクしながら明かすヒム。
 真顔に戻って止めを刺そうとするヒムだが、それにヒュンケルが待ったを掛けた。

 戦闘不能だからトドメは必要がないと言い、仮面を剥ぐようにと言うヒュンケル。戸惑い、オウム返しに問い返すヒム。
 
 動けないミストバーンは、敗れた服のあちこちから暗黒闘気を溢れさせつつ、バーンの名を呼びかける。すがるような呼びかけに、答えはなかった――。






 一方、天魔の塔跡では、バーンが杖の柄を軽く床石に打ちつけていた。佇むバーンの姿は威厳に溢れ、ダメージは全く感じられない。
 低く、不敵な笑みをこぼすバーンに対し、ダイは警戒心も露わに睨みつける。

 その様子を塹壕の中から見ていたレオナは、ダイがバーンの謎の自信に気圧されて、段々後手に回っていると察する。
 ダイにしてみればバーンが全力で戦っているのが分かるだけに、疑問が強まるばかりだ。

 余力を残しているわけでもないのに、なぜあれほどの余裕があるのか……殺気だった目でバーンを睨むだけになってしまったダイに、レオナは立ち上がって声援を送る。

 自信を持ってと呼びかけ、優勢の内に押し切る勝ちもアリだとアドバイスするレオナだが、バーンの手から炎系の魔法が生み出されたのを見たダイが、振り返って出てきちゃダメだと叫ぶ。
 大慌てで塹壕に引っ込むレオナ。
 穴に完全に隠れて、祈るようなポーズで震えている。

 バーンは炎を強め、ダイの力を今のうちに暴き立ててやると発言する。
 バーンが生み出したのは、カイザーフェニックス――大魔王のメラゾーマであり、まるで生きているかのように鳥の姿を模した炎の塊だった。

 塹壕から顔だけをちょっぴり覗かせ、炎の鳥に驚くレオナ。
 バーンは腕を大きく振り下ろし、カイザーフェニックスをダイめがけて放った。
 鳴き声にも似た音を立てながら、ダイへと迫る炎の鳥。

 が、ダイは慌てず、全身に闘気をみなぎらせる。
 一度見た呪文であり、前回と同様アバンストラッシュで対抗しようと身がまえるダイ。
 しかし、その目が驚きに見開かれた。

 迫り来る炎の鳥と重なって、杖を手にこちらに突進してくるバーンの姿があった。

ダイ&レオナ「同時攻撃!?」

 豪火が燃え上がり、眩い光が目を焼く。
 そのあまりの目映さに、思わず目を背け、固く目を瞑るレオナ。線香がようやく収まって目を開けたレオナが見たものは、悠然と佇む大魔王の後ろ姿と、未だに燃え続ける炎の鳥の姿だった。

 両者が激突した後、どうなったのかと戸惑うレオナは、姿の見えないダイを心配する。
 落ち着き払ったバーンが、低く呟いた。

バーン「ダイ……」
 
 驚いたレオナの目の前で、バーンの肩が突如として血飛沫を上げる。肩当てが切り裂かれ、噴き上がる血にさすがのバーンの顔色を変えた。
 金属音を立てて、壊れた肩当てが床に落ちる。
 傷ついた肩を押さえながら、バーンは竜の騎士の讃えるように言った。

バーン「恐るべし、竜の騎士よ。今の余の最大の攻撃でも、とどめは刺せぬか……」

 カイザーフェニックスが鳴き声のような音を立てて、大きく身をのけぞらす。
 その炎の中央から光が一閃し、炎を切り裂いたダイが登場した。
 まるでダイ自身が炎を収めたかのように、残った炎も収束し、絶ち消える。

 そんなダイを見て、レオナは嬉しそうな顔で彼の名を呼んだ。
 何事もなかったかのように無事に着地するダイを、驚愕の眼差しで見やるバーン。
 あちこちにダメージが感じられるが、それでもダイは平然とその場に立った――。






 場所は変わって、ホワイトガーデン。
 ズタボロのミストバーンは、変わらずに念話でバーンへと呼びかけ続けていた。
 そんなミストバーンに近づき、こいつの仮面を引っぺがすのかと確認するヒム。

 ヒュンケルは、ミストバーンの正体がバーンに直結していると言う自分の予測を説明する。

ポップ「大魔王の秘密……!?」

 ミストバーンは以前は、声を全く発さなかった。それは、ミストバーンの顔や声がバーンの正体に繋がる重要秘密だと推察するヒュンケル。

ポップ「……ホントかよ」

 小声で、そう呟くポップ。
 ヒュンケルは以前、六代軍団長の中でもっともバーンに気に入られていた上、ミストバーンを師としていたことを語り、自分がミストバーンの素顔を見れば、長年隠されていたバーンの秘密が垣間見られそうだと説明した。

 それをダイに伝えられればと訴えるヒュンケルに、ポップはその分だけダイが有利になるかもと理解する。
 ヒムも、特に不満はない。
 ミストバーンはすでに抵抗不能であり、いつでも倒せると思うからこそ、衣を引っぺがすぐらいわけがないと語る。

 だが、衣という言葉にクロコダインが反応する。
 無造作にミストバーンの衣に手を掛けたヒムを、大声で止めるクロコダイン。
 突然の大声に、みんながクロコダインの方に注目する。
 どうしたんだと問うポップ。

 クロコダインはミストバーンの衣をはぐのが危険な気がすると、警告する。
 その意味を正すヒュンケルに、クロコダインは答える。

『ミストバーンに、闇の衣を取らせるな』

 ハッとするヒュンケル。
 クロコダインは自分達が地上から上がってくる直前、ロン・ベルクから伝言されたと言う。





 倒れているミストバーンの姿から、地上からバーンパレスを見上げる場面へと切り替わる。

 闇の衣とは何かと問うクロコダインに対し、ロン・ベルク自身も漠然としか分からないと言いながらも、ミストバーンが自分の力を押さえつけていることだけは確信していた。

 自分達の戦いがあれだけ長引いたのは、どちらも自分の力をセーブしていたからだと、ロン・ベルクは語る。

クロコダイン(あれほどの戦いが……!)
 
 話の腰を折らぬようにか、クロコダインは内心で驚愕するも口には出さない。

 ロン・ベルクは彼の最後の台詞を根拠に、ミストバーンが全力を出したくても出せなかったと推察した。
 その事実に驚愕しつつ、問うクロコダイン。

クロコダイン「ロン・ベルク殿! ミストバーンは、まだ真の力を隠している、と……!?」

 ロン・ベルクは、それを肯定した。

ロン・ベルク「ああ……なにか、ある。本気を出させるような真似は、しない方がいい。奴に、闇の衣を取らせるな――」






 ロン・ベルクがミストバーンの真の力を封印する何かと、闇の衣と表現したと解説するクロコダイン。
 それがあの仮面かと問うヒュンケルに対し、クロコダインは分からないと答える。ただ、ヒムの衣という言葉でハッとしたのだと言う。

 それを聞いて、考え込む素振りを見せるヒュンケル。
 マァムは心配そうに、ポップやラーハルトはヒュンケルの答えを待つように彼を見つめる。

 マァムは、ロン・ベルクは戦って倒せるチャンスがあれば、真の力を見せる前に一気に倒してしまえと言ったのだと解釈した。
 それに、頷くクロコダイン。

 ラーハルトも一理あると、それに賛同する。
 ミストバーンの底知れなさや、ロン・ベルクがある意味でヒュンケル以上にバーン達の秘密に肉薄しているのではないかと指摘する。

 それを聞いて、ヒュンケルも納得する。
 ロン・ベルクの言葉ならば、無視もできないと考えるヒュンケル。
 律儀に結論が出るのを待っていたヒムは、どうするのかと問いただしてくる。ヒム自身はどちらでもいいと思っているが、短気な彼は結論が出ないことに苛立っている様子だ。
 悩み込むヒュンケルを、マァムはじっと支え続ける。

マァム「ヒュンケル……」

 その時、上の方から地響きが聞こえてきた。

ポップ「ダイ達だ!」

 真っ先に上を見て、反応したのはポップだった。マァムも、最後の戦いがもう始まっていると察して、上を見やる。
 小さな破片が、階段を転げ落ちた。
 それを見た後で、ヒュンケルは心を決める。

 ヒムに、止めを刺すように頼むヒュンケル。
 正体暴きはいいのかと念を押すヒムに対し、ロン・ベルクの助言なら聞いておくべきだと答えるヒュンケル。先を急ぐ必要もあるし、まずは魔王軍の戦力を確実に削ぐべきだと結論づける。

 軽く承知したヒムは襟首から手を離し、バク転でミストバーンから距離を取った。見事に着地を決めたヒムは、すかさず拳を握って身がまえる。
 虹色に輝く闘気が、拳を彩った。
 
 それを見つめるヒュンケルとマァム。
 ヒュンケルは憂いがちに、これでいいと自分に言い聞かせる。
 この結果、ミストバーンの謎が砕け散ったとしても……。ミストバーンの正体に拘るのは、かつて師と仰いだ自分だけの個人的感情にすぎないのかもしれないと思い、今は勝利が第一と考えようとするヒュンケル。

 ヒムは、とどめの一撃をミストバーンに放とうとしていた。
 今後に至っても、ミストバーンは必死に心の中でバーンへと呼びかけるばかりだ。

ミストバーン(バーン様……バーン様……ッ、お許しを!!)

 暗闇の中に、突然、紫色の暗黒闘気が広がった――。






 場所は変わり、天魔の塔。
 肩を押さえて呻くバーンだが、その手からは魔法のひかりが発せられている。それに、おびただしい出血もすでに止まっていた。
 そんなバーンを、ジッと後ろから眺めているダイ。

 ダメージを負っているのか、バーンは多少ふらついている。しかし、降魔の杖の先端は煌々と光を放ち、バーンがまだ闘志を失っていないことを示していた。

 それを見たレオナは、今の一撃はバーンが勝負を賭けた攻撃だったと推察する。ダイがそれを凌ぎきった――それは間違いないが、レオナの目では両者が激突したところまでしか確認できなかった。

バーン「……なんという奴だ……! 自らカイザーフェニックスに飛び込むとは……」

 半ば呆れたような、感心したような口調でバーンが呟く。
 それを聞いて、驚くレオナ。
 バーンは、あの瞬間を回想する。





 真っ白な世界の後、バーンがカイザーフェニックスを放った瞬間に時間軸がまき戻る。ダイめがけて放たれた火の鳥を見て、ダイが決意を固めたような表情を見せた。

 火の鳥を追いかけ、同時に切り込むバーン。剣を素早く構え直したダイは、自ら斬りかかってきた。
 その際、ダイは自らの意志で炎の鳥の中に飛び込んだ。

バーン「カイザーフェニックスを防いでも、降魔の杖の一撃を受ける」

 皮肉にも、炎がダイの姿を包み隠す煙幕となった中、ダイは後ろを取ってバーンに斬りかかる。

バーン「逆に杖を防いでも、炎に焼かれる」

 バーンと組み合ったダイは、その勢いのまままバーンの肩を切り裂き、身を翻して飛び上がった。そのまま、再びカイザーフェニックスへと飛び込んだダイは、鳥の動きに合わせてバーンと距離を取った。

バーン「どちらにせよダメージを受けると悟るや、自ら炎の中に飛び込んだ」

 ダイに見事に利用されたカイザーフェニックスは、止まった後でまるで生き物のように苦しげに喘いだように見えた――。

バーン「一見無謀だが、フェニックスの位置こそが世の隙を突け、切り込める唯一の空間!」

 不敵な笑みを浮かべながら、ダイはどうせダメージを食らっちゃうなら、反撃も出来る方がいいと言い返す。しかし、その口調は無理をしたようなものであり、言い終わると同時にダイは苦しそうにその場にしゃがみ込んでしまう。

レオナ「ダイ君ッ、平気!?」

 身を乗り出し、不安そうに叫ぶレオナに、ダイは返事をする余裕もなく苦しそうに呻き、立ち上がろうとしている。

レオナ(……な、わけないよね。大魔王の最強呪文を受けて……)

 心配そうに、ダイを見つめるレオナ。
 自分の呪文の成果に、バーンはいささか満足げだ。いかに反撃を受けたとは言え、最強呪文の直撃を受けたのにダダですんでは沽券にかかわると考えるバーン。

 杖を身がまえ、バーンは追い打ちを宣言する。
 蹲って俯いていたダイは、苦しそうな声で言い返した。

ダイ「そうは……いかないぞ……!」

 いぶかしがるバーンに、ダイは今度はこっちの番だと宣言する。バーンの肩の傷が治りきる前に、今度はダイが勝負を賭けた一撃を仕掛けると言う。
 苦痛に耐えながら、立ち上がるダイ。

ダイ「そして、おれの考えに間違いがないなら……この攻撃で、必ず、おまえに勝てる!」

 気迫のこもった勇者の勝利宣言に、バーンは肩を押さえていた手をそっと外す。服こそは破けていたが、その皮膚はすでに治りきっており、血すら残っていなかった。

 ゆっくりダイを見やったバーンは、目を伏せ、口元にかすかな笑みを浮かべる。その直後、バーンは目を見開き、面白いと哄笑した。
 攻撃を見せろというバーンに、ダイは頭上で両手を組み合わせる。

レオナ「え!?」

 意外さに、目を見張るレオナ。
 バーンも、一目でそれがドルオーラの予備動作だと悟る。バーンの目の前で、ダイの身体から出でる青い闘気が輪郭を取った。
 両手を身体の前に下ろし、魔法の発射態勢を作るダイを見て、バーンは愚かと結論づける。

 自分にはドルオーラは通じないというバーンだが、ダイは確信を持ってドルオーラは通じると言い切った。
 わずかに、息をのむバーン。

 父親との戦いから、ダイはドルオーラの威力を知っている。絶対防御不能な呪文であるドルオーラから生き延びるには、二つだけ。
 こらえるか、よけるか――。

 握りしめたダイの両手から、青い闘気が噴き上がり出す。
 ダイは、バーンが初めて現れた時、服にさえ傷一つないのを覚えていた。いくら大魔王でも、耐え凌いだのなら全く無傷とは思えない。
 かといって、ルーラで逃げたのなら、瓦礫の下から出てくるのは変だ。

 バーンがドルオーラを防いだ秘密は、降魔の杖にあると断言するダイ。
 言われて、バーンは初めて見るかのように自分の杖を見返す。

バーン「なかなかの名推理だが、外れていたらどうする?」

 ドルオーラは魔法力を多量に使う呪文なだけに、ダイには二発が限界だと見透かしているバーン。

バーン「すでに一発撃った以上、次に魔法力が尽きた時に、余の攻撃が来たら……?」

 脅すようなバーンの言葉に、ダイは分かっていると答える。
 怯えも見せず、これを放ったら自分の魔法力がゼロになると暴露するダイは、目を一瞬、横へと向けた。

 その視線を受け止めるレオナ。
 彼女は何かにハッと気づいたように、瞬きをする。
 再び、バーンに目を据えたダイは、声も高らかに言い切った。

ダイ「だけど、反撃は絶対にない!」

 吠え立てるダイの両手に、竜の紋章が輝く。
 それを見て、杖を前に突き出して身がまえるバーン。ダイの手が竜の顎(あぎと)を形取り、ドルオーラが発射される。

 凄まじいエネルギーが、一直線にバーンへと向かう。
 降魔の杖を一度振ったバーンは、刃から黄金の光を生み出して真正面からドルオーラを受け止めた。
 青と金色の光がぶつかり合い、激しく火花を散らす。
 
 身体こそ無傷でもドルオーラの勢いに押されたのか、後ろへと押されていくバーン。足がズルズルと後ろへ下がっていくが、ドルオーラを抑えるバーンの顔には不敵な笑みが浮かんでいた。

 杖でドルオーラを止めたと、驚くレオナ。
 だが、ダイは驚いた様子は見せない。

ダイ「やっぱり!」

 降魔の杖は、刃を大きく噴出させればあらゆる魔法攻撃を防ぐエネルギー障壁になると説明するバーン。
 ダイの予想通り、バーンは降魔の杖でダイの最初のドルオーラを凌いだのだ。

 青と金色の光は、時に青が、時に金色が優勢になりながらぶつかり合う。
 そんな中、ダイが苦しそうな表情を見せ始めた。

バーン「これを堪えれば、余の勝ちよ!」

 ドルオーラを生み出す手の力が緩み、姿勢を崩すダイ。
 その好機を、バーンは逃さなかった。

バーン「もらった!」

 一際勢いよく、魔法力を噴出するバーン。
 が、その瞬間、ダイは横を向いてレオナの名を叫んだ。大きく後ろに振りかぶったレオナの手には、銀色に光る羽があった。

 それを見て、目を見張るバーン。
 レオナは渾身の力を込め、羽を投げつける。

レオナ「シルバーフェザー!」

 羽は一直線にダイへと飛び、ダイは最初から分かりきっていたかのようにそれを受け止める。
 右手に握り込んだ羽が輝き、闘気が力強さを取り戻す。

バーン「おのれっ!!」

 怒りに叫ぶバーンに、ダイは追い打ちを掛けた。

ダイ「連発だぁあっ!!」

 凄まじい勢いのエネルギーが、バーンを襲う。その量も勢いも、バーンの金色の光を圧倒するものだった。
 耐えるバーンの顔までもが、青い色に染まっていく。

 雄叫びを込め、一際力を強めるダイ。
 それに対抗するバーンだが、勢いは明らかにダイにあった。
 驚愕の表情で、のけぞるバーン。絶叫する形に開いた口から、どんな声が漏れているのか……呪文の轟音に紛れ、聞こえなかった。
 
 すでに、ドルオーラの光は球状となってバーンを囲い込んでいた。 
 超呪文の余波で、蹲るレオナの髪やマントが大きく靡く。
 青い光に対抗する降魔の杖は、今や刃が消滅していた。驚愕の表情のバーンを、青い光が飲み込み、吹き飛ばす。

 絶叫と共に、バーンは消えた。
 呪文の余波でそこかしこが荒れ狂い、瓦礫がドームにぶつかって砕ける。その中で、必死に塹壕に身を隠そうとするレオナ。苦しい中、必死に戦いの行く末を見ようとする。

 ダイは微動だにせず、魔法を放った姿勢のままでいた。
 全てを白く飲み込む光――それは、地上から見たバーンパレスを黒く染め上げるほどの、大きな爆炎となった。

 
 


《感想》

 ヒムの大活躍回ですねっ♪
 前回削られたラーハルトの台詞が、ちゃんとあったのにホッとしました。遠回しにヒムを褒めているラーハルトが、やけに嬉しそうに見えます。

 ラーハルトが「天敵か」の台詞を口にする際、アニメではポップが隣にいるのがなんとなく嬉しかったです。原作ではここら辺では、出番が薄かったですしねえ(笑)

 ヒムとハドラーのイメージが重なるシーン、てっきり原作のようにヒムの背後にハドラーの幻影がダブって見える演出かと思っていたら、ヒムと全く同じ表情、ポーズを取ったハドラーが、ヒムに取って代わる演出として描かれていました!

 重ねるようにイラストを一致させると、ヒムとハドラーの目つきや髪型もピタリとそろってなかなかいい演出でした。
 
 ミストバーンが『ヒムがハドラーの生まれ変わり』について懐疑的だとは原作の時点で感じられましたが、アニメではこの時点ですでに怒っていますね。

 ヒムが自分はそうだと信じたいと告げる際、彼の目が大きくアップになり、その目にハドラーの姿が一瞬浮かぶ演出は良かったです♪

 マァムが疑問を口にするシーン、もっと半信半疑っぽい口調かと思っていたので、思いっきり叫びまくる自問自答はちょっと興ざめでしたよ。あれだけ叫んでも、さしてわざとらしく聞こえないのは声優さんの技量の高さを感じますが、ここはもう少し弱々しくというか、迷いを強めに演じて欲しかったなぁと思いました。

 チウのヒムちゃんへの励ましは、すごく良かったです。
 間をとったりとか、チウの肯定に振り返ったヒムが迷惑そうな表情をしているところとか(笑)、チウが認めた後で、ヒムの表情だけでなく、胸の数字を大きく表示するなど、アニメの細やかな改変が実に楽しいです。

 涼しい顔で目を閉じているラーハルトと、感心したように彼らを見ているポップのツーショット、原作ではラーハルトが右、ポップが左でしたが、アニメでは左右逆転していました。

 ヒュンケルとツーショット中のマァムの可愛さに感激しつつ、クロコダインやビースト君のアップが追加されたのも嬉しいポイント。
 特にビースト君は表情には出ていませんが、弟子の成長を誰よりも喜んでいるのではないかなぁと思えてなりません。
 ヒムを砕けるのが自分だと勘違いしているチウは、実に可愛いですね(笑)

 ヒムに斬りかかる寸前、ミストバーンが全身を使って腕を振り上げる仕草を見せているのが、ちょっと印象的でした。
 ミストバーンのこれまでの攻撃って、基本的に腕の動きを最小限に抑え、爪を伸ばすことで対処している傾向が強かったので、服が翻るほどに大きく振りかぶるシーンは珍しいなと思いました。

 ヒムの白刃取り、掌で刃を挟み込んで勢いを殺すのではなく、両の拳を刃に打ちつけて力尽くで食い止めた印象です。……これ、普通の白刃取り以上に、受け手側のダメージが大きそうな気がします(笑)

 白刃取り後に、ミストバーンとヒムの目のアップで、力比べをしているカットが入るのもいい改変ですね。
 原作では受け止めると同時に、スパッと刃を折ったような印象でしたが、アニメではヒムが力で受け止め、力尽くで刃を砕いた感じです。ヒムの荒々しさが強調されていて、いいですねえ。

 ヒムの頭突きを見て、ポップが思わず痛そうな表情をしているシーンも、パワーアップしています(笑)

 ポップやチウの台詞は、アニメの改変ですね。台詞じゃないですが、マァムが息をのむかすかな声音も収録されています。
 原作では「!?」や「!!」で表現されていた無音が、声優さんの手にかかると台詞未満なのに心情を表す声なき声として表現されているのは嬉しいですね。

 ミストバーンがバーンに呼びかけるシーン、全てが青白いフィルターがかかった世界の中で、ミストバーンの目だけが光の線を残して流れる演出には驚かされました。

 暗闇の中で車のヘッドライトが流れて移動するような、独特の目の光の残像が実に印象的でしたよ! 時の止まった空間というよりも、時間の流れをものすごくスローにした中でミストバーンだけが正常に動いているような、そんな独特の感覚が面白かったです。

 原作ではミストバーンのアップと、黒一色のベタなコマだった演出が、こんな形で表現されるとは思いもしませんでした。
 上へとゆっくりを見上げていく動きから、ダイの実際の動きと場面転換する演出も好きです。

 原作の時よりも、ダイとポップ達の戦いが同時進行しているのだと強く感じられますし♪

 ダイが戸惑うシーン、ナレーションをなくした分、レオナがダイの戸惑いに気づく台詞を追加していますね。
 原作では、ミナカトールの前に自分が飛躍的に強くなったのかと言うモノローグが入りますが、アニメでは掌を見つめるタイミングでそのモノローグを言わせることで、より分かりやすくしてあります。

 ダイの後方で、塹壕に入っているレオナが可愛いですね♪
 バーンがダイに下剋上の楽しさを語るシーン、原作では戸惑いや怯えが勝っているように見えるダイのポーズが、アニメでは剣をしっかりと握って足を開き、戦いに身がまえている感が強まっているのがいい感じです。

 バーンの下剋上話に、原作では理解しきれずに戸惑った表情を浮かべているのに対し、アニメでは不満があるような、ちょっとやんちゃっぽい表情を見せているのも好印象♪
 聞きかえしていることもあり、バーンの理屈を全く分かっていない感じが可愛いです(笑)

 原作だと、ダイは肝心な場所では口をつぐんでいることが多いせいか、内心の思いや考えは深いのではないかと思えるシーンも多いのですが、アニメのダイはその辺は等身大の子供という感じが強いですね。

 ヒムのジャンピングパンチ、カッコよかったですが、あれだけ身体をひねって殴りかかるのならフックで横殴りにするかと思ったら、真正面から顔面をぶっ飛ばしていました(笑)

 マァムの警戒の叫び、微妙な改変が。

原作マァム「ミストバーンが……最後の反撃をっ……!」

 台詞的には「ミストバーンの反撃よ」の方が自然に聞こえそうだなと思ったのですが、この台詞を元にしたから「ミストバーンが反撃よ」になったのかなぁと予想。

 まあ、「てにをは」は文章として読むには間違いや差違が気になる箇所ですが、耳で聞く台詞として聞く分には、声優さんがしっかり演じてくれれば自然に聞こえる場合が多いので、アニメでのマァム発言は気に入っています。

 闘魔最終掌を放つ寸前、ミストバーンの目が光る演出は原作にもあるのですが、アニメだと随分雰囲気が違っているなと思いました。構図やアップ度が違うと、やっぱり印象は変わりますね。

 クロコダインの警戒台詞シーン、左右逆転していました。
 原作ではヒムの警戒の表情を見せていますが、アニメでは後ろ姿のヒムがちょっと肩を跳ねさせることで、ヒムの警戒心を表現していますね。
 ポップの警告にも、微妙な改変が。

原作ポップ「そいつに触れたらおしまいだっ!! なんとかかわせーーっ!!」

 逃げないヒムを心配するポップやチウが、表情がオーバーでめっちゃ可愛い! 槍を持って身がまえるラーハルトは、原作より積極的に見えます。

 ヒムの手が砕けるシーン、原作では小さなコマでちょっと斜めの角度で描いていた仲間達の驚きシーンを、真正面からしっかりと描いてくれた改変は嬉しかったです。

 原作でもそうですが、チウがちゃんとみんなの中で一番前に出てきているのにも感動。部下を心配して前に進み出たのかと思うと、チウの侠気にほれぼれします。
 しかし、常にヒュンケルと寄り添うマァムの姿が、お似合いカップルに見えてしまう今日この頃(笑)

 ミストバーンの身体がずるっとずり落ちるシーンは、アニメの改変ですね。なまじ動かないよりも、力尽きた感があるなぁと感心しました。

 ヒムちゃんのウインクシーン、左右逆転していますね。すごく得意げな感じがいいです♪
 
 塹壕から立ち上がったレオナの全身図、可愛かったです♪
 ただ、原作ではレオナは足を塹壕の縁に掛けて立ち上がるという、真正面から見ると淑女らしからぬポーズになりそうなシーンだったのですが、アニメでは穴の中に普通に立ち上がった感じになっていました。

 しかし、この穴の深さがちょっとつかめないですね。
 レオナの立ち姿のシーンでは、膝下ぐらいの深さの穴に見えましたが、ダイの後ろに見えた図では、腰ほどの深さになっていました。
 レオナが中で膝を抱えて座り込めることを考えると、縦横1メートル弱の簡易的な塹壕に思えます。

 まあ、レオナにこれを用意出来たとは思えないので、ダイかバーンの攻撃で偶然空いた穴を利用しているのでしょう。
 原作では『レオナ専用避難場所!』という楽しいテロップがついていました(笑)

 バーンが炎を生み出したシーンで、原作ではレオナが先に気づいていますが、アニメではダイが先に気づいていました。
 ダイの目の中に炎が躍る演出が、かっこよくて気に入りました!
 ダイの忠告でやっと危険に気づき、慌てて飛び込むレオナの表情や動きがちょっとギャグっぽくて、可愛いです。

 お祈りのように手を組み、塹壕の底で震えているレオナのカット、原作と同じポーズなんですが、原作では髪の毛が大きく描かれているせいか、アニメと印象随分違って見えますね。

 塹壕から顔を覗かせているレオナも、可愛いです。
 やっぱりレオナって、危険だと分かっていても見てしまうタイプですね(笑) 破邪の洞窟で宝箱を開けていたように、見ちゃダメと念を押されると弱いタイプに見えます。

 カイザーフェニックスは原作だと写実的に描かれていますが、アニメだと輪郭を象った炎の揺らぎで表現されていますね。
 バーンの突進にダイとレオナが声をハモらせ、画面を二分割してアップになる演出は漫画っぽくていい感じです。

 原作ではここでラーハルト側の戦いにシフトチェンジしていましたが、アニメでは眩く発光するだけでシーン続行。
 レオナが目を閉じているカットが追加されたのは、嬉しい改変です♪
 どうなったのか戸惑うレオナのカットは左右逆転しています。不安そうな表情から、ハッとしてダイを探すシーン、いいですねえ。

 バーン様の肩当てから血が噴き出すシーン、めっちゃ派手ッ。その後で肩を押さえる手が血に染まる有様なぞ、実は原作よりも出血多量です。

 炎の鳥を切り裂いて登場するダイが、かっこいい!
 両手を思いっきり左右に広げた、ちょっと子供っぽさを感じるポーズがそのままで再現されたのは嬉しい限りです。
 ここでCMでしたが、音楽がいつもと違うような?

 CM後は、場面がミストバーン側に。
 それにしても、せっかくの有利な場面なのに、ヒュンケルが邪魔しているようにしか見えないやりとり(笑) 戦士として再起不能になって暇になったおかげで、ヒュンケルは他者に口出しや指揮をとれる余裕が出来たような気がします。

 まあ、指揮の方向性が正しいとはちょっと思えないのですが(笑)
 バーンお気に入りの自分が謎を解けるかもしれないから、ヒントを多くよこせって……どんなわがまま探偵なんだか。

 ポップが小声で「ホントかよ」とツッコんでいるのは、アニメの改変ですね。

 クロコダインが衣に反応するシーン、左右逆転しています。原作では右向きでしたが、アニメでは左向きですね。
 個人的には、クロコダインは傷ついた目を手前に見せる左向きのカットが一番カッコいいと思います♪

 クロコダインが大声を出した際、皆が彼に注目するカットはアニメの改変ですね。クロコダインのへの注目度が感じられて好きなカットですが……このシーン、よくみたらマァムがヒュンケルの腕を支えていません。
 ……ってことは、支えがなくても動けるし、立てるんじゃないですか!(笑) 

 『闇の衣』の台詞、クロコダインがすごくカッコいいタイミングで口にしているのに、感動!
 原作ではロン・ベルクがそう言っていたと説明してから、この台詞を口にしていますが、アニメではヒュンケルの問いにこの言葉を発してから、細かい説明をしています。

 最初に、要点を簡潔、かつ興味を引く結論で語ってから、後に詳細を説明するのはいいですね。分かりやすくて、印象に残りやすいです。

 ミストバーンの顔のアップから、地上からの光景に移行する場面転換もいい感じ♪

 しかし、ちょっとだけ残念なのが、地上でロン・ベルクとクロコダインの会話という形で、このシーンの伏線を仕込んでおかなかったこと。

 レオナが破邪の洞窟に行く前、ノヴァに頼み事をする、というアニメの改変シーンでそうしたように、ロン・ベルクがクロコダインに向かって『……おまえがダイに会ったら、伝えて欲しいことがある』などと思わせぶりに語るシーンが見たかったですよ〜。

 まあ、アニメの伏線回収はあまり前に仕込んでしまうと、実際に回収した時には忘れられてしまう可能性が高いので、数週間先のための細かな伏線をわざわざ仕掛けない気持ちも分かるのですが。

 とりあえず、クロコダインとロン・ベルクの会話は渋くて、素晴らしくカッコよかったです! 燻し銀同士の会話って感じですよ。
 自分達の戦いが長引いたことを語る際、軽く目を閉じたロン・ベルクが、まるで自嘲しているかのように見えて印象的でした。
 
 ノヴァの決死の覚悟を見た後となっては、あの時、本気で戦っておけば良かったと思い返したのだろうかなど、想像が膨らむシーンです。

 クロコダインとロン・ベルクの会話は、改変が多く入っているのも嬉しい点。
 原作ではロン・ベルクの台詞は終始、漠然とした具体性の無い物であり、結局、何に警戒すればいいのか分からないという困った忠告でした(笑)

 が、アニメではクロコダインの質問とロン・ベルクの最後の返答で、何を警戒しているのか明確にし、意志を明確にしています。
 原作であった、チウがクロコダインを呼びに来るシーンは残念ながらカットされていましたが、そこを差し引いてもあまりあるほどに素晴らしい改変シーンでした♪

 『闇の衣をとらせるな』というキーワードを回想シーンの最初と最後に持ってきて、ミストバーンの姿にダブらせて場面転換する演出もかっこよかったですし。

 原作では答えを迫るヒムの台詞の途中で、上で爆破が起きていますが、アニメではその前に悩むヒュンケルの姿を、間をとってたっぷりと表現されています。マァムの台詞まで追加されていますが……マァムさん、マァムさん、その男、あなたが支えてあげなくても一人で立てる状態ですよっ(笑)

 ヒュンケルがヒムにトドメを頼んだ後の悩むシーンで、マァムとのツーショットが! これも、原作にはない改変です。
 原作では暗いベタなコマで一人悩んでいた男が、マァムのドアップが背後でモノクロになった画像であれこれと悩んでいましたよ! こ、この贅沢者ぉ!(笑)
 
 ミストバーンがバーンに呼びかけるシーン、原作では徐々にアップになっていく演出でしたが、アニメではアップに加えて角度を変えつつ呼びかけているので、切迫感が増したように感じますね。
 原作でベタフラだったコマが、暗闇に紫の光が発せられる演出は、不気味さがアップしていい感じでした。

 バーン様の回復魔王、人間の使うほんわりと優しい色彩の回復魔法と違って、ピリピリした感じの光になっています。そこらへんは、魔族と人間の差でしょうかね?

 マァムやレオナ、ポップのそれぞれの回復魔法の色合いも微妙に違う時があるので、個人差かもしれません。

 レオナが見えなかった攻防について考え込むシーン、白黒セピア風な色合いがかかっていたのがとても綺麗でした♪

 ダイとバーンのカイザーフェニックスを挟んでの攻防、大まかな流れは原作通りでしたが、見せ方にかなりの改変がありますね。
 原作では無言の攻防の回想後に、バーンがダイの行動を解説していますが、アニメでは回想と同時進行で解説しています。

 原作ではダイがバーンの背後から斬りかかっているところを、前を向いたままのバーンが杖で防ぐ形でしたが、アニメでは背後に回り込んだダイの動きにバーンが身体の向きを変え、真っ向から組み合っています。

 バーン様の説明も、微妙な改変がありますね。一番、いいなと思った改変がこの部分でした。

原作バーン「逆に剣で防いでも、炎に焼かれる!!」
アニメバーン「逆に杖を防いでも、炎に焼かれる」

 一見、ほぼ変わらないように見える差ですが、原作の言い方だと剣で何を防ぐのか明確になっていませんが、直前の台詞ではカイザーフェニックスを防ぐと表記されています。
 それが、表現のブレに繋がっています。

 つまり、直前の台詞では『敵の攻撃』をふせぐ、ことに焦点を置いた台詞になっています。どんな手段で防ぐかは問題にしていません。
 だけど、原作では、敵の攻撃を『この方法で』防ぐ、と表記されているため、この台詞では敵の攻撃の防ぎ方に焦点を当てた台詞となり、前後のつながりが悪くなっています。

 こういう微細な表現のブレは、校正レベルでのチェックポイントになるはずですが、絵や話の流れでだいたい意味が通じてしまうから、漫画だと割と見過ごされがちな部分なんですよね〜。
 その不満を、アニメではきちんと解消してくれています♪

 追い打ち宣言をするバーン様、めっちゃ嬉しそうな声ですね。目つきも生き生きとしているように見えて、気に入っています。

 ダイが立ち上がる際、両目を閉じてすごく苦しそうな表情を見せるのはアニメの改変ですね。そこから片目を押し開けて無理をして立ち上がり、気迫のこもった表情へ変化する過程が素晴らしいです!

 ダイの勝利宣言の後で、バーンの肩の傷から手を離す改変もよかったです!
 原作ではいつの間にか手を離していましたが、その瞬間を映し出すことでバーンの不死身さが際立つように感じられます。

 目をかっぴらいて面白いとのたまうバーン様、意外にも愛嬌を感じる笑い顔でしたね♪

 ダイのドルオーラを見て、レオナが「え」と叫ぶのはアニメの改変です。
 ダイの身体が輝くシーン、バーン視点が斜めに傾いているのが不安定感があっていいですね。

 ダイが両手を下ろした後、ダイ視点からバーンを狙うシーンが、反対側に斜めになった世界線なのが、これまた対になっていてシビれます♪

 ダイのドルオーラの説明、微妙な改変が。基本的にダイの台詞は、短め、かつ分かりやすい言い方になる傾向が強いですね。
 ダイにしては珍しい長文説明の最中、対峙するダイとバーンを角度を変えつつ映し出す演出、いいですね。

 ドルオーラ準備中のダイを真下から見上げる構図が、特にお気に入りです。バーン様を上から見下ろす構図も、まるで自分が大魔王以上になったみたいで悪くない感じでしたし♪
 
 ダイが秘密について語る時、視点が降魔の杖に移っていく細やかな演出に感心しました。
 指摘を受けたバーンが杖を手元に引き寄せてから見やる仕草も、わざとらしくてよかったです。

 バーンが降魔の杖の説明をするシーン、ダイの最初のドルオーラの説明を回想を交えてやってくれたのは嬉しかったです。……もし、あれで死んだら、ゴロアの巻き添えで終わったことになっていたんですね(笑)

 レオナがフェザーを投げる時、投げ方がなんかサイドスローっぽくていいですね。それを受けとる時のダイの得意そうな顔が、めっちゃ可愛いです。

 ドルオーラ二連発、カッコいい!
 思っていたよりも、ずっと迫力のあるやり取りに見入ってしまいました。レオナが苦労していましたが……あの塹壕、上からの攻撃に無意味、というか、逆に危ないんじゃないかと心配になりましたよ(笑)

 予告、ミストバーンが出張っていますね。
 予告でバーン様のことを語っているのに、ミストバーンが復活して暴れています(笑)

 しかし、一番活躍しているヒムでも、一番出番が多いポップでも、一番謎解きに拘ったヒュンケルでもなく、『マァム達』と呼んだ予告に笑っちゃいました。なぜにここでマァム贔屓!? はっ、これはもしや、ミストマァムへの密かな布石と見ていいのですか!?

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