『闇の衣』(2021.7.30)

  

《粗筋》

 ダイのドルオーラ連発により、さしもの大魔王バーンもその攻撃に飲まれた……!
 地上から見上げてでさえ空が黒ずむ程の爆炎が上がり、その震動はホワイトガーデンにまで届いた。
 揺れや瓦礫の大きさに、驚くポップ達。







 そして、地上にいる人達も空を見上げていた。
 ロン・ベルクやノヴァは驚きの表情で、フローラは落ち着き払った表情でそれを見つめていた。







 
 爆風が吹き荒れる中、レオナは塹壕から出て立ち上がっていた。なんとか顔を庇うレオナだが、髪やマントは激しくはためく。
 だが、それもようやく落ち着いた後には、苦しそうに肩で息をするダイの姿があった。

 心配そうに、やったのかと尋ねるレオナ。
 頷いた後、ダイがついに限界を超えたようにその場に膝を突いた。慌てて、ダイの側に駆け寄るレオナ。

 苦しそうながらも大丈夫だと答えるダイは、ドルオーラ二連発が相当に堪えている様子だった。が、レオナが自分の考えを汲み取ってくれたことを喜び、微笑むダイ。

 それを聞いて、レオナも嬉しそうな笑顔を浮かべる。
 ドルオーラの連発をよく思いついたと褒めるレオナに対して、ダイはバーンが降魔の杖でドルオーラを防いでいるなら、二発立て続けに撃てば耐えきれなくなるかと思ったと答える。
 レオナに魔法力の回復をして貰えば、出来るかなと思ったと言うダイ。

 その答えに、納得するレオナ。
 回避しているならともかく、前に放ったエネルギーが残っている内に次の魔法を放てば二発分の威力になると考える。
 凄まじい壊れ方を見せる瓦礫を見やりながら、無事なはずはない……と、どこか不安そうに呟くレオナ。

 瓦礫が壊れ、落下する音が小さく響く。
 二人そろって同じ方向を見つめながら、レオナはどこか不安げな様子だ。あまりに一気に勝負がついてしまったため、実感が湧かないらしい。

 自分に言い聞かせるように、レオナは竜の騎士は常に地上に一人しかいないこと、ゆえにドルオーラが二発同時に当たるなんて本来なら絶対有り得ない破壊力だと語る。
 それを、真っ直ぐに前に見つめながら聞いているダイ。

ダイ「……バーンが相手だからさ」

 少し、視線を落としてダイはそう呟く。 
 膝に手を当てて、ダイはゆっくりを立ち上がる。土煙は大分風に吹き飛ばされ、視界が良好になっていた。

 ダイは、バーンは強いからこそドルオーラを抑えることが出来てしまったと考えていた。なまじ強すぎるからこそ、とてつもない攻撃を食らうことになった……強すぎるというのも、あまりいいいことではない――どこか、哀れんでいるような表情を見せるダイ。

 そんなダイを見つめるレオナも、浮かない表情を見せる。
 俯き、哀しげな表情を見せるダイを、後ろから抱きかかえるように支えるレオナ。

 戸惑うダイを、レオナは明るく笑って引き起こす。

レオナ「ほら、胸を張ってよ、勇者君! あなたは勝った! 大魔王に勝ったんだから」

 ダイとレオナは、空に明るく差し込む日の光を眺める。雲間から光が差し込み、天使の梯子が美しく広がっていた。







 一方、ホワイトガーデンでは天井のドームが邪魔をして空を見ることは出来ない。
 それでも上を見上げながら、ポップはさっきの揺れが今日最大の衝撃だったと呟く。

 クロコダインは、その衝撃の原因がダイか、それとも別にあるのかを気にしていた。
 マァムは急ごうと声をかけるが、ヒムはミストバーンをどうすればいいのかと問いかける。

 マァムは放置しておけばいいと、発言する。もう抵抗できないなら、なにも命を取らなくてもいいと考えているからだ。
 ヒュンケルに、命を取らなくてもいいでしょと賛同をねだるマァム。
 それに対して、ヒュンケルはわずかに迷いを見せる。

 が、ポップははっきりとそれに反対する。
 マァムを甘いと決めつけ、ミストバーンはここで倒して置かなければ絶対にヤバいと発言するポップ。

 でも、ダイがバーンに敗れてしまってからでは遅いと、強く反論するマァム。それに対し、ポップは悔しそうな表情を見せる。
 内輪もめを始めたポップとマァムに、ヒムは呆れた様子だ。親衛騎団の方と引き比べかけたヒムは、ハッとして目を見開く。

 ミストバーンから漂う不穏な気配……それに、ポップ達も気づいてたじろぐ。
 いつの間にか、彼は立ち上がっていた。
 動けないと思っていた相手が、平然と立ち上がったことにヒムも動揺を見せる。彼に不死身振りに、クロコダインも目を見張る。

 ポップはここぞとばかりに、これでも許してやろうって言うのかと、マァムを責め立ててから、ヒムに呼びかける。
 言われるまでもないと、止めを刺すために拳に光の闘気を込めるヒム。その拳が虹色に輝き、銀髪が闘気を帯びて逆立つ。

 だが、それが見えているのかいないのか、ミストバーンはひたすらにバーンに許しを請い続ける。
 それを泣き言と解釈し、突進するヒム。
 しかし、ミストバーンはそれをよけもせず、衣を繋ぎ止める飾りのチェーンに手を掛け、かざして見せた。

 ヒムの拳が、ミストバーンの胸飾りを見事に捕らえる――と言うよりも、当てさせられたと言うべきか。
 何かが壊れる音と同時に、眩い光がミストバーンから放たれる。
 驚き、その眩しさに目を庇う一同。

 輝きが収まった後にいたのは、靡く長髪もきらきらしい、美青年だった。
 さながら、天からその場に舞い降りてきたかのように、髪の毛がしなやかに流れ、背に落ちる。
 黒い額当てをつけた青年は、目を閉じたままでも驚くほど端正な顔をしていた。

 意外さに目を見張る一同の前で、真の姿を現したミストバーンは、なおもバーンへ許しを請う。
 初めて、バーンの許可を得ずにこの姿を見せたと、嘆くように訴えるミストバーン。

 その言葉を聞いて、ようやく目の前にいるのがミストバーンだと認識したように驚くポップやマァム。
 ラーハルトは、彼が人間か、魔族か判断がつけられず、迷っていた。

 クロコダインも、ロン・ベルクさえ恐れていたミストバーンの正体が、細面の青年だったと驚きを感じていた。
 そして、ヒュンケルは真剣な表情でミストバーンを睨みつけていた。

ヒュンケル(この気配……どこかで……!)

 静かに佇むミストバーンは、目を閉じたままその手をスッと上に挙げる。指を揃え、掌を前に向けた。
 次の瞬間、その手から凄まじい暴風が吹き荒れる。

 一瞬、戸惑った表情を浮かべたポップだが、次の瞬間には全員、壁に叩きつけられていた。
 勢いが強すぎて、彼らは壁に貼り付けにされた状態でなおも暴風に押しつけられ、苦痛に喘ぐ。

 苦痛の中、ヒュンケルはそれがただの掌圧だと悟る。桁外れの威力の掌圧がやんでからようやく、ポップ達は壁から離れて床に降りることが出来た。
 しかし、ミストバーンは彼らにはなんの関心も見せない。
 彼が述懐するのは、自分が恐ろしいことをしてしまったという後悔ばかりだ。

 今度ばかりはバーン様に罰を受けるだろうと覚悟しているミストバーンは、己の罪の深さを悔いている様子だった。処刑すらやむなしと言えるほど、この姿をさらすのは罪深い、と――。

 自己陶酔中のミストバーンに激昂し、殴りかかるために駆け出すヒム。
 それを見たヒュンケルは、血相を変えて制止する。
 その声の効き目があったのか――、ヒムはミストバーンに殴りかかる前に失速し、途中で足を止めた。

 静かに、佇んでいるだけのミストバーン。
 だが、ヒムはそんな相手からとんでもない殺気を感じ取っていた。
 ミストバーンはヒムが動きを止めたのを見て、淡々と言う。

ミストバーン「思ったより鈍くはないようだ。この私の強さを感じ取ったか……」

 侮辱的とも言えるその言葉に、ヒムはその場に立ちすくんだまま目を見張る。
 自分がミストバーンに気圧されている事実に、戸惑うヒム。なまじ見た目が普通の男に見える相手なだけに、そんな相手に怯えることに怒りすら覚える。

 暗黒闘気のパワー仮面を被っていた時の方が上回っていたと、自分を鼓舞しながら拳を構えるヒム。
 虚勢交じりの敵愾心を、ミストバーンは完全に見透かしていた。

ミストバーン「……いいぞ。せいぜい、恐怖しろ。私も、怖い……」

 ミストバーンの言動にブチ切れたヒムは、再び光の闘気を纏って走り出した。拳が、虹色に輝く。
 ヒュンケルはさっき以上に焦った様子でヒムを止めようとするが、ヒムは振り向きさえしなかった。

 渾身のオーラナックルを叩き込むヒム。
 が、拳を、ミストバーンは片手で難なく止めた。驚くヒムの手首を軽く掴み、そのまま手を捻り折ってしまった。

 たいして力を入れたようにも見えなかったのに、ヒムの腕は紙切れを裂くかのごとく、あっさりと引きちぎれてしまう。苦痛の悲鳴を上げ、反動で後ろに飛ばされるヒム。

 そんなヒムに、ミストバーンは折った腕を投げつけた。両腕がなくなったヒムには、それを避けられない。胸元に当たった反動で、ヒムは壁に叩きつけられた。

 ポップやクロコダインは、信じられない光景に驚愕する。
 壁に埋め込まれるほど強く叩きつけられたヒムの目の前で、銀色の腕が力を失って床に落ちた。

ヒュンケル(ねじ切った……それも力任せに! 無造作に! しかもオレのように相手の力を利用して砕いたのではない……力だけで、引きちぎるとは!)

 目が飛び出しそうなほど、ヒュンケルはミストバーンを凝視する。
 床には、ヒムの腕がそのまま落ちていた。
 と、その落ちている手を、すくうように誰かが拾う。一陣の風のように駆け抜けたラーハルトは、ヒムの腕を手に大きくジャンプした。

ヒム「ああっ!? オレの腕をッ!!」

 叫ぶヒムに目もくれず、ラーハルトはジャンプの勢いのまま、オリハルコンの腕でミストバーンに殴りかかった。しかし、当たった途端、ガラスのように腕は砕け散ってしまう。

 驚くラーハルトの顔面を、ミストバーンは片手で鷲掴む。腕を取って抵抗するラーハルトだが、ミストバーンの腕はびくともしなかった。
 苦痛に呻くラーハルトに、ミストバーンは彼の腕前を褒める余裕さえあった。

 並の勢いで殴りつけたのなら、オリハルコンの腕とは言え曲がるか折れるかだと言いながら、ミストバーンは残った手でラーハルトの腹を打つ。一際苦痛の叫びを上げ、吐血するラーハルト。

 それでも、歯を食いしばって耐えるラーハルトに、砕け散ったことこそがおまえの強さの証明だと、上から目線で評するミストバーン。
 
ミストバーン「だが!」

 拳に再度力を込めて振り抜くと、ラーハルトは信じられないほどの高さと飛距離で飛ばされ、壁に叩きつけられた。
 そして、あのラーハルトが、受け身も取れずにその高さから床に落下する。

 その様子を、怒りを含んだ目で見つめるポップ達。
 呻きながらも、ラーハルトはすぐに起き上がろうとする。だが、ダメージが大きいのか、すぐには立ち上がれず上半身を起こすだけで精一杯だった。

 そんなラーハルトやヒムが、この世では最強レベルの戦士だと認めながらも、この姿の私の足元にも及ばないと言い放つミストバーン。
 
ミストバーン「これこそ……魔界最強の男の姿だからな」

 その発言に、驚くポップ達。
 クロコダインの肩に乗ったチウは、強気に反論する。

チウ「それじゃ、バーンは!! おまえよりえらいバーンはどうなんだ!?」

 威勢良くそう言った割に、顔を向けられると悲鳴を上げてサッとクロコダインの背中に隠れるチウ。

 ミストバーンは淡々と、バーンの偉大さ、魔法力と叡智を讃えるが、それでも肉体強度は今の自分の方が上だと主張した。
 ポップ達は驚きに目を見張り、ラーハルトが悔しさに歯がみする中、ミストバーンは拳を握りしめて堂々と宣言する。

ミストバーン「そう……私はバーン様より強い。私が魔王軍最強なのだ!」






 一方、半壊した天魔の塔では、風の音が静かに響き渡っていた。
 その場所で、ダイに回復魔法を掛けるレオナ。温かな光がダイを包み、魔法をかけ終わったと声をかけるレオナ。

 礼を言い、ポップ達のことが気になるから急いでホワイトガーデンに引き返そうと、立ち上がろうとするダイ。
 だが、一度立ち上がったのにふらついたダイは、尻餅をついてへたり込んでしまう。

 戸惑うダイを、心配するレオナ。
 思うように動けないと、自分の手を見ながら握ったり開いたりするダイ。さっきよりは相当回復しているようだとは言うが、全回復していないことに驚いたレオナは身を乗り出して問いただす。

 ダイはドルオーラを撃った後よりは楽になったと言うが、レオナはムキになってダイの回復具合が普通じゃないと主張する。その主張の激しさに、困ったような顔をするダイ。

 が、レオナは何かに気づいたような表情を見せる。
 目を落とし、一転して有りえるかもと、現状を受け入れるレオナ。戸惑うダイに、レオナはヒュンケルから暗黒闘気で受けたダメージは回復呪文を受け付けないと聞いたことを話す。

 竜闘気もそれに近い特性があるのかもしれないと、推察するレオナ。
 ダブルドルオーラの反動がダイの身体にもダメージを与え、回復呪文を受け付けなくしているのではないかとレオナは考える。

 どうすればいいのと問うダイに、レオナは膝を崩した座り直しながら、バーンはもう倒したのだし、いずれにせよ時間をおくしかないと提案する。
両手を見ながら、どのぐらいの時間で元に戻るのか案じるダイ。

 どこか不安そうなダイに、レオナはそんなに心配することはないと微笑みかける。

レオナ「いくらミストバーンが強敵でも、バーンより強いなんてことないでしょ」

 ポップ達とラーハルトが力を合わせれば大丈夫と、笑顔のまま励ますレオナだが、自分の手を見たままのダイの反応は鈍い。
 そんなダイに、レオナはまず完全に力を取り戻すよう、強く言う。その発言に、ようやくレオナの方を向くダイ。

 回復してから仲間のことを考えるべきであり、ヘロヘロのまま加勢にいっても困るだけだと主張するレオナに、ダイは気が抜けたような笑みを浮かべる。

ダイ「レオナはいつも、はっきり言うなぁ……。でもまあ、そこが頼りになるのか」

 その言葉に、一瞬目を見開いてから、猛然と怒り出すレオナ。

レオナ「もう! なによ、その言い草はぁ!?」

 屈託のない顔で笑い出したダイに、レオナは膨れてそっぽを向く。そんなレオナを、優しい眼差しで見つめるダイだが、その目がふと、逸らされる。
 背を向けたままのレオナは気づかないが、ダイは太陽の方を見つめて憂い顔を見せていた。

ダイ(なぜだろう……心の中の高鳴りがおさまらない……まだ、なにか起こりそうな……イヤな予感がする……)







 その頃、ホワイトガーデンでは、ミストバーンの衝撃発言にポップ達は驚きを隠せずにいた。
 特にポップは動揺し、ミストバーンの言葉の真偽を探ろうと疑問をぶつける。

 おまえが大ボスなのか、バーンよりも上なのかと立て続けの問いに、ミストバーンは苦笑するばかりだ。
 ますます激昂するポップに、ミストバーンは自分とバーンの間柄をおまえ達には理解できまいとこき下ろした上で、最初の質問にだけ答える。

ミストバーン「おまえの言う通りだ」

 その答えに、たじろぐポップ。
 マァムも、ミストバーンの強さを否定しきれないでいた。以前戦ったバーン以上かもしれないと考えるマァム。

ミストバーン「感謝しながら死んでいけ……! これほどの相手に殺されるなど、何百年生きてもまず、有りえぬこと。うぬらには過ぎた冥土の土産だわ」

 ゆっくりと、歩を進めてくるミストバーン。
 打つ手がないと、両手を失ったヒムは思う。まだ動けないながらも、そう簡単にはやられないと気合いを入れようとするラーハルト。

 近づいてくるミストバーンを前にして、クロコダインはまだ希望を持っていた。

クロコダイン(確かに万策尽きたかに思えるが、わずかにでも奴を足止めできれば……!!)

 ほんのわずか、クロコダインの目が右へと向けられる。

ヒュンケル(まだ最後の手段が残されている……!)

 真正面を睨みつけるヒュンケルの目は、まだ闘志が燃えていた。それは、毅然と前を見据えるマァムも同じだ。
 ヒムの目も、同じ方向に向けられている。

 クロコダインの肩にしがみつくチウでさえ、まっすぐに『彼』を見つめていた。
 仲間達の視線は、そろってポップの背中に注がれていた。

一同(メドローア!!)

 最前列にいるポップは、振り返らなくても自分に視線や期待が集中しているのが分かるのか、引きつった顔をしていた。
 プレッシャーに震えながら、真正面から撃ったら弾き返される可能性や、動きの速さなどを案じ、よっぽどうまいタイミングで撃たないといけないと考え出す。

 そんなポップのすぐ背後に寄ってきたヒムは、小声で彼に話しかける。
 もう一度戦えるように回復するように頼むヒムは、なんとか羽交い締めに持ち込む覚悟を告げる。

ヒム「そうしたらかまわないから、あのデカいのを一発ぶっ放せ!」

 自己犠牲を厭わないヒムの覚悟にためらうポップだが、ヒムは迷っている場合じゃないと叱責する。全員が確実に殺されると――。

 近づいてくるミストバーンを睨みつけるポップ。
 ふと、ミストバーンが足を止めた。ポップの手から放たれる回復魔法の光が、ヒムの腕を癒やす。
 その様子を見て、まだやる気満々だと冷やかすように口にするミストバーン。

 その潔さ、力の差を見せつけられても絶望しない精神を、曲がりなりにもバーン様と一戦交えただけのことはあると褒めるミストバーン。
 
 光に覆われ、ヒムの手が完全に復元した。
 腕が完全になってから、ポップの手から放たれた回復魔法の光が消える。確かめるように、拳を握りしめるヒム。

 礼を言い、ポップに決めの一発を放つよう念を押すヒム。だが、ポップは金属生命体であっても、ヒムを犠牲になんかできないと言い返す。
 そんなポップを見て、ヒムは苦笑する。

ヒム「つまらん躊躇をしていると、惚れた女共々地獄行きだぞ」

 自分一人の生命で済むなら安いと思えというヒムには、微塵の迷いも感じられない。
 そんなヒムに、ポップは顔を真っ赤にし、ムキになって言いつのる。

ポップ「なんで通りすがりの敵のおまえが、そんなこと知ってんだよ!?」

 真っ赤になったポップをチラッと横目で見つつ、ヒムは思う。

ヒム(見てりゃあモロバレだろうが)

 呆れたような顔をしつつも、口に出さないだけ情けというものか。
 と、ポップの肩にマァムが手をかけ、バカなことを言ってないで準備をするように叱責する。

マァム「みんな、あなたに賭けてるのよ!」

 振り返ったポップの目に、覚悟を決めたように身がまえる仲間達の姿が映る。クロコダインは目が合うと、かすかに頷いてみせた。まるで、励ますように――。

ポップ「みんな……」

 戦いの決意満々に身がまえるヒム。ポップも、ためらいを残しながらも前を向く。
 それを見ていたラーハルトは、一度目を伏せてから決意した。

ラーハルト(どんな秘策かは知らんが……ここは、オレもそれに賭けてみるとしよう)

 第二ラウンドをしかけようとするヒムの横に、ラーハルトが並んで指示を飛ばす。自分とヒム以外は敵の間合いに近づかず、飛び道具で勝負をかけるようにと命じるラーハルト。
 それを聞いて、クロコダインは心得たようにその場で身がまえる。

 次の瞬間、ヒムとラーハルトは同時にその場を駆けだした。猛烈なダッシュで、一気にミストバーンへの間合いを詰める。
 天井まで届けとばかりに高くジャンプしたヒムは、落下の加速度も加えてミストバーンへと殴りかかった。

 が、ミストバーンは軽くそれを避ける。
 続け様にラッシュをかけるヒムだが、ミストバーンはそれらの拳も身体を軽く逸らして華麗に避けた。

 続け様の攻撃を仕掛けるヒムの身体が、一瞬、大きく沈む。翻るヒムの髪の合間から、槍が閃く。
 ミストバーンの死角となるヒムの真後ろから、ラーハルトが隙をついて攻撃を仕掛けたのだ

 だが、その不意打ちすらミストバーンは躱した。
 今度は、大きな動きで滑るようにラーハルトの攻撃を避けていく。

 それを見ているポップとマァムは、二人の同じ攻撃すら当たらないことに驚いていた。

 だが、実際に戦っている二人は知っていた。
 距離を詰め、二人同時に猛ラッシュをしかけているおかげか、攻撃は何発かは入っている。
 実際、今もヒムはミストバーンの胸元に拳を決めていた。
 しかし、強固な音を立てるだけで、なんの効果もない。

 ラーハルトの槍も、ミストバーンの頬を掠っていた。
 何発かは確実に決まっているのに、ダメージを与えられないだけだ。槍を大きく回し、勢いをつけて一閃するラーハルト。
 ラーハルトの攻撃にあわせ、ヒムが姿勢を低くして槍を避けるが、ミストバーンは大きく後ろに飛んで攻撃を避けてしまった。

ヒム「くっそ、こうなりゃ……ッ」

 素早く飛んで、ミストバーンの首を裸絞めにするヒム。両腕を交差し、首を締め上げるも、ミストバーンは苦しそうな様子も見せず、軽くヒムの手首をとった。
 
 その手を軽く握り込んだだけで、オリハルコンの腕が砕け、ヒムは苦痛に顔を歪める。わずかに腕が緩んだ隙を突いて、ミストバーンのエルボーが強烈にヒムを吹っ飛ばした。
 壁にぶち当たり、瓦礫と派手な土煙を上げるヒム。

ポップ「……お早いお帰りで」

 引きつった笑顔で、そう呟くポップ。
 ボロボロになった右腕を押さえながら、相手を抑えておくことすらできないこを悔しがるヒム。

 ヒムが飛ばされた間も、ラーハルトは連続してミストバーンに槍を打ち込んでいた。が、それもことごとく躱され、当たらない。
 逆に前に進み出たミストバーンが、ラーハルトの鼻先に掌を広げる。珍しく、焦りを見せるラーハルト。

 先程と同じ掌圧が放たれようとした時、ミストバーンの手とラーハルトを割り込む形に、凄まじい攻撃が仕掛けられた。
 クロコダイン得意の獣王会心撃――それにもう一つ同じ技が重ねられ、獣王激烈掌が螺旋を巻いてミストバーンへと襲いかかる。
 気合いを入れて、技を放つクロコダイン。

 だが、何事もなかったかのように振り返るミストバーンの様子を見るからに、クロコダインの最高の必殺技は足止めにもなっていなかった。
 手の指を揃え、軽く手刀を斜めに振り上げる。
 それにより獣王激烈掌は呆気なく切り裂かれ、技を破られたクロコダインも壁に叩きつけられた。

 クロコダインの名を叫ぶヒュンケルだが、破片が飛んできたのを見て身を竦めるしか出来ない。手前にいたチウが、身体を張ってヒュンケルを庇う。
 強く壁に叩きつけられたクロコダインだが、土煙が薄れるとすぐに立ち直った。

 立ちすくんでいるヒュンケルに、チウは大丈夫だったかと声をかける。それに、頷くヒュンケル。

ヒュンケル「まさか、おまえに助けられるようになるとはな……」

 笑顔で、ヒュンケルに親指を立てて見せるチウ。
 それに微笑みを返しながらも、ヒュンケルは真顔になり、せめて自分の体が動けば、と思わずにはいられなかった。

 ポップは手に負えないミストバーンの強さに、メドローアを作ることすらできないでいたと歯がみしていた。
 そんな中、マァムがぽつりと呟く。

マァム「……きれいな顔」

 戸惑った後で、この非常時になにを言ってるんだと怒り出すポップ。昔っから二枚目に弱いとぼやくポップに、マァムはそんな意味じゃないわよと怒鳴る。

 マァムが気にしているのは、攻撃をあれだけ受けているのにきれいすぎる顔への疑問だった。
 仮面を被っていた時も相当なダメージを受け、閃華裂光拳も顔面にまともに入ったはずなのに、傷一つないきれいな顔――。

 マァムの言葉を聞いて、座禅を組んで蹲っていたビースト君が顔を上げた。その横には、腕を押さえて蹲るヒムの姿もあった。
 ひょこっと、ビースト君は起き上がる。

 マァムの指摘に、ポップもその事実に気づいたらしい。きれいすぎると主張するマァムの後ろから、ビースト君が呼びかけてきた。

ビースト君「マァム」

マァム「老師!」

ビースト「いや、今のワシはビースト君っ♪」

 上機嫌に声を跳ねさせるビースト君に、マァムはキョトンとするばかりだ。

マァム「……え?」

ポップ「……この人って……」

 あきれ果てたような半眼で、思わず呟くポップ。
 が、ビースト君は弟子らの戸惑いも何のその、マァムが閃華裂光拳を顔面に入れたことを確認する。

 マァムが力強く頷いたのを聞き、ビースト君は奴の不死身の秘密が解けたような気がすると発言した。
 驚くポップとマァムに、ビースト君は無敵と不死身は全く違うと説く。

 二人の間をスタスタと通り抜けながら、ビースト君は閃華裂光拳を受けてもノーダメージだというなら、あの男の肉体は生きてはいないと断言した。
 生命活動を行っていないという説明に、驚くポップとマァム。

ビースト君「ポップ君。メドローアのチャンスは、ワシが作る」

 無茶だと心配するポップに、ビースト君は軽い口調で大丈夫だと答える。そんな師匠を、信頼の瞳で見送るマァム。
 が、自分はくるぶしツヤツヤ病におかされているので、あまり長時間は戦えないと言い、上手くチャンスを狙うようと言い残してミストバーンの方へ進むビースト君。

 やけにふらふらと、足音もペタペタと縦ながら進むビースト君を見送りつつ、ポップは思う。

ポップ(……老師の持病って、そんな名前だったっけ?)

 が、ポップはすぐに首を強く振り、そんなことを気にしている場合じゃないと思い直す。

 ペタペタと、大きな音を立ててミストバーンへ接近するビースト君。それを見たミストバーンは、今度は道化者で時間稼ぎかと、明らかに小馬鹿にしていた。
 が、ビースト君はとぼけた口調で飄々と言う。

ビースト君「おまえの不死身の秘密。それはおそらく……凍れる時の秘法」

 それを聞いて、その場になんとも言えない緊張感が漂う。

ミストバーン「その名を知っているのか?」
 
 ビースト君は、答えない。
 落書きじみた顔は、彼の本当の表情を見事なまでに包み隠している。

ミストバーン「貴様、何者だ!?」

 ついに声を荒げるミストバーンに、ビースト君は胸を張って答えた。

ビースト君「ビースト君」


 


《感想》

 驚くほどに、ミストバーン無双! な、回でした♪
 いや、前から強いとは思っていましたけれど、アニメだとマジで強すぎ……ッ。
 
 とりあえず、ドルオーラ連発は繰り返しで見てもすごい迫力でした♪
 爆炎で空がまっ暗に染まるシーン、不吉な感じがしてすごく印象的でした。
 魔法陣にいる地上組を上から見ると、やっぱり花っぽく見える魔法陣が可愛く見えます。

 フローラ様を中心に、ノヴァがロン・ベルクと並んで座っていますね。メルルとエイミもいるのも、嬉しいところ。

 意外なのが、ロモス決勝進出組が魔法陣内部にいないことです。俯瞰図では顔が見えないので髪型と衣装で判断するしかありませんが、バウスン将軍らしき者もいませんし。左端に見える坊主頭の戦士は、アキーム将軍かどうかは悩みどころです(笑)

 まあ、好意的に見るのなら、バウスン将軍やアキーム将軍は戦後処理のため忙しく動き回っているんでしょう、多分。

 ダイ達の場面では、バーンが吹き飛んだ後、土煙が多量に舞っている風に霞めいた画面で描かれています。そのせいで、ちょっとセピアがかったような幻想的な雰囲気になっていて、目を惹かれました。
 こういう砂煙なんて現実ではうっとおしいだけですが、アニメではここまで美的に演出できるんだなと感心しまくりです。

 ダイに駆け寄るレオナが、意外と足が速くてビックリ。お姫様なのに、運動能力が結構高いんですよね(笑)
 ダイとレオナが微笑み合うシーン、ほのぼのしていてすごく和みます。

 並んで座っているダイとレオナですが、レオナは片膝立ちの姿勢で、ダイは膝を揃えた正座っぽい姿勢なのに、ちょっと笑いました。いや、普通、男女逆では(笑)

 まあ、原作でもレオナは片膝立ち座りでしたが、原作ではダイは足を少し開いた座り方だったのですが。アニメでは、手をちょこんと揃え、きっちり足もとじ合わせた正座なのが、実に可愛いです。

 二人とも同じようにバーンが死亡した(仮)方向を見つめつつも、レオナは不安そうに、ダイは真偽を見定めようとでもしているような真剣な表情という差があるのがいいですね。

 強すぎる悲劇について語るダイの憂い顔、いいですねえ。
 勝って嬉しいと思うのではなく、強さのあまり破滅した敵と自分を重ねているような、そんな思いの深さが実に感慨深いです。

 ……のは、いいんですが、その次のシーンでレオナがダイの腕を取るシーン、なぜにレオナの顔を見せずに思いっきり胸のアップに!?(笑) ……原作よりも、胸の谷間がくっきりと描かれていませんか!?
 
 原作ではここまでは……と、じっくり見比べると、原作ではレオナが引き寄せた結果、ダイはレオナの胸に思いっきり頬を寄せていました(笑)
 ……あー、アニメではレオナはダイを後ろから支える体勢なので、まだマシと言えるんですね。

 とりあえず、レオナがダイの勝利を宣言する際、空に天使の梯子が見えて光に溢れている図が非常に美しくて素晴らしいです!
 最初、土煙が残っていたからこそ、完全に煙が消えて太陽の光がはっきりとダイ達を照らし出すこのシーンが、際立っていると思えます♪
 
 マァムがヒュンケルを支えるシーン、ヒュンケルが腰を落としているせいかマァムの頭の位置の方が高くなっていたのが、ちょっと新鮮でした。

 ポップとマァムのやり取りが削られなかったのも、嬉しいポイント。
 台詞は変わらなくても、表情が微妙に改変されていますね。原作のマァムが反論する時には、心配を前面に出した表情でしたが、アニメのマァムははっきりとした怒り顔でした。

 それに対するポップの反応も、原作ではポップは困ったような顔で詰まっていましたが、アニメでは苛立ちを浮かべています。
 アニメではポップとマァムが対立しているのが、なんだか嬉しかったです♪

 ポップとマァムが、互いに睨み合っているのもいいですね。
 原作では、ポップはマァムの方を向いているのに、マァムはヒュンケルを見ていて、意見がきちんと対立せずに不完全燃焼している風に感じました。

 原作では慈愛深いマァムの態度のせいか、なんとなくマァムの意見が正しいっぽい雰囲気になっていたのが不満だったので、意見が真っ向から対立する展開になってスッキリしました♪

 原作では、二人の意見にみんなが迷うように考え込むカットがありましたが、アニメでは全員集合図でした。チウが腕を組んでいる図が、可愛くていいですね。

 ところで、原作では悩んでいる風に見えたチウですが、アニメではケロッとした表情に見えます。原作では、マァムに無条件に賛成しないで悩んでいるところから、ポップの意見寄りかと思ったのですが、アニメだと『ん〜、よく分かんないな』的な、潔いまでに頭空っぽな風に見えてなりません(笑)

 ミストバーン復活後、ポップがマァムに文句を叩きつけるシーンが、ものすごく小者っぽくて笑っちゃいました。原作でも小者感強いなと思ったシーンでしたが、声優さんのうわずった声の演技が実にいい味を出しています。

 ミストバーンが光るシーン、チウがその輝きに吹っ飛ばされるシーンがいいですね! 原作ではちっさなコマで、逆さの姿勢になって飛ばされているっぽい描写はありましたが、アニメでは飛ばされる動きが入っていました♪
 欲を言えば、くるくるっと回転して飛んで欲しかったですが、まあ、それは贅沢すぎですね(笑)

 ミストバーンの姿を見せるシーン、髪の毛や服のはためきがやたらと美麗でした〜♪ 髪の毛がほぼ上に逆立つほどに靡いているのに、こんなにも優雅に見えるとは。
 そして、真ミストバーンの髪の毛がきちんと切りそろえられていることに、ビックリしましたよ!

 後ろ姿ってほぼ見なかったから印象が薄かったのですが、ものすごいロングヘアとはいえ、後ろはおかっぱのごとくきちっと揃えていたんですね。……前髪や頭頂部はあんなにボサボサなのに(笑)

 ラーハルトがミストバーンの正体に悩むシーン、左右逆転していますね。
 クロコダインがミストバーンについて考えるシーン、真顔のチウがオプションでついていたのが嬉しかったです。考え事は苦手でも、チウは強い敵は本能で分かるみたいですね。

 ヒュンケルの横顔は原作とほぼ同じでしたが、原作のヒュンケルがやや恐れを感じているように見えるのに対し、アニメのヒュンケルは強気に睨んでいるように見えました。

 ミストバーンが掌を挙げるシーン、正面からの図になっていたのは嬉しかったです。静止した立ち姿からの、たっぷりと間をとった動きがいいですね。
 ミストバーンが手をかざした瞬間に、一同が壁に押しつけられるシーンは、原作ではてっきり、横向きにも発動できる重力波のようなものだと解釈していたのですが、アニメでは暴風っぽい描写だったのにはビックリ。

 珍しく、髪が思いっきり煽られて額が丸見えになったポップが見られたのは嬉しかったです。
 全員が壁に叩きつけられるシーン、マァムはヒュンケルに抱きついていますが、ヒュンケルの方が壁に先に到達しているので、これって守っているのではなく、逆に彼をクッションにしているだけでは……(笑)

 いや、マァムの意志ではないでしょうし、あの体勢や体格差でマァムが自分を壁に先にぶつかるように配慮するのは無理があるでしょうけど。

 その点、クロコダインはさすがです!
 とっさに、チウを右腕に抱え込んで庇っていますよっ! 原作ではチウは単独で壁にぶつかっているので、ここでチウを庇うのはアニメの改変ですね。
 まあ、原作でもこの後のシーンでクロコダインはチウを腕に抱え込んでいるので、飛ばされた後で抱っこした可能性が高そうですが。

 ミストバーンの攻撃後、ラーハルト、クロコダインはしっかりと立っていますが、ヒムはやや中腰、ポップ、マァム、ヒュンケルはしゃがみ込んでいます。面白いのはビースト君で、壁に貼り付いたまま……と言うより、叩きつけられた時に壁に空いた穴にちょこんと腰掛けています。
 原作通りですが、アニメで見るとまた楽しいです♪
 
 ヒムの疾走やヒュンケルの制止シーン、左右逆転しています。
 でも、それより気になるのはマァム。原作では、マァムはヒュンケルの肩を握りしめて押さえていますが、アニメではヒュンケルの胸に手を添えているだけです。

 原作では力尽くでヒュンケルを抑えている感がありますが、アニメではマァムはヒュンケルにすがりつくことで抑止力になっている気がします。

 ヒムちゃんの表情の細かさには、感動しました!
 ミストバーンに怯え、自分が怯えたことに怒りを覚えるという表情の変化が、細やかで実にいいですね♪

 原作では台詞が多い割に一コマで済んでいたシーンだったので、最初は怯え、その怯えから反発するようにミストバーンの怒りへ繋げていく台詞回しや表情の変化が、見ていて嬉しかったです。

 真ミストバーン、真正面向きの顔がかっこよくてつい見とれます。また、声が絶妙に合っていますね♪
 『私も怖い』の台詞なぞ、ゾクゾクするほどかっこよかったです!

 ヒュンケルの二度目の制止、原作では小さなコマで、さらに遠くで小さく叫んでいたシーンが、思いっきりアップで叫んでいましたよ(笑)
 
 ヒムのオーラナックル、力を込めている時は虹色に、いざ殴る時は金色に輝いているのが綺麗です。
 ヒムのオーラナックルを受け止めるミストバーンの手、原作では手を開いて受け止めていますが、アニメでは指を揃えたまま受け止めています。

 原作ではミストバーンはヒムの手首を逆手で握ってから、引きちぎっていますが、アニメでは順手です。
 原作では左斜め向きに向かって攻撃しているのに対し、アニメでは真正面から攻撃しているという差もあるので、この変更は妥当だと思います。
 原作の方が、腕の壊れ方が派手な気がしますけど。

 しかし、この腕千切りシーンをそのままやるとは……。いや、片腕が無くなった段階でやりかねないかと思いましたが、両腕を千切るなんてシーンをよくもまあ、土曜の朝っぱらから(笑)
 ホントに、出血さえしなけりゃなんでもアリなんですね。

 ヒュンケルがヒムの腕について驚くシーン、本来ならここでダイ達のシーンへ切り替わるはずだったのですが、アニメではダイ達のシーンの後で再度紡がれるはずだったヒュンケルの驚きの台詞パート2と繋げていますね。

 ラーハルトの奇襲攻撃、かっこいいです。
 まあ、折れたからと言って仲間の腕を使って攻撃するのは、倫理的にどうかと思わないでもないのですが(笑) ここもアニメでは忖度するかと思ったら、遠慮なしですね。

 原作ではラーハルトは両手でオリハルコンの腕を持って攻撃していますが、アニメでは片手攻撃です。
 また、原作では二の腕の方を持って拳部分で殴りかかっていますが、アニメでは逆で、手首部分を持ち、折れた部分で殴りかかっていました。

 折れた以上は、ヒムちゃんの腕は超丈夫な棍棒とみなせそうなので、細い部分を掴んで太い部分で殴るアニメ式の方が、効果がありそうですね。実際、昔から殴るなら逆の方がいいんじゃないかと思っていただけに、アニメのこの改変は嬉しかったです。

 また、ミストバーンがラーハルトの顔面を掴んで持ち上げるシーンは、アニメのオリジナルです。声優さんが、さりげなく苦痛の呻きをあげているのも、アニメならではの改変ですね。

 原作ではショックのあまり棒立ちになり、ミストバーンの長台詞を聞いていたシーンでしたが、アニメでは油断していなくてもミストバーンの方がはるかに上だと言う演出がお見事!
 しかし、目元付近を手で掴まれるのって、痛そう〜。

 原作ではあっさりとラーハルトをぶっ飛ばしているミストバーンですが、アニメではラーハルトの動きと視界を封じた上でボディーブローを放っていますよっ。
 アニメの方が、よりサディスティックですっ。

 目を閉じたままなのに、顔面がめっちゃ近いまま話しているのも、アニメの改変ですね。……あー、なんだかミストバーンがラーハルトの苦痛の声を楽しんでいるように見えてなりません。ええ、独断と偏見ですが(笑)

 原作では普通に殴っているのに、アニメでは一度ボディーブローで動きを完全に止めた体勢から、力を込め直して吹っ飛ばしています。これは、原作以上の力業!

 しかも、原作ではせいぜいが二階ほどの高さに吹っ飛ばしているのに対し、アニメでは吹っ飛ばす距離は倍増し、高さも三階くらいはあるんじゃないかと言うほど、距離感がパワーアップ!

 ラーハルトの落下シーン、原作ではほぼ逆さと言っていい体勢で背中から落ちていますが、アニメでは普通に背中から落ちています。
 なお、原作ではポップやヒムのいる側の方に落下していましたが、アニメでは落下地点が逆で、クロコダインやチウがいる側でした。原作では割と近くに落ちていたのに対し、アニメではかなり距離がある様子です。

 落下したラーハルトを、怒りの表情で見つめているのもアニメの改変です。
 原作では驚いていますが、アニメでは『ラーハルトをこんな目に遭わせるなんて……!』と、驚きよりも仲間意識から怒りを強く感じていると見ました♪

 ところで、このシーンではマァムがヒュンケルを支えるのを忘れ、戦い寸前の姿勢で身がまえています。ヒュンケルも、普通に立っていますし……やっぱり支えは要らないですよ〜(笑)

 チウがミストバーンに問いただすシーン、アニメではクロコダインの肩に乗っています! 原作では、この時点でもクロコダインに抱っこされたままなので、アニメのチウ君の頑張りがすごく微笑ましいですね。

 ミストバーンの最強宣言シーンで、CMに。
 原作でも凄く印象的で、かっこいいシーンだっただけに、ここでCMになるのはいいですねえ。

 原作ではここで続けて、ポップ達のターンでしたが、アニメではここで場面転換し、ダイ達に視点を移しています。
 すごく自然で、分かりやすい流れになっているなぁと感心しました。

 ダイの尻餅シーン、可愛いです♪
 原作よりも子供っぽい構図やポーズが、実に好みです♪ 原作では目眩がひどい感じでしたが、アニメの方が元気だけと動けないだけなように見えますね。

 回復ぐあいを、手をぐーぱーさせながら確認するダイも、側で座り込んでいるレオナも、実に可愛いです。
 特に、レオナが身を乗り出した時に、ちょっと引き気味に驚いているダイの反応がいいですね。原作にはないアニメの改編です。

 原作では、レオナを心配させまいと大人びた笑みを浮かべるダイに、心配いそうなレオナのやり取りなのですが、アニメではダイはレオナの勢いと理屈について行けなくて困り果て(笑)、レオナは心配の余り感情的になっているのが怒っているように見える感じで、いかにも年相応のやりとりが可愛らしくていいですね♪

 困り顔で生返事をしているダイを見て、この子、絶対にレオナが何を怒っているのか分かっていないだろうなと笑っちゃいました。

 レオナが膝を崩して座り直すシーン、動きが綺麗で見とれてしまいました♪ 何気ないシーンですが、ダイの意見を聞く前から本格的に待ちの体勢に入っているレオナが好きです。

 ダイが自分の手を見つめるシーン、原作では手が小刻みに震えていましたが、アニメではその動きはなくなっていますね。
 
 レオナの「ミストバーンはバーンより強くない」発言、原作ではこれを先に聞いてから、ミストバーンの最強宣言シーンでしたが、アニメでは逆になっていますね。

 原作の順番だとフラグを立てていると思いましたが、アニメの順番だと『志村、後ろ、後ろっ』のノリでレオナに注意したくなります(笑)
 
 ダイとレオナのやりとりも、可愛くて、可愛くて♪
 レオナが膨れてそっぽを向くシーンはアニメの追加ですが、この動きと表情が実に絶品です。
 そっぽを向いたレオナを、優しく見つめるダイの顔も、微笑ましいですしね。

 が、そこで感動したのが、その表情からダイが太陽の方へ目を動かし、憂い顔を見せるシーンでした。

 原作では、ダイとレオナの微笑ましいやり取りから、すぐにダイの不安のシーンに続いているのですが、アニメではレオナがそっぽを向くという演出を挟むことで、レオナがダイの表情の変化や不安に気づかなくても不自然ではない状況を生み出しています。

 バカップルなやり取りにしか見えなかったそっぽ向きが、まさかこんなに説得力のある演出に繋がるとは……!
 コミカルなシーンから、シリアスシーンへの自然な流れに感動しました。

 太陽を見つめるダイの、子供っぽさを多分に残す不安そうな表情、すっごくよかったです♪ 後ろ姿と、天使の梯子の見える空の美しい風景もいい感じでした。

 ミストバーンがポップの問いを肯定するシーン、これ以上ないミストバーンのドヤ顔が素敵です(笑) 原作ではやや右向きだったのが、真正面顔になっていますね。

 みんながポップに注目するシーン、原作と違ってポップの背中を見つめていましたが……未だに魔法使いが最前列にいるってのは、どーいうこと!?(笑)
 いや、後衛の位置に下がっておけよとツッコみたくなりますね。
 
 ポップの回復魔法、レオナが使った回復魔法よりも色鮮やかで光も強かったのが見ていて嬉しかったです。
 原作では、ポップはヒムの折れた二の腕辺りに直接手を置いたまま呪文をかけていましたが、アニメでは手に直接触れないでギリギリ上にかざしたまま魔法を発動させていました。

 アニメでは最初は二の腕からかけていたのに、最終的には掌の方に手をかざしていたので、ポップは手が伸びてくる速度に合わせて自分の手を移動させながら術を掛けていたようですね。

 ポップとヒムのやり取りが削られなかったのが、めちゃくちゃ嬉しかったです。ムキになっているポップと、呆れたような顔でチラ見しているヒムの対比がすっごくいいですね。

 後ろから肩を掴まれたポップが、一瞬、思いっきり変顔で驚いているのには笑いました。
 原作ではマァムはいきなり、ポップの口を押さえつけているのですが、アニメでは肩に手を置いているだけですね。

 仲間達全員集合で身がまえている図が追加されたのは、高ポイントです♪ 未だに壁に座っているビースト君や、クロコダインの前にしっかと立っているチウが特にお気に入りです。

 クロコダインが頷いた後、チウも自信たっぷりに頷いているのが可愛いです♪
 そしてヒュンケルとラーハルトも、ちょっとは反応してあげて(笑)

 それにしてもラーハルトが空気を読んだのが、今回の話の最大の衝撃でした!(笑) く、空気が全く読めない傲岸不遜な男かと思っていたら……案外、気の回る男だったのですね(←超失礼な意見(笑))

 ラーハルトの追加セリフは、ものすごく嬉しかったです。
 原作で、ラーハルトだけはメドローアの事を知らないのにと疑問に感じていたため、その疑問がアニメで上手く解消されてスッキリした気分です♪
 
 ヒムとラーハルトの同時ダッシュ、かっこよかったです! ヒムの猛ラッシュに、ミストバーンがスウェーで軽々と避けているのもいい感じでした。
 先週まではヒムの攻撃を避けられず、蛸殴りにされていたのに(笑)

 ヒムの猛ラッシュの隙を突いたラーハルトの攻撃が、実にかっこよかったです!
 髪の毛の合間から飛び出す槍が、めっちゃいいですね! それにいつの間にか、ちゃんとヒムとも意思疎通が出来ていますよっ。
 空気読めないラーハルト像が、大きく塗り替えられた気分です(笑)

 二人の同じ攻撃の際、色が青みがかってスローモーションの動きになる演出と、その直後に普通に動き出す展開も良かったです。しかし、ミストバーンの服ってドレスのようによく翻りますね。

 拳で攻撃するヒムが相手の時は、身体をわずかに反らすことで攻撃を避けていたのに、槍で攻撃するラーハルトは滑るように身体ごと逃がす動きの差が面白かったです。
 ミストバーンの動き、まるでフィギュアスケートみたいで華麗ですね。

 ラーハルトが槍をぶん回してから一閃するシーン、ヒムが再びダッキングでその攻撃を避けているチームプレイに惚れ惚れしてから、ふと、思いました。

 ……あれ?
 これ、もしかしてラーハルトとヒムが絶妙のコンビネーションで協力し合っているんじゃなくて、味方ごと巻き込む勢いで攻撃しているラーハルトの槍を、ヒムがギリギリで避けているだけなんじゃ、と(笑)

 え、えぇっと……できればっ、せっかく仲間になったことですし、ここは協力プレイと解釈にしときたいですね、ええっ。

 吹っ飛ばされてきたヒムに、ポップが「お早いお帰りで」と声をかけるシーンも削られなくてよかったです〜。
 しかし、原作ではポップのすぐ右横に吹っ飛んできていましたが、アニメではポップとマァムの間に飛んできていましたね。

 ヒュンケルとは無闇にあんなにくっついていたのに、ポップとマァムの距離は広すぎませんかね?(笑)

 チウがヒュンケルを庇うシーン、原作だともっと容赦なくボコボコ瓦礫が当たっているのですが、アニメではその辺は控え目でした。
 しかし、ありがとうも言わずに失礼なことを言っているヒュンケルに対し、笑顔でグッジョブサインを出しているチウは大物だと思います(笑)
 原作では右手でサインを出していますが、アニメでは左手を目一杯挙げた元気いっぱいのポーズが可愛いです。

 原作ではこのシーンのヒュンケルは、チウに対しても元気なく対応しているし、失った力への未練たらたらな雰囲気なのですが、アニメではチウに微笑んでいるのがいい感じでした。

 ポップがメドローアを作る隙すらないとぼやくシーン、原作では口に出していっていますが、アニメでは内心思っているだけなので、ちょっと気を使ってるのかなと思いました。

 ポップとマァムの言い合いシーン、見ていてすっごく楽しかったです♪
 ダイとレオナの言い合いがほのぼのしていたのに対し、ポップとマァムはケンカップルな雰囲気が楽しくてたまりません。

 座禅を組んでいるビースト君、アニメの改変ですね。
 いい感じですが……服からはみ出ている足のリアルさが、イヤなんですってば! ちゃんと、ないないしていてくれれば……っ!

 ビースト君、おどけた口調がいいですね。
 跳ねさせるような陽気な口調、実に可愛いです。でも、ビースト君もポップとマァムの間をわざわざ通り抜けていますね(笑)
 
 ビースト君が出陣しようとするのを、ポップが心配そうに止めていますが、マァムはきりっとした表情でじっと見ているだけなのは印象的でした。師匠を信じている、という風に見えていいですね。

 原作ではポップの表情しか描かれていないので、ここのマァムの表情はアニメの改変です。

 ポップが老師の持病に悩むシーン、原作では下の方を見ているのですが、アニメの上目遣いは可愛いです♪♪♪

 ペタペタ歩く足どりが見事ですが……やっぱり、どうしても足だけが妙に生々しいのがイヤンな感じ(笑) とぼけた顔と口調で、ミストバーンを追い詰めるのはいい演技なんですけどねー。

 ビースト君の台詞の最中、全員集合図が出てきたのが嬉しいです。
 ポップは自然に立ち、魔法に備えている感じで、ラーハルトがそのすぐ側にいるのが心強いですね。

 マァムが思いっきり臨戦態勢で、険しい目のまま身がまえているのが印象的でした。老師に何かあったら、すぐにでも飛び出しそうな雰囲気です。
 チウも身構えこそしていませんが、険しい目でじっと見ているので、師匠を心配しているみたいです。

 胸を張ってビースト君と名乗るシーン、背景がクレヨンみたいに雑すぎる落書きなのに笑いました。集中線ですらない(笑)
 しかも、ここで次回に続くなんですね。いや、原作通りの区切り目と言えば、その通りなんですが。

 予告で、アバン先生の若い頃の姿や魔王ハドラー、ポップのメドローアが出てきたのが嬉しいところ♪
 しかし予告でも、ビースト君の足が出てきましたよ! こ、こんな露出サービスはいりませんっ!

 それにしてもものすごくどうでもいい余談なんですが……ミストバーンの真の姿、後ろから見ると……二本の触手みたいなのが、ゴキちゃんの触覚に見えてなりません(笑)

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