『最大最後の大逆転』(2021.9.17)

  

《粗筋》
 
 シャハルの鏡で、カイザーフェニックスを跳ね返したポップ。豪火が荒れ狂い、周囲を赤く染める。
 その光に照らされる『瞳』の一つに、マァムがいた。

マァム(あっ、あの鏡……!)
 
 マァムは、思い出す。







 それは、ほんの少し前……親衛騎団シグマとの決着がついた時の事。
 立ち去ろうとしたポップとマァムを、シグマが弱々しい、だが、彼が瀕死であることを思えば驚くほど落ち着き払った声で呼び止めた。
 その声に、マァムの肩を借りて歩いていたポップも足を止める。

シグマ「あのシャハルの鏡……持っていってくれないか?」

 バラバラになったシグマの身体と同じように、床の上に転がっていたシャハルの鏡が光を受けて輝く。
 シャハルの鏡に近づいたポップは、両手でそれを拾い上げた。が、左腕に装着すると、その重みに思いっきり顔をしかめる。

 がっくりと腕を落とすポップを、支えようとするマァム。
 重すぎて、自分の腕にはちょっと合わないと言うポップに、シグマは防具代わりに胸に仕込んでおくようにとアドバイスする。

ポップ「だけど、こいつは……」

 躊躇するポップに、シグマは淡々と語る。

シグマ「シャハルの鏡は、アイテムだ。私が死んでも砕けはしない。その鏡に君の行く末を見届けてもらいたいのだよ……私の代わりに」

 瞳孔のないシグマの目が光り、ポップの姿が映り込む。

シグマ「きっと何かの役に立つ……持っていってくれ……」

 その言葉にポップは何かを考え込むような表情を見せた後、両手でシャハルの鏡を持ち直した。
 その様子を、マァムはずっと見ていた。

マァム(あの時の……!)







 ポップもまた、マァムと同じ思い出を辿っていた。
 胸につけたシャハルの鏡にヒビが入り、粉々に砕け散る。割れた破片に、ポップの顔が映りこむ。

ポップ(なにかの……どころの騒ぎじゃねえ! 最後の決めてになってくれたぜ! ありがとうよ、シグマ……!)

 回転する破片の裏に、シグマの顔が見えたのは幻覚か――欠片は玉の一つの近くに降り注ぐ。

 その間、バーンは己自身が生み出した最高火力の火炎系呪文に焼かれていた。さらに、その炎にはポップのイオナズンの威力も上乗せされている。
 さしものバーンも炎の中で苦痛の声を漏らし、もがこうとしていた。が、身体がろくに動かず、炎から脱することも炎を消す魔法を使うことも出来ない。

 呻くバーンの目が、ハッと見開かれる。
 燃える炎の先に、全身から青い闘気をみなぎらせた小さな人影が見えた。悔しげに、それを睨みつけるバーン。

 そこにいたのは、ダイだった。
 剣を身がまえ、攻撃のタイミングを計りつつこちらを睨みつけている。
 両手に竜の紋章を輝かせ、ダイは『今、一瞬』が全てだと実感していた。ここで決めなければ、バーンを倒すチャンスは永久にやってこない。







 玉の中から、一心にダイを見つめるクロコダインとヒュンケル。
 別の玉では、寝そべった姿勢のままのヒムと、うつ伏せに倒れたラーハルトがいた。

 目を見張るチウに、表情の読めないブロキーナ。
 マァムは心配そうに、アバンは真剣な表情で戦いを見守っている。
 レオナも、不安そうにダイを見守っていた。








 散らばる赤い玉に見守られながら、ダイはみんなが作ってくれたこの一瞬に、全てを懸ける。

ダイ「おれのっ、全てをこめて!!」

ポップ「ぶちかませーーっ!!」

 ダイの全てを込めたアバンストラッシュが炸裂する。
 硬直し、ろくに動かせない自分の手を見下ろすバーン。その間も、ダイの攻撃がバーンに迫る。
 が、バーンは裂帛の気合いで叫んだ。

バーン「余を……この大魔王バーンをなめるでないわっ!!」

 両手を大きく広げ、硬直を力業で振り払うバーン。バーンが払いのけた炎が、『瞳』にまで吹き飛ばされ、表面を炎が舐めていく。








 玉の中から、心配そうにそれを見ている仲間達。

マァム(動く!?)

ヒュンケル(硬直したまま、呪文の直撃を受けたはずがっ……)

クロコダイン(あの凄まじい炎を……っ)

レオナ(魔神……)







 落下し、背中から床に倒れ込むポップ。痛みよりも、バーンの行動を見て悔しそうな表情を見せる。

バーン「凌いだり……!」

 全身のあちこちから煙をあげながらも、これでダイのストラッシュを迎撃すれば己の勝ちと確信したバーンの口元に、笑みが浮かぶ。
 足を踏みしめ、手を再び構えようとしたバーンの第三の目が光る。

 その目に、迫るダイの姿が映し出された。
 ハッとしたように頭を後ろに反らすバーン。それは、危険を察知したからこそとっさに出てしまった防衛本能的な動きに近かった。

 だが、必殺技を打ち込んでくるダイに、バーンは自ら身を乗り出して応じようとする。
 戦う両者の顔が、ぶつからんばかりに接近した。

ダイ「クロス!」

 ダイの攻撃が、バーンを切り裂く。
 文字通り、X型に切り裂かれたバーンが、呆然とした表情を浮かべた。ダイもバーンも、光の中に飲み込まれていく。

 それを見ながら、ポップはなんとか上半身を起こした。
 その目に映ったのは、噴き上がる血。明らかに人の物ではない色合いの血が、空を舞った。
 驚くポップだが、バーンの驚愕の方がさらに強かった。

 空を見上げるバーンの顔に、影が差す。
 くるくると回転しながら落下してくるそれは、腕の形をしていた。落下した腕は、バーンの足元へポトリと落ちる。
 呆然とした表情で、バーンはそれを見つめた。

バーン(余の腕が……いかなる武器にも勝るはずの、余の腕が……)

 信じられないように、床に落ちた自分の腕を見つめるバーン。
 それを見て、ポップはようやく叫ぶ。

ポップ「……やぶった……破ったぜっ、天地魔闘の構えっ!!」








 玉の中で、ヒュンケルはこれでもう、バーンは天地魔闘の構えが取れないと確信する。

 レオナも、暗黒闘気同様、竜闘気で受けた傷もすぐには回復できないはずと、身を乗り出す。

 クロコダインも、満身創痍ながらもついにバーンに会心に一撃を食らわせたと考えた。

 玉の中から呆然とするバーンの顔を見ながら、ヒムは今は亡き仲間……シグマへと語りかける。
 ヒムの玉に、覆い被さるように飛んできた破片は、砕け散ったシャハルの鏡の一部だった。

 もはや原形をとどめず、砕け散った欠片となった今でも、まるで盾として仲間を守るのだと言わんばかりに、静かにヒムの玉に寄り添っている。その欠片を見ながら、ヒムは仲間を想う。

ヒム「シグマ……見ろよ。オレ達がライバルと認めたやつらは、やっぱり只者じゃなかったぜ」

 ヒムの顔に、満足げな笑みが浮かぶ。
 シャハルの鏡の欠片に、ヒムはシグマの面影を確かに見た。
 
アバン「これからです……これからが本当の勝負……」

 アバンは油断することなく、外をジッと見つめ続けた。







バーン「これしきのことで……余が……」

 そう呟き、何かに気づいてハッとするバーン。
 だが、その時はすでにバーンのすぐ背後に降ってきた人影があった。バーンの肩に足を絡めるようにして飛び降りたダイは、すかさず手にした剣を振り下ろす。
 バーンが振り向いた時は、すでに遅かった。

 バーンの胸元から、血飛沫が上がる。
 両手の紋章を光らせ、ダイは歯を食いしばって剣の柄に力を込めた。

ポップ「おおおお、ダ、ダイッ!?」

 驚いて、ダイの名前を叫ぶポップ。
 ダイはバーンの肩に貼り付いたまま、深く差し込んだ剣をしっかりと掴んだままで叫ぶ。


ダイ「バーン……もう絶対に離さないぞッ!!」

 激しく身をよじってダイを振り払おうとするバーンだが、ダイは不安定な足場にも拘わらず、肩にしがみついたままだ。

ダイ「おれと一緒に、こいつをくらえぇえっ!」

 ダイの身体が、青い闘気に包まれる。それと同時に空が真っ黒な雲に覆われ、雷鳴が光り出した。
 ライデインを唱えたダイめがけて降ってきた雷が、そのままバーンを直撃する。

 激しい稲光はダイ自身にもダメージを与えるが、ダイは呻きながらも剣を掴む腕を緩めない。
 凄絶な光景に、思わずダイの名を呼ぶポップ。

 バーンは足でしっかりと、床を踏みしめる。全身のあちこちから黒い煙が上がるバーンは、ダイ以上にダメージを負っている様子だ。

バーン「貴様……余と……死ぬ気か?」

 俯き、信じられないように呟くバーンに、ダイは苦痛の表情を浮かべながらも答える。
 もうギガストラッシュを打つ体力がないし、いくら天地魔闘の構えがとれなくてもまともに呪文を食らってくれる相手じゃないからと言い、ダイはバーンの角をしっかりと掴む。

ダイ「これなら、100%命中する! おれと我慢比べだ……!!」

 忌々しそうにダイを見たバーンは、掌底でダイを振り払おうとした。

バーン「ふざけるな……っ」

 距離が近すぎるせいか、掌でダイの顔を押しやる形になる。顔が押しつぶされながらも、ダイはもう一発ライデインを落とした。
 再び、二人の身体が雷光に包まれる。
 その衝撃に、バーンはダイを押しやろうとした手を離してしまった。が、ダイはしっかりとバーンの角と剣の柄を持ち続けている。








 バーンパレスでのその落雷は、地上からでも見えた。
 夕焼けになりかかった空の中、ちょうどバーンパレスの上だけが暗雲に包まれ、局地的な雷が明滅を繰り返している。
 それを、地上から見上げるフローラ。そんな彼女の側に、近づいているのはノヴァだった。

フローラ「今度は……稲妻の連続」

ノヴァ「ダイの呪文でしょうか……」

 二人はそろって、空を見上げていた。
 雷鳴はなおも激しく続く。それを兵士達やバダック、メルルを抱えたままのエイミも神妙な表情でじっと見上げる。
 
フローラ「魔王軍側の攻撃でないことを祈るわ」

 誰もが空に気を取られている中、メルルの手がピクリと動いたことに誰も気づかなかった。








 苦痛に、顔をしかめるダイ。
 さすがに声を抑えきれず、呻くバーン。
 その二人のどちらもが、同様に雷光を浴びていた。ダイの剣を伝い、バーンの肉体に直接流れ込む稲妻。

 ダイのライデインにより、また雷が降ってくる。それを、ポップは至近距離で見ていた。
 いい加減に無駄な抵抗はやめたらどうだと、ダイの手首を掴むバーン。
 が、ダイも負けてはいない。

ダイ「そんなこといっても、引きはがしにかかる力が弱まってきてるじゃないか」

 バーンはダイの腕を引きよせながら、3つある心臓のうち1つを貫かれたためだという。

バーン「だが、こんな程度では余は死なんぞ!!」

 前のめりに引っ張られるダイは、それに抗いながらライデインを呼ぶ。
 悲鳴を上げるバーンに、一歩遅れて同じく悲鳴を上げるダイ。







 それを玉の中で見つめるクロコダインは、思う。

クロコダイン(もう、何発目だ……!?)

 マァムも、拳を小さく握りしめ、不安そうに目の前の光景を見つめる。

マァム(このままじゃバーンはともかく、ダイが……)

レオナ(ダイ君が……死んじゃうッ)

 不安そうに、ダイを見つめるレオナ。







 ダイのライデインの叫びと、激しい落雷を目の当たりにし、ポップは親友の名を呼びながら手を前に伸ばした。
 苦しそうなのに、それでもバーンへの闘志を失ってはいないダイ。
 それを見たポップの手が、力を失う。

 雷鳴に照らされて手袋の色が薄まって見える中、ポップはゆっくりとその手を下へ下ろした。
 歯を食いしばるポップ。

ポップ(止めらんねぇ……おれには……っ!)

 どんなに無茶な手だろうと、もう、ダイが生命を削ってバーンを倒す手は残されていない。
 見るのも辛いとばかりに、目を固く閉じるポップ。しかし、彼はそれでもその目を開け、顔を上げて敵を睨んだ。

ポップ(バーンのヤツは死なねえとか言ってるが、あれは確実に効いてる!)

 突き刺さったダイの剣を伝い、バーンの体内に直接電撃を送り込まれている……いくらバーンでも効果がないはずがない。
 揉み合うダイとバーン、それに空から落ちる落雷を見ながら、ポップは願う。

ポップ(おれに言えることはたった一つ……バーンより先にくたばらねぇでくれ! それだけだッ!! ダイ……ッ)

 目を見開き、すがりつくような表情でダイの無謀極まりない戦いを見つめるポップ。
 その目からは、今にも涙があふれ出しそうに揺れていた。








バーン「分からん……おまえには、恐怖がないのか? こんな無謀な戦い方に、全く疑問を感じぬのか!?」

 雷光に包まれながら、バーンの声が響く。
 その声には戦いの最中だというのに落ち着きがあり、困惑の色合いが強かった。

ダイ「ぜんぜんっ! むしろ……この方が気が楽なくらいだ!!」

 苦痛に顔をしかめながらも、ダイの返事に迷いはない。そんなダイに目をやるバーン。
 ダイにしてみれば、自分一人が傷つくだけで大魔王にダメージが与えられるのだ。

 仲間のみんなが傷つき、倒れながら作り上げてくれたこのチャンスを、自分も傷つき、苦しみながら戦うのは当たり前だとダイは考えている。

バーン「それが、おまえ達の言う『魂の絆』と言うものなのか?」

 ダイの手首を掴むも、特に動きを見せないまま静かに問うバーン。

ダイ「ああっ、そうだとも!」

 力強く答えるダイ。
 そんなダイを、じっと見つめるバーン。その瞳が冷めて見えるのは、雷光が治まったせいだけだっただろうか……?

 わずかに顔を逸らしたバーンは、目を伏せる。それだけではなく、バーンはダイの手首を掴んでいた手も離した。急に抵抗を止めたバーンに、ダイは警戒の表情を見せる。

バーン「諦めろ、ダイ」

 どこまでも静かなその言葉には、どこか憐憫じみた響きがあった。
 それに戸惑うダイ。
 わずかに起こる雷光の余波などものともせず、バーンは淡々と語る。

バーン「おまえが信じ続けてきた、『魂の絆』とやらが……仲間達が流してきた血、味わってきた苦痛が全く無意味なものだったと言うことが、すぐにわかる……」

ダイ「無意味?」

 聞き逃せないとばかりに、ダイは表情を険しくした。
 しかし、バーンはこんな無益な攻撃は止めるがいいとダイを諭す。

バーン「おまえのためだ」

 激昂し、無意味なわけがないと言い返すダイ。自分が大魔王をここまで追い詰められているのは、みんな、仲間のおかげだと言い切るダイ。
 しかし、バーンは残った片手を高く掲げて言った。

バーン「余を追い詰めること……それ自体が、無意味だとしたら?」

ダイ「え?」

 戸惑うダイの目の前で、バーンは静かに腕を振り下ろす。音叉のような高い音が一瞬響いたかと思うと、急に床が振動し始めた。
 それに気がついて、周囲を見回し出すダイ。
 床に座り込んでいるポップは、もっと強くその震動を感じていた。








マァム「な、なにっ!?」

 玉の中で、不安そうな表情を見せるマァム。
 アバンも、突然の震動を感じ取っていた。








 バーンの肩の上で、ダイは何の音だと警戒する。
 バーンはバーンパレスが心臓部である魔力炉を失い、徐々に浮遊している事実を暴露する。
 もはや、地上波遙かに遠い……だが、バーンパレスにも唯一大魔王のみが制御できる場所が残っている。

バーン「いや、余でなくては動かせぬ場所が……」

 どこか、遠くを見つめるようなバーンの目。第三の目も、生き物めいた光を放つ。

バーン「見せよう」

 その言葉と共に、第三の目から放たれた光が空中に映像を映し出す。それを、ダイもポップも目を見開いて見つめていた。
 焼け焦げるように広がる円の中に映し出されたのは、ダイにとっては見覚えのある場所……バーンパレスの心臓部だった。

ダイ「でも、魔力炉はおれが……っ」

バーン「そう、破壊した」

 肯定され、ハッとしたようにバーンを見下ろすダイ。
 バーンは、話の焦点はその下にある物だと言う。
 下から突き出した円錐状の物体の周りにある水晶めいた石が、一斉に砕けて散った。
 きらめきながら散っていく水晶。

ダイ「なっ、なんだっ!? あれはなんなんだ、バーン!?」

 驚いて尋ねるダイに、バーンは答える。

バーン「バーンパレスの究極の兵器、ピラァ・オブ・バーン」

 







 その時、バーンパレスの下降部が音を立てて開き、その中央から巨大な槍の穂先じみたものが現れた――。







 巨大な鳥に似た優美な天空城は、一気に要塞めいた物々しさを増した。
 ピラァ・オブ・バーン……バーンが世界中に落とした物と同じだという。目を見張り、それを見つめるダイとポップ。
 二人とも、戦くような表情が浮かんでいた。







 ピラァは、バーンパレスの各ブロックに6本装備していた。
 右翼の端が光り、それを地上に落下した時の回想が流れる。平和な村を、一瞬で燃やし尽くした爆撃――。

 尾翼が光り、オーザムに落とした時の回想が流れる。雪原で誰も居ない場所だが、落下と同時に激しい爆破が起こるのは避けられない。








 ダイに見せつけるように、ピラァ・オブ・バーンの画像を映し出しながら、これまでに五本を投下し、これが最後の一本だと教えるバーン。

バーン「それが今……眼下に落ちたらどうなる?」

 バーンの冷酷な流し目が、ダイへと向けられる。
 生唾を飲み込むように、ダイが小さく呟いた。

ダイ「下に……」

バーン「知っているだろう。なにもかも、吹き飛ぶことを」

 手を、ゆっくりを握りしめるバーン。

ポップ(下にはフローラ様達が……っ)

 それに思い至ったポップは、大声を張り上げる。

ポップ「ダイッ、やらせるなっ!!」

 その声にハッとしたダイは、バーンの手が握りこぶしを持ち上げるのに気づいた。

ダイ「や……っ」

 顔を引きつらせたダイを見て、バーンはフッと笑う。それは、ひどく満足げな顔だった。

ダイ「やめろーーーーっ!」
 
 叫びながら、雷を落とすダイ。その雷光は、近くに落ちていた瞳にまでおよび、帯電する。







 玉の中にいる仲間には、そのダメージは無かった。だが、雷光が黒い影となって彼らの上に不規則な模様を刻み込む。
 その模様は、まるでひび割れのように見えた。

 クロコダインが、レオナが、アバンが、マァムが、それぞれ割れてしまうかのように雷光の影に彩られる。
 誰もが声もなく、玉の外を見つめていた。







 未だに床に座り込んだままのポップは、手を辛うじて伸ばして制止の声をかける。
 だが、それはなんの効き目も無かった。

ダイ「やめろ……やめろやめろやめろぉおっ」

 焦りの余り、どこかたどたどしい絶叫を上げるダイ。動揺し、目を固く閉じたその表情は、勇者ではなく少年のそれだった。
 ダイの叫びに、雷が集中して降り注ぐ。

 しかし、バーンはもはやなんの痛痒も見せなかった。
 涼風でも浴びているように涼しい表情――と、不意にその目が見開かれた。不敵な笑いを上げながら、握りしめた拳を再び開き、手の向きを変える。
 下に向けて、開かれる掌。

 強すぎる雷光が、周囲から色を奪った。
 静かな轟音だけが、その場に鳴り響く。光と影だけが際立つモノクロの世界の中、ダイが激しく叫んでいるが、その声は聞こえない。手を必死に前に伸ばすポップの叫びも、かき消された。
 








 空を見上げれば、真っ白な空に浮かぶのは逆光で黒に染まったバーンパレス。その中央部から落下するバーンパレスが、ぐんぐんと地上に迫る。
 風切り音を立てながら落下するピラァ・オブ・バーンはロロイの谷へと落ちた。真っ白な光に覆われたそこは、ぼんやりとしか見えない。

 岩で覆われた盆地に落ちた爆弾は、岩山に遮られ見えなくなる。
 何事も無かったのか――そう思える空白のひとときの後、音が消えた。そして、世界は色を取り戻す。
 ゴツゴツとした岩山と荒れ地が、そこにはあった。

 しかし、次の瞬間、凄まじい爆破がその場を襲った。丸くドーム状に噴き上がる光が、周囲の山川とロロイの谷を吹き飛ばす。
 瓦礫が舞い上がり、飛び散った。

 下から上へと噴き上がる爆風が岩山を崩し、土砂崩れを巻き起こす。バーンパレスにまで噴き上がるかと思えるほど、その爆破ドームは大きかった。







 バーンパレスでは、傾いた床の上を『瞳』が転がって跳ねていく。まるで、恐ろしい物から逃げるかのように。
 そして、一面の真っ白な光が広がった――。







 地上では、大量の黒煙の中から白い柱が現れた。まるで塔のように見えるそれは、地面に突き立ったピラァ・オブ・バーンだ。先端部分が深く潜り込み、直立した部分が柱となってそそり立つ。

 それを、ダイはバーンの見せる映像越しに見ていた。呆然と目を見開くダイ。
 ダイはまだ、バーンの角と剣の柄を握りしめていたが、もはや攻撃を止めていた。バーンの身体からは、余韻のように黒煙が舞い上がる。

 ダイが見たものは、仲間達の姿など全く見えない、荒れ地に突き立ったピラァ・オブ・バーンだった。霞のように土煙が漂うそこは、人の気配はない。ヒュンケル達がいた処刑台や、ダイ達が必死になって作り上げたミナカトールも消滅していた。

 目を戦慄かせるダイとポップ。

ポップ「み……みんなが……フローラ様達が……ッ」







 『瞳』の中で、マァムも悲痛な表情を見せる。無表情のブロキーナも、その仮面の下で何を思うのか――。

 ヒムの目にも驚愕が浮かび、ヒュンケルは悔しそうに歯を食いしばる。

 驚きのあまり、そろって口を開けているのはレオナとチウだった。

 驚愕に目を見開くアバン――。
 誰もが、無言だった。








 バーンは一歩前に踏み出し、肩にいるダイに話しかける。

バーン「ダイよ。あれに見覚えはないか」

ダイ「え……」

 未だに現実が受け入れきれないのか、戸惑うばかりのダイに、バーンは叱責するかのように強く問いかける。

バーン「あの輝きに、見覚えがないかと聞いているのだ」

 バーンの意志に応じて、映像はピラァ・オブ・バーンの上部を映し出す。そこは開閉する仕組みになっていて、中には光り輝く何かが設置されていた。
 まるで神殿のように、六本の柱に支えられた中央部に安置された物体――氷じみた水晶に覆われた、黒く丸い物体を見てダイは目を見開く。

ダイ「あれは……黒の核晶……!」

ポップ「なんだって……!?」

 驚くポップの声は、裏返っていた。








 玉の中で、ヒュンケルやクロコダインも冷や汗を隠せない。

ヒュンケル(あれが悪名高い、魔界の超爆弾……!)

クロコダイン(ハドラーの体内に埋め込まれていたという……)








 父の命を奪った爆弾を目の当たりにして、衝撃を受けるダイ。
 そんなダイの心境を無視して、バーンは淡々と説明する。

バーン「黒の核晶の破壊力は、その大きさに比例する……あれはハドラーに仕込んだ核晶の十倍以上はある……この意味……分かるだろう?」

 そう言いながらバーンは、肩に乗ったダイへと目を向ける。
 それに、息をのみ、大きく目を見開くダイ。

 ポップは、ハドラーの時でさえ死の大地を吹っ飛ばしたと知っていた。その十倍ならここら辺一体……下手をすれば、地上が――。
 しかも、同じのが後五発もあると知り、戦慄するポップ。

バーン「どこに落ちたか、ちゃんと覚えているか? 余は全て覚えているぞ」

 人間は無差別攻撃と呼んでいたが、バーンは落として然るべき場所を狙って落としたと言う。
 それを聞くダイは、すでに自分の剣の柄から手を離していた。

 バーンの角は掴んだままだが、攻撃も忘れたように呆然としている。また、バーンもそんなダイを敢えて振りほどこうとはしなかった。胸には相変わらずダイの剣が刺さったままだが、バーンはそれを気にも留めていない。
 まるでブローチのように、彼の胸を飾っているだけだ。







 バーンは、説明する。
 まずは、ロモス北西。平和な町並みの上に、巨大なバーンパレスが浮かぶ。

 続いて、オーザム南部。吹雪の中、クレーターの上に突き立ったピラァが突っ立っていた。

 バルジの島。かつて、レオナ達がいた塔を塗り替えるように、クレーターの上にピラァが新しい塔のように立っていた。島の両端には、破壊された二つの塔の痕跡が残っている。

 パプニカ西部。リンガイア王国。
 そして、この地……カール北部。
 世界地図の上に、六つの×が等間隔に並ぶ。








バーン「これらの点を……線で繋ぐとどうなるか」

ポップ「……六角形だ……」

 ポップの呟きに、バーンは満足そうに目を閉じて笑みを浮かべる。







 玉の中では、アバンが警戒の表情を、レオナが悲痛な表情を浮かべていた。








バーン「六つの巨大な黒の核晶が、六角形の一つ一つの頂点となる。地上に火柱を上げるのだ。その魔法陣は六角魔法陣の魔力によって増幅され、確実に地上そのものを吹き飛ばす……!」








 地図の上で、六つの爆発が起こり、地図全体を爆破が襲う。
 そして、ピラァ・オブ・バーンの黒の核晶が赤く光り、爆破する光景が浮かぶ。その威力は先程のピラァ・オブ・バーンとは比べものにならない威力であり、爆破のドームは大きく膨れ上がり、爆煙は津波のように四方へと広がっていく。








バーン「そして……魔界が地上に変わって出現するのだ」

 一歩、前に踏み出しながらバーンは言った。
 その顔も、周囲も夕日に赤く照らされていた。
 バーンは壊れた壁の際に立ち、西を――太陽が沈む方向を眺める。やけに大きく見える夕日は、皮肉なほどに美しかった。

バーン「今日まで地上に沈んでいた太陽は……明日、魔界を照らすために昇る」

 子供を肩に乗せたまま、夕日を見つめる長身の男……事情を知らなければ、それは仲の良い親子に見えたかもしれない。
 しかし、夕日を見つめるダイの顔には、呆然とした恐れが浮かんでいた。

バーン「どうだ、ダイ。これが、結論だ」

 バーンが、夕日に背を向けて後ろを振り返る。
 その時になってから、ダイはやっと正気を取り戻したように動き出す。角を掴んでいた手を離し、バーンの喉首を掴んで強く揺さぶりだした。

ダイ「ま、まだだっ、まだ、爆発前におまえを倒せば……っ」

 だが、バーンは文字通り児戯であるかのように相手にせず、無駄だと言い切る。
 もはや、バーンを倒しても爆発は止まらない。

ダイ「でたらめを……っ」

 根拠もなく言いつのろうとするダイを、バーンは軽蔑しきったような目で見やる。

バーン「あれには時限装置が組み込まれている。後何分かで、地上は確実に消える」

 ショックを受けながらも、ダイは怒りの表情でそれを否定する。

ダイ「そ、そんなことない! おまえを倒してから、爆発を止めるっ!」

バーン「世界六カ所を……一人でか?」

 その言葉とバーンの目に、ハッと息をのむダイ。手の動きも、止まっていた。
 今にもバーンに殴りかかりそうな姿勢のまま、固まるダイ。だが、夕日に照らされて伸びる影は、まるで親子が寄り添い合っているように見えた。
 
 チェスにたとえ、真の勝者は最後の一手を悟られないように駒を運ぶものだと語るバーン。
 地上に実力者を残して置いては、万に一つのあの柱の秘密に気づかれるかもしれない……だからこそ、この場所に挑ませた。
 最初からラストポイントを、決戦場に指定して――。

 半壊した天魔の塔を、赤い夕日が美しく染め上げる。

 バーンは、なおも語る。
 バーンの思惑通り、ダイ達は総力を結集してここに来た。

バーン「そして、こうなった」

 夕日に照らされて、床に転がる瞳が映し出される。ダイとポップを除く全員が、すでに玉となってしまった。








 玉の中で、歯がみしながらそれを見聞きしているヒュンケル。
 アバンも、珍しく怒りの表情を浮かべていた。








バーン「世界中の強者はすでにここにひれ伏している。身動き一つとれん」

 その言葉を、ポップも聞いていた。
 立ち上がることも出来ず、座りこんだままのポップは悔しそうな顔を浮かべることしか出来ない。

バーン「もはやどうにもなるまい」

 顔を背け、泣く寸前のような声を漏らすダイ。

バーン「もうよせ、ダイ。全ては終わった……今度こそ理解したであろう?」

 ギュッと目を固く閉じ、耐えがたい苦痛に耐えるように震えるダイを、バーンは静かに……だが、冷酷に諭す。

バーン「これ以上の戦いの無益さを、心底から」

 だが、ダイは歯を食いしばり、反論した。

ダイ「い……いやだ……ッ。そんなの、いやだーーっ!」

 ダダを込める子供のように、叫ぶダイ。

ダイ「無益なもんか! みんながこんなに頑張ってきたのに、ここでやめたら……ッ」

 納得しきれないように叫ぶダイに、バーンは言った。まるで、頑是無い子を諭すかのように。

バーン「ならば、世の命だけでも奪うか?」

 ダイの目が、大きく見開かれる。
 このまま攻撃を続ければ、自分を殺せるかもしれないとバーンは淡々と語る。

バーン「だが、後数分では殺されはせぬぞ。地上破滅後でいいのなら、余の生命を奪うのも一興かもしれんが……」

 夕闇の迫る空に浮かぶバーンパレスが映し出される。
 悠々と空を舞う作り物の巨鳥は、こんな時でさえ美しかった。

バーン「念のために聞いておこう。おまえは余を殺すことが目的で、この戦いを始めたのか?」

 優しいと言ってもいいその問いかけに、ダイは一瞬、絶句する。

ダイ「……違う」

 ダイの眉が、少しゆるんだ。
 バーンは答えを急かすことなく、ダイを横目で見続けている。その目には、憐憫の色合いが浮かんでいた。

ダイ「おれが……この戦いを……始めたのは……地上のみんなの平和を……まもる……」

 年相応のたどたどしい声が、途切れがちにダイの初心を語る。

バーン「その……守るべきものは、もう消える」

 静かなその言葉に、ダイは目を見開いた。全てから、色が消え失せていく。
 目を反対側に向け、バーンはなおも呟いた。

バーン「消えるのだ……」

 見開かれたダイの目が、灰色がかって霞み……終いには真っ白となる。
 その時、ダイの手から力が抜けた。
 バーンの首元をしっかりと掴んでいたはずの、ダイの手。するりとバーンの髪の中から抜け落ちる手から、紋章の光が消えていく。

 手は、バーンの身体から滑り落ちる。
 それでも相手を掴もうとしてか、伸ばされた指は何も掴めないまま落下していく。

 その様子を見て、息をのむポップ。
 バーンの肩から滑り落ちたダイは、そのまま落下していく。やけにゆっくりを感じる時間の中で、受け身もとらずに背中から落ちるダイ。

ポップ「……ダィ……」

 ポップの呼びかけは、ひどく弱々しかった。
 ダイの身体が、大の字に倒れ込む。だらんと伸ばされた手は、中途パンパに開かれたままだった。
 身動きもしないまま、ダイは自問自答する。

ダイ(ど……どうしたんだ……どうしたんだよ……っ、まだ決着はついてないぞ……)

 どんな時でも諦めちゃいけない――そう、自分で自分を励まし、立てと自分を叱咤するダイだが、その身体はピクリとも動かなかった。

ダイ(立て、立つんだ、ダイ……!)

 子供特有の丸みを残す頬を、水滴が伝っていく。途切れることなくこぼれるそれは、ダイの涙だった。

ダイ(お……おかしいよ……どうして……おれ……立てないんだ……)

 目を見開いたまま、静かに涙をこぼすダイ。
 辛いと言うよりは、ただ、ただ、悲しみに打ちのめされて泣いているダイの表情を見て、ハッとするポップ。

ポップ(あいつの……あの顔……悟っちまったんだ……もう本当に、どうしようもないことを……)

 ポップは地面に突いた手を、強く握りしめる。その声は、すでに涙に震えていた。

ポップ「ここまでっ、ここまで頑張り抜いてきて来て……っ、最後がこれかい……ちくしょう!」

 叫ぶポップの目からも、涙があふれ出す。
 怒鳴り、声の限りわめき立てて泣くポップ。
 対照的な泣き方をする勇者と魔法使いを、バーンは面白がっているような目で見下ろした。

バーン「泣くな。おまえ達は本当によく戦った……!」








 床に転がる『瞳』の中では、マァムが辛そうに目を伏せ、レオナは心配そうに目を見開いていた。







 静かに、涙をこぼすだけのダイ。
 床に突っ伏して、恥も外聞も無く声の限りに泣くポップの声だけがその場に響き渡る。
 しばし、それを見ていたバーンは、顔を太陽の方向へと向けた。

バーン「さあ、一緒に地上の最後を見よう!」

 いつの間にか、雲の上まで上昇していたバーンパレスは、ちょうど、夕焼けと夜の闇の合間に存在していた。

バーン「歴史的一瞬だ……!」

 







ポップ(終わりだ……なにもかも……! おれ達の家族も……!)

 泣きながら、ポップは絶望する。
 思い浮かべるのは、両親の姿……並んで微笑むジャンクとスティーヌの姿だった。

ポップ(世界中の偉ぇ人達も……!)

 ポップの両親の周囲に、世界の王達が並ぶ。そこには、師匠であるマトリフの姿も混じっていた。

ポップ(そして、何も知らない普通の人達も……)

 今まで出会った人達が、ずらりと並ぶ。
 
ポップ(……消えちまうんだ。もうすぐ、みんな……消えてなくなっちまう……!)

 ポップの脳裏で、ピラァ・オブ・バーンが爆破し、周囲が染まる。地図の上の六つの爆弾が爆破する様も、ポップは鮮明に想像できてしまう。

ポップ「おれ達にゃっ、どうすることもできなかった!」

 拳を握りしめ、床石を力任せに叩くポップ。二度、三度と何度も拳を振り下ろしながら、ポップは泣いていた。

ポップ「結局……なにも……」

 ダイやポップの嘆きをどう考えているのか、バーンは平然とした顔で語る。

バーン「プラァ・オブ・バーンは最後の柱の機動によって、全ての柱の時限装置が同時に作動する。一斉爆発まで、もう10分もないだろう」

 あと十分ばかりで忌まわしい地上が消えてなくなると語るバーン。ポップはただ、顔をくしゃくしゃにして涙を流すばかりだった。
 ダイの目からも、ハラハラと涙が落ちる。

バーン「……感無量だ。さすがの余も……」

 空を振り仰ぎ、バーンは感慨深げにそう呟いた――。


《感想》

 逆転から再逆転されてしまった絶望感がものすごいです!
 このジェットコースターのような急展開の相次ぐ逆転の連続に、気分は○転裁判の某トンガリ弁護士さん(笑)

 ああ……前に別の漫画で『より高くまで舞い上がった後に叩きつけられる地上は、さぞかし苦痛を感じることだろうなぁ』と言っていたドSキャラを思い出しましたよ(笑)

 マァムの台詞、原作では『あ、あの鏡……あの時の……!?』でしたが、後半は分断され、回想シーンの後に回されています。
 ついでに、原作ではバーンに攻撃を受け、シャハルの鏡にヒビが入ったところから回想がスタートしていましたが、アニメではマァムの視点からスタートしています。

 ポップが両手で盾を拾い上げるシーンは、アニメの追加ですね。
 原作では腕にはめるなり、がくんと腕が落ちちゃったいましたが、アニメでは一応、踏ん張ろうと頑張ってはいます。……結果は同じでしたが(笑)

 アニメのマァムが、キョトンとした表情でポップを見ているのには笑っちゃいました。絶対「あれって、そんなに重そうには見えないんだけど?」とか思っていそう。
 ポップが腕を落とした際、手をそっと彼の右肘に添えるマァムの優しさに感動しましたが……そこを抑えてもあまり意味がない気がします(笑)
 それに心配そうと言うよりは、やっぱり不思議そうに覗き込んでいますし。

 シグマの提案に、ポップがためらうような台詞を言うのはアニメの改変です。
 シグマがハドラーからもらったこの盾を誇りにしているのを知っているからこそためらう、そんな台詞が入ったのは喜ばしい限りですが……この台詞、最初の持っていってくれと言われた時に返した方が良かった気がします。

 試しに腕につけて、重いと文句を言った後でこの台詞だと、遠慮のタイミングとしちゃズレていますし〜。

 シグマが鏡をアイテムだと言い切るのは、ちょっといいなと思いました。
 ダイがパプニカのナイフを、宝物や思い出の品としてではなく武器としてレオナに渡したように、余計な思考を除外して、本来の役割として使ってほしいと望んでいるように聞こえます。

 シグマの目にポップが映り込む演出、いいですね♪
 ヒムとアルビナス以外の親衛騎団は、瞳孔がなくて人間離れした目をしているのですが、このシーンのシグマの目にはこれまでに無い温かみを感じた気がします。

 シグマの目に映るポップが、俯いて考え込んでいたのも嬉しいポイント♪
 そして、マァムの呟きの続きを聞いて、アニメではこの回想がマァムの視点で語られているのだと気づきました!

 さっきも言ったように、原作ではシャハルの鏡にヒビが入ったところからスタートするので、ポップの思い出した回想という印象が強かったのですが、アニメではマァムの意味合いを強めてくれているんですね!

 ついでに、久々にシグマの声が聞けたのも嬉しい点♪ 彼の声、めっちゃ好みなんです。馬面なのに、すごくイケメン声で♪

 砕け散ったシャハルの鏡の破片に、モノクロのポップの顔とシグマの顔が映る演出、かっこよかったです。アニメの追加シーンですね。
 ところで破片、原作ではもっと鋭角で破片が危ない感じの割れ方でしたが、アニメの方はもう少し穏やかな破片でした。

 バーンが炎の向こうに垣間見るダイの姿が、黒のシルエットに青い闘気に縁取られていた演出がとても綺麗でした♪ 原作では輪郭にトーンを張っていましたが、黒の方が目を惹く気がします。

 また、ここでポップが落下するか、あるいは足が地面についたっぽい感じがしますが、動きが速いのと部分的すぎてよくは分かりませんでした。

 原作では、ここでポップが「いけっ」とダイを見るシーンがあるのですが、アニメではなくなっています。
 これは……合図を送るまでもなく、二人の意思が合致しているとみていいですか!?(←妄想的な解釈♪)

 仲間達の顔、原作では一人ずつコマで表現されていましたが、アニメでは二人一組で画面を二分割した形で演出されていました。
 また、原作はみんなが登場する順番も違います。マァム、ヒュンケル、クロコダイン、チウ、ブロキーナ、ラーハルト、ヒム、最後にアバン先生でした。

 バーンが効力を振り払うシーン、炎が玉の表面を舐めるシーンはアニメの改変です。原作では、玉達の視点で驚いていただけでした。
 この炎、もしマァム達が生身のままならえらいことになっていましたね。バーン様が瞳を頑丈に設定しておいて、よかったと思えるシーンです。

 その後のヒュンケルとクロコダインの台詞、改変が。

原作ヒュンケル(硬直したまま、ポップと自分の呪文の直撃を受けたはずがっ……)

原作クロコダイン(あの炎だけでも普通はチリになりそうなものをっ……!!)

 ヒュンケルは一部省略でしたが、クロコダインは大幅変更されていますね。女の子達の台詞は短かったせいか、そのままなのですが。

 そして、ポップの落下が思った以上に早かったのにビックリしました。原作ではポップはずっと宙に浮いていて、バーンが腕を切られた時に床にどべっと落ちています。

 が、アニメではこのタイミングで仰向けに倒れ込み、床に背中を完全につけています。

 ダイの接近に、バーンが一瞬後ろにスウェーするような動きを見せた後、次の瞬間には額をぶつけんばかりに顔を前に出した動き、いいですね! アニメの改変です。

 原作ではこのシーンのバーン様は、ダイの動きに戸惑いながらも待ちの体勢のままです。が、アニメではダイの攻撃の脅威を感じて一瞬無意識に逃げかけ、そのすぐ後に対抗心剥き出しに顔を寄せるよう行動を取っています。

 バラン戦でもそうでしたが、頭突きも辞さない肉弾戦の距離での睨み合いって、迫力があってカッコいいですね。

 でも、ストラッシュクロスはちょっとだけ残念。
 光をフラッシュさせたせいで原作でははっきりと浮き上がったXの形が、アニメでは輪郭がぼやけて明瞭じゃなかったのが心残りです。

 斬られた後、ダイとバーンの姿が真っ白に霞んでいく演出は良かったです♪
 ポップの起き上がるシーン、左右逆転していますね。

 バーンの血飛沫の上がり方、思っていた以上に派手でビックリ。原作でもポタッと落ちる程度の描写だったのに、アニメでは下から上へドバッと噴き上がってますよっ。

 そして、腕、回転しながら降ってきたのは意外でした。
 原作ではそのまま真っ直ぐに落下してきた風だったので、もっとスローモーションにゆっくりと降るかと思ったら……結構、勢いよくクルクルしてましたよ!

 バーンの表情、原作では呆然と言うよりも、目を見開いて自失しているような印象が強かったのですが、アニメではそこまで我を失ってないような感じに見えました。

 微妙に驚きなどで表情を動かしたり、腕の動きを目で追っている感があるせいか、ちゃんと目の前の物が見えている風なんですよね。
 声にも張りがあって、我を失うほどの驚きとは思えなくって。

 バーンの目は虹彩の描き方まで凝りまくっているので、ダイの目が茶一色になったように、その色が薄まるアップが出るだけでも雰囲気が大きく変わっただろうなぁと思うと残念です。

 原作では、見開いた目に映っている物を頭が受け入れきれていない感じで、宙を舞っている腕を見る際は焦点が合いきってない印象を受けるので、衝撃度を強く感じます。

 やっぱり、腕は回転させないでスローモーションで落下して欲しかったです……! って、もしそうしたらそうしたで、生々しさもアップしそうではありますが(笑)
 転がった腕が反動で跳ねる動きとか、リアルでちょっと引いちゃいましたし。

 ポップが天地魔闘の構えを破ったと叫ぶ時の声、うわずっているのについ笑っちゃいました。あれだけ不敵に振る舞っていたのに、この結果に一番驚いているような小者感がたまらなく好きです(笑)

 それに比べると、自分では何もしていないのにヒュンケルとレオナの状況分析の速さはお見事ですね。

 特にレオナが、魔神に怯えていた表情から、きりっとした顔になって身を乗り出す変化を見せたのが気に入りました。原作では不安げな顔のままなので、実にいい改変です。
 レオナは本当に、心だけでもダイに寄り添って共に戦う覚悟でいるんですね。

 ヒムの側にシャハルの鏡の欠片が寄り添っていたのには、心底感動しました! 原作では玉から少し離れた所に欠片が落ちていましたが、アニメではヒムの玉を守るようにぴったりとくっついていたのが泣かせます。

 もし、シグマの魂がシャハルの鏡に宿っていたのだとしたら、ヒムだけでも生き延び、ハドラーの遺志を受け継ごうとしてくれたことを喜んだに違いないと思えます。

 シグマとポップの戦いでは、ポップの魔法の性質上、相手を消滅させるしかなかったし、シグマの攻撃力ではポップはどう考えても即死しちゃいますから、手加減をする余地も、死闘の結果両者が生き延びる可能性もなかったですしねえ……。

 ヒムがシグマに呼びかけて笑うシーン、実に良かったです! 欠片にシグマの面影を見いだす演出も、いいですね。
 シグマはその言葉にどう応じたかなと、想像するのも楽しいところ。

 アバン先生の台詞の後から、大幅改変が!
 原作ではここで玉にされたメンバーが「まだいける!」と、思いを一つにし、ポップは立ち上がろうと踏ん張って腕をぷるぷるさせ、バーン様は呆然し、長文ナレーションが入ります。

N「一瞬……であった……! 大魔王バーンがストラッシュクロスで腕を切断され、よもやの事実に我を失ってからこの瞬間まで……!! それは時間にしても、一秒にも満たない間だった!!
 だが……その間に……!! ダイは次の行動を起こしていた……!!」
 
 が、アニメではナレーションをスッパリとカットし、バーンの台詞を追加し、ダイをスピーディーに行動させるよう改変しています。
 
 原作ではダイがバーンに襲いかかる時はほぼ横から見た構図でしたが、アニメではバーンの後頭部にダイの足だけが見える構図から始まって、バーンの肩に足を掛けるダイに繋げています。

 バーンの胸を刺すシーン、ギリギリで傷が見えないバストショットシーンと控え目な流血に抑えていますね(笑) 原作では見開きで大胆描写でしたが、……まあ、さすがに土曜朝からは無理がありますか。

 胸に剣が突き刺さったバーン様、意外なぐらい身動きしてダイを振り落とそうとしているのに驚きました。原作ではさすがにダメージを受けたのか、棒立ちな印象だったので。
 ついでに、ポップの位置が左右逆転しています。

 バーンに話しかけるダイ、原作では『いくら天地魔闘の構えが破れても』が、アニメでは『いくら天地魔闘の構えがとれなくても』に改変されています。アニメの方がストレートで分かりやすいですね。

 バーンの角を掴むシーンを入れたのは、アニメの改変です。原作ではいつの間にか掴んでいましたが、やっぱり掴む動作が入った方が迫力が出ます。

 「ふざけるな」の台詞も、アニメの改変ですね。原作では「ぬう……ッ!!」と言っています。

 バーン様に手で顔をぎゅうっと押されている時の、ダイの顔が可愛いです! シリアスなシーンですが、このもぎゅっとした顔と、喋りにくそうな発音がたまりません♪

 地上からダイの連続ライデインを見るシーンが入ったのは、嬉しい改変です♪ 久々のメルル♪
 メルルが手を動かすシーンを見て思ったのですが、気絶したままのメルルは手を支えるように地面に突いた形のままだったんですね。……まあ、エイミさんの体格や体力じゃ、少し年下の女の子を完全に抱きかかえるのは無理でしょうし、地面に身体が突いた形になるのも仕方が無いかも。

 でも、気絶状態であんな風に手を突いたままだと、手首に負担がかかって後で捻挫状態にならないか心配です〜。

 空を神妙な顔で見上げるバダックさんは台詞も表情の変化もナシでしたが、ここは是非、一言でもいいから「きっと、ダイ達じゃ」とでも言って欲しかったです!

 あの中でバダックさんだけは、対ヒュンケル戦のためにライデインを連発する特訓をしたダイとポップの姿を見ているんですから!

 バーンが大の手首を掴むシーン、アニメでは原作よりも強い力で引っ張っているのか、大きく体勢が崩されています。原作だと、ダイは割と平気そうだったのに……な、なんか、ゲームでよくある敵強化25%的な効果がかかっているような気がしますよっ。

 でも、ダイがライデインと叫んでいる時、黄色い雷光とは別にダイの身体に青い闘気が包んでいるのをアニメで見て、ハッとしました。
 ダイはライデインを唱えながら、自分の身体を竜闘気で守っていたんですね……! 今まで気づきもしませんでした!

 ポップがダイに向かって無意識に手を伸ばし、それを自分の意思で止め、下ろしたシーンに感動! これも、原作にはないシーンです。
 雷の光で、ポップの手袋の色が変わって見えるシーンの細やかさに感心しました。

 原作ではポップはずっと、辛そうに両手を床についたまま座り込んでいます。

 ハドラーでさえ無意識に助けてしまったポップにとって、自分の意思で仲間を助けないと決めるのは辛い選択でしょうねえ。
 この状況とポップの今の現状では、手を貸すことも出来ないですし……。

 辛そうに目を閉じる顔、一生懸命我慢して目を開ける表情、バーンを睨む表情と、変化しながら顔を上げるシーンが、また良かったです!
 ポップが敵を睨むタイミングで、ちょうど雷が光って光が当たる演出もかっこよかったですよ〜。

 ポップの台詞、微妙に追加されています。原作では「だが、あれは確実に効いてる」の一言で済ませていた部分を、バーンの言葉は強がりと考える台詞が追加されています。

 バーンが落ち着きを取り戻してダイを諭すシーン、思っていた以上に渋くてかっこいいです……!
 原作ではバーン様の「おまえ達が信じ続けていた」の台詞の冒頭は「たった今」から始まっていますが、アニメではこの部分を省いていますね。
 この台詞を言ってから、ダイ達がその意味を知るまで長いのでカットした方が自然に聞こえます。

 無意味と言われて、ダイが反発して聞きかえすシーンもアニメの改変です。
 バーンが最初にダイを振りほどこうともがきまくっていたのが、ここに来て活きているなと思いました。
 バーンが急に抵抗を止め静かになった不信感が、原作以上に感じられます!

 原作ではこの会話の最中も、ダイとバーンはバシバシに雷を浴びているのですが、アニメではバーンが静かに問いかけた時から雷が静まりだしているのも印象的。

 しかし、攻撃をしていないと、ダイがバーンに肩車されているように見えてしまい、一瞬ほのぼのしてしまった罠が(笑)
 バーンの体格だと、ダイとポップを右と左にのせて肩車という、クロコダイン級の荒技も可能だなぁと、関係ないことを思っちゃいました。

 バーン様の説明、長いのに丁寧に語ってくれていたのは嬉しかったです。
 夕焼けにさしかかった空に浮かぶバーンパレスを、角度を変えながら映し出しているのがとってもびゅーりほー♪ 上が濃紺、下が朱色へと変化しつつあるグラデーションを描き始めた空も、実に鮮やかで美しいです。

 その色彩の中、白い鳥が飛ぶようにバーンパレスが緩やかに飛んでいる……雷の時とは打って変わった美麗な天空城でした。

 バーン様が第三の目から光を放ち、穴が開くようにチリチリと広がる光景を見て、古いカメラフィルムが火で焼け焦げていく様を連想しました。

 心臓部の魔力炉の下側にあった円錐部分の周囲の水晶が、一斉に砕け散るシーンはすごく綺麗でした。3Dもいいなと思ってしまう瞬間です。
 ピラァ・オブ・バーンが出現したところで、CMへ。CM転換への音楽が、なんだかいつもと違っていて不穏。

 CM再開後の音はいつも通りでも、内容は緊迫しまくりっ。
 角度を変えてピラァを抱え込んだバーンパレスを見せるシーン、夕日がヤケに綺麗に、大きく見えています。
 

 ピラァ落下前のダイとバーンのやり取り、実は改元されています。

原作ダイ「そ、それが今……眼下に落ちたらッ!!」

原作ポップ(フ、フローラ様達もっ!!)

 今思えば、ダイの言い回しは子供っぽくなくて、らしくないですね。この台詞なら、ダイとポップの台詞は逆だった方がよかったんじゃ……?

 アニメのバーンは、ダイの理解度の低さを理解しているのか、懇切丁寧にゆっくりと教えてくれています。……でもこれって優しさと言うよりは、恐怖を理解させたいからやっているように思えてなりません(笑)

 また、ポップがダイをけしかける声、原作ではただ名前を呼んでいるだけですが、アニメではやらせるなと言っています。

 ダイがやめろと叫びながらライデインを落とし始めた際、玉の中にいる仲間が映るのはアニメの追加シーンです。雷の黒い影が、鏡が割れるように見えて見ていてゾクゾクするほど綺麗で不吉な印象のするシーンでした。
 ただ、原作に出なかったからとは言え、ヒュンケルやラーハルト達が出てこなかったのが残念! 

 ポップがバーンを制止しようと呼びかけて手を伸ばすシーン、原作では手を伸ばしかけるだけでした。

 ダイがやめろと取り乱すシーン、逆さの画像になったりなどの演出もいいですが、うろたえて舌足らずな口調になっているダイの声が実に可愛いです。

 ピラァ・オブ・バーン落下シーン、白黒のメリハリの利いたモノクロ画面で、声が消え、最初はスローモーションに、徐々に速度を上げて爆弾が落下していく演出、怖かったです!
 核をテーマにしたアニメや映画を思わせる、静かな溜めが実に印象的……なのはいいんですが……なぜ、ここでお知らせを流しましたかっ!?(笑)

 自身やニュース速報ならまだしも、なぜにこんなドシリアスシーンで「ダイの大冒険のゲーム情報を明日配信するよーニュース」を流すんですかっ!? いや、確かに重要情報ですけどっ。なんなら一年以上前から気にしまくっていましたけどっ(笑)

 でも、ここで流すのはタイミングが違うだろーーーーーと、叫びたいですっ。せめて、次回予告でっ……いや、それともこれは『文字放送が気になるなら、ブルーレイ版を買うっきゃ無いんじゃない?』というお誘いなのでしょうか。

 バーン様、ダイが現実を受け入れきる前に、黒の核晶を見せつけるなんてドSもいいところ……っ。
 そして、この中で黒の核晶を見たことはあるのは、多分ダイだけなんですね。

 ショックを受けるダイが、黒い画面に白い線で描かれるという演出を使っている中、バックがただのベタ塗りな真っ黒ではなく、かすれた線が微妙に動いている画像だったのが無性に嬉しかったです。

 原作ではこのシーン、黒い線を何重にも重ねた珍しい手書きの効果線でした。手が込んでいそうな割に、目立たずに見逃してしまいそうな書き込みに、当時のアシスタントさん達の職人芸を感じます。時間短縮を狙うなら絶対ここはベタの方が楽だし、そうしても画面効果はたいして変わらないと思うんですよ。

 が、敢えて、手を掛けて描き込みまくることで父を失ったダイの心境を表現しようとした、その拘りに感服します!
 その効果線の影響がアニメになっても影響しているようで、見ていて嬉しくなります。

 バーン様の黒の核晶の説明、原作と順番が入れ替えて省略してあります。

原作バーン「あれだけで……ハドラーに仕込んでいた核晶の十倍以上はある……、黒の核晶は魔力を無尽蔵に吸い込む爆弾だから、当然その破壊力は大きさに比例する」

 また、原作ではバーンの視線はどちらかと言えば下の方を見ているっぽかったですが、アニメでは上を見上げています。
 映し出した映像は高い位置にあるので、アニメの目線修正に納得です。

 バーンに意味が分かるだろうと問われ、答えないダイを見ていると……教師に疑問点はないかと問われ、どこが分かんないかも分からないと、当惑しきっている生徒の顔を思い出します(笑)

 本能的に危険な感じがするのは分かるけど、難しいことはよく分かっていない風に見えてなりません……ダイには悪いですが。
 ポップの方が危険度を承知していそうです。

 バーンの説明中、夕焼の荒野に立つピラァ・オブ・バーンの画像が映し出されたのが、実に美しかったです。
 ダイ達の会話風景だけでなく、風景が時折映し出されるのもいいですね。

 ピラァが落ちた場所を、地図と景色も含めた回想で語ってくれたのも、嬉しいところ♪

 バルジ島、思いっきり風景が変わっちゃっていますね。元々、フレイザードのせいで氷魔塔や炎魔塔が出現し、しかもそれを破壊しちゃいましたしねえ。
 ……あの島、パプニカ王家のいざという時の避難場所だったのに、もう二度と使えなくなっていますね(笑)

 そう言えばマトリフも、自宅の洞窟から見える景色が物騒になったと不満を持ちそうな気がします。

 パプニカとリンガイアの場所が見えなかったのが残念ですが、地図の上に赤い×が刻まれていくのは分かりやすかったです。

 しかし、バーンは目の向きから見て、どう見たってダイに問いかけているのに、答えに気づいたのはポップの方ですよ!
 つーか、ダイって世界地図がちゃんと頭の中に入っていないんじゃ……と疑っては失礼でしょうか?(笑)

 ポップが真相に気づいた際、モノクロ顔で驚いている顔が一瞬映るのがいい感じです。
 点を結ぶ、紫の縁の白い線が輪郭を引いていく動きもいいですね。
 ミナカトールも花の印象を与える魔法陣に改変されていましたが、こちらも花のような優美な六角形になっています。

 ここも、原作との改編ポイントですね。
 旧コミックスと文庫版では『六芒星だ』で、新装再録版では『六星の魔法陣だ』になっていて、よくみたら星の形も少しいじってありました。

 しかし、説明が六角形って……この世界じゃ、六角形にそんなに意味があるんかい、とツッコみたくなりましたよ! 六角形にそんだけ威力があるなら、この世界ってハチ系モンスターの天下になってるんじゃないですか!?(笑)

 うう、せめて新装版の六星(ろくせい)じゃダメだったんでしょうか。
 ダイだったらよかったですし、ポップならまだしも、バーン様の六角形発言は違和感ありまくりです!

 ついでに、ダイの手も改変ポイント。
 原作では描写されていませんでしたが、アニメではダイの手の甲にずっと竜の紋章が浮かび上がっています。剣を手放した時以降も、手に紋章が青く輝き続けているのが印象的でした。

 と、それはさておき、想像の爆破シーンは迫力満点でした♪
 原作では爆破の凄さを白で表現するイメージ的な演出だったのに対し、アニメでは地図上の爆破の後に、実際に爆破が起こった場合の画像が流れていたのがいい感じでした。
 斜めの角度から見たピラァと爆破シーンが、不安感を煽る迫力に満ちています。

 バーン様の「そして……魔界が〜」の台詞は、アニメの追加ですね。バーン様の長年の思いを口にしている感があって、実にいいです。
 ダイとバーンを後ろ姿から見ると、肩車をしてもらっている親子に見えてしまう平和な光景に、ちょっと見とれてしまいました。

 でも、……バランでさえ、ダイを肩車したことは無かったのに!(笑)
 バランパパンは、あの世でバーンに腹を立てていいと思います♪

 ダイがバーンの角を手放すシーン、強ばっているように見える動きに感心しました。強く握りしめ続けていたせいもあるでしょうし、気持ち的に手が強ばっているようにも見えます。

 原作では、ダイはバーンの首を直接掴み、絞めようとしていますが、アニメではバーンの服を掴んで揺さぶっていますね。表現がソフト!
 そして、揺さぶる度に、バーン様のほっぺたが押しつぶされて歪む動きが妙に可愛くて、不覚にも見入ってしまいました♪
 自分がもちもちほっぺに弱かったのだと、今回、初めて気がつきましたよ! 
 ダイがバーンに言い返すシーン、細かな改変が入っているのが楽しかったです。デタラメ発言は、アニメの追加ですね。
 また、おまえを倒しての台詞は原作では『おまえを倒してから、爆破を止めてっ……』になっています。
 アニメのダイは、言い切り系なのが腕白さが増していていい感じですね♪

 バーン様がチェスにたとえるシーン、ダイを肩に乗せた後ろ姿のカットには打ち抜かれました!

 す、すごいっ、ダイは攻撃の姿勢のままなのに、地面に映る影は重なり合って、まるで仲の良い親子のように見えるだなんて……! 顔を見せない後ろ姿なだけに、両者のドラマを感じるワンシーンでした。

 原作にもない素敵イラストに、このシーンだけ切り取ってポストカードにしたくなっちゃいましたよ! 説明シーンに、まさかこんな素晴らしい画像が組み込まれるとは……!

 一カ所に集まった瞳や、ヒュンケル、アバンのカットが入ったのも嬉しいポイントです。

 バーン様の「もはやどうにもなるまい」発言、原作では語尾に「もはやどうにもなるまい!?」と、問いかけているテイをとっているのですが、アニメでは
断定に聞こえますね。

 バーンに戦いの目的を問われたダイがゆっくりと答える際、二段階に分けて色がゆっくりと抜け落ち、モノクロカラーに変化する演出はよかったです!
 完全モノクロになったシーンでは、ダイが石になったように見えました。

 バーンの目の動きも、ゾクゾクします。
 目千両という言葉がありますが、まさにバーン様に相応しいとさえ思えてしまう……!

 ダイを見つめる流し目から、反対側を見やる変化にゾクゾクしました。
 原作では、虚空を見つめるような眼差しでしたが、アニメでは太陽を見つめているのではないかと思えてなりません。……視線の先が見えないので断言は出来ませんが(笑)

 ダイの目のドアップが、灰色に霞むだけにとどまらず、白い背景に細い線だけで輪郭を描く描写も、容赦なくたたみ込んでくるイメージです。

 ダイが手を離すシーン、紋章の光が消えていくのを見て、このためだったのかと思わず唸りました!
 なるほど、ダイが完全に心折れるこの瞬間のために、ダイの紋章をこの時まで残していたのですね!

 スローモーションのようにゆっくりと落ちるダイの手が、実にいい感じです。
 原作ではバーンの肩から手が離れるシーンから始まりますが、アニメではその前にバーンの髪の合間からダイの手が抜け落ちるシーンが入っていました。バーン様、髪がサラサラ。

 ダイが大の字にて折れるシーンポーズと構図が原作のままでも、周囲が暗くなり、スポットライトが当たるような演出が加わっていたのにびっくり。そのまま、逆時計回りにゆっくりと回転していく動きが、ダイの動揺を現しているよう不安感を煽る演出でした。

 泣くダイの表情、止め絵でも描かれるとは思いませんでした。完全な止め絵ではなく、水彩風の絵に涙だけアニメーションさせていましたね。
 このシーンのダイとポップの台詞が、絶品です!

 声もなく静かに涙だけ流すダイ、大声を張り上げて号泣するポップ、泣き方にも個性があると思いました。
 どちらがいいとは言い切れませんが、心理学的にはポップのように感情を爆発させて泣く方が負の気分を早く昇華できて、立ち直るのが早くなると言われています。

 古い時代の葬儀では、わざわざ号泣する役目を指定するやり方がありますが、地域も時代もバラバラなのに同じ風習が伝わっていたのは、号泣の効果を体得していたからなのかな、と思いました。

 ここで、マァムとレオナの表情を見せてくれたのも嬉しかったです。
 辛そうな、悔しそうな表情を見せるマァムは、戦ってきた立場から二人の悔しさ、無力さを共感しているように見えます。

 逆にレオナは、戦いでは傍観者、もしくは守られる立場でいたせいか、二人の絶望を自分のものとするより先に、心配する気持ちが先に立っているような感じですね。

 それにしても、バーン様、ポップがあれだけうるさくないでいるのに、よくもまあ気にせずマイペースで振る舞えるものです(笑)

 ポップの回想に浮かぶスティーヌさん、若っ。原作よりもお若く見えます! ジャンクは……まあ、割と原作通りのイメージですが(笑)、原作よりもアニメの方が身長差があるように感じます。

 ジャンクのイメージって、固太りであまり背は高くないイメージだったんですが、ロン・ベルクが飛び抜けて長身だっただけで、別にジャンクが低身長ってわけじゃないみたいですね。

 ポップの感覚では、マトリフも偉い人の一人なんだなぁと思うと感慨深いです。
 しかし、知らない人達の中で……ほぼきわどい水着にしか見えないお姉さんが混じっているのが、妙に気になるのですが(笑) 

 あ、でも、原作にはいなかったレイラさんやネイル村の長老がいたのはちょっと嬉しかったです。

 バーンが爆破までの時間を語るシーン、原作では残り5分でしたが、アニメでは残り10分になっています。

 それにしても、バーン様マジで他人のことを気にしていませんねっ(笑)
 バーンのターンで次回に続くことになるとは……っ。予想外の所で、次回に続くになりました。
 
 次回タイトル『閃光のように』に、震撼!
 全ストーリー中で最も感動し、一生ダイ大を好きになると思えた瞬間が、ついにアニメ化するんですね!
 バーン様じゃありませんが、まさに感無量です。

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