H.6.10.3(月)No44 『驚異の騎士・シグマ!!』 |
有利な戦況にもかかわらず、シグマは油断することなく身構える。彼は知っているのだ――ポップが自分で言うよりも、はるかに恐ろしい男だという事実を。さっきから、跳ね返されると承知の上で魔法攻撃を仕掛ける行為にも、何か目当てがあると見抜いているシグマ。 そこまでポップの思考を読んでいるシグマは、ポップにとってもやりにくい相手だ。今までポップと戦ったものは、そろってポップを雑魚と侮り、そのおかげで隙をつくことができた。 だが、シグマはポップを好手敵と認めたがゆえに、冷静にその力を計っている。ポップの呪文の中で、自分に通じるのはメドローアだけと知っているからこそ、シグマは敢えてそれを使えと挑発する。 しかし、シグマが持つシャハルの鏡……魔法を跳ね返す盾にメドローアを跳ね返されれば、死ぬのはポップの方だ。 シグマは、それも容易く跳ね返す。しかし、それはポップも承知している。今までの攻撃で掴んだタイミングで、ポップはもう一度イオラを放ち、跳ね返ってきた呪文を相殺する。 シグマの目の前で大爆発がおこり、さすがの彼もためらった一瞬を見逃さず、ポップは今まで隠し持っていたブラックロッドをふるった。 槍は見事に、シグマの右手を壁に縫い止める。 怯えなどかけらも見せないシグマは、ただ、感心していた。――ポップの、底力に。不利な状況にもかかわらずしぶとくチャンスを待ち、そしてそのチャンスを充分に活かしきったポップに。 だが、シグマの動きを封じるために右手を捕らえたことこそが、ポップの不運だった。 シグマの手は、手首ごと外れてあっさりと戒めから抜け出し、自由の身となった彼は凄まじい速度でポップに迫る。 慌ててメドローアを完成させようとするポップだが、その時にはすでに、シグマはポップの手を掴んでいた。 イオナズン級の力を持つ必殺技を受け、ポップのアバラは音を立てて砕け、身体が投げ出される。シグマは今度こそポップの死を確信し、次の戦いに向けて立ち去ろうとする。 だが――それでも、ポップは立ち上がってきた。 さすがに動揺したシグマだが、ポップが自分で自分にベホマを掛けていることに気付き、彼に問い掛ける。 その質問に、ポップはいいやと否定する。 あらゆる呪文を使いこなすことができるのに、マトリフは『賢き者』の称号が気に入らず、そうは名乗らなかった。 《タイムスリップな感想》 ポップが主役で、う〜れ〜し〜い〜ぞぉおおっ! それに戦いが順調には込んでいるのはいいとしても、……マァムはいったいどこを走っているんだろ? やっぱり、最後尾は遠いんだろうか?(笑) 今回、いっちゃん楽しかったのは回想シーンで、ポップが右手をタオルで冷やしながら、マトリフと話していたシーン。多分、メドローアの修行風景と思うけど(脇に置かれた、氷入りの水桶が細かいっ) アバンに憧れ、その背中を追うように旅だった少年が、最終的に辿り着き、目標とした魔法使いが、かつてのアバンの仲間だったということに、なんとなく運命的なものを感じてしまう。 アバンはポップに、修行で得た力は人のために使うべきだと言い残し、マトリフはポップに、魔法使いの魔法は仲間を守るために使え、と教えた。同じ意味のことを教えながらも、より具体的に道を指し示したのは、マトリフの方だ。 アバンはポップを守り、その志を残して逝き マトリフはポップを鍛え、秘伝の技を教えた。 二人の師の教えを受けてポップは魔法使いとして成長し、自らの勇気によってもう一段上へと成長した。 アバンやマトリフが、ポップの中の資質をそこまで見抜いていた上で鍛えたかどうかは疑問だけど、二人が今のポップを見ればさぞや喜ぶんじゃないかと思うなあ。 |
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