H.6.10.17 (月)No46 『マァムの返事』 

 

 ポップはマァムの目を見つめながら、真剣に言う――マァムが好きだと。
 最期の戦いの前に、どうしても言っておきたかったのだ。メルルのために言った告白ではなく、自分の意思でマァムに告白するために。

 想いを打ち明けたポップは、マァムの制止も聞かず、ダイの元に急ごうと促す。だが、マァムは強い調子で止めた。
 マァムの気持ちを聞かず、ポップの気持ちだけを言ってそれだけ、というのは勝手だと。
 鋭い指摘に、ポップはなぜこんなのに惚れたのかと苦笑する。
 実は、ポップは怖かったか……マァムの返事が。ミナカトールの時もそうだったが、戦いも死ももう怖くはないのに、仲間から外れることが怖くて、みんなに相談も出来ずに抱え込んでしまった。

 正直にそれを打ち明け、ポップは謝る。
 マァムの言う通りだ、と。それに告白の痛みから逃げては、メルルにも申し訳がたたないとポップは思う。

 ポップが楽な方、ずるい方に流れようとすると、マァムはいつもそれを指摘し、正しい方に目を覚まさせてくれる――そんなところが、そんなマァムが、ポップは好きなのだ。 そして、本心を明かしてくれたポップに、マァムも素直に想いを返す。

 ポップが好き――大好きだと。
 だが、その想いはヒュンケルに対する気持ちと同じような想いだ。ヒュンケルの、見ている方が辛くなるような孤独さが気に掛かるように、ポップの手の掛かるような弟のような感じは、やはりマァムには気に掛かる。

 ポップの気持ちに最初は戸惑ったが、今は嬉しいと思える。
 だが、それだけだ。今のマァムには、答えを返せない。今回の戦いで、マァムは一つ悟った……自分が本当の愛を知らなかったことを。

 メルルやエイミ、アルビナスのような激しい愛。
 だが、マァムは他人をどう見ているのか、自分がどう見られているのかすら、知らなかった。――もしかしたら、ポップがマァムのために傷ついていたのかもしれないのに。

 それを思えば、マァムにはなおさら答えられない。そんな資格などないと思うから……。 しかし、マァムはポップの手を両手で掴んで、言う。

「……もし、あなたさえよければ、私にチャンスをちょうだい……!」

 この戦いが終われば、きっとポップを一人の男性として見ていけるようになると、マァムは思う。ポップを好きになれたのは、戦いの中で成長してきたポップを見てきたから。 だから、ポップと一緒に戦い、勝手未来を掴みたい――。

 その時、ポップを愛していると気付くか、あるいはヒュンケルの方を愛しているか分からないが、きっと昨日までの自分とは違う自分になれる気がする。
 そのために、力を合わせてこの戦いを乗り切りたい……それが、今のマァムの精一杯の返事だった。

 ポップは言葉もなく、マァムの手を握り締める。
 自分には勿体ないような返事――マァムを好きになって、本当によかったと、一人、想いを噛みしめるポップを訝しがって、マァムは小首を傾げる。

 俯いていたポップは、この戦いで死んだらどうしようもないなとぼやき、急にマァムの腕を掴んだ。

「……じゃあ…前借りをもらうぜ。…目ぇつぶって……」

 ただ慌てふためくマァムに、ポップは顔を寄せ、目を閉じる。それに釣られたようにマァムも真っ赤になりながら目を閉じた――が、ポップはキスをする代わりにマァムの鼻をつついただけだった。

 ただからかってみただけのポップは、結構その気になっていたマァムをおちょくるが、そのポップにマァムの怒りが爆発した! ボコスコに殴った揚げ句、マァムはプンスカに怒りながらもポップを引きずって走り出す。

 なんだかんだあった割には、いつもの調子を取り戻した二人がダイの元にたどり着き、真っ先に気づいたのは凄まじい熱風だった。
 そして、レオナやヒュンケルがいるのを見つける。

 ボロボロの格好をしたポップを見て、ヒュンケルはシグマには苦戦をしたのかと話しかけてくるが、ポップは生返事を返すだけ。…………とても、本分はマァムにやられたという真相を話せるわけがない(笑)
 それより、ダイやハドラーは……と聞き返したポップに、ヒュンケルは言った。

「あれを見ろ……!」


《タイムスリップな感想》

 さて、『何』を見るのだろーか?
 いまいち予測のつかない大将戦! 楽しみではあるが、書く気力がある話だと嬉しいのだけど。

 それにしても、今回は書きにくかった。
 マァムの想いが本人でもよく分かっていない上に、結局保留状態だし、理屈っぽさが先に立っているし〜。

 でも、告白し合っても相変わらずケンカ友達風のお二人が、なんか楽しかった♪
 しかし! あのキス(未遂)シーンッ!!
 もし、マァムが本気で嫌がっていたのだとしたら、ポップなんか軽く突き飛ばせただろうに。ポップって、それを分かっていたやら、分かっていなかったのやら。

 どこまでポップが本気だったか定かではないが、ファーストキスを奪って相手に自分を意識させるって手もあるんだけど、そーゆー姑息な作戦は好みではないと見える(覗きとかは平気でするのに……)

 しかし思えば、ポップは昔、ザボエラがモシャスしたマァムにリードされキスされかかったことがあったが、今回はその逆パターンだな。……確かにキスに関する思い出があれだけだったら、死んでも死にきれまい(笑)

 ま、結局のところ、ポップもダイと同じように、深刻なムードや気まずい雰囲気が苦手だし、ギャグを飛ばして明るくやるのが好きみたいだから、おちゃらけたんだろうけど、ロマンス好きなレオナが見たら、がっかりして怒りそうな展開だ。
 

次へ続く
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