H.8.9.30(月)No44 『ダイの決断』

 

 沈黙するバーンに、ポップは虚勢混じりに声をかける。
 だが、そんなポップの強がりも、バーンの一瞥で一蹴されてしまう。ギクリと身構えるダイ達に、バーンはいたって冷静に話しかけてきた。

 バーンは言葉が聞こえていなかったわけではない。考え事をしていたのだ。
 人間の絆の力――その前に、バーンの計画は破れ去った。バーンでさえ、それを認めないわけにはいかない。
 だが、彼が自失したのは、その敗北ゆえではない。

 人間はなぜ、これほどの力を持ちながらそれを無益なことに使うのか? いや、無益なことに力を費やすからこそ、これほどの力なのか――後から後から、そんな疑問がわいてきたからだ。

「おまえにならその答えが判るのかな……ポップ……。……教えておいてくれないか……? 全員を皆殺しにする前に………!!」

 バーンには永遠の命がある。
 この『一瞬』は負けても、ダイ達を皆殺しにしてからまた同じことをすればいいだけのこと。

 いくら人間達が生命を賭け、奇跡を起こしたところでしょせんは一時凌ぎ……ただの自己満足だと言い切る。
 だからこそ、バーンには分からないのだ――彼から見れば無意味な一瞬の勝利に、全てを投げ打てる人間が。

 だが、バーンにはその答えを判らずともよい。
 なぜなら、バーンはダイ達を殺し、再び地上破滅計画を続行するつもりなのだから。

「余は初めて、人間に感服しているぞ、ポップ!!
 おまえの言う通り、人間はすごい!! 凄絶な生き物だ!! 実際……最後の最後の時のおまえ達は美しかったよ……!!
 閃光のように……!!」

 ポップの言葉の揚げ足を取り、高笑うバーンに、ポップは返す言葉もなく唇を噛み締める。
 ポップには分っているのだ……自分達が殺されてしまうことが。

 バーンも弱っているとはいえ、ダイ達のダメージはそれ以上だ。ここまでの奇跡を思えばこそ、ポップにはそれが悔しくてたまらない。
 そして、同じ怒りと悔しさを味わいながら、ダイはまだ諦めていなかった。何かないかと思い巡らせたダイは、『あること』に気がついた。

 バランに記憶を消された時のこと、初めて双竜紋に目覚めた時のこと――だが、それは覚悟を決めたダイさえにも、冷や汗をかかせるような考えだった……。
 そんなダイの傍らで、ポップとレオナは勝ち目が全くなくとも、最後まで戦う決意を固め、身構える。

 だが、ダイはそれを止め、二人に『瞳』を集めてくれと頼む。なぜと聞きかけたポップだが、ダイの真剣さに押されてそれにしたがった。

 集める最中、ポップがレオナのむき出しの胸に気が付いて、彼女にひっぱたかれるというハプニングもあったが、二人は無事に8つの『瞳』を集め、レオナのマントでしっかりと包む。

 それをしっかりと持ち、みんなを守ってもらうことがダイの望みだ。
 最後に一つだけ試してみたいことがあるが、それはダイにとっても身震いがするほど恐ろしいことだ。

 何が起こるか分からないからみんなを守り……スキがあったらここから脱出してほしいというダイに、ポップはバーンパレスにはバーンの結界があると反論する。
 だが、ダイはしばしの沈黙の後、言う。

「……心配いらない。もし、おれの狙い通りになったら結界は消える……!!
 ……バーンが……死ぬからだ!!」

 ポップ、レオナ、バーン――その三人が、その言葉を聞いた。
 だが、バーンの自信は揺るがない。
 いくら傷ついても、ダイ達3人がかりで自分を倒せないと冷静にいうバーンに、ダイはおれだけで戦うと両手の紋章を光らせ始めた。

 ダイに竜の紋章が二つあることに気付いていなかったポップに、レオナは双竜紋の説明をする。
 だが、それを持ってしてもバーンに苦戦した事実に、ポップはますます絶望するばかりだ。

 バーンの勝利は揺るがないようにみえる――が、ダイはまだ諦めてはいない。

「……まだ……手はある……。最後の手が……!!」

 


《タイムスリップな感想》

 この期に及んで逃げるどころか、開き直るとは……バーンってどこまで自信家?! いや、実際にそれぐらいできそうだけど。
 しかし、バーンって舌戦に関してはダイよりもポップを重視しているなぁ(笑)

 今回楽しかったのは、レオナの胸プルッなシーン♪ 今回ばかりはポップがスケベとは言えない気がするけど、ひっぱたかれたなぁ。
 戦うために胸を隠していた手を放すシーンもよかったけど、破れた服をアレンジしたレオナの乙女心もナイスっす!

 それにしても、気になるのはダイの作戦。
 ひょっとして……ダイは双竜紋で自分の意識を消して、戦い以外何も考えない竜魔人化して戦う気じゃ……? 
 なにはともあれ、来週は久々の巻頭カラーっ、楽しみーっ♪
 

次へ続く
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