15 ダイVSザムザ戦(2) |
突然現れたザムザに対して、ダイの反応は実に見事なものだ。 元々、ザムザが人前に登場した時点から彼に対して警戒心を抱いていたダイは、この会場にいる誰よりも迅速に、事件に対応している。 ザムザがロモス王を殺そうとした時は、ダイはすでに王の前に立ちはだかり、魔法を防いでいた。この時はポップも一緒だが、ポップが両手を広げて王達の前に立っているだけなのに対し、ダイはマントを利用して魔法攻撃を見事に防いでいる。 余談だが、ダイのマント自体にはさほどの魔法防御力は望めないので、竜闘気の応用で魔法を防いだと思われる。 この指示に、ダイの成長がはっきりと現れている。 だが、幾度かの実戦を経て、ダイは自分だけでなく周囲の人間も助けようと考えられるだけの成長を見せている。 この選択は、正しい。 心情的には、仲間であるマァムの方に思い入れが強いだろうに、ダイは感情に流されること無く冷静に現状を判断していると言える。 ザムザの目的はマァム達を実験動物として連れ去ること――つまり、命を取ろうとまでは思っていない。言っては悪いが、急いで助けなくとも命の危険まではないのである。 それに比べれば、抹殺対象とされている上に実際に殺された場合には周囲に大きな影響を与えるロモス王を優先して助けた後で、マァム達を助けた方が、遙かに効率がいい。しかも、ダイはただ助けるだけでは不十分だと言うことも学んだ。 戦いに一般人を巻き込む危険性を考慮できるようになっただけでなく、一般人の避難には補助が必要だと学んだのは、おそらくはレオナのおかげだろう。ベンガーナでレオナがそうしたように、混乱する人々には冷静に逃げ道を誘導する人が必要だと学んだのだ。 その役を、ダイはポップに頼んでいる。 それと同じことが、ポップにも言える。 ポップの方は、ダイと違ってザムザに対して全く異変は感じていなかった。だが、それにも関わらず、ダイが動くと同時に同じ行動を取っているのに注目したい。 事情が分かっていないにも関わらず、即座に行動を合わせることができるほど、ポップはダイを信じている。 だが、ポップの強みは思考の切り替えの早さだ。 ダイの直感を信じたポップは、ダイの判断も大きく評価している。 ヒュンケルに対しては反発心が強く働くポップだが、ダイに対してはポップはごく自然体だ。お互いに信頼し合っているからこそ、緊急時にも流れるような自然さで意思疎通できている。 マァムに対しての拘りはダイ以上にあるはずなのに、ロモス王を優先して助けることにさえ不満を抱いていない。 が、ここで感情のままに動いているのがチウだ。 開け方も分からないのに、がむしゃらに開けようとするチウには、計算も優先順位もありはしない。 正直、チウに比べたらゴメちゃんの方がまだ判断力がしっかりしている。以前にも考察したが緊急時になればなるほど、ゴメちゃんは仲間達の中で一番弱い者の側に行くことが多い。 ザムザが登場するまではダイと一緒に居たはずのゴメちゃんは、ダイとポップについていくのではなくチウの側にいることを選んだ。マァムを助けることばかりに夢中になって、周囲への警戒が疎かになっているチウの耳を引っ張って、ザムザの攻撃から庇うという活躍を見せている。 戦闘力はないゴメちゃんだが、仲間達の助太刀をしたいという気持ちはしっかり持っているし、自分のできる範囲で努力もしているのである。 言わば、ゴメちゃんはチウにとって命の恩人なのだが、その割りにはチウのその後の言動に感謝は見られない。 ゴメちゃんだけでなく、その後、殺されかけたチウを救ってくれたダイや、チウを避難させてくれたポップに対しても、礼を言うシーンがない。むしろ、ポップに対しては従うどころかジタバタ暴れて迷惑をかけている始末だ。 初の実戦で混乱しているせいもあるだろうが、チウは戦場で自分がどんな行動を取ればいいのか、まだ全然分かっていない。感情のままに、大切な人の安否を気にするだけしかできないチウは、まだまだ戦いの素人なのである。
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