51 勇者一行VS鬼岩城(3)

 

 勇者一行と鬼岩城の戦いで、真っ先に戦闘に突入したのはクロコダインだ。
 大神殿からスタートしたポップ達と違い、ベンガーナ戦車隊と共に前線にまで駆けつけていたクロコダインは、鬼岩城より差し向けられたリビングアーマーの群れに怯みさえしていない。

 アキームはクロコダインが負傷したからと心配しているが、クロコダインはむしろそのアキームを庇って数体のリビングアーマーを一撃で吹き飛ばすという怪力ぶりを見せつけている。

 だが、いかにクロコダインが怪力無双っぷりを発揮したとしても、多勢に無勢なのには違いない。

 上空にいたポップとマァムには、戦力差がはっきりと見えていた。即座にマァムはクロコダインに加勢すると決断し、上空から飛び降り様に攻撃を仕掛けている。

 マァムの閃華裂光拳が生物にしか利かないことを知っているポップは、無生物相手に大丈夫なのかと心配していたが、マァム本人の返事は豪快だ。

『ああいう敵はね……! パワーで砕くのよっ!!』

 その宣言通り、マァムはリビングアーマーを一撃しただけで真っ二つに裂いているのだから、たいした攻撃力である。

 クロコダインにしろマァムにしろ、戦士としてはこの上なく頼もしい参戦状況ではあるのだが――惜しむらくは、彼等には眼前の敵しか見えていない点だろう。

 確かに、リビングアーマーの群れが町に入り込んだらその被害は大きくなるのは目に見えている。その攻撃を阻むため、前線に立って戦おうとする彼等の判断は間違ってはいないし、自ら危険な任務を買って出た勇気は大いに評価したい。

 しかし、敵の目的は町への侵略や攻撃などではない。一箇所に集まった人間の王達を殲滅させるため、鬼岩城は足音も高らかに大神殿へと向かっている。
 マァムやクロコダインの戦い方では、人間達への被害は防げても鬼岩城への抑止力にはならない。これでは、敵の陽動作戦に引っかかっているも同然だ。

 その意味では、直接鬼岩城を止めようと、魔法攻撃を仕掛けたポップの着眼点と判断は褒めてもいい。――が、あまりにも実力不足ではある。

 ポップの渾身のイオラでも、穴を開けるどころかわずかにダメージを与える程度のことしかできなかったのだから、どう頑張ってみてもポップ一人で鬼岩城と戦うのには無理がある。

 敵が数で押してくると言うのなら、対個人戦として戦いを挑んでも勝ち目はない。
 なによりも、この時はミストバーンが空を飛ぶポップを嫌がったと言う点を重視すべきだった。

 ミストバーンは、人間達の砲弾による一斉射撃を全く恐れなかった。また、リビングアーマーの前にクロコダインやマァムが立ち塞がっても、特に対策じみたことはしていない。

 だが、ミストバーンは飛び回るポップに対してわざわざ目から攻撃を放っているし、打ち逃したポップに対して飛行系怪物であるガストをけしかけている。この意味に、ポップは気づくべきだった。

 鬼岩城には間違いなく、内部へと入り込める箇所が存在する。あちこちに大砲の射出場所があるし、現にガストも窓状の場所から飛び出してきた。あの大きさならば、多数存在する開口部分から内部への侵入を完全に防ぐのは不可能のはずだ。

 そして、この時の鬼岩城は人材が少ない。
 六団長が揃っているか、最低限ザボエラでも内部にいるならともかく、この時点では魔王軍には人材がとことんいない。と言うよりも、この戦いはミストバーンによる単独行動である。

 城内の各所に配した悪魔の目玉を通じて、侵入者を捜す余裕があるとは思えない。なにしろミストバーンは鬼岩城の操作中だし、彼の率いる魔影軍団はどうみても知能や意思をろくすっぽ持たないメンバーが多そうだ。
 内部に入り込んだ侵入者を捜すような余力はありそうもない。

 もし、ポップが直接鬼岩城に攻撃するのではなく、内部に潜り込んで動力部なり要所なりを止める方向性の作戦に出たとすれば、ミストバーンにとっては厄介極まりなかっただろう。

 侵入したポップに対処しようとすれば、鬼岩城の操縦を止めざるを得ない。
 また、鬼岩城との戦いの際、胸部の扉から出現したリビングアーマー達は鬼岩城の掌に乗せられて下へと移動させてもらっている。

 リビングアアーマー達は飛翔能力が一切ない怪物なので、自力では下には下りられない。……と言うことは、鬼岩城の腕を動かせないようにしてしまえば、少なくとも怪物達の追加は簡単に防げる。

 ガストのように飛行系の怪物は出てくるだろうが、ミストバーンが主力として出さなかった以上、数や攻撃力などの面でのデメリットがあるだろうから、いくらでも量産されるリビングアーマーと戦うよりも楽には違いない。

 だが、この時のポップにはそこまで冷静な判断力はない。
 目の前の敵の存在に気を取られすぎているし、ついでに言うのならば他のメンバーも全員が眼前の敵にしか注意を払っていない。

 さらにこのタイミングで、チウとゴメちゃん、バダックが参戦してきたのだから、対個人戦の雰囲気は強まる一方だ。

 余談だが、実力的には勇者一行には一歩も二歩も劣るこの二人は、ヒーローよろしく自信満々に駆けつけ、積極的にリビングアーマーと戦っている。しかし、勇気と勢いだけは買えるとは言え、なんともギリギリ感の強い危なっかしい戦いっぷりは、頼りになる救援とはほど遠い。

 むしろ、彼等が足を引っ張る可能性が高く、集団戦闘への不安感を煽っているような気さえするのだが……。

 ただ、チウの名誉のためにフォローしておくのなら、彼はこの戦闘で自慢の石頭を活かして頭突き攻撃を繰り返している。パンチでは効果がないことを学習し、勇者ダイの忠告をちゃんと聞き入れている点は評価しておきたい。

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