『マイ・スィート・ディジー おまけ……花園での10分間』 |
「今日のポップ……すごく、いい匂いがする」 ポップをしっかりと抱きしめながら、ダイは彼の耳元に囁いた。 ダイはいつだって、ポップの匂いが好きだ。だが、ベッドの上でだけ嗅ぐことのできる、この匂いは特別に好きだ。 (あの金髪ワカメも、この匂いを嗅いだのかな?) ちろりと胸を嫉妬の炎が炙るが、それを沈めるようにダイはポップの細い首筋に顔を埋め、目一杯匂いを吸い込む。 「早く……シテ、くれよ……」 珍しくポップから急かすのは、やはり制限時間が気になるせいだろうか。 真っ昼間の、青空の下で。 「そんなに焦らされていたの? 可哀相に…」 細い首から、鎖骨にかけてのラインを楽しみ、顔を押しつけるようにして胸までの道程を楽しむ。 「ポップの乳首、すごく真っ赤になってて、おっきくなってるよ。痛くない?」 確かめなかったが、きっとその言葉でポップの顔も赤く染まっただろう。 「ん……ぅ…ん……っ」 感じすぎたせいか、立っているのも辛そうに見えるポップに、ダイは優しく声を掛けた。 「ポップ、横になった方が楽じゃない? あの寝椅子に座ったら?」 ポップの身体を気遣ってダイはそう言ったのだが、ポップは強く拒絶した。 「あんなとこでなんか、ヤだ……っ!」 「でも、ポップ、もう足が震えているじゃないか。 「……ヘーき、だよ。こうやって、ちゃんと掴まってるから……」 そう言いながら、ポップは数歩下がって四阿の柱に寄り掛かる。あくまで寝椅子を拒否するポップは、立ったままでことを進めたいらしい。 (……なんか、これってある意味で、すっごくレイプっぽいかも……) 思わずごくりと生唾を飲み込みながら、ダイはポップの前に跪いた。 夜、ベッドの中でコトを行う時は、当然のことながらランプの明かりが頼りだ。もっと明かりを強くしてばっちり見たいと、前にポップに頼んだことがあるが――その瞬間に思いっきりメラゾーマを打ち込まれた。 しかも、その後、ダイが泣いて謝ってもうそんなことは決して言いませんと土下座するまで、ポップは口も利いてくれなくなったものである。 普段は服に隠された色白の肌も、人目に触れるのを避ける秘められた場所も。 「く、口ですんのかよ……っ?!」 ポップのその反応が、ダイにとってはたまらない。 (初めてじゃなくせに。ホント、ポップってウブすぎて可愛いよなぁ) 「うん。いいだろ? 手でするより、早くいけるよ」 「で、でも、今日、おれ……っ、我慢できなくて、おまえの口にだしちゃうかも……っ」
ダイには、ポップの精液を飲むことになんのためらいもない。というか、どちらかと言うと積極的に飲みたい。 舌での愛撫までは受け入れてくれても、肝心の射精の時に飲み干されるのは嫌がる。
むしろ嬉々として、ダイはポップの茎に舌を這わせる。 「べっ、別に飲まなくっても……あ…っ……いい、だろ? ただ、処理、してくれれば……ぅ…ぅうっ…」 抗議の言葉が喘ぎ声に変わるまで、そうは時間はかからなかった。 「……んっ…あぁ……早…く……っ」 辛そうに身をよじるポップに舌で刺激を与えながら、ダイは少し考えた。 薬で無理やり掻き立てられた興奮なら、なおさらだろう。 前への刺激だけではなく、後への刺激もなければ興奮を極められない……ポップの身体が少しずつそう傾くように、熱を入れて開発してきたのは他ならぬダイだ。
「……っ?!」 ダイの意図を悟ってか、ポップが身体をびくんと強張らせるが、ダイはそれをとろかせるようにゆっくりと指で狭間を探った。時間もかけず、ダイの指はすぐに目的の場所を探り当てる。 「ポップ……身体の力を抜いて。後ろも、掻き回してあげる」 くるりと円を描く動きで、ダイの指はポップの後孔の縁をやんわりとなぞる。 「大丈夫だよ、最後までしたりしないから。ただ、気持ちよくしてあげるだけだよ――だから、足をもう少し開いて」 「……く、くそ……っ、ちょーしに、のりやがって……」 泣きそうな顔で悪態を言ったところで、かえって興奮を掻き立てられるだけだ。それに、どうしても早くイキたいと望むポップは口とは裏腹に、素直に足幅を広くしてダイの手を受け入れやすい姿勢を取る。
「ポップ、あんまり大きな声を出しちゃダメだよ。表にまで聞こえちゃうよ」 そう言いながらも、ダイはこのぐらいの声が生け垣を突き抜けることはないと確信していた。 顔を真っ赤にしたポップは、両手で自分の口を押さえて必死に声を堪えようとする。が、そのせいで柱を支えられなくなり、より腰が落ちてダイの手が一層動きやすくなったことに、ポップ自身はまるで気がついてなかった。 ついでに言うのなら、声を抑えようと必死に頑張るその姿がまた、かえって色っぽくて男の気を惹くものだとも気づいていないらしい。 (すごい……っ、トロトロだ) まるで挿れられるのを待ち構えていたかのように、ポップの中は熱く、しかも心地好く締めつけてきた。 そこまでやったら時間オーバーしてしまうと考えるだけの頭は、さすがのダイにもあった。 だが、さんざん焦らされて追い詰められているポップにとっては、その強引さがかえってよかったらしい。 「……っ…ふぁ…っ――ああっ」 ガクンとポップの腰が崩れ落ちそうになり、縋るような手がダイの頭を抱きしめる。ポップ自身は倒れないようにと必死なだけだろうが、その必死さがダイには心底求められている証しのようで、なおさら愛撫に熱が籠る。
満足しながら、ダイは途端にぐったりと脱力した身体を支えてやる。そして、名残惜しいと思いながらもポップの中から指を抜き、魅惑的な茎からも口を放した。 余計な愛撫を与え過ぎては、逆効果になる。 「……おーし、これですっきりした! さっ、ダイ、次の準備に移るぞっ」 すぐさま気持ちを切り替え、ポップは乱された服をてきぱきと整える。 「ダイ? おまえ、なんでそこにうずくまってんだよ?」 「いや、その……いろいろと」 そこは、男の事情ということで、察してほしい。男には、どうしようもなく前屈みになってしまう瞬間というのも、あるものなのだ。 (こ、これ……っ、ちょっと、きついかも) 身体の熱を持て余すポップを助けたくて、ポップに気持ちよくなってほしいとサービスするあまり、自分自身の熱を抱え込んでしまった――。 「あー……。そっか」 ダイが押さえている場所を見て、ポップはやっと気付いてくれたらしい。ちょっと顔を赤らめながら、耳元に囁いてくる。 「悪いな。けど、埋め合わせは後でしてやるから……もう少し、おれに力を貸してくれよ」
「うんっ、おれにできることならなんでもするよ。おれ、なにすればいいの?」 より熱を得て力強く立ち上がりかける分身を苦労してなだめつつ、ダイはなんとか立ち上がった――。 《後書き》 |