注意事項 「この物語にはダイの大冒険、ドラクエ1、5、8を最後まで知っていることを前提としており、また登場人物の性格に違和感を持たれる可能性があります。この話には独自解釈が含まれております。それでもいいぜ!という方はどうぞお楽しみください。」
『DragonQuest mix 王者たちの会談』
ダイの残した剣から誰もが勇者の生存を確信した日から一週間。その日の仕事を終えたパプニカの王女レオナが自室に戻ると、そこには何やら封筒らしきものが。 差出人すらかかれていないコレを訝しがりながらも中身を確認すると、緑色のキメラの翼と
「パプニカの姫君にして勇者と共に戦いし正義の使徒レオナ様へ。 この度貴女様のようにかつて勇者共に戦った、あるいは勇者として大魔王を倒した王者の方々の交流の場を設けさせていただきました。 貴女様の他に ローレシア国王アレフ様、 グランバニア国王リュカ様、 トロデーン国王エイト様 をお招きしております。 ご多用中まことに恐縮ではございますが是非ご臨席賜りますようお願い申し上げます。 なお、会場へは同封しました"お招きの翼"をお使いください。帰りは一方通行の"旅の扉"を用意しております。」
と書かれた紙が入っていた。レオナはあまりに胡散臭いこれを最初は何かの罠ではないかと疑ったがそれにしてはあまりに突飛なうえ敵意があってこんなものを送りつけられるなら変に回りくどい手段を使う必要はないだろうということから危険はないと考え、この招待に応じることにしたのだった。
そして名前の出た三人の王たちもまたこの招待をうけ、互いに聞いたこともない国の主たちとの会談への参加を決めたのだった…。
〜会場〜 *「お初にお目にかかります。ローレシア国王のアレフと申します。」 *「パプニカの王女レオナと申します。」 *「グランバニアの国王リュカと申します。」 *「トロデーン国王エイトと申します。」
4人「今日はよろしくお願いします!」
リュカ「あの招待状が届いたときはどうしたものだと考えましたが、澄んだ目をした方々で安心しました。」 アレフ「オ…私も最初は魔物の仕業を疑って半ば戦いに来たつもりでしたが、わざわざ鎧まで来てくる必要などありませんでしたナ!」 レオナ「しかし招待状の送り主の姿が見えませんね…。かといって矢だの刃だのでもてなす気配も感じられませんし。」 エイト「なら早速会を始めませんか?正直ワクワクしてしょうがないんです!」 リュカ「それもそうだ。ここに来た以上、有意義な時間にしましょう。改めてよろしくお願いします。」 エイト「まず、王座につく前後の話をお聞かせください!」
アレフ「では私から。私は勇者としてアレフガルドと言う世界を目論んだ悪の化身竜王を倒し平和を取り戻しました。 その時ラダトームという城の主ラルス16世から王位を譲られたのですが、それを断りました! 私の治める国があるならそれは私自信の手で探したい、そう思ったのです。結局、私はラルス16世の娘ローラ姫と2人で新天地を探して旅に出ました!」 リュカ「いくあてはあったのですか?」 アレフ「いえ全く。」 3人「!?」 アレフ「無計画でアレフガルドを飛び出したのですが、旅の果てにローレシアという国を興すことができました!」 レオナ「もし新天地が見つからなかったらどうするおつもりだったのでしょうか?」 アレフ「それも全く考えていませんでした!いやぁ自分の国が見つけられて本当によかったですヨ!でも…こんな冒険もこれっきりにしたいです。」 レオナ(ダイ君でもここまで向こう見ずだったかしら…?) アレフ「さて次の方どうぞ。」
リュカ「ではぼくが。ぼくの父は魔界へ連れ去られた母を助けるため伝説の勇者を探してまだ幼かったぼくを連れ旅に出たのです。 ぼくは志半ばにして倒れた父の意思をついだのですが、その探求の旅のなかで父は身分を隠していた一国の王だったことを知ったのです。ぼくはその国グランバニアに行って王位を継ぎました。」 エイト「しかし少なくとも十数年たっての急な帰還に国民はどう思ったのでしょうか?」 リュカ「それが国民は皆ぼくを見てあれこそ王妃様の生き写しだと確信したそうです。それに…魔物も連れていきまし…」 アレフ「魔物!?」
ガタッ
リュカ「お待ちください!母は鳥や獣、魔物とすら心を通わせることができて、ぼくもその力を継いでいたんです。ただ、母はそのために魔界の王に目をつけられたのですが…。」 エイト(特別な血と王の血か…。ククールが言ってたっけ"普通はどちらか一方だろ!?って。案外そうでもないのかも…。") リュカ「彼らは魔物ですが大切な仲間です。しかし、人にとって魔物は敵だと思われるのでしょうか…。」 レオナ「いいえ、私の仲間にも誇り高く正しい心を持った怪物たちがいます!怪物が全て悪ではありません!」 エイト「はい、僕も人とモンスターが共存する村に行ったことがありますし、モンスターの直属部隊だって持っています!彼らには何度も助けられましたとも!」 アレフ「…私は魔物など人間の敵であり殺されて然るべき存在だと思 っていましたが、今初めてそれは違うのかと思いましたヨ。」 エイト「あ、そうだ。うちのチームを呼びましょう!いでよ"トロデーンへいだん"!」 *「ウオオ血祭りにしてやるぜー!」 *「このホークル様が相手だー!」 *「臨戦態勢…ピーガガガ!」
3人「!!!」
エイト「待て!この方々は敵じゃない!」 *「なんだ…俺はヘルクラッシャーのハルクだ。次は戦場で会いたいものだ…。」 アレフ「そのときは味方として会えるといいな…そうだろ?」 *「エビルホークのホークルだ。あんたたち、特に鎧とターバンの旦那は戦わずとも強いってわかるぜ。」 リュカ「ありがとう。君も見るからに強くて頼もしそうだね。」 *「きらーましんノノッヒーとイイマス。オジョウサン、ゴキゲンイカガ?」 レオナ「あら、キラーマシンてなかに人が入っているはずだけど…?」 のっひー「ガガガ、ナカニヒトナドハイッテナイ!」 レオナ「ご、ごめんなさい!でもあたしの暗殺に人が操作するタイプが使われたのは本当よ?」 のっひー「トリミダシテスイマセン。シカシソンナノヲドウホウトミトメタクナイデスネ。」 ハルク「じゃあ俺たちはこれで。」 3人「さようならー。」 エイト「申し訳ありません!いつも戦禍の真っ只中に呼び出してたもので殺気だって来るのを失念してました!」 アレフ「イエ、あんなに賢そうで話が通じる魔物に会えてよかったですヨ。」 レオナ「怪物への考えが軟化して何よりです。」 リュカ「あぁ、それで王位を継いだのですがすぐに敵の策略で八年間も遠い土地で石にされていたり、旅を再開したりして長いこと王らしいことができずにいたんです。…次の方、どうぞ。」
レオナ「次は私が。私はパプニカ王家の一人娘として生まれ、いずれ王位を継ぐ者として幼い頃から人の上に立つための教育を受けてきました。 そして魔王軍の侵攻によって帰らぬ人になった父…国王にかわり、民をまとめ一度崩壊した国を立て直しました!私は指導者として、また勇者の仲間としても戦いました!」 アレフ「勇者、ですか。よろしければその方についてお話ししてくださいませんか?」 レオナ「承知しました。彼の名はダイ、私より年下で背もちょっと低いけれど、剣一本で城を両断するほど強くて勇敢で、そしてこの世の誰よりも純粋で…。勇者にふさわし…いえ、一人の人間として出会えて心からよかったと思っています!」 リュカ(彼女より年下となると、ぼくの子供たちと同じぐらいだろうか…?) レオナ「しかし、彼は魔王軍の凶悪な置き土産から私たちを守るために…」 アレフ「何と、お父上のみならず勇者どのまで…お悔やみ申し上げ…」 レオナ「いえ、彼は絶対に生きています!証拠だってありますし、それにダイ君が…そんなこと…!」 アレフ「も、申し訳ありません!どうかお許しを…」 レオナ「こ、こちらこそ感情的になってしまってお恥ずかしい限りです…。」 リュカ「大切な人と離ればなれになる辛さは堪えがたいものです。ぼくも妻のビアンカと夫婦共々石にされた上で引き離され十年、石化が解けて二年は会えませんでしたから…。」 エイト「僕も仕えていた主は化け物に、姫は馬に変えられてしまいまして…。あ、レオナ姫にアレフ王のお妃様ももしやそのようなことが?」 レオナ「確かに私も氷漬けにされたり邪悪な炉の薪にされかけたことならあります。」 アレフ「ローラもドラゴンの守る洞窟に幽閉されていて私はそのとき初めてローラに出会ったのですが…石や馬にされるのとどちらが辛いか…判断しかねます。それに…声ならいつでも聞けますし。」 レオナ「と言いますと?」 アレフ「彼女を助けたときにもらったこの"王女の愛"は遠い場所でも会話できるんです!こんな風に…」 *「あなたが次のレ…を…はあと…の…い…ちが…ってアレフ様?」 アレフ「やあローラ。今異世界の偉人の方々とお話ししていてね…ってローラ?もしもし?」 ローラ「…さし…らか…うしがわ…ま…けなお…ではい…もの…アレフ様をローラはお慕いも」
ブッツーツー
4人「…」
レオナ(あれの調子が悪かったのか、この空間が原因なのか。どっちにしろあれがあったとしてもダイ君とは…。) アレフ「あはは…なんかすいません。あぁ、レオナどの、話を脱線させてしまってすいません。」 レオナ「あ…はい。魔王軍が倒れたあとも私は一国のリーダーとしての義務を果たしていく所存です。…では次の方、トロデーン王でしたね?」
エイト「はい。孤児だった僕は八歳の時行き倒れになっていたところをミーティア姫に発見され、トロデーン王家に保護されました。いくあてもない上命を救われた恩義もあってそのまま召し抱えられることを選びました。 始めは小間使いでしたが、一生懸命働いたことが伝わったようで姫にも国王のトロデ陛下にも厚遇されて兵士、近衛兵へと昇進されていただきました。 そして人生の転機になったのはあの忌まわしき事件…。城に潜り込み封印されていた杖を盗んだ大馬鹿のせいで城はイバラの呪いに飲まれ、先程の通り王と姫は人ならざる姿に…。 ぼくは二人と共に解呪の旅に出ました。旅先で出会った友に助けられながら、世界をめぐる旅の果てに呪いを解くことができました!そして王国を救ったことが要因の一つとなって姫と結婚することと王になることができました! これで大好きな姫を、大切な国をもっと幸せにするために生きていけると思うともう嬉しくて…。」 リュカ(すごく忠義に厚い人なんだな。この人が仕えていたトロデという人もきっと人徳ある人なんだろう。) レオナ「そう、貴方は国中を巻き込んだ呪いを受けて無事だったのですか?」 エイト「…お話ししましょう。少なくとも元の世界では誰かに話す機会もないでしょうから。 実は僕にはトロデーンに来る前から記憶喪失の呪いがかけられていて、それがあまりに強くて他の呪いをはねのけるようになっていたのです。そして旅のなかでなぜそんな呪いを受けたのかを知ったんです。 それは生まれ故郷を追われたときにかけられた…僕は大国サザンビークの王子と竜神族の娘の間に生まれた男だったんです!」 レオナ「ウソ…そ、そんなことが…!?」 エイト「えっ!?」 レオナ「ダイ君…勇者ダイ、彼は亡国アルキードの姫と竜の力を持つ竜の騎士の間に生まれたんです!」 エイト「竜の血と王の血?まさかそんな者が僕以外に存在したなんて!今聞かされたはずなのに、心のどこかで納得や確信のような感覚がある…!是非とも彼…」 リュカ「いけませんエイト王。あなたが今言おうとしたことはきっとレオナ王女が一番強く願っていることに違いないでしょうから。」 エイト「あ、申し訳ありません…。」 レオナ「いえ、お気になさらず。しかし、彼が知ったらどんな顔をするでしょうかね…。」 エイト「と、まあ王家の血もまた結婚が許された要因の一つでもあるのですが。」 アレフ「皆様、やはり数奇な運命をたどってらっしゃる。む、となると私とエイトどのは戦いのあとに王になってリュカどのとレオナどのは戦いの最中王座についたと言うわけですナ?」 リュカ「そうですね。けれど国を挙げて何かしたということはありませんでした。」 レオナ「あら?そのようなものでしょうか?私は各国の王を我が国に招いて世界会議を行い協力しあうことを呼び掛けました。 世界中で侵略が行われるのであれば世界中の人々が力をあわせて戦うべきだと考えましたし、皆が自分の力の限りを尽くしたからこそ地上を守ることが出来たと信じています。」 リュカ「…ぼくは敵の強大さを知っていた上母や血縁のこともあってこれは我々に定められた戦いと信じていて、だからなるべく普通の人を巻き込みたくなかったんです。 それにやつらは軍を率いての侵略をせず、"光の教団"という宗教をおこしたのです。秘密裏に奴隷をかき集め神殿を建て、不吉な噂を流し"教団の信者になれば救われる"を謳い文句に信者を集め、邪悪な教えを吹き込んでいたのです。全ては、大魔王ミルドラースのために。」 レオナ「うぅむ。それでは確かに手を出しづらいですね。宗教を下手に規制すると思いもよらぬ事態を招きかねませんし。」 エイト「僕としては皆で力を合わせるべきとも一般人を巻き込むべきではないとも思えて、どちらの方がいいかは簡単には決められませんよ。」 アレフ(宗教か…。確かに厄介だな。オレの子孫なら魔王の軍勢だろうときっと勝てるぐらい強いだろう。 だがもし敵が表向きは慈善宗教を装った、邪神を崇める悪魔の教団だったら…一筋縄でいくだろうか?オレも末永い平和のため尽力するがその時は…ガンバれ我が子孫よ!) エイト「いやぁ興味深い話ばかりで本当に来てよかったと思えますよ。ところでお三方、お菓子などいかがですか?チーズケーキを焼いてきたのですが。」 レオナ「本当ですか?ありがとうございます。」 リュカ「これだったらぼくも何か用意するべきだったかな?」 アレフ「エイトどのは?私は一緒に食べたいのですが。」 エイト「そうですか。ならばお言葉に甘えて…。」
4人「いただきます!」 レオナ「ん…まぁ素敵。」 アレフ「酸っぱい!ですが美味しいです!」 リュカ「とても美味しいです。しかしこのチーズ、まさに"普通のチーズ"といった感じなのですが何かが違う、例えば、製法が特別…とかでしょうか?」 エイト「そこに気づくとは…。ええこのチーズ、僕が"錬金釜"を使って作ったものなんです。」 3人「錬金釜…?」 エイト「我が国に伝わる錬金釜は複数のアイテムを組み合わせて別のアイテムにできるのです! このチーズも普通よりはやく作ることができるようになりました!最近では赤いカビを使った辛いチーズが人気らしいです。 他にも薬草同士を混ぜて回復力を高めたり、鋼の盾と竜の鱗を錬金することで炎や吹雪に強い盾を作ることもできるんです!もっと錬金を研究すれば新しい産業としてトロデーンの繁栄に役立つはずです!」 アレフ「す、すごい…。」 エイト「あ、よろしければ特産品などについて聞かせてくれませんか?」 レオナ「…。ごちそうさまでした。 パプニカは布製品や金属加工で名が通っていて、例えば私が今着ている服は売れば2〜3万ゴールドにはなりますし、戦闘特化用の衣ならば魔王軍との戦いにも耐えうるほど強力で、他国と比べても決して遅れは取りませんとも!」 アレフ「な、なんと…。」 エイト「一万を超える品など錬金でもなかなか作れませんし、あっても売値が急落したり錬金するとかえって素材がもったいないものばかりなんですよ。」 リュカ「…ごちそうさまでした。いやぁお二人の話を聞いていると引け目を感じてしまいますよ。 何せグランバニアは辺境の小国で、あるのは山と川及びそこから手にはいるものぐらいでして…」 エイト「いいえ、十分立派ではありませんか!」 レオナ「歴史や自然はお金で買えるものではありませんから、それはきっと誇るべきものに違いありません!」 リュカ「…そうですね。今年の収穫祭は麦もブドウも魚も獣も大量で、敵の侵略拠点を潰した宴も兼ねてそれは盛大な祭りになりました!」 アレフ「…ごちそうさまでした…。…産業、まだ国を建てたばかりで何もないんですヨ…。」 エイト「あ、慌てる必要はありませんよ!」 レオナ「そうですとも!焦りや思いつきで成功するものでもありませんし。」 アレフ「…ええ。ありがとうございます。」 エイト「ごちそうさまでした。そして喜んでもらえて何よりです。お粗末様でした」
レオナ「それでは私からも。これからの目標や抱負についてお話ししてくださいませんか?」 リュカ「うーん、考えたこともなかったな…。」 レオナ「漠然としたもので構いません。私自身はっきりとしたプランがあるわけではないので…。」 エイト「では、まず僕が。 僕の夢は、トロデーンを世界一の国にすることです!旅の途中であのサザンビークを訪ねたのですが、大規模なバザーが催されて、それが開かれるにふさわしいくらい立派で活気溢れる国で衝撃を受けたんです。 しかし我がトロデーンは…滅ぼされてもせいぜい噂になるぐらいで、世界になんの影響もでなかったんです…。 世界が混乱と恐怖に支配されるよりはマシではありますが、トロデーンは所詮その程度の国なのなと悔しく思ったのです。だから僕はトロデーンを世界の中心になるような国にしたいんです! 旅の中で見聞きし蓄えたものはきっと役に立つはずです!強くだってなりました。それこそ小国くらいなら容易く攻め取れるぐらい…」
3人「そんな!!!」
リュカ「何をおっしゃるのですか!」 レオナ「人同士が争ってなんになるというのですか!」 エイト「はい。奪い取って領地を増やしても国民は喜ぶはずもありませんし、トロデーンに侵略国家という汚名を着せたくありません。 それに人を傷つけてもいいことは何もないことはあの旅のなかで見てきましたから。そもそもが陛下が僕の成長を評価してくださった時の言葉で、本気で領土拡大を目論んでいる訳ではないですし、僕だって血が流れる統治をするつもりはありません!」 アレフ「あぁよかった…。」 エイト「まずは自分にできることをしたいです。街道の整備とか。細道が多く落石や土砂崩れに弱く吊り橋も破壊されたので一度城に戻るときかなり苦労したんです。」 リュカ「道と言えばグランバニアにいくための山越えルートがあるのですがただでさえ険しい上に大魔王が倒れて幾分か落ち着いたとはいえ魔物が出るので何かするべきかもしれませんね。」 アレフ「では次は私が。 私もやはりローレシアを立派な国にしたいです。国民にも旅人にも幸せと安らぎを与えられるような、そんな国に。 そのためには、まず自分が変わらないと。かつてうっかり橋を渡って死にかけたり、何度も入っているからと洞窟にたいまつを持たずに入ったりしましたが、もう私は私一人のものでないので、今後はそんなことが無いようにしたいです。 それと、まだ一つ国を建てたばかりで自分でもどうかと思いますが、実はあと2つほど国があればな思っているのです。新たに国を興すかローレシアから分けるかは決めていませんが…。ですが当分はローレシアの成長に肝胆を砕こうと思います!」 レオナ「そうですね。しかし領土の分割や独立についての決まりを予め定めておくのも悪いことではないかもしれませんよ。」 リュカ「目標ですか。特には考えていませんが、一国の王としてグランバニアを守っていくつもりです。」 アレフ「ところで…母上様や勇者はどうなったので?気になっていたんですヨ。」 リュカ「…はい。王位を継ぐ前日、ビアンカが双子を出産したんです。そのあと石化から助けてくれたのが成長した子供たちだったのですが、その兄の方が携えていたのが…父が見つけぼくがグランバニアへ持ち帰った、勇者の装備…天空の剣だったのです!」
3人「!!!」
レオナ「親子で何十年も探していた勇者が、まさか自分の息子だったなんて…!」 リュカ「ええ、夢にも思いませんでした。とにかく旅を再開して敵の拠点からビアンカを助けだし、家族揃って魔界に乗り込んだのですが、母は大魔王の手にかかり、救い出すことは叶いませんでした…。」 アレフ「そんな、ひどい…」 リュカ「だから、死んでいった人達のためにも、前を向いて幸せに生きていくべきだと。」 エイト「あの世のご両親もきっとそう願っているでしょうね。」 リュカ「それに…長いこと国を留守にしていても変わらなかった国民の敬意に報いなければ。 王様らしいことなんて何一つしてこれなかったのに、国民たちは心なら慕ってくれて…。ぼくが即位したときも、行方不明から帰ってきたときも、ビアンカを取り戻したときも、そしてミルドラースを倒した今も…毎回国を挙げてお祝いをしてくれたんです。 特に今回はもうすぐ1ヶ月近く続きそうで、そんなときぼくは考えるのです。王こそが国の人々のためにいるのではないのかと。国民から受けた以上の愛を持って彼らに平和と幸福を与えなければならないと。」 アレフ「王という王が皆そう思っているならきっと悪政はなくなるでしょう。あなたならきっと大切なものたちを幸せにできるでしょう!」 レオナ「皆様ありがとうございました。では最後は私が。 私の望みは、世界の一体化及び差別も偏見もない世界の実現です! 魔王軍の侵攻により、我が国のみならず多くの国が壊滅しました。城塞国リンガイア、最強の騎士団を持つカール も例外ではありませんでした。しかし私は各国の軍事力というより国同士のつながりも問題だったと思います。 もっと互いが情報や対策を伝達、共有し迅速な対応を呼び掛けていれば少なくとも犠牲は幾分か抑えられたはずです。 先ほど申しました通り私は世界会議を開きましたが、脅威が去ったあとも定期的に行うことになりました。大切なのは一体化とは八紘一宇ではなく各国家が対等な立場で協力しあう関係を作っていくことで、そのために主催は回り持ちになる予定です。 そしてもう一つについて…。これは私の心残りから来るものもあるんです。ダイ君は町を襲った怪物を倒した時、守った人間から怯えられてしまったんです。 私は彼の秘められた力をその時初めて見たこともあってその場にいながら彼に何も言えなくて、結局彼は心に浅からぬ傷を負うことになってしまって、私にも責があったと思ってしまうんです。 それもあって決戦の時ダイ君に"この戦いに勝っても、お前は必ず迫害される!例え個人が否定しても何も変わらん!"と言う大魔王に、私は何も言い返せなくて、それがどうしようもなく悔しくて…。 実際正義の使徒として共に戦った怪物たちも、人間社会とは遠く離れた場所で暮らしているのが現状で。 彼ら自身は陽気に楽しく過ごしていたのですが、手放しに喜べなくて…。先の通り彼はすぐにいなくなってしまいましたが、もし本当に迫害が起こったとき私はどれだけ彼の力になれるかわからなくて…。 だから私は決めたんです!この世界を、あの時そんなことないと言い切れるような、彼が心から救ってよかったと思えるような、そんな世界にしてみせると! 先の見えない、困難な道であることは重々承知しています。しかし絶対にやってみせます!それこそが平和な世界における私の、私たちの使命であると信じています!」 エイト「なんと言う気迫…!あなたからは何か、一度言い出したら絶対にやり切ってしまうような、そんな何かを感じます…!」 レオナ「ありがとうございます。胸のうちを吐き出したお陰で改めて決意を固めることができます!…ん?」
なんと突然会場に水色の渦巻きが現れた!(♪時の子守唄) リュカ「"旅の扉"が来たようですね。ここからもとの世界に帰る、ということでしょう。」 エイト「しかもこれ行き先を選べるみたいです…が一度行ったことがある場所しか行けないようです。」 アレフ「離れた所へ飛べる"旅の扉"ですか。ローレシアにも是非とも欲しいですヨ。」 レオナ「ということは…もうお別れの時間という訳ですか。ではお別れの挨拶をしてお開きにしましょう!」 リュカ「異世界の、それもこんな素晴らしい方々とお会いできて光栄でした。顔を合わせることはもうないかもしれませんが、どうぞお元気で。」 アレフ「いやぁ知らない事ばかり聞けてとても楽しかったですヨ。我々の未来に、光あれ!」 エイト「とても有意義な時間でした!皆様のご活躍を祈念しております!…あ、そうだレオナ姫、確か勇者ダイ殿は行方不明でしたね? もしもどこかで彼と出会うことがあればその時は全力で彼の力になりましょう!」 アレフ「それはもう私も!リュカどのもそうでありましょう?」 リュカ「ええ。ですが彼が無事にレオナ王女、貴女と再会できることを願っています。」 レオナ「お三方…。ありがとうございます。我々はいきる世界は違えど志は同じ。これからも大切なもののために邁進していきましょう!」
4人「今日はありがとうございました!さようなら!」
こうして未来ある若き王者たちはそれぞれの世界に帰っていった。
〜ローレシア城〜 *「アレフ様?さっきのあれですが…とそれよりどちらへ行っていたのですか?」 アレフ「あぁローラ、実はさっき異世界の王様たちに会っていたんだ。皆に君の声だけでも聞いてもらいたくてネ。〜皆賢くてよく考えている人達だった。オレも彼らに負けないような王にならないと。 そのためにローラ、君の力を貸してくれ!二人でここを幸せな国にしよう!」 ローラ「ええ、もちろんですわ。ローラはいつでも、あなたをお慕いもうしております。」
〜グランバニア城〜 *「リュカ?どこにいっていたのかしら?ちょっと城の外の空気を吸いに、って訳でもなさそうだし。」 リュカ「やっぱりビアンカには敵わないな。…異世界の王者たちに会っていたんだ。皆若さと熱さに溢れていたんだ…。」 ビアンカ「なーに言ってんのよ!わたし達これからでしょう?それにこの国の人たちは皆リュカが王様でよかったと思っているわ!」 リュカ「〜そうだね。ぼくたちの、本当の世界は、もう始まっているんだ…!…ん?」 *「アレーッ"天空の兜"、どこやったっけ…?ポピー知らない?」 ポピー「もうティミーったら!"勝って兜の緒を締めよ"って知らないの?」 ティミー「天空の兜に緒は無いよーってそんな怖い顔しないでよーっ!」 ビアンカ「あらら…。」 リュカ「やれやれ…。お父さんも探すの手伝うよ!」
〜トロデーン城〜 *「あらエイト?そんな嬉しそうな顔して、何かいいことでもあったのかしら?」 エイト「あ姫さ…ミーティア。実はさっき異世界の王者達とお話ししてたんだ。皆素敵な方々で…ってウソじゃないよ!証拠はないけど…」 ミーティア「いやねぇエイト、あなたを疑うわけがないでしょう?それにそんなに嬉しそうなんだもの。例えウソでもきっと面白いに決まっているわ!良かったら聞かせてくれないかしら?」 エイト「喜んで!部屋でゆっくり、いやもう待てないから話ながら!その会場にいたのは僕を除いて3人で…」
〜パプニカ城〜 レオナ「結局誰がなんのためにあの場にあたし達を集めたのかわからないけど、そんなことはもうどうでもいい、今日のことはきっと忘れないわ。 そういえばあの方々は全員既婚者だったわね。きっと奥様方とよろしくしているんでしょうね。 でも、あたしの傍には…。 キミが戻ってこられるか、どれぐらいかかるか、そして一緒にいられるようになるか、それすらも分からないけど…。 でもねダイ君。キミのためにも、あたしはこの世界を必ずより良いものにしてみせるから…!!」
FIN
メンゲツ様から頂いた素敵SS『DragonQuest mix 王者たちの会談』です! なんと、DQの歴代主人公達の中でも、特に過酷な運命を送った1、5、8の主人公達にレオナが加わって、それぞれの経験や王としての心構えを話し合うというオールスター風味なお話です!
歴代ゲームをクリアった身には、たまらないほど嬉しくも懐かしいメンバーです! 彼らを集めたのは、もしやルビス様なのだろうかと想像しちゃいますね。
勇者アレフはなんだか脳天気っぽく、リュカは苦労人だけどいいお父さん、エイトが一番バランスがとれて如才ない印象でした。チーズケーキまで手作りしてくるとは、密かに女子力も高いし(笑)
個人的には一番お気に入りの2の王子がいないのが残念ですが、レオナを除く全員が妻帯者で苦労の末に幸せになっているからこそ、なおさらレオナのダイへの思いが哀しいです。
でも、ダイへの想いを胸に秘めながら王として頑張る決意を固めたレオナが、凜々しくてすっごく好みです。 素敵なお話を、どうもありがとうございました!
|