『家族で対談』
 


    

  
[−−] 始めに対談を行うメンバーを確認したいので、おひとりずつ自己紹介をお願いします。

ジャンク「あー、ジャンクだ。ただの、しがねえ田舎の武器屋だよ」

スティーヌ「ジャンクの妻のスティーヌと申します。主婦です」

ポップ「えーと、二人の息子で、名前はポップ。魔法使い」

ジャンク「はっ、何が魔法使いだ、未だに家に帰らずにフラフラしている家出人が」

ポップ「人聞きの悪いこというなよっ、別に家出なんてとっくにしてないだろっ。今は仕事があるから、パプニカ城に住み込んでいるだけじゃねえか!」




[01] さっそくですが、皆さんは仲の良い家族でしょうか?

スティーヌ(満面の笑顔)「はい、もちろん!」

ポップ&ジャンク「…………」

スティーヌ「あら、どうしたの、二人とも」(やっぱり、にっこり)

ポップ「い、いや、別に。なあ、親父?」

ジャンク「あ、ああ、まあ、その、なんだ。まあ、だいたいそんな感じかな」

 ……どうやら、この家庭では誰が実力者なのかはっきりしているようです(笑)




[02] 朝食・夕食は家族全員揃ってから食べますか?

ジャンク「今はこのクソガキが家を出ているから、普段はオレとスティーヌだけだな」

スティーヌ「でもポップが家に帰ってくる時は、全員で揃ってから食べるようにしていますわ」

ポップ「それはいいんだけどさ、うちの朝飯って早すぎ。せっかくの休みの日ぐらい家でゆっくり朝寝坊してたいんだけどな〜」

ジャンク「放っておけばいつまでも寝坊しまくる奴が、生意気を抜かすな! さっさと飯を食わねえと、店を開けられねえだろうが」

スティーヌ「(こっそりと)うふふ、うちの人ったらあんなことを言っている割には、ポップが帰宅している時にはいつも店を少し遅く開けているし、夜も早じまいにしているのよ」




[03] 今までに家族ぐるみでどこかへ出掛けたことはありますか?

ポップ「えー、特にないよなぁ。親父が店やってるから、全然でかけられなかったし。ジンやラミーは時々、湖とかベンガーナに家族旅行に行ったりしてたから、ガキの頃すっげー羨ましかったな」

ジャンク「ふん、連れて行ってやったのに覚えてねえだろうが」

ポップ「へ? いつ?」

スティーヌ「覚えてなくても無理はないわね、だって家族でテランに行ったのはあなたが三つの時だもの。でも、大変だったのよ、ちょっと目を離した隙に勝手にボートに乗って流されてしまって。
 あの時は、本当に寿命が縮んだわ」

ポップ「え、うそ? おれ、そんなことしたの?」

ジャンク「したの、じゃねえよ。それだけじゃなくて、おまえは馬に悪戯して暴走させたり、馬車に乗り込こもうとしたりと、ろくでもねえことばっかりしやがったんだよ!

 それに懲りて、もう少してめえが成長するまで家族旅行はやめようってことにしたんだよ!!」

スティーヌ「(ため息交じり)本当にねえ、普段は臆病なぐらいに慎重なのに、好奇心を刺激されると夢中になってしまって無茶なことをしでかすんだもの。旅行なんて珍しいことに連れて行くなんて、怖くて出来なかったわ。
 でもそろそろ大丈夫かしらと思い始めた頃に、いきなり家出してしまうし」

ポップ「うっ、そ、それを言われると……っ」




[04] 季節のイベントには敏感な方ですか?

ポップ「うちだと、クリスマスと誕生日ぐらいしかやらないなぁ。後、村でやる収穫祭とか新年会とかかな?」

スティーヌ「うふふ、でも家を出てから、ポップが母の日や父の日をお祝いしてくれるようになったのが、母さん、とても嬉しいわ。
 主人まで、色々とやってくれるようになったし」

ジャンク「(焦って)あっ、バカ、それは黙っておけって言ったろ!?」

スティーヌ「あら、ごめんなさい、口が滑っちゃった。でも、結婚記念日の指輪は本当に嬉しかったわ」

ポップ「って、あの時の指輪はそのためだったのかよっ」

ジャンク「ちっ、違うっ、たまたまだっ! たまたまプレゼントでもしようかと思った時が、偶然記念日だったってだけだ!!」

ポップ「なんだよ、その言い訳は!? 日付まで指定しておいて、偶然なわけあるかよっ!」




[05] 皆で一緒に暮らしていて、性格的に「似てるなぁ」と思うことはありますか?

スティーヌ「それはなんといっても、頑固なところね。二人とも、変な方向に意地を張るところがそっくりで、やっぱり親子だわ」

ポップ「えーっ!? 似てなんかいねえよぉ〜」

ジャンク「なんだ、その言い草は!」



 またも揉め始めた父子を見て、奥方様は呆れた顔で笑います。



スティーヌ「……本当に、ああやってすぐにカッとなって、ムキになる辺りがそっくりよねえ」




[06] 他の家庭と比べて、「こんなことをするのはウチだけかもしれない」と思うことは?

スティーヌ「そうねえ、以前はごく普通の家だと思っていたけれど、今では時々、カール王やパプニカ王女からお便りや贈り物が届くのが違う点かしら」

ジャンク「ああ、たまにベンガーナ王やテラン王からの密使も来たりするしな。ロンのところのノヴァ君もリンガイア王からの贈り物をたまに持参してくるぜ」

ポップ「い、いつの間に? そんな話、おれ、聞いてねえよっ」

ジャンク「聞いてようが聞いていまいが、おまえのせいだろ、間違いなく」




[07] 親御さんのしつけは厳しいと思いますか?

ポップ「そりゃあ、もう! だいたいさ、今時鉄拳制裁なんて流行らねえのに、うちの親父ときたらすーぐ手を出すんだからよ」

ジャンク「ハン、鉄もクソガキも叩かなきゃモノにならねえだろうが。鉄梃を使わないだけ、有り難いと思いやがれ」

ポップ「いや、死ぬっ、それやられたら絶対死ぬから!」

スティーヌ「フフフ……でも、うちの人は、しつけには厳しいようでいて放任主義なの。ポップには望んだ道に進ませればいいと言って、この子が家出して以来、一貫して進路に口を出していないわ。
 私からすれば、無理矢理にでもポップを引き留めて欲しいと思った時もあったけれど、うちの人が正しかったと今では思っているわ」




[08] 家族内で揉めごとが起きる場合、その原因は主に何ですか?

ジャンク「あー、そりゃあもう、このクソガキだな」

ポップ「なんだよ、その一方的な決めつけは!」

ジャンク「決めつけも何も事実だろうが! 村にいた頃は勉強も家の手伝いもしないでしょっちゅう騒ぎを起こすわ、家出をしたらしたで一年以上も帰らないでほっつき歩いているわ、その後も世界中をうろちょろしやがりやがって! どれだけ親に心配をかければ気が済むんだ!?」

ポップ「別に心配してくれなんて頼んでないだろ!」

スティーヌ「あら、私の心配も余計なことだったかしら?」

ポップ「い、いやっ、そのっ、おれ、別に母さんに心配をかける気はなかったんだけど……」

ジャンク「ってことは、オレには心配や迷惑をかけてもいいと?」

ポップ「何、いちいち揚げ足をとってるんだよっ!? おれより、親父の方が揉めごとを起こしまくってるじゃねえかっ」

ジャンク「なんだと、こらっ! はなたれガキが親父様に説教する気か!?」

ポップ「なんだよ、そうやってすぐに暴力に暴力にばっかり走りやがって、この頑固頭のクソ親父!」



 などと、いきなり揉めまくっている親子の傍らで、スティーヌはいつものことだとばかりにニコニコと落ち着いた笑顔を見せています。



スティーヌ「まあ、見ての通り、原因はポップで騒ぎを大きくするのがうちの人、と言ったところかしら。全くこまったものよね」




[09] 家族全員が思わず笑顔になったエピソードや思い出があれば教えてください。

スティーヌ「私は家族全員が揃ってくれれば、それだけで満足ですけれど……一番印象深いのは、あの時でしょうか」

ジャンク「ああ……勇者様が無事に帰ってきた後、みんなと一緒にうちに来た時、か? 全くあの時は驚いたな、ヒュンケルやマァムには前にも会ったことがあったが、栗色の髪の淑やかなお嬢さんがパプニカ王女だと後で聞かされた時にゃ、ぶったまげたぜ」

ポップ「淑やかぁ? 親父らは姫さんをよく知らないから、んなことが言えるんだよ。姫さんは大魔王バーンにケンカを売った女の子なんだぜ」

スティーヌ「それって、何回聞いても信じられないわね。
 レオナさんもマァムさんもとても可愛らしくて、戦うようになんてとても見えないもの」

ポップ「見えないも何も、マァムなんかは素手で鉄球も砕くような怪力女なんだって! それに姫さんはある意味、大魔王よりもずーっと怖ぇんだよっ!!」




[10] 皆さん家族を漢字二文字で表すとしたら、どんな言葉になるでしょうか。

ジャンク「はぁ? まあ……『平凡』ってとこか?」

ポップ「いや、おれが言うのもなんだけど、うちって平凡とは言えないだろ? 親父はベンガーナの大臣ぶっ飛ばして宮廷鍛冶職人をやめてるし、おまけに魔族の友達までいるし!」

ジャンク「なに言ってやがる、てめえも似たり寄ったりだろうが。魔族だけでなく怪物の仲間だのもいるし、家に帰る度にパプニカのお姫様の文句ばっかりたれている癖しやがって」

スティーヌ「ふふっ、でもまあ、ちょっと変わったところがあっても、うちはやっぱり平凡な家族だと思うし、その方が嬉しいわ。
 平凡でも幸せな家庭は、長年、私の夢だったんですもの」




[−−] お疲れさまでした。

ジャンク「あー、肩が凝ったぜ」

スティーヌ「あなた、お疲れ様。帰ったら、すぐにお風呂の支度をしますわ。
 それにポップ、今日はあなたもお休みなんでしょう? それなら久しぶりに家族水入らずで食事ができるわね」

ポップ「え……(少しばかり焦って)あのさ、実は……」


  
 と、その時、空から一人の少年が移動呪文で舞い降りてきました。



ダイ「ポップーっ、もう用事終わったぁ? なら、夕ご飯食べに行こうよ! 約束したじゃないか!!」

ポップ「ダイ……ッ! おまえ、どうしていっつもいっつも空気を読めねえんだよっ!?」

ダイ「(きょとんとして)え? おれ、なんかした?」

スティーヌ「まあ、今日はダイ君、ポップと夕食の約束していたの? それって、どこで食べるのか決まっているのかしら?」

ダイ「ううん、まだだよ。今日と明日はレオナが『しさつ』ってのでお出かけしてるから、シェフさん達もお休みなんだよ!
 だから、おれ達もどっか外で食べようって話してたんだ」

スティーヌ「そうだったの。それなら、うちに食べにいらっしゃいな」

ポップ「へ?」

ジャンク「そうだな、それがいい。たいした物はないが、なに、量だけはたっぷりと用意できるぜ」

ダイ「(嬉しそうに)うわぁ、ホント? ありがとう、おじさん、おばさん!」

ジャンク「ああ、たんと食べていきな。
 おら、ポップ、いつまでもぼーっとした面してないで、とっとと家に帰るぞ!」



 と、乱暴ながらもジャンクは息子の背をどやしつける様に引っぱたき、並んで歩き始めました。
 家族にプラス一人加わって、賑やかな家族は団らんの場へと帰っていきました――。 

 


 ◇記念部屋に戻る
トップに戻る

inserted by FC2 system