『師弟関係の2人に20の質問』 |
アバン「おやおや、これはご丁寧にありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いしますね。さ、ポップ、あなたもちゃんと挨拶してください」 ポップ「言われなくったって分かってますよ、先生。よろしくお願いしま〜す」 [01] お名前をひとりずつお願いします。 アバン「アバン=デ=ジニュアール?世と申します」 ポップ「ポップです」 [02] どちらが師匠ですか? また、年齢差はどのくらいですか? アバン「私がこの子の教師ですね。ポップは幾つになりましたっけ? アバン「ちょうど、30才になりましたよ。だから、年齢差は16才ですね」 ポップ「へー、そうやって聞くと、先生って結構年上ですよねえ。あんま、そんな感じがしないんですけど」 アバン「……それは褒めているつもりなのですかね、ポップ」 [03] お2人はどのような師弟関係なのでしょうか? ポップ「先生はとっても優しいですよ! 村にいた時に行ってた教会の神父さんより、ずっと物知りでずっと優しいんですよー、寝坊しても宿題をサボっても怒らないし」 アバン「いやいや、サボられるのは困るんですけどねえ(苦笑) それに、朝もちゃんと起きて欲しいのですが……。 [04] お互いを何と呼んでいますか? ポップ「先生って呼んでます」 アバン「名前を呼び捨てさせてもらっていますよ」 [05] お2人は出会ってからどのくらい経ちますか? アバン「そろそろ半年ぐらいになりますかね?」 ポップ「まだそんなものでしたっけ? なんだか、もっと前からいっしょに居たような気がしてましたけど」 [06] 初めて会った時の、お互いの印象をお聞かせください。 ポップ「変わった格好の人だなぁって思いました。最初は旅芸人かなにかかと思っちゃいました」 アバン「そ、そんな風に思っていたのですか? 些かショックですねえ」 ポップ「えー、旅芸人ってのもカッコいいじゃないですか! それより、先生はおれのことをどう思っていたんですか?」 アバン「そうですね……武器屋の店番をするには、少し子供すぎるのではないかと思いましたよ」 ポップ「あーっ、先生、ひどいや! クソ親父と同じことを言うなんて!!」 アバン「いえいえ、良識のある大人ならそれは当然思うことですから。てっきり、店の奥に親御さんがいるのかと思っていましたから、一人で留守番していたと知った時は驚きました。 ポップ「(むくれて)だって、あれはあいつらが悪かったんですよ! なのに、黙っていろって言うんですか!?」 アバン「もちろん、そんなことは言いませんよ。あなたのその正義感は、素晴らしいものですとも。 ポップ「ちぇっ、先生ってばそんな、いかにも先生っぽいこと言っちゃって」 アバン「そりゃあ教師ですからね、これでも!」 [07] お師匠さんは何故、お弟子さんを取ることにしたのですか? アバン「最初は、本当に弟子に取る気はなかったのですがねえ(苦笑) 少し話してみて予想以上に賢い子だとは思いましたが、親御さんにそれとなく将来、学校へ入れてみないかと薦めてはみましたが、その時はそれ以上のことをするつもりはなかったですよ。 ポップ「ね? こんなこと言うんですよ、先生、割と冷たいとこあるでしょ? アバン「……と、こうですからね。本当に無茶な子ですよね、困った子です」 そう言いながらも、アバンは優しく弟子の頭を撫でてやります。ポップも照れくさそうながらも、どこか嬉しそうです。 ポップ「もう、先生、子供扱いしないで下さいよ〜」 [08] お弟子さんは何故、このお師匠さんを選ばれたのですか? ポップ「(きっぱりと)勘です!」 アバン「いや、勘って……もう少し詳しく説明してもらえませんか、ポップ」 ポップ「えー、勘は勘ですよ。この人についていけば間違いないって、思ったんです。 自信たっぷりにニコニコ笑っている弟子を見て、師もまた顔をほころばせます。
[09] お2人の仲はよい方だと思いますか? また、ケンカはなさいますか? ポップ「仲はいいですよ、ケンカだってしたことないです!」 アバン「まあ、教師として……と言うより、大人として子供とケンカをするわけにはいかないでしょう」 [10] 何か出会い始めの思い出を聞かせてください。 ポップ「はぁいっ、先生がおれの村に来た時、悪い奴が店に来て強盗しようとしたんです。おれ、必死に逃げたんだけど追いつかれてちゃって……殺されるかも知れないって思った時、先生が助けに来てくれたんです!」 アバン「あの時のことは、私にとっても印象深いですね。 [11] 以前と変わったな、と思うところはそれぞれありますか? ポップ「変わったところ? 先生、会った時から変わった人だなとは思ったけど、特に変化はないですよー」 アバン「いや、変わった人って……(笑) ポップ「う……っ、お、おれもがんばってるんですけど、うまくいかないんだからしょうがないじゃないですか! 人には、向き不向きがあるんだし〜」 アバン「おやおや、よりによって向き不向き、とまで言いますか。(おかしそうに)まあ、いずれは分かることですけどね」 [12] お師匠さん、お弟子さんのよいところを述べてください。 アバン「この子はとても良い子ですよ。ちょっと意地っ張りなところもありますけどね。 ポップ「ま、真面目にはやってますよ! ……一応は」 アバン「一応、じゃなくって本気でやって欲しいものですけどねえ」 ポップ「本気でやりますってば! ……やらなきゃいけない時には」 [13] ではお弟子さん、お師匠さんの尊敬できる点を述べてください。 ポップ「そりゃあ、メチャクチャ強くてすごいところですよ! 先生、剣も上手いのに魔法もすごくって、しかも魔法使い特有の魔法も僧侶の魔法も使えるんですよ!!」 自分のことのように得意そうに、手放しに師を褒め称える弟子を前にしてアバンは照れくさそうに笑います。 アバン「いいえ、私もまだまだ修行中の身ですよ。それに、魔法の使い手というのならば、私よりも遙かに腕の立つ知り合いもいます。 ポップ「ええーっ、そんなの絶対にヤですよ! おれは先生を見込んで弟子になったんだから、ずっと先生に習うんです!!」 アバン「ですが、視野を広げるというのも魔法使いにとっては重要なことなのですが……」 ポップ「嫌と言ったら、嫌です! おれの先生は、先生一人だけです!!」 [14] お2人のお住まいは一緒ですか? 一緒の場合、それぞれの家事の分担を教えてください。 アバン「今のところ旅をしていますので決まった住まいはありませんが、野宿では同じ場所で寝泊まりしていますし、宿屋も同室ですよ。食事は基本的に私が面倒を見ています、なんと言っても成長期の子供には栄養は大事ですからね!」 ポップ「先生のご飯は美味しいし、それはそれでありがたいんですけど、でも野宿なのに下ごしらえからきっちり料理するってのもどうかと思うんですけど」 アバン「ノンノンノン、何を言っているんですか、ポップ。野宿だからこそ、誰にも気兼ねもなく料理できるんじゃないですか!」 ポップ「(アバンに聞こえないよう、こっそりとツッコミ)気兼ねはいらないかもしんないけど、怪物がよってくるのに〜」 アバン「宿屋に泊まる時はさすがに、気軽に厨房を借りることはできませんからね。たまにバランスの悪い食事を出す宿屋もありますし、できることなら料理は三食手作りとしたいものです」 ポップ「ご飯は先生が作ってくれるから、洗濯とかは一応は自分でやるようにはしているんですけど……先生、時々、勝手にやっちゃうんです」 アバン「そりゃあ、人様の子供を預かっているんですから、あまり無責任なことは出来ませんよ。身なりを整えるのも保護者の役割ですしね。 ポップ「先生、ちょっと過保護ですよ〜」 [15] 何か日課になっていることはありますか? ポップ「日課というか、修行か授業はほとんど毎日あります。……たまにはお休みが欲しいのになぁ〜」 アバン「毎日やらないと、身につきませんからね。 ポップ「ええー、でも、瞑想ってじっとしてるだけでつまんないし、時間のムダじゃないですかぁ?」 アバン「そんなことはないですよ、魔法使いにとっては基礎中の基礎だし、一人、静かに己の心を向き合う時間はあなたの魔法力を高めてくれます。すぐには効果は出ませんが、長い目で見ればきっと役に立つ修行の一つですよ」 ポップ「ん〜、でも、そーゆーちまちましてて地味な修行ってちょっと〜。もっと、ぱぁーっと一気にレベルアップできる修行とかないんですか?」 アバン「あ・り・ま・せ・ん! 全く困った子ですねえ、いつも言っているでしょう、修行に近道はありませんよ」 [16] 相手のここが許せない! アバン「ないですねえ。 ポップ 「(居心地悪そうに)……」 アバン「でも、それら全てを許せます。あなたは、私の自慢の弟子ですよ、ポップ」 [17] ここだけの話、相手の弱味や秘密を握っていたりしますか? アバン「(ニコニコ笑いながら)さて、どうでしょうかね?」 ポップ「な、なんか、先生、怖いですっ(恐る恐る)……何か、知っているんですか?」 アバン「おや、心当たりでもあるんですか?」 ポップ「ないですよ、そんなの!! でも、先生がそう言う顔をしてる時って、なーんか裏があるって言うか、奥の手をかくしているっぽいし……」 アバン「おやおや、やっぱりポップはなかなか見る目がありますね。その調子でちゃんと相手を観察できれば、相手の弱点を見抜けるようになりますよ」 [18] 師弟関係が逆になることはありますか? ポップ「えー、そんなの考えたこともないですよ」 アバン「そうですか? 私はありますよ」 ポップ「(驚いて)えっ!?」 アバン「魔法使いは成長が遅く、円熟期は中年以降になってから迎えることが多いですからね。この子がそのうち成長して、私を追い抜いても不思議はありません」 ポップ「そんなの、ありっこないじゃないですか! おれが先生にかなうわけないですよ」 アバン「(すまし顔で)それは、数十年後に分かることですよ。いえ……もしかすると、十数年ですかね?」 [19] この師匠でよかった、この弟子をとってよかったと思うことをそれぞれ教えてください。 ポップ「そんなの、いっつも思っています。 アバン「ポップならいずれ、自分一人でも村を出ていたような気もしますけどね。ですがきっかけを与えることができたのなら、教師冥利に尽きるというもんです。 [20] 最後に、お2人でメッセージを交わしてください。 ポップ「メッセージを交わせっていきなり言われても、何を言っていいのか分かんないけど……じゃあ、先生、これからもよろしくお願いします!」 アバン「それはこちらの台詞ですね。これからもバリバリ頑張って下さい、ポップ。 アバンのその言葉を聞いて、ポップは僅かに表情を曇らせます。 アバン「おや、どうしましたか、ポップ?」 ポップ「……それなら、おれ、卒業なんてしたくないです。だって……卒業したら、もう先生に教えてもらえないんでしょ?」 それを聞いたアバン、少し驚いた表情をしてから、優しく言い聞かせます。 アバン「そんな心配はいりませんよ。たとえ卒業したとしても、あなたが私の弟子なことは変わりがありません。 [−−] お疲れ様でした。 アバン「お疲れ様でした、さて、用事も終わりましたし、今日の分の修行といきましょうか」 ポップ「ええええーっ、今日はお休みじゃなかったんですか!?」 アバン「おや、誰がそんなことを言いました? ご心配なく、今からだって十分修行は出来ますよ」 ポップ「でも、もうすぐ日も暮れちゃうし、暗いと怖いし……っ、今日は早く寝て、明日からがんばるってことじゃダメですか〜?」 アバン「(苦笑して)本当に、困った子ですね。そんなこと言って、また明日、寝坊をするんじゃないですか?」 ポップ「しませんよ、ちゃんと起きますって! だから、今日はパスってことでお願いしますっ」 アバン「やれやれ、しょうがない子ですねえ。明日は、ちゃんと日の出と同時に起きて早朝特訓をしてもらいますよ」 ポップ「はぁーいっ。あ、先生、今日の夕ご飯はなんですか?」 アバン「今日はローストビーフの残りがありますから、コテージパイにしましょう。あなたも好きでしょう? さ、手伝って下さいね」 などと、楽しげに野宿の支度を始めた師弟の姿が微笑ましく、とても印象的でした――。 |