『犬猿の仲の2人に20の質問』
  
 


   

   
[−−] 今日はよろしくお願いします。すぐ終わるので…お2人とも帰らないでくださいね。

ヒュンケル「と、言われているのにどこに行く気だ、おまえは」

ポップ「だーっ、離せよっ。だいたいだなぁ、せっかくの休日なのになんだっておまえと一緒にインタビューなんて答えなきゃいけねえんだよっ!?」

ヒュンケル「しかし、姫の命令だぞ」

ポップ「う……っ!!」(しぶしぶ、椅子に座り直す)




[01] では初めに、それぞれ自己紹介をお願いします。

ヒュンケル「ヒュンケルだ。今日はよろしく頼む。
 身分はパプニカ王国の近衛隊隊長だ」

ポップ(むくれて)「ポップ。同じく、パプニカ王国の宮廷魔道士見習いだよ」

ヒュンケル「実質的には、宰相のようなものだろう」

ポップ「うるさいな、ちょっとばかり姫さんに仕事を押しつけられているだけで、本職じゃないんだよ!! あんなの、バイトみたいなもんだ!」

ヒュンケル「……国家予算に関与できて、対外政策に意見を言える上に外交を任されているバイトなんて聞いたことがないが」




[02] 今日ここへは別々で来ましたか?

ヒュンケル「いや、こいつのルーラで一緒に来た」

ポップ「くそっ、てめえが魔法を使えりゃ、そんなことしなくてすんだのによー」




[03] お2人が初めて出会ったのはいつ、どこですか?

ヒュンケル「…………」

ポップ「パプニカの港だよ。廃墟になった町の中で、こいつ、物騒な剣を持って格好つけて立ってやがったんだ。
 あ、そうそう、その時は魔王軍の軍団長様だったんだよな、おまえ?」

ヒュンケル(気まずそうに)「………………」




[04] 初めて会った時の印象をそれぞれ教えてください。

ポップ「なんか、いけ好かなくてヤな奴。目つきが悪い」

ヒュンケル「敢えて言うのなら……貧弱そうな魔法使い、か?」

ポップ「なんだと!?」

ヒュンケル「だから、敢えて言うならと言っただろう。あの時はダイに注目していた分、おまえへの注目度は低かったしな」

ポップ「それはそれでムカつくんだよっ」




[05] 相手の性格をそれぞれ簡単に説明してみてください。

ポップ「ええカッコしい。セッキョーが兄貴ぶっててムカつく。むっつりスケベ。女にもてて、超ムカつく!」

ヒュンケル「ひどい言われ様だな」

ポップ「まだ言い足りねえぐらいだよ。で、てめえはどうよ?」

ヒュンケル「……」

ポップ「また、だんまりかよっ!? それとも、未だにおれなんか眼中にないとでも言うつもりなのかよっ!?」

ヒュンケル「いや……、ただ、なんと言えばいいのか考えていただけだ」

ポップ「はんっ、どうせまたおれが未熟だとか、甘いだとか、悪口を言うつもりなんだろ?」

ヒュンケル「未熟だとは思っていないが、よく口が回るな、とは思う」

ポップ「けっ、人をおしゃべりみたいに言いやがって」




[06] お2人の波長が合わない原因は何だと思いますか?

ヒュンケル「それは……。やはり、オレが過去にしでかした過ちが大きいと思っている。自分勝手な誤解や思い込みで、弟弟子達まで殺そうとしたのだからな。
 許されることではないし、許して欲しいとも言えないと思っている」

ポップ「いつまで根暗に過去を引きずってりゃ、気が済むんだ!? だぁーっ、そう言う辛気くさい所が、一番気にくわねえんだよっ!!」




[07] 相手のここが許せないと言うところはありますか?

ヒュンケル「無茶なところだ。こいつは自分の身も顧みず、無茶をしでかす時がある」

ポップ「おまえが言うなっ! つーか、てめえにだけは言われたくねえよっ、よく言うぜ、おまえこそ何回無茶な真似をしでかしたと思っているんだよっ!? 死にそうになったのだって、一回や二回じゃないくせに!」

ヒュンケル(クールに)「おまえは、実際に一度死んだな」

ポップ「い、一回だけだろッ!! それに、ちゃんと生き返ったんだからいいじゃねえかっ」

ヒュンケル「……いいわけがないだろう。もう、二度と自殺まがいの無茶はするな」

ポップ「その言葉、そのままそっくりお返ししてやるぜっ! おれだってなぁ、てめえが大戦中に無茶をしでかしたことを、まだ許してないんだからなっ!!」




[08] 周りはお2人のことをどう思っていると思いますか?

ポップ「兄弟子に突っかかってばかりいないで、少しは大人になりなさいよってよく言われるよ。兄弟げんかも程々にしろって……別に兄弟なんかじゃねえのによー」

ヒュンケル「甘やかしすぎではないかと言われる時と、厳しすぎではないかと言われる時がたまにある」

ポップ「なんだ、そりゃ? なんで、そんなに両極端に意見が分かれるわけ? いったい、誰がそんなことを言ってるんだよ?」

ヒュンケル「前半は姫やマァムなどのみんなに。後半は城の兵士や侍女などに、だ」


 ヒュンケルの話を聞いて、ポップはなにやら考え込む素振りを見せます。


ポップ(あー、なるほどね。
 要するに、仲間達にゃおれがこいつに文句ばかり言ってるのに黙認しているのを知っているから、甘いって言うわけだ。

 でも、兵士達なんかはそこまで知らねえもんな。パッと見ただけじゃ仏頂面のこいつの態度が冷たく見えるから、厳しいって言うんだろうな。
 要するに、誤解されやすいんだよなー。もうちょっと要領よく振る舞えばいいのによ、……バカな奴)

ヒュンケル「とりあえず両者の意見の間をとって、現状維持に努めている」

ポップ「いや、てめえのその決断、どっかおかしいっ! それ、全然、間を取っていないだろっ!?」




[09] お2人が会話することってありますか?あるなら、それはどんなことですか?

ポップ「仕事の都合上や、飯やお茶の時に顔を合わせるから、割と話はするけどよ……こいつの場合、会話にゃなってねえよ! ろくすっぽしゃべらないし、相づちだってすっげーいい加減だし!」

ヒュンケル「そんなつもりはないが」

ポップ「そんなつもりじゃない、だぁ? こっちの話におまえ『そうか』しか言わない時ってよくあるぞ! オウムだってもう少し相づちのバリエーションがあるだろうによ」




[10] 今日を除いて、お互いを最後にみかけたのはどこで、何をしているところでしたか?

ヒュンケル「昨日の夕食。食事が終わった後、自室に戻っていくのを確認した」

ポップ「同じく、昨日の夕食。おれの方が先に部屋を出たから、後は知らねえ……って、何、人のことをつけ回してんだよっ!?」

ヒュンケル「別につけた覚えはない」

ポップ「何言ってんだよっ、おれの部屋とおまえの部屋じゃ方角が違うじゃねえかっ。なのに、何でおれが部屋に戻ったのを知っているんだよ!? やっぱり、つけていたんだろう!?」

ヒュンケル「つけてなどいない。業務上、部下達に毎日報告させているだけだ」

ポップ「……なおタチが悪いじゃねえかっ!!」




[11] 実は毎日顔を合わせなければならなかったりしますか?

ポップ「……その通りだよっ!! だいたい、なんだっておれがこいつと毎日一緒に飯を食ったり、仕事をしたり、同じ家で暮らさなきゃならねえんだっ!?」

ヒュンケル「いや、家じゃなくて城だろう」

ポップ「やかましいってめえと一つ屋根の下ってだけで、気にくわねえんだよっ!! だいたいあんなに城がでかいのに、なんだって毎日、よりによってこいつと面を付き合わせてばっかりいるんだっ!?」

ヒュンケル「仕方がないだろう、仕事だ。
 おまえが嫌だろうと、おまえがパプニカ王国にとって重要人物なのは事実だ。そして、オレは近衛兵……要人警護も任務のうちだ」

ポップ「要人警護なら、姫さんにいけよっ! でなきゃ、ダイでも警護していろってえの! だいたいあいつの方がおれより有名人だろっ!」

ヒュンケル「姫には三賢者がついているし、ダイに護衛など必要ないだろう」

ポップ(カチンとして)「ああっ!? じゃあ何か、おれには護衛が必要だってのかよっ!?」

ヒュンケル「……」

ポップ「そこで黙りこむんじゃねえ、地味に肯定されているみたいで余計にムカつくっ!!」




[12] とある休日の午後3時。相手はどこで何をしていると思いますか?

ポップ「知るもんか!」

ヒュンケル「疲れがたまっている時期ならば、自室か中庭で昼寝。そうでなければダイと一緒に町へ遊びに行っているか、城でお茶を飲んでいる」

ポップ「うっわ……、引くわ。なんでそんなに詳しいんだよ、しかも断言してるんじゃねえよ!」

ヒュンケル「違っていたか?」

ポップ「まあ、だいたいあってるけどよ」




[13] 相手にあって自分にないもの。何だと思いますか?

ポップ「(ぶすっとして)戦士の天分。すっげーーーーーー認めたくないけどよ、こいつ、剣にかけては天才だよ」

ヒュンケル「だが、おまえはその分、魔法の天分があるだろう。オレにはない力だ」




[14] 仲が悪そうにみえて、実はよかったりしますか?

ポップ&ヒュンケル「「それはない」」


 コンマ一秒の差もなく、驚く程ぴったりと声がハモっていました。




[15] 何か一つ、相手の長所をみつけて教えてください。

ポップ「(心底嫌そうに)ええ〜? こいつの長所〜? だって、こいつ、いっつもスカしていて偉そうだし、人が平気だって言ってんのにいっつもおれのことを庇ったりするし――あっ、そういやこの前も人が本を持って歩いていたら、無言で取り上げて運びやがったよな?
 お節介なんだよ、あれぐらい、おれ、自分で持てるのによ!!」

 などと、ひとしきり文句を言った後で、ポップはやっとしぶしぶと言います。

ポップ「……とりあえず人を庇おうとするとこが、長所と言えば長所だとは思うぜ。
 態度がでかくて無駄に偉そうにしているから、感謝する気もなくなるけどよ!」

ヒュンケル「…………」

ポップ「で、なんだっておまえはいちいち黙り込むんだよっ!? なんで、そう間を取りやがる!? 人の長所の一つも、口に出来ないのかよ!?」

ヒュンケル「ああ。おまえの長所を一つ言うなど、無理だ」

ポップ「なんだよ、それ!? ああ、そうかよっ、てめえがおれをどう評価しているのか、よっく分かったよ!!」


 ぷんぷんに怒ったポップが、一度、頭を冷やしてくると言って席を外した後で、ヒュンケルはぽそりと呟きます。


ヒュンケル「(困ったように)だが……本当に一つ、長所を見つけるなど、無理だ。あいつの長所は、数え切れない」




[16] 腕相撲をしたらどちらが勝ちますか?

ヒュンケル「オレだな」

ポップ「断言すんなよ! 何さらっと言ってやがるんだよっ!? そんなの、やってみなきゃ分からねえだろっ」

ヒュンケル「……本気でそう思っているのか?」

 ポップ、自分とヒュンケルの腕を見比べてから負け惜しみのように言います。

ポップ「ま、まぁっ、今日はやめておいてやらぁっ」




[17] ケンカはされたことありますか?

ポップ「……している気がしねえよ。だって、こいつ、いくら文句を言っても、手出しもしなけりゃ言い返しもしないんだからよ!」

ヒュンケル「オレは無駄な戦いをする気はしないからな」

ポップ「無駄な戦いだって? それ、どういう意味だよ!? (こいつ、人のことそこまで馬鹿にしてんのか!?)」


 なにやら殺気だってヒュンケルを睨み付けるポップに対して、ヒュンケルはさらりと答えます。


ヒュンケル「言葉通りの意味だ。オレは、勝てない勝負はしない――こいつに、オレが口で勝てるわけがない」

[18] 相手の弱点はご存知ですか?

ヒュンケル「まあ、一応はな」

ポップ「うわ、さらっと断言しやがったよ!」

ヒュンケル「しかたがないだろう。魔法使いの弱点など、決まっている。体力のなさや防御力のなさは、否めない」

ポップ「(悔しそうに)うう〜っ、確かにそうだけどよぉ〜。
 あーあ、てめえはいいよなぁ、鎧の魔剣があるから魔法を弾けるもんな。弱点は唯一、雷撃系の呪文……ライディンだけだしよ」

ヒュンケル「おまえも、オレの弱点を承知しているじゃないか」

ポップ「知っていても、おれにはライディンは使えないじゃないか! なのに、知っていたって意味ないだろ!?」

ヒュンケル「それはオレも同じだ」

ポップ「へ?」

ヒュンケル「知ってはいるが、意味はないと思っている。おまえは、自分の弱点や欠点を克服できる奴だからな」




[19] 相手は自分にとってどのような存在ですか?

ポップ(ぶすっとして)「ヤだけど、兄弟子」

ヒュンケル「その通りだな」

ポップ「フンっ、でも同じ先生に習っただけで修行した時期なんかは別々だったし、一緒に旅をしていた時間だってほとんどねえし、戦いの時だって別行動ばっかだったんだぜ!
 兄弟弟子は兄弟弟子だけど、ほとんど他人だから! 他の奴に比べたら、うーんと差があるから!」


 などと、ポップはやたらとムキになって言い張っていましたが、ヒュンケルよりオフレコで短い本音を聞かせて頂きました。


ヒュンケル「あいつは、自慢の弟弟子だ」




[20] いつかお2人の仲がよくなる日が来るでしょうか?

ヒュンケル「……そうなればいいとは思っているが(苦笑)」

ポップ「ぜってーねえよっ!」




[−−] どうもお疲れ様でした。ケンカは禁物ですよ!


 無言で帰ろうとするヒュンケルを、ポップが引き留めます。


ポップ「てめえ、どこにいこうってんだよ、とっとと帰るんだから手ぇだせよ!」  

ヒュンケル「……いいのか?」

ポップ「嫌だけど、しかたがねえだろ!! おまえを置いて帰ったりしたら、姫さんにゃエイミさんにどれだけ文句を言われることか! 我慢して連れて帰ってやるって言ってるんだから、感謝しろよな!!」


 ポップの憎まれ口を聞きながら、ヒュンケルはかすかに――ほんのかすかですが、確かに微笑みました。


ヒュンケル「ああ、感謝する。では頼もうか」




 そう言って犬猿の仲の兄弟弟子は手を取り合い、魔法で去っていきました――。


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