『仕事仲間で対談』
 


   
[−−] 始めに対談を行うメンバーを確認したいので、おひとりずつ自己紹介をお願いします。

アポロ「初めまして。私はパプニカ三賢者の一人、アポロと言います。当年取って22才ですね」

マリン「同じく三賢者の一人、マリンです。年はアポロと同じよ」

エイミ「エイミって言います。三賢者の一員で、マリン姉さんとは姉妹です。私は20才なの」




[01] 皆さんは一体どんなことをしている組織の一員ですか?お仕事内容を少し教えてください。

アポロ「三賢者というのは、パプニカ王族に仕える重臣の中で最も高位に当たる地位ですね。文字通り賢者の資質を持った者のみが就くことができます。
 政務的にも実質的に王の補佐に努め、陰から支え続けることこそが三賢者の役割です」

エイミ「本来は……っていうか、先代までは三賢者というのは名誉職に近くて、ほとんどが老齢の賢者が勤めていたみたいね。
 だけど、先王……つまり、今の王女レオナ様のお父上が改革なさったと伺っているわ」

マリン「現在の所、私達の役割は姫様の執務のお手伝いがメインね。
 アポロは政務、及び城の保全が担当で、エイミは外交の担当、私は城内の人事や庶務を担当させてもらっているわ。……一応はね」

アポロ「名目上は私達が姫様の後見人であり、文官のトップの地位にいますが、実質的に政策を決定したり予算を組んでいるのは紛れもなく姫様とポップ君自身ですよ。
 後見人と名乗るのが恥ずかしくなるぐらい、実務はあの二人が取り仕切っています」

エイミ「そうなのよねえ。普通は、未成年者の王族が政務に就く時には後見人が代理として政務を行うものなのだけど、姫様の方がずっと政務に向いてらっしゃるし、お詳しいのよね」

マリン「姫様は昔から、とても頭の良い方でしたもの。
 昔、同じ教師に着いて同じ教科を学んでいる時も、姫様が一番成績がよろしかったものね」

アポロ「才能の差、と言う物かも知れないね。
 ポップ君も私達よりも年下なのに、判断力の高さや知識には驚かされるばかりだよ。
 正直に言ってしまえば、我々はあの二人の共同統治を補佐してるだけ……と言った方が正解ですね(苦笑)」




[02] 職場環境はどのような感じでしょう?

エイミ「私達は全員、パプニカ城に寝起きする部屋と執務室を頂いているの。私達は三賢者になる前から城に出入りしているから、慣れているしね。今や、第二の家庭のような感じよ。
 自宅も近いから自宅通勤をしてもいいのだけど、少しでも姫様やみんなと一緒にいたいし……」

マリン「(からかうように)フフッ、姫様やみんなと? ヒュンケルさんと、の間違いじゃないの?」

エイミ「(顔を真っ赤にして)ねっ、姉さんったら! 姉さんこそ、実家に帰らないのは誰かさんが城で寝泊まりしているからじゃないの!?」

 妹の逆襲に、今度はマリンが顔を赤らめます。

マリン「エイミったら! 誰かさんって、誰のことを言っているのよ!?」

アポロ「(きょとんとして)一体、誰のことなんだ?」

マリン&エイミ「…………」

アポロ「そうそう、パプニカ城では、文官の場合は高官クラス以上の独身者ならば、城内に一室を与えられると同時に個別の執務室を与えられるのが決まりです。騎士や兵士の場合は、近衛兵クラスの独身者ならば城内に個室を与えられます。
 ちなみに妻帯者の場合は、身分に応じて家族手当や住居扶助が与えられますね」


 などと、アポロが説明をしている間に、美人姉妹達は彼に聞こえないようにひそひそとおしゃべりをしています。


マリン「(こっそり)アポロったら……! 真面目なのはいいんだけど、どうしてああ鈍いのかしら?」

エイミ「(こっそり)……姉さんもあれじゃ、苦労するわよね〜」




[03] 上下関係に厳しい組織ですか?

アポロ「規律は大事ですし、そうでなければならないとは思ってはいるのですが……」

マリン「でも、私達の主君の姫様はまだ16才とお若いし、身分を気にしない気さくな方なの。
 もちろん、公的な場ではきちんと振る舞われる方なんだけれど、プライベートな場ではどうしてもなぁなぁになっちゃうのよね。
 特に、私とエイミは姫様が小さい頃からの遊び相手だし」

エイミ「それに、ダイ君やポップ君がいつも姫様といるのも、ある意味で問題よねぇ。ポップ君は庶民出身だし、ダイ君にいたって無人島育ちだもの。あの二人が身分に拘ったりしないから、姫様までますます奔放に振る舞われるようになってしまって……!
 この前もまた、お忍びでベンガーナデパートに買い物に行っていた、なんて言うのよ!」

アポロ「(動揺して)えっ!? そんな話は聞いていないけど!?」




[04] お仕事に最も真面目に取り組む方は…?

マリン「アポロね」

エイミ「賛成」

アポロ「そうかな? 私よりも、姫様やポップ君の方が書類の処理は速いし、的確だと思うけれど」

エイミ「そりゃあ、捌く書類の量はあの二人の方が多いかも知れないけど!
 でも、真面目に仕事をすると言う点にかけては、やっぱりアポロが一番だと思うわ。単調な仕事でも飽きずに、毎日同じ作業を繰り返せるんだもの」

マリン「姫様は時折お忍びで出掛けてしまうし、ポップ君もポップ君で内緒で出掛けてしまうことは割とあるし」

エイミ「ホントにあれには困ったものよねえ。ポップ君の場合、自由に空を飛べるからどこにでも行けちゃうんだもの。
 まあ、その代わり、戻ってくる時も早いんだけど」





[05] 反対に、気分次第でお仕事をされている方はいますか?

マリン&エイミ「「姫様!」」

アポロ「いや、姫様は仕事は実に真面目にやっておられると思うのだが……」

エイミ「それはそうだけど、急にパーティやイベントを思いつくのは決まって姫様ですもの!」

マリン「(遠い目)バレンタインの企画の時には、地獄を見たわ……色々な意味で」




[06] ここだけの話、報酬はどのくらい貰えますか? また、報酬の違いはありますか?

マリン「アポロが月に3000G、私が月に2800G、エイミが月に2500Gよ
 アポロの給金が一番、高額と言えば高額だけれど、あまりたいしたことはないわ。基本的にパプニカ城では、文官は勤続年数によって給料が上がっていくのが慣習だから、若い私達に対してはそうそう高額は出せないの」

エイミ「でも、これってなんかおかしいわよね! この決まりのせいで、大戦中に戦いもせずに城から避難した文官達が、ちゃっかりと昇給しているんですもの! ろくな働きもしていないのに!」

アポロ「そんな言い方をするのは、よくないぞ。給与の引き下げは迂闊に行えない問題だし、もうしばらくは彼らを黙認しておくように、と言うのが姫様のご命令なのだから」


 ――ちなみに、使い道はどうされていますか?


アポロ「私は、大半は家に仕送りとして送金しているよ。私を引き取ってくれた養父への細やかな恩返しとして、ね。
 個人的な使い道としては、やはり書物かな」

マリン「私も実家への援助と、貯金が一番大きいかしら。幸い、家族は無事だったけれど、魔王軍との戦いで大分家が壊れちゃったし。趣味としては……私も書物が一番割高かしら?」

エイミ「……な、なんだか、二人の後だと言いにくいのだけど、私は買い物に使う金額が多いかも……っ。
 だって、洋服とかを買うとやっぱりワクワクしちゃうし、そうなると合わせる靴やアクセだって欲しいし」

マリン「もう、エイミったら無駄遣いばかりしているんだから」

エイミ「ほっといて! それに姉さんだって、よく私の服を借りるじゃない、無駄だなんて失礼しちゃうわ」




[07] 仕事をしていて楽しいと思う時はどんな時ですか?

エイミ「外交でよそこの国へ移動する時ね! 気球船に乗って空を飛ぶのって、この時だけの特権ですもの」

アポロ「それは羨ましいね、私はほとんど城から外に出ないからなぁ」

マリン「私もそれは同じね。来る日も来る日も、出納帳の管理ばかりやっているようなものだし。
 あ、でも、城で行われるパーティの支度は好きよ。華やかなパーティを開く準備は、気苦労も多いけれど何度やってもワクワクするわ」

アポロ「そうだね、マリンはその辺のセンスがいいから、姫様もいつも安心して任せられるわと仰っていたよ。
 全く羨ましいよ、私にはそんな華やかな仕事は縁がないから」

マリン「あら、人のことばかり羨ましがってないで、アポロも何か言えばいいのに」

アポロ「とは言っても、私の仕事は姫様やポップ君の作成した書類の校正や点検が主だし、至って地味なものだよ。
 後は……城内の設備が壊れていないか調べたり、古くなった箇所の修繕や手配が担当だからなぁ。
 ああ、そうだ、城内を点検する際、どこも壊れていない時は嬉しいね、やっぱり」

マリン&エイミ「……」


 あまりにも細やかすぎるアポロの幸せに、姉妹は憐憫の眼差しを向けずにはいられないようです。


マリン「(こっそり)そう言えば……しょっちゅうダイ君が廊下やポップ君の部屋のドアを壊すものね」

エイミ「(こっそり)私、この間、涙目で『ろうかは、ぜったい! 走る、ダメ!』と書いたポスターを貼るアポロを見たわ……




[08] 今までやった仕事の中で、一番辛かった内容を教えてください。

エイミ「えー、何かしら? 辛いというのなら、決算日前の仕事はいつだって辛いんだけど」

マリン「それは同感だけど、やめて! どうせ毎月やってくる地獄を思い出させないで!!
 そんなことより、もっと別なベクトルでの辛い仕事とかはないの?」

エイミ「そうね……それなら、やっぱり大戦中のパプニカ城落城の日のことかしら」

マリン「そうだったわね。あの日、陛下に姫様を託されたこと、今でも覚えているわ。多くの兵士や侍従達が時間を稼ぐために城に留まる中、私達は姫様と共に脱出するようにと命じられたんだったわ」

アポロ「あの時は納得できないまま王命に従うしかできなかったが、王のご決断は今思えば正しかったな。
 姫様が生き延びたからこそ、今があるのだから。
 パプニカ王国も持ち直したし、他国と協力して大魔王と戦うこともできた……これも、あの時の王のご英断があってこそだ」




[09] 自分はこの職業に向いていると思いますか? もしこの職業についていなかったら、今何をしていると思います?

マリン「正直、私は自分が三賢者になるだなんて、思いもしなかったわ。姫様が1才のお誕生日を迎えた日、私とエイミは姫様の遊び相手に選ばれて、城へ奉公にあがったの。
 もっとも、最初は王妃様の侍女見習いという形でだったけど」

エイミ「私、その頃のことってあまりよく覚えていないのよね。ただ、急に家から城へ連れてこられて、不安で寂しかったことはよく覚えているんだけど」

マリン「無理もないわ、あなたは当時5才だったんだもの。
 王妃様のお心遣いで、私達は月に1度は帰宅を許可されながら、王族直属の侍女としての教育を受けることになったの。その教育の中で賢者の資質が発見されたのがきっかけで、三賢者にまでなったけれど、そうでなかったら私もエイミも多分、侍女のまま姫様の側にいたんじゃないかしら?」

エイミ「そう言われれば、そんな気がするわね。三賢者じゃなかったとしても、姫様のお側から離れるなんて想像もつかないもの。
 ……っていうか、書類管理も外交問題とも無関係に姫様のお相手だけをする侍女って、その方がずっと楽じゃない!?」

マリン「まあ、そう言われたらそうだけどね(笑) そうね、私も昔はそう思っていたわ。
 王妃様と姫様にずっとお仕えして、姫様がよその国に嫁がれる時に一緒に共を命じられるような腹心の侍女になりたいと思っていたわ」

エイミ「私は……そうは思わなかったなぁ。姫様はもちろん大好きだし、一緒に居たいとは思うけれど、でも、結婚して家庭に入るのって夢だったもの。
 今思えば、お嫁さん、になりたかったのかも……」

マリン「あら、結婚しても共働きという手もあるわよ?」

エイミ「現実に戻さないでよ! 子供の時の夢の話をしているんでしょ!! ねえ、アポロはどうだったの?」

アポロ「……笑わないでくれるかな、私は昔は魔法使いに……それも、マトリフ様のような大魔道士と呼ばれるような存在になりたかったんだ。今思うと、大それた夢としか言いようがないけれどね」

マリン「え? そうだったの?」

エイミ「なんだか、意外ね」

アポロ「とは言っても、三賢者になったことを後悔しているわけではないけれどね。
 私のような若輩者には過ぎた称号だとは思うし、責任の重さも感じているけれど、それでも自分が微力なりとも姫や国のために働けることを誇りに感じている」

マリン「それは私も同じよ。もし、辞することができたとしても、今の私は三賢者を辞めるつもりはないわ」




[10] 時には休養も必要です。これからも無理をせず頑張ってくださいね。

エイミ「休養! いいわね、できるならまた旅に出てみたいわ」

マリン「(からかって)また、ヒュンケルさんを追いかけて? ふふっ、それはいいけれど、旅に出るなら出るでちゃんと連絡はして欲しいわ」

アポロ「相談もなしに三賢者を返上して、勝手に旅立たれるとさすがに困るからね」

エイミ「もう、そのことなら反省しているから言わないでったら。それより、姉さんやアポロはどんな休暇が望みなのよ?」

マリン「え、ええ、そうね……(ちらっとアポロを見て)私は……どちらかと言えば、家でゆっくりとくつろいで過ごしたいと思うわ」

アポロ「同感だね! 私もそうしようかな、読みたい本もたまってしまっているし、のんびりと一人で読書で過ごす一日も悪くないな」


 などと、至って朗らかに言ってのけるアポロに対して、エイミは呆れたような、そしてマリンは少々怒った表情を隠しもしません。


エイミ(本当に鈍いんだから……姉さんも苦労するわよね)




[−−] お疲れさまでした。
 
アポロ「それでは、今日はお世話になりました」


 インタビューが終わった後、アポロ、マリン、エイミの三人は仲良く肩を並べて引き上げていきました。

 
 


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