エピローグ 再見! 霊幻道士!!

 

 その日、おいらはわずかな手荷物と共に空港にいた。
 国際便の搭乗口用のロビーは、活気に溢れていて賑やかだった。様々な服装や人種が普通に行き交うここでなら、霊幻道士姿のおいらもそう目立ちはしない。

 窓越しに見える飛行機を眺めながら、おいらはゆっくりと時間を潰す。目当ての飛行機が来るまでまだ少し時間があるし、こんな風にゆったりと過ごせるのは実に久しぶりだ。

 思えば、日本に来て以来、落ち着く時間なんて全然無かった。
 特にあのキョンシー騒動後ときたら、忙しいなんてもんじゃすまなかったんだから!
 





 結果から言えば、奇跡的にも今回の騒動の死亡者はゼロだった。正直、おいらが一番ビックリしているけど。

 ウー・ロンとの対決が終わった後、おいらは速攻で師匠に連絡を取った。
 実際、あれはキョンシー達との戦いよりもよっぽど緊張した。ただでさえ不出来な弟子だと怒られてばっかりいるのに、こんな簡単な任務でさえ失敗してしまえば、最悪、破門されるかもしれない……!

 しかし、人の命には替えられない。
 バンバンシー化した人達を助けるため、おいらは破門覚悟で何が起こったのかを全部白状した。

 師匠はおいらの話を聞いても、怒らなかった。
 短気な師匠には珍しい反応に戸惑うおいらに、師匠は淡々と教えてくれた――絶望的な事実を。

 バンバンシーから人間に戻す術は、時間勝負だと。
 遅くとも24時間以内に手を打たなければ、手遅れになる。しかも、早く手を打てば打つほど治療の確率が上がるらしい。

 つまり、すぐにでも霊幻道士が適切な術を施さなければ、バンバンシー化した人達は助からない……それを知った時の絶望感と言ったら無かった。

 大の機械嫌いの師匠は、人里離れた山奥の寺に住んでいる。
 空港に移動するまで、車を使っても軽く三日ほどかかるような場所だ。
 フットワークが軽い上、師匠と同じ寺にいる兄弟子がすぐにこちらに来てくれたとしても、すでに手遅れだ。

 そして、残念なことに……独立した師匠の弟子やら知り合い達もまた、全員同じような場所にいるんだ。知り合いに連絡を取るだけで、数日かかってしまう。

『仕方あるまい。こうなった以上、おまえがやれ』

 そう師匠に命じられた時は、本気で腰が抜けた。霊幻道士としては半人前のおいらに出来るような術じゃないし、そもそも術具だってほぼ持っていない!
 けど、おいらがいくら訴えても、師匠はやれの一点張りだった。仕方が無く、兄弟子から指示を受けて術の詳細は習うことになった。

 しかし、兄弟子ときたら、いつの間にパソコンでのリモート操作ができるようになってたんだよ? 最初は電話で話していたくせに、おいらの理解が悪いと悟った途端、パソコンを通じて画像やら実物を見せながら指導してくるとは思わなかったよ。

 っていうか、兄弟子、いったいどこにパソコンを隠し持っていたんだろ?
 師匠はあんなに頭が固くて機械類は大嫌いなのに、なんだって兄弟子はああなんだろう?

 まあ、ボロ寺にあるまじきこっそりハイテクの影で、術式はなんとか伝わった。

 それでも術具は足りないし、おいらの技術も足りないしてピンチもいいところだったが、それを助けてくれたのは意外にもウー・ロンだった。

 全面降伏したウー・ロンに、バンバンシーを人間に戻すための術に協力を要請してみたところ、驚くぐらい素直に力になってくれた。術具も豊富だし、霊幻道士としての実力はおいらよりもずっと上だ――人は見かけによらないと、つくづく思い知った。

 兄弟子とパソコンで連絡しただけじゃ完全に術を習得できたわけじゃなかったので、ウー・ロンの助けは正直ありがたかった。
 おかげで、なんとかかんとかバンバンシーを助けるのに間に合ったんだ。

 死亡者がゼロとは言え、怪我人やらデパートの被害はそこそこあったのだが、そちらの方をなんとかしたのは支配人だった。

『なに、殺人事件じゃないのなら、なんとでもごまかします! 幸い、桜蘭玉は無事だったことですし、盗難については運良く警察に連絡していませんし、キョンシー発生についても消防署や自衛隊に連絡しませんでしたから!』

 なんて言っていて言葉通り、彼は数日で見事に事を片付けた。
 息子や義母には弱気だったけど、支配人は思っていたよりも有能だったらしい。

 怪我人や被害を受けた者には十分な補償を与え、アレはイベントの一種だったとマスコミも巻き込んで強引に納得させてしまった。

 驚いたことに大キョンシー展も予定通りやりきったんだから、すごすぎる。むしろ今回の騒ぎを宣伝に利用して、最後まで大盛り上がりになった。一番人気はベビキョンで、独特の衣装と手品を見せる姿が大評判になった。

 まあ、見物人達はベビキョンが本物のキョンシーだと気づかず、キョンシーの格好をした子供だと思ったみたいだし、手品ではなく念動力だとは思いもしなかったみたいだけど。
 ……知らないって、幸せだな。

 本来ならベビキョンは安全のためお札で眠らせたかったんだけど、おいらの実力じゃベビキョンほどのキョンシーを完全に封じることなんて出来ない。仕方なく、毎日ベビキョンのお守りをする毎日になった。

 ベビキョンは相変わらずおいらのことをお姉ちゃんだと思い込んでいて、べったりくっついて離れてくれないんだ。懐いてくれるのは嬉しいし、言うことを聞いてくれるのは助かるけど、子供の世話をずっと見るってのも大変なんだぞ!

 おまけに、何が気に入ったのか高虎が毎日キョンシー展に来るのも、厄介だったし! 別に、あいつが何かしたってわけじゃないんだけど、でも、なんだかあいつがいると、なんかしら騒ぎが起きそうな気がして落ち着かない!

 さらに言えば、ミンミンもなぜか毎日のようにキョンシー展に来ていた。けど、キョンシーにはほぼ興味が無いみたいで、おいらに話しかけてくることが多かったんだけど。

 とりあえず、大キョンシー展が無事に終了してホッとしたおいらは、ようやくお役御免になったわけだ。

 ウー・ロンとリー・ロンは、あっさりといなくなった。
 バンバンシーを全員治療した後、ウー・ロンは電話で兄弟子や師匠と長々と話をした後、中国へ帰っていった。

 罪を償うと言った彼がどうなったのか、おいらは知らない。師匠や兄弟子も教えてはくれなかったし。
 
『全ては、ワシの罪じゃ……若い霊幻道士よ、一つ頼みがある――娘だけは助けてやってくれまいか』

 バンバンシー化した時に、そう頼みこんだウー・ロンを思い出す。
 それを聞いた時のリー・ロンは、複雑そうな表情をしていた。父親についてあれだけ悪態をついていたリー・ロンだけど、彼女は結局、ウー・ロンと共に中国に帰ってしまった。

 怪盗ウー・ロンの名は中国での方が名高いことを考えれば、わざわざ帰らない方がいいと思ったけど、リー・ロンにも思うところがあったのだろう。何か言いたそうな顔をして、それでも何も言わないまま、彼らはいなくなってしまった。

 今頃、どうしているんだろう――?
 そんなことを考えていた時、今にも泣き出しそうな声が耳に飛び込んできた。

「ナム……ッ! もう、会えないかと思ったアルネ……!」

「へ?」

 振り返ると同時に、柔らかくていい匂いのする弾力がおいらに飛びついてきた!

「え? え? えええ?」

 焦りまくるおいらに抱きついてきたのは、お団子ヘアが特徴的な可愛い女の子……ミンミンだった。彼女は目からこぼれ落ちそうな涙を浮かべ、わずかに見上げながら訴える。

「どうして? なんで、ワタシに何も言わないで、国に帰ってしまうアルネ……! もう会えないなんて、突然すぎるアル……! お別れさえ言ってないのに……」

「え? え? え? 帰るって、なに? っていうか、なんで君がここに――」

 女の子に抱きつかれているだけでも焦るのに、さらにはその娘に泣かれてしまって、おいらは焦りまくるしかない。けど、すぐ側から弾けるような笑い声が聞こえた。

「はははっ、そーんな焦ることないじゃん」

 他人事よろしくちゃっかり距離を取り、それでいて面白そうにこっちを見ているのは高虎だった。

「イン・フー!? おまえ、何しにきた!?」

「何ってわけじゃないけど、この子がナムがいないって泣くから、連れてきただけ」

 と、高虎が言った途端、ヤツの後ろからベビキョンが現れて抱きついてきた。

「ジェジェ! ジェジェ!」

 こちらもまた、泣きながらおいらに抱きついてくる。うっ、大人しく留守番するように言い聞かせておいたのに〜。

「ここにくる途中、偶然、ミンミンちゃんに会ったからナムが空港に行ったって話をしたんだよ」

 気がきいているだろ、と言わんばかりのドヤ顔がむかつくことこの上ない。
 気を利かせるなら、ベビキョンの気をそらして一緒に留守番していて欲しかったし、ミンミンに話をするならするで、ちゃんと説明して欲しかった!

 いくら空港が多国籍な人種がそろっているとは言え、女子供を泣かしちゃっているおいらはどの国の人からも不審な目で見られているぞ!
 まずはミンミンの誤解を解こうと、おいらは彼女の背を軽く叩きながらなだめた。

「あ、あのね、落ち着いて、ミンミン。おいらは別に国に帰るためにここにきたわけじゃなくて――」

 そう言いかけた時、ガツンと強烈な痛みが脳天を貫き、目の前に星が散らばった。

「……なにをしとるか、ナム! 霊幻道士の修行中の身でありながら、女の子といちゃつくなど許されるとでも思っておるのか!」

 怒鳴ると同時に、強烈な拳がまたも脳天を直撃する。気配すら感じていなかったのに、いつの間にやらおいらの背後を取っていたのは、髪も髭も真っ白な老人――おいらの師匠だった。

「師匠がいらしたんですか!?」

 予想外すぎて、思わずおいらは叫んでしまう。
 おいらがここにきたのは、中国からやってくるはずの師匠の使いを迎えるためだった。

 ウー・ロンの協力でバンバンシー化は食い止めはしたが、それでも後遺症が残っていないかチェックする必要があるから誰かをよこすという話だったはずだ。

 まさか、師匠本人が来るだなんて思いもしなかった。車でさえ嫌がるぐらいのメカ音痴で、超がつくぐらい頭が固い師匠が、よりによって飛行機に乗ってくるだなんて!
 驚きに目を見張るおいらを、またも師匠の鉄拳が襲う。

「だいたい、たかがキョンシー使い風情に後れを取るとは、それでも霊幻道士か! 全てはお前の修行不足がいかんのじゃ!」

「いっ、いたっ、痛いって、ひどいよー、師匠! 理由も訊かずに殴るなんてっ」

「ほう、ならばおぬしは理由があってその子と抱き合っていると?」

 呆れたような師匠の言葉を引き取るように、凜とした声が響き渡った。

「へえ……。その理由なら、オレも聞きたいな」

「いっ?」

 ギクッとして、おいらは声の方を向く。
 そこにいたのは、見覚えのある美形だった。スラッと背が高く、鋭い目……だが、以前と違って美少年に見えないのは、鶴の刺繍の入った女性用のクンフー衣装を着ているせいだ。

 凄みを感じさせる美貌はそのままに、美少年から美少女へと変化したリー・ロンがそこにいた。

「り、リー・ロン!? なんでここに!?」

「私達が連れてきたからだよ」

 と、大荷物を背負ってのっそりと現れたのは、兄弟子だった。仙人のような格好の師匠、クンフー映画から抜け出してきたようなリー・ロンと違い、いかにも今時の若者風な格好をしている彼は、空港には見事に馴染んでいる。

 ……っていうか、なぜ師匠は兄弟子の格好にも文句を言わないのか、不思議だよな!? おいらなんか、好みを度外視して髪を伸ばした上に霊幻道士の格好をしているっていうのに!

 が、おいらのそんな羨望やら僻みを知るよしもなく、兄弟子はつまらなそうな顔で説明する。

「この娘には霊幻道士の才能があることが分かって、しばらく修行させることにしたんだ」

 まあ、ウー・ロンの娘ならキョンシー使いの才能があっても何の不思議もない。

 説明によると、ウー・ロンは結局のところ警察に突き出すのではなく、霊幻道士の組合が責任を持って監視するということで落ち着いたらしい。……霊幻道士が組合を作るほどいたなんておいらも初耳だけど、現代においてキョンシー使いはそうそういるものではないし、利用価値も高いそうだ。

 盗んだ宝物、もしくはそれに相当する金額を全て返還することで、被害者や警察とも暗黙の話もついたようだ。言わば、ウー・ロンは監獄に入るのではなく、霊幻道士の下っ端としての労働で罪を償うことになったらしい。

 そこで問題となったのが、リー・ロンだ。
 彼女の罪はたいしたことが無いが、ウー・ロンが罪を償うまでは別の保護者に預けるという流れになり、師匠がリー・ロンの保護観察を行うと決まったようだ。
 しかも、驚いたことに、師匠も兄弟子も当分日本で過ごすつもりらしい!

「パソコンを新調したいんだが、どうも国元では部品を探すのも一苦労でな。ネットで取り寄せても時間がかかるし、送料を考えると高くつく。秋葉原で部品を探した方が安上がりだし、新しいドローンも買いたいからな」
 
 などと、言ってのける兄弟子に目を剥いていると、高虎がひょいと割り込んできた。

「あ、はいはーい! 日本にご滞在するなら、うちの社が抑えている物件を紹介しましょうか? 家賃はご心配なく、今回の件でお世話になったお礼として無償で提供してもいいと、祖母から許可を取っていますので。複数候補がありますが、手近なところだと……こんな所なんかいかがですか?」

 と、高虎がスマホをチョイチョイいじって差し出すと、師匠が迷いもせずにそれを受けとる。スマホをいじる師匠の姿が衝撃的すぎた。

「ふむ、この間取りなど悪くないのう」

 って、いつの間にスマホを使いこなせるようになったの、師匠!? ついこの前まで、電話――それも旧式のダイヤル式という骨董品じみた電話にさえ触れるのを嫌がっていた機械嫌いはいったいどこに!?

「じゃ、見学できるように連絡を入れときますね。現地には父がいるはずですので、細かいことは取り計らってくれますから」

 高虎がテキパキ話を進め、師匠も兄弟子もさっそく新居候補を見に行くことにしたらしい。

「見学に行くのならお供します、師匠。――というわけで、おまえはリー・ロンの面倒を見てやれ、ナム」

「え!? ええーーっ、なんでおいらが!?」

「これも修行じゃ。なに、住居が決まったら連絡するから心配するな。とは言え、まだ予約時間まで少し間があるか」

 重々しくそう言ったかと思うと、師匠はスマホを慣れた指裁きでいじくりつつ、楽しげに言う。

「さて、せっかく日本に来たんじゃから、昼はやはりSUSHIを食べたいのう。食べログでは、この店など評判がよさそうじゃが」

「師匠、どこまでもお供します!」

 弾むような足取りで去って行く師匠達とは裏腹に、残されたおいら達の間にはなにやら冷たい緊迫感が漂う。
 特に、女の子達――ミンミンとリー・ロンの間に!

 ミンミンはすでに泣き止んではいたものの、とてもそれを喜べる余裕なんか無かった。

 だって、ミンミンの目ときたら!
 刺すような鋭い視線で、リー・ロンを睨んでいる。もっとも、リー・ロンだって負けちゃいない。

 挑発的な笑みを浮かべ、悠然と彼女を睨み返している。……な、なんか、怖いんだけど。

 意味不明な睨み合いの後、先に動いたのはリー・ロンだった。相変わらずの動きの速さで、いつの間にかおいらの横に回り込んだリー・ロンは、当然のように腕を組んできた。

 ちょうど、ミンミンが掴んでいる方とは反対側の腕を、しっかりと抱きしめるようにして。

「えっ、リー・ロン!?」

 思わぬ密着に、焦らずにはいられない!
 だって、こんだけ近づくとその……っ、腕に柔らかい膨らみが当たっていて! それに、ミンミンとはまた違う匂いがしてくるのも落ち着かない。

「面倒……見てくれるんだろ?」

 少し、照れくさそうに笑うリー・ロンの顔は、以前と違って女の子にしか見えなかった。
 一瞬、息をのんだおいらだけど――その時、反対側の腕をギュッと握りしめる感触があった。

「ワタシならっ、ナムに迷惑かけたりしないアルネ! ナムのお世話だって、してあげるアル!」

 必死に言いつのるミンミン……それはいいけど、こっちの腕にもなんか柔らかい膨らみがっ。左右の腕を襲い来る柔らかさとは裏腹に、二人の少女達の口調には棘が生えまくりだった。

「はあ? おまえ、いったい何者だよ? ナムの知り合い?」

「ワタシはこの前、ナムに助けられたネ! ナムはキョンシー達から、命がけでワタシを守ってくれたアルヨ!」

 い、いや、別に命まではかけてないけど……と、言えるような雰囲気じゃ無かった。

「へーえ、ただ助けられただけってこと? なら、オレの方が親しいよな。なんせ、あんなことまでしあった仲だし」

 リー・ロンはなぜか得意げにそう言うが、『あんなこと』ってなんだよ!? あの程度の組み手なら、兄弟子との方がよっぽどやっているよ!

「あ、あの、とりあえず手を離してもらえないかな?」

 だが、二人ともすでにおいらの言葉など全く聞いちゃいなかった。痛いぐらいに腕を掴みつつ、リー・ロンとミンミンは敵に対する目で互いを睨んでいる。
 どうやら、二人ともお互いのことをライバルと認識してしまったようだ。

「だからって、ナムは渡さないアル! うちのおじいちゃんや店にひどいことしたの、忘れていないアル!」

「なんだ、あんたはあの中華料理屋の娘かよ。デパートで騒ぎに巻き込まれて迷子になったどんくさい孫って、あんただったのかよ!」

 二人の睨み合いは、さらに凄まじさを増していく。
 うーん……おいらは頭を抱え込んだ。どーすりゃいいんだ。しかし、恐ろしいことにおいらが悩み込んでいる間も、勝手に話は進んでいた。

「――アタシは、いつまでも待つアルヨ! ナムが一人前の霊幻道士になれる日を、ずっと待っているアル!」

「勝手に待っていりゃいいさ、オレはナムと一緒に行くぜ。オレも一緒に霊幻道士の修行を受けるんだから」

「あ……あなたがそうするなら、アタシも! アタシも霊幻道士になるアルヨ!」

「一緒に行くのはオレだ!」

「アタシアル!」

 二人はおいらを無視して、勝手に言い合いを続ける。柔らかさで腕を包み込むどころか、すでに綱引きのようにおいらの腕を引っ張る二人には、全く手加減というものがない。

 このまんまじゃ真っ二つにされるんじゃないかと思うぐらい痛いっていうのに、ベビキョンは背中で楽しそうにはしゃいでいるし、高虎なんかはすぐ側で爆笑しながら見物しているだけだ! うわっ、役に立たねえ!

 ひえーっ、おいらはいったいどうすりゃいいんだーっ! 誰か、おしえてくれーい!    END 

後書きに続く→ 
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