『誇り高き敗残兵』
  
 

 滝が落ちる轟音だけが、響き渡っていた。
 その音はひどく激しく、荒々しい。まるで全てを洗い流してしまおうとするかのように、水はどんな嵐よりも激しい勢いで上から降り注ぐ。その眺めは圧巻だった。

 そして、その滝の裏側には洞窟があった。
 水しぶきは、その洞窟の中にまで散っていた。
 その激しさにたじろぐように、しぶきが飛ぶ度に小さな蟹や貝などの小さな生き物が慌てて逃げていく。

 だが、その男は微動だにしなかった。
 しぶきを避けようともせず、洞窟の入り口付近に佇んで流れ落ちる水を睨んでいる。

 彼の名は、ハドラー。
 青黒い肌と尖った耳が、彼が魔族だと如実に語っている。長身で筋肉質な体つきと、威風を帯びた堂々とした態度が印象的な男だった。全身に痛々しいまでに大きな傷を幾つも負っているが、それでもその印象は覆らない。

 彼を一目見ただけで、只者ではないと誰もが悟るだろう。
 そして、その印象は間違っていない。

 彼こそが、魔王ハドラー。
 15年前に世界を席巻しようとした魔王であり、ほんの三ヶ月前に復活し再び世界を手中に収めようと魔王軍の総司令だった男だ。

 だが、今の彼はすでに魔王ではない。
 大魔王バーンに公然と反旗を翻し、魔王軍を脱した彼はもはや魔王とは呼べまい。かつては大魔王バーンより直々に鬼岩城を与えられ、数百万を超える数の怪物を率いていたハドラーだが、今の彼には居住などない。

 現在、ハドラーが居るのは、人里離れた滝壺だった。あまりにも奥まった場所にありすぎて、近くに人さえ住んでいないような辺鄙な場所――追っ手や見張りの目から逃れるにはちょうどいいかもしれないが、居住と呼ぶのもおこがましい一時避難場所に過ぎない。

 何の手も入れていない、自然のままの洞窟はいかにも無骨な印象で、人間だとしたらとても住めるような場所ではないだろう。頑強な魔族だからこそ過ごせるが、だからといって居心地の良い場所とはお世辞にも言えない。一時の避難場所としても、お寒い限りだ。

 また、彼に仕える部下も今となってはほとんど失った。
 魔王軍六団長を率いて軍の頂点に立っていた以前とは、比べるべくもないだろう。かつての部下達はハドラーから離反するか、あるいは裏切った。

 大魔王バーンに逆らった今、ハドラーに協力する怪物ももはやいまい。
 仮にもかつては魔王だったハドラーにはそれなりの知己や伝手はあるが、大魔王バーンという絶対的強者に敵対してまで手助けしてくれる者は、まず、いまい。

 言わば、彼は世界全てを敵に回したも同然だ。
 今となってはハドラーの側に残っているのは、彼が生み出した分身体であるハドラー親衛隊のみだ。だが、それとて完全ではない。

 度重なる戦闘の結果、最初は五名いたハドラー親衛隊も、今は残り三人きりになってしまった。
 それに、超魔生物へと無理矢理に身体を改造した結果、ハドラーは魔族の特徴である長寿を失った。今の彼は、余命幾ばくもない。

 全身を覆う痛々しいまでの傷跡を見るまでもなく、彼は敗残兵だった。
 そして、ハドラーが失ったものは、単に地位や寿命だけではない。
 勇者ダイとその父である竜の騎士バランとも、バーンとの戦いにも負け、親衛隊員の犠牲を払って命からがら敵地から撤退したばかりだった。

 己の全てを懸けて戦ったのに、部下ばかりか仕えていた主にまで最初から裏切られていたという事実が、彼の心に何のダメージも与えないはずがない。強靱な意志力で終始、強気で戦いを挑んだハドラーだが、敗北の事実は時間を置いた後の方がじわじわ心を蝕むものだ。

 言ってしまえば、ハドラーは全てを失ったに等しい。
 すでに、超魔生物の特徴である超回復能力すら発動しないハドラーの背中を見つめながら、アルビナスは無言を貫いていた。

 どちらかと言えば無口な性質のシグマはもちろん、口数の多いヒムでさえ何も言わない。

 言えるはずもない――これほどの惨敗の直後に、敗軍の将にかける言葉などあるはずもない。主が心の決着をつけるまで、沈黙を保つのが部下の役目とばかりに、ヒムとシグマは彫像のように動かなかった。

 元々、金属生命体である彼らはその気になれば、いつまでも動かないままこの場で待ち続けられる。

 アルビナスも、それは同じだ。
 だが、身体は文字通り彫像と化したように動きを止めても、その頭脳は忙しく働かせていた。

 女王の駒であるアルビナスは、ハドラー親衛隊のリーダーであり、軍師だ。
 そして、軍師とは不利な戦況でこそ活躍すべき存在だ。損害を最小限に抑え、主の利へと導かねばならない。
 なにが、ハドラーにとって最善なのか――。

 それを模索しながら、アルビナスは頭の中に幾通りもの戦略を思い浮かべる。チェスの練習で、次の打つ手を幾通りも先読みしながら盤面を思い浮かべる打ち手のごとく、アルビナスもまたこの先の未来を思い浮かべていた。

(一番有効な一手は、やはり大魔王バーンに対して、でしょうね……)

 ハドラーの余命を考えれば、まずは延命措置が最優先だ。
 そして、それを可能とできるのは、悔しいが大魔王バーンを置いていないだろう。彼の底なしの魔法力、たぐいまれな知識ならば、現在のハドラーさえも助けられる可能性は少なくはない。

 大魔王の寛大さを思えば、両者の和解は有り得ない話ではない。
 バーンは、驚くほどに器が大きな権力者だ。失敗は三回までは許すと公言しているし、失敗を帳消しにする功績を挙げれば、それ以上の回数の慈悲を部下に与えてくれる。

 もちろん、ハドラーの心理的に最も負担が大きい選択肢ではあるが、そこさえ目を瞑れば最も実現的な選択だ。

 次点として思いつくのは、ハドラーに直接改造を加えたというザボエラの手を借りるというものだが……この案は自分でもあまり有益とは思えなかった。
 ザボエラは、どうにも信用出来ない。

 頭脳だけはずば抜けているようだが、彼には仁義というものがない。二枚舌を平気で使い分け、他者を裏切ることなどなんとも思わないあの小者が、もはや魔王軍の離反者となったハドラーに助力するとも思えない。

 脅しつけて無理矢理、と言う手もなくはないが、その方法にも問題がある。超魔生物の治療は、必ず大幅な外科手術を伴う……つまり、治療する時にはザボエラは無抵抗のハドラーを自由に出来る立場になるのだ。
 この危険性は、軽視できない。

 第三の手は、勇者一行との共闘だ。
 これまで敵対してきた勇者一行だが、ハドラーが魔王軍を離れバーンと敵対した今ならば、共闘の余地はある。敵の敵は味方という格言通り、敵を同じくする者として協力するのはやぶさかではない。

 ただ、これには感情的な問題がつきまとう。
 勇者一行の主力……アバンの使徒達にとって、ハドラーは師の仇だ。バーンに対する敵対という意味で利害が一致したとしても、感情が許すまい。

 なんと言っても勇者一行は若く、まだ子供と言ったような年齢の少年少女達がメインだ、損得ではなく感情で動く危険性も非常に高い。

(さて……どれを選ぶべきでしょうね)

 頭に浮かんだ三つの未来を、アルビナスはさらに模索する。
 もし、協力を申し込んで上手くいった場合、断られた場合と思い浮かべ、さらにその先の手を考える。

 三つだった選択肢が、六通り、十二通りとどんどん枝分かれして増えていく。何十、何百にも広がる戦略を、アルビナスはごく冷静に、飽くことなく構築していく。

 さながら、一本の木が大きく成長して無数の葉を茂らせるように。
 その中には、アルビナス的には避けたいもの、快く賛成できない案もあったが、己の好悪など問題外だ。アルビナスが優先するのは、なにがハドラーにとって有益かという一点に絞られている。

 ハドラーのために。
 それだけが、彼女の思考の全てだ。

 その前には、己の存命や感情すら問題にならない。ただそれだけを考えながら、アルビナスの思考はやはり一番目の策が有効そうだと結論づける。先ほど、何百通りにまで増やした選択肢が一気に三分の一にまで減ったが、それは別にいい。

 どんなに多くの、どんなに魅力的な選択肢を多数用意したとしても、実際に使える選択はたった一つだけだ。あれもこれもと欲張って、全てを選ぶことなどできはしない。

 唯一の選択肢だからこそ、最善手を選びたい。
 バーンの手を借りることを前提にした案の中で、実現可能そうな案をさらに強化し、絞り込んでいく。

 先ほどの作業が木を大きく育てていくのに似ていたとしたら、今の彼女の思考はその逆に等しい。無駄な枝や葉を極限まで切り落とし、美しい花を開花させるのに全力を注がせるように、アルビナスは思考を巡らせる。

 先ほどとは逆に数百ものの戦略が、その半分、さらに半分へと数を減らしていき、最終的には一つの案だけが残る。

 もちろん、それは必ずそうなると決め込んだものではない。相手や勇者達の動き次第に対応できるよう、数百手と考えた戦略を参考にして臨機応変に変化させる余地を残したものだ。

 その案を胸に秘め、アルビナスはハドラーに声をかけようと思った。もちろん、彼の心をないがしろにする気はないが、自分達と違ってハドラーは生身の身体だ。

 いかに改造を繰り返して強化されているとは言え、休息は必要になる。そのためにも声をかけようとした、ちょうどその時、ハドラーが振り向いた。

 その顔を見て、アルビナスは虚を突かれた。
 その表情は、アルビナスが無意識に思っていたものとは、全く違っていた。
 憔悴、屈辱、憤怒、後悔――そんな感情が浮かんでいるのだろうと、アルビナスは思っていた。

 だが、ハドラーの表情にはそんな負の色合いなど微塵も感じらなかった。むしろ何か突き抜けたような、潔いまでの爽快感があった。
 己の部下を見回し、ハドラーは毅然とした声で宣言した。

「……みんな、聞けっ!」

 その声は、さして大きな物ではなかった。だが、それでいてその声には言うに言われぬ気迫が感じられた。
 それだけに、その場の空気がピンと張り詰める。

 それは、戦士としての直感だった。己の指揮官が今後の方針を告げる際、最大限の傾注を向けるのは当然だ。
 だが、ハドラーの口から発されたのは、アルビナスにとって思いもかけなかった選択肢だった。

「オレは最後に戦う相手を……勇者と決めた」







(ああ……この方を、止めることはできない――)

 失望と共に、アルビナスはそう悟らざるを得なかった。
 ハドラー自身の口から勇者ダイと戦うと決めた決意を語られ、それが揺るぎないことを知ってしまった衝撃は、アルビナスに思っていた以上の衝撃を与えた。

 ハドラー本人が命と引き換えにしても、勇者ダイと戦いたいと宣言したのであれば、助命のための策など何の意味もない。
 それでもアルビナスはハドラーのためを思って食い下がろうとしたが、ヒムに止められた。

 不思議なことに、ヒムもシグマも、ハドラーの意見に異を唱えなかった。それどころか、ヒムはハドラーの心理に強く共感しているようだった。無言ながら、シグマも彼らに賛同しているのが仲間であるアルビナスには手に取るように分かる。

 その差異が、アルビナスには理解できなかった。
 自分も彼らも、ハドラーのために動く駒という点では何の変わりもないはずなのに。

(私が、女――だから……?)

 駒には性別などないと言うのがアルビナスの持論だが、ちくりとそんな思いが胸の奥に棘を刺す。
 だが、そんな思いを振り払ったのは、独り言のようなハドラーの呟きだった。

「――オレはダイと決着をつける……。今度こそ、誰にも邪魔させぬ」

 それは、まさにハドラーの本音だったのだろう。
 超魔生物となってまで勇者との決着を望んだのに、思わぬ成り行きが立て続きに起きたせいで、未だに彼の願いは果たせない。

 それを聞いて、アルビナスの心は決まった。
 ハドラーの――主君の望みを叶えずして、ハドラー親衛隊を名乗る気などない。

「……承知しました。ならば我らの役目は……勇者以外――つまりは勇者一行のお相手というわけですね」

 この瞬間、アルビナスはこれまで頭の中で組み立てていた多数の戦略を全て捨てた。

「察しがいいな、アルビナス」

 フッとハドラーが笑みを漏らす。

「そうだ。ヤツらは団結して行動することで、よりその力を強める。個々に戦うよりも、集団で戦った方が遙かに強い。それに、ヤツらは仲間の危機を見過ごせる性格でもないからな」

 ハドラーの説明を聞き、アルビナスは小さく頷いた。
 アルビナス自身は見たわけではないが、以前に聞いたことがある。

 ハドラーがダイと一対一の決闘を行った際、その場にいたポップが割り込んで邪魔をしたことがあった、と。その時は、ポップの近くにはミストバーンとキルバーンがいたらしいが、それにも拘わらず彼を抑えることはできなかった。

 おそらくミストバーン達が本気でポップを止める気がなかったのが最大要因には違いないが、それでも仲間を助けようとしたポップの行動力は認めざるを得ない。

 それを思えば、ポップは要注意人物だ。
 同じ条件ならば、ポップは何度でも邪魔をしてくると思った方がいい。それがハドラーにとっては望ましいものではない以上、対策を考える必要があった。

「……ならば、まずは彼らを分散させることですね」

 主君の意向を素早くくみ取り、アルビナスは端的に結論を述べる。だが、騎士シグマは軽く首を横に振った。

「獣王クロコダイン、魔剣士ヒュンケル、魔法使いポップ、武闘家マァム……勇者一行のメンバーは、最低でもこの四人。ただ、人間達はわざわざ群れを作って船を用意させていた……もっと増える可能性が高い。数が合わぬな」

 一見弱気とも思える発言だが、シグマの言葉は落ち着き払っていて淡々としたものだ。

 決して、相手を恐れての発言ではない。ただ、彼は現状を冷静に分析しているにすぎない。
 それに比べ、ヒムはどこまでも強気だった。

「へっ、いくらいようが関係ねえさ。オレはまとめて戦っても、構わねえんだぜ」

 すぐ目の前に敵がいるかのように拳を打ち鳴らすヒムの血の気の多さに、ハドラーもシグマも苦笑して受け止める。

 感情的なヒムは、仲間の中で一番好戦的だ。あまり戦略を考えることは得意ではないが、それを欠点とは仲間の誰もが思ってはいない。彼に一番手を焼かされる立場であるアルビナスでさえ、それは変わらない。

 なぜなら、彼らはハドラーの駒――様々な特徴と個性を持った手駒にすぎない。短所は、別の駒が補えばいいだけの話だ。

「要は、抑えるべきところを抑えればよいのです。ダイは別として、勇者一行で注意すべきは誰だと思いますか?」

 あたかも教師であるかのように、アルビナスはそう質問を投げかける。

「そりゃ、あのヒュンケルって戦士だろ。あいつの技と戦いに関する勘はすげえぜ。ある意味じゃ、ダイ以上だな」

 即答するヒムに、異議を唱える者はいない。
 かつて人間の身でありながら魔王軍六団長の一人に抜擢されたヒュンケルは、紛れもなく凄腕だ。
 それは、この場にいる全員が知っていた。

「あの魔法使いも、曲者だ。彼の魔法をまともに受ければ、いくら我々がオリハルコンで出来ていても、ひとたまりもない。それに、魔法使いは一行の軍師役でもあるしな……」

 シグマも迷わずに、そう答える。
 二人のその答えに、アルビナスは満足そうに頷いた。信頼の置ける仲間と認識を共に出来るというのは、リーダーとしては嬉しいものだ。

「そうです。魔法使いと戦士さえ抑えておけば、問題はありません。シグマ……シャハルの鏡を持つあなたに、ポップを任せます。ヒム、あなたにはヒュンケルを」

「おう!」

「承知」

 一瞬の間も置かず、ヒムとシグマが応じる。
 勇者一行の軍師を魔法使いが担うのだとしたら、ハドラー親衛隊の軍師は紛れもなくアルビナスの仕事だ。

 彼女は戦況を冷徹なまでに完璧に観察し、最も勝率の高い布陣を用意し、必勝を求めて駒を配置する。その能力においては、親衛隊随一だ。
 だからこそ、ヒムもシグマもなんの疑問もなくアルビナスの指示に従ってくれる。

「私は『残り』を引き受けます」

 さらりと言ったその言葉は、確かな自信があるからこそ言える言葉だった。
 実現不可能なことを気軽に口にするのなら傲慢だろうが、確実に実行できることを口にするのは傲慢とは言えまい。

 たとえ、残り人数がいくらいようとも問題ではないとの自信が、アルビナスにはあった。最悪の場合は人間の軍勢だけではなく、バーンの配下……さらには腹心の部下であるミストバーンやキルバーンもそこに加わる可能性があるのだが、それを承知してでも彼女の言葉は変わらない。
 そして、周囲もアルビナスを信じているからこそ、それに反対しない。

 ハドラーの分身とも言うべき三人の親衛隊達の考えは、一致している。主の意思を静かに、そしてしっかりと受け止めていた。
 ほんのわずかな会話だけで今後の戦いの布陣を決定した親衛隊は、恭しく主君に向き直る。

「ご安心を。ハドラー様、どうか心置きなく本懐をお遂げください」

 そう告げるアルビナスの言葉は、本心からのものだった。
 たとえ、それがアルビナス本人にとっては賛成できない選択であり、主君にとって不利益に繋がるとしても、主君の意思こそが最優先だ。
 部下として、ハドラーのために全力を尽くすことに変わりはない。

 先ほどと同じように、アルビナスは今後の戦略について思考を巡らせる。勇者と勇者一行を引き離し、ハドラーに戦いを専念させるためにと選択肢を木の枝のように広げていく。
 再び、彼女の思考に大木が茂っていく。

 だが――木には目に見える枝や葉だけが全てではない。むしろ、地中に埋もれて見えない根の方がより広く、複雑に伸びて広がっていくものだ。アルビナスの心にも、緩やかに根が生えていく。

 日に目指して進むのは、忠実なる部下として主君の最後の望みを叶えたいと言う思いが。
 そして、誰にも言えない心の奥では、何と引き換えにしてもハドラーを死なせたくないと望む想いが、深く根を下ろす。

 ヒムやシグマには芽生えなかったその根が、なにゆえに生まれたのか。
 親衛隊のリーダーだという自負ゆえか。軍師としての思索からか。それとも……アルビナスだけが女性だからなのか。

 そのいずれとも答えを出せぬまま、アルビナスは思索を続ける。心の枝葉と同じく、心の奥に根を宿しながら――。  END 


《後書き》

 西洋の諺か格言で

『金を失った者は、わずかを失った者。
 名誉を失った者は、多くを失った者。
 希望を失った者は、全てを失った者』

 と言う言葉があるのですが、なんとなく気に入っています。
 この言葉が正しいのだとすれば、この時のハドラーは希望だけは強く持っていたので全ては失ってはいないんだな、と解釈できますね。

 そして、戦いに勝利することによって名誉を回復できると考えていたのなら、ハドラーは最後に自分と望んだ相手と戦って勝つことで、自分の人生は価値のあるものだったと充足感を味わって逝くことができると思っていたんじゃないかと思います。

 と、そんな話とは無関係に、ハドラーと親衛隊達がいる場所がどこなのかさっぱり分からなくて、原作を読み込んじゃいましたよ。

 でも、ハドラーが敗北してから再登場するまである程度間があるせいで、ついつい読み込んでしまっていつの間にか何を探していたのか分からなくなるという、いつものパターンにはまっちゃったり(笑)

 それはさておき、アルビナスの回想シーンでハドラー達が滝壺裏の洞窟にいるっぽい描写があるのですが、果たしてここはどこなのやら。

 最初は死の大地かと思っていたのですが、よくよく見たら滝には植物も生えているので、死の大地っぽくないんですよ。最初は無人島にでも居るのかなと思ったんですが、よくよく考えてみたらあれだけ大きな滝があるのなら、そこそこの山じゃないと無理だと気づきました。

 ならば、まだ人里離れた場所の方がいいかなと思ってそう描写しましたが、未だにあそこはどこだったのかと悩んでいます。


 
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