『天国すれすれの罰ゲーム』
  

 ここは、地獄か。はたまた天国か。
 小さくとも澄んだ泉の畔で苦悩する思春期の少年には、その区別がつかなかった――。





「じゃあポップ、そっちの方を向いていてね。言っておくけど、こっちを見たら承知しないから!」


 きっぱりとそう宣言しながら、マァムはすでに肩に羽織ったマントの留め金を外していた。
 潔いと言うべきか、それとも気が短いと言うべきか。
 こちらが頷くよりも早いその行動に、ポップの方が慌ててしまう。

「わ、分かったけどっ、そんなこと言うならこっちが後ろ向いてからにしろよっ!」

「あら、マントだけならいつ脱いだっていいじゃない」

 何の屈託もないその声を聞いただけで、その表情が浮かんでしまう程度には、ポップはマァムとの付き合いが長かった。

 きっと、マァムは今頃、きょとんとした表情を浮かべていることだろう。ポップがなんで焦っているのか、まるっきり分からない――そんな顔に決まっている。

(くっそぉ、こっちの気も知らないでっ)

 クルッと後ろを向くついでに、ポップは前方――即ち、マァムから少しでも離れる方向へと歩こうとした。
 しかし、控え目な、だが凜とした響きを持つ声がそれを止めた。

「……ダメですよ、ポップさん。そこにいてください。お願いだから、遠くに行かないで……」

 物静かながら、メルルの声にはどうにも抗いがたいものを感じる。
 それは、少女ながら王としての風格を持つレオナの命令とは、全く違う強制力だった。

 可憐で大人しく、常に物静かな少女だからこそ、そんな子の願いを無下にすることがためらわれるのだ。

 レオナやマァムのように勝ち気な少女なら、ポップへの不満をポンポン言いまくってくる。むしろ、少々手加減してくれと言いたくなるぐらいの勢いで文句をまくし立てられるのだが、メルルはそうじゃない。

 メルルは自分の申し出を断られたからと言って、よっぽどのことがなければ不満を言うような少女ではない。
 ただ、悲しげに俯くだけだ。

 その表情を見ていると、まるで自分がとんでもなく無茶なことを言って、か弱い少女に無理強いをする極悪人のような気にさえなってしまう。

(いやっ、この場合は、どー考えたってマァムやメルルの発言の方が非常識で無茶なんだけどなっ!? 無理を言われてんのだって、こっちだしっ)

 自分を正当化するがごとく、必死に心の中でそう鼓舞し、ポップはわざとらしく明るく言い訳した。

「べ、別に遠くに行く気なんか、ねえって。ただよー、あんまり泉の近くにいたらおまえらの邪魔になるかも、だし」

 ポップがそう言った途端、二人の少女の声が全く同時に言った。

「いいえ、まったく」

「邪魔なわけないじゃない」

 台詞が違うから輪唱にはならなかったものの、意味合いは同じだ。
 要するに二人とも、ポップが泉の近くにいるべきだと主張し、遠くに行くことには反対しているのである。性格的には正反対と言える二人なのに、こんなところだけ気があっていると言うべきか。

 せめて、どちらか一人が嫌がってくれているのなら、そこにつけ込んで二対一の過半数を主張できるものを。これでは、ポップ一人が少数派である。
 が、かといって自分の意思も主張せずに素直に大勢(たいせい)に従うには、ポップはあまりにも諦めが悪かった。

「あっ、ほら、でもよー、あんまり泉の近くにいると、水が跳ねたりするかも知んねえだろ?」

 セコくも、バレない程度にジリジリと前進しつつ、ポップはさらに無理のある言い訳を重ねる。正直、今、ポップがいる場所はすでに泉から二メートルほど離れているし、それこそ水鉄砲でも使いでもしない限り、水が跳ねるような場所じゃない。

「何言ってるのよ、そこまで水を跳ね返すような真似なんかするわけないでしょ。ただの水浴びなんだから」

 呆れたように言うマァムの言葉通り、彼女達がしようとしているのは水浴びだった。

 街道から少し離れた所に、ぽつんとあった小さな泉。
 周囲には人家もなければ人影もなく、水浴びをするには絶好のポイントと言えるだろう。

 ――が、ポップ的には賛成は出来ないが。

「別に、なにも今、水浴びなんかしなくっても、明日にゃ次の町へ着くだろ?」

 控え目に反論するポップに、女の子達はまたも声をそろえる。

「だからこそ、じゃない! 町は久々なんだし、綺麗にしておきたいじゃない!」

「次の町はかなり大きいですし、ちゃんとしておかないと……その、恥ずかしいです」

 町から町を旅する旅人にとって、身体の清潔を保つというのは重要問題だ。
 普段の旅路では多少、身体が汚れたからと言って問題は無いが、町や村を訪れる際、あまりに汚れていると疎んじられる。ひどい時は、町に入ること自体を拒否されることも珍しくはない。

 まあ、それも無理はない。
 身なりも整えられないほど困窮した旅人は、大半が強盗や泥棒などの犯罪に染まりがちだ。死ぬか、それとも悪事を働くかの二択しかないのなら、後者を選ぶ人間が多くても何の不思議もない。

 そんな村や町の警戒心を和らげるためにも、旅人の身だしなみは大切なのですよ――そう、ポップに教えてくれたのは最初の師であるアバンだった。

 まあ、正直、毎日髭をきっちりと剃り、洗顔を欠かさないアバンの綺麗好きさは単に個人の好みでやっていたんじゃないかとは思うが、ポップだって適度に身なりを整えるのには賛成だ。

 ましてや、マァムとメルルは仮にも女の子だ。
 ポップ以上に身だしなみには気を遣う方だし、ここ数日は野宿が続いた。一応、水で濡らした布で身体を拭く程度のことはしてきたが、そろそろ水浴びをしたくなる気持ちは分かる。

 分かりはするのだが……しかし、だからといってこの状況はどうにも納得しきれない。

「いや、だから水浴びはいいけどさー……、なんでおれも一緒にいなきゃいけないんだよーーっ!?」

 叫ぶ声は、もはや悲鳴に近い。
 美少女達の水浴びシーン――それは、控え目に言って、男の浪漫だ。茂みの影からこっそりとそれを窺えるのなら、それはとんでもないラッキーというものだろう。

 が、水浴びのすぐ近くにいなければいけないが、絶対に後ろを振り向いちゃダメだなんて立場が、幸運だなんてとても思えない。そんな縛りは、呪いか、いっそ羞恥プレイに近い。

 それぐらいだったら、声や姿が見えないぐらい離れた方が互いに気楽だと思うのだが、二人の少女達は頑なだった。

「だって、いつ怪物が襲ってくるかもしれないじゃない」

「ええ。一応、私が調べたところではおそらくこの周辺に、害をもたらすような怪物は居ないと思いますが……私の能力では、絶対とは言い切れないので用心は忘れないでください」

 占い師のメルルは、占いだけでなく感知の能力にも長けている。
 周囲にどれほど強い怪物がいるか正確に探知できるし、彼女の占いや感知は外れたことなど一度も無いのだが、メルルはいつだって控え目で自信なげな少女だ。

「メルルが怪物はいないっていうのならほぼ大丈夫だと思うけど、いざという時のために近くにいてもらわないと困るわよ」

 怒ったような声音のマァムのその言葉は、正論だ。何も知らない人が聞けば、水浴び中の無防備な女の子の護衛のためにも、近くに男の子にいて欲しい――そう聞こえるかもしれない。

 が、事実は真逆だ。
 この三人の中で、直接戦闘を得意とするのはマァムだけだ。

 怪物が不意打ちしてきた時、先陣を切って戦うのはいつだってマァムだ。情けないことに、魔法を禁じられた今のポップはメルルと一緒に守ってもらう立場だったりする。

 マァムの負担を思えば、できる限り護衛対象者が近くにいた方が楽なのはよく分かる。普段の旅の中でなら、ポップもマァムも負担を考慮して、出来るだけその意に従うようにしている。

 だが、今ばかりは大人しく従ってもいられない。
 なにせ、シュルリ、と控え目な布が擦れる音が聞こえてくるのだから。

(わぁああああっ、まだ話が終わってないのに脱ぎ始めるなよぉおおおっ!)

 微妙な衣擦れの音や、荷物をまとめる音などが、やたらと思春期の少年の煩悩を刺激する。

(えっ、マジ!? マジで脱いでる!? ってか、マジで素っ裸になってんのかよっ!? えっ、おれがこんなに近くにいるのに!?)

 ダイと一緒に旅をしていた頃は、ダイとマァム、ポップの三人で宿屋の同室に泊まったし、あろうことかマァムが自分達の前で平気で下着姿になって仰天したこともあるが、さすがに水浴びともなればそれはレベルが違う。

 いくらなんでも、マァムもポップと一緒に風呂を入ろうなどと考えるわけもなく、むしろ、風呂を覗いたら承知しないからと釘を刺してきたぐらいだ。のんびりとした田舎の村で、全ての住民と家族同様に育ったマァムは男女差の意識が薄いだけで、羞恥心を持っていないわけじゃないのだろう。……多分。

 そして、メルルの方はもっと潔癖で、控え目な性格だ。
 とても男の子の前で水浴びをするだなんて到底思えない少女が、マァムと同じく大胆な行動を取っていると思うと、それだけで落ち着かない気分になる。

 すぐ背後で行われているであろう、天国な光景をつい思い浮かべて、ポップは両手でギュッと鼻を押さえる。なんだか、鼻血が噴き出しそうな気がしたのだ。

 頭がカーッと熱くなったように感じるのは、血が上ったせいか。
 クラクラするようなその興奮に水をぶっかけたのは、やはりマァムの言葉だった。

「それに目を離した隙に、また逃げられたら困るもの」

「う……っ」

 痛いところを突かれ、途端に温度が急転落下した気分だった。鼻血寸前にのぼせ気味だったのが、一気に貧血になったかのようにクラクラする。
 さらには、その冷たさにメルルが追い打ちをかける。

「ええ。ポップさん、もう二度とあんなことはしないでください……」

 心配なんです、と悲しげに付け加えるメルルの言葉を聞いていると、もう、無条件にごめんなさい、こっちが悪かったですと頭を下げたくなってくる。

 ダイを探すために、三人で旅だったのはそんなに前のことではない。
 が、元々、ダイを探すために一人で旅立つつもりだったポップにとっては、二人の女の子は……言っては悪いが足枷もいいところだった。強引に三人で旅をしろと推し進めてきたレオナの手前、仕方なく一緒に旅立ったものの、手頃なところで撒いてしまおうと企んだのは、確かにポップだった。

 二人が水浴びしたくなるような泉を見つけた際、男である自分に内緒でこっそりと離れるように仕向けたのも、その間に脱走を企んだのも、確かにポップにしたことだ。

 その意味で、非は完全にポップにある。
 結局失敗し、マァムにはさんざん文句をいわれ、メルルには涙ぐまれ、平身低頭で謝りまくってやっと許してもらえたと思ったのだが――どうやら二人とも、完全に許してくれたわけじゃないらしい。

「ポップ。言っておくけど、そこから一歩でも動いたら……ただじゃおかないわよ!」

 いささかドスの利いた声で脅しつける声とは裏腹な、ちゃぽんと言う軽やかな水音が聞こえる。
 すでに、泉に入ったらしい。

(ってことは、素っ裸……!?)

 思春期の少年として、ついつい妄想がはかどるのは致し方あるまい。

「出来るだけ、すぐ済ませますから……」

 続いて、水音がさらに大きくなる。

「やっぱり、水浴びって気持ちがいいですね」

「そうね。身体を拭くだけだと、なんていうか、ちょっと物足りないのよね」

「ええ。でも、贅沢を言っちゃえば、お風呂に入りたいなーって思っちゃいますけど」

「それは私もよ。次の宿屋ではお風呂があるといいんだけど」

 はしゃいでいると言うよりは、単に淡々と世間話をしている感じの少女達の会話を聞きながら、ポップはとりあえずその場に胡座をかいて座り込んでいた。精神集中のための瞑想(メディーション)の姿勢だが、その脳内は集中どころではない。

 むしろ精神が霧散しまくって、ともすれば後ろを振り返りたいと思う欲望を抑えつけるのに必死だった。

(うわぁああああっ、なにこれっ、なんだよっ、これっ!? 新手の精神拷問かっ!? それとも新種の修行!? ふ、振り向いちゃいけないっ、振り向かないッ、振り向くべき……って、おれはいったい何に耐えているわけ!?)

 すでに、逃げる方向性に動かないのでははなく、振り返らない方向に動かないよう、努力がシフトしている様子だが。
 脳内でぐるぐる悩むのに忙しいポップに、苛立ったようなマァムの声がかけられる。

「……ップ! ポップったら! 聞いてるの!?」

「え……っ、あ、ああ、わりぃ、聞いてなかった」

 正確に言うのであれば全神経を水音に集中させてしまったせいか、会話はほぼおざなりに右耳から左耳に流れていた。

「もう、しっかりしてよ。ポップも水浴びする? って、何度も聞いてるのに」

「い、いやっ、いいよっ!」

 考えもせず、ポップは否定する。
 今度は立場を変えて、二人の少女達がごく近くにいるのに自分が素っ裸で水浴びするなど、さらに変質的な拷問なんて考えたくもない。

 が、女の子達に比べれば身だしなみを面倒くさがるポップに対して、マァムは面倒見のいい姉のようにやれ顔を洗えだの、耳に裏まできちんと洗わなきゃだめだの、いちいち文句を言ってくる。

 今日も強引に水浴びを進められるかもしれないと恐れたポップは、必要以上の大声で宣言する。

「すぐ、町につくだろ!? あの規模の町なら宿屋も風呂付きだろうし、そこでゆっくり入るよ!」

「そうなの? そう言えば、あの町にはいい宿屋ってあるかしら? 風呂付きの大きめな部屋があるといいんだけど」

 マァムの問いかけに、ポップは珍しいな、と思う。
 彼女は節約家だし、至って質素な性格だ。野宿も嫌がらないし、宿屋に泊まる時も一番安い部屋でいいと考えるような性格である。

 特に、三人で旅をするようになってからは、マァムとメルルで一室、ポップが一室と二部屋に別けて泊まっているため、極力安い宿屋を選びがちだ。
 だが、たまにマァムがいい部屋に泊まりたいと思うのなら、ポップに反論はなかった。

「たぶん、あると思うぜ」

 アバンとの旅の長かったポップは、町の規模から宿屋の見当をつけるのにも慣れている。

 めったに客も来ないような村の宿屋では、専用の風呂がなくてせいぜいがお湯をタライに張るのが精一杯だし、そこそこの宿屋ならば数人が入れる大浴場を用意するのが普通だ。

 だが、地図で見る限り次の町はかなり大きい。それなら、少し高めの宿屋を選べば風呂付きの客室もあることだろう。
 それを聞いて、女の子二人がそろって歓声を上げる。

「わあ、よかった!」

「ええ。これで安心して、見張れますね」

(ん?)

 何かしら不穏なことを聞いた気がして、ポップは思わず聞き返した。

「見張るって、なんのことだよ?」

「もちろん、ポップのことに決まってるじゃない。同じ部屋のお風呂でなら、見張りやすいでしょ?」

 ごく当たり前のように返すマァムの言葉の意味を理解するのに、数拍の時間がかかった。

(えっと……わざわざ高い宿屋で風呂付きの部屋を取って……おれの風呂を見張るって事は……同室前提っ!?)

「えっ、いやっ、ちょっと待てよ! なんだよっ、おれと同じ部屋で泊まるっていうのかよ!?」

 驚きのあまり、つい振り返ってしまったポップの目に、すでに服を着た女の子達が映る。濡れた髪をせっせとタオルで拭いていたマァムは驚いたように目を見開いてから、軽く咎めた。

「ちょっと! 『もういい』って言う前に振り向かないでよね、ビックリするじゃない。まあ、逃げられるよりはいいけど」

(いいんかいっ!?)

 女の子としてそれでいいのかと全力で問い詰めたい気がするが、とりあえずそれは保留とする。
 問題とすべきは、この先のポップのデリケートな男心に深く関わる案件だ。

「そんなことより、同室ってどういうことだよ!? 前に、男女で部屋を別けようって話をしただろ!?」

 その話をした時、マァムは一緒の方が節約になるのにと不思議そうな顔をしたが、メルルが男女別の方が一般的ではないのですかと恥ずかしそうに言い、ポップもそれに乗っかったせいで、そう決定したはずだった。

 が、マァムはきっぱりと言い切る。

「だって、部屋を別けた隙に逃げられたら困るもの。一緒の部屋ならポップがどこかに行こうとしてもすぐに分かるし、もしポップの体調が悪くなってもすぐに対処できるし、いいことずくめじゃない!」

 どこがいいことずくめかと、ポップとしては言いたい。
 ポップが逃げる隙を潰すため、女の子としては隙を作りまくりになっているではないか。

 呆れつつも、ポップはすがるような目をメルルに向ける。
 すでに着替えているメルルはちょっと恥ずかしそうにしているが、ポップは目をそらさずに熱心に訴えた。

「いや、そこはやっぱり常識的に男女別が一般的だろ! メルルだってそう思うよな!?」

 マァムに比べれば、メルルの方が常識的だ。
 小さな村でずっと暮らしてきたマァムは、男女交際の意味合いでは超奥手の箱入り娘だ。それに比べれば、占い師として旅をして暮らしてきたメルルの知識や常識の方がポップに近い。

 当然、この件では賛成してくれるだろうと、ポップは期待を込めて彼女を見つめる。
 が、彼女は顔を赤らめてフッと目をそらした。

「そ、それは、それが常識だと思いますが……今のポップさんを一人にするのは、私も反対、です……」

 今やメルルも、反対意見に回ったらしい。つまり――もう、これは決定事項なのだとポップは絶望した。

 三人で旅するに当たって、多数決を採用すべしと言い切ったのはレオナだった。

 旅ではどうしても揉めることもあるだろうし、そんな時は平和に話し合って決めるべきだ、と。その意見には三人とも賛成したし、これまでだってそうしてきたつもりだが――今になってから、ポップはひしひしとパプニカ王女の悪辣さを実感する。

(ちっくょぉおおおおおおおっ、姫さんにはめられたぁああああーーっ)

 ポップの一人旅を頑として許さなかったレオナは、ポップの無茶を制限するためにマァムとメルルを旅の道連れに選んだ。そして、いざとなれば二人の少女が結託してポップの行動を阻むことまで見越していたに違いない。

 パプニカを離れたら、適当に二人を撒いて逃げようと思っていた自分の甘さを、ポップは痛いほど痛感していた。
 わなわなと小刻みに震えているポップに対して、マァムが優しく声をかけてくる。

「あ、お金の心配ならいらないわよ? 計算してみたんだけど、二部屋を取るよりも少し広めの部屋を取る方が、結局は経済的なの!」

 さも嬉しそうに教えてくれるマァムの励ましは、ポップの悩みを掠りもしていない的外れっぷりだった。

(いや、そんな心配なんかしてない……! つーか、おれ、これからは毎日が罰ゲームになるわけ!?)

 果たして、これは据え膳な天国なのか、はたまた自制心の限界に挑む地獄なのか。
 これから先の三人旅を危惧し、ポップは深いため息をついた――。
   END  



《後書き》
 『泉を巡る攻防』と『奇妙な三人旅』の間の、三人の旅のお話です。まだまだギクシャクしていて、距離を測りかねている三人を書くのはすっごく楽しかったです♪
 アニメでメルルが登場し、彼女の可憐さに感動した挙げ句、メルルが登場する話を書きたくなったのですが……なぜ、こんな話になったんでしょう?(笑)
 また、このお話は変形的なお風呂話でもあります。 お風呂話がすでに何話目になったか、記憶していません(笑)

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