空穂様からの一言「このSSは、りゅう様と山本遊子様に捧げます。」 

 

その提案を聞いた時、その場にいたパプニカ王国の重鎮4名の反応は以下の通りだった。
マリンは、敬愛する姫君からのあまりのぶっ飛んだ提案内容に呆然自失状態。
エイミはなぜか「わかります!理解りますわ姫様!」と我が事のように賛成しまくり。


ポップは怒り心頭なのであろう、声にならず口をパクパクとさせている。
そして、幼少の頃から仕えてきて耐性があるのか、まず真っ先に抗議の声を挙げたのがアポロである。
 

「陛下!正気ですか!というかそんな事、了承いたしかねます!」
「えー?ダメェ?」おねだりするように少し猫なで声で問う様は、もともと美少女なだけにかなり強力ではあるのだが、お堅いアポロには通じなかった。
 

「当たり前です!と、言うか陛下は、王族の責務というのをどのようにお考えか!」
「………」押し黙るレオナに対し、更にアポロは翻意を促すため更に言いつのる。


「確かに、此処のところの流感騒ぎで少々忙しかったので、休みが欲しいというのはわかりますが、何なんですか『ダイ君に看病してほしいから、2〜3日仮病するのであとはヨロシクネv』っていうのは…っ!そもそも―」
しかし後に続いた言葉は


「きゃぁぁぁーっっ、アポロぉーっ」というマリンの悲痛な叫びであった。
(ちょっ、え?これって氷縛結界!ってか姫さん、なんで使えんの?つーかこれ確か伝説の禁呪で、と、とゆーか忠臣手に掛けましたよこの女王様!?)


「ダイジョーブよ…ただのマヒャドのアレンジ版だし」
ポップの心中ツッコミが聞こえたのか、そう返しながら
「でも、皆は人の恋路の邪魔はしないわよネ(はぁと)」と、それはそれはやさしく美しい笑顔で微笑まれる女王様に対して、反論できる勇者はいなかった…。(泣)

 

 

最終兵姫、彼女 (題名)

 

 

パプニカ国女王レオナがお風邪を召したらしい。
軽い風邪なので見舞いなど気遣いは無用とのお達しがあった。
三賢者のお一人アポロ殿も寝込まれてしまったらしい。こちらはひどい風邪だそうだ。
 

今現在パプニカ王宮は上記のような状態で、どこか落ち着きのない様相を呈していた。
何しろ、少し前迄はダイ、ポップ、そしてヒュンケルと歴戦の戦士たちが風邪で倒れ、治まったかと思ったら、今度は女王陛下と賢者アポロである。

(こういう時こそ、気を引き締めねばな…)


ようやく職場復帰できた(笑)ヒュンケルはそう思い自主的に王宮内を見回っていた。
すると、向こうから少し足元がおぼつかない様子でポップがやって来るのが見えた。
 

(疲れているようだな…無理もない)


現在最高指導者であるレオナ、そしてアポロが寝込んだ状態である。それに聞くところによると頻繁に三賢者のマリンがアポロの見舞いに行っており、実質パプニカはエイミとポップの2人で切り盛りしている状態だそうだ。
直後ではないが病み上がりのポップにはきついだろう。
 

「ポップ、大丈夫か?」
「ん…?あ、ヒュンケルか。あ、まあ、うん…」
 

いつものように噛み付くわけではなく、曖昧に言葉を濁すポップの様子に不安が増す。
そこでふと気付く、ポップが来た方向だ。
どうも奥宮、レオナの部屋がある方向なのだ。そして小脇に書類を抱えている。


(姫に指示でも仰ぎに行ったか?それともそれにかこつけて見舞いということも考えられるな。しかし…)


「ポップ、姫の見舞いに行ったのか?」
「あ、ああ、まあな…」
「…姫の具合はどうだ?その、具合が芳しくないのか?」


レオナは軽い風邪と聞き及んでいる。しかし今ポップが見せている表情は、沈んだ様子で心なしか青ざめて見える。
「いやぁ、(具合が)悪いって言うか、なんていうか…」

 

 

話は少し前に遡る。


「だーっっやってられっっかぁーっっ!!!」
 

大量に積まれる書類の数々にポップは切れた。
(大体!姫さんが休んだら仕事が滞るのは当然なんだから、その上アポロさんまで寝込ませてんじゃねーよ!)
 

理由も馬鹿らしければ、更に状況を悪くしておきながら実行するずーずーしさにさすがに恐怖心よりもようやく怒りがこみ上げたようである。
(そーだよそもそも仮病なんだから、仕事ができねーってわけじゃねーじゃん!)


ダイに看病をしてもらうにしても、四六時中共にというわけにもいくまい。何しろ婚約中とはいえ、未婚の若い男女なのだから、やはり就寝時間になればダイは部屋に戻らされるはず。その時にでも処理してもらうように段取りをつければいいのだ。


(よっしゃ!とりあえずこれとこれとこの案件を押しつけてやる!)
書類をひっつかみレオナのもとへ、部屋に向かったポップは―

「うふふvダイ君早く来ないかしら?あ、いけないいけない寝てなくちゃ」
はっきり言って元気はつらつ!これを健康と言わずして何が健康?と断言できるような喜色満面で、現パプニカ王国最高指導者様はベットに横になっていた。
(うふふふー♪どうしようすっごく嬉しい!ああもう具合悪そうにしてなくちゃいけないのに。で、でも、こ、これで少しは進展できるかしら…ドキドキv)


『レオナ、大丈夫?』
『ダイ君、うん少し辛いけど、でもダイ君がお見舞いに来てくれたから…』
『レオナ…ああ、俺が代れればいいのだけれど。』
〈妄想です、乙女補正がかかっております。ご了承ください〉


『さ、レオナ「アーン」して』
『は、恥ずかしいわダイ君…』
『何言ってるんだよ、ほら。』
『ア、アーン』
『クスッ、よくできました』
『んもう!ばか…』
〈ですから実在の人物とは違いますってば〉


『さ、少し寝た方がいいよ。眠るまで傍についててあげるからね』
『うん、ありがとう。…手をつないでもらっていい?』
『フフ、甘えん坊さんだなレオナは。…そんなところが可愛いけどね。』
〈いやもう、筆者もつらいです。(砂)〉


『そう言えば知ってるレオナ?風邪って人にうつすと治るんだって』
『やだ、ダイ君それって迷信よ?』
『んー、でも。試してみない?』
『え、ダイ君…?』
そうして彼の顔が徐々に近づき…


「キャーッッ!どうしましょったらどうしましょ!?駄目よダイ君そんな、いやんもう、んふふふふふv」
ドスドスドス!バキャッ!ゴロゴロゴロ!ゴンッ(何の音かは想像にお任せします)
― その様子を見たポップは、無言でそっと気付かれぬようにドアを閉め部屋をあとにした。

 

回想終わり。


「いやぁ、悪いって言うか、なんていうか…」
さすがに国の最高指導者の狂態を赤裸々に告げるわけにいかず言葉を濁す。


「ありゃービョーキだね。ビョーキ」
「?軽い風邪だと聞いたが?そんなにひどいのか」
「いや風邪じゃなくってね。…っていうか。あー、ひどいのは持病っつーか」
 

「なに?姫は持病を患っておられるのか?」
「おー患ってらっしゃるよー?医者でも治せないっていう不治の病をね?」
「何…!!」


ヒュンケルにとってレオナは敬愛すべき主君として大切な存在である。そんな彼女が病だとしかも不治の、と聞いて顔が真っ青になるほど心配し動揺する。
そんな様を見て、あわててポップは訂正する。


「あ、違う違う!うそだようーそ!ったく、ジョーダンも言えやしねえ。姫さんはダイジョーブだよ!元気だってば!」
「しかし、寝込んでいるのだろう?」


からかわれたことよりも、尚、心配する実直なヒュンケルに、少し鼻白みながら
(さすがに仮病なんですーとはいえねえしなぁ)
「あーまあ、寝てはいるが。あー、えーと、とりあえず安静にしてりゃあ、2〜3日で治るからよ。(てーか、2〜3日で復帰しなきゃストライキ起こしちゃる!)あんま心配するなって!…無駄だから…。」
 

じゃあ俺仕事があるから、いくぜ。そう言い残しポップは去って行った。
やはり尚心配そうな様子のヒュンケルを残して―。

 

 

コンコン。ドアをノックする音がする。
(来たっ!)レオナの胸は喜びにはちきれそうになる。しかし続いて入室の許可を求めたのは、待ち人の声ではなかった。


「失礼します。姫。お邪魔してもよろしいでしょうか?」ヒュンケルである。
「え、ええいいわよ」(何かしら…)


見舞いは無用との通達はしてあるはず、ましてや真面目なヒュンケルがその決定を違える筈はない。何か問題でも起こったのだろうか?と考えてしまう。
「申し訳ありません。見舞いは無用とのことでしたのに…」
そう申し訳なさそうに言う彼の様子に


「いいのよ。か、風邪と言ってもかるいものだし…」
さすがに仮病の為、気弱な声になるが、
「そ、それより何か問題でもあったの?」そう問質す。
「いえ、決してそのようなことは。ただ、その、…少々、心配だったものですから…」
後半部分はかなり小さな声ではあったが、そう聞いてレオナは感動する。


「ヒュンケル…」
「しかしお顔を見て安心しました。思ったよりお元気そうで。」
「うっ…」さすがに良心がズキズキと痛む。
「どうされました?やはりお加減が悪いのですか?」


「い、いいえ大丈夫よ!ええ、もう元気元気!あ、明日にでも仕事に戻るから!」
「どうかご無理なさらずに、ご自愛ください。」
「そ、そう?そうね、じゃああと1日ぐらい…」


今日はもうすでに半日過ぎている。なのに肝心のダイは未だ来ないのである。
心底心配そうなヒュンケルを見て激しく良心が痛むが、やはり当初の目的「ダイ君に看病してもらう」ことに未練が残る。


(ん、もう!ダイ君ったら何やっているのかしら!それともポップ君がちゃんと仕向けてくれなかったのかしら?)
実は、この計画の要はポップなのだ。
ダイが「レオナが風邪」と聞いてお見舞いはまだしも、看病してくれるのかどうか。何しろレオナは女の子、ましてや王女であり普通なら侍女などが看病するのであるからして考えると、「自分が看病する」と我を張るとは思えない。確実を期するためにも侍女たちを遠ざけ尚且つダイに看病に行くように仕向けてくれ、とポップに頼んだのである。


最初はめんどくさいと渋っていたが、「女の子の恋の応援をしてくれないの?ひどいわっレオナ悲しい(怒)」と可愛く言うと一も二もなくうなずいてくれた。むしろコクコクコクと首がもげるんじゃないかというくらいうなずいてくれたのだ。
(あの様子じゃ、下手を打つとは思えないし、実際侍女たちは傍にいないし…ん?)


「あら、ヒュンケルそのお花、お見舞いの品かしら?」
見るとヒュンケルの手には可愛らしい花束があった。
「あ、はいこれは、ダイからのものです。」
「へ…?」

 

 

ポップと別れてもなおしばらくヒュンケルは奥宮へ通じる回廊付近をうろうろしていた。
見舞いは無用と言われている、しかしながらどうも先ほどの、レオナ姫の病状に対してのポップの歯切れの悪い言動が気になってしょうがない。権力者の容体悪化を隠すのは世の常である。もしかしたら実は篤い病なのだろうか?
 

見舞いに行くべきか、どうしようか考えあぐねていると、
「あれ?ヒュンケルどうしたの?こんな時間にこんなところで珍しいね」ダイが声をかけてきた。
「あ、ああダイか…。??ダイ、か?」それまで思案にふけっていたヒュンケルが顔をあげ見たものは―
………


「すまん、その、ダイ、お前こそ何だ?いったいどうしたんだ??」
「オレ?オレはポップに言われてこれからレオナの看病に行くんだ」
「…姫の?」
「うん!なんかレオナ風邪ひいて寝込んじゃっているんだって。だから」
 

看病、ダイの看病。
なるほどだからか―
右脇に見舞いの品だろう可愛らしい花束を持ち。
右手に洗面器ほどの大きさの器に大盛り山盛りのオート―ミールをかかえ。
左脇にはダイにはまだ少し難しいんじゃ?と思われる、たぶんレオナ用にと厳選したんだろう本を数冊はさみ。


左手には氷が浮かんでいる水をたたえたバケツをぶらさげ。(尚且つバケツには頭を冷やすためだろうタオルが、しかしながらバケツにかけてあるので雑巾に見える。)
まあ、そこまではいい。
 

いやよくねーだろ!とポップあたりはツッコムだろうが、かつてその「看病」をその身で受けたヒュンケルだ。とりあえず意図はつかめる。
しかしそれでもなお疑問が残るのだ、それは、
「ダイ、その、差し支えなければお前のその格好の訳を知りたいんだが?…」


「え?だってヒュンケルを看病したお医者さんたちはこんな恰好していたよ?それにえーと、確かカンセンヲカクダイしない為には…ちょっと意味分かんないけど、とにかくお医者さんが言ってたんだ看病する方はこんな恰好をするのが本当は正しい姿なんだって!」
そう言って、雨ガッパを着用し、ゴム手袋を装着し、長靴を履き、目を覆う水中メガネ、そして鼻から顎までを覆うマスクを装備した勇者様は、あやしさ大爆発の完全(自前)防護服という恰好で、(たぶん)にこやかにほほ笑まれた。(と思われる)

 

 

「その、ですね。ダイは看病に来たがったのですが、やはり侍女たちに任せた方がよいと。その方が姫も心安いと思いまして止めました。」
それは必死になって止めた。あの「看病」ではさすがに病状が悪化することは免れまい。
ダイには申し訳ないと思いつつも、さすがにこればかりは許すわけにはいかない。


ダイの方も「だってポップが行けって…」と当初戸惑っていたが、レオナは女性なのだから男であるダイより普段身の周りの世話をしている侍女に任せた方がいいだろうと説得すると納得してくれた。
そして「じゃあ見舞いでも」というのも止めた。あのままの恰好で行こうとしたからだ。


さすがにあの恰好は激しく違うような気がするので〈断言できないところが何というか…〉
とりあえず今日だけは花束を預かり、今度はポップもしくは他の誰かと一緒に見舞いに来るように(たぶんあの恰好は止めてくれるだろう)説得し、引き取ってもらったのだ。


「明日にでも、またお見舞いに来るそうですよ。…姫?」
なぜかその花束を見つめ震えているレオナに、最初は感激しているのか?と思ったのだが、しかし、それが勘違いだと知った時にはもはや、…手遅れであった。

のちに彼は述懐する。
走馬灯を見た。と―。
かの大戦にて何度も死線を潜り抜け「不死身」の名を冠しながらも1度も見たことがなかったそれを引き起こした事象は、…恐ろしくて言えない聞けない書けるわけがない。

 


 空穂様から頂いた、大爆笑確定の素敵SSです! 筆者の拙作「譲れない思い…おまけ編」の、さらにおまけをいただけただけでも嬉しかったのに、さらにはこんなにも楽しい後日談がもらえるとはっvv うわ〜、当たりくじつきアイスのさらに当たりを引いた気分ですよっ!

 乙女妄想に悶えまくるレオナの可愛さに、きらきら度マックスな王子様(笑)ダイに、現実の間違いまくり看病オプションつきなダイ、そして何より不幸なヒュン兄さんと、見所いっぱい! いや〜、楽しい話と感激ものの冒頭のお言葉を、どうもありがとうございましたっ! 

  

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