『魔剣戦士ヒュンケル』(2020.12.12)
《粗筋》 

 ダイのアバンストラッシュを防ぎきったヒュンケルは、高笑う。おまえのアバンストラッシュはまがい物だ、と。
 アバンの教えを受けていたヒュンケルは、大地斬、海波斬、空烈斬を会得していなければ真のアバンストラッシュにならないことを知っていた。

 三日しか修行を受けていないダイも、自分の未熟さに自覚はある。
 そんなダイに対し、ヒュンケルはその程度ならば自分でも出来るとアバンストラッシュを放つ。

 未完成であってもヒュンケルの剣技はダイを上回り、盾を壊した上でダイにダメージを与えた。
 倒れたダイを庇うのは、ポップとマァムだ。

 明らかな魔法の使い手を前にしたヒュンケルは、マントを脱ぎ捨てて言い放つ。
 切り札……魔法を弾く無敵の鎧を使う、と。

 だが、剣こそ身構えていても今のヒュンケルはどう見ても防具は身につけていない。なのに、ヒュンケルは最強の鎧はすでに目の前にあると言う。
 鎧化(アムド)と言うかけ声と同時に、異形の剣が大きく膨らんでヒュンケルの身体にまとわりつき、全身を覆う鎧へと変化する。

 魔法は効かないと宣言されても、ポップとマァムは果敢に魔法攻撃を仕掛けるが、弾かれてしまう。魔法では全く相手にならなかった。

 ポップが倒された後、身構えるマァムに対して、ヒュンケルは特に戦意を見せない。敵でも、女とは戦いたくはないと言うヒュンケルに対し、マァムは必死に言いつのる。

 アバンの教えを説き、考え直すようにと説得するマァムだが、ヒュンケルはそれらを一笑し、アバンの教えに未練などないとばかりに持っていたアバンのしるしを捨てる。
 ショックを受けながらも、それを拾い上げるマァム。

 この期に及んでも諦めていないマァムは、ヒュンケルになぜそんなにアバンを憎むのかその理由を問う。

 それに応じ、ヒュンケルは自分の過去を語り始める。
 それは今から二十年以上前……まだ、魔王がハドラーだった時代、ホルキア大陸は戦乱の最中にあった。魔王軍に壊滅させられた町で生き残っていた赤ん坊――それがヒュンケルだった。

 当時、赤ん坊だった彼を拾ったのは骸骨剣士のバルトス。魔物ではあるが魔王軍最強の戦士であり、ハドラーの覚えもめでたかったバルトスには多少の自由が許されていた。

 そのため、ヒュンケルは地底魔城で魔物に育てられすくすくと成長していった。バルトスを実の父と慕うヒュンケルにとっては、幸せだった記憶だ。
 しかし、15年前のある日、勇者が魔王を倒しにやってきた。
 バルトスはヒュンケルを安全な小部屋に隠し、勇者と戦うために行ってしまった。

 閉じ込められていたヒュンケルは言いつけを守り、遠くに戦いの気配を感じながらもじっと父を待っていた。 
 が、魔王の断末魔を聞いたヒュンケルは、ついに小部屋を飛び出した。
 激しい戦いの名残の残る地底魔城は、すでに勇者に倒されたのか怪物達はいなくなったか、あるいは屍をさらすかだった。

 その中で、ヒュンケルは崩れかけたバルトスを発見する。ヒュンケルの呼びかけに一言だけ答え、骸骨兵士はさらさらと崩れ去ってしまった。
 他の怪物と違い、不死系怪物は魔王が死ねば命をつなぐことはできない――即ち、勇者こそが父・バルトスを殺したのだ……そう告げるヒュンケルに、ダイは言い返す言葉もない。

 ブラスに拾われ、育てられたダイは彼に共感できてしまうからだ。怪物を父と慕う気持ちも、それを失う悲しみも理解できてしまう。

 意気消沈するダイをよそに、ヒュンケルの語りはなおも続く。
 灰となったバルトスの前で号泣していたヒュンケルに声をかけてきた青年……それこそが若き日のアバンであり、魔王を倒した勇者だった。
 魔物に攫われた気の毒な子として、アバンはヒュンケルを弟子としてくれたが、ヒュンケルは密かに復讐心を燃やし続けた。

 彼にとって、父・バルトスを滅ぼしたものは敵……即ち、正義そのものが敵だという結論に達したヒュンケルは、他人に何を言われてもそれを変える気は無い。

 アバンを倒すために磨き上げた必殺技で、ダイに止めを刺そうとするヒュンケル。
 辛うじてポップがダイを連れて避けたため直撃は免れたが、凄まじい威力の技だった。

 ブラッディースクライドと名付けたその技は、ヒュンケルがアバンに卒業を認められた日に完成させたものだった。
 今のダイよりも幼いヒュンケルは、実力を認められアバンのしるしを受けとった。

 しかし、アバンへの恨みを消せなかったヒュンケルは、父・バルトスの仇を討つべくアバンへと斬りかかる。子供とはとても思えない剣の凄まじさに、アバンは反射的に反撃してしまった。
 その結果、ヒュンケルは近くの川へと投げ出されてしまった。

 慌てて川に飛び込みヒュンケルを探すアバンだが、急流はたちまち少年の小さな身体を飲み込みでしまう。
 ヒュンケルを探しながら、アバンは彼の実力に恐れを感じていた。

 勇者と呼ばれたはずのアバンが、手加減する余裕すらなかった。反撃しなければ殺されていたのは、アバンの方だっただろう。
 それでも必死にヒュンケルを探し、その名を呼ぶアバンだったが、ヒュンケルにその声は届かない。

 気を失っていたヒュンケルを不可思議な力で強引に引き上げたのは、ミストバーンだった。
 ヒュンケルはそのまま魔王軍で腕を磨き、アバン打倒に熱意を燃やしていた。

 アバン亡き今でさえ、その心に変化はない。飽くまでダイに止めを刺そうとするヒュンケルを止めるのは、マァムだった。
 攻撃魔法が効かないのならと、魔弾銃でマヌーサを打ち出すマァム。
 途端に周囲が霧に包まれ、複数のマァムが出現した。どれが本物か分からなければ、敵からの攻撃を避けられず、こちらからは攻撃できなくなる魔法だ。

 だが、ヒュンケルは慌てることなく気配を探り、マァムが攻撃する前に肘打ちを叩き込み、彼女を気絶させる。
 圧倒的なヒュンケルの強さを前にして、ダイはそれでも勝機を求める。
 完全に鎧で覆われている中、唯一目元だけが見えていることに気づき、火炎呪文を投げつけた。

 しかし、それも失敗してしまい、ヒュンケルの怒りを買って猛攻を受けることになる。
 ダイの戦いぶりに疑問を感じたポップは、これまで怒りの感情によりダイが紋章を浮かべ、力を引き出していたことに気づき、ダイに怒るようにと呼びかける。

 が、ヒュンケルの過去を知ってしまったダイは、これまでのように怒りを感じることは出来ない。ヒュンケルの闘魔傀儡掌で身動きが封じられたダイは、止めを刺されそうになる。
 
 そこに割り込んできてダイを庇ったのは、クロコダインだった。
 まだ傷も完治していないのにダイを助けに来たクロコダインは、ポップにこの場は逃げるようにと指示を飛ばす。

 ダイとの戦いにより人間の素晴らしさに目覚めたクロコダインは、ダイやポップを殺させたくはないと考えている。強引にガルーダに命令し、ダイとポップをこの場から避難させた。
 そして、クロコダインにはヒュンケルと敵対するつもりもない。

 クロコダインはヒュンケルに人間の良さを説き、説得しようと試みるが、ヒュンケルは頑なにそれを認めず、クロコダインに重症を負わせる。
 戦いが終わってから現れたのは、モルグと呼ばれるくさった死体だった。
 ヒュンケルは部下であるモルグにマァムを人質として捉えておくように命じ、さらにはクロコダインの手当もするように命じる。






 一方、気絶から目を覚ましたダイは、ポップ、ガルーダと共に山の中にいた。負けてしまったとしょんぼりしていたダイ達に、声をかけてきた謎の人物がいた。
 兵士風の格好をした彼は、彼らを見るなりその正体がダイだと見抜き、呼びかけてきた――。 


《感想》

『鎧の魔剣、超カッコイイ〜っ!』
『クロコダインッ、あんた漢だっ』
『ああ、バルトスとの別れが泣けるぅう〜っ!』

 と、今回はどこに一番感動すれば良いのか分からないぐらい、忙しかったですよっ。原作では台詞での説明が多い回だったなだけに、声優さんと演出が滑れば説得力の無い上っ面だけのシーンになるかと心配していましたが、いらない心配でした。

 鎧の魔剣、変身シーンもよかったぁーっ。無駄にキラキラせず、どことなく禍々しさ(笑)を感じる硬質な変身シーン、好みです♪ ぐわっと剣が大きく広がって包み込むシーンが、まるで食べられるかのようで悪役っぽい装着っぷりですね。

 メタリックな鋼鉄の輝き方もまた、好みな感じ。気が早いですが、今からハドラー親衛隊の輝きが楽しみで鳴りません。
 なにより、額の剣の動かし方がアニメだとあそこまで映えるとは思いませんでした。

 兜につけている時は鞭に近く、手に持てば剣、とは原作通りなんですが、鞭状と剣に変化する時の描写があんなに自然で、生き生きとした動きになるとは。剣と鞭を合わせた攻撃というのも、なかなか変化があって良いですね。
 ダイとの戦いぐらいでしかあの戦いは見られなかったですが、もっとあのアクションを見てみたかったです。

 ポップとマァムのダブル魔法攻撃は、見ていて痺れました! いつの間にか息が合っている二人がいいですね〜。
 ただ、メラミとギラ、色が似過ぎていて違う魔法を見ている感じが薄れるから、もう少し区別がつきやすい差が欲しかったですが。

 炎の固まりが飛んでいく,というよりは、炎が線を引いて伸びる演出になっているのが一番の問題な気がしますね。原作ではスピード線の関係でそうなりますが、アニメでは別演出を望みたいです。

 その意味ではこの先、フレイザード戦でメラとヒャドが多用されるのが楽しみですね。

 でも、ポップのマント、燃え方が早過ぎ……ッ。いや、原作通りではあるのですが、せっかくアニメだと動きが出せるんだしマントが燃え始めたのをみてポップが慌ててマントを脱ぐ、みたいなシーンが見たかったです。

 しかし、マヌーサがピンクに包まれるとは……なんだか色っぽい雰囲気に満ちていた気がするのは、果たして邪推!? 目が腐っているせい!? でも、ブラスじいちゃんのホラーティストなメダパニと全然違う〜っ。
 いや、ピンクなマヌーサに不満があるわけではないんですが!
 
 ただ、どうせピンク展開するのならもう少しお色気増し増しでというか、団体マァムハーレムを夢見たくなっちゃいましたので!
 僧侶戦士マァム(色気50%up)が複数で迫ってくるうっふん幻想……ポップなら一発で引っかかってしまいそうだと確信しました♪

 動じないであっさりマァムを気絶させたヒュンケル、すごいなぁ。っていうか、マヌーサって一定時間有効タイプかと思っていましたが、術者が意識を失うと消えるタイプの呪文だったんですね。

 回想シーンでのアバン先生が川に飛び込んでヒュンケルを探すシーンも良かった! っていうか、夢が叶いましたっ。
 原作では川を見つめているだけだったから、なぜ飛び込んで探さないとツッコみたくてたまらなかったんですよっ。

 欲を言えば、先に飛び込んで必死に探すシーンをやった後で、少し時間経過した雰囲気を出して、川から上がったアバンが手加減できなかったことを後悔交じりに思い出すシーンにしてほしかったです。
 説明は大事かもしれませんが、説明以上に心情で物語を追いたいんですよ、ファンとしては!

 バルトスさんの活躍と過去回想に不満はないですけど♪♪♪
 小さいヒュンケルが元気系の少年だったことが嬉しかったり、バルトスさんのちょっと間の抜け……いやいやとぼけた味のある顔がいいですねえ〜。
 死に際の台詞と悲しむヒュンケルに、泣かされました。

 今回のクロコダインとヒュンケルの言い合いも、実に良かったです〜っ。
 声優さんの演技力によっては空々しくなってしまいかねないシーンだっただけにドキドキしていましたが、期待以上の素晴らしさでした!

 クロコダインが人間の良さを説くシーンで、ポップをメインとした回想に思わずジーンとしちゃいました。ダイの負けたことに拘っているような台詞とは裏腹に、クロコダインにとって一番印象的だったのはただの人間なのに自分に立ち向かってきたポップなんだなーと思えて、あらためて感動しましたとも。

 クロコダインと戦うヒュンケルが、人間はいいと諭されて激昂する時、目が一瞬泳ぐ演出が実によかったです!
 迷いがあるが、それを自分で認めたくないが故に強がっている感が、ひしひしと漂っている感じで!

 ガルーダの出番、地味に増えているのにビックリ。
 原作ではクロコダインがどう出現したのか描かれていませんでしたが、アニメでは翼が一瞬閃くことでガルーダでクロコダインがやってきたと示唆していましたね。

 で、ガルーダが空を飛び回ってクロコダインの指示待ちしているのに、萌えました。原作のデルパシーンも好きなのでどっちがいいのかは、未だに迷うところ。
 しかし、クロコダインにガルーダが指示をこまめに出しすぎなのはちょい不満です。

 原作でそうだったように、ガルちゃんには一度の命令で着実に主人の意向を察する賢い鳥さんであって欲しい!
 んでもって、ガルーダでポップを連れていく時、単に座っているだけなのも不満だったりします。

 原作ではポップは明らかに嫌がっていたし、抵抗とまで言わなくても無駄に逃げようとして欲しかったなぁ。

 クロコダインがマァムを最後に見るシーンが略されていたのは、ちょっと……ンというかすごく残念! あそこはやっぱり、入れて欲しかったぁ〜っ。
 ポップにマァムの無事を保証したのに果たせなかったことを気にする律儀さが、めっちゃ好きなのに〜っ。

 そう言えばクロコダインの出血問題、青い血が流れる方向性に決まったみたいですね。目の時の無血っぷりはどうしたと言いたくなるぐらい、ダイに敗北時から出血していましたし,今回などは出血大サービスしまくってましたし。
 クロコダインの血は赤くなかったのかーと、ちょっとがっかり。

 爬虫類も一部を除けば血が赤いパターンが多いから、クロコダインもそうかと思っていたのですが。
 人間を初めとした多くの生物は血液中に鉄分を含んでいるから赤く見えるが、血が青い生物は、血液中に銅の成分が含まれていると聞いたことがあります。

 ……ってことは、出血多量気味のクロコダインは銅の含んだ食材がお薦め? うわー、イカやタコぐらいしか思いつかないですね(笑) あ、カタツムリやロブスターも血は青いと聞いたことがあるので、エルカルゴならいけるか?
 意外とおフランスな料理もいいかもしれません。

 最後のバダックさん登場はいいんですが、バダックさんに対して敵かと警戒するダイ達の動きはいいとして、バダックさんの方も警戒を見せてもよかった気がします。
 いくらレオナから特徴を聞いていたとは言え、ダイ君かと気づくのが早過ぎでは? 指名手配人だって、もう少しは検証に時間をかけそうな気がします(笑)
 
 最初から無事かと聞いていますが、あの時点でバダックさんから見れば、なぜか怪物と一緒にいる変な子供×2なので、警戒するか、もしくは怪物に襲われそうになっていると思いそうな気も。

 バダックさんの正義感なら、見知らぬ子供でも助けようと無謀に突っ込んでんできそうだし、原作では見ることの出来なかった『いかにダイとポップがバダックさんに信用されたのか』を見たかったです〜っ。

 

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