『凍れる時間の秘法』(2021.8.6)

  

《粗筋》
 
 フラフラと頼りなげな足取り……だが、落ち着き払った態度でミストバーンの方へ歩いて行くビースト君ことブロキーナ。
 それを、ポップとマァムは戸惑ったように見守る。

 ミストバーンは拳を握りしめ、ふざけた奴だとわずかに怒りを滲ませる。しかし、呪法の名を知っているからには只者ではないと警戒を見せるミストバーン。

ラーハルト「あの男、何者だ?」

ヒム「なんだ、あいつ、回復要員じゃなかったのか」

 ポップは老師を心配し、無茶だと声を張り上げて必死に止めようとする。

マァム「老師……」

 心配そうながらも、比較的落ち着いて師を見送るマァム。

ミストバーンの前まで歩を進めたブロキーナは、静かに声をかける。語りかける相手は目の前にいるミストバーンではなく、後ろにいるポップだった。

ブロキーナ「頼んだよ……ポップ君」

 ポップへ呼びかける瞬間、軽い口調が真剣味を帯びたものになる。次の瞬間、ブロキーナの身体から白い闘気が立ち上った。傍目からでも目視できる闘気に、ハッと目を見張るポップとマァム。

 ミストバーンもまた、闘気を込めた一撃をブロキーナに放つが、彼は上に跳んでその攻撃を避けた。ふわっと空中に飛び上がったブロキーナは、余裕にも一回転を決めた上で、ミストバーンの前に着地する。それも、最初に立っていたよりも近づいた位置だった。

 落書きじみた描かれた顔からは表情が読めない。ミストバーンはわずかに不快を見せ、ブロキーナに殴りかかった。それを、大きく跳んで避けるブロキーナ。
 続いて放たれるミストバーンの攻撃も、老師の身体に掠りもしない。ブロキーナはミストバーンの頭に手を突いて、彼を飛び越える回避まで行って見せた。

 頭上のブロキーナに向かって拳を突き上げるミストバーンだが、なんと、そこまで接近しているのに当たらない。逆に、ブロキーナの蹴りがミストバーンの顔を捕らえる。

 しかし、全く効いた様子もなく、ミストバーンは手刀で連続的な攻撃を続ける。空を割く直線的な種痘を、ブロキーナは軽々と避けていた。その軽やかな動きにはゆとりがあり、まだ全力を出していないと言わんばかりに常に相手の先手を取り、死角へと避けていく。

 その動きの特異性に、ミストバーンも気づいていた。
 仲間でさえ、ブロキーナの動きに驚きを隠せない。

チウ「す、すごいや!」

クロコダイン「まるで、一本の羽毛を相手にしているかのようだ!」

 ラーハルトも、あれほどの動きを習得しているのなら敵に間近にいる方がむしろ安全と納得し、ヒムも格闘の教科書のような戦い方に驚愕するばかりだ。
 器用にまとわりつくブロキーナの動きに苛立ちを見せるミストバーンだが、やはり彼の攻撃は当たらない。

 呆然とそれを見ていたポップは、ヒュンケルに呼びかけられたビクッとする。
 今のうちにと急かされ、慌てながらも分かっていると答え、目を閉じて呪文の準備に入るポップ。
 ポップの身体から魔法力が光り出す。

ポップ(メドローア……メドローア……おれの、メドローアで……ッ)

 いつになく緊張しながら、メドローアの予備動作に入るポップ。が、それを見たマァムはポップの肩に手を掛ける。が、カチコチに緊張しまくり、顔を強ばらせているポップは、それにさえ気づいていない様子だ。

マァム「両方ヒャド出してどうすんのよ!? あんたは!?」

 マァムに注意され、初めてポップは自分が両手からヒャドを出しているのに気づいて、驚きまくる。ポップがそれに気づいた途端、手から一瞬で魔法は消えた。

 鼻水をすすり上げたポップは、情けない顔で自分のプレッシャーを打ち明ける。
 それを聞いて、ハッとした表情を見せるマァム。

 俯いたまま、ポップは自信のなさを訴える。
 ダイやヒュンケルと違って、自分に期待が集まることなんてなかったから、情けないけれど思うように身体が動かないとこぼすポップの手は、震えていた。

 ポップの訴えにマァムは一瞬、沈んだ表情で目線を落とすも、彼女はすぐにポップの腕にしがみつき、強く訴える。

マァム「バカね! それだけ強くなったってことでしょ!? ここまでレベルアップしてきた力を、今使わなくてどうするのよ!?」

 老師まであんなに頑張っていると訴えるマァムだが、チウの悲鳴にポップ共々そちらに目を向ける。
 ついに、ミストバーンの拳がブロキーナの腹を捕らえた。
 背中越しに威力が突き抜ける一撃に、身体をくの字に曲げるブロキーナ。

 その瞬間、ミストバーンは勝ち誇った笑みを浮かべていた。
 ミストバーンの拳の直撃を受けた老師を案じ、思わず声を上げるクロコダイン。
 が、意外にもブロキーナはひょいっと身体を反転させ、何事もなかったように降り立った。

 さすがに驚きを見せるミストバーン。
 ラーハルトも、意外そうに目を見張る。ヒムに至っては、「嘘だろ、おい」と声に出して驚いていた。

 ブロキーナは、自分の鍛え抜いた枯れ木のようなぼでぃは相手の攻撃を吸収し、受け流すと得意満面に解説する。
 殴られた後の残るお腹をさすりながら、ブロキーナは一発受けて確信を高めたと発言した。

 おまえの身体は異様に冷たいと、ミストバーンを指さすブロキーナ。
 わずかに眉を寄せるミストバーンに、ブロキーナは語る。

ブロキーナ「あの時と同じだ……十数年前の、魔王ハドラーと戦った時と」

 その言葉にポップやマァムだけでなく、ヒュンケルやヒムも驚きを見せる。
 なぜ老師がハドラーを知っているのかと驚くポップに、老師わずかに振り返って答えた。
 アバンと共に、前に一度だけ魔王と戦ったことがある、と。

 その言葉に、さらに驚きを見せるポップ達。
 特に、マァムはその目を大きく見開かせる。
 ブロキーナは、その戦いでアバンが一度だけ使った呪法が、凍れる時間の秘法だと語る。






 今から17年前のこと――。
 当時、勇者アバンは戦士ロカ、僧侶レイラを仲間に、魔王討伐の旅をしていた。

 凍れる時間の秘法――その名を聞いた驚きのあまり、テーブルを叩いて立ち上がったのは戦士ロカだった。
 アバンは、カップを口につけながら静かに頷く。そのやりとりに、レイラも耳を傾けていた。

 カップをテーブルに置き、アバンはそれが相手を凍りつかせ永続的に動けなくする呪文だと説明する。凍らされた相手はアストロンをかけられたように身動きが出来なくなり、いかなる衝撃も受け付けなくなる……ただし、アストロンと違って生命活動そのものを止めてしまう。

 身を守る呪文ではなく、敵を封印するための呪文だと説明するアバン。
 それで魔王ハドラーを倒すのかと問いかけるレイラ。
 魔王を殺すことは出来ないが、永久に封じ込めることで地上の平和が戻るとアバンは答える。

ロカ「……地上の平和……か」

 ずっと立ち上がっていたロカが、腰を下ろしながらそう呟く。
 ハドラーと初めて戦ってから研究をしてきた秘呪文だと自信を持って語るアバンだが、チャンスは皆既日食の今日だけだと言う。
 上を見るアバンに釣られ、二人も空を仰ぐ。
 明るく照らし出す太陽が、そこにはあった。

 数百年に一度と言われる皆既日食の、今日だけ――
 突然、ロカが再び立ち上がって大声で笑い出した。アバンの肩をバンバン叩きながら、彼の頭の良さを褒めるロカ。力が強すぎてアバンが痛そうな顔をしてもお構いなしに、おまえの頭の中身にだけは一目をいていたと、機嫌良さげにウインクする。

 聞きようによっては失礼な褒め言葉に、苦笑するアバン。
 ロカは握りこぶしを掲げ、気合いを入れていこうとハッパをかける。全員で数百年に1度のチャンスを掴もうと、天に拳を突き上げてやる気満々のロカ。
 が、アバンは落ち着き払った口調でそれを否定した。

アバン「残念ながら、全員というわけにはいきません」

 それを聞いて、思わずずっこけて倒れ込むロカ。
 が、アバンは真顔で、ロカとレイラをこの戦いに巻き込むことはできないと言う。
 起き上がったロカも、レイラも、それを聞いてハッとする。

 ロカがすぐに激昂し、テーブルに強く手を突いて意味を問いただすが、アバンの落ち着きは崩れない。
 淡々と、パーティー解散を告げる。
 それを聞いて、大きく息をのむロカ。レイラも戸惑いながら、理由を問う。

 アバンは、この秘法が完全に解明されていないこと、魔王にも効果があるだけに術者も余波が及ぶ危険性があることを告げる。
 アバンも凍れる時間の中に巻き込まれる可能性に気づき、顔色を変えるレイラとロカ。

 彼らから少し離れた場所では、買い物をする平和な町人の姿があった。人の良さそうなコック帽の店主から、紙包みを受けとる女性に、お下げ髪の幼い少女の姿が見える。

 そのやりとりを見ながら、平和を勝ち取ってもそれを味わう人がいなければ意味がないと言い、アバンは今回は自分に任せてくださいと言い切った。
 だが、ロカはアバンの胸ぐらを掴み、バカヤローと怒鳴りつける。
 アバンをガクガク揺さぶりながら怒りまくるロカを、木の上から見下ろす二人組がいた。

 若い者達のじゃれ合いを呆れたように、だが、どこか微笑ましげに眺めているのはブロキーナとマトリフだった。
 喧嘩はいつものことだが、ちょっと荒れそうだと言うマトリフ。

 アバンを突き飛ばし、今まで通りに全員で戦うように主張するロカ。荒々しい態度だが、アバン一人を犠牲にするのを嫌がる思いに溢れている。
 苦しそうに喉元を擦りながら、アバンは答える。

アバン「それができないんですよ、ロカ」

 さらに怒りをヒートアップさせるロカに、アバンは芝居がかって手を広げて言ってのける。

アバン「ニブいですよねえ、あなたも。自分の愛する女性のことぐらい、気遣ってあげなくては」

 それを聞いて、思わず変な声を上げ、気をつけの姿勢で硬直するロカ。
 驚いた表情を見せる、ロカとレイラ。
 ロカはギギギと首を慣らしつつレイラの方を見る。レイラもまた、自然にロカを見つめていた。

 頬を真っ赤に染め、互いに目を見交わし合うロカとレイラ。
 ロカはもじもじと人差し指を組み合わせつつ、恥じらう。

ロカ「しっ……知っていたのか、オレ達のこと……」

 が、ロカはハッとしたように、手を大きく前に伸ばして言い訳する。

ロカ「ちっ、違うんだ、オレは別に、こんな女、本気で好きになったわけじゃあ……」

レイラ「こんなぁっ!?」

 不満げに叫ぶレイラに、ロカは力強く頷く。

ロカ「ああっ!」

 が、その直後、顔を強ばらせて両手を振り、今度はレイラに向かって慌てて言い訳しようとする。しかし、その途端、半目でロカを見やるアバンから、半分は遊びだったのかとツッコまれ、さらに言い訳しようとして言葉に詰まり、ドツボにはまる。

アバン「いけませんねえ、責任取らなきゃ。パパになるんだし」

 ロカを指さし、陽気にウインクするアバン。
 元々顔を引きつらせていたロカは、さらに硬直する。驚くレイラ共々、何度か瞬きを繰り返した後、目をひん剥いた表情でレイラを振り向くロカ。
 自分を指さし、目だけでレイラに真意を問うている。
 頬を染めたレイラは、わずかに頷いた。

 その瞬間、ロカの延髄に手刀が打ち込まれる。

ロカ「……て、てめ……え……」

 いつの間にか近づいていたアバンを睨みつけ、そう言ったのを最後に気を失ってその場に倒れ込むロカ。
 レイラはそれを驚いたように見下ろす。

 レイラは、アバンに自分達の子供のことを知っていらっしゃったのかと、恥じらいながら聞く。まだ、ロカにも言っていなかったと言うレイラは、地面に座り込み、気絶したロカを膝の上に抱きかかえていた。

 アバンは、ロカが昔から不器用で意地っ張りだという話をし、手のかかる相手でしょうがよろしくおねがいしますと、彼のことをレイラに託す。
 戦火の中に生まれた子にこそ、優しい名前をつけて欲しい……レイラの肩に手を置きながら、アバンはそう言い残し、去って行った。

マトリフ「ああいう奴さ」

 アバンの後ろ姿がまだ遠ざからないうちに、木の上からマトリフが降ってきて、ピタリと着地する。
 新しい命のために自分の命を懸けるアバンに対し、どっちが不器用なんだかと笑うマトリフ。

マトリフ「てめえだって十分ニブいくせによぉ」

 アバンの背中を見ながら、マトリフは皮肉を言う。
 その背中にダブって見えるのは、アバンの帰りを今も待ち続けているフローラの幻だった

 マトリフは気楽な口調で、任せろという。自分には泣く家族もいないし、なるべくアバンをくたばらせないようにしてやる、と――。

マトリフ「女を泣かさねえのがオレの主義なんでな……」

 茶目っ気を見せてそう言った後、マトリフはいつになく素直な笑顔を見せる。

マトリフ「いこーぜ、ブロキーナの大将」

 歩き出したマトリフの後ろに、ブロキーナが身軽に木から飛び降りた。1度振り返り、無言でレイラに片手を挙げたブロキーナは、マトリフを追って歩き出す。

 仲間達の旅立ちを見送るレイラの目が潤み、涙がこぼれだした。俯いたレイラの頬を、大粒の涙が転がり落ちる。
 アバン達三人は、振り返らずにそのまま真っ直ぐ歩いて行った――。






 砂塵荒れ狂う無人の荒野を、連れだって歩くアバン、マトリフ、ブロキーナ。
 アバンはブロキーナに向かって、謝罪をする。こんな決死の戦いに巻き込んでしまったことを、申し訳なく思っている様子だ。

ブロキーナ「ワシはいいよ〜ん」
 
 手を挙げて軽くそう答えてから、ブロキーナはわざとらしく咳き込み、どうせ病気で長くはないからとうそぶく。
 これには、アバンも苦笑してしまう。

アバン「またまた〜」

 が、すぐに真顔になり、一瞬でもいいから魔王に隙を作ってくれるようにと頼むアバン。それができるのは、世界一の武闘家と呼ばれたブロキーナだかだと考えている。

 少し考え込む素振りを見せてから、ブロキーナは自分自身を指さし、おどけた声でマトリフに話しかける。

ブロキーナ「もしかして、ワシって有名?」

マトリフ「ああ。きっとオレと並んで世界有数の高名老人だね」

 そう言っておかしそうに笑うマトリフだが、不意にその目が鋭く引き締められる。
 アバンも足を止め、前を見据えた。

 マトリフは雑魚はまとめて自分が片付けると、不敵に言い切った。真剣な表情で前を見つめていたアバンは、無言で小さく頷く。
 ブロキーナは前方を見ながら、どこか感心したような声をもらす。

ブロキーナ「ほぉお〜」

 一斉に空に飛び上がり、こちらへと歩を進めてくる怪物の大群が目の前には広がっていた。その中央には黒いローブ姿の男――魔王ハドラーがいる。

ハドラー「フフ……ッ」

 不敵な笑みを浮かべ、堂々と待ち受けているハドラー。
 そんなハドラーを睨むように見ながら、アバンは自分のストラッシュも刀殺法も完成していないと自覚する。

 空に浮かぶ太陽は、この時、すでに欠け始めていた。
 平和を手に入れるにはこれしかないと、決意の表情を浮かべるアバン。ハドラーはゆっくりと手を持ち上げ、怪物達に合図を送る。

ハドラー「フッ……ンッ!」

 途端に、怪物達が一斉に襲いかかってきた。
 迎え撃つように駆け出すアバン。その横を先んじて飛び出したブロキーナの足取りは軽やかで、ふわっとした動きながらあっさりとアバンを追い抜いた。

 牙を振り立てて襲ってくるキラーパンサーを、マトリフは冷徹な表情で見つめていた。
 身体に魔法力の白い光を纏わせ、腕を伸ばしたマトリフは手からベギラマを放つ。

 まともにその直撃を食らったキラーパンサーは悲鳴を上げて吹っ飛ばされた。
 続け様に、マトリフは腕を交差させてバギクロスを放つ。それは、空から襲いかかろうとしたヒクイドリを見事に撃退した。

 ブロキーナは、その時には魔王ハドラーに格闘戦を挑んでいた。
 ブロキーナの拳や蹴りを腕で防御しながら、イオラの魔法を放つハドラー。が、空中に浮かんだ不自由な体勢にも拘わらず、ブロキーナは首を後ろにのけぞらせて魔法を軽く避け、地面に降り立つ。
 と、すかさずブロキーナは伸び上がってハドラーの顔面に拳を打ち込む。

ハドラー「ぐぉっ!?」

 空に浮かぶ太陽は、いつの間にか三日月のように細く欠けていた。しかし、まだその明るさに陰りはなく、怪物達がそれを警戒する様子もない。

 マトリフは二発目のバキクロスでキメラ達を一掃する。
 ブロキーナはハドラーの呪文を空中で回転しながら躱していた。
 仲間達の奮闘の中、アバンは魔法力を最大限に高めようと、目を閉じて集中していた。白い靄のような魔法力が、アバンから立ち昇る。

 通常の魔法とは比べものにならない魔法力は、緩やかな帯のようにくねりながら空へと立ち昇った。
 その時、太陽は最後のきらめきと共に完全に欠け、周囲にわずかな光の輪を残す金環蝕が完成した。

 今や黒円となった太陽から、周囲に白いフレアが強く輝く。
 いきなり夜のように暗くなったことに、ハドラーも驚きを隠せない。

ハドラー「ぬをっ!?」

 暗い闇に閉ざされた世界の中で光を放つ存在は、金環蝕の太陽と地上にいるアバンだけだった。
 アバンが両手を上に上げると、それまで彼の身体をたゆたうように包んでいた魔法力が、円を形取る。
 その輪の奥には、金環蝕の太陽が包み込まれるように存在していた。

 靄のようだった輪は、凜とした光を放つ真円となり、アバンの頭上に輝く。
 これ以上ないぐらいの真剣さと気合いを込めて、アバンは秘術の名を唱えた。

アバン「凍れる時間の秘法!」

 アバンが両手を前に伸ばすと、輪は真正面にいたハドラーの頭上まで一直線に飛ぶ。そして、彼の腰の位置まで下降したかと思うと、次の瞬間、締めつけるようにその輪の幅を狭めた。

 一瞬の出来事に、さすがのハドラーも手の打ちようがなかった。
 激しい魔法直を放つ輪に腰を捕らえられてから、初めてハドラーは驚愕する。

ハドラー「うぉおっ!?」

 悲鳴を上げるハドラーの胴から、ジワジワと凍りついていく。だが、前に伸ばしたアバンの手もまた、指先から凍り始めた。
 ジワジワと浸食するように凍っていく自分の腕を見ながら、自分の力量不足を感じるアバンだが、呪法を止めることはない。
 
ハドラー「アガガガガッ……」

 アバン以上に、ハドラーの凍り方の方は早かった。すでに彼は心臓部分まで凍らされかけていた。驚きに目を見開き、悲鳴じみた声を上げるハドラー。

ハドラー「うぉおおっ!?」

 アバンも苦痛に呻きながら、術を施行する。アバンの氷の範囲は肘にまで達し、見る見るうちに肩へと広がっていく。
 周囲にいた怪物達は、戸惑うような声を上げて逃げ惑う。マトリフは目を見張って、アバンとハドラーを凝視していた。ブロキーナも静かに成り行きを見守っている。

ハドラー「ぐぁあああああっ!」

 顔付近まで凍りついたハドラーが、断末魔を挙げる中、アバンも苦痛に顔をしかめながら必死に術を操っていた。
 その時、アバンが思い出したのは寄り添い合うロカとレイラの姿だった。
 覚悟の決まった目で、真正面を見据えるアバン。
 その目にまで氷の範囲は及んでいた。

 最後の瞬間、彼の脳裏をよぎったのは、穏やかに微笑みかけるフローラの姿だった。
 その微笑みが、白光の中へ溶け込むように消えていく。
 その時、アバンの視界が白く染まる。






 しかし、他人の目からは世界は暗闇に閉ざされていた。
 驚愕する魔王と、両手を前に突き出した勇者が、それぞれの姿勢のままで固まり、微動だにしないまま対峙している。
 風の音だけがやけに耳を突く中、マトリフとブロキーナは目を見張ってそれを見ているしかなかった。


ブロキーナ「ハドラーも……アバン殿も、瞬き一つすることなく停止していた……。それから一年以上もの間、彼らの時間は止まったままだった」

 凍りついた魔王と勇者の頭上で、太陽が先程とは正反対に満ちていき、輝きを取り戻す。立ちすくんだまま、それを見つめているマトリフとブロキーナの後ろ姿。

ブロキーナ「こうして、勇者がもたらしたつかの間の平和が訪れた」







 現実のホワイトガーデン。
 ブロキーナはマァムが自分の元に修行を受けに来た時ほど、運命を感じたことはなかったと語る。

 その場にいる者は、誰もがブロキーナの話に聞き入っていた。ミストバーンすら、攻撃の手を止めてジッと耳を傾けている。
 
ブロキーナ「そう、その時にロカとレイラの間に生まれた子が……マァム、おまえなのだよ」

 わずかに振り返り、ブロキーナはそう告げる。
 老師の名を呼びかけるマァムの目は、潤み、揺れていた。

ポップ(そうか……! 老師も、アバン先生のパーティーの一員だったのか)

 真相を知り、拳をぎゅっと握りしめるポップ。
 ヒュンケルも、やはり只者ではなかったとブロキーナ老師を見つめながら実感する。

 ミストバーンも、老師の説明に納得している様子だった。
 アバンの仲間なら、凍れる時間の秘法を知っていても不思議ではないと呟くミストバーンに、ブロキーナは幾分得意そうだ。

ブロキーナ「ふっふ〜ん♪」

 ポップは凍れる時間の秘法なら、相手は封印されているのではないかと戸惑い気味に尋ねる。術がかかっているなら身動きできないのではと疑問を持つポップに、ブロキーナは自信満々に否定する。

 彼は秘法の力を戦闘に応用しているのではないかと、ブロキーナは判断した。
 やり方は不明だが、ミストバーンは凍れる時間の秘法をかけたまま、自分の意思で動いている……時間が停止した不滅の肉体のまま動いているからこそ、ダメージもなく、物理攻撃も受け付けないと説明する。

 ブロキーナの説明を、仲間達は真剣に聞き入っている。
 ミストバーンは、その説明をその通りだと肯定した。ミストバーンはその説明が死刑宣告を自分で読み上げているも同然だと言い、自らの無敵さを宣告した。

 その結論に、ポップ達は全員そろって息をのむ。
 アストロンがかかったまま襲ってくる敵がいたら絶対に勝てないと思うポップだが、心配要らないとブロキーナが保証してくれた。

 ポップがマトリフから受け継いだ呪文だけは、例外だと語るブロキーナ。
 アバンを犠牲にしてしまった自分の無力を嘆いたマトリフが、最終決戦用に編み出した呪文……

マァム「極大消滅呪文……」

ポップ「メドローア!」

 ブロキーナは、力強く頷く。

ブロキーナ「うん!」

 その時、ミストバーンが前に動き出した。
 ブロキーナを避けるだけの枯れ葉と貶し、ラーハルトの方がまだマシだとさえ言ってのける。
 ポップとマァムはそろって身がまえるが、二人よりも前にいるブロキーナは身動き一つしない。

 動く気配のないブロキーナに、ミストバーンは拳を振り下ろす。
 血相を変えて、師の名を叫ぶマァム。
 それでも動かないブロキーナだったが、拳が当たる寸前、その目がキラリと光った。
 
 サッと身体を翻して拳を避け、自分からミストバーンの懐に飛び込む。その動きにハッとするミストバーンだが、ブロキーナの攻撃は見事に彼の顔を捕らえた。

 身体をぐらつかせるほどの一撃に、ミストバーンも驚きを見せる。

ブロキーナ(ほんの一瞬だけでよい……あの日の力よ、蘇れ!)

 ビースト君の格好をしたままの老師の姿に、ハドラーと戦った時の姿がダブって映る。

ブロキーナ(今再び、次なる世代を救うために……!)

 ブロキーナの身体から、白い靄のように闘気が立ち昇る。ふんわりと床に着地した老師は、すかさず床を蹴ってミストバーンに攻撃を仕掛けた。
 これまで避けの一手だった男とは思えない動きで、続け様に左右の拳を打ち込むブロキーナ。

 ダメージはなくとも、その勢いでミストバーンの顔が歪み、打たれるままに後ろへと下がらされる。
 その動きを、マァムは目を見開いて見つめていた。
 相手がミストバーンでなければ、最初の一発で決まっていたと思えるほど、その猛攻は凄まじかった。

 拳と蹴りを織り交ぜ、息も着かせぬ猛攻を続ける老師の強さを、初めて知るマァム。
 と、ポップの手から炎と氷の魔法が生み出された。

マァム「ポップ!!」

ポップ「……メラメラやる気が湧いてきたぜ。こいつは絶対はずせねえ!」

 気合いを入れるポップの手で、二つの魔法が一回り大きくなる。
 それを呆然としたように見つめたマァムは、すぐに口元をほころばせた。

 先生の仲間達がむちゃくちゃに凄かったのだと思い知り、彼ら先輩のおかげで自分達が生まれてきたんだと実感したポップは、ようやく踏ん切りがついた。
 気合いの入った顔で、魔法力を高めるポップ。

ポップ「ここで決められなくて、なにがアバンの使徒だッ! やってやる……死んでもこのメドローアを、奴にぶちあててやらぁ!」

 ポップの手に、光の弓矢が出現する。
 それを見たヒュンケルが、軽く苦笑した。

ヒム(……立ち直りの早ぇ奴だ。このしぶとさが、なんともアバンの使徒よ!)

 ポップを見守るヒムもまた、その口元に満足そうな笑みを浮かべている。
 が、呪文に集中しているポップは彼らの視線には気づいていない様子だ。

 ポップが準備を調えている間も、ブロキーナとミストバーンの戦いは続いていた。反撃に出たミストバーンの攻撃を、空中をくるりと一回転して躱すブロキーナ。
 そして、身体の向きを変え反対側からまた連撃に打って出る。

 攻撃を受け続ける立場なのは変わらないが、ミストバーンはブロキーナの動きについて行けるようになっていた。ブロキーナの攻撃を腕で受けながら、反撃の拳を打ち込む。

ミストバーン「無駄な攻撃をいつまで続ける!」

 ミストバーンの拳を、ブロキーナは空中で身体を反転させ、ふわりと避けた。

ミストバーン「おのれっ!」

 老師の奮闘の間に、ついにメドローアの準備が整った。
 期待の篭もった目で、ポップを見つめる仲間達。マァムは正面を向き直る。

マァム(老師……ッ!)

ブロキーナ「おおう?」

 ミストバーンとの対決の最中なのに、顔をポップ達の方へ向けたブロキーナは、ミストバーンの拳を避けるついでに彼を蹴飛ばし、その反動で後方へと飛んだ。
 空中で一回転したブロキーナは、真っ逆さまに落下しながら両手で床を突く。

ブロキーナ「武神流、土竜昇破拳」

 ブロキーナが手を突いたところを中心にして、波紋のように衝撃波が輪となって広がっていく。
 
 それを見たマァムは、ポップに今だと忠告する。

マァム「ポップ、今よ!」

ポップ「え?」 

マァム「あの技は地面を拳圧で操るの! 床が爆発して、ミストバーンの身体が宙に舞うわ!」

 ミストバーンの方へ進む衝撃波を見て、気合いを入れるポップ。

ポップ「おし!」

 だが、衝撃波はミストバーンの足元でフッと消えた。一瞬、彼の衣をゆらすが、それだけだった。
 それに驚くポップ。

 ミストバーンはかすかに笑みを見せる。
 表情のないブロキーナの落書きの顔も、心なしか青ざめたように見えた。不発を嘆く老師を、ミストバーンの手がむんずと掴む。

 襟首を掴んで、完全にブロキーナを宙に持ち上げるミストバーン。それを見たマァムは、思わず前へと進み出て師の名を叫ぶ。だが、それ以上は不用意に動けない。

 ミストバーンはゆっくりとポップの方に目を向け、あの呪文なら確かに自分を倒せる可能性があると呟く。
 ぶら下げられた老師は苦しそうに、フルパワー状態は約一分で、年は取りたくないと苦笑し、ハドラーと戦った時よりもさらに短かったとぼやく。

ブロキーナ「あっ!?」

 急に動かされ、小さく声を上げるブロキーナ。
 魔法の弓を引いているポップも、驚いた表情を見せる。視線の先には、ブロキーナを自分の身体の前にかざし、盾とするミストバーンの姿があった。

ミストバーン「せっかくの起死回生の策も、これで終わりだな。それとも、こいつを犠牲にしてまで放つか?」

 師を心配し、悲痛な声で叫ぶマァム。
 しかし、ブロキーナは構わないから撃つようにとポップに指示する。どうせ自分の命など長くないと言う声は、息切れしていていかにも苦しそうだったが、それでも彼は全滅するよりはいいと強く言い切った。

 歯を食いしばり、ミストバーンを睨みつけるポップ。その間も、魔法の弓のコントロールは乱れなかった。

ポップ「……分かってますよ、老師」

 覚悟を決めた顔で、ポップはそう応える。驚き、ポップの方を向くマァム。
 が、前を見据えたポップは彼女を見ようともしない。ポップに呼びかけるマァムだが、それでもポップはそちらを見向きもしなかった。

ミストバーン「ハッタリはやめろ」

 ブロキーナをさらに高く掲げて、自分の顔や胴を完全に隠すようにしながら、おまえ達正義の使徒にそんな真似は出来るかと問いかけるミストバーン。

ポップ「出来るさ! 今のおれになら、出来る!」

 揺るぎない決意を込め、きっぱりと言い切るポップ。そして、一瞬、目を伏せた。

ポップ「そして今度は……おれ達の勝ち取った平和を、老師や先生に味わってもらうんだ!!」

 再び目を開けて、そう言い放つ。その言葉に、疑問を覚えるミストバーン。が、その時にはもう、ポップはメドローアを発射していた。驚愕に目を開く仲間達の目の前で、光の矢が一直線にミストバーンに向かう。
 それに、驚きを見せるミストバーン。

 が、地面に手と膝を突いたポップは、全身から魔法力を光らせてルーラを唱えた。驚くマァムの隣で、ポップは魔法の光を巻いてその場から飛びたった。
 一瞬でミストバーンの眼前に飛び込んだポップは、老師を両手で抱え込み、ミストバーンの顔を蹴り飛ばして、その反動も利用して空中に飛び上がった。

 空中で、得意そうにミストバーンを見下ろすポップ。
 ポップの蹴りでバランスを崩したミストバーンに、ぐんぐん光の矢が迫る。

ヒュンケル(あれはかわせん!)
 
 歯を食いしばりながら、それを見入っているヒュンケル。

ヒム(当たれ……っ、消えちまえ!!)

 声を出さないまま、声援するかのように口を大きく開けるヒム。
 ミストバーンを包み込むように迫る、光の矢。もはや、それからの脱出は不可能だと誰の目にも思えた。

クロコダイン(勝ったぞ!)

 どこまでも落ち着いた表情のまま、光に飲まれようとしているミストバーンの右手が、ふいに強く握り込まれた。動かされた手は炎を纏って無造作に光のを払いのけた。
 ミストバーンの身長を超える巨大な球体の魔法は、呆気なく右上へと払いのけられる。

 払われた光の方向には、未だ空中に浮かんだままのポップとブロキーナがいた。
 驚きに目を見張るポップは、ブロキーナを強く抱え込んでいる。二人の姿は、白光に飲まれ、消えた。

 一瞬、視界が真っ白に染まる。
 城の外壁を突き破って空にまで飛び出した魔法の矢は、外からでもはっきりと目視できるものだった。

 轟音と土煙の中、マァム、ヒュンケル、チウは、頭を守るように身を縮めた。が、ヒムやクロコダインは上を見つめている。
 爆破がある程度落ち着いて上を見上げたマァム達は、目を見張った。

マァム「っ!?」

 そこには、何層もの分厚い壁を円形にくり抜いた痕跡があった。
 消滅呪文の名の通り、魔法の範囲内にあったものを全て消し去ってしまっていた。
 外にまで達した大穴から、風が吹き込む音が大きく響き渡る。

 大きく見開かれたマァムの目は、焦点を失いかけていた。引きつった表情のまま、マァムは口走る。

マァム「老師……ポップッ……!!」

 その呼びかけに、返事はない。
 穴を見上げたヒムも、一言、呟く。

ヒム「消えちまった……」

 誰もが、言葉をなくして頭上を見上げていた。
 呆然とする彼らの目の前で、ミストバーンは炎を纏わせた片手を、高々と掲げ続けた。
 あたかも、己の勝利を祝うがごとく――。


《感想》

 ポップの活躍もさることながら、今回は若き日のアバン達の冒険が垣間見られて嬉しい限りです♪

 ビースト君が歩く際、ペタペタと足音が入っている細かさに驚きました。っていうか、あんなに音がするなんてもしや脂足!?(笑)

 さらに、バーンパレスの石畳が、思いっきりツルツル仕立てなのではないかという疑惑が浮かんできましたよ! 普通のザラついた石なら、裸足で歩いてもあんな音がするとも思えませんし。……さすが大魔王バーンの居城、無駄に豪華さが行き届いていますね(笑)

 ラーハルトとヒムの台詞は、アニメの改変です。
 そう言えば、原作ではなし崩し的に仲間になったものの、二人から見ればビースト君が何者なのか一切情報はありませんでしたっけ。ヒムちゃんが回復要員と思うのも、無理はないです。

 ポップが心配して老師に呼びかけるシーン、手を伸ばして止めようとしているのは同じでも、原作では左向きの顔だったのが、アニメでは真正面を少し上から見下ろしたような構図になっているのが新鮮でした♪

 ここで、マァムも老師に呼びかけるのはアニメの改変ですね。
 ポップの心配が切迫感溢れるものなのに比べ、マァムは心配はしているけれど随分と落ち着いたような感じです。

 ポップはブロキーナの実力を知らず、前に一度会った程度ですがマァムやチウにとってはいい師匠という認識なので、知り合いの老人として心配しているように思えます。

 ブロキーナがポップに頼むというシーン、軽めの前半と、本気の感じられる後半の声音の落差がカッコいいです!

 ミストバーンの攻撃を避ける際、老師がふわっと跳び上がるのは原作通りですが、原作ではそのままストッと着地しているところを、アニメではクルッと回転する余裕を加えています。さすが老師!

 原作でもひょいひょい敵の攻撃を避けているブロキーナ老師ですが、アニメでは動きが想像以上にふわっとした印象で実に良かったです。
 わざわざミストバーンの頭に手をついて飛び越えるシーンはアニメの改変ですが、相手をおちょくっているような動きが実にいいですね。

 原作ではこの時のブロキーナの蹴りは、単に相手に触れている程度の軽い動きに見えましたが、アニメではそれなりに力がこもっているように見えます。にしても、ブロキーナ老師の活躍はカッコいいのですが……足のリアルさがやっぱりイヤん(笑)

 チウとクロコダインの台詞、一部削られていました。

原作チウ「す、すごいや! 全然、敵のパンチが当たんない!」

原作クロコダイン「まるで流れる水……いや、一本の羽毛を相手にしているかのようだ……!!」

 正直、チウ君の台詞カットは惜しくないのですが、クロコダインの台詞はフルで聞きたかったですよ〜。
 あ、ラーハルトの台詞も後半カットされていましたね。
 
原作ラーハルト(渾身の一撃を食らわずに済む道理……!)

 ここはそんなに気にならないのは、やっぱりクロコダインとラーハルトに対するファン度の差なのかもしれません(笑) 好きなキャラには、チャンスあらば出来る限り喋って欲しいんです!

 ポップがヒュンケルに呼びかけられる寸前、ぼーっとブロキーナの戦いを見ている横顔、いいですね。ここもアニメの改編です♪
 原作では呼びかけに驚いた表情から始まっているので、気が抜けたように戦いに見とれているポップの表情があるのは嬉しいです。

 クロコダイン、ラーハルト、ヒムなどはブロキーナの格闘術の高度さが分かるからこそ驚いていましたが、魔法使いのポップにしてみればレベルが違いすぎてその凄さを理解し切れていない感じに見えます。まるで手品でも見せられているような驚きっぷりで、すごく気に入った改編でした。
 ……ついでに言えば、チウの驚き方もポップと大差ない気がします(笑)

 ポップのメドローア準備の動きや表情が細かく改変されていたのは、嬉しくも楽しかったです♪
 原作では引きつった顔の一コマが、真剣な顔から目を閉じる表情、微妙に引きつった表情へと変化する表情豊かさが実にいいですね。

 ポップが弱音をマァムに打ち明けるシーン、アニメのマァムの表情がハッとしたような表情に見えたのが、嬉しかったです。

 原作では、この時のマァムは戸惑いが強くでているように見えて、彼女にとっては、ポップのこのプレッシャーを全く理解できていないようなイメージでした。
 アニメのマァムは、驚きの方がやや強いように見えます。

 ポップが愚痴っぽくダイやヒュンケルの話をするシーンで、ポップとマァムの後ろ姿だったのも、いい感じでした♪
 その間も、ブロキーナ老師が頑張って戦っている光景が映し出されている点や、ヒュンケル、クロコダイン、チウもポップの話を聞いているという改変がとても心強い感じでした。

 原作ではポップとマァムのみの会話だったように見えたので、仲間達はこれをどう聞いていたのか分からなかったのが残念だったんですよ。

 ヒュンケルやクロコダイン、ラーハルトやヒムは真顔で、『何言ってんだ、こいつ』と思いつつも敢えて沈黙している感じなのに対し、チウがちょっと心配そうで『その気持ち、分からんでもないな』と言わんばかりの表情なのが面白かったです。

 マァムとは違う意味で、ヒュンケル達にはポップの悩みを理解できないだろうな〜と思えちゃいます。ヒュンケル達にとっては、ポップの勇気や思い切りへの評価は高いでしょうしね。彼らの視点では、ポップのこれまでの戦いを見ているからこそ、ここで彼が怯む理由が分からないでしょう。

 ここで、唯一ポップの弱気を理解してあげられるのは、逃げだし野郎だった頃のポップを知っているマァムだけだと思います。

 で、チウ君に言ってしまいたい!
 分かった風な顔を見せていますが……君は、最後の頼みにされたことは一度もないでしょうに、と(笑) まあ、本人的にはいつだって主戦力のつもりなのでしょうけどね。

 マァムがポップを励ますシーンの表情の変化も、細やかでいいですね。一度、目線を落とす表情がお気に入りです。ようやくポップの言いたいことを理解して目を落とし、それでも必死に訴えるマァムが実に可愛いですよ♪

 叱責ではなく、ポップに頼み込むような訴えになっているのが、マァムの中でポップの評価が変わった結果だと思えます。

 ミストバーンがブロキーナにパンチを連発する際、肩の動かし方がなんかすっごくボクサーっぽく見えました(笑)
 ミストバーンのボディーブローシーン、これ以上ないってドヤ顔が左右反転していましたね。
 後、ヒムのセリフがカットされていました。

原作ヒム「……ダメだッ! 死んだ!!」

 老師が『ぼでぃ』自慢する時の背景、思いっきり子供のクレヨン画のようでした(笑) 原作では、小洒落たトーン背景だったのに……チウと老師って、落書き背景率が高いですね。
 ついでに、原作でわざわざ老師が『ぼでぃ』とひらがなで言っているのを、声優さんが見事な表現力で演技しているのに感心しました。

 説明時、腕を揃えて振り回しつつ踊るようにして解説していたブロキーナ老師ってば、お茶目さん♪

 魔王ハドラーの名を口にする時、ブロキーナの顔に思いっきり影が入る演出、ホラーっぽくて怖かったです〜。なまじ人形めいた黒丸の目だけに、影を思いっきりつけると一気にホラー色が増しますね。

 ブロキーナがハドラーの名を出した際、原作ではポップ、マァム、ヒュンケル、チウが驚いていますが、アニメではポップ、マァム、ヒュンケル、ヒムが驚いています。
 ハドラーに関係が深いキャラが驚く方が自然なので、チウとヒムが入れ替わったのは納得ですね。

 ブロキーナが魔王と一回だけ戦ったことがあると言うシーン、左右逆転しています。
 それにしても、魔王とは一回だけでも戦えば十分な気がします(笑) アバン先生みたいに、二度、三度と出会う人もいますが。

 アバンの名を聞いて、今度驚いたのはポップ、マァム、ヒュンケル、クロコダイン、チウでした。原作通りですが、よく考えたらチウはアバン先生とは直接面識がない気がします。まあ、マァムやダイ達がアバンの使徒だとは知っていたから、アバンに憧れを持っていたのは間違いなさそうですけどね。

 ブロキーナのアップから、昔の風景をスライドさせるシーンチェンジ演出、いい感じでした。
 ちょっと露出強め風な白っぽい風景が、なんだか童話風に見えてほのぼのしました。

 そこから、焦点が合ったように通常のカラーになったのもいい演出でした♪
 露店風のお店や、テーブルと椅子だけしかない簡易的な食堂風景が原作通り細かく描かれていて、嬉しかったです。
 ロカとレイラが兜や帽子を脱いでいるのも、原作通りですね。

 ロカが登場時、珍しく『戦士 ロカ』のテロップが流れていました。
 カール王国を旅だった時はアバンとおそろいの騎士の鎧を着ていましたが、ここではDQ3の戦士の鎧に替わっています。

 しかし、ピンクの髪に赤い鎧って……(笑) いや、マァムとある意味でおそろいですけどね♪

 『勇者 アバン』『僧侶 レイラ』のテロップも流れていました。
 しかし、アバン先生の鎧、旅立ち時と変化がないような気が……。レイラの服は原作通りですが、濃いオレンジのワンピース風の上着に黒いシャツやスパッツ、青いマントの組み合わせがDQ4のアリーナ姫風に見えてびっくりしました。

 よく見ると細かい差はあるのですが、全体的なカラーや印象がよく似ています。原作では色がなかったので、似てると気がつきませんでしたよ〜。

 アバン先生達が飲んでいるのはてっきり珈琲かと思っていたのですが、アニメだと色が薄い茶色で、紅茶っぽい感じでした。新発見!
 凍れる時間の秘法の説明を砂の落ちる砂時計のカットで表現し、停止の説明時に色を変えて動きを止める演出、よかったです。

 説明途中の、ロカの台詞と腰を下ろすシーンはアニメの改変ですね。原作のロカはずっと立ちっぱなしです(笑)
 ロカにしてみれば、ハドラーを倒すのを目的に親友を助けて旅をしていたのでしょうから、目的を達成できない消化不良を感じつつも、誰もが望んでいる平和の実現を秤に掛けた上での呟きに聞こえます。

 原作ではロカはすぐに喜んでいましたが、アバン外伝漫画を見た後となっては、アニメのように少し悔しさを感じつつも、すぐに気持ちを切り替えて明るく振る舞う姿の方がロカっぽいなと思えました。
 熱く、けんかっ早いようでいて、根は優しい男という印象です。

 三人そろって空を見上げるシーンは、アニメの改変ですね。気が合っている仲間という感じがして、好きです。
 しかし、久々だとロカがものすごく熱っ苦しいキャラに思えます(笑)
 ロカが手を離した後で、アバンが肩を擦っているのを見て笑っちゃいました。

 原作でもコマの片隅で小さーく表現されていましたが、アニメでも再現されているのが嬉しくて溜まりません♪

 拳を上に突き上げるロカを上から見た構図、思いっきりバースのついた大きな拳と言い、謎の決意表明的な表情とポーズと言い、まるで少年漫画の表紙のよう(笑) 勇者以上に勇者なポーズだと爆笑しました。

 ロカのずっこけシーン、原作ではずるっと足を滑らせるシーンでしたが、アニメではスッ転んで背中を地面にぶつける形でコケていました。

 怒ってアバンに問いただすシーン、原作ではロカは握りこぶしを握っていましたが、アニメでは両手をバンとテーブルに叩きつけていますね。
 お店の人がいない場面で良かった……客がこんなに騒いでいたら、絶対に注意しに来ますよ〜。

 アバン先生が秘法の説明をするシーンで、組んだ手が映るシーンがありましたが、そこに映っているカップが気になります。

 遠景では色から紅茶と判断しましたが、アップで見ると上澄み部分がほぼ透明、中間位置が薄い茶色で、下の方が濃いめの焦げ茶になっています。
 なんか、ただの紅茶にしては凝った配色ですね。もしかすると、すぐに下に沈殿するタイプの飲み物なんでしょうか?

 余り詳しくないですが、世界には沈殿するタイプの茶を上澄みだけ飲むようにする文化もあると聞いたことがあるので、ダイ大世界のお茶類もそういうタイプなのかなと想像するのは楽しいです。

 さっきまで無人だった店先に、店主とお客さんが突然出てきたのには戸惑いましたが、いかにも平和な光景っぽくてほのぼのします。紙袋で商品を渡すシシテムは、なんだか昔の買い物風景っぽくていいですね。

 あの紙袋がコロッケのようなものだったとしたら、お客が注文しておいて後で取りに来たのかなと推察。
 ロカが騒いでいた時は、ちょうど母子連れは他の買い物に出かけていて、店主は調理中かなんかで奥に引っ込んでいたと思っておきましょう(笑) 幼い女の子も怯えることがなかったし、そう思えば平和です。

 このシーンはアニメの改変ですが、町の人を見やるアバンの横顔がなんとも優しげで、お気に入りポイントです。

 アバンの決意を聞くなり、アニメのロカは相手の襟首を掴み怒鳴っています。原作では怒鳴ってからつかみかかっているので、アニメの方が手が速いですね(笑)

 ロカの怒りまくる台詞、原作よりも明らかに長いのでアレンジが入っていそうですが、師匠らの台詞に被さってよく聞こえないのが残念!

 アバン先生の飄々とした暴露シーンも良かったですが、ロカとレイラが恥じらうシーンが実に初々しくって可愛らしかったです♪
 レイラよりも乙女に恥じらっていますよ、ロカさん(笑)

 アバン先生がそんなロカを見てくすくす笑うシーンが見られなかったのがちょっと残念ですが、ロカとレイラに絞ったカップルのやり取りが絶妙に面白かったです!

 ロカの言い訳シーン、目を閉じて片手を前に突き出しての言い訳が、歌舞伎の大見得っぽくって楽しかったです。
 「こんなぁ!?」の一言に、女性らしい怒りを滲ませたレイラの声優さんの演技もいいですね。

 顔を引きつらせてジト目で睨みつけるレイラの顔も、いい感じです♪ レイラはマァムに比べて、崩れた顔の少ないしとやかな美女キャラ立ち位置なだけに、彼女の素が垣間見えるこのシーンは貴重です! ……まあ、その後の獄炎連載で、レイラのイメージは思いっきり激変するわけですが(笑)

 アバン先生の皮肉めかしたジト目もいいですね♪
 ロカのアタフタシーンは原作でも好きでしたが、アニメではその動きや声も加わって、実に楽しくて良かったです♪

 気絶したロカをレイラが抱きかかえるシーン、アニメでは木の下に木漏れ日がこぼれ落ちる描写がすごく綺麗でした!
 アバンがロカの台詞を言う時に、彼の声真似っぽく話す演技が実に良かったです。

 正直、この辺りの下りは子供向けとは言い難いだけにカットされるんじゃないかと心配していたのですが、全部そのままやってくれたことにホッとしました。

 アバンの背中にダブって見えるフローラ様、お召し物がっ。原作ではてっきり、襟の詰まったドレスと思っていたのに、アニメでは胸の谷間が見えてしまいそうなほど、大胆に襟ぐりの深いドレスだったことにびっくりです!

 ブロキーナ老師と颯爽と去って行くマトリフ師匠、カッコいい……!
 ウインクシーン、左右逆転していますね。その後に、笑顔のシーンがあるのは嬉しい改変でした♪
 後、原作でも思いましたが、ポップに修行をつけている時のマトリフが猫背気味に見えるのに、17年前はすらっと立っている印象です。

 久々のマトリフ師匠、台詞回しがすっごく渋くて感動しました。ブロキーナ老師の台詞は少ないですが、飄々とした感じが気に入っています。実力派で意外に茶目っ気があるという同じようなくくりの年配者なのに、マトリフとブロキーナの声の印象がガラリと違っているのがいいですね。
 しかし、ブロキーナ老師って、変装していなくてもやっぱり裸足……(笑)

 そう言えば、マトリフのブロキーナへの呼びかけが、原作では「大将」と書いてブロキーナとルビが降ってありましたが、アニメでは呼びかけそのものをを変更していました。

 旅立つアバン達を見送るレイラのシーンで、CM突入。余韻を残す、いい切り替えだと思いました。

 CM後は原作通りにハドラー戦のお話に。
 三人がいる荒野が、青空に無骨な茶色の山肌の見える場所でさらに砂塵も立っている辺り、なんか西部劇っぽい雰囲気だと思いました。

 バーンのいる死の大地が陰鬱な曇り空に尖った岩山だらけなのに比べると、幾分かは牧歌的な気がします。

 ただ、マトリフとアバンの台詞がカットされたのは残念。

原作マトリフ「ヘッ!! おまえもよくよく運のねぇ奴だよな、アバン。最後のパーティーが、野郎一人とジジイ二人とは……」

原作アバン「私はかまいませんが……」

 このやりとり、めっちゃ好きだっただけになくなったのは残念でなりません〜。しかし、このパーティー、平均年齢が凄いことになっていそうですね(笑)

 でも、ブロキーナ老師は年齢不詳な上、ハドラーを殴る腕などは皺一つなく筋肉も程よくついていたので、案外若いのではないかと思えてなりません。ノヴァのように、白に近い髪もこの世界では珍しくなさそうですし、目を隠しているせいで年齢が読めないんですよね。

 敵の待ち伏せシーン、キメラやヒクイドリ、サイクロプスに暴れざる、リカントにマタンゴ、ゴーレムと、DQ1を意識したモンスターばかりなのに感心……しようと思ったら、なぜにヒクイドリ!?(笑)
 まあ、見た目が真っ赤で派手なので、見栄えがするモンスターではありますが。

 でも、原作のこのシーンをよーく見てみたら、ヒクイドリは存在しない物の、DQ1以外の怪物も含まれているので、大差はない気はします。そういえば、暴れざるやマタンゴもDQ1じゃなかったですね。
 DQ1の魔王に拘りつつ、パワー系の怪物を大目にセレクトした感じでしょうか。

 ブロキーナが一言、感心したような声を漏らすのはアニメの改変ですね。原作では無言です。
 台詞でさえない言葉なのに、敵を認めて感心はしても、全く怯えを見せない飄々とした老師らしさを表現したこの改変、すっごく気に入りました♪

 アバンが自分の未熟を思うシーンで、太陽が欠け始める描写が挟まれたのはアニメの改変ですね。原作では、このタイミングでは太陽は眩く輝いていました。

 ハドラーが怪物達に号令を出す動きが、手を下から上へ軽く持ち上げるような動作だったのが、余裕や優位を感じます。
 アバン達を見ても自信満々な彼は、自分が手を下すまでもなくアバン達を始末できるという自信に溢れているように見えます。
 この号令シーンも、アニメの改変です。

 アバン先生の隣をブロキーナが追い越してジャンプするシーンの改変、いいですね! 原作では、老師は四つん這いっぽいポーズでジャンプしているように描かれているのですが……正直、このポーズはかっこよくなかったので(笑)
 ふわっと飛び上がるアニメの動きに感動!

 マトリフに襲いかかってきたキラーパンサーには、ビックリ! つい『え、なぜゲレゲレが?』と思っちゃいました(笑)
 原作では、リカント数匹と暴れざるが襲ってくるシーンでした。

 マトリフ師匠のベギラマ、バギクロスの二連発を見られたのは嬉しかったです! せっかくの集団魔法なんだから、複数の敵をまとめて吹き飛ばして欲しかった気もしますが、原作ではここで使っていた呪文が特定しきれなかったのでバギクロスと分かったのは感激です。

 これでマトリフは、ギラ系、イオ系、バギ系の呪文を極めているのが明確になりました。さすがは大魔道士です♪
 
 ブロキーナ老師のイオラのよけ方が、かっこよかったです。原作でも首を後ろに反らして避けていますが、アニメの動きと角度の方が見栄えがしました。
 マトリフ師匠の二度目のバギクロス、交差した腕を広げるようなアクションでした。

 一度目のバギクロスは腕を×の字に交差する形にして放っていたので、最初からバギクロス二連発を想定した動作だったのかな、と予想。

 アバンの魔法力の放出、めっちゃ綺麗でした!
 原作ではアバンの身体の周りがかすかに光る程度だったのですが、アニメでは白い魔法力がゆるりと空へ昇っていく図が素晴らしく美しかったです!

 上下は逆のたとえになっちゃいますが、アイスコーヒーにミルクを落としたように、緩やかに沈みながら周囲の色を帯状に色を変えて染めていくかのような変化が良かったです。真っ白ではなく、わずかに虹色を帯びているのが、また美しい……!

 金環蝕の表現も、実に綺麗でした♪
 ほぼ夜のように暗くなった世界で、アバンと太陽の光のみが光を放っているのがよかったです。
 怪物達はほぼシルエットで存在感を出していたのも、いい光景でした。

 ホラー映画ならともかく、アニメでものすごく明度を落として画面を暗くする演出は、何が映っているのか分かり憎くなるので余り好きじゃないのですが、明度を極端に落とした場合は、キャラはいっそ真っ黒に染めた方が見やすいものだと感心しました。

 アバンが手を広げたポーズの際、魔法力が輪を作るのもアニメの改変です。
 このシーン、アバンが色を失った白黒で表現されているのもいい感じです♪
 原作ではアバンが秘法を使うシーンは、サイレントな演出で表現されていますが、アニメでは台詞がばっちり入っています。 

 それにしても魔王ハドラーの久々の登場なのに、声がものすごく控え目なのが寂しい……。せめて一言でも、魔王っぽい台詞を聞きたかったです〜。
 
 マトリフやブロキーナが成り行きを見守っているシーン、怪物達が逃げているのがよかったです。原作では驚いたように見ていましたが、秘法が完成した段階で周囲が無人になるのなら、途中で逃げてくれた方が説得力あります。……にしても、ハドラー、この頃から人望がなかったんですね(笑) 誰一人として、彼を助けようとしませんよっ。

 後、ブロキーナ老師……あの暗闇にサングラスじゃ、見えにくくないですか?(笑)

 回想シーンでのロカとレイラが、黄色い背景に点描っぽい丸が描かれていたのに対し、フローラ様の背景は点描は同じでもピンク色でした。
 アバンが最後に想ったのが、フローラ様なのに感動しました。親友と仲間の後に、最後に大切な姫を想う若き日の勇者の純情に胸が震えます。

 ……ダイはこの手の回想シーンには、常にお姫様よりも後に親友を思い出しているのですが、そこら辺がやっぱりお子様な感じがします(笑) いや、それでこそダイだと思いますけどね♪

 アバンとハドラーの時間が止まった後、皆既日食が終わる描写が細かくていいですね! 後ろ姿しか見せない二人の老人が、自分よりもはるかに若い勇者の犠牲をどう見つめているのか……ロマンを感じます。

 その後のポップのモノローグが、改編されていました。

原作ポップ(先生の助っ人をした事があったなんて……!!)

 助っ人だと、一時的に手を貸しただけのように聞こえるので、アニメのようにパーティーと認めた台詞の方が断然気に入りました♪ 
 拳をぎゅっと握るのも、アニメの改変ですね。

 ミストバーンの前で、老師がちょっと得意そうにしているのが可愛い♪
 ポップが凍れる時間の秘法について尋ねる時、ちょっとあやふやな発音で聞いていたのも可愛くて良かったです♪

 老師の説明を聞く際、ラーハルトとヒムがものすごく真剣な表情で聞いているシーンがあったのは、アニメの改変ですね。
 この二人は秘法の真相を誰よりも強く疑問に思っていたでしょうから、真顔で聞いているのも納得です。
 ヒントがつかめたら、即座に戦わんばかりの姿勢がすごくいい感じです。

 原作では老師だけしか出てこなかったシーンですが、ポップやマァム、ヒュンケルやチウ、クロコダインも真剣に話を聞くシーンが入っていたのも嬉しかったです。

 アストロンには勝てないとジト目になっているポップの表情、面白くて笑っちゃいました。

 メドローアの開発秘話を語るシーンで、凍りついたアバンと、メドローアを放つマトリフの回想がでてきたのが嬉しかったです。ここも、アニメの改変ですね。

 原作ではポップとマァムは隣り合ったまま『メドローア』と同時に思い浮かべていましたが、アニメでは漫画のコマのように画面を二分割し、呪文名を二人で分けていました。

 ミストバーンの攻撃が当たる寸前、ブロキーナの目が光るシーン、アニメだとめっちゃ派手でなんか怖っ!

 そして、言いたいです……ミストバーンの顔をぶん殴るシーン、なして下から上を見上げる構図に!? ブロキーナ老師の、見えそで見えない服の裾のひらめきなどは、望まないサービスだったんですが!?
 マァムやレオナならともかく、老師の足の露出度をこれ以上あげないで〜っ(笑)

 ついでに言うと原作では顔にやや腫れが見えて結構痛そうな攻撃だったのが、アニメではミストバーンの顔はやたら綺麗でした。

 老師が力が蘇れと思うシーン、原作ではハドラーと戦う姿が回想として映っていましたが、アニメでは当時のサングラス姿の老師の姿の幻と、今のビースト君が重なるという演出でした。
 ちょうど、黒いサングラスと、ビースト君のまん丸おめめが同じ大きさに重なるのは、見事な演出でしたよ♪

 ポップが立ち直って魔法を生み出すシーン、原作では横顔だったマァムが正面向きになっていたのが嬉しかったです♪
 でも、原作の顔が影になって表情が見えないポップが、次のページでは気合いの入った表情を見せる演出が好きだったので、マァムが呼びかけた時にすでに表情からしてキリッとしていたのは少しばかり残念でした。

 ポップのやる気を見て、戸惑いの表情から喜びの表情に変化するマァムは、大歓迎です♪ 原作では即微笑んでいましたが、アニメならではの表情変化はやっぱりいいですねえ。

 ポップがメドローアを生み出した際、ヒュンケルが目を閉じてフッと笑うドヤ顔はアニメの改変ですね。
 原作でも微笑んでポップを見守っていますが、アニメだと『……やれやれ、ようやくか。まあ、オレにはこうなることは最初から分かっていたけどな』とでも言わんばかりの思いっきりのドヤ顔が素敵です(笑)

 ミストバーンが「おのれ」と苛立つシーンは、アニメの改変ですね。
 一方的に殴られるよりも、空振りの方が腹立たしい様子。……そう言えば、とあるボクシング漫画でも空振りが一番スタミナを消耗しペースを乱されると言っていたのを読んだことがあります。

 ポップが弓の準備を調えた後、仲間達のカットが入りますが、ここのシーンの台詞がカットされていました。
 それぞれの表情や、最後にマァムが正面を向き直る動きは原作のままですが、アニメでは無言になっています。

原作クロコダイン(この一撃にオレ達の命運がかかっている……!!)

原作ラーハルト(無念だが……他に手はない……!)

原作ヒム(頼むぜ!)

原作チウ(はずすなよォ〜〜ッ!!)

原作ヒュンケル(……いけっ! ポップ!!)

 ……ラーハルトとチウ、ポップのことを信用してませんね(笑)
 元敵のヒムが一番、素直な声援に思えます。マァムがきりっと前を向く表情や動きはすごく好きなんですが、せめてポップの名前を呼んであげて(笑)

 老師の土竜昇破拳の動き、思っていたよりも変な動きでした。空中で一回転するのは原作通りなんですが、なんか落下する動きに逆らうような一回転の仕方ですね。
 衝撃波にピンクっぽい色がつき、波のように床を伝って進んでいて、原作よりも動きがよく見えました。
 
 技の説明の絵もすごく分かりやすかったです! 犬のように両手を突いて姿勢の老師からたんこぶのように何かが移動し、ミストバーンに当たった途端、足元から爆発して上に吹き飛ぶという横から見た図、意外と可愛いかったですし。

 マァムの説明は、大幅に変わっています。

原作マァム「ポップ、今よ! ミストバーンの身体が宙に舞うわ!」

原作マァム「地面を拳圧で操るのが武神流土竜拳! 火山が噴火するように、床が爆発して敵を宙へ飛ばす技よ!!」

 原作でも、台詞の重複などがあるなと思っていたので、形容詞を抜いてすっきり仕上げ直した感じです。

 ミストバーンが衝撃波を消滅させるシーン、原作では足を少し踏ん張り、床石が割れる音がする演出でしたが、アニメではミストバーンに衝撃波が到達したらフッと消え、足元から衣へと少しピンクの波が動いたのを最後に消えています。

 ……あの波に、スカートめくり的な勢いがなくて良かったです(笑)
 女性キャラのパンチラシーンは歓迎しますが、男性キャラのそのようなサービスは求めていませんっ。

 ブロキーナが不発を悟るシーン、落書き顔の中央に少しだけ影を落とし、冷や汗を掻かせることで、焦っている彼の心理がにじみ出すのはいい演出ですね。『不発』の台詞が情けなくて、なんとも可愛いです♪

 そういえば、ビースト君の顔は、単純かつシンプルな顔にも関わらず、眉毛はカケアミ、目と口はトーンという、漫画としては手のかかる構成になっていましたが、アニメでは目も口も真っ黒です。
 黒の方がメリハリがあっていいと思うのですが(何より、描くのに楽だし(笑))、あのカケアミとトーンにはなんらかの拘りがあったのかなと、未だに疑問が残っています。

 ミストバーンの台詞『メドローアを決める隙を狙っていたのか』の部分がカットされています。この呪文を受けて『あの呪文なら〜』の台詞に繋がっていたので、前半部分をカットするのなら「あの呪文」ではなく「メドローア」に台詞を変更した方がよかったんじゃないかなと思いました。

 にしても老師、あんなにすごいのに捕まる時はあっさり(笑)
 技術は凄くても、やはり体力のなさが最大問題ですね。そう言えば、マトリフ師匠もハドラーとの魔法合戦の時、体力負けしていましたし。
 
 持ち上げられて、ぶらんと揺れる老師の足は結構可愛く見えました。ほっ。
 それにしても、いったいどこを掴まれているのでしょうね? あの洋服(?)、簡単に脱げない仕組みがアダになっている気分です。
 ぼやくブロキーナ老師、左右反転しています。

 ミストバーンの台詞、原作では『起死回生策』だったのが、アニメでは『騎士再生の策』に改変されていました。これ、目で見るとほぼ印象は同じですが、言葉で聞くと「の」を入れた方が聞き取りやすいので納得の改変です。

 ミストバーンの人質作戦、真上から見た構図が追加されていたのが嬉しかったです。時折挟まれる俯瞰図だと、キャラの位置関係がよく分かっていいですねえ。

 ポップの決意のシーン、いいですねえ。
 驚いて、ポップに呼びかけるマァムの表情も好きです。原作では描写する角度の違いのせいでこのシーンではマァムの腕がどうなっているのか見えないのですが、真横から見せるアニメの構図では、今にも殴りかりそうな身がまえたポーズになっているのが、すごく似合って見えました(笑)

 自分になら出来ると強く言う台詞も、先生や老師達に平和を味わってもらうという台詞も、力強くで心に響きました。
 ハッタリではなく本音をぶつけているように思えて、すごくよかったです。

 メドローアを撃った一瞬だけ、ふわっと時間の流れがスローモーションになるかに見えた演出もいいですね!
 が、すぐに通常の速さで動き出し、クラウチングスタートシーンに繋げる時間の流れが絶妙です♪

 原作ではチウの「ほ! ほ! ほ!! 本当にうったぁ!」の台詞がありましたが、アニメではカットされていました。……まあ、せっかくのシリアスを崩したくないですもんね(笑)

 また、原作ではポップがメドローアを撃った後でミストバーンが老師を盾にする角度を変える動きを見せますが、アニメでは驚く表情を一瞬見せただけでスピード感がいい感じです。

 ポップのクラウチングスタートシーンや、老師奪還新シーン、左右逆転しています。

 原作では、ヒム、マァムが上からの俯瞰気味の構図で驚いていましたが、アニメでは隣にいたマァムを大きく描き、驚かせている演出が気に入りました♪
 ポップの気合いの入り方のせいか、魔法力の光がとっても綺麗です。

 空中でニヤリとするポップのドヤ顔、いいですね。そして、老師がヒロインポジションで寄り添っています(笑)
 メドローアを放ってから、ルーラで追いつくシーンがめっちゃ好きです!

 原作では、ポップがミストバーンの頭を蹴飛ばしたタイミングで、ラーハルトとマァムが、ポップがルーラでメドローアを追い抜いた解説をしていましたが、そこはザックリとカットされています。

 ヒュンケルとヒムのモノローグは、ちょっとスローモーション風の動きなのが良かったです♪
 ところで、ヒュンケルの台詞は原作では『絶対かわせんっ……!』だったのが、改変されています。

 クロコダインも原作では『あの体勢では絶対によけようがない』だったのが、アニメでは『勝ったぞ』と、分かりやすく負けフラグを立てています(笑)

 メドローアを払いのけるシーン、真正面から、真横から、斜め上からの角度で三回繰り返して表現していました!
 メドローア炸裂後、マァムやヒュンケルは爆煙を嫌ってか頭を庇っていましたし、マァムやチウは目を閉じていますが、ヒムやクロコダインは平気でした。

 ヒムは金属生命体だから目まで丈夫そうだし、クロコダインはワニだとしたら、眼球を保護する瞬膜が備わっている設定なのかなと思いました。
 動物には、瞼とは別に目を保護する透明な膜を持っていることが多いですが、水中活動するワニにも当然あります。

 ショックを受けた時のマァムの目が、薄い茶色で表現されていたのが見ていた楽しかったです。
 てっきりポップが消滅時点で終わるかと思ったら、その後のミストバーンの勝ち誇りポーズシーンで次回に続く形になるとは。

 予告、いきなりキルバーンから始まるとは意表を突かれました(笑)
 ヒュンケルがワンシーンだけ出てくる以外は、ほとんどキルバーンとミストバーンの出ずっぱりですね。
 ポップやアバンの秘密が伏せられたままなのに、ホッとしました。
 
 にしても、最後のキルバーンの必殺技シーンが出てきましたが、あれをみているとキルバーンとミストバーンが戦う展開かと誤解したくなります(笑)

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