『閃光のように』(2021.9.24)

  

《粗筋》
 
 夕日が照らす中、バーンが感無量を味わっている時……何者かが声をかけてきた。

???「それはそうだろうなあ。大魔王バーン」

 声の主を求めて、目線を上に上げるバーン。号泣していたポップも、その声は無視しきれなかったのかハッとする。

 








 玉の中にいたメンバーも、驚いていた。
 マァムとアバン。クロコダインにレオナ、チウ。







 見れば、黒い渦が空中に広がり、そこから謎の声が聞こえていた。
 皮肉交じりに、数千年がかりのバーンの偉業を褒める声。

バーン「おお! その声は……」

 かつて、バーンと魔界を二分した男……冥竜王ヴェルザー。
 勇壮な姿の竜と、死の大地をもっと陰鬱にしたような魔界の光景が回想される。
 雷鳴轟く、不吉な魔界の大地……その奥に、光り輝く石の塊があった。まるで灯台のように強烈な光を発する石。
 それは、簡素なほこらに安置された、石と化したドラゴンだった。

 ヴェルザーの名に聞き覚えを感じ、顔を上げるポップ。
 黒い渦に、石となったドラゴンの姿が映し出される。
 かつての敵からの祝辞を、鷹揚に受け止めるバーン。噂通り、魔界から動けないヴェルザーを揶揄するように笑う。

 途端に怒りを見せるヴェルザーに、ハッとするポップ。
 あの戦い――バランとの戦いに、怒りを燃やすヴェルザー。
 バランの攻撃を受けた、倒れたヴェルザー。しかし、不死身の魂を持つ彼なら、時を経て蘇ることができたはずだった。

 しかし、魔界の空に光る三つの点が出現し、ヴェルザーめがけて飛んできた。綺麗なトライアングルを描いたまま飛んできた光は、ヴェルザーを取り囲んだ。

 その正体は、天界の精霊。武力を持たない代わりに不思議な力を使う彼女達は、冥竜王に両手を伸ばし、手から生み出した光でヴェルザーを封印してしまった。

 石となったヴェルザー――その周囲を取り囲むように設置されたほこら。
 バランや精霊に恨みを募らせるヴェルザー。天界の神々の遺産だというのが、また腹立たしい。

バーン「焦ったな」

 余裕の表情を見せるバーン。おかげで、深く、静かに進行できたというバーンに、バーンが地上を破壊しようとしていたからこそ焦ったと打ち明けるヴェルザー。
 ヴェルザーは、地上も欲しかった……!
 その言葉を聞いて、悔しそうな表情を浮かべるポップ。

 だからこそ、バーンの準備が整う前に先手を打ちたいと焦ったヴェルザー。身動きできなくなった今でも、その野望は潰えていないことを笑うバーン。
 そして、ヴェルザーが送ってきた死神・キルの死を告げる。
 驚くヴェルザーに、地上の勇者共に殺された、と――。

 自分を殺させるつもりだっただろうに、アテが外れたなと言った後で、バーンは堪えきれぬように笑う。

バーン「この賭け……どうやら、余の勝ちだな」

 痛いところを突かれたとばかりに、呻くヴェルザー。
 だが、それを聞いたポップの衝撃は大きかった。思わず、賭けだってと叫んだポップに、バーンは目をやる。
 見下すような目だが、それでもバーンはポップの言葉を肯定した。

バーン「……そうだ。我々は元々魔界で対立する立場……だが、その思いは同じだった」

 拳を握りしめ、バーンは吐き捨てる。神々が憎い、と。
 我らを冷遇し、地上の人間にのみ平穏を与えた……奴らの愚挙が許せないと、憎しみを露わにするバーン。

バーン「なれば! 我々のいずれかが神になるのみ!」

 バーンの言葉に、ヴェルザーは黙したまま……だが、それは婉曲な肯定に等しい。
 それを聞いたポップの表情が強ばる。

 そして、数客年前……彼らは敵対を止めた。
 バーンは賭けを持ちかけた。互いに戦略を進め、成功した方に従うという賭けだ。しかし、彼らは完全に信頼しあったわけではなかった。
 身動きできなくなったヴェルザーの代わりに、キルバーンが差し向けられたのが何よりの証拠だ。

 こんな姿になっても、まだ地上を諦めていないらしいなと揶揄するバーンに対して、ヴェルザーは素直に敗北を認める。
 現在の竜の騎士を倒し、太陽をもその手中にしようとしている大魔王バーンの恐ろしさを称賛する。
 
 仇敵からの称賛を噛みしめるように、目を閉じて礼を述べるバーン。
 しかし、その顔には隠そうにも隠しきれない商社の傲慢さがに満ちていた。
 地上が消えるとは言えお前にとっては悪い話ではないと言い、なんなら後に天界に攻め入ってヴェルザーの封印を解いてやってもいいとさえ言ってのけた。

 無言のままのヴェルザー……だが、彼を映し出す画像が歪み、大きく揺らいだ。

バーン「おや、プライドを傷つけたかな?」

 愉快そうに笑うバーン。
 それを聞きながら、床に四つん這いになったままのポップは、がくりと頭を下げる。

 雲の上の会話だと、おののくポップ。
 不死身の魂だとか、神々になるだとか、話のケタが違いすぎる。手が届かなさすぎると絶望するポップ。

 ヴェルザーはダイに目を留め、あれが自分を倒したバランの息子かとわずかながら興味を見せる。
 しかし、倒れたまま動かないダイを目が死んでいると言い、いかにバーンに敗れた後とは言え、不甲斐ない姿だと笑う声と共にヴェルザーの画像がフッと消えた。

ヴェルザー「やはり、バランには遠く及ばぬわ……」
 
 その声を最後に、声も聞こえなくなる。
 その呟きを聞きながら、ダイはほんの少しだけ、反応を見せる。

ダイ(とう……さん……)

 新たな涙が一筋、ダイの頬を伝った。

 バーンはヴェルザーの言葉を負け惜しみと決めつけ、肩を揺らして笑う。
 バーンの判断では、今のダイはあらゆる点でバラン以上。強いて言うのなら、殺気だけは父に劣っている。
 バランのあの底知れない殺気は、他の誰にも真似出来ないものだったと思い出すバーン。
 
 しかし、そんなことはどうでもいいとばかりに、バーンは再び笑い出す。
 どこまでも広がる勇壮な夕日を前に、抑えること無く自分の感情を高ぶらせるバーン。

バーン「湧いてきた……! やっと湧いてきたぞ、実感が!」

 宿敵も、神々の作りし邪魔者も、全てがバーンの下にひれ伏した。これが完全勝利だと、勝利宣言を挙げるバーン。
 風だけが音を立てる中、ポップは聞こえるか聞こえないかぐらいの小声で呟く。

ポップ「……もう……だめだ……」

 ダイは、ただ静かに涙だけを流し続けている。
 周囲が暗く染まったかのように思えた瞬間――少女の叫びが響き渡った。

『諦めないで……ッ!』

 その声に、ポップがハッと目を見開く。

ポップ「その声は……」







 その頃、地上ではピラァ・オブ・バーンから少し離れた岩山に、人影があった。それも、一人や二人なんて数では無い大人数が佇む中に、その少女はいた。
 両手を胸の前に組み合わせた、占い師の少女。







ポップ「メルルッ!」

 遠く離れた場所にいるはずのポップに、メルルは力強く呼びかける。
 諦めないで、と。
 絶望してしまってはダメだと、必死に呼びかけてくるメルルの言葉に、ポップは無意識に腕に力を込め、身を起こす。

 メルルが生きていたことに驚き、みんなの生死を問うポップ。
 突然、一人で誰かと会話し始めたポップを、訝しげな目で見やるバーン。だが、玉の中にいるレオナやアバン、クロコダイン、チウ、マァムは息をのんだ。

 ダイは何を思っているのか、泣くのも止めて呆然としているだけだ。
 フローラは無事かと問いかけるポップ。








 地上では、メルルはポップに無事だと答えながら、すぐ傍らにいるフローラと目を見交わす。
 爆発の直前に、辛うじて避難できたことを告げるメルルを、フローラはじっと見つめていた。

 突然、目を覚まして危機を知らせたメルルに、本当に驚いたと思い返すフローラの表情は柔らかかった。








 バーンパレスでメルルの声を聞いているポップは、戸惑う。
 なぜ、柱が落ちることがわかったのか。そもそも、なぜ自分にメルルの声が聞こえるのか――。








 地上で、メルルは切々と訴える。
 意識を失っている間、なぜかポップの知っていることが全て分かったのだと。だから、ポップの恐怖が最大限に弾けた時に目が覚めた。

 








ポップ(ダイがライデインで粘っている間に、みんな避難できたわけか……)

 それを悟ったポップの表情が、わずかばかりに緩む。
 
ポップ「でも、そんなすごい能力をメルルが持っていたなんて……!」








 地上で、メルルははにかむように目を伏せた。

メルル「きっと……ポップさんの事ばかりを考えていたからなんです」

 色白のその頬が赤らんで見えるのは、きっと夕日のせいばかりではないのだろう。








 驚いて、一瞬だけ顔を上げるポップ。







 恥じらうメルルを見つめながら、フローラはあの時大きく生まれ変わったのはポップだけでは無かったのだと実感する。
 ポップがメルルを抱き上げて回復魔法に目覚めたあの瞬間、メルルも眠れる資質を開花させていたのだ。

 メルルは空を見上げながら、ポップ達の絶望的な状況を理解した上で、諦めないように訴えかける。
 最後の最後まで、望みを失わないで、と――。







ポップ「メルル……」

 思わずのように、メルルの名を呟くポップ。
 その時、バーンが第三の目を光らせ、宙に映像を映し出した。映っているのは、地上にいるフローラやメルル達を含んだ生き残りの人間達だ。

バーン「ほう……確かに逃れておるわ。死期が一瞬、伸びただけだがな」

 無駄だと言わんばかりに、バーンは含み笑う。
 それを聞き、床に着いた両手を強く握りしめるポップだが、言い返しはしなかった。
 代わりに、メルルに向かって力なく話しかける。

ポップ「……そうさ、メルル……おれが見た事がわかっているなら、知っているだろう?」

 本当にダメなんだと呟くポップの肩は、小刻みに震えていた。

ポップ「もう……おれ達の住む世界は……消えてなくなっちまうんだ……!」








 今にも泣き出しそうなポップの声を、メルルは聞き入っていた。







ポップ「ごめんな……! おれ達の力が足りなくて……! でも……、本当に……本当に、どうすることもできねぇんだよ……ッ」







メルル「いいえ! 方法はあります!」








 思いがけない言葉に、ポップは目を見開いた――。







ポップ「まだ、方法が……?」

 その口調は問いかけると言うよりも、到底信じられない言葉をオウム返しに呟いただけのように聞こえた。
 








 しかし、地上からメルルは必死にポップへ訴える。
 そのために、ロン・ベルクとノヴァが柱に向かっていると説明するメルル。

メルル「だから……まだ諦めてはダメッ!!」








ポップ「ロン・ベルク達が柱に!?」

 まだ俯いたままながら、ポップの目がわずかに光を強める。
 聞き覚えのある名に反応したのか、バーンは再び第三の目を光らせて柱の頭頂部を映し出した。








 そこには、両手から氷系魔法を放つノヴァと、それを見守るロン・ベルクの姿があった。
 ハッとして、そちらに顔を向けるポップ。
 バーンも、険しい表情でその光景を眺めていた。







 完全に凍りついた黒の核晶を見て、ロン・ベルクは予想通りだと解説する。
 黒の核晶も基本的に機械仕掛けの爆弾であり、作動しなければ爆破はしない。他の呪文なら誘爆の恐れがあるが、ヒャド系魔法なら凍結するのみだと語る。
 大仕事を終えたノヴァは、緊張したように額を手で拭っていた。







ポップ「そうかっ! ああして、全部の黒の核晶を凍らせれば……っ」

 だが、バーンはおかしくてたまらないとばかりに笑い出す。その声はポップだけで無く、ロン・ベルク達の所まで届いていた。








ロン・ベルク「バーンか」

バーン「愚かなりロン・ベルク。よもや、人間達の悪あがきに手を貸していようとは……魔界の名工の名が泣くぞ」

 バーンに貶されても、ロン・ベルクは全く動じずに問い返す。悪あがきと、なぜ言い切れる、かと――。
 バーンは全ての柱の装置が同時に作動し始めていること、一つでも爆破すれば残った黒の核晶が誘爆する……六つの核晶全部を凍らせなければ、爆発は止められない。

 その説明を聞き、悔しそうに息をのむノヴァ。
 あとわずかの時間で出来るものかと決めつけるバーンの言葉に、静かに目を閉じるロン・ベルク。








 映像越しにロン・ベルクを眺めながら、バーンは幾分か優しい口調でロン・ベルクにつまらぬ足掻きは止めるように諭し、なんならこのバーンパレスに招待しようと誘いを掛ける。
 ここにいれば爆発の影響は無いと告げるバーンの言葉は、明らかにロン・ベルクを優遇するものだった。

ロン・ベルク「冗談じゃ無い。お断りだ」

 予想外の返事に、ムッとした表情を見せるバーン。








 ロン・ベルクは、静かに語り出す。
 何百年と生きてきたが、バーンの下にいた時が最も恵まれ、裕福だった。……が、一番退屈で、一番自分が腐っていくのが実感できた時だった。

ロン・ベルク「あんな日々は……二度とごめんだ」

 あれに比べれば、ダイ達に出会ってからのこの数週間は、短いが本当に充実していた。今までの生涯に匹敵する輝きがあったと、何の衒いも無く言ってのけるロン・ベルク。







 ロン・ベルクの言葉を、バーンも、ポップも、ダイも、無言のまま聞いていた。 







ロン・ベルク「同じ過ちを二度繰り返すぐらいなら……オレは多少なりとも気に入ったこいつらと、運命を共にするさ……!」

 ノヴァの方を振り向きながら、ロン・ベルクはそう言い切った。それに感動したように、目を潤ませるノヴァ。

ノヴァ「先生……っ」







 沈み始めた夕日に照らされたバーンの顔に、深い影が落ちる。
 そして、床に突いたポップの手が、戦慄いた。今まで固く握りしめられていた手が、震えながら開かれようとしていた。

バーン「いい度胸だ。……余に仕えた事を……誤ちと抜かすとはな……!」

 抑えた声には、隠しきれない怒気が含まれていた。

バーン「たった今……! その下らぬ芽を摘み取ってくれるわ!」

 筋が浮くほど力を込めて、拳を握りしめるバーン。
 だが、その瞬間、ポップの手が大きく開き、床を突いた。その気配を感じ取ったのか、バーンはポップの方に目をやった。

 見れば、ポップは床に手を突き、力を振り絞って立ち上がろうとしていた。ろくに立つ力も残っていないことは、一目で分かる。
 なのに、ポップは足を踏ん張り、床を突き飛ばし、必死に立とうとしていた。

 その光景を、無表情に眺めるバーン。
 踏ん張って立ち上がろうとするポップの姿が見えているのか、いないのか、ダイの目からはまた一筋の涙が流れた。

 ゆっくり……もどかしいほどゆっくりと、だが、歯を食いしばって立ち上がるポップ。

バーン「貴様……なんのつもりだ」

 そう問いかけるバーンの口調には、呆れたような響きが混じっていた。
 が、ポップはバーンにではなく、ダイに向かって話しかける。

ダイ「……き……聞いたかよ……ダイ! おねんねして……泣きべそかいてる場合じゃねぇみてえだぜ!?」

 その言葉にも、ダイは反応しない。
 ただ、目を見開き、静かに泣き続けるばかりだ。が、ポップはそれを気にする様子もなく、ふらふらの身体で身構える。

ポップ「可能性ゼロじゃねえと分かったからには……おれも手伝わねえとな!! ルーラとヒャドぐらいなら……おれにだってッ!」

 次の瞬間、ポップの身体は光となって空へ飛び上がった。が、暮れなずむ空に弾かれるように、その動きが阻害される。
 跳ね返されたポップは、空中で一瞬、驚きの表情を浮かべる。しかし、それもつかの間、そのまま落下して床石に叩きつけられた。







メルル「ポップさんっ!!」

 地上にいながらその様子を見ていたメルルが、悲鳴を上げる。それを、沈痛な表情で見つめるエイミとアキーム。








 倒れたポップを見ながら、バーンは蔑む。

バーン「バカめ……。ピラァ・オブ・バーンの投下により光の魔法円は消滅した。そしてバーンパレスは爆発の影響を避けるため、再び余の魔力で包んであるのだ」

 もはや勇者達日常に戻る術は無いと言い、可能性はゼロのままだと宣言するバーン。
 うつ伏せに倒れたポップの頭から、ジワッと血が流れ、床を赤く染めていく。







 その頃、ロン・ベルクとノヴァはフローラ達のいる場所へとルーラで戻ってきた。
 地図を手にしたフローラは、ゴメス、フォブスター、ラーバに囲まれて何か相談しているところだった。

ロン・ベルク「思った通りだ。黒の核晶はヒャドで止まる!」
 
 開口一番にそう言ったロン・ベルクに続き、ノヴァも短い発言をする。

ノヴァ「僕はルーラでリンガイアの柱へ向かいます!」

 言うなり、返事も待たずにそのままルーラを使ったノヴァは光の軌跡となって飛び去った。
 フォブスターも、ロモス北西は自分に任せてもらおうと発言する。

ゴメス「待て。オレ達も連れて行け」

 ラーバも、まずロモス城で自分達を下ろしてくれと頼む。他の国の出身者でルーラを使える者がいないか、確かめるつもりなのだ。

フローラ「問題はパプニカ西部と、バルジの島……そして、オーザム南部。そこへ行ける者を、全力で探すのです!」

 周囲を見回しながら、みんなに檄を飛ばすフローラ。

「「おう!!」」

 綺麗に声を唱和させ、三人はロモスへと向かう。
 それを見送った後、フローラの表情に憂いが浮かぶ。

フローラ(本当に……時間も人材も無い。一瞬でその地に行けて、ヒャドが使える人……)

 思い悩むフローラの近くにいたバダックが、不意に子供のように地団駄を踏む。

バダック「あぁ〜っ、ワシがルーラさえ使えれば、パプニカに行けるのにっ!!」

 心底悔しそうに言うバダックの言葉に、辛そうな表情で俯くエイミ。
 憂いた表情のまま、フローラはメルルを振り返り、彼女の力でこの危機を世界中に伝えることはできないかと問う。
 俯き、そこまではとても無理だと答えるメルル。

フローラ「そう……そうよね。ポップと交信が取れるだけでも、奇跡みたいなものなのに……」

 メルルから目をそらし、フローラは自分に言い聞かせるように呟く。
 メルルは不安そうな表獣で、祈るようにポップの名を心の中で繰り返し呼ぶ。

メルル(どうしたんです……? 私、どうしたら……)

 答えを求めるように、空を見上げるメルル。








 メルルの不安げな表情や人間達の足掻きを、バーンは映像を通して見ていた。

バーン「今更地上に残った雑魚に何の真似ができようか……!? あと数分足らず……もはや手遅れ」

 そう言いながら、目を伏せるバーン。あたかも、死に逝く者へ黙祷を捧げるように……

ポップ「どうかね……」
 
 その声の方を見ると、ポップが再び立ち上がろうとしているところだった。

バーン「ポップ」

 四つん這いの姿勢で起き上がろうと力を込めながら、ポップはかすかに笑う。

ポップ「へへっ……ついに大魔王様がおれの名前を覚えたかい……ざまあみろだぜ」

 憎まれ口を叩くポップを睥睨したバーンは、次の瞬間、彼の首を掴んで宙に持ち上げる。
 喉を掴む腕に力を込められ、苦痛の呻きをこぼすポップ。

バーン「なぜ……そう諦めが悪いのだっ!?」

 腹立たしそうに言うなり、ポップを床に投げつけるバーン。ポップは仰向けに、床にたたきつけられた。








 その頃、ロモス城ではゴメスとラーバが必死になって兵士達に呼びかけていた。パプニカやオーザムに行ける人材を求める彼らの叫びに、兵士達は沈痛な表情で俯くばかりだ。
 机を叩き、脅迫に似た熱心さで頼み込むラーバの隣では、ロモス王も辛そうに瞑目するばかりだった――。








 リンガイアの柱から、ドサッと落下してきた人影。
 それは、ノヴァだった。

ノヴァ「……ダメだ……せっかく、もう一つ凍らせることが出来たのに……」

 柱の頭頂部の黒の核晶は、すでに凍りついていた。
 仰向けに横たわったノヴァは、肩で息をしながら呟く。

ノヴァ「ボクはオーザムに行ったことがない……飛んでいくしかないってのに……」

 呟いた後、ノヴァはカッと目を見開いた。

ノヴァ「いやっ、なにを……! ダイ達と出会って、何を学んだんだ……!」

 自分を叱責するように言うと、ノヴァは身体を起こす。

ノヴァ「まだ、三本も残っている……ボクが諦めてどうする! 張ってでも進むんだ……オーザムへ……!」

 ケガが酷いのか、どこかバランスを崩した歩き方でノヴァは日の沈む方向へ向かって歩き出した








 その頃、バーンはポップに向かって、諭すように言う。

バーン「勝てぬものは勝てぬ。すぐにそう悟れる者の方が幸せなのだぞ。少しはダイを見習え」

 バーンのその言葉に、ポップは反応しなかった。仰向けに寝転んだまま、じっとしている。
 呆けたように上を見上げる目は、涙こそ流れていないがダイのそれによく似ていた。

ポップ「……ダイ……ダイか。あいつ……何年生きられるのかな?」

 唐突にそんなことを言い出したポップを、バーンは理解しがたいものを眺める目でみやる。
 しかし、ポップは構わずに続ける。
 やっぱり竜の騎士と人間の子だから、自分達と同じ寿命なのか。それとも、もっと長生きするのか――。

バーン「……何の話をしている?」

 不快げに目を細めるバーン。しかし、ポップはバーンの方を見もせずに問いかける。

ポップ「大魔王さんよ……あんたは何年生きられるんだい?」

 返事は最初から期待していなかったのだろう、ポップは自問自答する。
 何千年か、何万年か、それとも死なないのか……。

ポップ「あんたも、ヴェルザーって化け物も、相当寿命が長いんだろうな……」

 ポップの言葉を、黙って聞いているバーン。

ポップ「それに比べたら、おれ達人間の一生なんて、きっと花火みたいなもんだ」

 寂しそうな、それでいてどこか遠くを見るような目で、ポップは語り続ける。
 さっき、ロン・ベルクの話を聞いて、思いだした子供の頃の話を――。








 それは、ポップがまだ5つか6つの時。
 ある夜、ポップは死について考え出した。死んだらどうなるのか、どこへいくのか……。考えれば考えるほど怖くなって、夜中に泣き出した。
 両親がびっくりして飛び起き、ポップの所へやってきてくれた。
 泣きじゃくるポップは父親にしがみついた。

『どうしても人は死んじゃうの!? どうして、ずっと生きていられないの?』

 わけが分からなくなって、ポップは泣きわめき続けた。

ポップ「そうしたら……母さんが、母さんが抱きしめてくれて……おれにこう言ってくれたんだ」

 幼いポップを膝の上に乗せ、目をしっかりと見ながらスティーヌは言った。

『人間は誰でも、いつかは死ぬ。だから……だから、みんな一生懸命生きるのよ』

ポップ「……ってさ」







 その話を、『瞳』に封じられた仲間達も聞いていた。
 誰もが目を大きく見開き、聞き入っている。
 この時、ダイがようやく反応を見せた。わずかに息をのみ、目を見開く。しかし、かすかすぎるその反応に、他の誰も気がつかなかった。

 バーンの注意も、ポップへと向けられていた。
 理解しがたい……いや、理解できないとばかりに、無表情にポップを見おろす大魔王。

ポップ「……あんたらみてえな……雲の上みてえな連中に比べたら……」

 両手の向きを変え、しっかりと床に手をついたポップは再び身を起こそうとする。力が入りきらないのか、身を無様によじりながら、それでも起き上がろうとするポップ。

ポップ「おれ達人間の一生なんて……どのみち、一瞬だろ!?」

 その言葉は、ダイにも聞こえていた。
 先程までのバーンやヴェルザーの言葉と違い、しっかりとダイの心に届いている。呆然と見開かれた目が、明らかに光を強めて瞬いていた。

ポップ「だからこそ……ッ、結果が見えていたって……もがき抜いてやる!!」

 ようやく上半身を起こしたポップは、膝と手を床に突き、体勢を整えようとしていた。手も、足も震えて力が上手く入らないのが一目で見て取れるが、それでもポップは諦めること無く立とうとする。

ポップ「一生懸命……生きぬいてやる!! 残りの人生が……50年だって5分だって同じ事だ!」

 怒鳴りながら、ついにポップは腰を浮かすのに成功した。ふらつきながらも、ポップは動きを止めない。

ポップ「一瞬……! だけど、閃光のように!! 眩しく燃えて、生き抜いてやる!」

 強く拳を握りしめたポップは、苛烈な目をバーンへ向けた。

ポップ「それがおれ達人間の生き方だっ!! よっく目に刻んどけよ、このバッカヤロォオオオ!!」

 








 ポップの言葉は、瞳の中にも強く響き渡った。誰もが、その言葉を深く噛みしめるかのように息をのむ。








 それは、地上でも同じだった。
 みんなが心配そうに空を見上げる中、メルルだけはポップの声を聞いていた。

メルル(ポップさん……それでこそポップさんよ。私の大好きなポップさん……)

 祈るように、メルルは目を閉じる。そして、再び目を開けて空を見上げた。

メルル(頑張って……最後まで……!)







 その時、バーンパレスでは、子供っぽさを残す手が空に向かって伸ばされた。震えるその手の動きに、バーンもポップも敏感に反応して同時に目を向ける。

 何かを求めるように伸ばされた手は、ぺたんと床石を突く。その手に力が込められた。
 その様子を、膝立ちのままじっと見つめているポップ。

ダイ(おれが……本当にくじけそうな時、本当に、諦めてしまいそうな時……)

 床に突いた手の反動で、ダイの足はゆっくりと、しかし確かな力強さを持って立ち上がる。

 それを見たポップの目が、潤いを帯びた。

ダイ(いつも最後のひと押しをしてくれた奴……おれを……立ち上がらせてくれた奴……)

 ダイの頭が、ゆっくりと持ち上げられる。それを見たポップの目から、ついに涙がこぼれ落ちた。

ダイ(最高の友達……ポップ!)

 立ち上がったダイは、足を広く広げて姿勢を安定させ、身構える。苦痛に顔を歪めながらも魔王に身構えるその姿は、勇者そのものだった。

ダイ(君に出会えて、良かった……!)

 ダイの復活に泣きじゃくりかけていたポップは、大きく息を吸い込んで姿勢を整える。その動きで、涙が振り払われた。

ポップ「ダイッ!!」

 ダイの名を呼んだその時には既に、ポップは戦いの表情を浮かべていた。
 ダイも身構え、姿勢を正す。

 バーンが目を見張った時には、ダイとポップは全く同時に動き出していた。何の打ち合わせもしなかったのに、計ったようなタイミングで同時にバーンに突っ込んでくるダイとポップ。

 さすがのバーンも、これには驚愕の表情を浮かべる。
 雄叫びを上げ、勇者と魔法使いは最後の特攻を仕掛けた――。


 


《感想》

 ポップ、すごい!
 メルルが可愛い……っ!
 この二つが突出した回でした♪

 のっけからポップを靴底の方から見る構図で、思いっきりバースをかけた絵柄で手前に置いた画面にびっくりしました。なんか、新鮮な構図です♪

 ウェルザー、声が思ったよりも若々しくてビックリ。数千才ぐらいかなーと思っていたので、イメージとしては老バーンに近い声を想像していたのですが。

 落ち着き払った慇懃さと、野卑とも言えるワイルドさ……冷静を装うときと激昂した時の落差が印象的な声で、バーンとはまた違ったタイプの悪役感に感心しました。ヴェルザーは旧アニメで未登場だっただけに、声のイメージが出来ていなかったんですよね。

 漫画で見る限りでは口調が意外と荒く、人間味のある感じだとは思っていたのですが、意外と若いか、年老いているか、どっちでもいけそうと思うだけに確定イメージが出来なかったんです。
 それが、アニメでここまで意外性がありながらもピッタリ感のある声を持ってくるとはっ。

 漠然としたイメージしかなかったキャラを意外感のある声優さんが担当した場合、どこか消化不良というかもやもやする方が多いのですが、聞いていると引き込まれるようにイメージが合致する時があります。ベテラン声優さんの演技力に魅せられるというのか、圧倒されるように納得してしまうんですよね。

 うわー、この声を先に聞いていたら、二次創作で書いたヴェルザーの印象が変わっていたかもと思いつつ、それにしてもとこかで聞き覚えのある声……と悩みつつ最後にクレジットを見て愕然。○いきんまんじゃんっ、さらには○リーザ様じゃないですかっ(笑)

 つーか、よくよく思い出したらこの人、○険王ビィトのシャギーだったんですねっ(笑) キルバーンに匹敵する曲者っぷり、道化っぷりを披露しつつ、時折覗かせる殺意が素敵な役でしたが!
 ど、どんだけ敵方声優陣を豪華にしまくっているんですか、この作品っ!?

 などと、あまりにも予想外の配役に驚きまくって先走った感想を書いちゃいましたが、話を元に戻します。
 マァム達のアップが挿入されたのはアニメの改変ですね。

 ヴェルザーの声の聞こえる黒渦、アニメではちょうど太陽ぐらいの大きさで、太陽の少し上にあったのが印象的でした。
 原作では壊れた瓦礫の上に浮かんでいましたが、アニメでは太陽の光と好対照で、シンプルなのにインパクトが大きい画像でした♪

 雷鳴と共に浮かび上がったヴェルザー、赤かったです。レッドドラゴンだったとは……っ。
 そして、アニメの魔界の図、死の大地を超ハードモードにとげとげにした様な地形にっ。よくみたら、手前の方にマグマの湖っぽいのも見えますし!
 うかうかと旅も出来なそうな世界ですね。

 ヴェルザーの石像が光っているのに驚愕。
 え、ええええええええっ、光るんですか、あれっ!? ……あー、個人的にはごく普通の石だと思っていましたよ……っ。捏造魔界編のイメージがガラガラと崩れていく音が聞こえるような気がします(笑)

 いきなり怒りだしたヴェルザーに、原作ではポップはビビっていますが、アニメでは割と落ち着いている印象です。恐怖より、状況を把握したい気持ちの方が強いように見えます。

 若き日のバランパパンが、クルクルとドリルのように回転しつつツッコんでくる攻撃にビックリしましたよ! 

 精霊達の姿も、ちょっと驚きでした。いや、原作通りの服装と言えばその通りなんですが、イメージ的には破邪呪文習得時のレオナのように神々しい光に覆われているのかなと思っていたので。
 ついでに、フェアリーぐらいの妖精サイズを期待していたら、エルフが出現してきた気分でした(笑)

 回想に出てきたバランパパンは肩幅が妙に強調されている上、精霊達が原作と違ってベタフラな背景だったせいか、仲間と言うよりはバランと精霊達が対立しているように見えちゃいました。

 ヴェルザーの地上を欲する発言、ゾクゾクするぐらいの迫力がありました! 世界が欲しい的な台詞って、悪役としてはありきたりすぎて三流に聞こえやすいのに、ヴェルザーの発言は地力が違うな、と思いました。

 ポップが悔しそうな表情を浮かべるは、アニメの改変ですね。
 バーン以外にも地上を狙っている者がいると実感している感じが、すごくいいです。ダイがショックのあまり放心状態のままなのに対し、ポップは新たな敵に対して反応をしているんだなと思えます。

 バーン様が賭けに勝ったと言うシーン、左右逆転していますが……そんなの、どうでも良くなるぐらいに清々しいまでのドヤ顔(笑)

 賭けについて聞いた時の、ポップの驚き顔が好きです♪
 目の光がなくなる表現は、珍しいだけに目を引かれますね。茶色の目に黒い点だけが浮かぶ目を見て、こんな所でもダイとは違うんだなと思っちゃいました。

 ダイが茶色など単色の目になる時は、自分の意思を見失っている感が強いのですが、ポップは飽くまでポップのまま驚いているんだな、と思えます。

 ポップのツッコみに、バーンがチラッと見る目つきが蔑みきっているようでシビれます。
 一見、バーン様がポップの問いに答えて会話をしているように見えますが、実際にはこの時点ではバーンにとって、ポップの価値などないに等しいんでしょうね。

 もう、相手にする価値もないと思っているからこそ、邪魔をするなと怒ることもなく、ちょうど自分の言いたい事と質問が合致したから、言いたい事を言っているだけのように思えます。

 と、同時に、前回、あれ程までに喧しかったポップの号泣を無視しきっていた心境が理解できたような気がしました。
 日本人がセミの鳴き声が喧しいとは思っても、基本的に夏の風物詩として聞き流すように、バーン様にとっても人間の嘆きなんてただのBGMに過ぎないんでしょうね。

 原作ではこのシーン、ポップの後ろ姿からバーンを見る角度だったのですが、アニメでは逆の角度でバーンの後ろ姿から這いつくばっているポップを見る角度になっています。

 土下座のように両手を床につけながらも、未だにバーンを睨みつけているポップの表情がすごく気に入りました♪

 神々が憎いと吐き捨てるバーン様の表情も、アニメの追加です。原作では顔に影が入っていて表情は窺えませんでしたが、アニメでは引きつったような歪んだ表情を見せていて、バーンの神への憎しみと執念を感じます。

 ダイ達と戦う時は、相手を見下しながら戦っていた印象でしたが、神に対してはさすがのバーン様も挑戦者なんだなぁと実感しました。

 バーン様の昔語りの合間の、キルバーンの回想シーンの豊富さには、びっくりです。
 ちょっとモノクロというかセピアがかった色合いのキルバーンの思い出は、確かにかっこよかったですが……元々ほぼほぼ黒い人にこの演出は必要だったんでしょうかね?(笑)

 バーン様がありがとうと言うシーン、原作では割と紳士的な横顔だと思っていましたが、アニメでは同じ横顔でも……これ以上無いドヤ顔パート2!(笑)

 ポップが手が届かないと絶望するシーン、左右逆転していました。それ以上に大きな改変として、真下からの角度で、逆さまにポップの顔を見上げるカットがあったこと♪

 頬を伝っていた涙が、逆流していく動きの細かさ、また新たに湧いた涙の描き方に感心しました。

 倒れているダイ、父さんと呟いて目から涙を流すシーンがあったのが、ちょっと心強かったです。
 原作では泣いた後がずっと頬に残っているだけに、もっと虚脱状態にみえたのですが、アニメではヴェルザーの言葉に反応して泣くだけの心が残っているんだなと思えました。

 バーン様の完全勝利宣言、言い切り方が素晴らしいです♪
 普通、この手の勝利宣言ってフラグかと即思ってしまうのに、迫力に押されてひれ伏してしまいそう(笑)
 そして、髪を靡かせて流し目をしっかりと決めたドヤ顔パート3! よっ、この千両役者っ♪

 ポップの「もうだめだ」の呟き、アニメの追加ですね。
 ダイの涙も、静かに流れています。

 メルルの強い呼びかけには、ハッとしました。
 もっと静かに、ひたむきに説得するかと思ったメルルの声が、驚くほどに強い口調で情熱的だったのにも感動です♪

 原作では、2度目、3度目の呼びかけでポップはようやく、その声はメルルだと気づきましたが、アニメではノータイムで気づいたのがなにやら嬉しいです。
 ポプマ派ではありますが、ポプメルにも心が動いてしまいそう♪

 原作ではメルル以外の人間は輪郭線のみで表現されていましたが、アニメではメルルだけが夕焼けに照らされているかのように、柱状の光に覆われていました。
 個人的には、彼女が6人目のアバンの使徒としてミナカトールの柱を繋いでいるように見えて、感激です♪

 ところで、瞳の中にいるレオナ、チウ、クロコダイン、マァムがメルルのナメを聞いて驚くのは分かるんですが、なぜここでアバン先生も驚くのか……よく考えたら、アバン先生はメルルとは会ってないし、全然知らない名前ですよね。

 も、もしやっ、これは――スケベな割には奥手な弟子に、いつの間にか彼女が出来ていたのかという驚きなんでしょうか?(笑)

 地上にいるメルル達、メルルのすぐ側にフローラ様がいるのは原作通りですが、バダックさんや兵士達はメルルでは無く上空を見ていて、フローラのみがメルルに注目しているのはアニメの改変ですね。

 メルルが目覚めた時の回想シーン、彼女の髪の毛がいつになくアクティブに広がっている動きに感心しました。

 原作では、立ち上がってフローラに手を伸ばすメルルをエイミが抑えていましたが、アニメでは地面に片手を突いて身を起こしたメルルが叫び、エイミが慌てて手を伸ばしている図になっていました。
 座った姿勢なのに、二人ともすごく動きを感じさせるポーズでしたよ!

 メルルがフローラに詰め寄るシーンが追加されたのも、嬉しいです。
 後ろ姿のメルルの黒髪が、なんて艶やかで美しい……!

 ポップがダイのライデインのおかげだと悟るシーン、ほんの少しだけ気が緩んだような表情が、すっごく良かったです! ダイのあの粘りが無駄じゃなかったと知って、報われた気分になったんじゃないかなと思えて、いいですね。

 メルルの告白シーン、原作では目を開けて語った後で、目を伏せて「ふふっ」と微笑んでいました。ちょっと小悪魔風に思えるようなその大胆さもお気に入りでしたが、アニメでは可憐さとはにかみを強く訴えているようで、その可愛さに目が奪われてしまいます!
 う、うわー、メルル可愛い……っ!

 思い切った事を言った後で、ぎゅっと手を握りしめる仕草まで、なんと可憐な……っ!
 後、台詞が微妙に改変されています。

原作メルル「きっと……ポップさんの事ばかりを考えていたからです……」

 言い切り口調な原作に比べ、アニメでは語尾が「からなんです」になっていて、より和らいだ印象だと感じました。

 しかし、目を閉じて恥じらうメルルはものすごく可愛いのですが、周囲にいる野郎共がそんな彼女を見ないでバーンパレスを睨みつけるように見上げていたりします。

 聞かない振りをして邪魔しないように気を遣いつつ、内心……「こんな可愛い子にここまで言われるなんて……あいつ、幸せ者過ぎねえか?」とかやっかみ半分に思っているんじゃないかなと想像するのも楽しいです(笑)

 ポップが一瞬、目を見開くシーンもいいですね。
 原作では「どきぃっ」と書き文字がありましたが、アニメでは動揺に目が揺らめいていました。
 ここで、マァムがどんな表情を見せたか……一瞬でも見てみたかったです!

 ポップがメルルを抱き上げる回想シーンが映ったのは嬉しかったですが、どうせならポップが覚醒して光を放っている瞬間の絵がよかったなぁとちょっぴり残念。

 自分の力のなさを嘆くポップと、メルルの力のこもった演技が、実に素晴らしかったです!
 それに、メルルの方法はあると言うシーンで、CMになったのは新鮮な驚きでした。
 
 んでもって、その直後のCMも衝撃的っ!
 ちょっとまて、ダイ大ゲーム発売日未定でCMを打つかっ!? いくら、アニメの終了間際とは言え、発売日未定のまま堂々とTVCMを流す大胆さに、ガクンと下顎が外れそうになりましたよっ。

 大雑把にでも、年内とか、2023年とか、記載できなかったものか……もう一年以上待ち続けているんだし、せめて今年の年末商戦に間に合わせて、おねがいっ! と、ショックに呆然としまくりでしたよ〜。

 CM後のポップの台詞、アニメの追加ですね。
 真正面から、ポップに訴えるメルルが実に可愛い! これまでメルルはまあり正面向きにならない印象があったので、ここにきて急にヒロイン感が急上昇した感じがします。

 ノヴァ、魔法を放出している姿が映し出されたのが、ちょっと嬉しかったです。原作では、すでに魔法を放ち終わった後でしたから。
 凍った黒の核晶から白い煙が漂うのが、ドライアイスみたいでいかにも寒そうでした。

 呪文の後、疲れた様子を見せつつホッとしたり、額を拭うなんて仕草を見せたノヴァの些細な活躍が嬉しかったです。

 それにしても思ったのですが……ロン・ベルクんって、老バーンとしか会ってないのだから、今の真バーンの声なんて知らなかったはずですよね?
 なのに、笑い声だけでバーン様だと即バレしてしまった辺り……ミストバーンが長年、声を封じて偽装してたのって全く意味が無かったような気がしてきたのですが(笑)

 ヒュンケルにも結局バレたし、ミストバーンの偽装工作ってほとんど無意味だったんじゃ……(笑) 顔見知りには一発でバレてーらですよっ!

 バーン様の残り時間宣言、原作では「あと五分足らず」だったのが、アニメでは少しぼやかされていますね。
 
 バーンがロン・ベルクを勧誘する際、声音がちょっと優しくなっているのには感心♪ そして、断られた際の表情が、原作では戸惑いが強かったのに対し、アニメでは不快さの方が強いように見えます。

 ロン・ベルクの語り、相変わらず熱いですっ。
 原作では、飄々として捉えどころの無い男というイメージだったロン・ベルクですが、アニメの声に引きずられるように熱さを感じるキャラになってきたのは嬉しい変化です。

 しかし……、ロン・ベルクの言う『腐った日々』の基準が今一歩分かりません。少なくとも、老バーンに雇われてせっせと武器を作っていた頃の方が、地上に来てからのような酒浸りな毎日よりはマシなように思えるのですが……まあ、本人の充実度は客観よりも主観で判断すべきでしょうね。

 ロン・ベルクの話を聞いて、ポップの手が震えながら開かれるシーンはアニメの追加ですね!
 この時には、もうポップは立ち上がる決意を固めたのだと分かる描写に感心しました。

 確かに、手を固く握りしめたままでは、立ち上がるのには不向きです。元気な時ならともかく、力が足りない時ほど手をしっかりと開いて踏ん張らないと、立ち上がるのは難しいでしょうしね。

 これまでは立ち上がる気すら無かったから、感情のままに手を握りしめていたポップが、立ち上がるために強ばった手を動かそうとしている仕草の細かさが実にいい感じです!

 原作ではバーンが振り返った時には、ポップは既に立っていましたが、アニメでは立つのにすごく時間がかかる動きの細かさ、間の取り方に感激しました!

 まず、手をしっかりと突いて身体を起こし、バランスを取りながら下半身を安定させ、それから顔を上げると、段階を踏みながら少しずつ起き上がるポップのやり方も、いかにも彼らしいなと思いました。

 リハビリでも、自分がいつも通り動けるというイメージのままに動こうとすると失敗する例が多いので、焦らず、一段階ずつ段階を踏みながら次の行動へステップアップするように練習していくのですが、それを思い出しました。

 ダイへの呼びかけのシーン、原作ではダイはかすかに顔や手の先を震わせていましたが、アニメでは無反応で泣いているだけなのが印象的でした。

 ポップの身構えシーン、いいですね!
 そして、ルーラ失敗!
 この時の空が、すでに紺に近い空になっているのも注目ポイントです。夕焼けから夜へなりかかっている空の色が、絶望的な鉄壁差を強調している風に感じます。

 それに原作ではポップが空中でぶつかったシーンで、バーンの解説が入っていますが、アニメではここではまだ解説なし。
 また、落下時に原作ではメルルのアップだけでしたが、アニメではメルルの悲鳴が追加されています。

 しかし、エイミさんが近くにいるのは納得しますが、後ろにアキーム将軍がいるのを見た時は、ちょっと笑っちゃいました。なぜここにいる!?

 バーン様の説明、原作と言っている無い様は同じですが、順番が前後していますね。原作では結界で包まれたことを、先に話しています。
 ポップの頭の出血、アニメの方が出血量が多いのを発見! 基本的にアニメでの流血は減少傾向なので、珍しい例ですね。

 ロン・ベルクとノヴァがフローラ達と合流するシーン、アニメでは動きで見せてくれたのは嬉しかったです!
 ノヴァの台詞、原作では「自分の故郷ですから一発で行けるッ」と続いていましたが、アニメではカットされていますね。

 また、ノヴァは原作ではフローラ達と相談した後でロン・ベルクに急かされてから空に飛び上がっているので、アニメのノヴァが大人達の指示を受ける前に自主的に動いているのが見ていて頼もしかったです。

 すぐ隣にいるロン・ベルクが、ルーラの風で髪やマントが巻き上げられても平然としているのも、ノヴァならそうすると理解しているようで、早くも師弟の絆を感じますね♪

 フォブスターやゴメス、ラーバの声も、頼りがいのある感じでいいですね。原作では登場時が思いっきり噛ませ犬だっただけに、アニメでこんなにいい声になるだなんて思いもしませんでした(笑)
 ロン・ベルクに急かされるよりも早く、動いているのも嬉しいポイント。

 フローラ様の台詞、原作では「パプニカ方面の二本」だったのが、アニメではきちんとした場所に言い換えられています。それに、ルーラとヒャドの使い手に関しての台詞も、原作では「そんな人間が、都合良くいるわけがない」と続いていましたが、ここもカットされています。

 しかし、フローラ様はルーラもヒャドも使えて目的地に行ける都合のいい人がそうそういるわけないと諦めがちですが、ポップならパプニカ二箇所は速攻で行けますね(笑)
 オーザムにも、トベルーラを駆使すれば行けそうですし。

 バーンが結界を張り直していなければ、ポップ頼みで黒の核晶を凍らせてダイが時間を稼ぐ作戦もアリだった様な気がします。

 それはともかく、自分にルーラが使えればパプニカは助けられると嘆くのは、原作ではエイミさんだったのですが……なぜに純粋戦士のバダックさんが嘆いているんですかっ!?(笑)
 台詞を取られちゃったエイミさんが、奥でこっそり嘆き顔を見せているのがまた笑いを誘いました。

 メルルとフローラ様のやり取り、いいですね。
 原作では、フローラがメルルに期待しているのがありありと分かるだけに、メルルの不安やプレッシャーが大きそうですが、アニメのフローラ様は「そうよね」と納得する時にメルルから目をそらしているのが印象的でした。

 彼女に過度な期待を寄せてしまったことを悔いているような表情と口調が、実に良いです。
 すがりつくようにポップに祈るメルルも、しおらしげで実にいい感じ♪

 そして、さっきからずっとメルルの後方にいるロン・ベルクは、目が死んでいるよーに見えるのですが!?(笑)
 焦る様子も、行動する様子もなく、後はお前ら次第だと言わんばかりの傍観者になりきっていますよっ。
 いや、せめてメルルやフローラ様に注目しようよ、と言いたくなります。

 バーン様の台詞、改変されていますね。

原作バーン「今更地上に残った雑魚にそんな真似ができようはずがない……! あと3分足らず……もはや手遅れ!!」

 バーンがポップの名を呼びかけるシーン、バーンの怒りが実に興味深いです!
 以前、ユダヤ人の強制収容所関連の本で、ドイツ兵は徹底して収容した人間を番号で管理していた実例を見た事があります。
 
 番号の方が合理的だという理由が大きいでしょうが、名前を覚えて個別認識してしまうと、使い捨てるのに抵抗感や罪悪感が湧いてしまうので、それを避けるための処置でもあったのでしょうね。

 大量に移送した黒人奴隷などでも、使い捨て、もしくは長くつき合わないのを前提にしている場合は、ほぼ名前はつけないし、本来の名前を聞いたとしても覚えもしませんでした。
 
 それを思えば、覚える気さえなかった名前を刻み込んだという点で、ポップに怒りを感じたバーンの気持ちが分かるような気がします。

 竜の騎士の子ダイや、地上の王家の姫レオナ、人間への復讐心に燃えたぎるヒュンケルなど、生かしておく価値を認めた人間ならともかく、ただの人間などバーンにとっては虫けら同然でしょうしね。

 人間がアリを踏み潰す時、わざわざ『このアリだけは殺そう』と見分けて狙ったりしないように、バーンにしてみてもただの人間を特別視するつもりなんか最初から無かっただけに、その前提を突き崩し、しかもポイントを突いた減らず口で指摘されたせいで、ぷっつんしたように見えます。
 
 原作では、ポップに言い聞かせた後で床に投げつけていますが、アニメではよっぽど激おこなのか、いきなり放り投げていますね。
 
 そして、バーンとポップの会話の前に世界情勢を先に表現していたのはちょっと驚きでした。
 ゴメスの必死さに、感心しました。いい人だなぁと思うと同時に……前に書いた地下道場での闇落ちロモスメンバーの話が申し訳なくていたたまれない気分に……っ(笑)

 い、いや、それはさておきっ、机を叩きながら誰かいないのかと叫ぶシーン、怒鳴っているようでいながら、頭を深く下げている姿勢が、土下座して頼み込んでいるように見えました。
 手前にいたロモス王の沈痛な表情も相まって、人間達の必死さが伝わってきます。

 ノヴァの奮闘も、いいですね。
 しかし、ノヴァは口調では弱音を吐いていますが、ポップに比べるとあっさりと起き上がった辺り、体力はまだありそうな気がします。
 歩くノヴァが、ちょっと変に身体が揺れているのがケガをしているっぽくて感心しました。

 でも、フォブスターの奮闘がカットされていますよっ!? いや、見返すまで全然気がつきませんでしたけど(笑)

 バーンがポップを諭すシーン、思っていたよりも優しげな口調だったのは意外でした。投げつけることで怒りを昇華させ、また自分に自信を取り戻したように感じられます。

 ポップがダイの寿命について語るシーン、原作では少し大人びたような表情でしたが、アニメでは逆に子供っぽい表情に感じられて、気に入りました!
 特に、ダイが長寿かもしれないと言うポップの表情が切なげに歪んだのが、いいですね!

 ポップにしてみれば、ダイがうんと長生きするよりも、自分達と同じ時間を生きてくれた方がずっと嬉しいでしょうし。生きる時間を同じ速度で分かち合えないかもしれないのは、寂しいことだと思います。

 バーン様の、不快極まりない表情も素敵です♪
 理解不能な意見に、蔑みを隠さない目つきがいいですねえ。それでいて、ポップの言葉を無視しきれずに聞き入ってしまう様子がいいです。

 今日の最後の夕日に照らされ、胸に刺さったダイの剣の宝玉と、剣の柄の宝玉が二箇所、光を受けて輝いているのがすごく綺麗でした。
 
 絵本を思わせるポップの思い出の回想シーン、すごくほのぼの感があってよかったです!
 水彩画か色鉛筆を思わせる線や、周囲を白い枠でふんわりさせた回想の見せ方がいいですね。

 そして、今更気がつきました!
 ポップが死を怖がって泣いた夜も、空に三日月が浮かんでいたんですね! 月夜の散歩でダイと過ごした時と同じような月に、感動しました! 何十回とダイ大漫画を読み返していたのに、気がつきませんでしたよ!

 ところで、小さい頃のポップの着ているパジャマが緑色だとアニメで判明しました♪

 小さなポップの絵が、どれもこれも可愛いです! 泣きすぎて鼻水まで垂らしている絵は、特にお気に入りです。
 スティーヌさんがポップを抱きしめている図も、聖母感があって捨てがたいですが。

 しかし、ジャンクさんときたら……腹巻きはアニメでもそのまんまかいっ(笑) ええ、○カボンのパパ並によく似合っていますが!

 余談はさておき、やっぱりポップのバーンへの一喝は、胸に響きました。
 さっきまで以上に時間のかかった、ポップの無様な立ち上がりに、感動しました!
 本当に満身創痍もいいところで、全然力が残っていない感じですね。

 なのに、精神力だけは決して大魔王に負けていない、ポップの心の強さを感じるシーンです。

 バカヤローと怒鳴る時、一瞬目を閉じて首を振る仕草も、語気の強さを強調している感じでよかったです……! 
 バーンがずっと、ポップを理解できないように見つめているのに対し、ダイ達にはきちんとポップの声が届いているのも嬉しいところ。

 バラン戦の時もそうでしたが、ポップの言葉って敵以上に味方に対して強く響きますね。
 アバン先生が目を閉じ、感慨深げな表情を見せたのが印象的でした。

 地上でのメルルの表情、辛そうな、心配そうな表情でしたが、できれば原作でメルルの見せた幸せそうな笑みを一瞬で良いから見たかったです〜。
 それに『たとえ今すぐ世界が滅んでしまっても、……私、悔いはありません……っ!!』の台詞がカットされていたのが、返す返すも無念でなりません……!

 マァムはポップが死ぬかもなんて弱気なことを言えば、ひっぱたいてでも生きろと叱りつけるような娘ですが、メルルはポップと共に滅ぶのならむしろ甘受しそうな娘だと思えます。
 
 そして、ダイが手を突いて力を込めた直後のポップのシーン、夕日が夕闇へと変わりかけている色の変化に感動しました!
 バーンが勝ち誇っている時が夕焼けの最盛期で眩いほどだったのを思えば、輝きを失った落日の光に思えます。

 線香花火が、最初の頃の勢いを失ってから落ちるまでのわずかな時間が、儚げな魅力が加わって一際印象に残るように、輝きが薄れゆく夕日に心惹かれました。

 ダイの立ち上がりもゆっくりですが、やっぱりポップに比べると格段にスムーズに立っていますね(笑) 基礎体力の差って残酷だと感じる一瞬です。
 ダイは元々、気力が尽きたから立てなかったわけで、気力が充実していても体力尽きていたポップとは、そういう意味では正反対なのかなと思いました。

 あれだけ気丈に大魔王を一喝したポップが、ダイの復活を見て涙するシーンも、じーんとしますね! ポップ的には、絶対に勝てない相手と戦うなんていつものことだし、それよりも親友の方が優先なんだと思えて、嬉しくなるシーンです。

 立ち直ったダイに、ポップが呼びかけるシーン以降はアニメの改変ですね。
 泣こうとしたのを振り払うようにダイを呼び、涙を振り払って攻撃に打って出るポップの動きが好きです!

 二人が同時に攻撃を仕掛けるシーンで次回に続くになるとは、予想もしなかった次回への引きでした! 

 次回予告、ダイとポップが優勢っぽいですが、肝心なところは見せない方針にホッとしました。でも、レオナの胸元が輝くシーンは、ネタバレすれすれ……?
 それにしても、バーン様が不利な予告って、初めて見るような気がします。

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