1 始まりは、彼から…勇者アバンの植えた苗

   

 ヒュンケル、マァム、ポップ、ダイ、レオナ……みんな生まれた場所も違えば、生活してきた環境も境遇もまったく違っている。

 性格も考え方もそれぞれ違い、本来ならば一度も顔を合わせる事なく終わってしまいそうな彼らが志を共にする仲間として強大な敵を相手に一つになって戦っているのは、彼がいたからだ。

 彼は力や技の優劣よりももっと深いところを……邪悪に打ち勝つ心の力を重視して、それに相応しいものを弟子として選び、育ててきた。

 勇気、慈愛、闘志、正義、そして読み取れない一つの言葉――5人にはそれぞれ一人ずつ違った魂の色があり、それがすべての強さの源となるもの……彼はいつか来たるべき戦いにそれらが必要になることを見抜き、その力を増幅する輝聖石を弟子への卒業の証しとして送った。

 だが、すべてのことを弟子に教える前に彼は自分の弟子達を助けるため自らの生命を犠牲にし、逝ってしまった……。

 一見、犬死と思える彼の死は、しかし決して無駄ではなかった。
 彼が守り、彼が育ててきた弟子達は、それぞれの力で大きく成長し世界の人々の心を揺り動かし、対魔王軍と戦う勇者軍として彼の意思を継いだのである。

 ――彼の名はアバン・デ・ジニュアール……かつて魔王を倒した勇者の、後の姿である……。
 
 

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