1 最強の敵! 成長していく魔王ハドラー

  

 ダイの大冒険の中で最も登場回数の多いボス敵――それがハドラーだ。
 15年前にも世界を席巻しようとしたこいつは、アバンに倒され死線を彷徨ったところを魔界の神バーンに助けられ、彼に忠誠を誓って復活した。

 仮にも一度は魔王の座に付いていただけあって、こいつはとにかく強いっ。
 初期から中盤までハドラーは武器を持たず、代わりに腕に出し入れ自在の地獄の爪(ヘルズ・クロー)を持ち、それを武器代わりとして戦っていた。

 極大呪文をやすやすと連発する魔法力と、武闘家なみの戦闘能力を合せ持っている。回復能力がないのが、唯一の救いだ。
 種族は、魔族。

 外見上あまり人間と変わらないが、肌の色合いに加えて耳が大きく尖っているのが特徴。基本的に魔族は魔法力に長け、肉体的にもかなり丈夫で手を切り落としても再生する能力をもっている。

 また、寿命が人間に比べればはるかに長く、ハドラーは357歳だ。
 しかし、寿命が長いゆえにどうもダラダラと生きる傾向が強く、それが成長をはばんでいるようだ。

 バーンに命を救われ、世界を支配するため魔軍指令の任を与えられている頃のハドラーは、自分で努力することなくバーンから与えられた魔力や力に頼りがちだった。

 残酷で功名心が強く、己に強さに自惚れを持つほどの自信家――登場時のハドラーはそんな男だった。

 まあ、強いて褒め言葉を探せば戦いに関してはある程度拘りがあり、武人として、魔王としての誇りを持っていたと言うことぐらいのもの。

 しかし猜疑心が強く、自分の部下をまったくと言っていいほど信頼しなかったせいで、打倒ダイに対しても攻めが甘かった。

 誰よりも早くダイの正体を見抜きながらそれを隠していたのは、バランがダイの正体に気付けば彼を傘下に加え、バーンがその手柄に応じてバランに魔軍指令の座を渡すだろうと見抜いていたからだ。

 実際、ダイが魔王軍に寝返れば、バーンの目的自体は早く達することができるだろうから、忠誠心が強ければ一も二もなくダイのことをバーンに知らせるのが得策というもの。 しかし、ハドラーの目的はバーンへの忠誠じゃない。

 あくまで自分が再び魔王として世界に君臨することが、彼の第一目標だった。
 ……もっとも作品中ではハドラーが世界を征服した後、どう支配したいと思ったのかはいっさい書かれていないのは残念。

 しかし、昔アバンやフローラにおとなしく自分の元に下れば命は助けると言った台詞から考えれば、自分を頂点に立てた絶対君主性が彼の理想だと推測する。……こっそり地上殲滅を計ったバーンに比べれば、いい奴かもしんない(笑)

 それはさておき、魔王としてすべてを支配するために、ハドラーは卑屈なまでに魔軍指令の座に拘り、バーンへのアピールのため手柄を立てることに拘った。

 人間をムシケラ同然と蔑み軽蔑しているだけに、アバンの使徒のように歯向かってくる人間を特に嫌っていたが、ダイ達の成長につれそんな侮りは少しづつ消えていく。

 戦う度に強くなっていくダイやポップ達に比べ、ハドラーの成長はいまいちだ。
 もちろんバーンに力を与えられ登場ごとに強くはなっていくのだが、問題は精神面にある。

 多大な実力差があればともかくある程度力が拮抗しているなら、死に物狂いの覚悟で全力で戦う者と、保身を第一に考え戦う者とじゃ勝負が見えている。

 ダイ達のそんなしぶとさを知っていた割にハドラーは長い間彼等を見くびり、そのせいで失敗を重ねてきた。

 そんなハドラーが踏ん切りをつけたのは、対バラン戦直後。
 バーンから最後のチャンスとしてダイ抹殺を命じられた事件をきっかけに、ハドラーは大きく変わっていく。

 

2に進む
三章目次に戻る
解析目次に戻る

inserted by FC2 system