2 宿敵! アバンの使徒! |
ザボエラの唆しに乗り、ダイ達を眠らせてからこっそりと暗殺を仕掛ける――誇り高いハドラーにとっては好ましい手段ではないが、追い詰められた彼は卑怯を承知でそれを実行しようとした。 だが、誇りをなくしたハドラーを非難するポップの言葉が、急成長を見せるアバンの使徒の力が、ハドラーに姑息な手段や人から与えられた力ではなく自分で得る最強の力を求めさせることになる。 長い寿命を持つ魔族の一生を捨て、再び魔王になるという夢も捨ててまで、ハドラーが追い求めたのは最強の力。 武道を習うものが際限のない強さに焦がれ、次々と強敵を求め高みを目指していくように、ハドラーも戦士として、武人として己の強さを極めたいという新たな目標を持った。 超魔生物特有の異常に高い治癒能力に加え、高度な飛翔能力まで身につけたハドラーだが、真に恐るべきは生まれ変わったように強くなった精神力だ。 正々堂々と戦いを挑み、己の命よりも勝利にこそ全力を尽くす――敵を侮ることなく、命を奪うことよりも戦いを重視する気高い心を持つ戦士へ変化したハドラー。彼はもう、世界征服や魔軍司令の座は眼中になく、アバンの使徒打倒に全力を傾けるようになる。 皮肉なことにすべてを捨てる覚悟のできた時から、ハドラーは妙に人間らしい感情を持つようになる。 自分のために息子をなくしたザボエラに温情をかけたり、自分の頼みを聞いてくれたミストバーンに友情を感じたり、部下に全幅の信頼をおくようになったり……。 感情を持つことにより、ハドラーはバーンやミストバーンに裏切られて傷付くことになるが、ハドラーはそれでも自分が最強を目指したことを後悔しない。 最後に残る寿命が少ないと知ったハドラーは、憎しみや恨みに囚われてではなく、ただ戦士として、ダイを最後に戦うことを望む。 実際、恨みというならバーンの方によっぽど恨みがあるのに、ダイを手を組んでバーンに向かうと言う手段をあえて選ばなかったのは、アバンに拘ったからだ。 アバンの意思を継ぎ、彼の想いを持ち続けるアバンの使徒だからこそ、ハドラーはその生き方にまで影響を受け、彼等を生涯の敵と定めたのだ。 超魔生物と化してからのハドラーの戦いはどれも見事だが、ことに残る力を全て注いでの、ダイとの最後の決戦は圧巻の一言! ダイを殺すためにではなく互いの力を試しあいたいがために、真剣勝負を挑んだその気迫は、バーンとの戦いを控えて体力のロスをなくしたいと思っていたダイをその気にさせたほどだ。 しかし、驚いたのはその堂々とした戦い方だけではなく、戦い直後キルバーンの罠にはまったダイとポップを庇ったこと。 諦めがちなポップを叱り、勇気を鼓舞し、アバンの使徒としての信条を思い出させたハドラーは、彼に気をとられて脱出しそこなったポップを最後まで庇い助けようとした。 最後の瞬間に人間と同じように他人を庇うこと、そして想いを後のものに託すことを知ったハドラーは、復活したアバンを助け、彼にダイ達の援護を頼んで、この世を去った。 敵とはいえ、実に惜しい戦士を亡くしたものである。
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