20 出来損ないの 僧正フェンブレン |
フェンブレンは僧正(ビショップ)の駒から生まれた戦士だが、その姿も能力も元の駒を思わせるものからは掛け離れてしまっている。 なんと全身の8割が刃物でできていて、うかつに攻撃をしかければ、しかけた方が傷ついてしまう恐ろしい相手だ。 自ら完全無欠の狩人と自称する彼は――親衛騎団に他の連中とは違って、別人に生まれ変わったはずのハドラーの中にわずかに残っていた、卑劣な精神が増幅されてしまったキャラクターだ。 騎士道精神に溢れた4人と違って、残酷で弱いものをいたぶるのが好きというとんでもない性格の持ち主だ。 彼の根性の悪さは、ダイ一行vs親衛騎団戦で早くも現れている。 その時はまだポップがメドローアを使えることは敵方は知らなかったから、一番弱い相手を狙ったとしか思えない。 その戦いで親衛騎団はみんながなんらかの形でダメージを受けたというのに、一人だけ無傷だったという事実も見逃せない。 その後、死の大地に潜入したネズミを始末することをハドラーに命じられ、チウ達を見付けた時に、彼の性格の悪さが暴露されている。 段違いにレベルが違っているのに、じわじわとなぶり殺しにしようとする残酷さ、ゴメちゃんの必死の反撃で傷を負ったことに逆上する身勝手さ――どこをとっても最低な男である。 さらに付け加えるなら、彼は執念深い。 その度胸だけは見上げたものだが、自分の実力と相手の実力を見極めるだけの力は持っていなかったようだ。 わざわざ海底でバランが来るのを待ち構え、真空系呪文で相手の不意を突き、地中を潜って不意打ちを仕掛けたまでは良かったが、彼の敗因はバランに気を取られるあまり、ダイの存在を忘れてしまったこと。 仲間の危機と見れば必ず助けようとする――そんな人間にとっては当たり前の心の動きを失念してしまったのは、彼自身がそんな考えを持たないからではという気がしてならない。 親衛騎団はみんなチームワークが良く、仲間を庇い会う気持ちを持っているが、自分だけの感情で身勝手に動くフェンブレンにはそんな気持ちが欠けていたのかもしれない。 それでも仲間から離脱する時、親衛騎団の紋章を彼等の元に残していったのは、彼なりのけじめというか、仲間への思いやりだったといえるだろう。 バランを救おうとしたダイの援護の一撃に、あえなく身体を真っぷたつにされ、自分の強さを越えるものが多いことに不満を感じながら、死んでいったフェンブレン。 彼の死を直感したヒムが、フェンブレンの敵を討とうと考えたシーンが印象的だった。親衛騎団の中で真っ先に死んだ彼は、ハドラーが彼等の前に禁呪法で生み出した岩石生命体フレイザードとどこか似ている。 残酷で勝利に拘る狭量な心根なんかが、そっくりだ。
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