19 無口な二重人格者 城兵ブロック

 

 城兵(ルック)の駒から生まれたブロックは、外見はクロコダイン以上の巨体を誇るゴーレム。

 なぜか5人の中で唯一言葉を喋ることができず、代わりに『ブローム』と鳴く(?)変な奴だ。
 彼の特徴は一も二もなく、まずその怪力。

 巨大な船を一人で担ぐことのできる怪力は、間違いなくクロコダイン以上――親衛騎団の自己紹介当時、いきなり戦艦を担いで登場し、投げ飛ばしたシーンはド迫力っ!

 クロコダイン、マァムと一対一で戦ったが、それについての感想はまったく読み取れない。
 もともと表情がないし、喋れないのではしかたがないのだが……。

 しかし、さほど好戦的な性格とは思えない。
 むしろ、その逆と言った方がいいかもしれない。
 豪快な力を見せ付けたブロックだが、性格的には仲間の安全を第一に考える、仲間思いな優しさを供えている。

 ポップが初めて親衛騎団にメドローアを放った時、ブロックは自分の身を犠牲にしてでも仲間達を守ろうと、とっさに土中に4人を埋め込んで助けたことがある。
 そのせいで彼は背中に酷いダメージを負ってしまったが、仲間達は無事だった。

 まるっきり喋らないせいで、性格的にも実力的にも得体の知れないところのあるブロックだが、仲間を助けるために全力を尽くす思考は敵ながら見事なもの。

 それにブロックは同じ仲間の親衛騎団はおろか、作り主であるハドラーでさえ知らなかった秘められた能力を持ったキャラクターだ。

 死の大地崩壊時にもブロックは秘められた力を使って仲間達を助けたことがあるが、彼がその力を明らかにしたのは主であるハドラーの危機の時――。

 バーンに反逆し、ザボエラの卑怯な横槍により殺されそうになったハドラーを救うため、ブロックは巨体の身体の中に秘めていた真の姿を現した。

 ブロックの真の姿はヒムによく似た人間形の戦士だが、彼よりも細身で素早い動きを見せた。
 元の姿とは正反対の能力を持っているようだ。

 ハドラーを庇って攻撃を受け、さらにハドラーを含む親衛騎団みんなを一瞬で球状のバリヤーの中に移動させ、そのまま空へ飛ばせて逃がすという離れ業を演じている。
 そんな力を持っていたのも、彼がチェスの駒から生まれた戦士なればこそ。

 チェスのルールにキャスリング、と言うものがある。
 一手で王と城兵を入れ替える特殊な駒の動かし方をさすのだが、ブロックにはその能力がそなわっていたのだろう。

 しかし、本当ならチェックメイトをかけてからのキャスリング反則なのだが……。
 バーンの攻撃が致命傷となり、ブロックはハドラーの代わりに死を迎えるが、彼は満足そうに微笑み、初めて言葉を仲間達にかける。

 ハドラー様を頼むと片言で喋ったのが、彼の生涯最初にして最後の言葉となった。
 仲間達を救い、ハドラーの代わりに死ぬことに満足して、微笑みを浮かべながら壮絶な爆死を遂げた彼を、親衛騎団やハドラーが悲しむシーンが印象的だった。

 アバンの使徒と戦うことなく、仲間を守って散った戦士――沈黙を守り続けたまま死んでいった彼の内面の言葉を、ぜひ、聞いてみたかった。

 

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