22 小悪党の最後! 空前絶後のサイッテーな終わり

   

 自分のためなら他人どころか身内までも踏みつけ、強い奴にすがりまくっては出世街道をせこせこと歩き続けてきたザボエラ。
 ……その割には、リストラ寸前な扱いだった気もするが、まあそれはいい。

 戦いの場でも一度も本気で戦わず、味方や部下を盾にして凌いできたザボエラだが、奢る平家は久しからず。

 異様にしぶとく、他者に取り入るのが絶妙に上手いザボエラだったが、それが通じない相手もいる。

 私心なしにバーンに仕えるミストバーンは、ダイ達がバーンパレスの奥に侵入したという知らせを聞くと、ザボエラをあっさり見捨ててその場を去ってしまった。

 ザボエラが準備しておいた数百匹もの怪物は、その時、すでに倒された後だった。
 勇者一行抜きにもかかわらず、援護射撃に徹した人間や彼等に味方する怪物達に取り囲まれ、最大のピンチを迎えたザボエラだったが、彼には切り札があった。

 自分の配下の怪物が殺されることを最初から考慮していたザボエラは、怪物の死体で自分の身体の周囲を固めるという超魔合体魔法を発動!
 コンプレックスだった小さな身体の十数倍の大きさを持つ、巨大ゾンビを完成させた。


 なにせ死体なだけに、切られてもザボエラは痛みを感じない。
 しかも、死体を凝縮させてゴムのように柔軟性を高めているので、ほとんどの攻撃を吸収してしまい、中心部に潜んでいるザボエラには届かないように設定されている。

 おまけに身体に食い込んだ刃も、ザボエラ自慢の毒により腐食し使い物にならなくなるという用心までしているため、この場ではほぼ無敵状態。

 自分の身を守るためなら研究熱心なザボエラは、過剰回復呪文の効力を持つ閃華列光拳対策として、生命力のないゾンビの使用を考えたようだ。

 ……どうでもいいが、このザボエラの切り札って、今までの超魔生物の開発とは180度違った方向にいっている気がするぞ(笑)

 自分を全く鍛えず、そして傷つけず、しかし、周囲にいる者を安全圏から痛ぶりたいという最低の発想から生まれたこの超魔ゾンビは、ダイ達5人を除く勇者一行にとってはとてつもなく強大な敵となった。

 その圧倒的優位な立場にいい気になったザボエラは、とんでもないミスをする結果になる。

 本来ならサボエラがすべきは、人間達が死守している光の魔法円を消し去って、レオナのかけた大破邪呪文の効果の解除だ。

 しかし、人間やクロコダインをいたぶるのに夢中になっていたザボエラは、ノヴァの命を懸けた攻撃を見くびり過ぎた。

 確かにノヴァの攻撃はザボエラゾンビを傷つけるには力及ばず、本人の寿命を削る無駄の多い攻撃だった。
 だが、その気迫が、ロン・ベルクの心を動かしたのだ。

 バーンとさえ渡り合えるだけの実力を持っているロン・ベルクは、自分の腕が壊れてしまうのを覚悟で、ザボエラゾンビを一撃粉砕してしまう。
 しかし、ザボエラのしぶとさはすごかった。

 辛うじてゾンビから抜け出し、息も絶え絶えに身体を引きずりながらこっそりと逃げようとしていたのだから、ある意味ですごい奴である。

 体力も魔法力も切り札も使い果たしたザボエラの逃亡を、ただ一人気付いたのはクロコダイン。
 さすがに魔王軍時代からの付き合いだけあって、彼だけはザボエラの逃亡を察知した。
 そして、彼をこのまま野放しにすれば、またダイ達を付け狙ってくると理解していたのだ。

 こうなったら恥も外聞もないとばかりにクロコダインにすがりつき、彼の人情につけこんで油断させようと泣き落としにかかるのだから、ザボエラってば本気で手段を選ばない。そして、ザボエラには体内の毒を利用して、相手を催眠状態に陥れて操る能力がある。

 スキを狙って毒爪を打ち込もうとするが、クロコダインはそんな猿芝居にはだまされず、しっかりとザボエラにとどめを刺した。

 これでさすがのザボエラのジ・エンドである。
 ……ふっ、どこまでも褒め所のない敵だった。

 

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