1 無二の親友! ダイとポップ

 

 ダイの住むデルムリン島で出会ったダイとポップは、兄弟弟子として同じようにアバンに学び、冒険を始めた時からずっと一緒に旅をし、共に戦ってきた仲間だけあって、気もぴったり合った親友同士だ。

 親友同士というものは性格的に似た者同士か、あるいは逆に性格がまったく違う者同士、という組み合わせが多いが、ダイとポップはどちらかといえば後者に当たるだろう。

 おおらかで素直なダイと、お調子者で意地っ張りなポップ――性格がまったく違う割には、ダイとポップはケンカをしたこともない。

 けっこう短気なポップは初対面でも気に入らない相手と見ればケンカをしちゃうタチだから意外かもしれないが、二人の行動を追ってみるとその理由がよ〜く分かる。

 例えばポップがいきなりダイを置き去りにして逃げ出したり、見栄を張って大風呂敷を広げたり意地を張ったりと、普通だったら怒りそうなことをしでかしても、おおらかなダイはそれをたいして気にしやしない。ダイはポップを冷やかしてからかうことはあっても、文句を言ったりすることはない。

 ダイは最初の頃のポップがワガママだと評しているから、人の性格に関しての判断力がないわけではないのだが……。

 まあ、そんな風に細かなことをまったく気にしないおおらかさが、性格の違う二人の友情を育む基盤になったと言えば言えるが。

 勇者と魔法使いというかけ離れた職業のせいで、初期はともかく力の差が際立ち始めた頃から一緒に修行を受けることはなくなってしまったが、修行時と戦略上の作戦以外の時は、プライベートな時でも行動を共にすることが多い。

 二人ともどのくらい意識しているかは定かじゃないが、ダイとポップは互いに無いものを補いあって成長してきたキャラクターだ。

 ダイにとってはポップが、ポップにとってはダイがいなければ、それぞれここまで成長できなかったに違いない。ダイにとってポップは、最初の仲間という以上に人間そのものを信じさせてくれた大事な存在だ。自分が人間ではないと知りショックを受けて人間を信じ切れなくなった時、その迷いを吹っ切れたのは、ダイをどこまでも信じてくれるポップがいたから――。

 ダイが勇者だからとか竜の騎士だからという理由で信頼を寄せてくれる者は多いが、ポップはそんなこととは関係なく、ダイがダイだからこそ信じている。
 ……そのことに、ダイは何度も救われたし、嬉しくも思ったはずだ。

 そして、ポップにとってダイは、より強い自分に変われるきっかけになった、心の支えだ。

 ポップ自身、心のどこかで嫌っていた口先だけのお調子者から、勇気を持った人間になるために努力してこられたのも、ダイやマァムの存在がなければ有り得なかった。

 勝てないかもしれない相手と戦うダイと共にいることで、ポップも戦ってこられた。そして、勇気を身につけてきたのだ。

 二人の友情の深さは物語の随所で見られるが、特に印象的なのはやはり対バラン戦前後だろう。記憶喪失になったダイの記憶を呼び戻し、バランの心を揺り動かしたのは紛れもなくポップの想いの強さだ。

 他にも魔法薬のせいで寝入っていたのに、ポップの声に出さない助けを聞きとめ、ダイが助けに駆けつけたことや、落ち込んだダイが誰にも行く先を告げずにルーラで逃げ出した時、ポップがその場所を見付け出したなど、二人の深い絆を感じさせるエピソードは数多くある。

 お互いにまったく対等で、肩肘を張る事なく素直に互いを思いやることのできるダイとポップは、見ていて気持ちがいいくらい固い絆で結ばれた親友同士だ。

 気楽な楽しい旅の時も、命を賭けた戦いの時も変わらずに一緒にいた二人は、最後の時まで運命を共にした。
 それだけに物語最後での二人の別れが、残念でならない。
 
 

  


  
  

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