1 両思いでも、進展なし! ダイとレオナのリトル・ロマンス

  

 ダイは、レオナが大好きだ。
 レオナをとても大切に思っていて、彼女を守ってあげたいと考えている。

 そして、レオナもダイが好きだ。
 勇敢で元気一杯の勇者の少年を、心の底から信頼している。

 勇者を目指す少年と、そんな彼に助けられたお姫様……そんな、心温まるおとぎ話のような関係――つまり、ダイとレオナは天下無敵の両思いのカップルなのだ。

 ……しかし、ダイは12歳、レオナは14歳。
 年齢的に、ちっともラブラブな展開にならないのも無理はない。

 年よりもおませで、ロマンチックな雰囲気が好きなレオナとは裏腹に、ダイはその年頃の男の子としても子供っぽく、まだ恋と友情の区別さえはっきりとはしていない。


 それに、恋愛柄味の深刻な雰囲気が苦手で、そんな雰囲気をさけてしまう淡白な性格だ。
 それに怪物だらけの島で暮らしていたダイはどうも性についても疎いようで、グラマーな女性に弱い男心をまったく理解していない。

 いつぞや、ポップが『パフパフ』について教えていたが、ダイはよく分かっていないような感じだった。やっぱり鈍感というか、ニブいというべきか……まぁ、ダイやレオナぐらいの年齢ならば、男の子の方が格段に精神的な成長は遅いものだ、レオナは気長に待つべきだろう。

 しかし『恋人未満』な立場はしかたがないといえるが、実はレオナは『親友以上』とはいえなかったりする。現にダイが記憶を失った時も、ダイが自信を喪失して失踪した時も、ダイを立ち直らせたのはレオナではなくポップなのだから。

 レオナからもらったナイフの事を朧気に思い出したりなど、細やかな見せ場はあるものの、二人の絆を強く感じさせるような――そんなエピソードはろくすっぽない。
 しかし、それも無理のないこと。

 二人の関係を見てみればその理由がよく分かる。
 両想いなのに進展がないのは年齢やダイの鈍感さも原因だが、なにより一番の原因は二人が勇者と姫だということだ。ダイは世界を救うために人々の期待を一心に背負っているし、レオナは魔王軍と戦うことを呼び掛けた国の王女として、人々を導かなければいけない義務がある。

 二人とも責任感が強いため自分の感情よりも、まず、なすべきことをなさなければならない、という思いある。
 特に、王女のレオナはそんな思いが強い。

 例えばダイが記憶喪失になった時、それを嘆き悲しみながらも、レオナは『勇者』が魔王軍の軍団長に連れていかれることを恐れ、対抗するために戦った。もちろんダイはレオナの大切な友達だし、単に友達を守りたいという想いもあっただろうが、責任感と使命感の強いレオナは自分の感情を抑えて人を導くことを優先する。

 そんな毅然とした凛々しさがレオナの魅力でもあるのだが、ダイは指導者としてのレオナよりも、勝ち気でさっぱりとした普通の少女のレオナの方が好きだ。

 作品中でダイは、姫としてみんなをまとめるレオナはなんだか冷たい感じがすると語っていた。冷静な分析よりも独自の感性で物事を判断するダイは、そんなレオナの微妙な冷たさを敏感に感じているのかもしれない。冷静な判断力が大切なものなのはもちろんだが、『勇者』や立場とは関係なく、ただ友達であるダイを連れていかれるのを拒んだポップのように、自分の感情や本音をぶつけなければ、本当に人の心を動かすことはできない。

 ――そのことを、レオナはいつか、知るだろう。
 平和を取り戻し、必要以上の責任を負うことがなくなった時、ダイとレオナは初めて勇者と姫という頚城から解放され、素直な気持ちで互いを見詰め合うことができるはず。

 最終回後の再会を、望まずにはいられない。
 一度の別れの後の再会は、二人を多少は大人にしているだろう。
 二人のリトル・ロマンスが始まるのはそれからだ。
 

 

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