4 マァムの想い…ほのかに揺れる乙女心 |
ポップ君から一途な想いを寄せられているのに、いっこうに気付かないマァム。そんな鈍感な彼女にも、一応気にかかる人はいる。 敵として出会った時から、マァムは彼のことを気にかけていた。 強さとは裏腹の孤独さ――いまだに悲しみと苦しみから逃れられずに戦い続けているヒュンケルに、マァムはなぜか心を惹きつけられるようだ。 ヒュンケルの力になってあげたい……側にいてあげたい……そんな風に感じているマァムだが、それが恋愛感情かどうかは本人もあまり自信がないようだ。 それに、マァムは長い間そんな自分の感情を追及してみたいとは思わなかった。 しかし、側にいることだけが相手を救うことには繋がらない。 ――だが、あえて相手の側にいようとはしないマァムは、本当に彼に恋をしているかどうか疑わしいものだ。 相手を信じているとか信じていないにも拘らず、ただひたすら相手と共にいたいというのが恋人同士の想いというもの。これは片思いでも同じこと――やはり好きな相手となら、少しの間でも一緒にいたいと思うのが普通だろう。しかし、マァムはヒュンケルを心配しながらも、いつも一緒にいたいという感情は薄いようだ。 それに、ヒュンケルが自分をどう思っているかという点もあまり意識しているようには見えない。ヒュンケルを気にかけながらも、特に男性として意識することのなかったマァムがヒュンケルへの想いを考えるようになったのは、エイミがみんなの前でヒュンケルへの気持ちを打ち明けた事件がきっかけだ。 思いもかけないエイミの告白に、動揺したマァムは自分の気持ちに整理をつけたいため、ポップに相談を持ちかけている。 普通なら、恋に関しての相談は同性への方が打ち明けやすいもの……レオナに話を持ちかける方が自然なのに、マァムはそうはしなかった。 ただ漠然とポップにしかそんなことを相談できないと思っていたマァムは、なぜそんな風にポップを頼ったのか、自分の意識下の思いに気づいていないらしい。 妙に人の気持ちに詳しいポップは、マァムの口に出さない落ち込みまで読み取って、何度となく彼女を励ました。その積み重ねがポップへの信頼感に繋がっているのだが、マァムはそれを意識していなかったようだ。 ただでさえ別のことで悩んでいたポップが、一番相談されたくないヒュンケルへの恋愛相談を聞かれて動揺し、マァムが誰が好きでも自分には関係がないと突っ撥ねたのにマァムはショックを受けている。 だが、マァムはそんなポップの態度に隠された真意を読み取ることも、自分の心の中で一番大きな存在を占めている人を自覚することもできない。 彼女がそんなあやふやな想いを見詰め直す気になったのは、対アルビナス戦の後のこと――他人の真摯な想いの強さを見て、マァムは初めて『恋愛』を意識するのだ。 恋を知る前の少女であるマァムは、自分の想いにもそして人の想いにも無頓着なところがあった。
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