竜の騎士を崇める国テランは、他の王国に比べて独自の文化を持っているためか、王家の在り方が他国とはやや異なっています。
　基本的には他の王家と同じく、直系重視で第一王子が王位を継承する建て前はとっているものの、他国に比べると血筋を貴ぶ気質に薄い傾向があります。

　そのため、むしろ突出した才能を持つ者を貴び、積極的に王家に迎え入れる傾向を持っています。
　また、男子相続が基本とはいえ、能力を重視するためテランでは女子相続も承認されています。

　かつては竜の騎士が国王を指名した古事に基づき、テラン国王には王族の中から次期後継者を指名する権限があり、国民はそれを無条件に承服していたとか。
　その場合、出自が養子であろうと、問題とされません。つまり、才能に恵まれさえすれば、王族の養子となって国王となるのも、この国では夢ではないのです！

　……まあ、お国柄のせいか、野心家が少ないために積極的にそれに挑む者はごく少ないんですけどね（笑）

　実際、現在の国王フォンケルは実子がいないため、血の繋がりのあるアイン王子を養子に迎え入れ、彼を第一王子としています。ですがアイン王子は病弱な上におっとりとした気質であり、国王の器ではないと自他共に口にする程。

　王子達がすべて養子であり年齢も似たり寄ったりな点から決め手に欠け、また現国王が争いを嫌う考えがあるせいか、いまだにテランの次期国王は指名されていません。

　実は、この次期国王がはっきりとしていない点も、国民の国離れの風潮に拍車を掛けている点。
　今のところ、テランの王位継承者達は以下の通りです。

第一位　フォンケルの実兄。弟と同じく温厚な性格。兄がいるにもかかわらず、弟が国王となったのは能力を重視する国柄ゆえ、先王が弟であるフォンケルを国王として指名したためです。
　高齢のため彼の王位相続はまず有り得ないし、あったとしても中継ぎ的な意味合いになるだろうと見なされています。また、彼はドライとメルルの義父に当たります。

第二位　正式名はアインシュタイン＝ユーリ＝ド＝テラン。物語登場時は２２才
　フォンケルの養子である第一王子。先王の外孫の一人であり、テラン生まれのテラン育ちです。最有力次期国王候補ではありますが、病弱であり気弱な性格。

第三位　正式名はアレッサンドロ＝ツヴァイ＝ド＝テラン　物語登場時は２１才
　フォンケルの養子である第二王子。彼も先王の外孫の一人ですが、ベンガーナ王国に嫁いだテランの姫の息子。野心家の親戚の後押しでテラン王家の養子となりました。王位を狙う気を持つ、テランには珍しい野心的な性格です。

第四位　正式名はドライアード＝リーフ＝ド＝テラン　物語登場時は１９才
　実兄の養子である第三王子。テラン生まれの孤児ですが、特殊な才能を見出だされて養子へと望まれて王家に。身分的には、一番後ろ盾が弱いです。メルルと同じく優れた占い師の能力を持っていますが、かなり独特な占いな上に、成長と同時に力が落ちつつある占い師です。

第五位　正式名はメルローズ＝マリー＝ド＝テラン　王女になったのは１７才の時。
　実兄の養女である、メルル（メルローズ姫）　曾祖父が先々代の王の外孫という身分ですが、占い師としての能力の高さは歴代の王族と比べてもずば抜けています。