『勇者だった少年 ー前編ー』

 
 

 中央大陸ギルドメイン。
 その大陸で一番大きな山脈であるギルドメイン山脈の麓……テラン王国やベルダイン王国よりやや東方に位置する小さな村、ランカークス。

 魔王軍との戦いの最中でも戦火を免れた程小さなこの村は、世界が平和になってからも変わらずにのんびりと時間が流れている。
 そのランカークスの近くに存在する森は、深く、入り組んだ作りになっている。

 地元の人間さえあまり踏み込まない森の奥深くに、人知れずに立っている小さな小屋がある。
 夕闇が迫る中、その小屋目掛けて瞬間移動呪文の軌跡が閃いた――。







 ドォガシャアアッ!
 派手な音と共に地面に投げ出されたポップは、顔をしかめて呻く。

「い……てててぇ……っ」

 人間には、向き、不向きというものがある。
 いまや15歳と言う若さで世界有数の魔法使いであり、ほとんどの魔法を自在に操れる上に高い応用力を持つポップだが、苦手な魔法も存在する。

 移動自体は得意なくせに、瞬間移動呪文の着地だけはいつまで経ってもうまくはならない。
 なかなか起きあがれないでいるポップの前で、小屋の扉が開かれた。

「すごい音が聞こえたと思ったら……やっぱりポップだったのかい?」

 現れた少年を見て、ポップの目が大きく見開かれる。
 ポップとさして変わらない年頃の、質素な村人風の服装をした少年。以前と全然雰囲気が違うが、仲間を見間違えるはずもない。

「えっ、ノヴァ!?」

 北の勇者と呼ばれた、リンガイア王国の少年。
 リンガイアの重臣の息子であり、闘気を操る剣術に優れたこの少年もまた、勇者一行の一員だ。

 自尊心が強く、自分以上の者に出会ったことのない自惚れの高さや生意気さのせいで初対面の印象こそ悪かったが、ノヴァは他人の実力を認め、真摯に反省できる長所を備えていた。

 最後の闘いでは、自分の実力不足を素直に認め、自ら進んで後方援護に回ってくれたほどだ。

「びっくりしたよ、どうしたんだい、急にこんな所に来るなんて」

「それはこっちのセリフだって。ノヴァ、なんでおまえこそ、こんな所にいるんだよ? 故郷に帰ったんじゃなかったのか?」

 ポップが最後にノヴァに会ったのは、5日前。ちょうど、ポップが最後の戦いの後の昏睡から意識を取り戻した翌日だ。レオナの宣言により、各自が自国に帰って体勢を立て直す方針を決定したため、取り急ぎ全員で移動した日のことだ。

 その時のポップは目覚めたばかりだったため、安静を強いられていたせいもあり、ろくにノヴァとは話す余裕もなかった。だが、ポップにしろノヴァにしろ、瞬間移動呪文の使い手だ、別れに対して他の人間のように強い意識は持たない。

 会いたいと思えば、いつでも会える。
 そう思えばこそ、ポップの体調を慮ったノヴァと、忙しそうなノヴァを気遣ったポップの別れは、行く先さえ聞かないあっさりとした物になった。

 だが、ごく当たり前のように、ノヴァもまた故郷のリンガイアに帰ったのだろうとポップは思っていたのだが。

「話してなかったっけ? ボクはロン・ベルクさんに弟子入りしたんだ」

「弟子入りぃ?」

 戸惑うポップの目の前で、ふらりと小屋の中から出てきたのは、長身の、顔に大きな傷を負った魔族の男だった。

 魔界きっての伝説の名工と呼ばれた、ロン・ベルク。
 だが、人間に荷担して大魔王バーンとの戦いの最中、彼はその腕を壊してしまった。

 両腕に包帯を巻き、だらりと力なく腕を垂らしたロン・ベルクは、いささか皮肉な笑みでポップを出迎える。

「ふん、誰かと思ったらジャンクの息子じゃないか。里帰りに来たんなら、いささか場所がズレているぞ」

「別に、家に帰りに来たんじゃないよ! おれ、あんたに用があって来たんだ」

「用? これは驚いたな、今更もいいところだ。戦いが終わった後に、武器職人に何の用がある? それに見ての通り、オレはもう腕をぶっこわしてしまって、武器なんかは作ってやれないしな」

 捻くれ者の魔族が、一筋縄ではいかない相手なのは百も承知だ。だからこそ、ポップは駆け引きを使わずに直球で勝負を賭けた。どうせ、そんなに時間はないのだ。

「違うよ。ただ……試してみたい魔法があるんだ。あんたの腕を、おれに治させくれないか?」







「ん……!」

 地面に横たわるロン・ベルクを中心に、時間をかけて入念に書き上げた魔法陣。
 その中に足を踏み入れたポップは、目を閉じて全ての感覚を遮断し、魔法感知感覚へと切り換える。

 それと同時に、ポップの身体が仄かな光の輝きに包まれだす。
 視覚や聴覚、嗅覚が薄れていくのと引き換えに、研ぎ澄まされていく魔法感覚。変化がないのは、触覚ぐらいのものだ。

 世界が切り替わるかのような感覚は、目眩とそれなりの魔法力の消耗を伴う。おまけに感覚を切り換えている間は、ずっと魔法力を放出し続ければならない。だが、この感覚の切り替えを行うと、儀式魔法の威力が格段に底上げされる。

 まあ、試行中はほぼ無防備になってしまうから戦闘中は使えないし、きちんと準備された魔法陣の中でしか行えないという欠点は多々にあるが。

 意識を魔法感覚に合わせてしまうと、目をあけても周囲はぼんやりとしか知覚できなくなる。
 だが、別に困るというほどのものでもない。

 目の前に横たわる、魔族の姿はよく分かる。視覚ではない目が、その腕の現状を捕らえていた。

「ひどいな……回復機能が完全に破壊されていらぁ……」

 筋組織がズタズタに裂け、神経も原形をとどめていない。骨には微細なヒビが無数に入り、まともな形を保っているのが不思議なくらいだ。

 なによりもひどいのは、再生能力を促す部分までもが壊れきっている点だ。
 これでは回復魔法が効くはずもない。

「ああ。まあ、70年かそこらは腕も動くまいな」

 魔族ならではの長寿さを持つロン・ベルクは、たいした問題でもないように軽くそう言ってのける。
 が、人間であるポップやノヴァにとっては、それは途方もない年月だ。

「あいにく、おれはそんなに待てないんだよ。じゃ、悪いけど……試させてもらうぜ。断っておくけど相当痛むと思うし、それなりの危険はあると思う」

 それでもいいのかと問いかけると、息を飲んだのはノヴァの方だった。
 少し離れた場所から、心配そうにこちらを見ているノヴァには目もくれず、ロン・ベルクは無造作に答える。

「ああ、勝手にしろ」

「それじゃ、お言葉に甘えて……」

 意識を集中した途端、ポップの身体を覆う魔法力の輝きが桁違いなまでに高まった。その色合いは、ポップの魂の色のままに緑色だ。

 神秘の輝きに覆われた手を、ポップはロン・ベルクの両腕に当てる。
 そして、高らかに二つの呪文が唱えられた――!







「ふん……! ま、一応は礼は言っておくべきかな」

 手を無造作に動かしながら、ロン・ベルクは事も無げに言う。
 が、ノヴァの方はそこまで何事もなかったような態度など取れなかった。

「………………っ!!」

 驚きが強すぎて、口がぽかんと開いた形のままで固まり、動かせない。――というか、今、目の前で起こったのが何なのか、上手く理解できない。
 強い魔法力が発動された……それは分かる。

 だが、マホイミにザオラルと言う相反した呪文が、どのような効果でロン・ベルクを治癒したのか全く理解できなかった。

 ポップに聞こうにも、強い魔法を使ったせいかバテて荒い息をついてへたりこんでいる。……さすがに、そこに質問を投げ掛けるのは、気の毒に思えた。
 しかし、常識に縛られた理性が理解を拒んでも、現実は変わらない。

 朝、ノヴァ自身が変えたばかりの包帯を楽々と解くロン・ベルクの手の動きは滑らかで、さっきまでとは明らかに違う。

 それに、ひどい傷跡のせいで爛れていたロン・ベルクの腕は、多少の傷跡を残すものの普通といって差し支えない程度にまで回復していた。

「せ……先生、だ、いじょうぶ、なんですか?」

 恐る恐る聞いた言葉に、ロン・ベルクはさっきと同じように事も無げに答える。

「ああ。が、人間だったら、死んでいたところだったな」

 その返事にハッとしたのは、ノヴァだけでなくポップもだった。

「おまえさんの腕と発想は見事だが……残念ながら経験が足りないようだな。今の術は、過剰回復呪文が強すぎた。一応、腕は治ったようだが、タイミングが遅すぎた」

 その説明に、ポップが顔色を変えて慌ててロン・ベルクの腕に手を伸ばした。再び全身を魔法力で光らせながら、焦点の合っていない目でその腕をまじまじと見つめている。

「先生っ!? 平気なんですか? ポップ、これはどういうことなんだっ!?」

 思わず声を荒らげるノヴァや必死なポップに比べ、ロン・ベルクは常と全く変わらない淡々とした口調を崩しもしない。

「心配は要らない。治った、と言っただろう。完治はしたが、過剰回復の余波が強くて身体に過剰の負荷がかかった程度だ。まあ、人間だったら死んでいただろうが、魔族は身体は頑丈だからな」

 そう言いながら、ロン・ベルクは自分の腕にしがみつくポップを軽く押しやり、もういいと告げる。

「診たのなら、おまえも分かるだろう。腕は治ったんだ、身体にかかった負荷の分をマイナスしても、お釣がくる。これなら戦いはともまく、日常や鍛冶には不自由なさそうだしな」

 その言葉が嘘では無いと証明するかのように、ロン・ベルクはぐるぐると手を回したり、動かしたりして、手の機能の確認を繰り返す。

「反動によるダメージも、この分ならそう遠くない内に治るだろう。あれだけのダメージが後2、30年程度で全治するなら、オレにとってはもうけ物だ。やはり、ここは礼を言わせてもらうべきだな」

 それを聞いて、ノヴァはやっとホッとできた。
 魔法理論などはよくは分からないが、ロン・ベルクの腕がほぼ治ったというのなら、これほど嬉しい話はない。

 自分のせいで、恩人とも言えるロン・ベルクの腕を完全に破壊してしまったことは、ノヴァにとっては大きな負い目だったのだから。
 恩返しを成し遂げてくれたポップに礼を言おうとして――ノヴァは言葉に詰まった。

「ポップ?」

 すでに、魔法の光が失せたポップは、ひどく思い詰めたような表情で俯き、黙り込んでいた。

 難しい術を成功させた直後というよりも、失敗してしまった直後のようにさえ見える。 実際、ポップは悔しそうに呟いてさえいた。

「……くそっ、これで成功するはずだったのに……ッ!」

 その悔しさの意味が、ノヴァには分からない。
 確かに完全成功とは言えないかもしれないが、これだけ腕が動くようになれば充分と思えるのに、ポップにはそれだけでは足りないらしい。

「理屈通りにいかないのが、実戦ってものだ。おまえの理論ややり方が、間違っているわけじゃない。言っただろう、足りないのは経験だ。こればかりは、何度も繰り返して微妙なタイミングを自分の身体に染み込ませるしかあるまい」

 ロン・ベルクの忠告に、ノヴァはなんとなく納得する。
 今の魔法については分からないが、確かに魔法や技などは、自分のものにするまでは反復練習が書かせない。

 やり方を覚えているだけでは、駄目なのだ。
 考える前に自然に身体が反応するレベルにまで、何度も何度も練習を繰り返し、反射的に使えるようになるまで身体に染み込ませる。

 そこまで鍛えて、初めて技を習得したと言えるのだと、剣を習い始めた頃、よくそう言われた。

 魔法とて、それは変わるまい。
 だが、ポップは不満そうに毒づいた。

「そんなこと言ったって……っ! こんな危険な魔法なんか、そうそう誰かに試すわけにはいかねえよっ」

(おいっ、それはないだろうっ!?)

 危険と分かりきっている魔法を他人の身体で実験する非常識さに、ノヴァは文句の一つも言いたくなったが、かろうじてそれは押し殺した。
 ポップは最初から、危険だと言っていた。

 それを承知したのはロン・ベルク自身であるのなら、弟子であるノヴァが文句をつけるのは僣越だと判断したのだ。

 失敗したならまだしも、曲がりなりにも一応は成功しているのだ、それで責めるのも気の毒だろう。

 それに――ポップがひどく元気なく、がっかりとして見えるのも、文句をためらう理由だった。

 難度の高い魔法を使ったせいで疲れているせいもあるだろうが、よろっと立ち上がる姿には力が無かった。

「……とりあえず、実験に付き合ってくれて、ありがとさん。じゃあ、おれ、急ぐからもう行くよ」

 そう言って、そのまま瞬間移動呪文を唱えようとするポップを、ノヴァは思わず引き止めた。

「待てよ、ポップ。少し、休んでいった方がいいんじゃないのか? ずいぶん、疲れているようにみえるよ」

「でも、夕飯までには城に戻らないと……」

 ちらっと空を見上げて太陽の傾きを測るポップの顔色は、お世辞にもいいとは言えなかった。
 無茶な治療への不満より、彼自身への心配の気持ちの方が、強まる。

「それなら、まだ時間はあるんだろう? もう少しぐらいはいいじゃないか」

 重ねて薦めると、ポップはそれ以上固辞はしなかった。
 瞬間移動呪文は、あまりに疲れていると失敗の可能性もある。無理に挑戦して失敗するよりも、疲れをある程度回復させてから挑む方が遥かに楽だ。

「そうだな。こっちからも、礼もしたい。まあ、入りな」

 ロン・ベルクにも促され、ポップは今度は抵抗せずに素直に家の中に入った。








 ロン・ベルクの住んでいる家は、元々は樵小屋だ。
 木を切り倒し、それを炭にするために使用する際に使われていた小屋で、昔は樵が住んでいたそうだが、20年程前にその樵が隠居してからは放置されっぱなしだった。

 荒れ放題だったその小屋を、なんとか人が住める程度にまで補修したのは、ジャンクやスティーヌの手助けが大きい。

 建物自体は古いものの、補修した部分の木の香は新しく、窓に掛けられたカーテンや寝具類は清潔でこざっぱりとした印象があった。

(なんか、落ち着くな)

 詳しい事情は無論知らないが、雰囲気が実家に似ているせいか、ロン・ベルクの家はポップにとっては印象がよかった。

 ――が、台所の方から聞こえるドガシャガとやたらと派手に聞こえる音が、落ち着き気分をぶち壊してくれるのだが。

「なあ……あれ、ほっといていいのか?」

 声を潜めてこっそりと聞いてみると、テーブルに差し向かいに座ったロン・ベルクは気に留めた様子も無く悠然としたものだった。

「気にするな。いつものことだ」

「あれが、いつもなのかよ?」

 とても、尋常な騒ぎには聞こえないのだが、ロン・ベルクは気にする様子も無い。

「ああ。別にやらなくてもいいと言ったんだが、あの坊やは弟子は師の身の回りの世話をするものだといってきかなくてな」

 ロン・ベルクはさっそくのように酒を飲んでいるが、ポップはただ座っているだけなので、手持ちぶさたもいいところだ。
 それに、台所から漂う匂いが、なんとも気になる。

 美味しそうで気が引かれるとかではなく……なにやら焦げ臭いような、すっぱいような、変な匂いがしてくるのが不思議でならない。

 やがて、結構な時間が経ってから、ノヴァがようやくトレイを手にお茶を用意して現れる。

「すまない、待たせちゃって」

 と、遠慮がちにポップの前にカップが置かれるが――が、それを『お茶』と称していいものかどうか。

 色や薫りは確かに紅茶だが、やたらと濃くてドロッと濁った色合いは見るからに苦そうだ。

 口につけるのもためらうようなお茶は……予想通りというべきか、なにをどうしたらこんな味になるのかと思うぐらい、苦くて不味かった。

「ぶっ!? な、なんだよ、これっ」

 一口飲むなり、たまらずにふきだしてしまったポップを見て、ノヴァが慌てて謝罪する。

「ご、ごめん、料理とかって、まだ慣れてないんだ。今まで、やったことなかったから」

「慣れてないどころの味じゃないだろ、これ!? いったいどうやったら、ここまでひどくなるんだよっ!?」

 思わずそう言い返したポップに対して、ロン・ベルクはしみじみと納得したように頷く。
「ふむ……前から薄々思っていたが、やはり、その坊やの作る料理の類いは、人間の基準の味じゃなかったようだな」

(分かってたなら言えよっ、先にっ)

 心の底からそうツッコみたかったが、ここまで平然と一人酒を飲んでいる男に言っても始まるまいとポップは考え直す。

 それに、お茶程度でこれなら食事とかはどうなっているのだろうと、想像するだに恐ろしい。
 何よりこの後味の悪さを何とかしたくて、ポップは立ち上がった。

「お茶ぐらい、おれ、自分で入れるよ。ちょっと、道具を貸してもらうぜ」

「え、ああ、うん、どうぞ」

 一度、ポットの中身を捨てて、手際よく新しい茶葉を入れ替える。茶器を暖め、新たにお茶を注ぐポップの手慣れた手並みを、ノヴァもロン・ベルクもちょっと驚いた表情で見ていた。

「君……こういうの、得意なんだね」

「得意っていうか、お茶ぐらい入れられるって。おれ、これでも先生に料理ぐらいは仕込まれたからさ」

 大勇者アバンの趣味は、料理だ。
 その影響で、ポップもそれなりに料理を仕込まれた。魔法使いの修行とは全く無関係な気もするが、役に立つ特技には違いない。

「なかなか手際がいいものだな。どれ、オレにも一杯もらえるか? ああ、ついでにこいつにも頼む」

「……」

 ロン・ベルクの要求に、ノヴァがわずかに沈んだ表情を見せる。ポップはそれに気がつきはしたが、言われるままにお茶をめいめいに配った。

「美味しい……! こんなの、久しぶりに飲んだよ」

「ああ、美味いものだな」

(こいつら……いったいどーゆー食生活送ってきたんだろ?)

 心底感心したように褒められる気分は悪くないが、たかがお茶一杯でここまで反応されるとかえって戸惑うというものだ。

「ところで、聞くが――おまえさんは、いったいどんな武器が望みだ?」

 お茶をゆっくりと飲み干してのロン・ベルクの唐突なその一言に、ポップはきょとんと目を見開く。

「武器?」

「ああ、礼をしたいと言っただろう。幸いにも、もう炉は暖まっている。なんならすぐに取りかかれるぞ」

 返事も待たずに立ち上がり、鍛冶場へと向かうロン・ベルクを見て、ノヴァが慌てて後を追う。

「あ、手伝います!」

 さも当然のように先回りしようとしたノヴァだが、淡々とした声がそれを制した。

「いや、いい。今日はおまえに手伝ってもらおうか、ポップ。炉の火を強めてくれ」

「え?」

 ポップとノヴァの疑問の声が、見事に重なった。
                                   


                                    《続く》
  
  

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