『おっぱいクエスト〜狙われた女武闘家〜 3』
 

「……分かったわよ。言うことを聞けば、いいんでしょ!?」

 その口調には、押し殺そうにも押し殺せない悔しさが滲み出ていた。この取り引きが不本意でたまらないと、無言のまま訴えているかのようだ。
 嫌悪感も露わにマァムが自分を睨み付けてくるのを見て、ブラムはゾクリと震えた。

 それは、恐怖を感じたからではない。むしろ、逆……歓喜のあまり震え上がったのだ。

 今、マァムが見せた怒りの表情は、先程ポップに向けたものとは違っていた。あれ程親しそうだった少年にも見せなかった表情を、自分が独占したかと思うと、優越感がムクムクと膨れあがる。

 だが、もちろん、これだけでは足りない。
 もっともっと、他の誰の知らない彼女の表情を見せてもらわなければ気が済まない。羞恥に震える顔や屈辱に耐える顔、快感に戸惑う顔から快楽に溺れきったアヘ顔まで、くまなく見せてもらうつもりだ。

 もちろん、身体も例外ではない。
 生まれたままの姿を見るだけでは、到底飽き足りない。これまで誰にも見せたことのない姿を出し惜しみ無くさらけ出し、満足させてもらわなければ――。
 どうしても抑えきれず、ニヤニヤと笑いながらブラムは尊大に命令した。

「では、両手を頭の後ろに組んで立つんだ」

 その命令に、マァムは特に抵抗も見せずに従った。本人は無造作に行ったその所作に、ブラムは目を釘付けにされる。

(う、うぉおおおおおっ!)

 危うく叫びだしてしまいそうなほど、その姿は魅力的だった。
 この姿勢だと、自然に背を伸ばし胸を張ることになる。つまり――ただでさえ大きな胸が、ことさら大きく見える姿勢ということだ。しかも、邪魔な手に邪魔されることなく、その身体つきを余すことなく堪能できる姿勢でもある。

 さあ、どうぞお食べくださいとばかりに、無防備に突き出された理想のおっぱいを目の当たりにして、テンションが上がらないはずもない。今にも鼻血が吹き出さんばかりの興奮を味わいながらも、ブラムは変なところで小心で慎重だった。

「結構……、じゃあ、その手を縛るから抵抗するなよ?」

 念を押してから、その辺から拾って置いたロープを手に取る。荷物を梱包する際に利用したらしいロープは、細めで頼りなげな印象が強かったが、その分扱いやすかった。

 好みから言えば、両手を頭上で一纏めにして上から吊すポーズがいい。わざと身長より少し高めに吊るし、女性がつま先立ちをしなければならない苦しそうな姿勢がブラムのお気に入りではあるが、現実問題としてそれは難しい。

 何と言ってもここは洋品店の控え室だ、そもそも手を吊すのにちょうどいい梁など室内に存在しない。

 後ろ手にして、ついでに胸も括れ上がるほどぎちぎちに縛り上げるのにも憧れを感じているが、これも現実問題としては難しい。そもそも、ブラムに本格的なSMを出来るほどの技術はない。女性の胸を強調した縛りという物は、ある意味では職人技と言える程に熟練を要するものである。

 だから単純にマァムの両手首を縛り上げ、その余った縄で首を軽く一周させてから結びつけると、ブラムは一息ついた。
 どちらかと言えば不器用なブラムにとっては、ずいぶんと苦労させられたが、その甲斐はあったと自画自賛する。

「フフフ、よく似合うな」

 拘束されたマァムを見て、ブラムは大いに満足していた。
 頭の後ろに手を組まえた所を縛っているので、パッと見ただけでは手が縛られているのは分からない。だが、首を一周している縄がまるで首輪のように見えて、ブラムの支配感を満足させる。

 縛りはしたものの、それ程きつく縛ったわけではないので、じっとしている限りはたいして痛みはないだろう。だが、手首と首が縄で繋がれているため、下手に抗えば自分で自分の首を絞めてしまいかねない格好だ。これでは、ろくな抵抗もできまい。

 脅しのネタも合わせて、これでマァムの抵抗を完全に封じられると思うと愉快だった。

 相変わらず自分を睨み付けている気丈ささえも、気にはならない。
 鎖に繋がれた猛犬が離れた所にいる自分に吠えても気にならないように、むしろ無意味な反抗心を愛でたくもなる。

「よぉーし、では、まず最初はこれだ」

 ニヤニヤと笑いながら、ブラムはこれまた洋品店の備品であるメジャーを取り出した。これもまた、店から勝手に借りた物だった。それを両手でピンと張りながら、見せびらかすようにひらめかしつつマァムに近付く。

「なっ、何をする気!?」

 強気にそう問う声には、まだまだ怯えの色合いはない。だが、さすがに自分に迫ってくる男性を嫌ってか、わずかに後ずさろうとする。

「決まっているじゃないか、そのけしからんおっぱいのサイズを、よぉ〜く調べないとな。おっと、逃げたり、抵抗したりするのは無しにしてもらおうか。少しでも抵抗すればどうなるか……分かっているだろう?」

 その脅しは、面白い程の効き目があった。

「く……っ!」

 悔しそうに息を飲みながらも、マァムはぴたりと動きを止める。
 思い通りにマァムが言いなりになるのは嬉しいものの、それが自分ではなくポップのためだと思うと胸の奥に穏やかならぬ嫉妬が渦巻くが、そんな細やかな不満は接舷した胸の迫力の前に消え去った。

「おおっ、こ、これは……っ!! ク、クックックッ、いい! 実にいいね……素晴らしいよっ!!」

 猫背気味の背をさらに屈め、ブラムはマァムの胸に真正面から向き直った。自分の顔のすぐ目の前に広がる、たわわな果実に息が止まる。

 その胸は、実に完璧だった。
 遠目から見て一目惚れしたとは言え、ブラムには密かな懸念があった。もし、間近で実物を目の当たりにすれば、失望を味わうことになるのではないか、と――。

 一番あり得そうだと思っていたのが、実はあの胸が詰め物でできた偽乳だと言う不安だった。良くは知らないが、女は身体のラインを整えるために下着にパットを詰めたり、矯正下着で腰を絞ったりなど、詐欺としか思えない行動を取るものらしい。

 以前、自分の屋敷に勤めていた巨乳の新入りメイドのブラをこっそりくすねた際、やたらと分厚いパットが実装されていたのを目の当たりにした時は、寝込むほどに落ち込んだ物である。

 また、遠目からは美人に見えたのに、近付いてみたらたいしたことなかったなど、女性はとかく人を騙す術に長けている。ブラムの母親なども、その類いだ。

 年齢よりずっと若く見える美人と世間からは噂されているが、その美貌はとんでもなく高価でぶ厚い化粧による補正が大きい。そんな実例を見ているだけに、ブラムは内心では不安でいっぱいだった。

 しかし――メジャーを実際にマァムの身体に当てた瞬間、ブラムの心配は一蹴された。

(ほっ、本物だぁあああああっ)

 僅か一枚の薄布では、体型など隠しようもない。服が窮屈でたまらないとばかりに、張り切れんばかりの胸は確かに本物だった。ついでに言うのなら、マァムは全くのすっぴん……ノーメイクのようだ。

 これだけ近づいても、香水や化粧品の匂いが全くしない。上流階級ではむしろ常識とされている身だしなみだが、香水の匂いがあまり好きではないブラムにとっては、そこも高ポイントだった。

 香水などのごまかしではない、生のままの少女の匂いを嗅げるかと思うとそれだけでたぎってくるものがある。興奮のあまり手がブルブルと小刻みに震えるが、それでもフラムは意地と根性でメジャーをしっかりと握りしめる。

「さぁ、はからせてもらおうではないか、君の一番魅力的な場所を!」

 無防備に立ち尽くすマァムの頭上から、縄跳びのようにメジャーを後ろへとくぐらせ、ブラムは両手にしっかりと持ったメジャーをギュッと引き絞る。
 メジャーが一周するのは、もちろん胸の最大登頂部、いわゆるトップバストに当たる部分だ。

 マァムの胸部を一周したメジャーを、ちょうど、胸の前で締めつけるようにする。もちろん、計測が最大の目的なのだから、相手に痛みをくわえるほど強く締め付ける気などはない。

 たわわな胸にそって緩いカーブを描くメジャーは、胸の前で重なり合う。本来ならばメジャーでサイズを計測するのは背中側でやるものだが、ブラムはこの場所を譲るつもりなど微塵もない。

 なにせ、こんな素晴らしい場所はない。
 メジャーを絞る手が、豊かで柔らかな山にモロに当たっているのだから! さらにいうのであれば、すぐ目の前に見えるマァムの顔が、また絶品だった。

「……っ!」

 ひどく、悔しそうな表情を隠しもしない。それでいて、恥ずかしさも感じているのか顔が赤らんでいるのも、いい。今は、悔しさと恥ずかしさの割合が2:8と言ったところだろうか。

 それが、どう変化していくか思うだけでゾクゾクしてくる。
 そう思いながらも、ブラムは胸の前で合わせたメジャーの数値をしっかと目に焼き付けるのを忘れなかった。

「88センチとは、エクセレント! フフフ、素晴らしいサイズだねえ〜。いやぁ、思わず目を疑ってしまいそうだよ!」

「……気が済んだのなら、早く解いて」

 ひどく素っ気なく、突き放すようにマァムが言うが、もちろんそれに従うわけなどない。より正確さを求めるブラムの執念は、尋常な物ではなかった。

「何を馬鹿なことを……これからが、本番じゃないか! 確かにこの88センチというサイズは素晴らしい、だが、問題なのはカップの大きさだよ! さあ、隠し立てなんかやめてもらおうか、君の全てを調べ尽くさせてもらう……っ!」

 ハアハアと息を荒げ、ブラムは今度はメジャーをやや下へとずらす。今度はかるのはアンダーバスト……胸の膨らみのすぐ下の部分だ。女性の胸のサイズは、トップバストとアンダーバストの差によって決まる。

 手に胸の膨らみがぽよよんと当たるのを心地よく楽しみつつ、ブラムはこれ以上早くできない程の速度でメジャーを締め直し、その数値を目に焼き付ける。

 重なったメジャーの示す数値は、67・5センチ――すなわち、約20センチの差があるということ。その事実を知った途端、ブラムは雷に打たれたような衝撃に打ち震えた。

「これは……っ、Eカップだと――っ!」

 脳裏に、祝杯の音が響き渡った気がした。天国で聞こえる天使の鐘の音とは、まさにこのことかとブラムは狂喜する。……いや、ただの幻聴なのだが、ブラムにとっては真実だった。

 まさに、理想のサイズであり、ブラムが偽りの人形に偽乳を作る時の目安にしていたのと、同じサイズだ。まるで、ブラムの理想のままに作り上げられたかのような完璧な肉体を前にして、もう我慢が利くはずなどない。
 メジャーを投げ捨て、ブラムはマァムの胸を鷲掴んだ。

「きゃっ!?」

 驚いたのか、マァムがさすがに小さな声を上げるが、叫びたいのはいっそブラムの方だった。

(な、なんだ、これっ!? 嘘だろっ)

 服の上からでもはっきりと分かる、掌に余るほどのたわわな丸みは、ブラムにとってはおなじみだったはずだった。

 だが――実は、ブラムが本物の乳を触るのはこれが初めての体験だった。ブラムがいつも掴んでいた偽乳は、いくら柔らかくても握りしめればぎゅうっとだらしなく縮んでしまう。

 かといって、綿を詰め込みすぎれば堅くなりすぎて、柔らかみが全くなくなってつまらない。

 しかし、この胸はどうだ。
 指が沈み込んでしまいそうなほど柔らかいのに、それでいて弾力が桁違いだ。まるで指を跳ね返そうとするかのように、柔らかさの奥にぐっと弾力がある。

 試しに手を離すが、もちろん胸の大きさに変化はない。
 綿で作った偽乳のように、少し揉むだけで形が崩れてしまうなんてことはない。一度手を離してしまえば、何事もなかったかのようにぷりんと気持ちよく突き出している。

 その変化のなさが、ブラムの心に火をつける。
 征服しきれない山を前にした登山家のごとく、ブラムの心にもこの神秘の山を征服し、自分のものにしたいという欲望がムラムラと沸き上がった。

「くそぉっ、なんだよ、この乳はっ!? 一体、何を食べればこんなぷりっぷりした乳になるんだよっ!!」

 興奮のあまり、意味不明なことを喚き散らしながら、ブラムはぐいぐいとマァムの胸を揉む。真正面から挑みかかるがごとく、乱暴に胸を掴み、その形を確かめるとばかりに激しく上下左右へと揺する。

 こんなに派手な揉み方をすれば、人形の乳は5分と持たずに形が変わってしまったが、生身の胸はひたすらに丈夫だった。どんなに乱暴に扱っても、まるで弾むように胸は元の形に戻る。

 そんな手ひどい扱いにマァムが顔を僅かにしかめ、うめき声を噛み殺すのが、またたまらなかった。 
 女の子の苦しそうな表情には、ひどく何かを掻き立てられる気がする。

 元々、ブラムはアヘ顔至上主義とも言えるほど、感じやすくてエロい女が好みだった。

 ――まあ、女性と付き合った経験も無ければ、その手の商売をする女性の所に行くだけの勇気も無い、どうしようもない甲斐性なしの男なだけに、脳内妄想やらその手の小説に大きく偏ってはいるのだが、それでもブラムは少し触ればアンアンと悶え出すような女の子が好みだったのは事実だ。

 だが、どうだろう、今、実際にマァムの胸を揉んで、反応がエロくないことに少しも失望しない。むしろ、嫌がりつつも耐えるその姿が、かえって色っぽく見えて仕方が無かった。

 しばらく、無我夢中で力任せのように胸を揉みしだいていたブラムだったが、くしゃくしゃに乱れる武闘着を見て、はたと手をとめた。

「うぁおおお……っ」

 思わず、声が漏れてしまう。
 マァムが今、着ている武闘着はブラムが特注で作らせた絹製の武闘着だ。本来ならば、戦闘服でもある武闘着は見た目以上に分厚いものだが、絹は薄さが特徴的な布地だ。

 ふと気づけば、いつしか汗を吸ってぴったりと肌に吸い付く布地は、より生々しく胸を際立たせていた。薄い色合いがかろうじて肌を守ってはいるものの、しなやかな布は胸の頂点のぽっちまでをもしっかりと暴露してしまう。

 偽乳にも、必ず際立たせて飾り付けていた乳首が、混じりっけなしの天然物として目の前に現れた事実に、ブラムは生唾を飲み込んだ。

(そうだっ、せっかくの理想の乳なんだっ、単にもみもみするだけじゃもったいないっ!)

 もちろん、もみもみもしたいし、これからだってするつもりだ。だが、単に乱暴に揉むだけでなく、もっとねちっこく撫でたり、乳首をピンポイントで責めたいし、なによりもまだ、ブラムはマァムの胸を見てはいない。

 拳聖女の象徴とも言える武闘着姿のまま、服の上から弄ぶのもいやらしくて捨てがたいが、理想の生乳を目の当たりにしたいと願うのは、男性にとってほとんど本能だ。

 抗いがたい欲望のままに、ブラムはマァムの襟元に手を伸ばした。本来なら、ここで力尽くで思いっきり服を引き裂き、一気にぷりんと胸をさらけ出してやりたいところだが、あいにくブラムのはそこまでの怪力は無い。

 だが、あらかじめちゃっかりと用意していたハサミがある。ブラムが取り出した刃物を見て、マァムがはっとしたように顔色を変える。初めて怯えを見せた少女を前にして、ブラムはほくそ笑んだ。

「おや? 怖いのかい?」

 たとえハサミとは言え、刃物は刃物には違いない。尖った部分で的確に急所を狙えば、こんな日常品でも人を害することはできるのだから、警戒するのも当然だろう。

 しかし、ブラムから見れば、マァムのその怯えは滑稽だった。
 なぜなら、ブラムには彼女を傷つける気などないのだから。――女性的観念から言えば、女の子の身体の自由を奪って弄んでいる時点でアウトだろうが、ブラムの主観的には流血沙汰以外は無問題だ。

 ブラムはマァムにかすり傷一つ負わせるつもりもないし、無理矢理レイプするほどの度胸も経験もない。
 ただ、ただ、その胸をたっぷりと楽しませてもらいたいだけだ。その楽しみの中には、マァムの見せる様々な反応も含まれている。

 屈辱に打ち震え、誇り高く耐え忍ぶ姿も良かったが、そろそろ他の反応も見てみたい。

 たとえば、これほど気丈な女の子が泣きながら許しを請う姿なんてのも、悪くはない。マァムの口から「お願いだから、やめて……」なんて懇願されることを思うと、それだけで鼻の下が伸びてしまいそうだ。

 もちろん、そう言われたからってやめる気など全くないが、それでも「いやっ、やめてっ」と泣き叫ぶ女の子に、あれこれしてみたいなどと愚劣な妄想を抱いてしまうのが、男性心理というものだ。

 だからこそ、ブラムは細心の注意を払ってハサミの先で、マァムの胸をツンツンとつついてみせた。
 そして、悪役ばりに余裕たっぷりに怪しく笑う。

「フッフフフ、フフ、どうだい、もうやめて欲しいかい? そうなら、ボクにやめてくれと、すがって頼んでくれてもいいんだよ、いやむしろ、そうしろくださいっ!」

 ――余裕を噛ましたつもりが、後半は建前などぶっ飛んで欲望丸出しの口調になってしまっているが。
 しかし、マァムの反応はブラムの予想外だった。

 ブラムの後半の言葉に少しばかり不思議そうな表情を浮かべたものの、刃先に明らかに怯えていたはずの少女は、毅然とした顔で首を横に振る。

「――やめなくて、いいわ」

「ええっ!?」

 驚きのあまり、思わずブラムは素っ頓狂な声を上げてしまう。聞いた方が驚くなんて変な話だが、マァムは相変わらず硬い表情のままできっぱりと言い放つ。

「早く終わらせて……私には何をしてもいいけれど、ポップには手を出さないで!」

「――――!!」

 それを聞いた途端、ブラムは驚きのあまり数秒ほど硬直してしまった。
 ブラムの思っていた通り――、いや、それ以上に、マァムはどこまでも高潔な乙女だった。女性として当然の嫌悪感も、刃物に対する本能的な怯えも、他人のために耐えようと考える精神は、それこそ本物の聖女様だ。

 自堕落で自分勝手なブラムからは途方もないほど離れた潔白さを持つマァムの精神の気高さは、いっそ衝撃的なほどだった。

 が、そこで自分の行いを反省するような殊勝さなどブラムにはない。
 一瞬の衝撃の後に感じたのは、またもポップに対しての燃え立つような嫉妬の感情だった。

(またもあいつかっ!? こうやって耐えるのも、全部あいつのためなのかっ!? ちくしょうっ、大魔道士ポップめっ、どこまでも邪魔な奴めっ!)

 心の奥底でポップをひたすら呪いまくるが――そもそも、ポップを盾に脅しつけたのはブラムなのだが。
 しかし、そんなことは完全に忘れ果てたブラムは怒りのあまり震える手で、ハサミをマァムの襟元に突きつけた。

「そっちがその気なら、もう遠慮なんかしないからな!」

 最初から遠慮なんかしていなかったのだろうとツッコむ者は、ここにはいない。逆手に持ったハサミを勢いよく突きつけると、マァムもさすがに恐怖が勝ったのか目を閉じる。

 その襟元に無理矢理に刃先を入れたブラムは、一気にそのまま布地を切り裂いた。さすがは洋品店の備品と言うべきか、布を切る専用の裁ちバサミは驚くほどの切れ味を見せ、武闘着の襟元からお腹辺りまでが一直線に切り開かれる。

 下着も着けていない肌色がその下から覗くのを見て、ブラムは文字通りハサミを投げ捨てて切り目を左右に広げた。その途端、ぷりんっと豊かな胸がまろびでる。

「え……あっ!?」

 目を開けたマァムが、むき出しになった自分の胸を見て驚くが、その驚きはブラムの驚嘆とは比べものにならないだろう。

(す、すっげぇええぇぇぇええええええええっ!)

 生乳を前に、ブラムは息すら忘れていた。
 美しい――その一言に尽きる。
 こんなにも美しい双丘を、この先一生見ることなどないだろうと思えてしまうほど、そのおっぱいは美しかった。

 マァムはいかにも健康美に溢れた少女で、適度に日焼けをしている。貴族の女性の不自然な美白に辟易しているブラムから見れば、その自然美もマァムの魅力の一つだと思っていたのだが、生乳を見てその意見は一転する。

 マァムの胸は、どこまでも白かった。
 普段は服で隠され、日に当たらない部位であるその胸は、マァムの顔や手足に比べて、一段と白かった。おそらくは、それがマァム本来の肌色なのだろう。

 それこそ貴族の令嬢であるかのような、透き通るような白さときめ細やかさを見せる肌は、それでいて健康的な血色の良さのせいでうっすらピンクかかっている。その色合いだけでも、ありがとうございますと無意味に頭を下げまくりたくなるような代物だったが、さらにその胸を完璧にしているのは――乳首だ。

 服の上からでもあるのは分かっていたが、実際に見ると迫力とエロさが全く違う。
 白いおっぱいの頂点で、ポツッと豆粒のように膨らんでいる乳首の色合いに、ブラムは目を奪われていた。

(ぴ、ぴ、ぴぴぴっぴぴぴんくぅううううううううっ!)

 まるで、肌にほのかに乗った桃色を集めたかのように、その乳首の色合いは濃い。だが、肌の白さと同様に色白の体質なのか、淡いピンク色のその乳首はどこまでも初々しく、触れずにはいられないような魅力を放っている。

 無論、ブラムはその誘惑に抵抗しない。むしろ、本能の赴くままに、ピンポイントにそこをつまんだ。

「……いやっ!?」

 途端に、マァムの口から声が漏れる。
 反射のように漏れたその言葉に、ブラムはいたく満足した。

(やったぜ、ついに『いや』と言わせたぞっ!)

 さっきまではブラムが何をしたとしても、ツンとした態度を崩さなかった少女が見せた素の表情に、興奮を誘われる。そして、それ以上に興奮させられるのが乳首の感触そのものだ。

(うっぉおお、くにくにしている〜っ!)
 
 胸そのものの弾力とは、ちょっと違う。
 指先でつまめる程に小さいそれは、それでいてしっかりと手応えを感じる。少し力を入れれば、同じ弾力を持って抵抗するかのようなその感触が、たまらなかった。

 思わず、意味も無く何度も確かめたくなってしまう、不思議な手応えだ。そして、その手応えには思わぬおまけがついてきた。

「ぁ……っ、やっ!?」

 それは、マァムの反応だ。
 さっき胸を強く揉んでいた時よりも、今の方がよほどマァムの反応がいい。先ほどまでは明らかにブラムへの嫌悪感を強くにじませていたが、今はさすがに羞恥心の方が強まっているようだ。

 女性にとって敏感な場所なだけに、強がってばかりもいられないのだろう。年相応の小娘らしい、初々しい反応がまたたまらない。もっと、乳首をいじめてやりたくなってしまう。

 だが、そればかりに専念できないのは輝く双丘の誘惑のせいだ。
 マァムが身悶えする度に揺れるその胸に、全く手を伸ばさないことなどブラムには不可能だった。まるで吸い付けられるように、乳房全体を掴まずにはいられない。

「おお――っ!?」

 途端に、ブラムは両目をひん剥いた。
 さっき、さんざんなまでに胸を揉みまくったのだが――生乳は格が違った。布一枚剥ぎ取るだけで、ここまで違うのかと驚愕するほどに手応えが段違いだ。

 まず、真っ先に感じるのはしっとりした肌の質感だった。
 先ほど多少汗ばんだせいか、マァムの胸はわずかに湿り気を帯びているのか、掌にピタリと吸い付くような一体感に陶然とする。得も言われぬような官能的な肌触りに、ブラムは我知らずその胸を揉んでいた。

 無意識なのか、先ほどよりもやや丁寧に揉むその胸は、ブラムの掌からはみ出すほどだ。そのたっぷりとした質感を、吸い付くような肌の感触を、ブラムは息を荒げながら味わう。

 こね回すように掌を押しつけると、ぽちっと感じる乳首の感触がまた秀逸だった。

「やッ……、なん…の真似よ……っ!?」

 ブラムを撥ね付ける言葉にも、先ほどの勢いは消えている。こんなことをされるなんて思ってもいなかったのか、羞恥と戸惑いの間で揺れる真っ赤な顔が、愛らしくもいやらしい。

 無意識に逃げを打つその身体を追いかけて、ブラムはマァムの背に手を回し混んだ。

「いいから、じっとしていろ……っ!」

 もう、揉むだけだけで満足できるはずもない。この、掌からはみ出て余りあるほどのこの胸を、手だけではなく顔でも味わってみたい――その欲望にブラムは忠実に従った。

 まるで赤ん坊が母親の乳を求める熱心さで、しかしそれとは比べものにならない下卑た表情を浮かべたまま、ブラムはマァムの胸の谷間に深々と顔を埋めた――!  《続く》

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