『闇の翼 3』 |
「…………!」 ポップの目が、大きく見開かれる。 「どうしたの? ポップ、やめて欲しいんだろう? なら、教えてよ」 指での刺激を再開すると、ポップの身体が跳ねた。 「ぁう…っ」 「それとも、ずっとこんな風に弄ばれていたい?」 「や……っ、やめ…っ、やぁ…ん……っ…!」 ポップの内部にある固まりを指で強く挟むようにして刺激してやると、彼はガクガクと身を震わせて泣き叫ぶ。 「…っっ! ――は……ぁ…ううぅ……」 達した後、ぐったりともたれかかるポップの身体を、ダイはしっかりと受け止めてやる。刺激がよほど強すぎたのか、体内から指を引き抜かれてもポップはろくに気がついてもいないように無抵抗のままだ。 「もう、言った方がいいよ、ポップ。……大丈夫だよ、オレはベンガーナや他の国の王様とは違う。アレを悪用する気なんかないから」 その瞬間、ダイが浮かべた表情は欲望に駆られた男のものでも、勇者としてのものでもない。 「黒の核晶は、人間の手には余る存在だ。あんな危険なものを、一手に握る人間がいてはならないんだよ。――たとえ、それがおまえでもね、ポップ」 額が熱くなるのを、ダイは感じていた。 今、自分の額に竜の紋章が浮かんでいるだろうことを、ダイは自覚していた。 世界の天秤を揺るがす存在を決して許せず、その存在を抹消する使命を帯びた生物兵器。 「ずっと……ずっと前から、そんな気はしてたんだ」 悲しみを込めて、ダイはポップに告げる。 「身体の奥から、時々、衝動が込み上げてくる。そして、どこからか、声が聞こえるんだ。世界を乱す源となる者を、滅せよ……そう、声が告げるんだ。 ポップが驚く顔も、拒絶の言葉も見たくはなかったダイは、言い終わると同時に、無理にポップの顔をねじ曲げてまでキスをした。 「……っ…ん……っ」 かすかにもがくポップの唇を、ダイは存分に味わう。 もし、世界かポップかの二択を迫られたのなら、ダイは後者を選ぶだろう。 三界の均衡を保つため、それを揺るがす存在を滅せよ、と。 「分かる? おまえの存在って、オレだけじゃなくって……多分、世界にとってもすごく大きいんだ」 キスの合間に、ダイはポップに囁き続ける。 「おまえが生きているだけで、世界が危うくなる。おまえは死ぬべきだって、竜の騎士の意思と記憶は言い続けている」 感情と、本能と。 「でもね、オレはおまえが好きだよ。……誰よりも、一番好きなんだ」 一生告白しないでおくつもりだった気持ちを、ダイは涙と共に告げる。 「オレは……本当は、ずっと前から、覚悟していた。もしかして、オレこそが人間全てを滅ぼす存在になるかもしれないって。その時がきたら――多分、そうするしかないんだろうって」 大魔王バーンと戦った時は、人間のためになら、全てが終わったら自分が地上を去ってもいいと思っていた。 気持ちは変わらなかったとしても、今となっては竜の騎士の本能の方が強すぎる。おそらく、ダイは望んだとしてももう、自らの命を絶つことはできないだろう。 「いつか、オレは人間を滅ぼすかもしれない……! でも…、オレ……ポップだけは、殺したくない」 もう一度、好きだよと告げて、深いキスを与える。 「だから――おまえが一人で抱え込んでいるものを、オレにくれよ。そうすれば、もしかしたら宿命を変えられるかもしれない」 悩みに悩んだ揚げ句、ダイがやっと見つけた唯一の希望がそれだった。 その希望が、ダイを支えてくれた。 問題はポップの何を奪えば、竜の騎士の粛正の対象を逃れられるか分からない点だ。 それとも、二代目大魔道士としての名声や権力ゆえか。 そして、ダイが見い出だした希望が、皮肉にも黒の核晶だった。 ならば――こうは言えないだろうか。 竜の騎士であれば、黒の核晶の威力を抑え込みながら爆発させ、消滅させるのも不可能ではない。 その最中、もし命を落としたとしても本望だ。 「く…ろの…コア……?」 まだ快楽の余韻が残っているのか、ポップの口調はたどたどしい上に、意味が分かっているかどうかも怪しい。 「ああ。黒の核晶の場所を、教えてくれ。頼むから、オレにおまえを殺させないでくれよ……! おまえだけは、殺したくないんだ、ポップ……ッ!」 必死の訴えは、ポップの耳に届いたらしい。 こんなレイプ寸前の今でさえ、状況を測ろうとするようにその目は、はっきりとダイを捕らえた。 「……ダイ…。おまえに、……黒の核晶の、在り処は…教えない」 「――!?」 拒絶の答えを、ダイはすぐには受け入れられなかった。 「何…を、されても…おまえが、何を言おうと、ダメだ……。絶対に、教えられな…い……!」 その拒絶が、ダイに与えた絶望は大きかった。 最初にポップを押し倒した時以上の激情が、ダイを襲う。その衝撃に、今度はダイは耐えようとしなかった。 「……そう、か。なら、いいよ」 自棄っぱちに呟き、ダイはこの上なく大切に腕に抱えていたはずのポップの身体を、床に投げ出した。 「……っ!!」 苦痛にポップが顔をしかめるのにも構わず、ダイはその細い足を掴んで無理に折り曲げさせる姿勢を取らせる。 ポップを弄んでいる間にすっかり臨戦態勢にまで育った男の証は、開放を求めて脈打っていた。 「ダ、ダイッ!?」 自分の身に差し迫った危険を悟ったのか、ポップがイモムシのように身をよじって逃げようとする。 さっきまでダイが散々弄んだせいで、ちょっぴり赤く腫れ、ひくひくと動いている魅惑的な小さな孔――。 本来なら男を受け入れるようには出来ていない部分に、ダイは一気に自分の物を押し入れた。 「…ひぃ――っ!?」 声になりきってない悲鳴が、ポップの口から漏れた。 だが、ダイにとっては至福だった。 一部分だけで味わっているはずなのに、途方もない気持ちの良さが全身を震わせていた。とてもじっとしていられない刺激に、ダイは無意識に腰を動かしだした。 「や…やぁあーーっ、ぁああーっ!」 「……いいよ、ポップ。その悲鳴、ゾクゾクする」 すぐにも吐きだしたいと願う欲望を、ダイはグッと堪える。 「やめ…っ、や…だぁ……っ! 助け……ダイ…っ」 助けを求める声音が、ついにポップの口から漏れる。 「いいよ。黒の核晶の在り処を教えるなら、やめてあげる」 その言葉に、嘘はなかった。 「強情だな。――なら、黙ってオレに犯されていなよ」 大切で、大切でたまらない存在だからこそ、卑猥な侮蔑の言葉を投げつけるのは、奇妙な興奮を誘う。 そのどちらが強いか分からないまま、ダイは欲望に急かれるままにポップを犯す。 「…ひ……っ、…やぁっ」 小さく漏らす声に、かすかに混じる甘さ――それを聞き逃さずに、ダイは問い掛けた。 「ポップ……ひょっとして、抜かれる時の方が気持ちいいの?」 「……っ」 途端に顔を赤くして、ポップが目を逸らそうとする。 異物の挿入を拒否するのは、人体としての本能なのだから。 だが、恥ずかしさという感覚は理屈を超えて襲ってくるものだ。 「ポップって、思ってたよりやらしい身体してたんだね」 ダイの言葉が、ポップのプライドを傷つけたのは疑いようがない。だが、半分泣きべそをかきそうになりながらも、ダイを睨みつけてくる目に、ひどくそそられる。 「あ……ひぁ…っ、…ぅっ……やめ…っ!?」 本能として、休む間もなくガンガン突きまくりたい欲望はある。 苦痛を訴えているのに、どこか甘やかさを含んだその声を聞いているだけで、達してしまいそうに気持ちがいい。 どこまでも無垢で、誰の手も知らずにまっさらだったポップを、自分の色へと染め替えているような支配感が、どこまでも興奮をかきたてる。 ポップの目許に滲んでいた涙が、大きな玉となって連続で転がり落ちるようになってからようやく、ダイも限界を彼の中に欲望を放った。 「ポップ……出すよ」 わざわざそう教えてやったのは、そう言われた瞬間のポップの表情さえ逃したくなかったせいだ。 「…や……う…そ…だろ……?」 信じられないとばかりに、目を大きく見開くポップに無理やり身体を重ね、唇を合わせた。 くちゃくちゃと、互いの唾液が混ざり合う水音が嫌に淫らで、興奮を誘う。 「いいよ、ポップ……! おまえの身体って、すっごくエロくて気持ちいいよ。上のお口も……下のお口もね」 体内にまだ含んだままのものを意識させるよう、ぐいと腰を突き上げると、途端にポップの顔に怯えが走った。 「…や…っ……も、む、…り…っ」 「――じゃあ、黒の核晶の在り処を言う?」 「…………」 途端に口を閉ざすポップの耳元に、ダイは舌を這わせる。 「聞こえる? ポップの下のお口……くちゅぐちゅって、やらしい音を立ているよ。もっと、もっといっぱい、オレのを注いであげるね……!」 精液の放出で滑りが良くなったポップの孔を、ダイは今度は揺さぶり立てるようにかき混ぜだす。 「…あ……ぁあっ……あっ!?」 「まだだよ、ポップ。まだ、まだ、足りない……! もっと、おまえが欲しいんだ。もっと、もっと、ね……っ」 一度達したとは思えない程、ダイ自身ははち切れそうな高ぶりと硬度を取り戻していた。 飢えるような衝動のまま、ダイはポップを貪らずにはいられない。戦いの時に感じる高揚感にも似た熱さが、ダイの全身を包んでいた。 「…あ…熱……、やだ……あつ…っ」 「ポップの中は、ひんやりしてる……すっごく、気持ちいい、よ…」 ダイ自身でさえ分かる発熱だった。 夢中になってポップに肉杭を打ち込み続けているダイは、自分自身の異常には気がつかなかった。 固く張り詰めた筋肉に、縦に二本の線が生じ、ひび割れ始めたのを。 肉を押し退け、黒く、長い物が背を割った。見る間にそれは膨らみ、ダイの背中よりも大きく広がっていく。 「……っ!?」
だが、コウモリの被膜の薄さや弱々しさとは無縁だった。 ダイの父親、バランが見せた、竜の騎士の最終戦闘形態の姿。 「ぅうぅおおおおおおお――――!!」 雄叫びが、轟く。 だが、辛うじてそれを抑えられるのは、すぐ目の前に獲物がいるせいだ。すでにぐったりとしかかっているか弱い生き物……今まで感じていた欲望が、さらに倍にも膨れ上がった気がした。 ただでさえ狭く感じていたポップの中が、きゅっとしまったように感じる。それはポップの中が狭くなったのではなく、自分の逸物が膨れ上がったせいだと、ダイは気がつかなかった。 「…だ……ぃ…」 ポップのその呟きを聞いたのが、最後の記憶だった。
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