《お話の前に》

 

 ちょっと前まで、ぼくは一週間で一番土曜日が嫌いだった。
 でも、ぼくのお父さんとお母さんは、土曜日が一番好きな日。

 なぜなら、会社員で忙しいお父さんと、小学校の先生をしていて忙しいお母さんが、決まって一緒にデートする日だから。
 その日だけは二人とも恋人同士に戻って、好きな所に二人だけで遊びに行く。

 で、その間、当然のことながら、ぼくは家でお留守番。
 それを寂しいだろうって言う人は結構いるけど、いつもぼくは気楽でせいせいするって言い返すことにしている。――だって10才にもなって、夜、一人でいるのが怖いだなんて、誰に言える?

 けどさ……本当の、本音を言えば……ぼくは土曜日の夜は、本当は嫌いだったんだ。
 でも、今は違う。
 今のぼくには、土曜日は一週間で一番待ち遠しい日なんだ――。

 

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