『竜騎将バラン』(2021.3.20) |
瓦礫と化した町並み……傷ついた兵士に肩を貸しながら、ヒュンケルは超竜軍団の刻んだ戦禍の跡を眺めやる。 最強と言われた自分達カール騎士団がまるで歯が立たなかったと嘆く、傷を負った兵士。 彼の兄の名は、騎士ホルキンス。 剣の勝負では互角だったかもしれない……だが、バランはたたかいんあかで不意に剣を納めた。 瓦礫の下敷きになった、ブレスレットをはめた腕を指さした兵士は、一人ではどうにも出来ないと嘆く。瓦礫に近づいたヒュンケルは掌をかざし、闘気を集中させて瓦礫を吹き飛ばした。 瓦礫の下から現れた騎士ホルキンスの鎧には、ダイの額の紋章そっくりの跡が深々と刻まれていた――。 一方、竜の神殿で対峙しているダイとバラン。 太古の時代、世界には三つの種族が納めていた。人間、魔族、竜族……派遣を求めて争い合う彼らを粛正するために、人間の神、魔族の神、竜の神はそれぞれの長所を持った戦士を生み出すことにした。 竜の戦闘力、魔族の魔力、そして人間の心を持った究極の戦士――それこそが竜の騎士。
一瞬動揺するダイだが、重ねてバランに協力を要請され、断固として断る。剣の抜き放ち、人間の味方だと言い切るダイ。 相手の胸元を、確かに切り裂いたアバンストラッシュ――が、ダイは愕然と目を見張る。鎧にヒビこそ入ったが、バランは微動だにしなかった。 そのダイの腕を掴み、腕ずくでも連れて帰ると言うバランの額に竜の紋章が輝く。
水柱から弾き出されたダイを見て、みんなが一斉にダイの元へと駆け寄る。大丈夫かと呼びかけながら、ダイを抱き起こすポップ。 彼も竜の騎士なのかと考えるレオナ達だが、ダイは彼が超竜軍団・軍団長バランだと明かす。 光の柱を消し、地上に降りてきたバランも、それを肯定した。 嫌がるダイに、バランは予言するかのように諭す。 そう語ったバランもまた、瞑目する。が、ふざけるんじゃねえと怒鳴ったのはポップだった。 ポップはレオナにダイの回復を頼み、自分がバランをなんとかすると言う。 気合いを入れて杖を振り上げたポップは、ベタンの呪文を放つ。その途端、凄まじい重圧がかかってバランの足下の地面がめり込んだ。 が、足音を聞いてポップは強ばった表情をバランの方へ向ける。 バラン「竜の群れを束ねる軍団長が、竜よりも弱いとでも思ったか……?」 焦るポップはレオナを急かすが、レオナも今の回復速度で手一杯だ。 その余波で石の神殿は崩れ、木々は風で大きくなびき、湖は波に荒れ狂う。爆破の後には、バランの足下だけを残して大きなクレーターが発生していた。が、バランは何事もなかったかのように、周囲を見回す。 ダイの名を呼びながら、四つん這いになって彼の側に近づくレオナ。 ポップも苦しそうに起き上がりながら、同族でもダイを自由にする権利はないと反論する。 戸惑うレオナに、嘘だとショックを受けるダイ。 バラン「母親か……確かにこの子にはどことなく母親の面影がある……」 独り言のようにそう呟いてダイを見つめるバランの目は穏やかで、どこか優しさが感じられた。 その様子を、森の木の枝につり下がっていた悪魔の目玉はじっと見つめていた――。 悪魔の目玉に映った光景――それは、魔王城の大きな水晶玉にリアルタイムで映し出されていた。 竜の騎士の再会の立て役者はこの自分だと主張しつつ、それを隠そうとしていたハドラーの小心さを貶すキルバーン。 その場にいる全員が跪く中、ベールに覆われた玉座にバーンのシルエットが浮かぶ。ベール越しの影からでも窺える鋭い眼光と威圧感。 バーンからの質問に、ミストバーンもダイの実力について保証する。 青ざめるハドラーのすぐ後ろで、キルバーンはダイを獲得したあかつきには、バランに褒美を取らせることを暗に薦める。 思わず、反論するようにバーンの名を叫ぶハドラー。 そんなハドラーの表情を、キルバーンは仮面越しにじっと見つめていた。 悲喜こもごもが入れ混じる中、バーンが落ち着いた声音で呟く。 バーン「だが、そううまく事は運ばないらしい」 その言葉に、再び全員の目が水晶越しに見えるダイとバランに向けられた――。 ディーノを連れて帰るというバラン。 そして、水晶越しにハドラーもその光景を見ていた。
無言のまま、じっとダイを見つめるバラン。 バランを悪い人だという孫娘に対して、ナバラは竜の騎士に滅ぼされるのならば、自分達人間の方が悪いのだと言い切った。すでに諦観の念すら持っている祖母に、メルルは「そんな……」と言うものの、それ以上反論も出来なければ、動けもしなかった。 テランの民達の葛藤をよそに、バランはダイを人間の勇者として扱い、軍門に降らなければ殺すと宣言した。 立ち上がる力も無くしゃがみ込んでいたポップは、体力が回復しても何も出来ない不甲斐なさを痛感していた。 バランと相対するダイは、敵の強さを嫌と言うほど思い知っていた。 アバンストラッシュの構えを見ただけで、その技の特質を理解するバラン。 意識的に竜の力を呼び起こしたダイは、額に紋章を光らせる。それに呼応するように雨雲が立ちこめ、太陽を隠した。 その攻撃を、バランは剣を抜いて受け止める。剣でラィディンのエネルギーを吸収したせいで、全くダメージはない。 兜が、鎧が、粉々に砕けて散っていく。その勢いで跳ね飛ばされたダイの身体は、湖に沈んだ。 クロコダイン「待て! その男の相手は、オレがする」 獣王クロコダインとの再会に、力強い味方が来たと手放しに出喜ぶポップ。だが、ポップはクロコダインの手が震えていることに気がつく。 自分と戦えばどうなるか、分かっているのかと問うバランに対し、クロコダインは死ぬ覚悟があることを表明する。 バランとクロコダインは、会話を交わす。 そしてクロコダインもまた、袂を分かったかつての同僚に対して恥じる気持ちはなかった。バーンやハドラーに捧げた忠誠心が、ダイへ向かっただけだと彼は言う。 雨雲が晴れ、太陽がそこから覗く中、バランは自分にとっての太陽であった女性――ソアラの姿を思い出す。 互いの主張が合い譲れぬ以上、戦いは避けられない。 しかし、闘気は凄まじいがバランは棒立ちのままだ。 クロコダインは、見た。 バランの軽い手刀で腹をつかれたクロコダインは、砲弾でも喰らったかのようにすっ飛ばされる。 《感想》 『バランパパン、無双過ぎっ』 ところで、カール王国の生き残りの兵士とヒュンケルのカットから入っていくスタイル、渋くていいですね。 しかし、ヒュンケルが自分が魔王軍だったこと、それを知ったらこの男はさぞ恨むだろうなとモノローグで呟くシーンがカットされたのは、非常に悲しいです〜っ。 原作では、兵士は『自分の代わりに』兄を葬ってくれと頼んでいたのが、アニメでは『葬ってやりたいんだ』と、自分がやる手助けを頼んでいますね。 その代わりのように、バランとホルキンスのバトルシーンが増量されていましたね。弟兵士の話では互角っぽく言っていましたが、動きを見る限り、バランの剣の躱し方は余裕のある感じで、ホルキンスは思い詰めたような切迫感が印象的でした。 しかし、バランが剣を躱す際、首を後ろにのけぞらせる――ボクシングで言うスウェーで避けていました。これは、巧い人だと鼻先で敵の攻撃を躱す避け方になるのですが、まさにそんな印象でしたね。 バランが避ける際、のけぞった鼻を下から見上げる構図になっていましたが、ちゃんと鼻の穴も描かれていたのに感動しました♪ それにしてもホルキンス、騎士団長と言う割に鎧下を着ていないせいでやたら軽装に見えますね。そして、気になるのが腕にはめたブレスレット……ドッグ・タグのように団長以上が身につける認識票でしょうか? それとも、恋人から贈られた品などの、個人的なアイテムでしょうか? とりあえず弟兵士と昔のロカ以下のカール騎士団が身につけていなかったので、個人的な品に一票。 『これ……彼女がくれたんだ、お守りだって。心臓に近い左腕にはめれば、きっと命を守ってくれるからって。だから……この戦いが終わったら、オレも同じように彼女にプレゼントするつもりなんだよ。ブレスレットじゃなく、指輪をさ……』 ってな感じに、死亡フラグを立てていればいいと思います! ところでホルキンスの死亡シーン、原作では出血具合と言い、白目を剥く無残な死に顔と言い、なかなかのホラー風味でしたが、さすがにアニメではその辺が配慮されていましたね。 また、瓦礫をどけるのにヒュンケルが闘気を使ったのも原作と違う点。原作では無造作に、手で瓦礫を除いていましたしね(笑) バランパパンの語る竜の騎士の伝説、面白かったですが、イラストが……。 でも、竜の騎士が生まれたのだと説明する時に、左右にいた人間と魔族の神がすーっと真ん中で寄り添い、光り輝く図って……結婚式ですかいっ!?(笑) なんか、どう見ても三つの種族が合わさったと言うよりは、竜の神の立ち会いの下、人間と魔族がくっついたように見えたのですけど……これは、見る目が腐ってしまったせいなのか(笑) っていうか、物理的にくっついた構図でしたけどね。 光の後で生み出された竜の騎士は、見た目は割と普通の戦士っぽくて、ナバラさんの語る伝説の方が派手でしたね。 バランの語るバーンの説明、原作とは改変がありましたね。 原作バラン「いや、バーン様は世界の平和のために人間を滅ぼそうとなさっておられるのだ。悪いのは人間だ」 お、原作のバランは説明から結論という形を取り、二重敬語になっていたんですね。アニメでは、先に結論を出してから説明と、すっきりと分かりやすい文体に変更されていると思います。 ダイが人間の味方だと剣を構えるシーンで、ダイの横顔が剣の刃に映り込んでいるのがよかったです。 原作バラン「そうか。やむをえんな」 と、一言で済ませているのがにくいところ。 ダイがアバンストラッシュを仕掛ける前、剣の柄をちゃんと持ち直すアクションを入れるところなども、細かくていいです。 湖から吹き飛ばされたダイ、原作では剣を持ったまま地面に投げ出されていますが、アニメでは地面に落ちる前に手放していますね。 また、原作ではポップがダイを抱き起こす際、レオナは見ているだけなのですが、アニメでは手を伸ばしている分、距離が近く感じられます。 バランに人間に迫害されると言われ、ダイが俯くシーン。 原作では『そうなるかもしれない』と諦めているかのような表情に見えるのですが、アニメのダイは『そうじゃないと言いたいけど、言えない』と悔しがっているように見えます。 でも、いずれにせよ、ダイを庇うポップの主張には救われたと思います。 杖を振りかざして主張するポップのシーンには、見惚れました。 原作では、ダイは少しうるっとした顔をしていますが、アニメでは泣きたいのを我慢しているような表情に見えてしかたありません。 ダイの回復を頼むシーンでも、改変が 原作ポップ「姫さん、ダイにベホマで回復してやってくれ!! その調子じゃろくに戦えないぜ!」 アニメポップ「姫さんっ。ダイにベホマを!」 基本的に筆者は原作の台詞がカットされるのは残念だと思う主義なのですが、これに関してはアニメの方がいい感じですね♪ また、真剣な表情をしたポップ、レオナの背後にじっとポップを見つめるメルルが映り込んでいるのが好印象です。 ベタンと、それが破られるシーン、大迫力でカッコイイ! 大岩の上に、ちょこんと載せられた人形みたいに見えます。原作でも大岩の上に飛ばされていましたが、頭を向こう側に向けて下半身だけが見えているポーズだったのに。 メルルも木にもたれかかっているポーズが、微妙に乙女っぽく改変されていますね。しかも、しっかりとゴメちゃんを抱きかかえたまま! とっさに、ゴメちゃんを庇っていたのですね、……いいぞ、いいぞっ。 ダイがバランの息子だと聞いて、原作でレオナがポップの方を確かめるように向くシーンがカットされていたのは、ちょっと残念です。 代わりと言っては何ですが、ポップがバランに反論している時に、ナバラさんが目覚めるシーンが追加されていました。 そして、バランがダイを見下ろすシーン、やはり温かさが感じられるような気がしてなりません!(パート2) ええ、バラン的にはダイは母親似に見えているんでしょうね。 悪魔の目玉越しに魔王軍側に視点が移って、キルバーンの軽快な軽口と、時代劇のように大仰なミストバーンのセリフの対比が面白かったです。 原作ではハドラーがキルバーンにからかわれ、バーンにも「ダイの正体を知っていたのか?」と念を押されるなど、実に胃痛な追い詰められ方をしていましたが、アニメではバーンからの問いかけがカットされていましたね。 ……それはそれで、無視されているようでお気の毒(笑) ダイがバランに対抗して立ち上がるシーン、力がこもっていて実に良かったです♪ 後ろで、ナバラさんやメルルもちゃんと気絶から目を覚ましていたし。 ゴメちゃんをしっかり抱きしめているメルルが、実にキュート♪ そして、自説である『神の涙であるゴメちゃんは、無意識にその場にいる中で一番弱い者(条件:正しい心の持ち主)に寄り添う』説が正しいと確信しました! ディーノという名を拒否して、ダイと名乗るシーン『本当の名前もクソもあるものか!』と言う部分がカットされていましたね。ポップなら似合いそうな言い回しだなとは思うけど、ダイには少し不向きな気もするので、カットされてもいい気がします。 原作と違って、メルルが動こうとするタイミングがここになっていますね。 レオナも髪が長いけれど、後ろにまとめた髪型だと髪の動きが目立たないし、メルルの長さとしなやかさ、それに黒という色だからこそ、なびいた時の動きが目につきやすいですね。 ついでに、ナバラさん、原作では弱々しくメルルの服の裾を掴んでいましたが、アニメではサッと手を広げて止める動きがお見事! つまり、バランの視点から見れば、メルルの前にナバラが両手を広げて庇っている姿になります。何があっても孫娘の盾になろうという、ナバラの強い意志を感じさせるポーズですね。 説得すべき孫娘の方を向かず、天災の源であるバランから目を離さない辺り、的確な警戒心を感じます。敵から絶対に目を離さないのは、戦士の初歩の心構えなので……このばーちゃん、やっぱり只者じゃないですよ!(笑) そして、レオナがポップの回復に走るシーンもいいですね。 原作では座ったままズリズリと這っているのですが、立って走っていますね。 立ち上がれないポップが、膝を立てた不自然な姿勢で身構えていたのもいいですねえ。立つ力までは無いせいで半端な姿勢になっていましたが、それでもポップが必死に足掻いて立とうと頑張っていた感じがします。 ダイのライディンストラッシュ、バランのギガブレイク、どちらもすんごい迫力! 漫画だと右上から左下へ読み進める都合上、どうしても構図もそうなりがちですが、アニメでは原作の良さを活かしつつ、構図を左右逆転することが多い気がします。 しかし、ダイが沈んだのにゴメちゃんがポップとレオナの側に来たのは不満! ここは原作通り、沈んだダイを心配していち早く湖面の上を飛んでいて欲しかったです。 クロコダインの登場は、相変わらず格好いいですね♪ でも、ポップとレオナがクロコダインの説得で戦わずに湖に向かうシーンでの「悔しいわ、なんて無力なの」の台詞が削られているのが残念すぎる〜。 だけど、バランとクロコダインの会話が削られずにきっちりと入っていたのは嬉しいですよっ。 バランとクロコダインの激突は、予想通り迫力満点。でも、クロコダインが後方に飛ばされる時、ゴロゴロ転がるほどの勢いで飛ばされるとは思いませんでしたよ(笑) エンディングのキャストを見たら、ホルキンスの弟、名前なしの『兵士』かいっ。ううっ、名前をぷりーずっ。 予告は正統派でした♪ |