『竜騎将バラン』(2021.3.20)


《粗筋》

 瓦礫と化した町並み……傷ついた兵士に肩を貸しながら、ヒュンケルは超竜軍団の刻んだ戦禍の跡を眺めやる。
 魔王軍に属していたヒュンケルには、ダイ達がフレイザードと戦っていたわずかな期間に、カール王国が超竜軍団に滅ぼされたことがはっきりと理解できた。

 最強と言われた自分達カール騎士団がまるで歯が立たなかったと嘆く、傷を負った兵士。
 それを無言のまま聞くヒュンケルの表情には、どこか陰りがあった。
 
 そんなヒュンケルに、兵士は自分の兄を葬る手助けをしてくれないかと頼む。
 ヒュンケルの方を借りて城に向かいがてら、兵士は自分の兄の最後の戦いを語る。

 彼の兄の名は、騎士ホルキンス。
 カール王国騎士団長であり、隣国にも知られた英雄だった。だが、敵の軍団長――バランに倒されてしまった。

 剣の勝負では互角だったかもしれない……だが、バランはたたかいんあかで不意に剣を納めた。
 臆したのかと斬りかかるホルキンスだが、バランの額の紋章から生み出された光線により、胸を貫かれて絶命した――。

 瓦礫の下敷きになった、ブレスレットをはめた腕を指さした兵士は、一人ではどうにも出来ないと嘆く。瓦礫に近づいたヒュンケルは掌をかざし、闘気を集中させて瓦礫を吹き飛ばした。

 瓦礫の下から現れた騎士ホルキンスの鎧には、ダイの額の紋章そっくりの跡が深々と刻まれていた――。





 一方、竜の神殿で対峙しているダイとバラン。
 部下になり人間を滅ぼせというバランの一方的な要求に、激怒するダイ。だが、バランはそれこそが竜の騎士本来の役目だという。

 太古の時代、世界には三つの種族が納めていた。人間、魔族、竜族……派遣を求めて争い合う彼らを粛正するために、人間の神、魔族の神、竜の神はそれぞれの長所を持った戦士を生み出すことにした。

 竜の戦闘力、魔族の魔力、そして人間の心を持った究極の戦士――それこそが竜の騎士。
 世界を手に入れようという野心を持つ者が現れた場合、天罰を与えることこそが竜の騎士の使命だという。

 






 説明を聞いても、ダイは納得しなかった。
 世界を征服しようとしているバーンが悪いというダイに、バランは悪いのは人間だと諭す。バーンは世界のために、人間を滅ぼそうとしているというバラン。

 一瞬動揺するダイだが、重ねてバランに協力を要請され、断固として断る。剣の抜き放ち、人間の味方だと言い切るダイ。
 ダイの意見を静家に受け止めるバラン。
 大派遣を逆手に持ち直し、超竜軍団・軍団長バランにアバンストラッシュで斬りかかる。

 相手の胸元を、確かに切り裂いたアバンストラッシュ――が、ダイは愕然と目を見張る。鎧にヒビこそ入ったが、バランは微動だにしなかった。
 全然利かないと、驚きを露わにするダイ。

 そのダイの腕を掴み、腕ずくでも連れて帰ると言うバランの額に竜の紋章が輝く。
 初めて竜の紋章を目の当たりにするダイ。
 バランが気合いを込めた余波で竜水晶は壊れ、竜の神殿からは凄まじい光の柱が噴き上がる。






 その異変は、湖の上の神殿にいたポップ達にも伝わった。
 地響きと共に、静かな湖に大渦が現れる。凄まじい力を持った者の存在を予知し、震えながら頭を抱えるメルル。
 戸惑う彼らの目の前で、渦の中心から水柱が噴き上がる。その中にダイがいるのを発見するレオナ。

 水柱から弾き出されたダイを見て、みんなが一斉にダイの元へと駆け寄る。大丈夫かと呼びかけながら、ダイを抱き起こすポップ。
 が、平気だと答える前にダイは、敵意の籠もった目を湖の方へ向ける。
 光の柱の中、空中に浮かんだまま彼らを睥睨する男の額には、竜の紋章が浮かんでいた。

 彼も竜の騎士なのかと考えるレオナ達だが、ダイは彼が超竜軍団・軍団長バランだと明かす。
 しかし、竜の騎士はこの世に一人しか現れないはずだと言うメルル。

 光の柱を消し、地上に降りてきたバランも、それを肯定した。
 自分こそが本来の竜の騎士だと言い、ダイは例外的な存在だと言ったバランは、再び自分の部下になって人間を滅ぼすようにと命令する。

 嫌がるダイに、バランは予言するかのように諭す。
 成長するにつれ、力を増す竜の騎士は人間達に疎まれるようになり、迫害されると。
 それを聞いて、ベンガーナデパートで人間達に拒まれたことを思い出し、俯くダイ。

 そう語ったバランもまた、瞑目する。が、ふざけるんじゃねえと怒鳴ったのはポップだった。
 ダイを仲間だと言い切り、正体がなんであろうと迫害なんかしないと強く主張するポップ。そしてポップは、ダイが人間を滅ぼすために手を貸すことも有り得ないと、心底思っている。

 ポップはレオナにダイの回復を頼み、自分がバランをなんとかすると言う。
 それに対し、バランは身の程知らずだと歯牙にかける様子もない。

 気合いを入れて杖を振り上げたポップは、ベタンの呪文を放つ。その途端、凄まじい重圧がかかってバランの足下の地面がめり込んだ。
 レオナもダイにベホマをかけるのを肩越しに振り返って見て、これでダイも回復すると笑顔を浮かべるポップ。

 が、足音を聞いてポップは強ばった表情をバランの方へ向ける。
 重圧の中、それでも歩を進める竜騎将バラン……竜3匹を仕留めた自分の最大呪文が効かないことに、怯えるポップ。

バラン「竜の群れを束ねる軍団長が、竜よりも弱いとでも思ったか……?」

 焦るポップはレオナを急かすが、レオナも今の回復速度で手一杯だ。
 バランが額の紋章を光らせ、呪文を跳ね返す。ドーム状に膨らんだ呪文が、爆発するように周囲へと広がった。

 その余波で石の神殿は崩れ、木々は風で大きくなびき、湖は波に荒れ狂う。爆破の後には、バランの足下だけを残して大きなクレーターが発生していた。が、バランは何事もなかったかのように、周囲を見回す。
 ダイ達はちりぢりに飛ばされ、地面に倒れ伏していた。

 ダイの名を呼びながら、四つん這いになって彼の側に近づくレオナ。
 だが、すぐ近くまで来ていたバランに、その子はもらっていくと宣言され、とっさにダイの上に覆い被さり、庇おうとする。

 ポップも苦しそうに起き上がりながら、同族でもダイを自由にする権利はないと反論する。
 しかし、バランは自分の権利を主張した。
 その子は、自分の息子、ディーノだと。

 戸惑うレオナに、嘘だとショックを受けるダイ。
 ポップはデタラメだと反論し、証拠を求める。レオナもダイの母親は何処だと食い下がる。

バラン「母親か……確かにこの子にはどことなく母親の面影がある……」

 独り言のようにそう呟いてダイを見つめるバランの目は穏やかで、どこか優しさが感じられた。
 が、バランは人間には関係が無いことだと関与を拒絶する。

 その様子を、森の木の枝につり下がっていた悪魔の目玉はじっと見つめていた――。





 悪魔の目玉に映った光景――それは、魔王城の大きな水晶玉にリアルタイムで映し出されていた。
 まさか、ダイとバランが親子だったかと驚くザボエラ。

 竜の騎士の再会の立て役者はこの自分だと主張しつつ、それを隠そうとしていたハドラーの小心さを貶すキルバーン。
 怒りに我を忘れそうになるハドラーだが、ミストバーンがバーンのお目見えを告げたことで、なんとか冷静さを保つ。

 その場にいる全員が跪く中、ベールに覆われた玉座にバーンのシルエットが浮かぶ。ベール越しの影からでも窺える鋭い眼光と威圧感。
 そんなバーンに臆することなく、キルバーンとピロロはダイの正体について、そしてダイの正体確認をハドラーが反対していたことを暴露する。冷や汗を掻くハドラーだが、バーンの手前、文句も言えない。

 バーンからの質問に、ミストバーンもダイの実力について保証する。
 それを聞いて、バーンは愉快そうに笑う。竜の騎士を二人そろって配下にくわえられることを、喜んでいるのだ。

 青ざめるハドラーのすぐ後ろで、キルバーンはダイを獲得したあかつきには、バランに褒美を取らせることを暗に薦める。
 それを聞いたバーンは、バラン魔軍司令を任せてもいいと言った。

 思わず、反論するようにバーンの名を叫ぶハドラー。
 だが、バーンは自分の決定に変更はないと撥ね付ける。恐れていたことが現実化したと、絶望するハドラー。

 そんなハドラーの表情を、キルバーンは仮面越しにじっと見つめていた。
 そして、ザボエラはこれまでダイとバランの対面を阻んでいたハドラーの真意を、ようやく悟る。

 悲喜こもごもが入れ混じる中、バーンが落ち着いた声音で呟く。

バーン「だが、そううまく事は運ばないらしい」

 その言葉に、再び全員の目が水晶越しに見えるダイとバランに向けられた――。





 ディーノを連れて帰るというバラン。
 だが、ダイはそれを拒絶する。力で叶わなくても、まだ最後の武器があるから、と。
 どんな強敵にも立ち向かう、勇気。それにすがって、ダイは立ち上がる。
 傷つきながらもまだ戦う意志を捨てないダイを、見守る仲間達。





 そして、水晶越しにハドラーもその光景を見ていた。
 皮肉な話だが、魔王であるハドラーもまた、ダイがバランを倒すことを願っている。
 応援と言うにはあまりにも切迫した追い詰められた表情で、ハドラーはダイ達を見守っていた――。






 ディーノという呼びかけも、ダイは激しく拒絶する。
 ブラスからもらったダイと言う名に拘るダイは、魔王軍と戦う勇者ダイだと名乗る。
 その決意に、今度はレオナとポップが感動する。

 無言のまま、じっとダイを見つめるバラン。
 そんな彼らを見ていたメルルは、意を決したように立ち上がりかけた。だが、素早く動いたナバラが手を広げ、それを阻む。

 バランを悪い人だという孫娘に対して、ナバラは竜の騎士に滅ぼされるのならば、自分達人間の方が悪いのだと言い切った。すでに諦観の念すら持っている祖母に、メルルは「そんな……」と言うものの、それ以上反論も出来なければ、動けもしなかった。

 テランの民達の葛藤をよそに、バランはダイを人間の勇者として扱い、軍門に降らなければ殺すと宣言した。
 それでも、怯まないダイ。
 そんなダイの後ろにいたレオナは、ハッとしたように動く。ポップの側に駆け寄ったレオナは、彼にベホマをかける。

 立ち上がる力も無くしゃがみ込んでいたポップは、体力が回復しても何も出来ない不甲斐なさを痛感していた。
 ダイを心配し、彼を見守るポップとレオナ。

 バランと相対するダイは、敵の強さを嫌と言うほど思い知っていた。
 半端な攻撃ではやられると考えたダイは、自分の持てる最大攻撃を仕掛けようとする。

 アバンストラッシュの構えを見ただけで、その技の特質を理解するバラン。
 手は読まれていると分かっていても、それでもダイは自分の出せる全力を振り絞るしか手はない。

 意識的に竜の力を呼び起こしたダイは、額に紋章を光らせる。それに呼応するように雨雲が立ちこめ、太陽を隠した。
 ライディンを呼んで剣に宿らせ、ラィディンストラッシュを放つダイ。

 その攻撃を、バランは剣を抜いて受け止める。剣でラィディンのエネルギーを吸収したせいで、全くダメージはない。
 驚愕するダイ達の前で、バランはダイの成長を褒め称える。そして、まるで見本を見せるがごとく、ラィディンの上位呪文であるギガディンを呼んだ。
 
 ダイのライディン以上の雷がバランのかざした剣に宿り、バランの額に竜の紋章が輝く。
 一足飛びで間合いを詰めたバランの剛剣が、ダイを頭から唐竹割りにする。

 兜が、鎧が、粉々に砕けて散っていく。その勢いで跳ね飛ばされたダイの身体は、湖に沈んだ。
 ダイの敗北にゴメちゃんとレオナは悲痛な声を、ポップは怒りの声をあげる。
 ダメで元々と身構えるポップのすぐ後ろに、黒い影が差した。

クロコダイン「待て! その男の相手は、オレがする」

 獣王クロコダインとの再会に、力強い味方が来たと手放しに出喜ぶポップ。だが、ポップはクロコダインの手が震えていることに気がつく。
 クロコダインほどの男であっても、バランの相手は脅威だ。

 自分と戦えばどうなるか、分かっているのかと問うバランに対し、クロコダインは死ぬ覚悟があることを表明する。
 互いの実力差を知った上で、クロコダインはダイ達の助っ人に来たのだ。
 
 ポップ達にダイを助けるよう、促すクロコダイン。
 ポップ達は自分も戦うと食い下がるが、クロコダインはバランには呪文が一切効かないことを告げ、ダイを助けるように再度促す。
 悔しそうながらも、それに従うポップ達。

 バランとクロコダインは、会話を交わす。
 互いに相手の実力を認め合った仲だけあって、その会話は一見友好的だった。
 魔王軍の中でクロコダインを一番買っていたと言うバランは、今は敵味方となったとしてもそれを責めるつもりはない。

 そしてクロコダインもまた、袂を分かったかつての同僚に対して恥じる気持ちはなかった。バーンやハドラーに捧げた忠誠心が、ダイへ向かっただけだと彼は言う。
 ダイこそは、自分達に光を与えてくれた太陽だと力説するクロコダイン。

 雨雲が晴れ、太陽がそこから覗く中、バランは自分にとっての太陽であった女性――ソアラの姿を思い出す。

 互いの主張が合い譲れぬ以上、戦いは避けられない。
 身構えるクロコダインに対して、バランは剣を納めた。竜の紋章を輝かせたバランは、全身から凄まじい闘気を発する。その気迫に、湖を目指していたはずのポップ達は思わず足を止めた。

 しかし、闘気は凄まじいがバランは棒立ちのままだ。
 戸惑うも、クロコダインに迷いはなかった。
 相手に戦う気が無いなら、遠慮なく首をもらうと吠え、斧で斬りかかる。――が、バランの首に当たる寸前に大斧は砕けた。

 クロコダインは、見た。
 バランの首筋ギリギリで、闘気の膜に阻まれるように止められた己の刃を。
 竜の騎士の最大の秘密、竜闘気(ドラゴニックオーラ)を目の当たりにし、驚愕するクロコダイン。

 バランの軽い手刀で腹をつかれたクロコダインは、砲弾でも喰らったかのようにすっ飛ばされる。
 木をなぎ倒すその勢いに、ポップは思わずクロコダインの名を呼ぶ。
 が、バランは平然とその場に立ち続けていた――。

  
 

《感想》

『バランパパン、無双過ぎっ』
 前回に続き、インパクトで全て持って行かれた気分ですね。

 ところで、カール王国の生き残りの兵士とヒュンケルのカットから入っていくスタイル、渋くていいですね。

 しかし、ヒュンケルが自分が魔王軍だったこと、それを知ったらこの男はさぞ恨むだろうなとモノローグで呟くシーンがカットされたのは、非常に悲しいです〜っ。
 ヒュンケルの贖罪の感情を、是非声優さんの演技を通して聞きたかったのに〜。

 原作では、兵士は『自分の代わりに』兄を葬ってくれと頼んでいたのが、アニメでは『葬ってやりたいんだ』と、自分がやる手助けを頼んでいますね。
 人任せにしないアニメの騎士弟の方に、好感が持てます。
 が、アニメではヒュンケルがこくんと頷くシーンがカットされていたのが少々寂しいです。

 その代わりのように、バランとホルキンスのバトルシーンが増量されていましたね。弟兵士の話では互角っぽく言っていましたが、動きを見る限り、バランの剣の躱し方は余裕のある感じで、ホルキンスは思い詰めたような切迫感が印象的でした。

 しかし、バランが剣を躱す際、首を後ろにのけぞらせる――ボクシングで言うスウェーで避けていました。これは、巧い人だと鼻先で敵の攻撃を躱す避け方になるのですが、まさにそんな印象でしたね。

 バランが避ける際、のけぞった鼻を下から見上げる構図になっていましたが、ちゃんと鼻の穴も描かれていたのに感動しました♪
 原作にはないカットなだけに、作画の人の拘りと描き込み愛を感じましたとも。

 それにしてもホルキンス、騎士団長と言う割に鎧下を着ていないせいでやたら軽装に見えますね。そして、気になるのが腕にはめたブレスレット……ドッグ・タグのように団長以上が身につける認識票でしょうか? それとも、恋人から贈られた品などの、個人的なアイテムでしょうか?

 とりあえず弟兵士と昔のロカ以下のカール騎士団が身につけていなかったので、個人的な品に一票。
 さらに個人的願望で言えば、恋人からもらった品で、

『これ……彼女がくれたんだ、お守りだって。心臓に近い左腕にはめれば、きっと命を守ってくれるからって。だから……この戦いが終わったら、オレも同じように彼女にプレゼントするつもりなんだよ。ブレスレットじゃなく、指輪をさ……』

 ってな感じに、死亡フラグを立てていればいいと思います!
 まあ、このブレスレット、実は原作ではコマによって左右に入れ替わっていたりしますが(笑)

 ところでホルキンスの死亡シーン、原作では出血具合と言い、白目を剥く無残な死に顔と言い、なかなかのホラー風味でしたが、さすがにアニメではその辺が配慮されていましたね。

 また、瓦礫をどけるのにヒュンケルが闘気を使ったのも原作と違う点。原作では無造作に、手で瓦礫を除いていましたしね(笑)
 原作では、紋章を見た驚きが大きかった上、すぐにダイが危ないと直感していましたが、アニメではヒュンケルがずいぶんと思慮深い印象です。

 バランパパンの語る竜の騎士の伝説、面白かったですが、イラストが……。
 中央に大きな竜顔、左に年老いたキリストなイメージの人間、右に悪魔の羽の生えた魔族、という立ち位置はいいですよ、ええ、位置取りは。

 でも、竜の騎士が生まれたのだと説明する時に、左右にいた人間と魔族の神がすーっと真ん中で寄り添い、光り輝く図って……結婚式ですかいっ!?(笑)
 え、もしやこれ、BLなイメージで見ろ、と?

 なんか、どう見ても三つの種族が合わさったと言うよりは、竜の神の立ち会いの下、人間と魔族がくっついたように見えたのですけど……これは、見る目が腐ってしまったせいなのか(笑) っていうか、物理的にくっついた構図でしたけどね。

 光の後で生み出された竜の騎士は、見た目は割と普通の戦士っぽくて、ナバラさんの語る伝説の方が派手でしたね。

 バランの語るバーンの説明、原作とは改変がありましたね。

原作バラン「いや、バーン様は世界の平和のために人間を滅ぼそうとなさっておられるのだ。悪いのは人間だ」
アニメバラン「いや、悪いのは人間だ。バーン様は世界のために人間を滅ぼそうとなさっているのだ」

 お、原作のバランは説明から結論という形を取り、二重敬語になっていたんですね。アニメでは、先に結論を出してから説明と、すっきりと分かりやすい文体に変更されていると思います。
 出来る人はインパクトのある結論を先に口にして、その後で説明をして相手を納得させると言いますしねえ。

 ダイが人間の味方だと剣を構えるシーンで、ダイの横顔が剣の刃に映り込んでいるのがよかったです。
 また、原作ではダイの反発を聞いて

原作バラン「そうか。やむをえんな」
アニメバラン「そうか……」

 と、一言で済ませているのがにくいところ。
 アニメでは声優さんの演技が加わるので、感情を押し殺しながらも不本意そうな雰囲気が伝わる分、細かいセリフをはぶいてもいい点が素晴らしいですね。
 言葉には出さないながら、バランの押し殺した失望が感じられるような気分でした。いやー、いい声です。

 ダイがアバンストラッシュを仕掛ける前、剣の柄をちゃんと持ち直すアクションを入れるところなども、細かくていいです。
 アバンストラッシュを放つまでは険しい表情をしていたダイが、効果が無いと知ってハッと子供っぽい表情を見せるなど、合間合間で見せる表情変化がいいですねえ。

 湖から吹き飛ばされたダイ、原作では剣を持ったまま地面に投げ出されていますが、アニメでは地面に落ちる前に手放していますね。

 また、原作ではポップがダイを抱き起こす際、レオナは見ているだけなのですが、アニメでは手を伸ばしている分、距離が近く感じられます。
 しかし、メルル、なぜかゴメちゃんをしっかり抱っこしていますね(笑)

 バランに人間に迫害されると言われ、ダイが俯くシーン。
 原作では、ダイは眉を下げたしょんぼり顔で、悲しんでいるように見えましたが、アニメのダイは悔しそうに歯を食いしばっているような表情と、差があるのが面白いですね。

 原作では『そうなるかもしれない』と諦めているかのような表情に見えるのですが、アニメのダイは『そうじゃないと言いたいけど、言えない』と悔しがっているように見えます。

 でも、いずれにせよ、ダイを庇うポップの主張には救われたと思います。
 ダイを無条件で信じるポップの台詞。あれこそが、揺らいでいたダイを支えたと思いたいです。

 杖を振りかざして主張するポップのシーンには、見惚れました。
 ダイに残酷な未来を告げるバランが目を閉じているのは、アニメも原作も同じで、ポップの言葉で目を開くのも同じなんですが、動きがあるせいかアニメの方が印象的に見えますね。

 原作では、ダイは少しうるっとした顔をしていますが、アニメでは泣きたいのを我慢しているような表情に見えてしかたありません。

 ダイの回復を頼むシーンでも、改変が

原作ポップ「姫さん、ダイにベホマで回復してやってくれ!! その調子じゃろくに戦えないぜ!」
原作レオナ(無言で頷く)

アニメポップ「姫さんっ。ダイにベホマを!」
アニメレオナ「分かった!」

 基本的に筆者は原作の台詞がカットされるのは残念だと思う主義なのですが、これに関してはアニメの方がいい感じですね♪ また、真剣な表情をしたポップ、レオナの背後にじっとポップを見つめるメルルが映り込んでいるのが好印象です。

 ベタンと、それが破られるシーン、大迫力でカッコイイ!
 で、その後、みんなが倒れているシーン。ダイとレオナはほぼ原作通りですが、ナバラさんの倒れ方がめっちゃ不自然!

 大岩の上に、ちょこんと載せられた人形みたいに見えます。原作でも大岩の上に飛ばされていましたが、頭を向こう側に向けて下半身だけが見えているポーズだったのに。

 メルルも木にもたれかかっているポーズが、微妙に乙女っぽく改変されていますね。しかも、しっかりとゴメちゃんを抱きかかえたまま! とっさに、ゴメちゃんを庇っていたのですね、……いいぞ、いいぞっ。
 で、ポップは原作以上のダメージを負って、完全に倒れ込んでいました。……まあ、どう考えても一番ダメージが行く場所でしたからねえ。

 ダイがバランの息子だと聞いて、原作でレオナがポップの方を確かめるように向くシーンがカットされていたのは、ちょっと残念です。
 ま、目の前にあんな怖い親父がいたら、後ろの方にいるポップの様子を振り返る余裕があるとは思えませんが。

 代わりと言っては何ですが、ポップがバランに反論している時に、ナバラさんが目覚めるシーンが追加されていました。

 そして、バランがダイを見下ろすシーン、やはり温かさが感じられるような気がしてなりません!(パート2) ええ、バラン的にはダイは母親似に見えているんでしょうね。

 悪魔の目玉越しに魔王軍側に視点が移って、キルバーンの軽快な軽口と、時代劇のように大仰なミストバーンのセリフの対比が面白かったです。
 バーン様、声だけでもすごい迫力……っ! 悪役声がこれほどまでに似合うとは(笑)

 原作ではハドラーがキルバーンにからかわれ、バーンにも「ダイの正体を知っていたのか?」と念を押されるなど、実に胃痛な追い詰められ方をしていましたが、アニメではバーンからの問いかけがカットされていましたね。

 ……それはそれで、無視されているようでお気の毒(笑)
 ザボちゃんの出世戦略台詞がまるっとカットされているのも、残念。ザボエラのずる賢さや切り替えの速さが溢れた長台詞、割と好きだったのですが。バーン様の台詞も、やや改変されていますね。

 ダイがバランに対抗して立ち上がるシーン、力がこもっていて実に良かったです♪ 後ろで、ナバラさんやメルルもちゃんと気絶から目を覚ましていたし。

 ゴメちゃんをしっかり抱きしめているメルルが、実にキュート♪ そして、自説である『神の涙であるゴメちゃんは、無意識にその場にいる中で一番弱い者(条件:正しい心の持ち主)に寄り添う』説が正しいと確信しました!
 野郎二人を蹴り飛ばせるナバラさんより、メルルの方が絶対に弱いと思います。

 ディーノという名を拒否して、ダイと名乗るシーン『本当の名前もクソもあるものか!』と言う部分がカットされていましたね。ポップなら似合いそうな言い回しだなとは思うけど、ダイには少し不向きな気もするので、カットされてもいい気がします。

 原作と違って、メルルが動こうとするタイミングがここになっていますね。
 メルルが動くタイミングに合わせて、さらっとなびく黒髪が実に美しい……! メルルファンなら、ここはスローでゆっくりと見ることをお薦めします! 筆者は五回ぐらい見返しちゃいました♪

 レオナも髪が長いけれど、後ろにまとめた髪型だと髪の動きが目立たないし、メルルの長さとしなやかさ、それに黒という色だからこそ、なびいた時の動きが目につきやすいですね。

 ついでに、ナバラさん、原作では弱々しくメルルの服の裾を掴んでいましたが、アニメではサッと手を広げて止める動きがお見事!
 しかも、メルルの方を向いて手を広げるのではなく、バランの方向を向いたまま手を広げています。

 つまり、バランの視点から見れば、メルルの前にナバラが両手を広げて庇っている姿になります。何があっても孫娘の盾になろうという、ナバラの強い意志を感じさせるポーズですね。

 説得すべき孫娘の方を向かず、天災の源であるバランから目を離さない辺り、的確な警戒心を感じます。敵から絶対に目を離さないのは、戦士の初歩の心構えなので……このばーちゃん、やっぱり只者じゃないですよ!(笑)
 ナバラさん、やっぱり原作よりアクティブ!

 そして、レオナがポップの回復に走るシーンもいいですね。
 フレイザード戦でのマァムがダイの元に回復に走るシーンもそうですが、アニメでは回復役が戦いではなく回復に優先を置いて行動している様子が伝わってきます。

 原作では座ったままズリズリと這っているのですが、立って走っていますね。
 今なら回復できると思い、一番心配なはずのダイの側にとどまるより、仲間の回復をこなすレオナの責任感が好きです。

 立ち上がれないポップが、膝を立てた不自然な姿勢で身構えていたのもいいですねえ。立つ力までは無いせいで半端な姿勢になっていましたが、それでもポップが必死に足掻いて立とうと頑張っていた感じがします。

 ダイのライディンストラッシュ、バランのギガブレイク、どちらもすんごい迫力!
 原作では右から左に打ちかかっていた構図を、逆に左から右へと打ちかかる構図に変えていましたが、迫力は少しも減じていません。むしろ、増している感じですね。

 漫画だと右上から左下へ読み進める都合上、どうしても構図もそうなりがちですが、アニメでは原作の良さを活かしつつ、構図を左右逆転することが多い気がします。

 しかし、ダイが沈んだのにゴメちゃんがポップとレオナの側に来たのは不満! ここは原作通り、沈んだダイを心配していち早く湖面の上を飛んでいて欲しかったです。

 クロコダインの登場は、相変わらず格好いいですね♪
 恐怖を感じながらも、決して引かないクロコダインが好きです。

 でも、ポップとレオナがクロコダインの説得で戦わずに湖に向かうシーンでの「悔しいわ、なんて無力なの」の台詞が削られているのが残念すぎる〜。
 レオナには珍しい、嘆きの台詞なのに。

 だけど、バランとクロコダインの会話が削られずにきっちりと入っていたのは嬉しいですよっ。
 ダイを太陽と表現し、バランがソアラを思い出す際、太陽がさす演出はお見事。回想のソアラが、美しいです……! まあ、欲を言えばもうちょいアップでお願いしたかったなぁ。

 バランとクロコダインの激突は、予想通り迫力満点。でも、クロコダインが後方に飛ばされる時、ゴロゴロ転がるほどの勢いで飛ばされるとは思いませんでしたよ(笑)
 ……うん、テラン湖の周囲はやっぱり災害が多そうです。そりゃ、高床式の村にしたくもなりますね。

 エンディングのキャストを見たら、ホルキンスの弟、名前なしの『兵士』かいっ。ううっ、名前をぷりーずっ。

 予告は正統派でした♪
 ネタバレなしに、バランの強さを十分に表現している感じ。ファン視点では、ダイが記憶喪失になると分かっているけど、クロコダインとダイがピンチになる事までしか分からない予告がいいですっ。
 あ、でもポップの出番が微塵もなかったですけど(笑)

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