『バランの怒り』(2021.4.24) |
《粗筋》 ポップを人質に、ヒュンケルに武器を捨てるようにと脅しつけるボラホーン。 雑魚の命になど興味が無いと、ヒュンケルの首を欲するボラホーンの要求に、ヒュンケルは剣を下ろし、静かに目を伏せて承服する。 頭を強く握りしめられる苦痛に耐えながら、自分に構わずボラホーンをぶっ倒してくれと訴えるポップ。 ポップは魔法力が空の自分がダイの役に立たないこと、ヒュンケルが死ぬとすごく悲しむヤツがいることを上げ、ヒュンケルが生き残るべきだと主張する。 名前こそ出さなくともポップが差しているのが、マァムのことだとヒュンケルには伝わっていた。 しかし、自分は人を幸せに出来ないと拒絶するヒュンケル。せめて悪党を不幸にしようと思って、おまえ達の仲間になったのだという。 そんなヒュンケルに対して、鎖鎌を振り上げるボラホーン。ポップがやめてくれと絶叫する声が、空しく響き渡る。 ヒュンケルに向かって振り下ろされる非情な刃――が、それは唐突に軌道を変えて宙を舞った。 絶命し、ポップを手放して倒れるボラホーン。
人間に対して強い憎しみを抱くラーハルトに対して、ヒュンケルはその理由を訊く。 ラーハルトは、自分が魔族と人間の間に生まれた者だと明かす。 その母も病に倒れ、幼かったラーハルトは夕日の中で途方に暮れて墓の前に佇む。 自分の悲しみをただ一人、理解してくれたのがバランだったと語るラーハルト。 他人の悲しみを我がことのように感じる――そんな二人を甘いと言うラーハルトの目にも、涙が滲んでいた。 静かながら、どこか必死さの感じられるラーハルトの末期の頼みを、ヒュンケルは一瞬驚きつつも、受け入れた。 二人の意志が一致した途端、ラーハルトの鎧から粒子が立ち上る。その輝きは爆発的な光を放ち、金属音を立てて魔槍がヒュンケルの身体を包んでいく。 鎧もヒュンケルが気に入ったようだと、ラーハルトは満足げだった。 ポップに肩を貸しながら歩くヒュンケルは、肩越しに後ろを振り返る。
この場にヒュンケルがいてくれたなら……そう呟くが、その場にやってきたのはバランだった。 バランは二人だけで戦おうとしているのを見て、前回の戦いが教訓になっていないのか、それとも策があるのか、決めかねている。 が、その時、バランが思い出したようにポップの話をする。 未熟者を捨て石に使う残酷な策が、クロコダインらしくないことをいぶかしがっているバランは、それがレオナのアイデアなのかと問う。 だが、二人ともその疑問に答える余裕もない。 最初は俯いて笑っていた彼は、終いには身をのけぞらせるように大声で笑う。 気が触れたのかと、クロコダインを見やるバラン。 そのわずかな間に、クロコダインはレオナに助力を頼み、打ち合わせをする。危険だと止めるレオナだが、クロコダインの目はバランのみに注がれている。 頼むと言い残して、クロコダインはバランに斧で斬りかかった。 後方に飛ばされるクロコダインに、バランは容赦なく追撃を仕掛ける。 一旦後方に下がったバランは、クロコダインが竜闘気の込められた攻撃を受けきったことに驚いていた。 クロコダイン「バラン……ギガブレイクで来い」 その挑発に、バランは剣を身構えて雷雲を呼ぶ。青空に黒い雲が渦のように集まり、その中心部が光を帯びて雷を放つ。 その様子を、悪魔の目玉はリアルタイムで映し出してた。
それを、バランは振り返りもしなかった。獣王の最後だと、確信していたから。 しかし、不思議な音と共に柔らかい光が辺りが後ろから広がった。 レオナの力では、体力と外傷、両方を治療することは出来ない。だが、体力さえ回復し続ければ、クロコダインは戦い続けることができる。 それを聞いて、バランは激昂する。 一撃で倒せなかったことでプライドが傷つけられたバランの怒りを見て、レオナは改めてこの戦い方が無謀だとクロコダインを案じるが、彼の意見は変わらない。 咆哮するバランの額からは、眩いほどに紋章の光が放たれる。 身体が熱くて、じっとしていられないとダイが叫んだ瞬間、その光に跳ね飛ばされたメルル達は壁にぶつかり、気を失って倒れる。 さして力を入れてるようにも見えないのに、鉄の柵は飴のように曲がり、外に出られるだけの隙間が空いた。 ダイ「誰かがぼくを呼んでいる……」 光のない目で、ダイは何者かに操られるような動きで牢から抜け出した――。 一方、二発目のギガブレイクを喰らいながらもクロコダインは生きていた。クロコダインの頑強さと捨て身さに、さすがのバランも驚きを隠せない。 そしてレオナは、クロコダインに早くベホマをかけようと隙を窺っていた。が、動き出した瞬間、雷が彼女のすぐ側に落ちる。 ライディンに驚くレオナに対して、バランは忠告だと言い放つ。 クロコダインが制止しようとするが、バランの方が早かった。忠告を無視したレオナに対して、雷が放たれる。 ラーハルトの槍を見て、なぜ邪魔をするのかと憤り、近づいてきた足音を聞いて叱責するようにラーハルトの名を呼ぶバラン。 そこにいたのは、ラーハルトの魔槍を身につけたヒュンケルと、彼に肩を借りてやっと立っているポップだった。 竜騎衆は全員かたづけてきたというポップの言葉に、さすがのバランも血相を変える。デタラメだと否定するも、それ以外に二人がここに来られる理由はない。 その事実を受け止めたバランは、ヒュンケルに対して険しい目を向ける。ラーハルトを殺して、武器を奪ったのかと。 ヒュンケルはこれはラーハルトの意志で送られた物であると説明し、ラーハルトからバランを託されたことも伝える。 ダイのためにも人の心を取り戻すように訴えるヒュンケルの説得には、熱が籠もっていた。しかし、その熱意はバランの心を揺り動かしはしても、変えることは出来なかった。 ヒュンケルの熱意、クロコダインの後押しも、バランの怒りを強めるばかり……そして、バランの握りしめた手の震えが止まった。 先程までとは打って変わって、落ち着き払った口調でバランは言う。 バラン「……ならば捨てよう。この人の心と身体を!」 自分の顔につけていた、竜を象ったモノラルを引きちぎるように外すバラン。それを強く握りしめるあまり、拳から血が伝う。 剣を地面に突き刺し、気迫を高めるバラン。
テランに配置された悪魔の目玉達が、次々と消失した、と。 悪魔の目玉の目の届かないところで、バランの変身は始まっていた。 肉体から突き出た肋骨が、がっしりと皮膚に食い込み簡易鎧のように胸元を飾る。肩の筋肉が盛り上がったかと思うと、棘を帯びた装甲へと変化した。 それは一旦丸まってから広がり、コウモリの羽のような翼の土台を作り上げ、皮膜が生まれる。 身体を庇うかのように両手を十字に組んで丸めていたバランだが、その拳に光る目のような部分が輝く。 誰もが驚愕で目を見張る中、バランはその姿を完全に変化させていた。 これがバラン本来の姿なのかと驚くクロコダインに応じるように、バランはこれが竜魔人と呼ばれる姿だと告げる。 《感想》 『竜魔人への変身シーン、予想以上にド迫力ッ!』と言うのが、第一印象でしたっ。 骨格から変化していくトランスフォーム、二色カラーでは伝わりきらなかった肌の色が赤さ、咆哮を上げつつ変化していく化け物じみた獣というインパクト! 今回の冒頭シーンで、ヒュンケルの台詞がちょっと付け足されているのに感心しました。 原作ヒュンケル「……オレを殺せば、本当にそいつを見逃してくれるのか……?」 どちらの場合でもヒュンケルは『敵の前で武器を手放す=己の死』という認識を持っているのですが、アニメではそれをさらに分かりやすく表現しているイメージです。ボラホーンの「ワシは気が立っているんだ」の台詞をカットして、付け加えた気持ちが分かります(笑) ついでに、アニメではポップが苦痛のあまり小さく唸り続けている声が聞こえ続けているので、脅迫に迫力が出ますね。 ポップが自分に構うなと訴えるシーンで、ボラホーンが脅して頭を握り込む演出をくわえてあるのもいい感じ。ポップの話のところどころで拳に力を込めているのに、その苦痛に耐えながらも怯まないポップの意志の強さが際立って見えます。 残念なのが、マァムを思い出す回想シーンが流れなかったこと! ボラホーンが槍に貫かれるシーン、血しぶきがめっちゃ少なっ! 串刺しボラホーンをすごく黒が強めのモノクロで表現し、血を明るい青で洗わした色の対比は素晴らしいですが、血しぶきを押さえすぎたせいで迫力が半減しているのがすごく残念です。 また、原作では血しぶきの動きだけでなく、空を舞う鎖鎌の刃を手前に大きく表現することで静止画にも拘わらず躍動感を出しているのですが、アニメでは手前の刃が省略されているのがちょっと残念ですねえ。 青空のカットを挟み、ラーハルトの側にポップとヒュンケルが佇む展開は原作通りでしたが、倒れているボラホーンの映像も見せるとは思いませんでしたよっ。 多少、焦点をぼかしてあるとはいえ、口に思いっきり槍が串刺し状態の死体はいいんですか?(笑) 本当に、ニチアサ基準が分かりません。 ラーハルトの過去の告白、原作と同様に『混血児』という表現は控えていますね。これもご時世と言うべきか、混血という言葉はいい意味には捉えられないみたいです。 驚いたのが、ラーハルトの母親がシルエットだけとは言え登場したこと! 原作では全くの未登場だったので、初情報です! お墓の墓石も妙に立派だし……うわっ、二次創作ではラーハルトの母親は故郷を追われた流人にしちゃいましたよ(笑) お墓も無縁仏っぽく考えていたんですが。二次創作では良くあることですが、なんかやらかしちゃった雰囲気(笑) ラーハルトの母親って、ソアラ同様にかなり裕福な家のお嬢様だった疑惑が浮上してきました。 バランもいきなりお墓の前に現れていますし……ラーハルトのお母さんと親交があったってことですかね? ラーハルトの遺言シーン、ヒュンケルがしゃがみ込んだタイミングが原作とアニメで違っていますね。 感心したのは、ラーハルトがヒュンケルの手を握りしめるシーン。 鎧の魔槍の委譲シーン、思っていたのと全然違いました! 鎧の魔剣よりも鎧の魔槍の方がヒュンケルに似合っているとは思っていましたが、イケメン度が思いっきりアップしていますね。っていうか、ラーハルトが着ていた時よりツヤツヤして見えるんですけど!?(笑) さらに突っ込むなら、槍、ボラホーンの口に刺さったものなのに、それを身につけるのって嫌じゃないんですかー? って、魔槍の本体部分ってあの槍なのかと思っていたけど、ラーハルトが身につけていた部分だけでも委譲できるって、いったい核はどこにあるんでしょうね? ラーハルトの遺言シーンで、ポップとヒュンケルの顔のカットだけでなく、三人での全景で彼がわずかにですが首を動かしているのに感心しました。ヒュンケルだけじゃなく、きちんとポップも見ていた感があっていいです! 原作では死んだラーハルトを見下ろしながら、ヒュンケルが彼の意志を受け継いだとモノローグで語るのですが、アニメではポップに肩を貸して歩きながら振り返るシーンに改変されていましたね。 ポップに合わせているのか、めっちゃぎこちない動きがいいです。まあ、この速度で間に合うのかと心配になりますが(笑) そして、注目したいのがボラホーンの死体! レオナが手袋をはめ直すシーン、いいですねえ! クロコダインの顔が斧の刃に映り込む演出や、暗い森の中から光を放ちながら歩いてくるバランの演出など、細かな演出が光っています。 バランがポップが単身で来た意図を探ろうと、クロコダインやレオナをわざと怒らせるような事を言っているシーン、いいですね。もっとも、それはバランが深読みしすぎなだけで、実際にはクロコダインやレオナのショックを受けまくっていますが。 アニメレオナ「私ったら……彼のことを本気でひっぱたいちゃった……」 クロコダインの泣き笑いのシーン、笑い声に被さるようにモノローグでポップへの思いを語っている演出は、実に良かったです! バランが「気が触れたか」と聞いていますが、これは旧コミックス版の表記で、文庫版や新装版では「ふれたか」と意味不明語になっていたのを、きちんと元に戻しているのが驚き。 バランとの戦いで、クロコダイン、やっぱりカッコイイっ。 戦いの最中に、瞬きと同時に悪魔の目玉を通じてハドラー達が覗き見している演出も、いい改変だと思います! それにしても、小さなモニターを見上げるハドラーの切迫感を見て……なぜか、競馬場とかでモニターを見上げつつ馬券を握りしめるおっさんを連想してしまいました(笑) ギガブレイク炸裂シーン、雷を表現する白と黄色の色合いや、透過光で画面そのものを光らせる演出は鮮烈でしたが、せっかくのクロコダインの姿が薄れて見えにくなったのが残念です。 原作ではバランの影とクロコダインの光の演出が際立っていただけに、もう少しモノクロの良さも活かして色合いに気を配って欲しかったですね。 でも、レオナの回復魔法の綺麗なこと! 原作クロコ「姫……助かった……これでまた戦える!!」 さりげに、アニメクロコダインの方が礼儀正しい紳士だと判明しました(笑) レオナを暴風から守るシーンも良かったですし。 地下牢でのメルルの気絶シーン、ポーズはほぼ原作通りでしたが、原作では床に落ちていたゴメちゃんがメルルの顔の上に落ちていました! 顔の真上は止めてあげて! バランのレオナへの警告台詞、改変されていましたね。 レオナにライディンがかけられる際、背後から光が溢れる演出が再現されていたのは嬉しい限りです。 ライディンの時は空が曇っていて、呪文の直後に空が晴れる演出もいい感じ。 ヒュンケルとポップの登場シーン。 ポップの竜騎衆は片付けた台詞を聞いて、どうしても突っ込みたくてたまらないんですが……『いやっ、おまえが倒したのは一匹だけで、後は人質になっていただろっ』と(笑) レオナがポップを支えるシーン、ポップの両脇の下へと手を伸ばすようにして抱きかかえ、体勢を整えてあげているのが介護っぽいなと思いました。腕を支えるだけでは危ないので、出来るだけ身体を支えてあげた方が安定感がでるんですよね。 後にポップに肩を貸すシーンでも、半ば背負うような感じで前傾姿勢になっていますし、ずいぶんと人を支えるのに手慣れている風に見えます。 ところで、悪魔の目玉の破裂シーン、グロくってびっくりしました。え、ええー、なぜにこーゆーのはアリなの? さらに、バランの変身シーン、ちょっとジョジョを思い出しましたよ。骨の動きや筋肉の盛り上がりが非常に悪魔的で、ダークヒーロー感が半端ない……! リメイク版のデビルマ○とかも脳裏を掠めました。 怒りに満ちたバランの荒々しい声の演技も素晴らしいですね。これまでの理性的な威厳ではなく、ワイルド感がすごい! 次週予告では、ひゅんけるやクロコダインの活躍シーンがなく、ポップの行動をギリギリに隠した展開になっていましたね、ちょっとホッとしました。 |